リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

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25_decide how to live

本部の通信も途絶え、更に発砲許可が下りないという状況は未だに継続されていた。銃を持った一般市民への発砲は避けなければならず、下手に動けば的にされてしまう。街中のリコリス達は苦戦を強いられていた。

ご丁寧にリコリスの色も全て明らかにされてしまっている事から余計に狙われ易い。街中では一般市民に紛れたテロリストもおり、苦戦は必須だった

 

「見つけたぞ…リコリス!!」

 

「なッ…!早く銃を捨てなさい!銃を…あぅッッ!!?」

 

若い男は白い服のリコリスへ発砲し、殺してしまう。呼び掛けた程度では応じない。そこへ数人の市民が集まると射殺したばかりの彼女へ向けて数発も発砲し、更なるトドメをさした。

立ち込める硝煙の匂い、そして漂う血の匂いが今の現状を物語っていた。

 

1人の男は廃墟と化したビルの中でこの現状をモニターを通して見て笑っていた。彼が別で用意したドローンによる映像は鮮明で、リコリス達が戸惑う表情や市民がリコリスへ銃を向けて何かを叫んでいる様子等が全て映っていた。

 

「コイツは面白ぇなぁ…こうしてお互いに潰し合ってくれるサマを見るのは…!」

 

どれ程の命が失われようが自分には関係ない。今日に至るまで、多くの犠牲の上に自分達という存在は立っている。

それは神代自身の生い立ちも大きく関係していた。

目を閉じて思い出されるのは悲鳴と怒号が飛び交う訓練施設、防音の部屋で自らの死を知り泣き叫ぶ姿、刃物や銃弾の痕跡が残った自分と同年代の人間の死体の数々。それは男女問わず、無造作に放置されていた。

 

ー生か死か、或いは消されるか。そんな物は全て終わらなければ解らないー

 

「さぁて、時間だな…!」

 

モニターを別の映像へ切り替える。

そこには車から降りる3人の少女を捉えていた。仲間数人と共に神代は歩みを進めて行く。全ては彼女達を消す為に

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その頃、DA本部ではラジアータのハッキングによる機能停止対策に追われていた。何者かによるサイバー攻撃でダウンし、現場のリコリスとも音信不通に陥ってしまっていた。

 

「ラジアータの機能不全、並びに真島の行った作戦の応用…完全に我々は指を咥えて見ていろという事か…神代め……!」

 

楠木はモニターを睨み付けていた。

あの時と同じで好きな様にされている事実が気に食わない。

その時、画面が突如として切り替わると黄色いモニター画面へ切り替わる。リスのマークが中央に映し出されている。

 

「これはまさか…。」

 

「ウォール…ナット…何でまた…!?」

 

DAの職員らにも見覚えが有った。

真島の時も見たリスのマーク、それこそがウォールナットの物。

そして通信が入って来る。

 

「君達の事を助けるのは2度目だ。だが、此方は気にしない。既に手は打ってある…ロボ太の時と同じ手段による攻撃方法では無いが、此処はボクに任せて欲しい。」

 

ウォールナットは淡々と話し続ける

それに対し、楠木と秘書の女性は話し合いを少しすると切り出してくる

 

「…勝算は有るのか?」

 

ただ一言、楠木はそう話した。

 

「勿論。だが、少し時間が掛かる……また追って連絡する。」

 

そう喋ると通信が切れた。

 

「また奴に頼らねばならぬとは…。 」

 

通信を終えた楠木は椅子へ腰掛ける。

だが、ラジアータさえ復旧してしまえば此方のモノ。ハッキングを仕掛けた奴を逮捕に踏み切ればいいだけだ。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

その頃、リコリコに残されたクルミとミズキの2人はパソコンの画面をじっと見ていた。

 

「なぁーあ、こっからどーすんだよ?」

 

ミズキはブツブツ言いながらクルミの弄るPCの画面を見ている。ウォールナットと名乗り、ラジアータの復旧を約束したが肝心な手立てが掴めていない。

 

「後は前と同じやり方で良い筈なんだけど……だぁーっ!顔が近い!少し離れろ!」

 

グイッと片手でミズキを画面から少し押し遣る。

 

「私にも見せろって!ちびっ子!」

 

そう言いながらパソコンへ向かっていると店の電話が鳴った。

 

「おい、電話鳴ってるぞ?」

 

クルミはカウンター側を指さす。

3人は等に出掛けている為、恐らく何れかなのだが。ミズキはパタパタと歩くと部屋から出てカウンターへ向かった。そして徐に受話器を取る。

 

「へいへーい…今出ますよっての。はぁーい、もしもしぃ?看板娘代理のミズキですぅー!現在、従業員不足の為、営業出来ませ……え?ああ、ウォールナット?なぁーに言ってんの?ウチにはそんな、すっげぇハッカー居ませんけど?オタクどちら様?え?USB?何の話?」

 

こんなやり取りが聞こえるとクルミはハッと我に返る。クルミも部屋から出ると話の内容を聞き出せとジェスチャーを送る。そしてそれを見たミズキが若干、怪訝そうな顔で頷くと事細かに聞き出した。そして受話器を置くと戻って来る。

 

「アンタに協力したいんだとさ…声の質からは恐らく、あの3人と同年代だろうね。ネカフェに居るから指示出せって。」

 

メモ書きを手渡すと事細かに色々書かれている。少し字が荒っぽいが、仕方ない。それを受け取るとクルミは再びPCに向かい合う。

 

「…此処だな!よし……!」

 

クルミはメモの情報を元に電話してきた相手と簡易的なチャットで繋がる。そして連絡を取り始めた

最初は簡易的な挨拶を交わし、そこから本題へ。

協力者の話では今回の件は以前の手口と比べると若干だが異なるらしい。

 

「成る程…大体は理解できた。後はUSBを挿入できれば万事解決なんだが、そんなプログラム組めるのか?第一、信用していいものか……。」

 

クルミは首を傾げる。すると一通のメッセージが届く。

 

[私はフェアに戦いたい。誰かの邪魔が入らず、ただ二人だけで。貴女の元に居る子への貸しという事で構わない。借りは命で返して貰う。]

 

という一言が添えられるとクルミは何か嫌な予感を感じた。だが、今は此奴を信じるしかない。

クルミは千束へ話さずこの提案を快諾し、ラジアータ奪還作戦を開始する。

そしてプログラムを生成するとクルミは最後の仕上げとして名前をどうするか提案した。

 

[プログラムは完成した。ネーミングはどうする?お前が決めてもいいぞ?]

 

[プログラム名はNOISE。それと今回のハッキング首謀者は有名な制裁サイトの運営者。イルカのアイコンだからドルフィと呼ばれている。]

 

その後、相手側からの通信が途絶えると少し間を開けてからラジアータが復旧した事を知る。そしてクルミは最後の仕事に取り掛かった。

 

「あー、もしもしポリスメン?此処と此処と此処と此処の住所に住んでる人たちが不正アクセスしているという書き込みを見たんですけどー?」

 

別のスマホから警察へ一報を入れるとクルミは電話を切り、一息ついた。

 

「それにしても…さっきの奴、誰なんだ?」

 

クルミには解らない。辿ろうと思えば辿れるのだが直後として連絡が途絶えてしまったからだ。

その頃、都内のネットカフェでは一人の少女がカウンターのスタッフと話していた。

 

「ごめんなさい、パソコン壊しちゃって…これで足りるかしら?何だったら上乗せするけど?」

 

若い男性の店員へ話しかけている。店員は受け取れないと伝えるも彼の手にパソコン一台購入できる程の金額を手渡し、

更にコーヒー代として小銭をトレイへ置くと去って行った。

 

「これでフェアになった。私たちは殺し専門の組織だけど、こういう事も訓練されている……皮肉な物ね。幾ら凄腕のハッカーだろうと

こんな小娘に出し抜かれるなんて…。後はチサトに借りを返して貰うだけ。」

 

少女はサイレンサーの付いた銃をカバンへ戻すと街中の人混みへ消えていった。

 

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ラジアータが復旧し、DA側も本格的に行動を開始。

神代の居場所の特定や現場のリコリス達へ作戦指示を再度行うと同時に武装した市民への対応を促す。

それは以前作成した映画の続編で、応募して選ばれた市民が敵としてのエキストラ参加となり、撮影に協力してもらっていたという物。

 

今回は街でのゲリラ撮影を行う日だったことを都知事協力の元、街のモニターへ広告として表示させた。

こうした配慮により少しずつだが街は混乱から脱却しつつあった。

 

そして千束達を乗せた車はある場所で停車する。

以前、レナが交渉作戦を決行した東京クリエイティブタワー。そこの近くに居たのだ。タワーの近くには別で建てられるであろう商業施設の工事現場が有る

 

「此処に神代が居るとクルミから連絡が有りました。夏野さん達も現場で待機してます。」

 

たきながインカムで連絡を終えると千束の方へ振り向く。千束はそれに頷き、三人は車を降りるとタワーを離れから見ていた。

 

「でっけーなぁ…レナは行った事有るんだっけ?」

 

千束はレナの方を振り向く。

 

「ええ、とは言っても……展望階だけですが。」

 

彼女が見たのはフロアマップのみ。唯一言った事が有るのは広めな展望階がある40階だけ。

 

「終わったら、クルミも連れてまた来ましょう?四人で。今度は私がレナの服を選んであげますから。」

 

たきなは明るい笑顔で微笑む。

 

「おう、そうだな!たきなのセンス気になるしなぁ~?千束さんのセンス超えられっかな~?」

 

ニヤニヤしながら千束はたきなを見ている。

 

「大丈夫です、これでも女の子ですから!!」

 

自信満々に返答すると三人は笑っていた。これからあのタワーに居る凶悪なテロリストを捕えに行くというのに。

 

「あ、レナ!ほら忘れ物!これ着替えないと…あー!先生はこっち見ちゃダメ!!」

 

千束は車のトランクからセカンド用の制服とカバンを取り出す。それをレナへ手渡した。

 

「着替えたら髪整えっから待ってろよー?」

 

レナは受け取ると車の陰で着替え始める。そして普段着ていた服へ着替え終わると、此処に座ってと促され、簡易的な椅子へ腰掛けた。

 

「しっかしまぁ、髪伸びたなー……。」

 

千束はレナの髪を弄りながら呟くと

彼女の首周りに散髪店で使うカバーを掛けてやり、髪の毛の落ちる辺りにビニールを広げる。

 

「動くなよー?動いたらバッサリ切っちゃうから!」

 

千束はレナの髪を触りながら用意していたハサミで切っていく。前髪は眉毛に掛かる位のパッツン具合に、そして長くなった後ろ髪も腰より少し上で切る。

 

「うっし!出来た!!」

 

千束はカバーを外すとビニール袋に纏めて押し込む。風で髪の毛は少し散らばってしまったが。

 

「ありがとうございます……スッキリしました。」

 

鏡を見ながらレナは微笑んでいる。

 

「千束、もしかしたら美容師になれるのでは?」

 

たきながボソッと口を開いた。

確かに変な切れ方をしていない上に丁寧に整えられている。

 

「んー?成っても良いけど、色々面倒じゃん。免許とかさぁ……。」

 

千束は片付け終わるとレナの後ろ髪を手に取り、慣れた手付きで纏めるとポニーテールを作ってあげた。

 

「どう?いつもと若干違うけど…動き易くなったろ?」

 

鏡を見るレナの横へ顔を出すと、得意気に微笑んでいる。

 

「…お店の時はこのスタイルですけど、外では初めてです。」

 

レナは、こくりと頷く。そしてカバンを背負うと2人と共に歩き出そうとする。

 

「レナ、此奴も忘れ物だ!」

 

3人を後ろから見ていたミカから声を掛けられるとレナは近寄る。

 

「忘れ物?何か有りましたか?」

 

首を傾げているとミカは銃を取り出す。

H&K USP9。それはレナの普段使用する銃だった。

 

「お前が失踪した後、カバンから回収してメンテナンスと調整をしておいたんだ。それとグリップをお前の手のサイズに合わせてカスタムしてある。」

 

受け取るとレナは自分の銃を握り締める。前は少し滑ったりしたが、今回はそれが無くなっている。それに銃身自体も磨かれたのか綺麗になっていた。

 

「あと、コレを。千束のと色は異なるが非殺傷弾だ。但し、マガジンは3個。ここぞという時に使うといい 」

 

弾の先端が青いゴムにすり変わっているが、レナの銃でも撃てる様に専用に作成してくれたらしい。

 

「ありがとうございます…でも、お店のお金は大丈夫ですか?たきなさんから聞いてます、結構切羽詰まってるって……。」

 

心配そうな顔でミカを見詰めると片手をポンと頭に手を置かれる。

 

「心配しなくていいんだ、その分普段通りに働いて貰えれば…それで良い。お前も私の教え子だ…必ず生きて帰って来なさい…。」

 

微笑むとそのまま頭を撫でる。その顔は子供を見守る父親の様だった

 

「…はい、マスター!行ってきます!」

 

レナは頭を下げ、2人へ合流するとビルの方へと歩んで行った。

 

「…レナ、私も貴女に渡したい物が。」

 

たきなは歩きながらカバンを漁ると小さな紙袋を取りだし、手渡して来る。

 

「…?これは?」

 

袋を受け取り、開けてみると中には鳥のキーホルダーが入っていた。

 

「カモメのキーホルダーです。千束の付けてる犬のキーホルダーを売ってるお店に有ったので。」

 

微笑むとレナからキーホルダーを一旦受け取り、レナのカバンへ付けてみると普段の仕事用のカバンが可愛く見えた。

 

「ありがとうございます…大切にしますね。またいつか、皆さんとお出掛けしたいです…その時は私がお2人に何か差し上げます。2人にはお世話になりっぱなしですから……。」

 

レナは心做しか嬉しそうだった。

生まれて初めて友達と言える存在が出来たのが嬉しい。

 

百合達の隊のメンバーだった時も話したりはしたが、出掛けたりは余り無かった。だからこそ余計に新鮮なのだろう。

 

「しっかしまぁ、だいぶ変わったよね?初めて来た時は、ぶすーっとしてたのにさぁ?」

 

ニヤニヤしながらレナの顔を覗き込む。事実、彼女が初めて来た時は愛想が殆ど無い上に笑ったりもしなかった。

だが、リコリコへ来てから大分日数が経ってからは笑ったりする事も少しずつ増えていった。

 

「う…そ、そうですけど……今言わなくても良いじゃないですか!ほら、行きますよ!」

 

恥ずかしそうにしながら千束の方を見つめ、少し早歩きになると自分だけ先に歩いて行く。

2人はその様子を見るとクスクス笑いながら後を追い掛けて行った。

┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈

「良し、これで大丈夫…!」

 

その頃、百合達の班は楠木からの指示によりクリエイティブタワーへ先に移動していた。現場に居たリコリスらの援護や負傷した者の救護に追われていたのだった。最後の一人をエレベーターへ乗せると裏口からエレベーターで搬送させた。

 

「百合さん、レナ達も着いたって!」

 

椿が通信を終えると駆け寄って来る。

このビルの何処かに潜む神代を捕らえる為に司令部は千束達を呼んだ。

 

「そう、解ったわ。…此処から先はより慎重な行動が求められる。油断せずに行くわよ!」

 

百合はメンバー4人に通達し、千束達を待つ事になる。タワーの5階のエレベーターのドアが開くと3人が降りてくる

 

「錦木千束、以下3名様ご到着!」

 

にひひっと笑うと百合達へ合流する。

 

「…千束さん、レストランに来た訳じゃ無いんですよ?」

 

苦笑いしながらレナが突っ込む。

 

「同感です。千束、もっと気を引き締めて下さい。」

 

たきなもレナへ賛同するとため息をついた。

 

「これで揃ったわね…相変わらずの能天気ぶりには驚かされるわよ、ホント。」

 

百合は少し笑いながら話す。何処かのファーストと比べ、そんなに堅苦しい感じでは無かった。

 

「いつも通りだよ、私は。フキみたいにずーっとピリピリして無いし?しっかしまぁ…百合も大変だねぇ。チームにしてはかなり個性的じゃん?」

 

キョロキョロと見回すと千束は呟く。

 

「貴女達も似た様な物でしょう?さ、無駄話はこれくらいにして…行くわよ!」

 

百合や千束を含む計7人のリコリス達止めてあったエレベーターへ乗り込む。そして潜伏しているとされるタワーの最上階を目指そうとする。だが、途中の20階で止まってしまった。客は全員避難させている筈なのだが、理由が解らない。

 

「止まった?…何で?」

 

カスミは顔を少し覗かせるも辺りは何も無い。そこで千束が見てくると話し、エレベーターから降りてしまう。

配電設備が有るのはこのフロアなのだが、明確な場所迄は解らない。

 

「んんー?何だろ、故障か?それとも…整備不良?」

 

千束はエレベーターの電源が入ってる事を知り、取り敢えず上の階を押してしまえば解決すると思うとエレベーターの方へ近寄ろうとする。だが、エレベーターのドアは突如閉まるとそのまま上へ向かってしまう。中ではレナやたきなが叫んでいるのが解る

 

「うっそだろ……!?」

 

千束は完全に置いてけぼりを喰らってしまう。そしてコツコツと足音が室内へ

響く

 

「・・・Добрый день(こんにちは)。チサト」

 

立ち止まると紫髪の少女が千束の真後ろで立ち止まる。

 

「おいおい、マジかよ!?」

 

振り向くと、そこに居たのは見覚えの有る顔立ち、少しつり上がった目、猫の様な黄色い瞳。腰まで有る紫色の髪に、前髪は少し目に掛かっている。上下黒い制服と胸元には赤いスカーフ、両手には指ぬきのグローブ。紛れも無く神崎由紀那だった

 

「貴女の組織のAIをハッキングしていたハッカーは潰した。今回の件を首謀したテロリストの情報も組織へ流しておいた。これで心置き無く貴女と戦える……そうでしょう?」

 

由紀那は首を傾げ千束を見ている。

以前、薬の取引現場に居た犯人の1人を射殺し掛け、互いの方針のすれ違いから戦う事になった。戦闘に関しては千束と互角か或いはそれ以上

だが未だ本当の実力は解らない。

 

「…だから何?褒めて欲しいの?それとも、お礼を言って欲しいワケ?はいはい……あーりーがーとーうー!」

 

千束は嫌な顔をしながら、ありがとうと嫌味たっぷりで伝えた。

 

「お礼なんてどうでも良い。私は目的の為なら手段を選ばない…今までも、そしてこれからもそれは変わらない。」

 

「あっそ。その為なら自分の仲間や大切な人が死んでも貴女はどーでもいい訳か。悲しい人生だねぇ…。」

 

 

「別に。どうでも良い。私は生まれた時から1人……。物心付いた時から教団に居たわ。そして洗脳とも言える過酷な環境で育てられ、僅か6歳で銃を握っていた。例え相手がどんな敵であっても殺す…命乞いをしても、泣き叫んでも、殺す相手に家族が居ようともそんなのは関係無い…。そして私や玲奈の様な女の子達を集め、教団が生み出した組織がロベリア。要人の暗殺、情報漏洩者の殺害、反抗勢力の壊滅、教団にとって不利益な証拠の隠滅…。貴女の居るリコリスが決して行う事の無い、闇の部分を担う存在……それが私達。」

 

 

「つまり生い立ちも全て真っ暗って事か…ホント、ご丁寧に色々説明してくれちゃってさぁ。自分でやりたい事とか、好きな事とか無い訳?何でもかんでも偉い人に命令されて、それを実行する…それの繰り返し。もっと自由に生きたら?プログラムされたロボットじゃねーんだからさ?」

 

「貴女と私は違う。貴女は沢山の選択肢が有り、沢山の仲間に囲まれ、やりたい事も嘸かし沢山有るでしょうね。けど、私には選択肢なんか無い。仲間は使えなければ容赦無く切り捨て、歳頃の女の子らしい事は何一つ知らない。常に頭に有るのは殺るか、殺られるか。ただそれだけ……。」

 

 

「そうやって何でもかんでも悪い方向に考えるから、上手く行かないんじゃないの?言ったろ…もっと自由に生きなよ。今まではそうだったかもしれないけど、此処から先は変えられるかもしれない!!誰かに従って生きるなんてそんなの悲しいし虚しいだけだって!!正しい事も、間違ってる事も、全部自分で決めろよ!!誰かに選択肢を委ねるな!!貴女はロボットや機械なんかじゃ無い……私と同じで血の通った人間だろ!!?」

 

千束の叫び声がフロアに響いた。

それは誰かに縛られず、人間らしく生きて欲しいという純粋な願いそのものだった。

 

「人間らしく…か、貴女らしいわね。あれほど大人しかった玲奈が明るくなったのも頷ける…けど、私達は出会ってしまった。私のやりたい事は、チサト…貴女を殺す事。他には無いわ。」

 

千束を見ながら少し歩みを進めて行くと、左耳に付けていたインカムをあらぬ方向に投げ捨てた。

 

「どうしても…やらなきゃダメ?今ならもう1人位、従業員増えても良いと思ってるんだけどな……。」

 

千束も由紀那を見ながら少し歩みを進めて行く。

 

「貴女を絶対に…!」

 

「絶対に貴女を…!」

 

 

「「殺す!!(殺さない!!)」」

 

お互いに叫ぶと同時に銃を引き抜き、突きつけ合う。千束の掲げる不殺主義は殺人を平気で行う由紀那の心を、彼女自身を救えるのだろうか?

 

それは全てが終わってからで無ければ解らない…。

 

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