リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

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23_dawn of terror

あの後レナの容態が安定した為、集中治療室から一般病棟へと移された。

交渉作戦から既に1週間近くは経過していた。その間も定期的に千束達が様子を見に来ていたのだった。

更にそこから数日後、レナはベットの上で目を覚ました。横に居た千束が顔を覗き込んでくる

 

「気が付いた!?良かったぁ…いやぁ、ホントに良かったよぉ……!心配したんだからもぉおお!!」

 

千束はレナを抱き締め、頭を撫で回していた。だがレナは千束を不思議そうな顔で見ている。

 

「あの、失礼ですけど…何方様ですか?」

 

その一言に千束はポカーンとした顔でレナを見つめる。

 

「な、なーに言ってんだよ?私だよ!錦木千束!ちーさーと!ほら、いつも一緒だったろぉ?」

 

身振り手振りで必死にレナへ伝えようとする。だが、レナは首を傾げたままだった。

 

「…ごめんなさい、解りません。それに、貴女とは今此処で初めて会ったばかりですよね?」

 

レナは千束の方を見ると呟いた

この人は一体誰なのだろう?私の事を知っているらしいが、レナの中では名前も顔も一致しなかった。

 

「そ、そっか…ごめんね、ちょっと…トイレ行ってくる……。」

 

千束は何かを思い出した様に病室を後にする。そして長い廊下を歩きながら途中で立ち止まった。

 

「レナが…記憶喪失……。」

 

千束は強いショック受けていた。

そしてその足取りのまま、医務室に居たレナの専属医へ話を聞いた。

身体の傷は治せたとしても、心の傷までは治せないとの事。何かしらの形で負った精神的ダメージが大きく影響しているかもしれないという事だった。

 

「あ、千束!良い所に。レナの容態はどうですか?」

 

部屋を出た所でたきなが花を持って来ていた。丁度、病院へ来るタイミングだったらしい。

 

「…記憶喪失。私達の事、何も覚えてないって。」

 

千束がたきなの方を見ると呟く。それを聞いた たきなも言葉を無くしてしまう。

 

「治るんですよね…?記憶喪失って言っても、一時的な物でしょう?ねぇ、そうですよね?千束…何か言って下さいよ……千束!」

 

千束の方へ近寄るとたきなは思わず声を荒らげてしまう。

 

「そんなの解んないよ…私はお医者さんじゃないんだから!!私だって本当はそう思ってる…早く元に戻れば良いって。けど、現実はそう簡単に上手くは行かないんだよ……。」

 

千束もたきなの話を聞き入れるが、現実を受け止められていない状況だった。

 

「今は、そっとしといてあげよう…これ以上、私達に出来る事は無いから。」

 

千束はたきなの肩を軽く叩くと、2人は

無言のまま病院を後にした。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

病院から店へ戻ると質問攻めを受け、レナの容態を始め様々な事を聞かれた。

身体の傷は治るがレナの記憶が戻るとは限らない事も。客を帰らせてからはレナが参加していた作戦の内容も全て話した。

 

「お前達2人には伝えず、行われた極秘作戦…か。話を聞いてて思うのはレナ自身の存在を本部が良く思ってないって事だな。裏に何か有るかも知れないぞ?」

 

クルミは煎餅を少し食べると呟いた。

ボリボリと噛み砕いてからそれを飲み込むと、タブレットに映ったサイトを2人に見せる。

 

「ルミナ教団…。あれから気になって調べたんだ。親を亡くした子供や虐待を受けている子供を優先して引き取ってる。宗教というよりは普通の保護施設に見えるけど……裏はアラン機関とズブズブだよ。」

 

クルミはタブレットの画面を指で動かしながら話を進めていく。

 

「……そんで、此処がレナの育った所。」

 

指さすと千束がボソッと呟いた

実は、この話をこの場でするのは今が初めて。たきなやクルミには話していなかった。

 

「知ってたんですか!?なら、どうして…!」

 

初めて聞いた、たきなは千束を見つめると問い詰めてしまう。今の今まで黙っていたのだから余計に。

 

「あのねぇ、言える訳無いでしょ?迂闊に言えば、レナを傷付けちゃうし…誰だって知られたくない事は有るんだよ?解るぅ?たきなぁ?」

 

ジロっとたきなを見ると千束は首を横に振った。

 

「むぅ…それで、どうするんですか?まさか教団に乗り込むとか言いませんよねぇ?」

 

たきなは少し不服そうな顔をすると千束の方を見る。間違い無く教団へ乗り込んで敵討ちだー!とか言い出し兼ねない。

 

「そんな事しないよ?大丈夫…ちぃーっとお話聞くだけだから♪」

 

ニコッと微笑むと千束は間違い無く何か企んでいる様子だった。

 

 

「そう言うと思って、色々下調べはしておいたぞ?ルミナ教団の簡易事務所…まぁ、信者とかを獲得する為の場所だろうな。距離もそう遠くは無い、駅の近くだ。」

 

クルミは別のサイトを開くと地図を見せ、指をさして指摘する。

話を聞きに行くという事はつまり、そういう事なのだ。

 

「まさか……勧誘されに行くって事ですか?お店の営業とかに影響出ませんか?」

 

たきなは諸々を察すると怪訝そうな顔をしていた。それで今後、何か有っても困るのは解り切っている様子だ。

 

「大丈夫だよ、偽名を使うから。当然でしょ?それに、うちは宗教勧誘なんてノーサンキュー!!」

 

千束は、にぃっと笑うと立ち上がり着替える為に更衣室へと向かった。

そしてたきなも着替えさせられ、待つ事数十分後。

 

「じゃじゃーん!どう?似合う?」

 

千束が着てきたのは至って普通の学生服。唯一違うのはセーラー服だった。

 

「……あの、こんなの意味有ります?」

 

続いて、たきなも同じく着ているのはセーラー服なのだがスカートが短い上に上着は着崩しており、腹が出ている。髪飾りが付いた黒髪は何故かツインテールだった。

 

「意味有るよー?テーマは救いを求めるJKって事で!」

 

千束は、いひひひっと笑うと右手でVサインをする。ちゃっかり両手の指先にもマニキュアを塗っていた。

 

「千束…他の案は無いんですか?私だけやり過ぎな気がしますけど?」

 

たきなはヘソ出しな上、スカートも少し間違えばパンツが見える位にたくし上げている為か恥ずかしがっている。

 

「ある訳ないでしょ。アイデアの募集は締め切りました!さーて、クルミぃ!名前の方もシクヨロぅ!!」

 

千束がクルミの方を振り向くと、すっと無言で名札を差し出して来る。

 

[笛野 徠夢音(ふえの らむね)]

[実虹 咲和香(みに さわこ)]

 

の上記2つ。何れも駄菓子から取った偽名だ。

 

「どうだ?ボクの自信作だぞ? それらしいのを作るのに3日も掛かったんだからな!」

 

クルミはドヤ顔で2人を見ている。

以前と同じで駄菓子から取った事に変わりは無いが、共通点は2つともラムネ菓子という事。

 

「たきなは…ギャルっぽいから徠夢音で、私は咲和子にしよっかなぁー?」

 

鼻歌交じりで名札を手に取ると自分の制服の左胸へ付ける。そしてたきなも同じく名札を左胸に付けた。

 

「それじゃー、ちょっくら行ってくるわー!」

 

千束は得意気に店の外へ向かって歩いて行く。そしてたきなも後に続くと恥ずかしいのか辺りを気にしている様子を見せながら歩いて行った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

リコリコから歩いて約30分。

駅へ着くと辺りを散策する

 

「おっかしいなぁー、この辺の筈なんだけど。」

 

キョロキョロ見回しながら探すが、それらしい建物は見当たらない。

オマケに夕方頃の駅は常に人が多い上に混雑し易い。

 

「千束、もしかしてアレでは?」

 

たきなが指さした方にはインターネットサイトで見た鷲のエンブレムが飾られている建物が有った。どうやら、5階建てビルの中の一室に有るらしい。

 

「たきな、ナイスぅ!よっしゃ、行くぞー!」

 

2人はビルの中へ入り、エレベーターで3階の事務所へと向かった。

3階へ着くとエレベーターを降りて事務所を探しに行く。とは言え、人の出入りが殆ど無い様子だった。

 

「ルミナ…ルミナ…あ、此処だ!」

 

千束は案内板を見ると、道なりに進み

事務所前へ来る。中は職員らしき人がちらほら。

 

「あ、そうそう。名前のこと忘れないでね?バレたら面倒だから!」

 

千束は念の為にたきなへ話し掛けると

たきなは小さく頷く。そして事務所の受け付けへと向かった。

 

「ご来訪ありがとうございます。ご要件は?」

 

受け付けの女性がニコニコしながら2人を見ている。

 

「あ、あのぉ?私達ぃ…お金に困っててぇ…お金が欲しいんですぅ。ウチ、親が居なくて貧乏なんでぇ……。」

 

千束があからさまな話を持ち掛ける。

そして、たきなも続いて話し始めた。

 

「エンコーとかその辺はオッサンに何されるか解らないから色々怖いしぃー?手っ取り早く幸せになりてーなぁ的なぁ?」

 

若干、棒読みなのだが何とか筋は通っている。すると女性が再び話を切り出した。

 

「つまり、入会したい…という事ですか?成程。でしたら此方にサインをして椅子に掛けてお待ちください。」

 

2枚分の書類を渡されると2人は名前を書く為に一旦離れる。

 

「ぷっ!何あれたきな、あんな声出せんの?面白すぎて腹痛てぇー!!」

 

千束は堪えきれずに小声で笑ってしまう。

 

「千束だって何ですか、変に腰クネクネして!妙に可愛い子アピールしないで下さいよ…見てるこっちが恥ずかしいです…!」

 

ぶつぶつとたきなが文句を言いながら名前の欄に記入する。

そして千束も書き終えると再び用紙を出しに受け付けへ向かい、提出してからは椅子に座りながら待つ事になった。

 

数十分後、偽名である名前を呼ばれると2人は事務所奥の応接室へ通される。

そこは真っ白な部屋で1つの机と椅子が4人分有るだけ。

 

「此処でお待ちください、後から別の者が来ますので。」

 

女性は2人を部屋へ案内してから、そのまま去ってしまった。

 

「…此方、千束。潜入成功!こっからどーすんの?」

 

千束は忍ばせていたインカムを左耳に嵌めるとクルミと通信を始める。

 

「1人が残ってもう1人が探す…多分、それなら大丈夫な筈だ。向こうは警戒心が割りと強いから気を付けろよ?」

 

クルミは事務所の間取り図を画面へ出力し、様子を伺う。また、監視カメラがやたら多い。

 

「凄いな…何処もかしこも監視カメラばっか…。こっちで時間が稼げるのは1時間だな…。」

 

クルミは千束の方へ提案する。

 

「りょーかい、やってみる!」

 

頷くとたきなと千束は椅子へ腰掛けて

待つ事にした。少しすると男が1人入って来る。

 

「お待たせしました、私はルミナ教団の役員の長谷川と言います。先ずは簡易的に教団の説明を…。」

 

長谷川と名乗った男はパンフレットをそれぞれ2人の前に置いた。

そしてペラペラと話し始め、教団の創立や活動等を大体話し終わった時だった。

 

「あ、あのぉ…トイレ何処っすか?ウチ、ちょっと我慢が……。」

 

千束がトイレに行きたいと切り出し、たきなへ目で合図を送る。それを見た、たきなもコクリと小さく頷いた。

 

「ああ、トイレなら此処を出て左の角ですよ。」

 

長谷川は丁寧に説明すると千束は足早に立ち上がり、部屋を後にする。

そして通路へ出ると再び通信を始めた。

 

「準備OK。さぁ、やっちゃって!」

 

千束が通信で話すと、カメラの映像を切ったとクルミから連絡が入る。

そして千束は廊下を走り出した。

 

「千束、そのまま真っ直ぐ行ってからそこの通路を右に!そのまま直進した所が書物庫だ。どうやら、資料の一部は此処に保管してあるらしい…!」

 

クルミは間取り図を見ながら的確に指示を出す。そして千束は書物庫の前へ辿り着くと念の為に持って来た愛銃を取り出し、扉を開けて中へと入った。

中は鉄製の棚の中に数多くの資料や本が所狭しと並べられていた。

 

「えーっとぉ……何処だぁ?教団とアランの資料は…。」

 

ゴソゴソと棚を漁りながら資料を探す。

だが中々見つからない。

 

「千束、まだ掛かりそうか?」

 

クルミが急かしてくる。

 

「まだだってばぁ…あーもう、何でこんなに多いかなぁ?ちったぁ整理しろよなぁ…。」

 

ブツブツ文句を言いながら千束が資料を漁る。すると有るタイトルで手を止めた。

 

「んんー?何これ…育成計画指示書ぉぅ?」

 

そっと本を取ると目次を見てみる。

そこには数多くの内容が事細かに書かれていた。その中に有った育成方針を見てみる事に。

 

内容は詳細に記載されており、育成プログラムと書かれた内容には銃器の取り扱いの指導やナイフ等の刃物の扱い方の指導、更に近接格闘の指導といった物。

他にはトラップの仕掛け方や爆弾の作成方法も書かれていた。

 

「まぢかよ…テロリストでも育ててんのかぁ?えーと、他には……?」

 

更にページを進めて行く。

そこには不用品処理という題名で書かれており、文章のみ記載されている。

内容を纏めると

 

・訓練について行けない者は処分

 

・実戦導入の見込みが経たぬ者は処分

 

・規律に逆らった者は処分

 

という物。何れも毒ガスによる処分、或いは銃殺と書かれていた

 

「ッ…人の命を何だと思ってんの……!?」

 

千束は読み進める内にふつふつと怒りが込み上げてくる。そして最後の項目へ辿り着いた。

 

「ロベ…リア……?」

 

アルファベットで題名記載された項目、LOBElIA。そこにはカバンや制服の図面が記載されていた。

的年齢は6歳〜18歳、性別は女性のみ。

これだけ見ればリコリスと酷似している。だが唯一違うのはロベリアは自警組織である事。

 

教団内部における情報流出の防止、並びに教団に反する組織や人間の殲滅、教団離反者の殺害。外部へ情報を漏らす事は絶対に許されないらしい。

 

「成程…この前見たアイツもロベリアって事か…。」

 

千束が納得していた時、クルミから急げと急かされる。どうやら千束が戻らない事を怪しみつつあるらしい。

 

「りょーかい…直ぐ戻る!」

 

千束は資料の1つを隠し持つと書物庫を出る。そして先程の部屋へと戻って来た。

 

「…随分遅かったですね。大丈夫でしたか?」

 

長谷川は千束へ声を掛けてくる

どうやら何も気付かれて居ないらしい。

 

「あはは…ごめんなさぁーい、迷っちゃってぇ…。」

 

てへへと笑いながら誤魔化すと、たきなの横へ座る。そして長谷川が話そうとした途端に千束から切り出した。

 

「あのぉ、今日はもう遅いんでぇ…また今度来ても良いですかぁ?」

 

長谷川は呆気に取られるものの許可を出し、千束とたきなは立ち上がるとそのまま事務所を後にしようとする。

そして受付まで差し掛かった時だった。

 

「…人様の施設に土足で忍び込んで、物を盗もうなんて良い度胸してらっしゃるわねぇ?実虹…咲和子さん?」

 

聞き覚えのある声に足を止めると立ち止まる。恐らく、由紀那である事は間違いないのだが何故此処に居るのだろうか?実は千束が戻らないのを怪しんだ職員が彼女だけを呼び付けたらしい。2人なら彼女1人で充分と判断したのだろうか。

 

「…あのぉ?どちら様ですか?ウチら、会うの初めてだと思うんですけどぉ?ねぇ?徠夢音っちぃ?」

 

「え、ええ…そうだと思うんだけどぉ?ウチら初めてココ来たばっかだしぃ?知らねぇっつーかぁ?」

 

千束とたきなは態とシラを切って対応する。

しかし、由紀那はそんなのをお構い無しに指示を出してくる。

 

「両手を頭の後ろに回し、その場に跪きなさい?この場で臓物ぶちまけたくないのなら大人しく従う事ね…。」

 

千束、たきなは振り向けずその場に固まってしまう。どうしますかと千束の方にたきなが視線を送る

千束は何かを考えている様子だった。

 

「…はぁーい、解りましたぁ。」

 

千束はやれやれと思うと両手を上げた。そして由紀那が指示を出すと1人が2人へ近付いて来る。どうやら向こうは銃を持っており、近付くと千束の身体を触ろうとする。腰の辺りへ手を伸ばして来たその時。

 

「ちょいちょい…女の子の身体をいきなり触るのは宜しくないでしょうが!」

 

千束は咄嗟に男の片腕を脇で挟むと手にしていた銃を奪う。そして天井の消火剤噴出機へ目掛けて発砲すると大きな音と共に白い煙が辺りへ撒き散らされていく。

 

「ほら、今のうちに!」

 

銃を捨て、受付から外へ出る。後ろから悲鳴や叫び声が飛び交うと直後に銃声と共に背面から弾が飛んで来た。

 

「うっひょー!!こりゃまた激しいなぁ!!本性剥き出しって感じぃ?」

 

千束は廊下を走りながら笑っている。

そして非常階段のドアを開けると階段を降り始める。

 

「ちょっと、笑ってる場合ですか!?あんな事して!!」

 

たきなも続いて階段を下るのだが、その前にドアを閉めて到着を遅らせてから階段を下り始める。そして何とか1階へ降りるのだが、上からは怒号が飛び交っている。

 

「へへーん、悪いねぇ…コレ貰っとくよん♪」

 

千束とたきなは駅の人混みに紛れるとそのまま店へ戻って行った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「たっだいまー!千束が帰って来ましたよーん!」

 

千束がドアを開けて店へ入ると、たきなも続いて中へ入る。

 

「おめーらまた凄い格好してんなぁ!?すっげぇギャルしてんじゃん!!?」

 

カウンターで酒を飲んでいたミズキが2人を見ては口から酒を噴き出してしまう。

 

「仕方ないでしょー?記憶喪失の相棒の為だもんなぁ?たきなぁー?」

 

たきなが頷くのを他所に、千束は服の内側から盗んで来た資料を取り出すと机の上へ置く。

 

「何とか上手く行ったらしいな。駅前の事務所は大騒ぎになってるぞー?銃声がしたとか何とかでパニック状態だぞ?」

 

クルミがニヤニヤしながら部屋から出て来る。そして座敷のテーブル近くへ腰掛けた。

 

「あ、先生!ゴメン、お店もう閉めといて!」

 

千束が指示を出すとミカは頷き、表札をCLOSEにしてから扉に鍵を掛ける。

そして千束が資料を見せながら説明を始めた。そして大体の説明を終えると資料を閉じる。

 

「以上が、ルミナの実態…とは言え多分これでも未だほんの一部だと思うな。」

 

全員がその場で固まっていた。表は普通の宗教寄りの保護施設だが、裏は子供達の一部をテロリストをとして教育して編成。役に立たなければ殺害するという狂気じみた事を行っていた。

 

「ボクの調べた通りだったな…レナも経緯は知らないが此処(ルミナ)に引き取られて育てられた。DAへ移送された後、もし仮に教団へ戻されていたら、今頃は……。」

 

クルミが何かを言い掛けたと同時にたきなが呟いた。

 

「教団所属のテロリスト…。それじゃあ、まるで唯の使い捨ての駒と同じじゃないですか…!洗脳されて、教育されて、役に立たなければ殺される…こんなのって…酷過ぎます……ッ!」

 

たきなは思い詰めた顔をしていた。こうなる前は千束や自分以外にも誰かに笑い掛けたり、話したりしていた子。幼少期に保護された施設でテロリストとして教育されていたという事実。それが受け入れ難かった。

 

「だからこそ、私達が助けてあげる必要が有るんだよ。これも立派なウチの仕事!」

 

ぐっと親指を立てると千束は微笑んだ。

そして千束は立ち上がると普段の制服に着替えに行く。

 

「ルミナ…そして、ロベリア……!」

 

たきなは千束を見送ると拳を握り締める。何処か考える様な顔付きのまま、後からたきなも着替えに向かった。

 

レナの記憶がいつ戻るのか?それは誰にも解らない。だが、今出来る事は彼女の事を知り、その上で受け入れる事だった。彼女がどの様な過去を抱えていようとも、それを乗り越えて行ける事を信じて。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

病院の面会時間が過ぎようとしていた頃。1人の男が病院の廊下を歩いていた。そして病室の前へ立ち止まると室内へ入り、未だ明かりの点いている場所へ近付く。そしてパーテーションを捲り、患者を見据える。

 

「…?あの、どちら様ですか?」

 

そこに居たのはレナ本人。少し離れた場所の棚にある花瓶には色取りの花が差し込まれている。また、髪は結んでおらずそのままになっており、以前より長くなっていた。

 

「…お前に会いに来たのさ、葉月玲奈ちゃん。ちょっと仕事をして貰いたくてな…良いだろう?医者の話じゃ、記憶飛んでるらしいじゃねぇか?」

 

その男はレナへケガを負わせた張本人、神代。そして神代はレナの方へ顔を近付けると目を合わせる。

赤い目はまるで血のように真っ赤だった。

 

「いいか?これから言う事をよく聞け…先ず、お前の仲間のリコリス2人をその場で殺せ。その後、街へ出て残りのリコリスを見つけ次第片っ端から殺せ…!!オレの仲間には市民に向けてリコリスとDAを裁く権利がお前達に有ると扇動させる…後はオレとイルカ野郎がやる…!お前の使命を責務を果たせ……全てはアラン機関の為に。」

 

肩へ手を置くと神代は離れた。

レナは虚ろな目のまま、小さく頷く。

そして刃渡り約15cmの黒い刃のコンバットナイフ、更に銃と黒い制服を彼女に手渡した。

銃のスライドカバーの左側には-STRIKE-と記載がされており、世間ではストライクウォーリアと呼称されるタイプの銃。

 

「頼んだぜ…玲奈ちゃん…?まさか向こうも味方が仕掛けて来るとは思わねぇだろうなぁ?オレとお前は同じ施設の生まれ…だが、オレは教団の奴等とは違う…。国を壊したら次は教団そのものをぶっ潰してやる!!」

 

神代は不気味な笑みを浮かべると病院を去った。狂気の足音は直ぐそこまで千束達や、この街に住む人々らに近付きつつあった。

 

 

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