リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

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18_friend or stranger

ー都内某所ー

スーツ姿の男が何かから走って逃げていた。両手で銀色のアタッシュケースを抱えながら必死に逃げる。

その顔は焦っている様に見えた

男はある企業に務めており、役職は部長。それも努力して出世した訳では無く、社長に気に入られる形で出世したのだ。ある事を条件に

 

「はぁ・・・はぁ・・・ッ、此処まで来れば・・・」

 

一通りの無い場所へ来ると立ち止まる

そして辺りを見回す。追っ手は来ていない様だった。どうやら巻いたらしい

 

「くそッ・・・!何なんだよ!?いきなり来たかと思えばいきなり、ぶっぱなしやがって・・・」

 

1時間前、男の職場へ1人の少女が来た。

未だあどけなさの残る顔付き、そして綺麗な紫色の髪。そして自分が名前を語った途端、発砲して来た。自分を殺す気だったらしい

取り押さえに入った数人をその場で撃ち殺し、1人が掴み掛かろうとした途端、いつ引き抜いたか解らないが左手のナイフで刺されていた

咄嗟にアタッシュケースを持って男はその場から逃走し、今に至る。

突如、誰かの声が後ろから聞こえた

 

「О, вы закончили играть в пятнашки?(あら、鬼ごっこはお終い?)」

 

海外の言葉で少女は男へ話した

振り向くと自分が見た少女で間違いは無かった。街灯に照らされ、黄色の目が光っている様にも見える

 

「・・・Я думал, ты будешь более интересным... жаль.(もっと楽しませてくれると思ってたのに・・・残念だわ)」

 

流暢なロシア語を話すと男の方へ1歩ずつ歩みを進めていく

その間、男は後ろへ後退りを始める

 

「な、何が目的だ!?このケースは死んでも渡さないからな!!」

 

思わず男が少女へ向かって叫ぶ

すると少女は歩みを止めた。

 

「Вам не нужно знать.

От вас больше нет никакой пользы.(貴方が知る必要は無いわ。貴方はもう用済みだから)」

 

そして無表情のまま男の片足を撃ち抜いた。悲鳴とともに血が地面へ滴り落ちる

 

「Вы пытались слить информацию об Ордене во внешний мир. Этого никогда нельзя допустить... Вот почему я здесь. Чтобы заставить тебя исчезнуть...(貴方は教団の情報を外部へ漏らそうとした。それは決して許されない事・・・だから私が来たの。貴方を消しに)」

 

「くそッ・・・ああ、くそぉおおッッ!!全て上手く行ってると思ってたのに・・・!何処で情報が漏れた!?」

 

男は必死に考えたが検討が付かない。

言葉が解らなくても動作で解る。彼女は俺を殺す気だと言う事が

そして少女は歩みを再び進めていく

 

「От имени Бога я сужу этого человека. Я заставлю его заплатить за свои грехи смертью...(神に代わり、私がこの者を裁きます。罪は死を持って償わせます)

 

そして男の前へ来ると額へ銃口を突き付ける。そして首を傾げながら見下ろしていた。

 

「ま、ま、待ってくれ!!そうだ、幾ら欲しい?俺の立場なら幾らでもお前に払ってやれる!だから殺さないでくれよ!?な?頼むよ・・・!今日の事は全て水に流してやるから・・・!!」

 

男は少女を見るや否や、突如として命乞いを始める。

その様子は哀れとしか言いようが無い

大の大人が自分よりもだいぶ歳下の子に命乞いをしているのだから。

 

「Правда?(本当に?)」

 

ゆっくりと首を傾げる

すると男はコクコクと何度も頷く

だが、少女は容赦無く引き金を弾くと男はその場に倒れて動かなくなる。

そして赤い血液が地面へドクドクと拡がっていく。

 

「Звучит глупо. Я ни за что не помогу тебе.(バカみたい。助ける訳ないのに)」

 

少女は男の持っていたケースを回収し、その場を去る。そして誰かと端末で話している

 

「Цель была застрелена, а предназначенные для нее предметы также были изъяты. Теперь мы разойдемся.(対象は射殺、目的の物も回収した。これより撤収する)」

 

通信を切ると少女は市街地へ消えた。

黒い制服。制服の腕左右には紫色の花の刺繍。変わった容姿の少女もまた、後にリコリスと並ぶ組織の1人である事を誰も知らない

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

そんな事が有ったのも知らず、千束とレナは朝まで寝ていた。ここ最近はずっと千束に抱き締められながら寝ている。

多分、扱い的には抱き枕的な物なのだと思うが。

 

「・・・もう朝。この人はまだ寝てるし」

 

レナは身体を起こすと千束を見つめる。

昨日、店で寝ていた時に見た悪夢が未だ引っ掛かっているが、それでも仕事をしなくてはならない

そんな事で休めるなら誰だって休む。

 

「未だ起きないし・・・シャワーでも」

 

レナは立ち上がるとシャワーを浴びに風呂場へ。器用に服を脱ぐと鏡の前で自分の身体を見つめた。

腕には包帯とガーゼが巻かれ、腹部にも包帯が巻かれている。頬には絆創膏が貼られていた。

右足の脹脛辺りも同じで包帯とガーゼが巻かれている。

 

「また傷が増えちゃった・・・」

 

レナは下着と包帯やガーゼを一通り外し、裸のまま浴室でシャワーを浴び始める。ここ最近はリコリコでのバイトやリコリスとしての仕事が立て続けに増えている。それに加えてテロリストにも狙われるケースが増えてきた。

恐らく、自分なら簡単に潰せると踏んでいるのだろうか?

そう思いながら身体や頭を洗い、一通り済ませると再びシャワーで泡を流す。

そしてそれ等を終えて再び脱衣場へ戻って行った。

 

「もしかしてお風呂入ってんの?朝ご飯出来てるぞー?」

 

千束が風呂場の外から声を掛ける

レナは身体を拭きながら返事をすると

着替えてから出て来た

 

「髪の毛ちゃんと乾かさんとダメだって言ってるじゃんよー?乾かしたか?」

 

レナの方へ振り向くと千束は首を傾げる

 

「ええ、乾かしました・・・いただきます。」

 

頷くとテーブル近くの椅子へ腰掛け、

2人で朝食を食べる。

 

「後で包帯変えるから、終わったらそのまま待っててね。それと今日は少し遠回りして行こっか。時間なら未だ大丈夫だし?」

 

千束は、にひひっと笑うとご馳走様と元気に挨拶し食器を流しへ入れた。

少ししてからレナも食べ終わると、挨拶してから同じ様に食器を流しへ。

そして患部の包帯やガーゼ類を再度、千束により付けられる。そしていつも通りリコリスの制服へ袖を通すと2人で家を後にした。

 

2人は店へ向かう通りを少し遠回りしながら歩く。そして千束から口を開いた

 

「・・・最近思うんだけど、何処か無理してる?」

 

振り向くと千束は首を傾げた

 

「いえ、別に・・・そんな事は無いと思います。普段通りですよ?」

 

レナは首を横へ振る。本人はそんなつもりは無いらしい

 

「そうかなぁ?無理して色々やんなくても良いんだぞ?確かに自分から進んでやるのは大事だけどさ・・・もっと頼っても良いと思うけどなぁ?」

 

というのも、ここ最近はレナが率先し色々やっている。リコリコでのバイトも仕事を振られる前にやったり、気付いたらもう終わっているなんて事も。

リコリスの仕事でも同じで千束の指示を受けてから直ぐ動いている

要は気を張りすぎているのだ

 

「・・・もっと仲間に頼れという事ですか?私は仲間に背中を任せるのは好きじゃないんです。もし、それが命令で有れば合わせますが」

 

立ち止まるとレナはじっと千束を見ている。指示通りに動いて任務を遂行する

それ以上に何が必要なのか。

良く分からなかった

 

「指示とか、義務とか、命令じゃなくてさ・・・もっとこう、私とかたきなを当てにしても良いって事。前から思ってたけど、レナは固すぎる気がするよ?もっと力抜いても良いと思うけどなぁ」

 

千束は色々と言葉を並べるとレナへ話した。だがレナは納得がいっていない

 

「私は元からこういう性格です。・・・固いとか、暗いとか、笑わないとか今までも色々言われましたが、それが私ですから」

 

ぷいっと顔を背ける

レナは千束に対し言葉を荒らげると歩き出した

 

「待ちなってば!まだ話は・・・!」

 

千束はレナを追い掛け、彼女の後ろを歩いて行く。そしてレナの左肩を右腕で掴んだ

 

「離してください!もう話す事は有りませんから!」

 

振り払うと千束を睨み付ける

歯を食い縛り、強めに拳を握り締めていた。

 

「ちょいちょい、何でキレてんの?私はそんなつもりで言った訳じゃ・・・!」

 

千束も思わず口調を荒らげてしまう

だがお互いに喧嘩っぽくなってしまった。

 

「・・・失礼ですが、余計なお世話です!!合わせて欲しいならそう命令すれば良いじゃないですか!」

 

レナは大声で叫ぶ

そしてその場を早足で去ってしまった。

 

「あーあ・・・怒らせちゃった・・・」

 

千束は頭を抱えながらレナの後を追った

 

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

店へ着いてからも2人の仲は酷い物だった。喧嘩とまでは行かないが、お互いにギクシャクした様子。

特に千束の方は影響が大きいらしく、話し掛けようとしては無視されるか答えても必要最低限の事しか話さないの何れか。くだらないジョークなど以ての外だった

 

「たぁきぃなぁ〜・・・どうしよぉ・・・」

 

千束はレナの見てない所でたきなに泣き付いていた。千束はどうやら打つ手が無くなったらしい

 

「はぁ・・・千束の事ですから、また何か適当な事言ったんじゃないですか?」

 

じぃーっと千束の方を見つめる

千束の事だから大体は予想がつくが

今回の件もそうだろうと思っている

 

「私はただ、もっと私達に頼っても良いんじゃないかなぁ・・・?って言ったら怒っちゃってさぁ」

 

ぶぅーっと頬を膨らませると壁に寄り掛かっていた

 

「成程、話は大体は解りました・・・これは私でも無理な話ですね。千束が頑張るしかないかと」

 

微笑むとたきなは仕事へ戻って行った

 

「うぇええ・・・どうすんだよぉ・・・」

 

千束もフラフラと頭を抱えながら再び仕事へ戻って行ったのだった。

そしてその日の夕方

いつも通りリコリスの仕事が入る。

そして千束はたきなを呼ぼうとする

 

「ねぇ、たきなぁ一緒に・・・」

 

「私は洗い物が未だなので。レナ、代わりに行ってあげて下さい」

 

たきなは掃き掃除をしていたレナへ声を掛けた。無論、洗い物は既に終わっているのだが

 

「私ですか?・・・良いですけど」

 

レナは千束を見て溜息をつくと、箒を片付けてから着替えに向かった。

そして着替えてから戻ると2人して店の外へ出ると現場へ向かったのだった

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

着いたのはビルの中。そこで行われている取り引きを阻止しろという物

恐らく、銃器か或いは薬の類では無いかとされているが細かい事は解らない

 

「さぁて・・・さっさと・・・っておいぃ!?レナぁ、先走るなって!」

 

辿り着くとレナは先に走って向かってしまう。その後を追い掛けて千束はビルの中へ入って行った

 

「ちょっともう・・・まだ怒ってんの?」

 

立ち止まったレナの肩を掴むと千束は首を傾げながら呟く

 

「・・・違います!ほら、あれ!」

 

レナが指をさすと何か様子が可笑しい。

指定の取引場所まではこの通路の先

だが道中、人が何人か倒れている。

銃撃戦が有ったのか壁や床には弾痕が残されていた

 

「皆、死んでる・・・お?これはさっき死んだばかりか・・・」

 

千束は倒れている男の1人へ駆け寄ると

未だ若干、温かい事に気付く。

息こそしてはいないが先程死んだのだろう。千束はレナに銃を抜く様に指示し、更に廊下の奥へと向かった。

 

そして、突き当たりに有る室内へ入る。

広めの部屋でデスクワーク用のパソコンやら何やらが並んでいた。

室内は紙が辺りに散乱、パソコンも倒れていたり、液晶画面が割れていたりと散々だった。辺りにはスーツを着た男の他にも女性らしき人も倒れていた

2人は懐中電灯を点けて部屋を進む

 

「硝煙の匂いがします・・・あと血の匂いも・・・」

 

レナと千束は警戒しながら進む。

そして応接室の所まで来た

情報が正しければ、取り引き場所はこの中だが

 

「いい?私の合図で突入するから、未だ動いちゃダメだからね?」

 

千束はレナの腕を軽く掴み、警告する

そして小さくレナが頷いた

 

「3、2、1・・・ッ!!」

 

千束がカウントし部屋のドアノブを回して勢い良く開けて中へ入る

だが室内の人間は誰1人生きていない

皆、頭や胸、腹を撃ち抜かれて死んでいる。横の数人だけが刃物による切創で死んでいた。

 

「こりゃひでーな・・・皆殺しだよ・・・。うっわ、ご飯食べられなくなりそう・・・」

 

千束は男らの死体の状態を見ていた。

どれも重役らしい立場なのは解ったのだが誰が殺ったのかは解らない

 

「・・・?」

 

レナはふと、窓のブラインドを少し指で開く。すると自分達が入って来た入り口から出て行ったであろう人影を見つける。解りにくいが黒っぽい制服を着ているのは解る

 

「千束さん、リコリスが!」

 

振り向いて千束に知らせる

 

「え?・・・楠木さん間違ったのかなぁ?」

 

千束もレナの方へ駆け寄ると窓の外を見る。そして咄嗟にスマホを取り出し、電話を始める

 

「・・・もしもし、センセ?私、千束。頼まれた依頼現場へ来たんだけど皆既に死んでたよ。他のリコリスが先に来たのかなぁ?」

 

千束はブツブツと話を続ける

そして通話を終えてスマホをしまった

 

「リコリスは私達以外に此処に来てないってさ・・・。つまり・・・さっき見たアレはリコリスじゃないよ」

 

再び窓の外を見る。人影は無くなっていたが

 

「なら・・・リコリスを装った何者かがこの人達を殺した。そういう事ですか?」

 

レナが千束の方へ振り向く。

そして現場から撤収しろという指示が降りた事を千束が伝え、2人はビルを後にした。

 

「・・・結局、分からず終いだったねぇ。オマケにグロい死体ばっかり残してくれちゃってさ」

 

千束は溜息をつくとレナの方を見る

考え事をしているのか、ずっと黙っている。

 

「なーに思い詰めた顔してんの?さてはアレかぁ?夕飯の事かぁ?」

 

にぃーっと笑いながら顔を近づける。

 

「ち、違いますッ!私はただ・・・さっきの事が気になってるだけですから!」

 

話し掛けられると我に返ったレナが咄嗟に否定して来る。夕飯の事では無いらしい

 

「じゃあ何?・・・私の事とか?千束さんなんて嫌いですー!とか?」

 

冗談で千束は言ってみた

何処か意地悪そうな顔をしている

 

「ええ、嫌いですよ?だってズボラ極まってますからね。オマケに寝相悪いし、片付けもしないし」

 

突如として予想外の反応が帰ってきた

 

 

「えええ!?嘘、マジ!?じ、冗談がキツイぜぇ・・・レナちゃあん・・・?嘘だろぉ・・・千束さん嫌われちゃったよぉ・・・ショックだよぉ・・・」

 

千束がガックリと項垂れてしまう

溜息をつきながらフラフラと歩く

 

「・・・冗談です。嫌いならこうして居ませんので」

 

レナがボソッと呟く

それを聞いた千束は立ち止まると振り向いて来る

 

「お?冗談でも言って良い事と悪い事が有るじゃろーて!こんにゃろー!」

 

千束はレナを抱き上げると、ぐるぐる回し始める

 

「ちょっとッ!?何してるんですか!?下ろして下さいよ!」

 

レナは下ろして欲しいと頼むが、千束から下ろす気配は感じられない

 

「ダーメ!私が満足するまで下ろしませーん!さぁ、可愛くて美人な千束さん、こんな事言ってゴメンなさいって言ってみ!」

 

ぐるぐる回しながら千束は笑っている。

まるで楽しんでいる様に

 

「美人とかは盛り過ぎでは!?普通にゴメンなさいで良いと思いますけど!?謝りますから下ろして下さい!」

 

レナはぐるぐる回されながら突っ込む。

そして回転が止まっても未だ抱っこされたままだった。

 

「あー、面白かった!ふふふ、普段マジメだけど、焦るとあんな顔するんだねぇ・・・」

 

ニヤニヤしながら千束は笑っている

そしてそのまま近くのベンチへ座らせた。

 

「だ、誰だってあんな顔します・・・!ぐるぐる回されたら余計に・・・」

 

ボソッと呟くと目を逸らした

人通りが少ないとはいえ、実際は恥ずかしいのに変わりは無い

 

「何となく解ったよ・・・レナの気持ち。そりゃ、そうだよねぇ・・・いきなり頼れなんて言っても無理だもんなぁ。DAに居た時の話も聞いてるけど、仲間って言ってもあくまでチームのだから余計に困惑するよなぁ・・・」

 

千束はベンチの背もたれへ寄り掛かると足を組んで腰掛けた。彼女は千束達の元へ転属になり、此処までは肩書きだけの仲間という認識で過ごして来た 。

だが、少しずつ心を許し始めている

いきなり頼れと言われて困惑していたらしい。

 

「・・・私は友達とかそういうのは未だ良く解りません。仲良くしろと言われれば仲良くはします。だから・・・ 」

 

すると、千束はレナの手を握って来た

 

「大丈夫、私が友達第1号になってあげよう!たきなが2号で・・・クルミが3号・・・かなぁ?でも、私はキミに会えて嬉しい。初めて会った時からずっと嬉しいのは変わらないよ?毎日一緒に居て、ご飯食べて、仕事して、一緒に寝る。それだけでも充分過ぎる位に嬉しい。だから、何もかもレナ1人で全部抱え込む必要なんて全く無いって事!皆、あまり口には出さないけどレナに会えて嬉しいって思ってるよ。だからみんな仲間!」

 

にぃっと笑うと握った手を軽く振る

レナは少し間を開けてから小さく頷いた。その顔は先程の思い詰めた顔より軽くなった様にも見える

 

「私も・・・誰かにそう言える日が来ますか?千束さんの様に・・・」

 

レナがゆっくりと口を開く。今回の自分は手を差し伸べられた側。

そしていつか自分も誰かに手を差し伸べられる日が来ると思うと少し戸惑っていた。今の千束みたいに言えるか解らないから。

 

「大丈夫、きっと来るよ。だから今は色々と勉強しよう?レナもきっと私みたいになれるから。それは私が保証する!」

 

その考えを否定したり、笑ったりせず

千束は真っ直ぐに受け止めた。

この人は何処までも真っ直ぐで純粋。

そして眩し過ぎる位に明るい。

そんな千束がレナにとっては太陽の様に見えた。

 

「うっし!色々解決したし、帰ろっか!」

 

千束は手を離し、元気に立ち上がると背伸びをする

 

「・・・千束さん」

 

レナもまた立ち上がると千束を呼んだ

そしてゆっくりと振り向く

 

「んぉ?どーし・・・んッ!?」

 

直後、千束の頬にレナの唇が当たる

そして思わず千束は後退ってしまう

 

「ちょいちょいちょい!?友達って言っても未だそういう仲じゃ・・・!?」

 

千束は顔を真っ赤にして見ている

どう見ても動揺していた

 

「この前の病院の時のお返しです。さ、帰りましょう」

 

レナはクスッと微笑むと先に歩き出す

 

「あー・・・すっごいモヤモヤするぅ!もーう!待ってよぉ!」

 

その後を千束が追い掛けて行った。

千束はレナが何処と無く明るくなったのを知ると嬉しそうな顔でそれを見守っていた。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その日の夜。いつも通り千束は家のテレビで洋画を見ていた

テーブルにはお菓子やら飲み物やら出しっ放しのDVDが散らばっている

そして本人はポリポリとポテトチップスを食べている。

レナは既にベットの上で眠っていた。

いきなり、千束の携帯が鳴る

 

「誰だよ・・・こんな夜中に。全くもう・・・」

 

スマホを開くと、そこには非通知と表示が。どう見ても怪しい

 

「・・・非通知ぃ?何でまた」

 

千束は疑いながら電話に出る

 

「・・・もしもぉーし?何処の何方ですか?こんな夜中にレディに非通知で電話して来るなんて不届きだと思いますけどぉ?セールスならお断りでーす!!」

 

若干イライラしながら通話を始める。

そして相手もまた話し始めた

 

「Алло? Вы Первый Ликорис Нисики-Чисоку?(もしもし?貴女がファーストリコリスの錦木千束?)」

 

相手は外国の言葉で話して来る。何て言ってるかは千束にも解るが

 

「あー、あー!んッ、んんッ!Откуда вы это знаете? Откуда вы?(何でそれを知っているの?貴女は何処のどちら様?)」

 

千束も相手に合わせた言葉で喋り始める。

 

「Хмм... Бинго. Я - Юкина Канзаки... человек схожей с вами профессии.(ふふ、当たりね。私は神崎由紀那、貴女と似た職業の人間よ)」

 

神崎由紀那とそう名乗り、自分も千束と同じ職業の人間だと答えた。

 

「Похожие профессии? Вы имеете в виду лакрицу? Что эта лакрица делает здесь в такое время?(似たような職業?つまりリコリスって事?そのリコリスがこんな夜中に何の用?)」

 

千束は問い詰める様に話を続ける

そして由紀那という少女はこう話した。

 

「Теперь я просто хотел сказать "привет".

Скоро увидимся снова где-нибудь? Ну, спокойной ночи... приятного вечера.(今はご挨拶しようと思って。また近い内に何処かで会いましょう?それじゃ、おやすみなさい・・・それでは良い夜を)」

 

そう言い残し、由紀那は電話を切ろうとする。

 

「Немного, немного! Я еще не закончил говорить о...!(ちょいちょい!?まだ話は・・・)」

 

そう言いかけた時には既に通話は切れており、ツーツーと音が鳴っていた。

 

「何なんだよもう・・・非常識かよ・・・はぁ、変な奴・・・」

 

千束はブツブツ言いながらスマホを置くと再び映画を見ていた。神崎由紀那、自分と同じリコリスと似た職業としか語らなかったが謎だけが深まるばかりだ。

そう考えている内に千束はソファで寝落ちしてしまったのだった。

 

「・・・錦木千束。彼女が一番警戒しなくては成らない相手。」

 

スマホを手にした由紀那は人が誰も居ない通りで立ち止まる。彼女が居たのは旧電波塔付近。そしてそれを見上げていた

 

「私はこの街の景色、風景、人。それ等全てが好きじゃない・・・特に全てを表沙汰にせず、ひた隠しにし続ける国は特に大嫌い。そんなモノ、全て壊してしまえばいい・・・私の、私達の手で。」

 

少しずつ辺りが明るくなる。日が登り始めたのだ。この街が動きだす風景、それを好む者も居れば、拒む者も居るという事。まるで正反対な2人が向き合う日は来るのだろうか?それは未だ誰にも解らないまま、街はいつもと変わらず動き出すのだった。

 

 

 

 

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