リコリス・リコイル/their other story 作:秋乃楓
相変わらず喫茶店リコリコは客の出入りが絶えない。これまでは1人多かった為に店の回転スピードは程良い位。
だが、1人減っただけで回転スピードが若干だが下がってしまった気がする
「どひゃあー!何だか知らんけど凄い事になってるよ!?あ、レナぁー、向こうのお客さんにお絞りを・・・」
ぐるっと千束が振り向く
だがお絞りを持って行ったのはたきなだった。
「彼女は今、入院中ですよ。忘れたんですか?全治1ヶ月、安静です」
たきなが千束の方を振り向く
何日か前、レナは左肩を負傷してしまい
現在は入院中。オマケに戦闘中に負った擦り傷や切り傷も多かったらしく、それ等の完治も兼ねて1ヶ月だった。容態次第では少し伸びるらしいが
「・・・解ってるって。つい癖でさ」
千束は呟くものの、その表情は何処か寂しげに見えた。いつもなら返事が返って来るのに、返事が来ない。
千束からすれば心に少し穴が空いた様に感じられる
すると別の客が来店して来る
「いらっしゃいませー!奥の席空いてますので、どーぞ!」
いつもと同じでニコニコしながら接客し、席へ案内をする。何だかんだで忙しいピークの時間帯が過ぎると気が付けばもう昼過ぎ。
客足もだいぶ落ち着いて来た為、一旦休憩へ入る事に。
そして千束は店のトイレの個室に1人、篭っていた
「うーむ・・・考えれば考える程、解らなくなるなぁ・・・。誰かが意図的にやったのか?それとも・・・」
うーんと悩みながら個室の便器に座りつつ、ブツブツと呟く。
唯一解るのは匿名掲示板に何者かの書き込みが有り、それを通じてその掲示板の仲間が来たという事。
「・・・つまり、最初から私達の事は知られてた事になる。何処の誰か知らないけど、やってくれんじゃん・・・」
千束はニヤリと笑う
恐らく相手は何かしらの手段で此方の事を知り、レナの事をターゲットにして奇襲を仕掛けた。つまり、此方は監視されているという事になる
「監視・・・監視・・・、となると監視カメラか?或いはドローン・・・」
千束は考えながらもトイレを後にする
「随分長いトイレでしたね。何か詰まってるんですか?」
カウンターの席に居た、たきなが声を掛ける
「んんー?ちぃーっとね・・・ふふふ」
笑いながらたきなの肩を叩く。
その顔は、どう見ても何かを企んでいる顔にしか見えなかった
「おおーい千束、例のサイトの件だが・・・」
クルミがタブレット端末を持ちながらパタパタと駆け寄る
そこには2ヶ月前の写真が載っていた
「コイツで間違いない、お前達の写真を載せたのは!それにこの写真の角度、恐らく・・・」
クルミが言い掛けた時だった
「ドローン・・・でしょ?つまりは空撮だよ、空撮。私達は誰かさんに撮られてたって事・・・!」
千束は頷くとそう答える。
あの時、千束達は何者かによりドローンで撮影されていた。しかも感知されにくい角度での撮影
それからクルミがこう続ける
「ああ。それに、他の書き込みを見る限り・・・この前の事件を扇動したのはレナを撃ったこの男。そして、その中で最も怪しいのはコイツ。イルカのアイコンなんだけど、此処のサイトはお互いの名前が表示されないから連中はドルフィと呼んでるみたいだぞ?書き込みを見る限りだと・・・色々、DAに関する事も書いてる。そしてお前達の写真を載せたのもコイツだ」
コンコンと画面の部分を指で小突いてみせる。因みに主犯の男はミリタリーと呼ばれており、そのままだった
「つまり・・・このドルフィという奴が1番怪しい・・・そういう事ですよね?」
たきなも考える様な仕草をする
とは言え、当のドルフィが何処に潜んでいるか迄は解らない
「そうだけど・・・肝心な居場所迄は辿れてないんだ・・・。サイトは既に閉鎖、今見せたのは閉鎖される前に見つけて慌てて撮った奴・・・」
クルミは両手を上げるとお手上げの顔をしている。辿ろうにも時間が掛かり過ぎるらしい
「証拠隠滅か・・・やってくれたな・・・」
千束は頭を抱え、天井を見ている
せっかく掴んだ手掛かりがスルりと逃げてしまった。名前や彼?がやった事迄は解っているが、それ以上の事は掴めなかったのだ。そうこうしている内に仕事の依頼が舞い込む。声色が機械音の怪しいヤツが居るという物
「・・・千束、罠かもしれないぞ?この前の事だってある。用心するに越したことはないんじゃないか?」
クルミが部屋へ戻る直前に振り向く。
だが予想外の返事が返って来る
「・・・それでも行くしかないっしょ?例え罠だろうと何だろうと。私らのやる事には変わりは無いでしょ?」
頷くと千束は親指を立ててみせる
その表情には一切の曇りは無い。
「千束の背中は私が護ります!それに・・・彼女、レナの事も有りますから千束が無茶しない様に私が付いてないと」
たきなは椅子から立ち上がると頷く
「さぁて、どう出る・・・ヤバさ満々のイ・ル・カさん?ふふふ・・・いっひひひ!」
その後、千束とたきなは着替えを素早く済ませると再び戻って来る。店のドアノブへ手を掛けると
「「行ってきます!」」
いつもと同じ挨拶を交わす。そして2人は店の外へと駆け出して行った
「・・・アイツらの事だ、どれだけ警告してもそれすら跳ね除けて行くんだろうなぁ。さて、ボクはゆっくりネットでも・・・」
クルミはその姿を見送ると自室へ戻って行った。
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ー数十分後ー
千束、たきなは指示された場所へ到着する。そこは綺麗な広場だった
辺りを見回すと噴水が真ん中に有り、絶えず水が出続けている
「本当に此処ですか?」
たきなは千束と共に警戒しつつ、周囲を見回す。だが自分達以外の人の気配が無い。まさに不自然極まりない
「うん、此処で間違いない・・・」
千束がそう呟いた時、ドクロの仮面の姿を現す。何度か見掛けた事のある姿。赤く光るドクロの仮面。イルカのヤツでは無かった
「ッ・・・アグレッサー!」
たきなは咄嗟に銃を引き抜こうとする。
だが、千束により制止させられる
「何故止めるんです!?仕留めるなら今でしょう!?」
たきなは千束の方へ訴え掛けた
だが、千束は首を横に振る。
「今、此処でたきなが殺しても何も意味が無いよ・・・。ねぇ!やり合う前に幾つか聞いても良い?」
千束は事もあろうに敵であるアグレッサーへ声を掛けたのだ
本来なら絶対に有り得ないのだが
「何だ?アランのリコリス・・・いや、錦木千束。そう呼んだ方が良いか?」
機械音の混ざった様な声で喋り出す。
どうやら向こうも武器を抜く気配は無い
「これ、アンタの所のマークでしょう?横を向いたワシのマーク・・・。アンタのホルスターにも同じの付いてた」
千束はそう呟くとカバンからナイフが入ったホルスターを見せる。そこにはワシのマークが刻印されていた
「・・・何故それをお前が持っている」
突如、アグレッサーの声色が変化する。
少しでも変な動きをすれば間違いなく撃ってくるだろう。
「知り合いが持ってたの。気になったから私が借りてただけ・・・これ、何のマークなの?」
千束が更に続ける
このナイフとホルスターは1ヶ月前にレナが持っていた際、敵を突き刺そうとした所を千束が止め、その上で危険だと判断し取り上げた物。そして刻印されているこのワシのマークを千束は気になっていたのだった。
「そのマークか?それは我々、ルミナのシンボルマークだ。ワシは強さを象徴し、誇張する・・・そういう意味を持つ。」
ルミナという名前は千束にも聞き覚えが有った。テレビや新聞でも知らない人が寧ろ少ない程、有名だった
「・・・ルミナ教団。様々な事に手を染めて拡大した宗教団体・・・そしてアラン機関とも深い繋がりを持っている。調べればそんなのパパッと出て来るよ。そうでしょ?」
千束は意地悪そうに呟く。アグレッサーを嘲笑うまでとは行かないが、それでも充分だろう。
「ふふ・・・ククク・・・ご名答だ、我々はお前の言う通りの存在であり・・・今ではあらゆる場所に拠点を持つ。そしてアランは我々と協力関係に有る。恵まれない子供の中にも才能を持つ子供が必ず居る・・・彼女、彼等に対して機関が支援を行い、その才能を育てる・・・」
千束の方を見ながらアグレッサーは話し出した。アラン機関・・・それは千束にとっては切っても切り離せない物。
千束の心臓は普通の人間の心臓では無く、アラン機関が作った人工心臓。
それを提供したのがアラン機関だ。
嘗て、自分に人工心臓を与えた彼の顔が脳裏を過ぎる
「はぁ・・・またアランだよ。それで?何企んでるの?ま、どうせロクな事考えてないと思うけど?」
千束はジロっと睨み付ける
よりによって聞きたくない名前まで出て来た。遡る事、2年前。旧電波塔にて発生したあるテロリストと機関の関係者の共謀により行われた策略。
千束の人工心臓はそれより前、機関が送り込んだ者の手で破壊され、2ヶ月というタイムリミットを強いられてしまう。
それでも立ち向かい、そのテロリストとの決着の末、心臓の限界でこのまま死ぬかと思われたが、千束は生きていた。
その後、千束は新たな人工心臓を入れ替える事で延命され今日まで生きている
「そんな事、決まっている。自らの才能を拒絶し、受け入れない者へ使命を果たす様・・・促す事。そして使命を果たさせる事。それが目的だ」
アグレッサーはブツブツと話し続ける。
そしてこう続けた
「キミもそうだろう?自分をリコリスと語っておきながら使用するのは非殺傷弾・・・。リコリスなら、人の命を奪わなくてどうする?犯罪の芽を刈るのが貴様らの使命だろう?」
アグレッサーは千束と睨み合う
千束の顔からは既に笑顔が消えていた
「・・・リコリスだからって殺しをしなきゃいけない訳じゃない!私の命は誰かを助ける為に使う!!その為に貰った生命だから!!!」
噴水が止まり水の音が掻き消される。
その時、既に2人は銃を向けあっていた
「救世主にでも成った気で居るのか?どれだけ語ろうが、そんなのは貴様の戯言だ・・・お前が助けた命と助けられなかった命・・・何方が多い?」
そう続けた時だった
「そうだとしても・・・それでも私は、1人でも多く・・・誰かを助けるッッ!!」
千束は走り出すと連続して弾を発砲する
建物に反響し、音が響き渡った。
放たれた弾はアグレッサーの腹部へ命中するが、ケロッとしている
「ゴム弾がオレに効くと思うな!!」
今度はアグレッサーが発砲、千束の方へ弾が飛び交う。だが慣れた感覚で千束は弾を避けると千束が屈んだと思えば今度は後ろからたきなが数発発砲、アグレッサーの肩や足へ命中するがやはり倒れない
「ッ・・・やはり弾が効かない!」
たきなは千束の方を見る
「ククク・・・言ったろう?オレには通用しないと!!」
アグレッサーは走り、間合いを詰めると千束へ蹴りを繰り出す
右足は千束の脇腹へ命中し、吹き飛ぶと地面へ倒れる
「千束!?このッ!コイツ!!」
アグレッサーは千束を気にせず、たきなへ狙いを定める
弾は全てアグレッサーの身体に当たるがやはり効かない
「射撃の腕は良い・・・だが、冷静さに欠けやすい!」
アグレッサーは、たきなへ向けて走り出し、間合いを詰めると引き抜いたナイフを振り翳す。ヒュンッという風切り音がするが、たきなはナイフを咄嗟に避ける
「せやぁあッ!!」
今度はたきなが蹴りを繰り出すも防がれてしまい、片足が振り払われる。その直後、アグレッサーがナイフを刺突すると避けきれず、掠ってしまう。
つうっと左腕から血が流れる
「こんなものか?セカンド・・・!」
アグレッサーとたきなはお互い睨み合いながら、格闘戦へと縺れ込んだ。
振り翳して来たナイフを避け、隙を見てたきなが反撃するが防がれる
これを何度か繰り返した後、アグレッサーは片手でたきなの腹部へ拳を打ち込んだ
「・・・中々楽しかったぞ? 」
アグレッサーは項垂れるたきなを投げ捨てる。
「うぐッ・・・げほッ、ごほッ・・・!」
腹部に受けた痛みが強すぎて立ち上がれない。たきなは千束の方へと目をやる
だが千束の姿は何処にもない
逃げたのだろうか?だとしたら、それでも構わない。千束さえ生きていればそれで・・・
「こんにゃろぉおお!!!」
直後、叫び声が聞こえた。
ブシャアアアア!!!という噴出音と共に声の方から白い煙が立ち上る
千束は逃げた訳では無く、消火器を取りに行ったのだった
辺りが白い煙に包まれると千束の手が自分の手を掴む
「走れる?」
千束がそう呟くと、たきなはコクリと頷く。そして手を引かれて立ち上がると同時にその場から移動した。
「くッ・・・目眩しか・・・!」
アグレッサーは赤い目を光らせながら煙の中から出て来る。そして撃ち尽くしたマガジンを交換しつつ、辺りをキョロキョロと見回していた。
未だ煙は若干だが残っている
「どうします?銃弾による射撃も近接による攻撃もダメですし、もう打つ手は・・・」
たきなは腹を擦りながら呟く
まさに万事休すという状態。迂闊に手を出せば間違い無く死ぬ
そんな中、千束が1つ提案した
「・・・たきな、残りの弾は?」
ふと呟くと千束は自分のマガジンを新たな物へ差し替えていた
「中の弾は4発・・・ですがマガジンなら後2つです。」
たきなはカバンを片手で指さし、手に持っていた銃のマガジンを外して見せる
「成程ねぇ・・・正に万事休すかぁ。私もマガジンは後2つ・・・」
噴水のある広場から少し離れた物陰。
そこに2人は逃げ込んでいた
正面からマトモにやり合えば勝ち目は無い。相手は左手にナイフ、右手に銃をそれぞれ持っている
だが向こうは此方を生かして帰す訳が無い。殺せるなら間違いなくこの場で殺すだろう
「・・・よし、賭けてみっか!カミサマに!」
千束は深呼吸するとニコッと笑う
だが何をするのか解らない
「はぁ・・・解りました、援護しますから無茶だけはしないで下さいよ?」
何か作戦が有るのだろうと察すると
たきなは頷く
「頼んだ、相棒!」
千束は物陰から飛び出す。それを見逃さずにアグレッサーは即座に照準を合わせて発砲する。その弾を千束が走りながら避けて行き、そしてそのままスライディングで距離を詰める。相手との距離が縮まる前に発砲し、左手のナイフを弾き飛ばした
「やはり、目だけは良いらしい・・・ククク、そうでなくては・・・!」
千束の方へ振り向くとアグレッサーは再び発砲しようと試みる。だが直後に背中に微量に衝撃が走った。
たきなが物陰から身体を出し、丁度アグレッサーの背中に当たる位置へ発砲する。カツン!カツン!という金属音が響き、弾が跳弾する。その間も発砲し続け、空になったマガジンを切り替えて尚も発砲し続ける。
「ちぃッ、余計な小細工を・・・!?」
そう言い掛けた時、ガツンと何かが腹部へ当たる。千束が銃のスパイク部分をアグレッサーの腹へ突き付けていた
そして至近距離で何発も何発も撃ち込む
「普通に撃っても効かないなら・・・この距離で当てれば良い・・・!倒れろぉおッッーー!!」
バキッという音が響くとアグレッサーは悶絶する様な悲鳴を上げた。
そして弾を全て撃ち切った途端に仰け反るような形で倒れてしまう。
「カミサマは・・・こっちに微笑んでくれたよ・・・」
千束は立ち上がるとアグレッサーを見下ろす。
当たった証として赤い硝煙が立ち上るが
ピクリとも動かない
「やった・・・?」
たきなは駆け寄ると千束の横へ立つ
そしていつ動いても良い様に拘束銃を片手に隠し持つ
すると仮面の目が再び赤く光り始める
「ッ・・・成程・・・近接射撃でアーマーを損壊させ・・・そして損壊した箇所への発砲・・・か。やはり・・・要注意リストの相手だけは有る・・・」
アグレッサーは突如、話し出した
本来なら千束のゴム弾は着弾すると相手側に死ぬ程辛い激痛が走るらしい
その為、それを数発以上も食らって動けているのは稀なケースという事だ
「・・・何で自分から此処へ誘い出したの?しかも態々、こんな目立つ所に」
千束は銃を持ったまま話し出す
確かに変だ。誘い出して仕留めるには此処では人が疎らだが居る為に目立ってしまう。しかもハロウィンと誤魔化すには未だ季節が先だ
今は夏らしい季節の真っ只中。
「此処が・・・思い出の場所・・・だからだ・・・」
アグレッサーは呟く
思い出の場所?彼女か友人、或いは家族の事を指すのだろうか?
とは言え、どういう形であろうと想像は出来ない
「今から・・・10年前・・・未だこうなる前に・・・此処へ来た・・・あの子と一緒に。とても・・・喜んでいた・・・。いつもは教団の中や廊下、部屋の中しか知らない・・・。籠の世界から飛び出した鳥・・・それと同じだ・・・。あの子は・・・噴水をとても・・・気に入っていた・・・。此処で食べたパフェも・・・。あの子の笑顔が・・・脳裏に焼き付いて離れない・・・」
アグレッサーは先程と同じで機械音混じりで話し続ける。
此処は、彼の言うあの子との思い出の場所。だが何故思い出の場所で戦わねばならないのか?それが腑に落ちない
「あの子って誰?そりゃ聞くのが不躾なのは解るけど・・・答えてよ。私も聞きたい」
さっきから千束は気にしていた
話の中に出て来る、あの子。
その正体が不明瞭なのだ。
「良いだろう・・・あの子の名前は・・・玲奈・・・」
アグレッサーは、玲奈という1つの単語を発する
下の名前らしいがそれ以上は解らない
「葉月玲奈・・・それが彼女の名前だ・・・。彼女は・・・教団に引き取られる前・・・、視力が悪く・・・常に誰かが付き添う形でなければ・・・歩けず、日常生活もままならない。だが・・・アラン機関は彼女に角膜移植を行い・・・助けたのだ・・・」
葉月玲奈。そう語られた名前には
千束の聞いた事のある名前の中には該当し無かった。
それも当然だ、今聞いたばかりなのだから。
「アランが角膜移植手術ねぇ・・・それと葉月玲奈さん。この人は生きてるの?」
更に千束は質問を続ける
「生きている・・・お前達の中のセカンド・・・お前の一つ下の歳だ・・・」
今のたきなの年齢は17歳。そして玲奈は16歳。丁度、たきなの一つ下位らしい
「私の下・・・?でも、そんな人居ます?知り合いならまだしも・・・」
たきなはそう言われると少し考え込む
そんな歳の者は聞いた事が無い
「・・・居るよ。私達の間近に1人」
千束が口を挟む。その目は何かを思い詰める目だった
千束は薄々だが察していた
だが、確定するには未だ証拠が幾つか必要となる
「クク・・・どうやら・・・何かに気付いたか?・・・まぁ、気付いても何も出来はしない・・・」
するとアグレッサーの仮面の目の色が消え、動かなくなる。どうやら気を失ったらしい
「後はクリーナー呼んで、何とかしてもらおう・・・」
千束、たきなは銃をしまうとスマホで千束が連絡を取った後にその場を後にした。時刻は既に夜の19時になっており、この辺りは人の気配すら無い。
街灯のある路地を2人は歩く
「葉月玲奈さん・・・千束は知ってるんですか?」
たきなは路地を歩きながら呟く
未だに色々と考えているものの思い付く所か、自分には何も心当たりが無い。
「今は何も考えなくて良い。1人、厄介なのが減ったと思えばそれで良いよ・・・」
何処かぶっきらぼうに千束は答えた
鷲のマークのナイフホルダー。そして葉月玲奈という名の少女。千束にはそれだけで充分だった
「・・・たきな、私ちょっとレナの様子見てくる。先帰って良いよ、お疲れさん」
千束は立ち止まると路地を左へ行こうとする。
「それなら、私も・・・」
そう言い掛けた時
「・・・ごめん、今日は私だけにして欲しい。そういう日も有るからさ」
千束は両手を合わせるとごめんと一言、謝ると病院の方へ掛けて行った。
「千束・・・」
その背中をたきなはただ、見つめる事しか出来なかった。あんなに思い詰めた様な顔をした千束は今まで見た事ない
恐らく、千束は何かに気付いている
だがこれ以上は何も解らない。普段はこれでもかという位、笑ってはしゃいでいる千束。彼女が見せた寂しいとも悲しいとも言えない表情だけがたきなの中に残ってしまった。