リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

12 / 30
12_relationship deteriorates

「だから、何度も言わせないで下さい!!そもそも、千束の相棒は私です!千束は私と一緒に居た方が良いんです!!お互いの動きも解ってますから!! 」

 

「いいえ!私だって千束さんと組んでいる方が安心出来ます!私の動きの細かいケアもしてくれますし!その分、千束さんの事も私がカバーします!だから、私の方が相応しいかと!!」

 

こんなやり取りをかれこれ数時間。

しかもオマケに場所は店内と来た。

あーでもない、こーでもないを延々と言い合っている。

 

「あ、あのさぁ・・・もう終わりにしよう?な?仲良くシュークリーム食べようぜ?甘くて美味しぞー?」

 

見兼ねた千束が声を掛ける。

2人の喧嘩を止めようと割って入ろうとするのだが

 

「「千束(さん)は黙ってて下さい!!」」

 

振り向くと物凄い剣幕で怒鳴られてしまう。

 

「は、はぁい・・すいません・・・」

 

千束は、そーっと下がって行く

というのも全ては店に来てから始まったのだ。

切っ掛けは千束が殆どレナと一緒に居る事から。たきなが千束本人に理由を聞くと、妹みたいで可愛いじゃんと笑顔で返した。とは言え、レナが来る前は逆にたきなと千束が一緒に居た。その時はお互いに何かと話したり出掛けたりとか、色々楽しかったのだが、レナが来てからそれも減ってしまった。

 

それがたきなにとって納得行かなかった。仕事の時や此処で働いてる時は未だ良い。正直な話をすれば4人で出掛けた時も何かと気になっていた。

オマケに最近は店に自分が残り、レナと千束が仕事の為に出て行くというパターンがお決まり。

そして今日、いつもの外回りにレナを連れて行こうとした為に彼女へ仕事を振り、店へ無理に残させて自分と千束で回った。

買い出しも千束がレナを誘った事を知り、彼女に別の仕事を任せて自分が代わりに向かうといった徹底ぶり。

それにレナは不満を抱いていた

 

「貴女が来る前は私と千束の2人でした!貴女は大人しく店番でもしてて下さい!」

 

「私だって、学びたい事も有るんです!千束さんは電波塔のリコリスですよ!?その人から学ぶ事も沢山ある筈です!」

 

「そんなのはDAに居た時に貰った教科書でも何でも読めば良いんじゃないですか?!わざわざ千束から聞かなくても良いのでは?!」

 

「たきなさんは何なんですか!?千束さんの親か何かですか!?」

 

「親じゃありません!あんなの、本当の親だって面倒見切れませんよ!!遅刻するし、サボるし、甘いもの沢山食べようとするし!!直ぐ無茶もするし!!だから私が必要なんです!貴女如きが千束の無茶を止められるとでも!?」

 

未だギャーギャー言い合っている

お互いの感情がストレートにぶつかってる反面、千束をディスっている様にも聞こえる。

 

「だらしないのは知ってます!!お菓子やDVDは出しっぱなし、着替えも畳まないし、炊事も殆どしないし、歯ブラシだって私の間違って使ってるし!千束さんの事は私が支えますから、たきなさんは干渉不要です!!」

 

子供の喧嘩よりも酷い内容の喧嘩。

言いたい事を言った後はお互いに睨み合っている

 

「さりげなく私の事、ディスってね?・・・気の所為?おーい・・・?」

 

千束は喧嘩の様子を見ながら苦笑いする。丁度その時、仕事の依頼が舞い込む。

 

「「千束(さん)!行きましょう!!」」

 

2人が一斉に振り向く。だが、お互いにじろりと見つめると直ぐ目を逸らす

 

「こりゃ大変だわ・・・」

 

数分後、千束は着替えを済ませ外で待つ。そして出て来たのは、たきなだった。

 

「お待たせしました!千束、行きましょう!」

 

たきなは意気揚々としている

千束と居られるだけでも嬉しいらしい。

 

「あり?レナは?一緒に着替えに行ったじゃんよ?」

 

千束は店の中を見る。

そこには掃き掃除をするレナの姿があった

 

「なーにやってんの、聞こえなかった?行くよ?」

 

レナの方へ近寄ろうとする。だが、直後にたきなにより首根っこを引っ掴まれる。

 

「早く行きましょう、千束。レナは進んでお店の掃除をしてくれるそうなので!」

 

お店の掃除の辺りを強調するとニコニコ笑っている。絶対に不本意に押し付けたのだろう

 

「たきなぁ・・・顔怖いんだけど?」

 

千束は苦笑いしながらたきなを見ている。レナを待つ訳には行かず、店のドアを閉めると2人して現場へ向かって行く。その後2人は仕事を片付けて戻って来るのだが、ドアを開けた先に居たレナは睨み付ける様に見ていた

 

「・・・お疲れ様でした。私、帰りますので」

 

バン!とドアを閉めるとレナだけが帰路へ付いたのだった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ー翌日ー

この日も朝からギスギスしていた。

お互い、目を合わせる事は無く

ブツブツと何かを言いながら仕事をしている。

 

「なぁーあ、そろそろ仲直りしたら?昨日からずーっと喧嘩してんじゃん。疲れないの?」

 

それを見ていた千束は話し掛けた

だが2人は一度向き合うも、直ぐに目を逸らしてしまう

 

「あーあ・・・ダメだこりゃ・・・」

 

千束は溜息をつくと2人を見ながら首を横に振る

このままでは拉致が開かない

 

「いつまで続けんのぉ?こんな事してたって意味無いじゃんよぉ・・・」

 

ぶーっと頬を膨らませ、何とか仲直りさせようと模索するだがそれが一向に浮かばない。

 

「なら、千束が本当に大切だと思っている方を選んではどうですか?」

 

たきなは千束の方を振り向く

 

「そうですよ、元はと言えば千束さんの事を巡って色々言い合ってるんですから」

 

レナもまた千束の方を振り向く

 

「うぇええ!!?私が選ぶのぉ!?待てよ・・・そんな無茶言うなよ・・・」

 

驚いた千束は思わず頭を抱える

当の2人の方は期待した目で見ている。

オマケに両方とも私の方が相応しいと言わんばかりの目をしている

だが千束もそろそろ不満が溜まっている

 

 

「あーーもう、いい加減にしてよ!そんなに私の事で争うなら、2人とも要らない!私1人で何とかするから!!たきなとレナが仲直りするまで当分、私1人で良いから!センセも宜しくね!!」

 

ビシッと指をさすと予想外の答えが返ってきた。両方とも要らないというのは2人にとってショック極まりない

 

「う、嘘ですよね?千束・・・?レナは兎も角、私まで要らないなんて・・・」

 

たきなはショックで震えている

 

「な、何言ってるんですか!?千束・・・さん?私はたきなさんより未だ・・・」

 

レナもまた動揺の色を隠せない

 

「マジだっつーの!本気と書いてマジだから!変だよ、特にたきな!そんなに新人を出し抜こうとしてどうすんの!?レナもレナ!無理矢理たきなと張り合おうとすんなって!!はぁー・・・本当にもう!」

 

プンプンと怒りながらそっぽを向いて座敷の座布団へ胡座(あぐら)をかいて腰掛けている。すると、カウンターのミカから仕事の依頼だと声を掛けられると立ち上がり、更衣室へ向かう。

着替え終わると戻って来る

 

「絶対に着いてくんなよ?絶対だからな!」

 

子供みたいな言い分を残すと店の外へ飛び出して行く。内容としては至って簡単だった。住宅街に出た通り魔を捕まえろ

という物。現在、その犯人は逃走中であり恐らくルートが正しければ駅の方へ逃げるとの事。

千束にとってはこれくらい、朝飯前だった。

 

「たーしかこの辺だった様な・・・」

 

指定された場所に来ると辺りを見回す

すると包丁を持った怪しい男を見つける

間違いない、アイツだ

 

「そんな物騒なの持って、何処へお出掛けですか?」

 

千束はニコニコと笑いながら声をかけた

 

「うわぁあッ!?何だこのガキ!?」

 

話し掛けられた方の男は思わず驚いて包丁を向ける。刃が街灯の明かりで光っている。持っているのは刃渡り17センチの家庭用の包丁だ

 

「んー・・・、大人しくそれ捨ててくれません?危ないし、怪我しますよ?」

 

千束は男へ呼び掛けるも男の方は包丁を離そうとしない

 

「邪魔だから、早く退けよ!お前も殺されてぇのか!?」

 

男はブンブンと包丁を左右に向ける

どうやら興奮しているらしい

 

「はぁ・・・出来れば大人しく捨てて欲しかったけどなー・・・それ」

 

千束は銃をカバンから引き抜く

セーフティを外すと銃を男へ向ける

 

「そんなオモチャでどうにかなると思ってんのか!?この野郎!!」

 

男は勢い良く千束へ向けて包丁を振り回しながら走って来る

下手をすれば自分も刺されるだろう

だが、千束は冷静だった

 

「・・・どうにかなるから持ってるんでしょーが!!」

 

間合いに入った途端に男の腹部、更に両足の太腿へ発砲する。それでも動こうとした為、腹部に数発撃ち込む。

男は苦しそうな声を上げながら悶えている

 

「大丈夫、死にはしないよ。けど、その代わりめっちゃ痛いから」

 

男が落とした包丁を足で蹴飛ばす。

 

「で、コレで何人刺したの?それとも切った?」

 

千束はしゃがむと話し掛ける

 

「まだ・・・何も・・・してねぇ・・・!」

 

男は苦し紛れに答えると気を失ったのか何も喋らなくなる

 

「何があったか知らないけど、誰も傷付けなくて良かったじゃんよ・・・」

 

スマホで誰かと連絡を取ると千束はその場から去ろうとする。

 

「・・・また変なの飛んでるよ」

 

千束は振り向くと飛んでいたドローンを撃ち落とすと、手にしていた銃を再度カバンへ戻した。

 

「要らないとは言ったものの・・・寂しい気がするのは変わんないや。悪ふざけも出来ないし・・・」

 

ブツブツと色々言いながら再びリコリコへ戻って来た

 

「たっだいまー・・・ん、何かあったの?」

 

中に入ると当の2人が座敷で正座して座っている。

 

「あれから色々考えました。私は千束が取られると思ってあんな真似を・・・ですから、出過ぎた事をしたのは謝ります・・・ごめんなさい」

 

たきなは頭を下げた

 

「私もつい、維持を張り過ぎました・・・先輩だからって解っていても、腑に落ちなくて・・・それでつい、カッとなって・・・その、すいませんでした・・・」

 

たどたどしい口調だが、レナも頭を下げる。そんな中、千束は2人を見ていたが

言葉だけという様子は無さそうに見えた

 

「・・・本当に悪いと思ってるのなら、お互いに向き合って握手して。私は一言も相棒は2人も要らないなんて言ってない。確かに優劣を決めたがるのは解るけど、大切なのはお互いがお互いの背中を任せられるかって事。たきなだって、最初の時は色々と猛反発してたけど、今じゃ私も安心して背中を任せられる位になった。レナは未だ危なっかしい面も有るけど、少しずつ馴染んで来てる。」

 

2人の目の前へ来ると腕を組みながら見つめる。この結末を最後まで見届ける必要が有る

 

「レナ・・・ごめんなさい、けど解って欲しいんです。千束は私にとって特別な存在だから尚更・・・」

 

たきなは目を逸らすも、しっかりとレナを見つめる

 

「・・・解ってます。私もたきなさんにとっても、千束さんが特別な存在である事は変わりませんから。だから2人で一緒に 千束をフォローしましょう?」

 

レナは自分から手を差し伸べた

今までなら絶対に有り得なかったが。

たきなも頷くとレナの手を握り締めた。

 

「よーし、コレで喧嘩終わり!!はぁー、長かったなぁ・・・」

 

その様子を見ていた千束も思わず本音が零れる

このまま解消と行かなかっただけマシかもしれない。

お互いの共通点は錦木千束という少女で繋がっているからこそ、尚のこと引っ絡まってしまうのだろう。

 

様々な境遇を通して彼女の相棒となった者。

そして予期せぬ形で彼女の2人目の相棒となった者。

 

それもまた、運命のイタズラなのかもしれない

 

「仲直りした所で皆で帰ろう!」

 

千束がそう提案した時だった

 

「千束の隣は私です!」

 

「いいえ!千束さんの隣は私ですから!」

 

終わったと思った喧嘩がまた始まった

 

「何で・・・何で、そうなるんだよぉおお!!?」

 

千束は思わず店の中で叫ぶ

結局、千束を真ん中に挟む形で同意したのはまた別の話。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。