リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

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21_parting suddenly

ある日の事。レナは1人で街中に居た

話がしたいと言う事で駅の広場に来ていた。

 

「......そろそろ来る頃かな。」

 

腕時計を見るとレナは駅の改札口を見ていた。そして見覚えのある顔を見つける。

 

「ごめんなさい、思ったより駅が混んでて...待った?」

 

レナの元へ駆け寄って来たのはDA所属のリコリス、夏野百合。珍しく彼女の方から誘って来たのだ。

 

「いえ、大丈夫です。この時間帯は特に混みますから...。」

 

2人は合流すると駅から離れ、街中をゆっくり歩き始める。

 

「...最近はどう?上手くやれてる?」

 

百合から話を切り出す

何気ない話から始めた方が本人にとっては楽らしい。

 

「ええ、毎日大変ですけど...上手くやれてます。百合さんは相変わらずですか?」

 

レナもまた百合の話に対して返答した。

普段から騒がしい千束、大人しいが突発的に何を言い出すか解らないたきな。

毎日、リコリスの仕事と並行し店の仕事も熟す日々だから大変なのは変わらない 。

 

「ええ......この間からずっと忙しいわ。真島の隠した銃器の捜索も有るし...。」

 

ブツブツと百合は呟く。ファーストリコリスだから色々と有るのは仕方ないが、それでも仕事が多いらしい。

 

「そうですか...。良かったら今度、うちにも来てください。コーヒーと甘い物位なら出せますから。」

 

レナは百合が何処と無く疲れているのを察した。以前から組んでいた時も百合は疲れていると小言に近い事を言う癖がある。

 

「なら、機会が有れば今度伺うわ。それにしても...柔らかくなったわね。前はこんな事言わない子だったのに。」

 

百合もまたレナの事をよく知っている。

リコリコへ来る前のレナは感情を表に出さず、淡々と仕事を熟していた。

それこそ仲間を気遣う事も無く、群れる事を嫌い、常に1人で居た。そのレナを編成へ組み込んだのが百合本人。

彼女の射撃の腕を自分の知識でサポートし、補う事で成り立たせていたのだ。

 

「私も驚いてます...全ては千束さんと、たきなさんが私を変えてくれたからだと思ってます。誰かと一緒に笑ったり話したりする事は殆ど有りませんでしたから。」

 

実際、レナ自身も自分の変化に気付いていた。以前はそんなに笑ったり、泣いたり、怒ったりといった感情は見せなかった。だが最近はそういった感情を少しずつだが見せるようになった。

 

「例の2人ね...私も話は聞いてる。でも良かった......もっと素っ気なく返されるかと思ったもの。」

 

以前のレナで有れば間違いなく「そんな事聞いてどうするんですか?」とか「...話す必要有りますか?」とか素っ気ない返事をするのが当たり前だったのだ。

だから余計に新鮮だった。

 

「そういえば、話って何ですか?」

 

レナは自分が呼び出された理由を改めて聞く事にした。肝心な本題をまだ聞いていない為、気にしていたらしい。

 

「そうね......そろそろ本題を話さないと。」

 

人気の無い通りへ来ると2人はベンチへ腰掛け、互いに見つめ合う形になった。

 

「...浅水さん。未だ決まった訳では無いけど、近い内にDAは貴女を招集します。詳細は此処に書いてあるから、後で読んでね。」

 

カバンから書類の入ったファイルを百合から受け取るとレナはそれをカバンへしまった。

 

「つまり...本部へ戻れるという事ですか?でも何故......?」

 

レナは逆に疑問に思っていた。ずっと本部へ戻れる事は無いと思っていたから余計に気になっていたのだ。

 

「...恐らく、神代の件でしょうね。貴女が彼と何度か接触している事が大きいと思う。そしてもう1つ...向こうが貴女を指名して来たの。ルミナのリコリスと言えば上も解るだろうって直接通報が有ったらしくて......。ねぇ、浅水さん。ルミナって何?」

 

百合は首を傾げていた。

神代が言っていたルミナ。それはレナの幼少期に育った教団の名前であり、彼女の根本的な部分でもある。

 

「ッ...それは......未だ話せません。もう少し時間を頂けますか?いつかちゃんと話します...だから...!」

 

レナは動揺しながら百合の方を見つめる。するとレナの手を百合はそっと握り締めた。

 

「......解った、貴女がちゃんと話せる日が来るまで待つ事にするわ。作戦決行日は1ヶ月後、それ迄に体調管理もしっかりね?」

 

百合はそう話すとその場に立ち上がった

そしてレナの方を向く。

 

「大丈夫、貴女に何があっても私達が必ず護るから。安心して。」

 

そっと手を差し伸べるとレナはその手を握り締め、立ち上がった。

 

「この作戦は2人にだけは伝えない......それは何故ですか?」

 

ふと書類をざっと見た時に気付いた。それは千束とたきなの2人には伝えないという事。その文言だけが気になっていた。

 

「それは話せないの......ファーストの権限でも貴女に伝えられないわ。ごめんなさい。」

 

目を逸らすと説明を拒否し、先に百合は歩き始める。レナは百合の後を追い掛けて行った。

 

「待って下さい!百合さんッ!」

 

レナは百合の元へ追い付くと隣を並んで歩く。だが終始、2人が話す事は殆ど無かった。駅へ着くと改札で立ち止まる。

 

「......それじゃあ、1ヶ月後に。またね。」

 

改札を抜けるとレナへ手を振り、ホームへと向かって行った。結局は肝心な所を聞き出せぬまま。

その後、店へ帰ってからもレナは納得出来なかった。リコリコ内に有る部屋の奥で1人、書類を見ながら頭を抱えていた。

 

ー作戦指示書ー

 

・当作戦はセカンドリコリス、浅水レナ(16)を主体とし行う。

 

・場所:東京クリエイティブタワーの40階展望ホール。

 

・当日、サポートは全てDA側の指示に従う事。反抗は許されない。

 

・錦木千束及び井ノ上たきなの両名には作戦内容の開示、通達を禁ずる。

 

・40階、並びに各階のエレベーターホールは作戦行動中は全て閉鎖。(逃走経路阻止の為)。

 

主に書かれていたのは上記の内容のみ。

それ以降の記載は無く、当日に指示を行うとの記載が有るだけだった。

 

 

「これじゃあ、まるで...囮と同じ......。」

 

確かに、囮というに相応しい作戦内容としか思えない。レナという餌を利用して神代を食いつかせて彼を捕らえる。

恐らく、捕らえるというよりは射殺と考えた方が早いだろう。

 

「例えセカンドだろうと捨て駒と同じ扱いか。何れにせよ私は死んでも構わないと......。」

 

書類を何度見返しても内容は変わらない。何れにせよ、2人には自分が招集された事を伝える事は出来ない事には変わりは無い。

 

「おーい、帰るぞぅ?おやおやぁ?何、その書類はぁ?」

 

千束が着替えた状態で部屋へ入って来る。テーブルの上の書類を見ると近寄ろうとする。

 

「だ、ダメですッ!何でもありませんから!」

 

咄嗟に書類を隠すと千束の方を向く

隙を見せれば書類を取られるかもしれない。

 

「ええー?別に良いじゃんよ、減るもんじゃないんだしさぁ?」

 

千束は手を伸ばして書類を掴もうとするが、レナは尽くそれを避ける。

 

「ダメな物はダメなんです!幾ら千束さんでもコレは見せられませんッ!」

 

バッと後ろへ下がると慌てて立ち上がり、部屋を後にする。そして更衣室へ戻るとカバンへ書類を押し込んだ。

 

「なぁーに隠してんだろ......。」

 

千束は余計に気になってしまったのか、レナの後を追い掛けて更衣室へ向かう。

そして着替えて来るまで店の外で待つ事になった。

 

「ねぇー、レナぁ...?」

 

「ダメです。教えられません!」

 

「ええ...まだ何も言ってないじゃんよぅ......。」

 

合流してからの帰り道もこんなやり取りが続き、それはセーフハウスへ戻ってからも同じだった。

書類が入ってると思われるカバンは厳重に隠されており、下手に触ろうとすれば大変な事になるのは間違い無い。

 

「...絶対に触らないで下さいね。もし勝手に開けたり、触ったりしたら絶交ですよ。」

 

レナが目を離す時、特に彼女が風呂やトイレへ向かう場合はこの文言で予め釘を刺しておく事で千束の好奇心を押し殺す作戦に出ており、隙が無い。

 

「ねーえ、なぁんで教えてくれないの!?私達、仲間でしょー?教えてくれてもバチは当たらんと思うけどなぁ......?」

 

千束はブーブーと文句をたれ始める

だが、レナはそれを一切無視してリビングでテレビを見ていた。

 

「ニュースはいつもと変わらない......か。」

 

ぼーっとしていると、いつの間にか来た千束が後ろからレナの顔を覗き込む。

 

「頼むから教えてくれよーぅ?な?な?千束さん一生のお願い...!」

 

異様な程、顔が近い。

じぃーっと千束はレナに訴えかける様な目で見つめていた。

 

「...それでもダメですよ。一生のお願いって何回私に言いましたっけ?」

 

レナは少し離れると千束から距離を取る。やはり教える気は無いようだ。

 

「ぐぬぬぬ...!レナのケチんぼ!」

 

遂に千束は諦めたのかベットへ戻ると、お休み!と一言残してリビングから立ち去ってしまう。

 

「はぁ...漸く一安心出来る......。」

 

一番の強敵を退けた事に安堵する。

ああなった千束は聞き出すまでしつこく付き纏ったりして来る事を普段の生活で知っていた。そして、その日は千束から距離を置く形でレナもベットで眠った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ー翌日ー

やはり、昨日の一件から千束とレナの間は良くなかった。

 

「...喧嘩でもしてるんですか?2人して見向きもしないじゃないですか。」

 

朝からたきなも気にしていた。必要最低限の会話だけ済ませ、お互いの仕事へ取り掛かる。それが大体昼過ぎまで続いた。

 

「聞いてよ、たぁきいなぁー!レナが書類見せてくんないんだよーぅ!」

 

休憩時間に入ると突然、千束がたきなへ泣き付いている。それを見たレナは呆れた様子で仕事を済ませると1人で座敷席に座り、外を見ていた。

 

「そもそも、人様の物を勝手に見るのは良くないと思いますけど?」

 

奥からたきなの正論が飛び、千束が苦しそうな顔でたきなを見ていた。それでも何か言い訳をしている。

 

「そ、そうだけどさぁ...気になってあんまり眠れなかったんだよぅ......。」

 

たきなの服の腰辺りに抱き着くと、そこに顔を埋めながら色々言っているらしい

もうカウンターに隠れてしまい、レナの方からでは千束の姿は見えない。

 

「さっきから言ってる書類って何ですか?そんな物を持ってる風には見えませんでしたけど...。」

 

無論、たきなも初耳だった。

退職するにも未だ早すぎる上に他へ働こうにも複雑な手続きが必要なのは何となく察しがつくのだが。

 

「私にも解んないんだよぅ......。ああー!どうしよう、マジで嫌われてるかもしんない......。」

 

悲鳴に近い声を上げると千束はガックリと肩を落としてしまった。

 

「...そこまで知りたいのなら、私が代わりに聞いてきましょうか?千束は口が軽いし、日頃の行動も浮き足立ってるから信用が無いんですよ。」

 

このまま泣き付かれると仕事にも支障を来すと判断したのか、たきなが代わりに聞きに行く事になった。

たきなは2人分のお茶を持つとレナの元へ向かう。

 

「......少しお話しませんか?」

 

そっと前へお茶を置くとレナの目の前に腰掛ける。お互いにじっと見つめる形になった。

 

「随分急ですね......何ですか?書類の事ならお話出来ませんよ?」

 

じっとレナもたきなの方を見つめる

書類の話はどうやら既にダメらしい。

お互いに黙った状況が少し続くとたきなの方から切り出した。

 

「...異動の話ですか?それとも、他の場所へ住むとか?」

 

首を傾げると何気なく話題を振る

異動の話といった時点で少し確信に掠るが、そこから先は未だ解らない。

 

「いえ...ただの健康診断の書類です。あまり体重とか身長とか知られるのは恥ずかしいので。」

 

レナは嘘を着いた。

悪魔で健康診断の書類だと偽るとたきなは千束の方へ目をやり、それは聞き出すのは良くないという顔で見ていた。

 

「そうですか...すいません、下手に詮索してしまって。千束がどうしても気になると言うものですから......。」

 

たきなは頭を下げた

そして手元に有るお茶を少し口へ含むと飲み込む。

 

「...いえ、大丈夫です。気にしなくても。」

 

レナも同じくお茶を持つと飲み始める。

そして他愛ない会話を続けた後にたきなはカウンターへ戻って行った。

 

「千束、健康診断の書類だそうです。人の体重とかその辺を知るのは良くないと思いますよ?」

 

じーっと軽蔑の眼差しで千束を見つめてから、たきなは溜まっていた洗い物を始めた。

 

「うぅ...ごめんなさい......。」

 

千束は反省したのか、ガッカリしながらとぼとぼと歩くと離れの座敷席に座った。その日以降、レナの書類の話は一切されなくなった。千束本人は残念そうな顔をしていたり、時折気になったりして聞きに来たりしていたがその都度、たきなに止められていた。

 

それから月日が流れ、作戦実行の数日前。帰る直前、レナはミカと何かを話すと頭を下げてから店を後にする。実は明日、朝から本部でのミーティングの為レナは朝から店に居ない事を伝えたのだ。

 

「......帰りました。」

 

セーフハウスへ帰るとレナは靴を脱ぎ、ハシゴを降りてから部屋へ来る。

未だ千束は起きているらしい。

 

「お帰りぃ、ご飯出来てるから手洗っといでー!」

 

千束は台所から声を掛けるとテーブルへ料理を並べて行く。レナは軽く返事だけすると洗面所へ向かった。

そして戻って来ると着替える前にそのまま夕飯を取る事に。

 

「...そういえば、健康診断どうだった?もう結果来る頃っしょ?」

 

千束は食事の手を止めるとレナへ聞いてみる。すると、同じくレナも手を止めると話を始めた。

 

「そういえば......そうでしたね。私の場合は視力検査とか簡単な物でしたから、大した事は無いと思いますよ?」

 

首を傾げると、やってもいない健康診断の話を始める。嘘とは解っていながらも

全ては千束達に迷惑を掛けない為と自分に言い聞かせると一通り説明を終える。

 

「そっかぁ...山岸さんに頼んで良かったねぇ。あの人、ああ見えて良い人だからさー。」

 

山岸という女性は千束の人工心臓、及び彼女の健康回りを主に見ている。

そして並行してレナの目も彼女に診てもらっていた。だが今回は彼女には診てもらっていない。

 

「...はい。」

 

レナは頷くと再び料理に手を付け、食べ始める。そして2人とも食べ終わると食器を台所へ置き、並んでリビングでテレビを見始めた。

 

「......なぁ、レナぁ?最近何か私の事避けてない?気の所為?」

 

ボソッとテレビを見ながら呟く。

そしてチャンネルを弄りながらニュースで止めると、今日も事故の話や事件のニュースをアナウンサーが話している。

 

「え?...そんな事は無いですよ、私はいつも通りですけど?」

 

テレビを見ながらボソッと呟く

とは言え、作戦のせいもあり若干だが千束達から距離を置き始めたのは確かなのだが。

 

「ホントかなぁ?最近、よく考え事してる様な表情してんじゃんよ?」

 

グイッと自分の方へ引き寄せると顔を覗き込んだ。

 

「...気の所為です。私だって人間ですから、考えたり悩んだりしますよ。」

 

距離が近くなるも、レナは淡々と話す。

こうして居られるのも今日だけ

明日の今頃、自分がどうなっているかは解らない。ミーティング後に作戦は決行されるのだ。

 

「......じゃあ、これだけ言っておくけどさ。命大事にだぞ?何事も生きてなけりゃ意味無いし、始まらないんだしさ!」

 

彼女の耳元で囁くとそのまま千束は身体を委ねてくる。離したくないのか抱き締めたまま。

 

「何か知らないけど...レナが私達から離れて遠くに行っちゃう気がしてさぁ...、寂しいんだ。だから、何が有っても必ず帰って来て...絶対に。そしてまたただいまって言って欲しい......。」

 

千束は自分達とレナの間に距離が開き始めた事を何となく知っていた様子だった。千束達が距離を置いた訳でも無い。

レナが少しずつ距離を置き始めたのだ。

 

「大丈夫です、私は何処にも行きません......ずっと皆さんと一緒ですから。」

 

そっと手を握り締める。罪悪感と申し訳無さを押し殺しながら、最後だけは自分の感情を千束へ伝えた。

 

「私はそろそろ...寝ます。お休みなさい。夜更かしせず、ちゃんと寝て下さいね?」

 

レナは千束から離れると立ち上がり、ベットへと向かおうとする。

 

「解ってるって。お休み......また明日ね。」

 

千束はレナの背中を見ながら呟くと手を振り、レナも小さく頷くと寝室へ歩いて行った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

ー翌朝ー

「んぁあ......?やっべ、遅刻じゃん!?レナぁ、何で起こしてくんなかったの?」

 

千束はベットから飛び起きる。そしてリビングへ向かうと何かが変だった。

机に散らばっていたDVDやお菓子の箱が綺麗に整頓され、消さずに寝てしまったテレビも消えている。

 

「あれ?確かに寝落ちしたはずなんだけどなぁ......どういうこっちゃ?」

 

レナの私服はそのまま、ただ彼女のリコリスの制服とカバンが無くなっている

どうやら先に出て行ったらしい。

 

「アイツぅ...抜け駆けしたなぁ?」

 

そう言い残した時、テーブルの上にメモ書きが置かれているのを見つける。

 

[今までお世話になりました。]

 

白いメモには綺麗な字でこう書かれていた。千束は何が起きているのか解らず、メモを握り締めると慌てて家を飛び出して行った。そしてリコリコのドアを勢い良く開いた。

 

「遅いです!!また懲りずに遅刻ですか!?全く、2人揃って遅刻なんて......ってあれ?千束だけですか?」

 

目の前に腕を組んだ、たきなが立っており千束の方をギロっと睨み付けていた。

だが1人足りない事に気付くと千束の後ろを見ていた。

 

「居なくなっちゃった......レナが、レナが居なくなっちゃったの!!!」

 

千束はメモ書きをたきなにも見せる

店内でもクルミやミズキが此方を見ていた。千束はその場で悩んでおり、ずーっと何かを考えている様子だった。

 

「まさか、家出とか?けどリコリスが家出するなんて普通有り得ます?」

 

たきなもずーっと考えている

だが、どの道思い当たる節は無かった。

 

「まさか...嫌われた...?嘘だぁ......嘘だと言ってよぉ......。」

 

朝からショックを受けた千束はヨロヨロと店内の床へ座り込んでしまった。

だが約1名だけは普段通り支度をし始めている

 

「うぅ...ねぇ、先生は何も知らないの?」

 

ふとカウンターの奥に居たミカへ声を掛けるも、何も知らないと一言。つまり探そうにも完全に手掛かりが無い。

 

「何処行っちゃったの...レナぁ......。」

 

千束は立ち上がるとフラフラと外へ向かおうとする。だが、たきなに腕を掴まれて止められてしまう。

 

「ちょっと、何処行くんです?ほら、仕事しないと!」

 

たきなは声を掛ける。だが千束は無理にでも行こうとする。

 

「心配なんだってば...!何かあったらどーすんの!!」

 

だが、たきなは離す気配は無い。

千束をその場に引き止めている。

 

「ダメですッ...!!心配なのは解りますけど、また千束に何かあったらどうするんですか!?」

 

千束は常に自分のやりたい事を最優先して行うのが彼女のモットーなのだが、逆にやりたい事を優先し過ぎて周りに迷惑を掛けてしまったり、それで自分が危険な目に有ったりというのが多い。

特に後者の方は過去何度か似た様な事があった。

 

「じゃあ聞くけど......たきなは心配じゃないの?仲間が1人居なくなってるのに!!それでも仕事の方が大事なの!?ねぇ!どうなの!?」

 

千束は思わず声を荒らげてしまう。

珍しく互いの意見がすれ違ってしまった

そう言われると、遂にたきなも冷静さを失い千束を睨み付ける。

 

 

「じゃあ聞きますけど、一体何処を探すって言うんですか!?宛もなく、手掛かりだって無いのに......!!大体、千束はいつもいつも勝手が過ぎますッ!!振り回されてるこっちの身にもなって下さいッッ!!そもそも、マトモに考えた事有りますか!?千束の事ですから、どうせ無いでしょうけど!

 

普段溜め込んでる思いをつい、ぶちまけてしまった。

 

「はぁーー!!?それ、本気で言ってんの!?何でもかんでも偉そうに決め付けないでくれますかぁ!?千束さんは千束さんなりに色々考えてるんですぅ!!これだからお堅いセカンドは...!!」

 

それに対して千束は煽る様にたきなを睨み付けた。そして喧嘩は次第にエスカレートし始める。

 

「悪かったですね!お堅いセカンドで!!私だって、こんな間抜けなファーストと一緒で損してますよ!!」

 

お互いに睨み合いながら意地の張合いが続いていく。

 

「お、おい......2人とも!喧嘩は止めよう?な?」

 

見兼ねたクルミが止めに入ろうとする。

 

「「クルミは黙ってて(下さい)!!」」

 

ばっとクルミの方へ振り向くと逆に凄い剣幕で怒鳴られてしまった。

 

「何でこんな時も息ピッタリなんだよ......。」

 

クルミは思わず後退ってしまう

 

「とーにーかーくー!私は探しに行くの!!」

 

千束は無理にでも探しに行こうとする

余程、心配らしい。

 

「ダメですってば!お店はどうするんですか!」

 

未だに店先で言い合いをしてる時

 

「2人とも、いい加減にしなさい!!千束、今は絶対に探しに行くな...!何があっても、絶対だ!!」

 

奥からミカが声を上げる。

2人の喧嘩を制裁する形になると、迫力が凄かったのか、たきなは黙ってしまう。

だが千束は納得行っていないらしい。

 

「探しに行くなって...先生、どういう事!?ねぇ、何か知ってるんでしょ!?どうして何も言ってくれないの!?ねぇ、先生ってば!!」

 

千束は問い詰める様にミカの元へ向かって行った。だが結局何も解らなかったのだった。レナは千束達の前から突如として消えてしまった。

結局、探しに行く事も出来無かった千束は普段見せる笑顔の裏で何処と無く寂しさを感じていた。

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