リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

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20_similar and different

「・・・それで?お前達が言う神代という男はどんな奴だ?」

 

千束達はDAの支部にある密室に呼び出されていた。昨夜、千束が戦った連中のリーダーこそが神代。今日此処に居るのは千束の提案だった。

顔を直接見た事が有るのはレナと千束のみ

 

「「出来ました!コレが神代です!」」

 

2人はバッと絵を描いた紙を見せる

千束は何かアニメチックな絵、一方のレナは割りと特徴を掴んでいる絵だった

 

「うっわマジ!?レナ絵上手ぁ!そっくりじゃーん!」

 

千束は楽しんでいるのかレナの絵へ指をさす

 

「千束さんのは・・・こんなに美化されてましたっけ?」

 

首を傾げると確かにアニメチックで且つ、目の中に星が描いてある

 

「・・・レナ、気付いてませんけど指の本数が1本多いですよ」

 

たきなが口を挟むとレナは改めて絵を見直す。右手と左手の指の数が合わない

 

「あ・・・ホントですね・・・」

 

レナは思わず目を逸らした

それを見ていた楠木が改めて口を開く

 

「・・・お前達のお絵描きを見ている暇は無い。千束、浅見が見たのは銀髪で赤目・・・それで間違いは無いんだな?」

 

じっと2人の方を見つめる

そして横に居た付き人へ何かを合図した。

 

「はい、間違いありません。私は2回程、彼に会ってます・・・1回目は自己紹介、2回目は千束さんが狙われた時に。」

 

レナは頷く。そしてサードリコリスに襲われた事も併せて付け加えた。

 

 

「サードリコリスに襲われた?・・・それも奇妙な話だな。解った、お前達の話は参考にさせてもらう。ご苦労だったな、帰って構わん」

 

楠木はそのまま部屋を出ようとする

その時に立ち止まると少し振り向いた

 

「・・・浅見、前より雰囲気が変わったな。引き続きリコリスとして最善を尽くせ」

 

呟くと楠木は部屋を出て行った。

 

「ほほぉー?良かったじゃん、珍しく楠木さんが褒めてくれたよ?」

 

ポンポンとレナの背中を千束が笑いながら叩く。それに対してレナが小さく頷いた。その後、3人は本部を後にすると電車を使って最寄り駅へ降りると歩いて店へと戻って行った。

 

店自体は3人が帰って来た時は普段通りの混み具合。そして戻るや否や着替えてからいつも通り接客を始めるのだった。

とは言え、神代の一件も有るので近所の保育園や常連客へのコーヒー豆の届け先へ行く際も未だ油断は出来ないのだが。

 

「そう言えば、保育園の園長さんが手伝って欲しい事が有るって言ってましたよ?何でもそろそろお遊戯会が有るとか何とか」

 

ひょっこりとたきなが奥の方から顔を覗かせる。その手伝いを2人はいつもやっているらしい

 

「もうそんな時期かぁ・・・レナも行く?面白いぞー?」

 

千束がカウンターへ皿やら食器類を置くとテーブルを拭いてるレナへ声を掛けた

 

「え、ええ?良いですけど・・・」

 

子供が嫌いという訳じゃないのだが、初めて行った時に子供達の遊び相手として遊び続けていた。というのもレナは子供達に何故か好かれ易いらしい。

千束の用事が済むまで、色々と遊んでいたのだ

 

「どした?何処か具合悪いの?」

 

千束はレナに近寄ると顔を見ている。

 

「そういう訳では有りませんけど・・・ただ、私の体力が持つか・・・」

 

レナは呟くと何処か不安そうな感じだった。当然、相手が子供なのだから疲れるのは当然なのだが

 

「大丈夫、今回はパパっと済ませられる奴だから!んじゃー、そういう事で!」

 

そして午前の仕事を切り上げると午後からは保育園へ向かう事になった。

店から出て大体15分位で保育園に着いた

手伝いに来た事を千束が明かし、作業が終わるまでの間は子供達と戯れる形になる。その役目はやはりレナだった

 

「んじゃぁ、私達で終わらせて来るから子供達宜しくねー」

 

千束が手を振るとたきなも後に続いて広間へ入って行った。

庭へ出ると早速、レナは引っ張りだこになってしまう

男の子はサッカーや鬼ごっこ、隠れんぼ。そして女の子からは、おままごとや保育園で貸してる人形を使った人形遊び、女の子向けアニメのヒーローごっこ等。1つが終われば別の方へ、また1つが終わればまた別の方へとてんてこ舞い。

 

「ま、待って・・・順番だから・・・!」

 

レナはニコニコしているが、それでも疲れている。そして数時間後に作業が終わるとレナは既にぐったりしていた

 

「お待たせー・・・って大丈夫?めっちゃ疲れてるじゃん・・・?」

 

レナは最後の遊びとしてヒーローごっこをしていた。だが割りと疲れているのか動きが鈍い

 

「だ・・・大丈夫です・・・。じゃあ、みんな・・・また今度遊びましょう?」

 

息を整えるとレナは別れの挨拶を済ませる。子供達は別れを惜しんだり、手を握ったりと色々だった。そして諸々済ませると3人は保育園を後にした

 

「・・・本当に大丈夫ですか?かなり疲れてる様に見えますよ?」

 

レナの顔を見ると、たきなが心配する。

子供の体力というのは思ったより凄いのは以前来た時も知っている。

だが、今回は前回以上だったらしい

 

「帰ったら少し休ませて下さい・・・」

 

返事をするとフラフラと店の中へ入っていった。そして後に続いて2人も中へ入る。

 

「あーあ、こりゃ想像以上に疲れてんなぁ・・・。そうだ、こっちおいで」

 

千束は座敷へ座ると膝をポンポン叩く

 

「何ですか?・・・私、疲れてるんですけど?」

 

レナは振り向くと千束の方へ近寄る。

そして靴を脱いで座るとそのまま身体を横にされ、膝の上へ寝かされた

 

「頑張ったご褒美に千束さんが膝枕してあげよう!さぁ、ゆっくり休むが良い!」

 

ニコニコしながら千束は頭を撫でて来る。疲れと人の温もりが今のレナには堪らなく心地良い

 

「んん・・・ホントに寝ちゃいそうです・・・」

 

ウトウトし始めると目を瞑り掛ける。すると少し千束が前へ傾いた

 

「ズルいですよ。私だって疲れてるんですから・・・」

 

たきなが千束の左横へ寄り掛かる。

そしてそのままぐったりしていた

 

「はいはい・・・じゃあ、少し休憩しましょかねぇ・・・」

 

3人は疲れたのか夕方近く迄、このまま眠ってしまった。

気付けば既に店は閉店間際で千束に肩を叩かれてレナは起きた

 

「閉店作業だってさー!起きて起きて!」

 

レナは目を擦りながら起きると欠伸をし、靴を履いてから作業へ取り掛かる。

そして外へ出ると店の前の看板を中へしまい、ドアのプレートを裏返す。そして再び中へ戻ると店内の掃除を始めた。

そして全てを済ませて帰ろうとした時、ギリギリのタイミングで電話が鳴る。

 

「はぁーい、もしもし?成程、成程?それって私達じゃなきゃダメですか?・・・解りましたぁ・・・はーい」

 

千束が電話に出て応対するのだが

声色が自然と変化していく。電話を切る頃には表情も嫌な顔になっていた

 

「仕事だってさぁ・・・怪しいクスリの取引現場抑えろって」

 

千束は、ぶすーっとした顔でカバンを背負うとドアの方へ向かう。本来ならこのまま帰れた筈だったのだが、止むを得ない。

 

「手短に済ませましょう、そうすれば早く帰れると思います」

 

レナは千束を何とか宥め、3人は指定された場所に向かった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

現場はどう見ても人間が出入りする様な場所では無い。建物というより未だ組み立て真っ最中という感じが強く、一部にはブルーシートが被されていた。

 

「・・・本当に此処で有ってます?どう見ても家とは言い難いですけど」

 

たきなは現場へ着くと建物の周囲を見渡す。幾ら組み立て真っ最中と言えどドア自体は付いている

 

「うん、此処で間違い無いんだけどねぇ。まぁ入ってみっか!2人はフォローお願いね」

 

千束がドアを開けて中に入り、続く2人も同じく中へ入る。そして後ろや左右を警戒しながら奥へと進んで行く

 

「未だ塗料や薬品の匂いがします・・・」

 

レナは片手で口元と鼻を覆うと歩き続ける。良くこんな場所で取引なんて思い付いたと考えながら。

そして広めの部屋の近くへ来ると中から話し声がする。どうやら当たりらしい

 

「建物への被害は最小限にしないと・・・後で怒られるかも。だから成る可くコイツ使ってね!!」

 

千束は拘束用の銃をチラつかせ、合図と共に一気に3人が突入する。そして動揺している連中に対してこう投げ掛けた。

 

「大人しくすればこっちは撃たないから、その変な袋をそこに置く!さぁ早く!」

 

中に居た6人の内、1人がポケットからナイフを取り出す。そしてもう1人はハンドガン。続くもう1人は近くの角材を相次いで構える。残りの3人はその場から逃げ出した

 

「結局こうなるんかい・・・レナ、たきなは追って!私はコイツら片付けるから!」

 

銃を構えると後ろに居た2人が頷き、別の方へ逃げ出した男3人を追い掛ける

 

「うるせぇ、ガキの癖に!!」

 

するとナイフを持った男が千束へ目掛けてナイフを振り回す。だが刃は掠りもせず、避けられる

 

「うっさい!大人の癖に!!」

 

隙を見て千束が発砲し、男が倒れる。

そして拘束銃を使って縛り上げた

 

「こ、コイツ!」

 

今度は男がハンドガンを構える

だが動揺しているらしく、手が震えている

 

「あー・・・ねぇ、ちゃんとセーフティ外した?あと目の焦点がズレてると思うけど、大丈夫?」

 

千束は振り向くと首を傾げる

確かに男がこの場で自分を狙えるとは思えない。だが、それでも構え続けていた。

 

「う、うるせぇ・・・うるせぇ!」

 

男は千束の声に耳を貸さない。

それでも構え続けている

 

「・・・辞めときなって、ケガじゃ済まないんだから。家族は居るの?友達とか、好きな人は?此処で大人しく捕まっとけば命は保証する・・・だからそれ捨てて、早く楽になりなよ。その方が良い」

 

千束は片手を差し伸べ、銃を渡す様に促す。そして観念したのか男は千束へ銃を渡そうと近寄った時、銃声と共に男が倒れた。撃ったのは千束でも、その場に居たもう1人の男でも無い。

 

「ねぇ!?大丈夫!?ッ・・・早く止血を・・・!」

 

千束は何とか男を助けようと必死になっていた。ワセリンを取り出し、更に止血用のテープや包帯を取り出すと男へ応急処置を始めた。

 

「大丈夫・・・、家族にはまた会えるから。笑って話せる様に私が何とかする、だから安心していい・・・!」

 

一通り済ませると、部屋の中央に有ったテーブルを男の前へ持って来る。そして男の身体を隠す様に配置した

 

「此処から絶対動いちゃダメだからね?それと、そこの!携帯あんなら救急車呼んどけ!もしソイツが大切な仲間なら、お前がソイツを助けてやれよ!私の事はどーでもいいから!」

 

角材を持った男を指さし、指示を出すと素直に応じたのか救急車を呼ぼうとする。そして千束は撃った張本人を追い掛ける事になった

 

「あんにゃろー!何処行った!」

 

階段を駆け上がり、建物の2階の半開きのドアから外へ出て銃を構える。

そこに居たのは黒い制服を着た紫髪の少女。腰まで伸ばした髪は綺麗に手入れされている様だった

 

「・・・お前か!さっきの奴撃ったのは!」

 

千束は銃を向けたまま睨み付ける

そして照準を合わせたまま、動かない

 

「ええ、そうよ?・・・クズの命なんかどうでも良いでしょう?」

 

少女が振り向くと千束の方を見つめる。

その顔には人間の顔では無く、白い仮面が付けられていた。両眼と口と思わしき箇所には黒く釣り上がった黒い線が有る。

 

「何それッッ・・・本気で言ってんの?」

 

千束は少女を睨み付けた。ギリッと歯を食い縛ると怒りの表情を浮かべる

 

「ええ、本気よ?犯罪者も、それに加担する者も、みんなクズ。貴女達リコリスもそうでしょう?国の治安の為に犯罪を起こそうとしている人間の命を何の躊躇いも無く奪う・・・。表では治安維持の為と言えば聞こえは良いけれど、要は社会にとって邪魔な存在を消しているに過ぎない・・・」

 

仮面の少女が首を傾げると同時に風で2人の髪が靡いた。

 

「・・・確かにそうだけど、私は違う!その人の命を奪えばその人の周りの人が悲しむ!!今回は敵だったかもしれない・・・けれど、次に会う時は敵じゃないかもしれない!もし、次に会った時に敵であれば今度は容赦はしない・・・!そうならない様に私は、私の仲間達は動いてくれてるの!!」

 

千束は叫んだ。人の命を奪う事は彼女らにとっては簡単な事だ。だが、仮に命を奪えばその人の周囲の人間はどうなる?もし家族や恋人、友人・・・その人達が彼の死を誰よりも悲しむ。そうならない為にも千束は誰かの命を奪う事を拒んでいる。これまでも、これからも、彼女はそれを続けていくだろう。

 

「そんなのは貴女の綺麗事よ・・・。所詮、人間は同じ事を繰り返す・・・犯罪だけじゃない。テロだって同じ。もし仮に貴女と同じ理想の元に活動したとしても結局それは踏み躙られる。そうなる前に殺すのよ。家族?友達?恋人?そんなモノはどうでも良い・・・悪いのは所詮、犯罪やテロに手を染めた本人なのだから。殺されても文句は言えないわ」

 

千束の考えを否定し、少女は仮面の内側で笑った。命を奪う事を何の躊躇いも無い彼女を見ていると千束は怒りを覚える

 

「ッ・・・ふざけんなよ、人の命を何だと思ってんの?そこら辺に転がってるゴミと同じ様な扱いしてさぁ・・・!確かに悪いのは犯罪に走った本人だよ。けど、更生のチャンスすら与えずに殺すよりはマシでしょう!?」

 

千束の銃を握る手に力が込められる

今にも撃ってしまいそうなのを必死に堪えていた。

 

「・・・何処までも甘いのね、見損なったわ。貴女は凄く強いリコリスだと聞いていたのに。口を開けば命を大事にしろだの、更生する機会を与えろだの。偽善的な言葉ばっかり・・・貴女は何?神様にでもなったつもり?貴女の言う事は所詮、全て偽善でしか無い・・・。そういうのが聞いてて一番イヤなのよ・・・偉そうにベラベラと命の有り難さや大切さを解いたって何も変わりはしないのにッッ!!」

 

少女は突如、銃を引き抜くと千束へ向ける。そしてお互いに向けあったまま動かない

 

「それでも私は・・・絶対に人を殺さない!!貴女や他の人に何を言われても、蔑まれても、馬鹿にされてもいい!!私は自分で決めた事を絶対に貫き通す・・・ッッ!」

 

命を奪う事を拒む者、命を奪う事を拒まない者。お互いの意見が真っ向から対立する。そして少しでも動けば何方かが引き金を引く事になる。

 

「・・・そう、なら貴女はその理想を抱いたまま死ぬのね。不殺を徹底し、誰かの命を優先し助ける。そして無様に死ぬ・・・!」

 

直後に少女が発砲するとそれを千束は避け、正面から組み合う形になる

お互いに譲る事は無く、硬直状態が続いた。そして少女は千束の両手を振り払い、右足による蹴りを繰り出す。それを千束は自分の左腕で防ぐと離れ、今度は千束が右手の拳を突き出し、顔へ目掛けてパンチを喰らわせようとする。

だが、突き出した拳は避けられてしまう。そして、それを見た少女は千束の服の袖を掴むと腹部へ膝蹴りを繰り出す。

 

「あぐぅッ!?この・・・ッ!」

 

無理矢理離れると千束は数発ほど発砲するが、事もあろうに避けられてしまう

 

「私もね・・・弾は避けられるの。貴女と同じやり方でね・・・ッ!」

 

再び間合いを詰め、少女は蹴りを繰り出すとそれが千束の右腕に命中。その衝撃で持っていた銃を手放してしまう

 

「やるじゃん・・・ッ!!」

 

千束が構えた時、少女は連続して攻撃を繰り出す。直後に放った回し蹴りが千束の脇腹を直撃し、ふらついた所へ顔目掛けてパンチを放つ。千束がそれを手で受け止め、振り払うと相手を見据えては反撃の機会を伺う。

 

「まだ続ける?貴女の方が圧倒的に不利だと思うけど?」

 

少女は余裕を見せると千束を追い込んで行く。だが千束も負けてはおらず、蹴りを放つと少女もそれを蹴りで防いだ

 

「ぐッ・・・ちぃっと厳しいかも・・・!!」

 

互いの片足がぶつかると即座に戻し、千束は落とした銃を取りに行くべきか判断する。銃は千束から見て少女の右後ろ辺りに転がっていた

 

「・・・もう終わりにしましょう、英雄さん?」

 

少女はスカートの片側をひらりと捲り、素早くホルスターからナイフを抜くと千束目掛けて突き刺そうとする

 

「今だ・・・ッッ!!」

 

千束は前屈みになり、ナイフを避けて前転する形になると銃を拾い上げて少女へ突き付けた。そのまま背中捉える形になり、そのまま2人は静止した

 

「・・・成程、私の負けという事ね。咄嗟の判断力は貴女の方が上。皮肉だけど認めてあげる。」

 

少女はこの状態でも振り向かず喋り続ける。隙を見て反撃し、胸へ突き刺してしまえば此方のものだと思っていた。

 

「まだ続ける?・・・いい加減、諦めて降伏したらどうかなぁ?」

 

千束はニヤリと笑うと銃を向けたまま、少女へ語り掛けた。

 

「ちッ・・・嘗めた真似を・・・ッッ!!?」

 

勢い良く振り向いた途端、顔や右腕、腹部へ弾がそれぞれ3発程命中すると赤い硝煙が立ち上る。

そしてヒビの入った仮面が足元へ落下すると少女は顔を上げる。紫髪に対して黄色い瞳、前髪を片手で少しかきあげると千束を見つめていた。

 

「くそぉッ・・・!!」

 

その目は千束を目の敵にすると言わんばかりに睨み付けていた。

 

「おーおー、良い顔してんじゃん?でも、こっわぁ・・・可愛い顔が台無しですけどぉ?」

 

千束は挑発する様子を見せて逆上を誘う。相手が挑発に乗った途端に撃ち込んで仕留める魂胆らしい

 

「コイツ・・・!何よ!?今取り込み中だって言ってるでしょう!?・・・解った、撤収する・・・」

 

突如、インカムで通信を始めると少ししてから通信を切った。

 

「・・・続けたいけど、残念ながらお開きね。貴女、名前は?」

 

少女は仮面を拾うと千束の方を見つめる。その間にナイフや銃をそれぞれしまった

 

「名乗る時は先ず自分からでしょーが・・・まぁ良いけどさぁ。私は錦木千束・・・次会ったら覚えとけコラ!」

 

千束は若干キレ気味に伝えるのだが、どう見ても苛立っている。

 

「チサト・・・覚えておくわ。私は神崎由紀那・・・。何れまた会いましょう?次はそう上手く行かないから・・・」

 

そう言い残した時、銃声が響く。

気が付けば後ろにレナとたきなの双方が銃を向けて構えている。どうやら撃ったのはレナの方らしい

 

「・・・あの子もリコリスなのね。面白い土産話しが出来そうだわ・・・」

 

由紀那は後退ると屋上の縁へ立つ。2階といっても結構な高さで、もし飛び降りればケガでは済まされない。

千束は彼女が飛び降りようとするのを察知し慌てて駆け寄るも、由紀那はそのまま背中から落下。地面に着く前に後方宙返りをすると綺麗に着地。そのまま路地の方へ走り去って行った。

 

「あーもうッ・・・最後まで馬鹿にされた・・・」

 

千束は見下ろすと拳を握り締めていた。

まるで自分を嘲笑う様な話し方や態度が気に食わなかったらしい

 

「千束・・・大丈夫ですか?さっきの人は一体・・・」

 

たきなは千束の側へ駆け寄ると彼女を気遣う。自分達が来た頃には戦闘は片付いていたが、千束の前に居るのはどう見ても自分達と歳の変わらない上に同業者かと思っていた。だが相反する者である事は千束の会話を聞いて察していた

 

「黒い制服に銃とカバン・・・まるでリコリス・・・」

 

レナは先程の光景を思い出していた。

自分達と似た格好をし、千束を圧倒する程の戦闘能力。どう見ても同じ歳頃の素人が真似出来る事では無い。

流石に銃の取り扱いはこの国では許可されていない為、幾ら何でも無理な話だ。

 

「次は絶対に捕まえてやるんだから・・・!」

 

千束は彼女に馬鹿にされた事を相当、根に持っているらしい。3人は押収した薬物の袋を回収し現場を去った。

裏口から見つからずに外へ出ると、家の前には救急車が止まっており、どうやらあの時の別の男が呼んだ事は千束にしか解らなかった。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「チサト・・・彼女の後ろに居た青い服の子のもう1人・・・あの子が教団側が送り込んだ子。本来なら彼女を私の代わりにする気だったんでしょう?」

 

迎えに来た黒いスポーツカーの中で通話をしながら呟く。本来の目的は彼女をリコリスとして育てた後、そのままの配属では無く再び呼び戻して教団内の別組織に配属させる事だったらしい。

 

教団内部の機密情報の外部流出防止、並びに国家における犯罪への抑止力を目的とした組織で、銃器の所持の許可やマーダーライセンス(殺人許可)を持つ組織。

 

「DAが持つのがリコリス、リリベル・・・そして我々ルミナが一部のDA幹部と結託し極秘で制作した組織・・・ロベリア。そこのリーダーとして彼女を筆頭に大勢の少女らを集め、組織そのものの拡大を図った。けれど、DA側が要求を拒んだ事から彼女はリコリスになった・・・そして私がロベリアのファーストとなった・・・。随分と皮肉な事してくれるのね?教主サマは」

 

由紀那は一通りの情報を電話相手に伝えた。とは言えリコリスと違ってファーストやセカンド、サードという区別は付けられておらず、そのまま組織されており制服は統一されている。

 

「・・・それで、彼女を殺すの?それとも連れ戻す?」

 

選択肢は2つ。殺すか連れ戻すか

何方かしか無い。

 

「そう・・・殺すのね?解った・・・じゃ、また近い内に・・・」

 

通信を終えると車外の景色に目をやる。

交差点を行き交う人や楽しそうに歩道を歩く人。そこには普段と変わらない有り触れた日常の景色が有った

 

「・・・知らない方が幸せな事も有る、か」

 

そのまま車は街の奥へと進んで行った。

今日も穏やかな日常が流れる裏で社会にとって不必要な悪が脅威を見せている。

国の治安維持の為、奪われる命。脅威を狩るという意味では聞こえが良い

だが、この街に済む人達は何も知らない。それもまた国の治安維持という名目で知らされないのだから。

 

 

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