リコリス・リコイル/their other story 作:秋乃楓
01_farewell and meeting
―平和で安全、綺麗な東京、日本人は規範意識が高くて、優しくて温厚。法治国家日本、首都東京には危険などない。
社会を乱す者の存在を許してはならない。例えそれがどれだけ小さな事であろうと。存在していた事も許さない
それらを消して、消して、消して綺麗にする。それがリコリスの役目
彼女達の存在は人知れる事も無い
ニュースを見ても事件は一切報道されない。報道されるのは大きな事故が有ったか、或いは行方不明者が出たといった
ニュースのみ。日本の首都である東京は世界に誇れる安全な都市としてアピールするには丁度いい位に。
「対象の数名を確認。これより突入します」
1人の少女が自身の右耳にあるインカムへ誰かに状況を伝える様に話す。
部屋に居るのは数人程で、片手に銃器やら金属製のバット等の武器を持っている。少女らの目的は貨物船から奪われた金品の押収。扉の隙間から中の用紙を伺いつつ、突入のチャンスを伺う
「今・・・ッ!」
合図を仲間へ出し、素早くドアを蹴破ると一斉に中へ雪崩込む
中に居た男達が咄嗟に持っていた銃器を向け、発砲する。室内に互いの銃声が響き渡る
「コイツ・・・!うわぁあッ!?」
男の悲鳴が上がったと思えば血を流しながら動かなくなる。
「ぎゃあああッッッーー!!?」
今度はバットを持っていた男が床へ崩れ落ちた。そして気が付けば残り人数も1人。それに対し少女ら4人は男へ詰め寄る。銃口は男の頭部か、或いは心臓へ向けられている
すると、男の1人が少女らの内の1人を捕まえて前へ突き出す
「コイツがどうなっても良いのか!?てめぇら、少しでも動いてみろ・・・コイツの頭がぶっ飛ぶぞ!!」
ショートヘアの少女は頭に銃口を突き付けられ、怯えている
先程までの行動が嘘だった様に。か弱い羊の様に足がすくみ、震えている
「本部、人質を取られました・・・どうしますか?」
リーダー格と思われる少女は咄嗟にインカムで判断を仰ごうとする。だが、指示は帰って来ない
「どうした?さっきまでの威勢は・・・ッ!」
男は形勢逆転だと言わんばかりに笑っている。未だ相手は子供、映画や警察の真似をしてオモチャの銃を撃ってるという考えしか無かった。だが、納得が行かない所が有る。計画は全て完璧だったはずだ。逃走経路も、逃走した後の段取りも、金品の行先も全て。
それが何故バレたのか?何故、彼女達が此処へ来たのか?そして扱っている銃はどう見ても本物にしか見えなかった。辺りには薬莢が、血を流して倒れた自分の仲間達が居る。それでも男は少女らを脅し続ける
一方、リーダー格の少女は本部へ指示を仰いでる状態が続いている。この状況下で下手に撃てば味方を殺し兼ねないからだ。
その時だった。1人の少女が前へ立つと銃を構えたまま男へ歩み出し、部屋の真ん中で止まる
「ちょっと待って、本部の指示が最優先でしょう!?勝手な真似は・・・」
そう言いかけた時だった
1発の銃声と共に男が手を抑えながら倒れ掛ける。その間に少女は間合いを詰め、人質にされていた子を後ろへ押し退けては男の右手を左足で踏み付ける。
男の悲鳴が上がったが、男はもう片方の手で掴み掛かろうと試みたが肩を撃ち抜かれ血が飛沫する
「・・・これで終わり。何か言い残す事は?」
黒く長い髪を下へ垂らしながら男の方を見詰める。青い瞳は男が怯えている様子を鮮明に捉えている
「ちくしょう・・・ふざけやがってッ・・・!何で俺達がてめぇみたいなガキに・・・!!」
そう言いかけた時だった。
乾いた音と共に男は床へ倒れた。今度こそ、頭を撃ち抜いたから。動かず、喋らなくなった男からは血が出続けている
「対象沈黙、人質は解放しました」
くるりと仲間たちの方へ顔を向ける
人質にされた子は泣きじゃくり、もう1人がそれを慰めている
「何故、本部の指示を待たずに動いたの?もし下手に此方が動いていればあの子、死んだかもしれないのよ!?」
長い茶髪を後ろで結び、赤い制服を着た少女が詰め寄る。彼女が夏野百合、この隊を率いるファースト・リコリスだ
「・・・助かった事に変わりは無いじゃないですか」
じっと見つめ、言葉を返した
自分は咄嗟に動いた。それだけだ
本部からの指示を待っていればどうにかなったとは思わない
「そう・・・解ったわ。貴女の腕前は認めるし、それなりの評価はしている。この件は上へ報告します。自分だけが特別だなんて思わない事ね」
殴りたい気持ちを押し殺し、本部へ事態を伝えると少女達は部屋を後にした
背中の中程まである黒い長髪と透き通る様な青い瞳のセカンド・リコリス、浅水レナ。それが彼女の名前だ
チームワークという言葉を頭では理解しているが、実際は何が正しいのかが解らない。