リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

13 / 30
13_inconvenient truth

この国、日本では年間3000人もの行方不明が出ている

それは何れも事件や事故等に巻き込まれという訳では無い。

何かしらの形で犯罪行為に手を染めようとする者が、犯罪行為を行う前に消されるという誰も知りもしない事実。

表沙汰にされない事により行方不明者は

一切の詳細が知られる事も無く、ただ数だけが一般のメディアの目に晒される。

犯罪が起きる前に犯罪の芽を潰す。そうやってこの国は治安を維持し続けて来たのだ

 

「・・・行方不明者の数は全てDAが関わっている。けど、それはラジアータってのに管理されてるから全く表沙汰にはされないんだよなぁ」

 

イルカの被り物をした男がブツブツと言いながらパソコンへ向かう。

その画面には様々な書き込みが集中していた。

ネット界隈でも一部の人間は、こういった事実を嫌っている者も居る。

だからこそ、パソコンのスキルを利用して様々な情報を掻き集める必要が有るのだ。

国がひた隠しにしている事実それだけを知りたいが為に危険を犯してまで

彼等はありとあらゆる情報を知るべく模索している。無論、ネットの世界もラジアータが常に目を光らせている

迂闊な事をすれば捕まりかねない

 

「どうすればコイツらを潰せるんだ・・・あの時、ドローンで捉えたコイツら・・・!」

 

別のモニターには女の子3人

赤い服にショートカットの子、青い服を着たのが2人。同じ黒髪だが片方は紫の目、そしてもう片方は青い目。

彼女達こそがリコリスと呼ばれる存在で間違いはない

 

「だぁーッ!解らん!!くそぉ・・・せっかく掴んだ手掛かりなのに!!」

 

悔しそうにモニターの前で俯く

だが、そんな中で何かを思い付いた

 

「そういえば・・・コレもリコリスがやったのか?」

 

ふとこの間のニュース記事をネット経由で取り出す。簡単に言えばヤクザの組員が路上で発砲事件を起こしたという物なのだが、何かが可笑しい。

相手は敵対している組のヤクザ1人。それに対して数十人掛りで発砲したが

返り討ちに合ったらしく、発砲した側が全滅するという本来なら有り得ない事。

だが、リコリスなら有り得る

そう思い、この前のドローンの映像を巻き戻す。

 

1人の少女が男を追い詰め、その男が咄嗟にナイフを引き抜いた所迄は普通だ。

だが問題は此処から。

男のナイフによる攻撃を素早く躱し、更に突き出して来たナイフを学生カバンの様な物で防ぐとそれを少女が自身の右側へ受け流し、その際の衝撃なのか男はナイフを落としてしまう。その後、少女は男の股下へ蹴りを放ち、男が崩れ落ちるという物。

 

「・・・僕の推測が正しければ、この発砲事件もリコリス絡みだろうな。後は画像を詳細に解析して・・・」

 

ブツブツ言いながらドローンの映像の少女を拡大し、画像を鮮明化していく

そして映ったのは未だ年端の行かない少女の顔。

 

「あーーッッ!!?コイツ、確か・・・えっと、思い出した!あの時コンビニで見た奴じゃないか!!」

 

遡る事、数週間前。

ドルフィがコンビニに買い物へ行った時の話だ。自分が良く行くコンビニで万引きが発生。逃げようとした男が店の外へ出てから直後、悲鳴が上がったと思うと駐車場のど真ん中で少女に取り押さえられていた。しかも見事な関節技を決められており、男がその場で悶えていたのを思い出した

 

「先ずはコイツからだな・・・。この赤い奴と残りの青いのも危険なのは解っているけど・・・楽そうなのを潰してやろう」

 

被り物の下でニヤリと笑う

 

「先ずはコレをこうしてっと・・・次にこれで・・・送信っと・・・。良し、これでいい!」

 

カタカタと何かを素早く打ち込むと

送信ボタンをクリックし、送信を終える。内容は[以前、助けて頂いたので直接有ってお礼をしたい。この顔写真の子なのだが名前が解らない]

という物。勿論、フェイクだが。

そして誘い出してからはどうするか?

決まっている、彼女を潰すのだ。

 

「確か此処のサイト・・・DAを良く思ってない連中の集まりだったよな。ふふ・・・悪く思うなよ?リコリス!」

 

ドルフィは得意気に匿名で書き込んでいく。

[この場所に今日、リコリスが現れるから、やっちまえば良い。]と

 

「ふふ・・・見せて貰うぞ?お前の実力・・・!」

 

ドルフィは、わざと彼等を挑発し現場へ嗾ける事にしたのだ。

自分の手の上で踊らされているとも知らず。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ーその頃ー

まだ店は開店したばかりだが賑わっている。その分注文も多く、千束とレナは振り回されていた。

1つのお客さんの注文が済めば、また別のお客さんの注文を聞く。

そこから頼んだ物の配膳とか色々をこなして行く

お客さんが粗方掃けてきた時、電話が鳴った

 

「はいはーい、喫茶リコリコの看板娘、錦木千束ですぅ♪ええ?ああ、居ますけど・・・要件は?あーはいはい、解りましたぁ、伝えておきます〜♪じゃまた〜♪」

 

いつものテンションで電話に出ては要件だけを聞き出して切る。そして受話器を置くと再び戻って来る

 

「レナぁ、この間の件でコンビニの人がレナにお礼言いたいんだってさー」

 

手招きするとポンポンと肩を叩く

 

「え?何でまた突然?」

 

キョトンとして首を傾げている

あまり記憶に残っていないが、お礼と言われると何処か引っ掛かる

 

「何か、お店の店長さんがね、万引き犯捕まえてくれて助かったからお礼したいんだとさ。いやぁ、私も鼻が高いねぇ」

 

何故か千束が得意気に鼻を鳴らす。

捕まえたのは千束では無いのだが

 

「千束さん何もしてないじゃないですか・・・それで、相手の方は何方に?」

 

苦笑いしながら聞き返す

千束は少し考えてから再度、話し出した。

 

「何か此処に来て欲しいんだって。ほい、コレあげる」

 

渡されたのはメモ帳に書かれた場所

しかも家の住所らしき物が記載されている

 

「そんじゃ、着替えて行ってらっしゃーい!」

 

グイグイと更衣室の方へ押され、押し込まれた後にドアを閉められる

やれやれと思いながら普段通りの制服へ着替え始める

 

「では、行ってきます」

 

着替え終わると店内へ戻る

すると千束から手招きされる

 

「次いでにコレも持って行ってよ。うちのコーヒー豆!あそこの店長さん、コーヒー好きだからきっと気に入る筈!」

 

コーヒー豆の入った袋を手渡され、それをビニール袋へ入れるとそれを片手に下げる。

 

「解りました、遅くならない様に成る可く早めに帰りますので」

 

小さく頷くと店の外へ出て行く

その様子を手を振りながら2人が後ろで見送る事になった

 

メモに書かれている指定された場所までの道のりは簡易的な地図になっていた。

コンビニが有り、そこから2つ目の角を左に曲がって、真っ直ぐ。

その後に信号のある通りを渡った先。

順序通りに進むと辿り着いたのは人の家でも何でも無い倉庫。

 

「・・・?道を間違えた?」

 

再度メモを確認する。その時、後ろから誰かに口を布で塞がれ何かを嗅がされる

そのまま、レナは意識を手放してしまう。

次に目を覚ましたのは倉庫の中

手は後ろで縛られている

カバンや持っていた袋も全て取り上げられている

 

「ん・・・?私は・・・」

 

辺りを見回すと数人の男達が此方を見ている。奥には小太りなのも居る

 

「コイツがリコリスって奴?まだ高校生位の子供じゃん」

 

やせ細った男が指をさす

その顔は、いささか笑っている様にも見える

 

「おい、見ろよ!銃入ってんぞ!やっぱり本物だ!しかもUSPじゃんよ!」

 

カバンを奥で触っていた男が銃を見せびらかしている。迷彩柄の服装を見る限り軍事オタクらしい。オタクの特集が組まれていたテレビ番組で見た事がある。

不覚だった。メモを気にしていた際に背後に気付かなかった事

 

「それにしても、俺達にもこんなチャンスが回ってくるなんてな。何だったらコイツで童貞捨てたって良い・・・しかも俺好みの子だから尚更、唆るぜ・・・フヒヒ・・・」

 

別の男がレナへ近寄って来る。

事もあろうに自分の髪を触られ、頭からつま先までを舐め回す様に見ている

 

「・・・縄を解け。今なら未遂で見逃してやる」

 

レナは男を睨み付け、縄を解く様に命令する。男はキョトンとした顔でレナを見ると急に笑い始める

 

「コイツ何言ってんの?wお前、この状況解って言ってんのか?wこれからお前は俺達に制裁されるんだぞ?国に高い税金払ってるこっちの身にもなれよ!!良く分からねぇ事に使いやがってさぁ!」

 

男は急に逆上し、レナの頬を引っぱたくと続いて腹部を殴る

やるのは恐らく制裁という名の強姦だろう。

 

「うぐぅッ!?ッ・・・!」

 

頬の痛みの次は腹部へ激痛が走った。

続いて今度は別の男が前へ来たかと思えば手にはナイフを握っている

 

「行方不明になってる連中、可哀想だよなぁ・・・?それも、お前らが関与してるんだろ?このクソ野郎!」

 

暴言を吐きながらナイフを首元へ充てられる

だが、突き刺す訳でも無く男はナイフで制服へ切れ込みを入れ始める

 

「ッ・・・!?何をする気だッ!?」

 

思わず飛び退こうとするが、それが出来ない。

そしてナイフを置き、両手を使うと左右に制服を引き剥がされる

破かれる音が聞こえたかと思えば、中のシャツが見えてしまう

 

「おい、見てみろよ。見た目もそうだが、良い胸してんぞ!?」

 

男はワイシャツも乱暴に引き裂くと

下着も確認し始めた

 

「へぇ、黒か・・・お前、エンコーやった方がモテるんじゃねぇの?この見た目だし、結構稼げるぞ?」

 

バカにした顔付きで此方を見ている

その間、レナは拾ったガラス片で縄を切り始めていた

 

「マジか?俺にも見せろよ!」

 

近くに居た2人も覗き込む様に見ている

数は知れた。奥に1人、手前に4人

さっき殴った奴が1人

合わせて6人がこの場に居る

下衆な笑みを浮かべながら見下ろしている。痩せてたり太っていたりと体型はバラバラだ。

 

「な、なぁ・・・もうやっちまうか?」

 

1人がニヤニヤしながらレナを指さし、

ゴソゴソと股の辺りを弄っている

 

「バカだなー、早えーよw順序ってもんが有るだろw」

 

近くにいた別の男が顔を近付ける

やはりその顔は下衆な笑みを浮かべていた。

 

「なぁ?そうだろ・・・リコリスちゃん?」

 

顎をグイッと持ち上げられる

顔をゆっくり近付けてくるのが分かる

キスするつもりらしい

 

「・・・悪いけど、お断りだッッ!! 」

 

素早く男の首元へ手刀を打ち込む

驚いた顔をしながら痩せ型の男が床へ倒れる

 

「うわぁッ!?いつの間に縄を!?」

 

近くで見ていた小太りの男が悲鳴を上げる

言ってしまえば今の状況は首に鎖の付いていた猛獣が自ら鎖を外して獲物へ襲い掛かろうとする事と同じなのだから。

 

「お、おい!早く押さえ込めよ!!」

 

手前に居たもう1人の小太りの男が指をさす

レナは座ったまま、近寄って来た小太りの男の腹部目掛けて右足で蹴りを打ち込む

 

「ぐぇええッッ!!?コイツ蹴りやがった!」

 

レナは立ち上がり、睨み付けると残りの数を確認する

 

残りは4人。カバンと銃は咄嗟のアクシデントからか男が手放したらしく、無造作に放置されていた。

 

「お前達が私へした行為は強姦未遂・・・だからリコリスの権限で消せる。元々、私は色々やり過ぎるから転属になった。けどそれも今は悪くないと思ってる・・・それに今日は止める人が居ないから尚更感謝してる」

 

冷めた目でレナは男らを見据えていた。

その直後、1人が近くの角材を手に持つ。最初にレナを殴った奴だ。体型はあからさま太っている。

 

「うるせぇ!!お前は俺達に黙って犯されりゃ良いんだ!!」

 

そんな事を言いながら男はレナを殴ろうとする。だが、振り下ろして来た方の腕を左手で受け止める、移動したかと思えば自分の肘で男の腕を殴る。悲鳴を上げたかと思った束の間、そのまま右腕を掴むとそのまま相手の背中の方へ腕を無理に押しやる

 

「いででで!!離して!悪かった!悪かったから!!」

 

男は角材を手放し、床へ落としてしまう。

 

「・・・私も怖かったですよ。貴方達に乱暴されるの」

 

ボソッと呟くと手を離し、敢えて向き合う形になる。安堵した男の顔を他所にレナは男の顎目掛けて右ストレートで殴る

 

バターンと男は物の様に倒れ、動かなくなった。

 

「こ、このぉおお!!僕は高校の時は柔道部だったんだぞ!?」

 

また別の男が掴み掛かろうとしてくる

柔道部と言える様な体型とは言い難いが

レナとの間合いが縮まった瞬間、男は仰け反って倒れてしまう

 

「え・・・あ・・・え?」

 

何が起きたか解らない

レナへ近付いた途端、綺麗なフォームから繰り出された彼女の右足による上段蹴りが男の顎へ直撃したのだ

 

「・・・柔術とは程遠い掴み方でしたね」

 

倒れた男を見下ろすと呟く。

これで残り2人

殺さないように加減はしたつもりだが

 

「く、くそッ!こんな上玉、滅多に手に入らねぇのに!!畜生ッ!!」

 

制服を切り裂いた男が再びポケットナイフを取り出し、構える

そのまま痩せている男はレナを見据えていた

 

「手が震えてますよ。そんなので私を刺せるんですか?」

 

レナは首を傾げる。だが、その表情は何処か冷たい。

相手を挑発する様に態と畳み掛ける

 

「思い通りにならないと直ぐ暴力振るうタイプですね、貴方。そりゃ嫌われますよ・・・カッとなって自分が抑えられない。違いますか?」

 

レナは挑発する。そして男は拳を握り締め、ナイフ片手に走って来る

 

「この・・・言わせておけば好き勝手言いやがって!!」

 

顔を真っ赤にしながらナイフを振り翳す。だがナイフによる攻撃はレナには当たらない。そして今度はナイフを突き刺そうと前へ突き出して来た

 

「死んじまえ、この野郎!!」

 

だが、男のナイフは刺さらなかった

間合いに入った途端、ナイフを持った右手首をレナに捕まれ、空いた左手で繰り出された掌底を顔面に食らわされてしまう

 

「なぁ・・・ッ!?」

 

ポロリとナイフを落とすとその場に倒れた。大の大人である5人が床へ倒れている。残っているのは迷彩柄のズボンと赤いシャツを着た男のみ。いつの間にか迷彩柄の上着は脱いでいた

 

「あ、あっという間に5人も・・・!?」

 

男は驚いた顔で此方を見ている

その表情は嘘だろと言わんばかりの顔だ。

 

「カバンと銃を返して下さい。大人しく渡せば怪我はしませんよ」

 

その間も近寄って行く。だが、いつ何をするかは解らない

すると男は咄嗟にカバンの近くに有った銃を拾って此方へ向ける

 

「へ、へへ・・・どうだ?これなら近付けねぇだろ?ほら、大人しく両手を上げろ!」

 

男はニヤニヤと笑いながら銃を向けている。まるで、勝ったと言わんばかりの顔をしている

 

「・・・銃、撃った事は有りますか?」

 

レナはボソッと呟く

 

「ああ?ガスガン、エアガン位なら撃った事有るぜ?これでもミリオタだからな!!」

 

ニヤニヤと笑いながら語る

自慢話なのか合間合間に長たらしい知識が入って来る。家に何丁有るとか、前の大会では優勝したとか何とか、かんとか。

 

「そうですか・・・なら、死ぬ前に1つだけ聞かせて下さい。何故、こんな馬鹿げた真似を?」

 

後ろの男達を見ながら話す

皆、ぐったりしており起き上がる気配は感じられない

 

「書き込みが有ったのさ・・・此処にリコリスが来るって!!そしたら本当に来やがった!アイツらはサイトで知り合った仲間・・・だから顔も名前も知らねぇ!だが、みんなDAに恨みを持ってる!何でもかんでも隠しやがって!!」

 

男は歯を食い縛るとワナワナと震えていた。どうやら、此処に居る連中は皆DAに対して一方的な恨みを持っている連中らしい。恐らく個人的な感情の方が強いだろうが。

 

「成程・・・それだけ聞けて良かったです。ですが・・・未だ私にはやる事が有るから死ねませんけどッ!!」

 

レナはポケットから何かを別方向へ投げた。その直後、男が其方へ向く。そして注意を逸らした途端にレナは物陰へ隠れる。

 

「クソッ!何処行きやがった!?」

 

男が辺りを見回している。

その間、レナは様子を伺いながら物陰を移動しつつカバンへと近寄ろうとする

 

「おい!出て来い!出て来なければ撃つぞ!?」

 

銃を四方へ向けながら男が叫ぶ。

焦っているのか、足が震えている様に見える。その直後、レナは移動中にガラスを踏んだせいで音を立ててしまう

 

「そこかッ!!?」

 

乾いた音と共に銃口から弾が放たれるが

外したらしく、弾は当たらない

寧ろ隙が出来た位だった。

その隙を逃さず、物陰から飛び出ると拾った自分のカバンから拘束銃を取り出し、振り向いた男へと向けた。

 

「動くなッ!!」

 

レナは拘束銃を向けながら膝立ちした状態で睨み付ける

今信じられるのはこの拘束銃のみ。

男は此方に銃を向けたままだ

 

「お前こそ動くな!!今度こそ、今度こそ当ててやる・・・!」

 

互いに睨み合う形になった

片方は実銃、もう片方は拘束銃。

この距離なら恐らく男も外さないだろう。だが突如として例の声がレナの頭の中響く

 

[使命を果たせ。お前の使命は何だ?]

 

レナは頭を抑える。激しい頭痛に襲われると片手で頭を抑えながら照準を辛うじて定める。だが、拘束銃はカタカタと震えている

 

「何だ?具合でも悪いのか?なら都合が良い、このまま消してやる!」

 

男は引き金へ指先を掛ける

ニィっと右側の口角が吊り上がった

 

「私の使命・・・ッ、それは・・・ッッ!!」

 

レナは深呼吸しつつ、照準を定め直す。

恐らく次で撃ってくるだろう

 

「1人でも多く・・・誰かを助ける事だぁッッッーー!!!」

 

乾いた音と共に男の銃から弾が放たれる。直後、左肩へ激痛が走るも構わず発射する。撃ち出されたワイヤーは男めがけて飛ぶと、巻き付いて身体の自由を奪う。両腕が縛られ、ふらついた所へ更に数発。男は完全に縛られる。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ッ」

 

レナは左肩を抑え、膝立ち状態から立ち上がる。そして男の手から銃を取り上げた。被弾した肩を伝って血が指先まで流れるとポタポタと足元へ滴り落ちる

 

「・・この人達はネットの情報を信じ込んで私を襲った・・・つまり・・・犯人は別に・・・居る・・・ッ」

 

そう言いかけた時、ふっと力が抜けて倒れてしまう。そのまま身体を起こす事も無く、目を閉じて眠ってしまった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ー数時間後ー

レナが次に目を覚ましたのは病院のベットの上。左肩にピリッとした痛みが走る。少し服をズラすと負傷した箇所にガーゼと包帯が巻かれていた。服も病人が着る様な物に着替えさせられている。

 

「・・・一体誰が?」

 

室内を見回していた時、部屋の引き戸がゆっくり開く。

 

「お、目が覚めた?先ずは・・・ごめんね、私も気付かなくてさ。後から店長さんに連絡したらそんな事言ってないって言われたもんだからさぁ、ビックリしちゃって・・・それで、たきなと2人で向かったら倒れてるのを見つけて此処へ運んだって訳。」

 

千束が飲み物を片手に入って来る

缶に入ったジュースを手渡すと近くの椅子へ腰掛けた

 

「幸い、弾は抜けてたから大丈夫。だけど完治するには1ヶ月は安静が必要だってさ・・・」

 

カシュッと飲み物のタブを開けると千束は飲み始めた。千束は指先で飲めば?とサインを出す。レナは頷き、同じ様に飲み物を飲んだ。

口の中に甘い味が拡がる

ふと缶を口元から離すとラベルを見る

そこにはフルーツジュースと英語で記載されていた。

 

「それ、私のオススメ。美味しいだろー?甘過ぎず、薄す過ぎず、程良い感じが良いんだよねぇ・・・たきなには内緒だぞ?これ、糖分多いから怒られるんだよぅ・・・」

 

にひひっと千束も缶を片手に笑っている。

 

「はい、内緒にしておきます・・・。そういえばあの人達はどうなるんですか?」

 

先程の連中の事を思い出した。

自分が捕らえた6人位の男達。

お互いの顔も名前も知らない。彼等が知っているのはお互いのハンドルネーム位。DAに対し過度な逆恨みをし、自分を襲った。彼等もまた消されるのだろうか?それが気掛かりだった

 

「・・・警察呼んどいた。まぁ、後の事はDAが消してくれるから大丈夫だよ」

 

そっと千束が近寄ると、彼女の方へ抱き寄せられる

 

「他人の心配も出来る様になったのは大きな進歩かもね・・・それにしても、結果はどうあれ良くやったよ・・・お疲れさん」

 

千束が顔を近付ける。その目は何処か優しく、包み込まれる様にも感じられた。

お疲れさんと言われ、レナは静かに頷く。その直後、千束の顔が更に近付くと柔らかい感覚が唇に当たる

 

「んむ・・・ッ!?」

 

だが気が付いた時には千束は唇を離していた。

 

「・・・ご褒美。コレも内緒な?」

 

千束は、にぃっと笑うと頭を撫でた

何が起きたのか解らない

唇からは微かだが炭酸ジュースの味がする。

 

「ちゃんと寝てろよー?また来るからさ♪」

 

立ち上がると2人分の空き缶を持ち、千束は手を振りながら部屋を後にする

その様子を見送るとレナはボーッとしながら天井を見ていた。

千束が廊下へ出て直ぐの通路の壁にたきなが寄り掛かっている。

 

「・・・長かったですね。随分と」

 

たきなは千束の方を見る

色々話していたのは解るが、その顔は冷静な様子だった

 

「うん、ちょっと色々とね。レナの話よるとコッチが嵌められたって事らしい」

 

空き缶をゴミ箱へ捨て、病院の外まで歩く。そしてその間も話を続ける

 

「・・・名前も知らない、顔も知らない。オマケに手掛かりは連中のスマホにあった匿名掲示板のみ。」

 

遡る事、数時間前。

現場へ駆け付けた際、男の近くに転がっていたスマホを押収しクルミに調べさせた。その匿名掲示板にはDAに関する事が色々記載されていた。

レナが襲われたのも関係が有るかもしれないとの事で、調査はクルミへ任せている

 

「どうします?手当り次第という訳には行かないでしょうし」

 

たきなは呟くと考え始める

すると千束は徐ろに口を開いた

 

「兎に角、今は情報収集!狙いがリコリスなら連中もまた何か仕掛けてくるハズ・・・。私の相棒を傷付けたんだ、絶対に許さない」

 

拳を強く握り締めると2人は病院を後にした。

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ーその日の夕方ー

百合と沙華は特命により、楠木から調査して欲しいという場所に向かっていた。

街からかなり離れた山奥。そこで不審な物を見つけたという情報を受理したのが全ての始まり。電車を降りた後に山道へ差し掛かる。そして彼女らはルートを頼りに山中を進む。日も傾き始め、辺りは少しずつ薄暗くなり始めた

 

「百合さん、こんな所に何があるんスか?・・・草木ばっかだしぃ。オマケに暗くなって来てますよ?悪い事言わないから、帰りましょうよー?」

 

沙華はブツブツ言いながら歩く

その顔には不満が溜まってる様で、早く帰りたいらしい

 

「いいから、文句言わないでさっさと歩いて!帰りに夕飯か何か奢ってあげるから」

 

百合も草木を掻き分けながら奥へ進む

そして小屋らしき物を発見する

 

「アルファ1、通路の有った小屋らしき建物を発見しました。これから中へ入ります」

 

端末で本部と連絡を取る。

片手に細長い懐中電灯を持ち、沙華へカバーを行う様に合図する。

2人は銃をカバンから引き抜くとドアの横へそれぞれ張り付く様な形となる

 

[アルファ1、突入を許可する。突入したら建物内部の写真を撮影し、その後速やかに撤退せよ。]

 

楠木から百合へ連絡が入る

現場の2人は銃を構えたまま、頷く

 

「アルファ1、了解。これより突入します・・・3、2、1、ゼロッ!!」

 

ドアを勢い良く開くと中へ突入する

百合は正面、沙華は突入と同時に背面をそれぞれカバーする。

建物の中は真っ暗で、唯一の明かりは百合の持つ懐中電灯のみ

 

「ほ、ホントに何か有るんスか!?お化けとか無理っスよ!?」

 

沙華はガタガタ震えている

そんな沙華を気に掛ける事無く、百合は室内の家具やテーブル、床下等を組まなく捜索する。

 

「・・・おわぁ!?」

 

沙華が何かに躓いて転んでしまう

思い切り前のめりで床に倒れる

 

「ちょっと、大丈夫!?」

 

百合が振り向くと手を伸ばす

沙華は起き上がると苛立っていた

 

「ああーもう!何なんだよ!!こんな所に変なの置きやがって!」

 

身体を起こして振り向く

だが躓いた何かは怪しく黒光りしていた

 

「まさか・・・これって!」

 

百合は懐中電灯でそれを照らす

白い布に包まれた物。そして躓いて転んんだ時のせいで布が捲れ、その黒光りする先が明かりで照らされている 。

布を全て取ると出て来たのはバラバラに解体された銃器。見た所、スナイパーライフルなのは間違いない。

「此方アルファ1、司令部、銃器を発見しました。恐らく・・・例の事件絡みの物だと思われます。」

 

百合は端末から楠木へ報告を入れ、その間に沙華は事前に渡されたデジタルカメラで写真を幾つか撮影していく

 

[アルファ1、他に銃らしき物は有るか?]

 

楠木から返事が帰って来る

 

「はい、他にはアサルトライフル・・・、拳銃も有ります。」

 

通信をしつつ、他を探る

沙華が近くから弾の入ったケースを見付けたらしく、手招きする

 

「弾薬も有りました・・・恐らく、これらの弾だと思われます。どうしますか?」

 

引き続き、楠木へ指示を仰ぐ

辺りは既に日が落ちて真っ暗だ

 

[アルファ1。ご苦労だった、現状を撮影後に速やかに撤退せよ]

 

楠木は最後の指示を飛ばす

 

「アルファ1、了解。指示に従い、これより撤収します」

 

通信を切断する。沙華に粗方写真を撮らせると建物から外へ出る

 

「さ、帰るわよ。沙華。」

 

振り向くと出て来るのを待つ

すると遅れて沙華が出て来た

 

「でも・・・何でこんなボロっちい小屋に銃やら何やらが・・・。」

 

沙華は首を傾げる

だが、その間も百合は黙々と歩き続ける

 

「・・・現場の写真撮影と報告のみで撤収。一体何の為に?」

 

百合もまた疑問に感じながら山道を進む。暫く歩くと人通りの有る場所に出てると、近くの駅で銃器回収班と合流。現状を伝えると2人はホームへと向かう

 

「ちぇーっ、車で来てるなら送ってくれても良いのに・・・。」

 

沙華は外の車を見ながらボヤく。

外に居る回収班は何やら色々と話し合っている様子だった

 

「何か隠してる・・・司令も、本部も。」

 

百合は電車が来て、乗ってからもずっと考え込んでいた。

沙華は疲れたのか百合の前で眠ってしまっている

 

「私達が知るべきでは無い何かが有る・・・」

 

外の景色を見ながら呟く。電車から見る民家の明かりは辺りを通り過ぎる度にポツポツと後方へ流れて行った

2人が住んでいる街の駅に着いたのは約1時間30分後。その後は駅近くのファミレスで百合の奢りとして夕飯を食べた後にDAの寮へ向かって行った。

 

 

表にされず、世間には知られるべきでは無い真実。それが百合達の知らない所で少しずつ動き出している事を未だ知る由もない。知ろうにも全てはDAの最高機密による管理の元、厳重に管理されている。決して漏れ出す事の無い真実、そして違法な手を使ってでもそれを知ろうとする者。それは終わりのないイタチごっこなのかもしれない

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。