リコリス・リコイル/their other story 作:秋乃楓
突如として銃声が響き渡った。
場所は工事中の建物の中
ベージュ色の制服を着た少女が誰かを追い掛けている。彼女が追い掛けていたのは自分より立場が上の筈のセカンドリコリスを狙っていた
「ッ・・・!?どうしてリコリスが私を!?」
追われていたのはレナ。
同業の筈なのに何故、自分が追われているのか?自分にはその意図が掴めない。
狙われる理由すら不明瞭だ。
「・・・止まりなさいッ!」
その間もサードリコリスの少女は走りながら撃って来る。
そしてレナが物陰へ隠れると見失ったのか辺りを探し続けている
「どうして・・・こんな事に・・・ 」
レナは息を切らしながらスマホを見つめる。電波は圏外の為、当然だが通話は疎か連絡すら出来ない
しかも発砲する事さえも出来ない状態。そして、レナは思考を巡らせる事になってしまったのだった
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ー遡る事、数時間前ー
レナは千束から買い物を頼まれ、外へ出ていた。店で出すメニューの1つ、錦木千束スペシャルエレガントパフェに使用する具材が多いせいで他のメニューにも支障が出始めた為。
それに、このパフェは千束の気分次第で使用する盛り付けの具合も変化するし、
オマケに1200円もする。
その為、店の経営を圧迫しているメニューでもあるのだ
そして今回、こうして買い物に出ているのだ
「餡子と・・・白玉粉と・・・後は・・・」
大型のスーパーへ訪れると、買い物のメモを見ながら商品を探す。
そもそもメニューを考えた本人が買出しに行くべきなのだが、千束は忙しいから代わりに行って欲しいと両手を合わせて懇願して来た。
買い物の量はそこまで多くない為、商品が見つかりさえすれば直ぐに済む話。
だが、リストの最後にあった普段店で使っている小豆が品切れ。やむを得ず小豆以外の商品を購入すると店を後にした
「小豆が売り切れ・・・。そうなると、ちょっと遠くなるけどあそこのスーパーしかないか・・・」
普段買い物をしているスーパーから離れ、歩いて大体15分。そこにもう1つスーパーが有る
小豆が無いと色々と支障が出てしまう為、其方のスーパーへ向かう事に。
そして歩き続けて15分、漸くスーパーへ到着。肝心の小豆は未だ残っていたらしく、それを手に取ると足早にレジへ。
会計を済ませると遅くなってしまった分を何とか巻き返そうと少し早歩きでスーパーを出た。少し歩いて行くと人の気配を感じる
この辺りは特に人通りが多い為か、サラリーマンや学生、子供や老人達で溢れている。
「・・・今日もいつもと変わらない、か」
その光景を立ち止まって眺めていた時
1人の少女がレナの右横へ離れて立っていた。街中でも偶に見掛けるベージュ色の制服を着ており、サードリコリスと呼ばれている。
リコリスは主に3段階に分けられている。
彼女の様なベージュ色の制服はサードリコリス。レナや、たきなの様に紺色の制服はセカンドリコリス。千束、百合が着ている赤い制服はファーストリコリス。
それぞれ能力に応じたランク付けがされているのだ。
「あの・・・何か?」
視線を気に掛けたレナは声を掛けた。
すると、少女はレナに対して銃を向ける
そして狙いを定めると今にも引き金を引こうと言わんばかりの視線で睨み付ける。
「ッ!?私は何もしていない!銃を下ろして!」
慌てて制止するのだが、聞く耳は持たない。彼女が向けているのはHK45T、45口径のハンドガン。装弾数は10発だ
今、2人が居る辺りは人通りが殆ど無い
つまりはリコリスからすれば敵を殺すにはうってつけの場所でもある。
「・・・くッ!!」
レナは後退り、様子を伺う。
だが今のレナは丸腰と言っても過言では無い。何故なら店の買い物の帰りであり、普段の様にカバンや銃は所持していないのだ。
「・・・抵抗するな!!大人しくしろ!」
少女はレナへ向かって叫ぶ
だがレナが彼女に撃たれる理由や動機はは見当たらない。スーパーで買い物した時も金は支払ったし、何か犯罪らしき事をした覚えも無い。
「貴女は何かの誤解をしている!私は何もしてない!!だから、銃を下ろして!」
そう言った途端、発砲音と共にレナの頬を弾が掠める。つうっと血が頬を滴る
「警告はした・・・次は頭を狙う!」
再び発砲する構えを取った途端、レナは後退りながら合間を取りつつその場から走って逃げ出す。
直後、銃声が響くとレナの直ぐ横にあった看板へ命中し穴が空いた。
どうやら本気で此方を狙っているらしい。そして、彼女の追跡を掻い潜る内に辿り着いたのが建設途中であるビルの工事現場。そして冒頭へと至る。
逃げてる最中に少女が撃った弾が買い物袋に命中してしまい、中に入っていた物を全てばら撒いてしまった。
向こうは未だに此方を探し回っており、資材を退かす音や歩き回る音が聞こえて来る。オマケに携帯電話は電波が通らない為、画面のアンテナには圏外と表示されている。恐らく、向こうは聞く耳を持たないので仮に見つかれば今度こそ撃たれる。話し合いを命乞いと取られる可能性も充分に考えられる。
かと言って、此方から動いて仕掛けるにもリスクが大き過ぎる。
すると、レナはある事に気付いた
自分の今居る位置から少し離れた場所にコーヒーの空き缶が落ちている。
作業員が捨て忘れたのだろうか?
今は何とかして相手を制圧し、自分の無実を証明しなければならない
「今なら・・・ッ!」
少女の足音が遠のいた時に
レナは物陰から身を出し、音を立てない様に空き缶へ近寄るとそれを拾う。
ラベルを見る限り、自販機でしか売ってないコーヒーの缶だった。
空き缶なら投げる事で相手の注意を引くのにうってつけだろう。
後は武器が有れば互角とは言い難いが、戦えるかもしれない
「後は・・・コレを・・・こうしてッ・・・」
レナは鉄骨と鉄骨の間にロープを巻き付ける。実はこのロープ、資材現場の近くに有った物。それを逃走中に回収したのだ
「よし・・・!」
レナは一通りトラップを仕掛けると再び物陰へ隠れる。そして頃合を見計らうと手にしていた空き缶をわざと投げ捨て、音を立てる。すると金属製の階段を駆け上がる足音が聞こえて来る
「今、確かに音が・・・!」
少女は頻りに辺りを警戒し、銃を四方へ向けている。その時、足元のロープに気付かずに躓いてしまう
そこをレナは見逃さず、飛び掛った。
「やぁああッッ!!」
レナは少女へ飛び掛る。そして組み合う形になるとレナは相手の左右手首を両手で掴む。
そして銃口を無理やり自分から逸らすと同時に相手が数発ほど発砲、弾はあらぬ方向に飛んでいく。
だが向こうも同じリコリス。想定外の動きだろうと対応しようとする。
今度は少女側が仕掛け、片手を無理に振り払うと、レナの腹部へ目掛けて左手の拳を繰り出す。がら空きとなったボディへ入るかと思われたが、レナは咄嗟に右足を折り曲げて腹部の前に上げて拳を防ぐ。そして、少女の隙を突いたレナが左手で彼女の襟を掴み、自分の右側へ無理矢理押し倒すと、少女の右腕を踏み付ける。少女が苦痛の表情を浮かべた途端、手にしていた銃を奪い取ると遠くに投げ捨てた。
「・・・何故こんな事を?」
レナは見下ろしながら呟く
若干だがその声には苛立ちが篭っている
だが何か様子が可笑しい。
直後に何処からともなく声が響く
[よう、久しぶりだな?ルミナのリコリス・・・。お連れさんは元気にしてるか?]
声が出ていたのは少女を組み伏せた際に落下した彼女のスマホから。
非通知という文字が画面に不気味に映っている
[そう怖い顔すんなって、可愛い顔が台無しだぜ?オレは見てみたかったんだ・・・リコリス同士で戦わせたらどうなるかってさ。だからもっと見せてくれよ?]
恐らく、不明だが直接的な原因はこの声の主なのは解った。でも何故攻撃を仕掛けて来たのかは解らない
「・・・ふざけるな!何が狙いだ、何故こんな馬鹿げた真似をする!!」
レナはスマホへ向かって叫ぶ。
工事現場にレナの声とスマホの音声だけが響いている
[決まってんだろ?お前の本気を見てみたいからさ・・・。あの時みたいな目、もっかい見せてくれよ・・・]
声の主が言ったあの時とは、彼女が後に転属となる前の出来事だった。
仲間を助ける為に独断で先行し、人質とされていた仲間すら跳ね除け、自分の体術で男を制圧し後に射殺。
[お前の目、凄かったぜ?まるで絶対に殺してやるって殺意剥き出しの目だった・・・。それにお前の体術、動き、どれも訓練された人間の動きだった・・・何処で習った?]
DAでは様々な戦闘訓練を積む。無論だが先程の様な近接戦、普段の銃撃戦等。
だが、レナの場合は移送前に多少なりとも経験が有る。それをDAで更に磨きを掛け、相手が男だろうと誰であろうと制圧出来るように訓練されているのだ
[まぁ、そんな事はどうでもいい・・・。それとソイツには暗示を掛けている・・・お前を俺達の様なテロリストとして認識する様にな。・・・計画変更だ、ソイツを殺せ。]
指を鳴らす音が響く
すると少女が左手を器用に使い、地面に落ちていた釘をレナの腿へ突き刺した
「いッッーー!!?」
痛みと共に思わず足を退けてしまう。
それを好機と見たのか、無理やりレナを払い除けて立ち上がる。そして投げ捨てられた銃を取りに行こうとする
「ッ・・・行かせない!」
痛みを堪えながらレナは少女へしがみつく。だが少女に振り払われて倒れてしまう。少女はレナを見下ろし、不気味な笑みを浮かべると彼女の腹部を何度も何度も足で踏み付ける。
「がッ!?あぅッ・・・ごほッ、ごほッ・・・うぐぅッッ!?」
踏まれる度に呼吸がマトモに出来なくなる。そしてトドメと言わんばかりにボールを蹴る様に力強く腹を蹴られた
「うぐぅッッ!?」
レナは目を見開くと噎せながら悶えている。少女はレナから離れ、銃を取りに向かい始める
[ おいおい、どうしたぁ?このままだとマジで死んじまうぞ?それとも仲間だから手が出せねぇとか?美しい友情だなぁ・・・おい?]
スマホから声が響く。此方を嘲笑う様にゲラゲラ笑いながら喋っている。
「黙れ・・・ッ!くぅッ・・・ふぅッ・・・ふぅッ・・・!!」
先程のダメージが続いてるらしく、喋っているだけでも痛みが走る。
腹部を抑えながら話すのがやっとだ
[なら、もっと抵抗してみろよ?ほらほら、足掻け、もがけ!!くくくッ・・・!]
言われなくたって解ってる。
一歩間違えれば自分は死ぬ
買い物帰りに在らぬ疑いを掛けられ、追いかけ回された挙句に犯罪者という濡れ衣を着せられて銃で撃たれ、死ぬのだ。
あの人達の顔も笑顔も二度と見る事は出来ないまま、自分は此処で無惨に死ぬ。
そう考えている時、少女はカツンカツンと足音を立てて戻ってくる。右手には拾ってきた彼女の銃が握られていた。
「ッ・・・!!」
レナはある光景を思い出していた。
DAに入ってからも厳しい訓練が続き、いつもの様に勝てる筈の無い相手に挑んで、倒された時。遂に立ち上がる気力が無く、地面に伏せたままになってしまった。今までも思っていたが、何故こんな痛い思いをしてまで戦うのか。
その意味が解らなかった。
自分が戦っていた男がレナへ呟く
「今は訓練だが、本番なら敵は待ってはくれない。お前が抵抗しなければお前が死ぬ。誰かを護っている場合、お前が戦わなければお前も、お前の護っている人も死ぬ。もしそれが自分の大切な人だったらどうする?どんな状況だろうと決して諦めるな。抗い続けろ、そうすれば必ず勝機は有る」
どんな状況だろうと諦めない事。
腕や足が折れても、醜く這いつくばっても良い。彼女も奴に戦わされているに過ぎない。ならどうする?答えは1つしかない
「私は・・・まだやれる・・・」
腹を抑えながらその場に立ち上がった。
刺された右足も痛い。だけど、このまま何もせず死を待つよりはマシだ
大事なのは考えるよりも身体を動かす事。そして、ゆっくり構えて見せる。
少女もまたレナへ銃を向け、構えている。
[へへ・・・立ち上がったか?その目、良い目だな・・・そうだ、その目が見たかった!!獲物を前にして確実に殺すっていう目!ふふふ・・・あっははははは!!!]
先程から気になるのは男が視ているという事。何処から?この辺に監視カメラは見当たらない。
今は兎も角、目の前の彼女を制圧し銃を奪い取る事。それだけだ
そして、先に少女側が仕掛けた。
いきなり引き金を弾くと即座に発砲する
だがレナは放たれた弾を避けたのだ。
そして間合いへ入ると彼女の右腕を掴んで銃口を逸らせ、トリガーへ自分の指を重ねさせると近くに積まれていた土嚢目掛けて発砲させる。銃声が数発響くと弾が切れたらしく、カチャカチャという音だけが響く。一度突き放すとレナは右足で少女の腹部を蹴り、怯んだ所へ掴み掛かって距離を近付ける。すると胸元のリボンにカメラが有るのを見付け、無理矢理それを引きちぎって投げ捨てた。
そして今度はそのまま服の袖を掴むと自分の右足を相手の右足目掛けて振り払い、転倒させると右手で顎を強めに殴る。
そして彼女から離れるとリボンを踏み付けてカメラを壊し、スマホも電源を無理矢理切った。
幸い、後頭部を強打する直前に袖を掴んだ事で最悪の事態は防げた。
レナもまたその場に力尽きたのか座り込んでしまう
「終わっ・・・た?」
キョトンとした顔で少女を見つめる。
制圧した少女はその場で気を失っていた。
レナも自分のスマホを見ると
着信履歴が10数件、メッセージも同じくらい届いていた。どうやら圏外だった位置から離れた為、電波が通る様になったらしい。
そして恐る恐る電話を掛けてみる
「あー!!やっと繋がったよぉ・・・何してんの、サボり?そういう風に育てた覚えは有りませんよ、お母さんは!!全くもう!!買い物頼んだだけでこんなに時間掛るとは思わないでしょうよ、普通!お陰でこっぴどく、たきなに叱られたんだからぁ!!早く帰って来てね!それじゃ!」
千束が一方的に話しただけで通話が終わる。ハッと我に返るが、買い物した物はこの騒ぎで全てお釈迦になってしまった。そして流石に倒れている子を放置する訳には行かず、救急車を現場へ呼ぶと彼女の搬送を依頼しその場を去った。
「買い物・・・結局ダメになっちゃった・・・」
ばら撒いてしまった品物を探し、それを拾い集めるとそれを持って店へと戻って行った。
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「お帰り・・・何処で油売ってた?貴様 」
店へ帰ると笑顔で千束がレナへ近寄る
いつもの様な笑顔とは全く異なる
「・・・ごめんなさい、取り込み中だったので」
取り敢えず誤魔化そうとするも、ジロジロと顔や身体を見られる
頬には擦り傷、着ていた服は砂や埃で汚れている。右足の脹脛辺りからは血の跡が残っていた。
「ホントの事言って。何か有ったんでしょ?」
千束は溜息をつくと顔を近づけた。
そして額をコツンと指先で小突いた
「・・・リコリスに襲われました。相手はサードです。」
レナは自ずと口を開くと経緯を詳細に話した。相手は誰かに暗示を掛けられており、此方をわざと狙う為に襲った事。
銃を持っていなかった為に格闘戦になってしまい、こんなにボロボロになってしまった事も全て
「なーるほど・・・それで電話通じなかったのかぁ・・・」
座って座ってと千束に促され、座敷の有る席へ座らせられる。
少ししてから救急箱を持った千束がやってくると中からキズ薬や包帯を取り出す
「ほぉーら、動かないの!ちょっと染みるぞー?」
千束は慣れた手付きでレナのケガを手当していく。頬から始まり、足や腕等を手当すると他にケガが無いか探り始める
「うっわぁ・・・お腹も痛そうだねぇ、大丈夫?」
千束はレナの服を脱がすと患部へ湿布を貼り、そこに軽く包帯を巻いた
「これで終わり。ったくもー・・・無茶するんだから・・・」
ポンポンとレナの頭を軽く叩く。
「でもまぁ、無事で良かった・・・。けど・・・なぁんでサードリコリスが・・・?暗示とか掛けるなんて聞いた事無いし」
視線をカウンターのたきなへ送る
するとそれを見た、たきなはコクリと小さく頷いた。
「・・・ほんじゃ、今日は1日安静にしててね。動けても明日から!解った?」
レナの方を見ると首を傾げ、彼女の傍らに有った食材を回収しカウンターの奥へ戻って行った。
「解りました・・・お疲れ様です」
頷くと立ち上がり、厨房を抜けた先の部屋へ向かう。普段は休憩室として使われており、真ん中にちゃぶ台が置かれている。レナは座布団へ座ると、そのまま横になる。そして、そのまま天井を見上げていた
「・・・サードリコリスを捕まえて暗示させ、襲わせる。か」
目を閉じると先程迄の事全てが蘇ってくる。男の声は以前出会った神代と見て間違いは無いだろう。
だが何故、暗示を掛けて自分を襲わせる様に仕向けたのだろうか?自分とリコリスを戦わせる為とは言っていたが、真の目的は不明のまま。
考えていても拉致があかない。
そして気が付くとレナは眠気に襲われ、その場でスヤスヤと眠ってしまった
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・・・気が付くとレナはビルの中に居た。
辺りはガラスが飛散し、壁には弾痕が残っている。
手には普段使っているタイプの銃では無く、見た事の無い銃だった
手にしていたのはグロック26アドバンス
と呼称される銃。そして慣れた手付きでマガジンを取り替え、予備のマガジンを装填し、撃てる状態へ切り替えると奥へ進む。
物音と共に銃を向けるとそこに居たのは
千束だった
「え・・・どうして・・・!?」
咄嗟にレナは構えると千束を見据える。
すると、千束もまた此方へ銃を向けた
だが何を言っているかは解らない
何かを叫んでいる?そういう風にも見て取れる。必死に何かを訴え、此方を見ているが聞き取れない。その顔は焦っている様にも見えた
しかし、レナは千束に対し躊躇う素振りも無く引き金を弾いてしまう。
銃声と共に千束へ弾が放たれるが、普段の様に避けることは無かった。
弾は千束へ命中してしまい、その場に倒れる。そして血を流さず、電源を切った玩具の様になり動かなくなってしまう
「あ・・・ああ・・・ッ!?あああああッッッーーー!!!?」
思わずレナは手にしていた銃を落とすと
千束へ駆け寄る。だが目を開けたまま彼女は動かない。
胸元には弾が当たった痕跡がそのまま残っており、傷口が赤く滲んでいる
「嘘だ・・・嘘だ嘘だ嘘だ嘘だッッ!!違う、違う、違う、違う!!私じゃない・・・私じゃないッッ!!!何で・・・どうして・・・ッ!!?」
頭を揺さぶりながら必死に否定する。
黒く、綺麗な長い髪は振り乱された事で乱れてしまう。撃った時は無意識で、気が付いた時には千束を撃っていたのだ。
「私が・・・千束さんを・・・殺した・・・?」
そう呟くとカチャッという音と共に誰かが正面から銃を向ける。そこに居たのはたきなだった
「たきなさん・・・、違うんです・・・私・・・ッ、私じゃない・・・ッッ!」
そう彼女へ訴える。そして微かにたきなの唇が動いた。
「ひ、と、ご、ろ、し」
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そして銃声と共にレナは目を覚ました。
「嫌ぁああああッッッ!!!!」
大声を上げて目を覚ますと何かを探る様に座布団を跳ね除け、そして様子を見に来た千束がレナを止めに入った。
「ちょい、ちょい、ちょい!?おい、どうした、落ち着けって!レナ!!?」
何とか宥めるとレナを抱き締め、彼女を制止させる。
「夢・・・?千束・・・さん?」
レナは我に返ると千束の方を見ていた
「・・・落ち着いた?」
千束はレナの顔を覗き込むと安堵したのか彼女の背中を撫でていた
「怖い夢でも見たんだろ・・・?泣いてるぜ?」
千束はレナの目元へ指先を這わせ、涙を拭った。
「すいません・・・私・・・」
レナは目を逸らすも千束はそれ以上、何も言わず再び抱き締めた。
レナの過去は彼女から聞いており、大体知っているが深くは追求しなかったのだ。もし色々聞けば彼女は壊れてしまうかもしれないから。
そう思うと尚更聞く事は出来なかった。
レナが起きた時には丁度、店も閉店する時間帯だった事から手早く閉店支度だけ済ませるとレナと共に帰宅。
その日は彼女が夜に再び眠るまで、千束はずっと傍に居たのだった。