リコリス・リコイル/their other story   作:秋乃楓

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04_can't change the past

「敵も助けるよ。命を大事にだからさ」

 

あの時、千束がレナへ放った言葉

今回は敵だっただけで次からは違うかもしれない。そういう意味で伝えたのだろう

だが何故、敵も助ける必要がある?

躊躇わず引き金を引けばそれで済む

無論、千束の腕ならより早く効率的に仕留められる筈だが。それだけがずっとレナの頭の奥で引っ掛かっている

 

「おーい?ぼーっとしてると危ないぞ?」

 

声を掛けられて我に返る

転属2日目。レナは今日も同じくリコリコでアルバイトとして働いている

とは言え、任されてるのは簡単な掃除と買い出し位なのだが

 

「すいません・・・少し考え事を。直ぐに仕事に戻りますから」

 

レナは箒を握り締め、千束の声に応える。

 

「考え事ねぇ?もしかして昨日の事?」

 

首を傾げながら千束は顔を覗き込む

その様子は何処か気に掛けている様だった

 

「・・・私には理解出来ません、敵を助けるなんて事は特に。だってそうでしょう?仮に助けたって同じ事をまた繰り返すかもしれないのに」

 

犯罪者を助けたとして、その人が改心するとは限らない。また同じ事を繰り返すか、或いはもっと大きな事件をやらかすかもしれない

そう思えば思う程、消しておいた方が社会にとっても都合が良い

 

「そうかもしれないけどさ、その為に私達が居るんでしょ?昨日の人達も今回は敵だった。それだけだよ・・・そこから先はその人次第って事」

 

千束はポンポンと背中を叩く

いつか、そう思える日が来ると千束は念を押して来た

 

「2人とも手が止まってますよ?仕事して下さい、仕事!」

 

たきなが手を叩きながら仕事に戻れと促す。そう言われると千束は軽い返事だけすると自分の仕事へと戻って行った

 

それから丁度、喫茶店の仕事も落ち着いた昼頃。

部屋でレナが1人で休憩中、同じ部屋の押し入れの引き戸が開かれる

 

「んんー・・・ッ、おーい、お茶を・・・って誰だお前!?」

 

小柄の少女が此方を見て思わず飛び退いた。何処からどう見ても自分より歳下にしか見えないが

 

「そ、そっちこそ・・・!」

 

咄嗟に振り向いたレナも同じく固まってしまう。何せ押し入れの中から人が出て来たのだから余計に

すると部屋の襖が開き、千束が入ってくる

 

「おお、珍しい組み合わせだねぇ?そこのちっこいのが昨日言ってたクルミだよ。で、その可愛いポニーテールの子が昨日からウチに来たレナ。仲良くしてあげてねー」

 

ニコニコしながら合間に入ると2人の手を握らせる

 

「ぼ、ボクがクルミだ・・・よろしく」

 

「・・・浅水レナです。よろしくお願いします 」

 

覚束無い声でお互いに握手を交わす

それでも、未だぎこちないが

 

「さーて!お互いの自己紹介も済んだから色々聞かせて貰おうかぁ?」

 

千束はレナの方を見ている

 

「色々・・・とは?」

 

思わず聞き返した

 

「決まってんでしょー?何で此処に来たのか、理由が知りたいのー!それで、レナはDAに戻りたいの?それとも、戻りたくないの?」

 

にひひっと笑うとレナの方を見ながら終始笑っている

 

「千束、コイツもたきなと同じでワケありなのか?」

 

クルミは千束の方を見ると首を傾げる

 

「そうじゃなきゃ、此処に居ないってば」

 

千束はクルミの言葉を聞き、直ぐに返した

 

「それで、何があったの?たきなみたいに滅茶苦茶やったとか?」

 

いつの間にか人数分のお茶を持って来た千束はクルミと共にテーブルを囲う様に

座る。そしてレナは徐ろに口を開いた

 

「・・・私が此処に転属になったのは仲間の命より、敵を射殺する事を優先して動いたからです。有力な情報を持っているかもしれないと、予めリーダーから聞かされていましたが。でもあの時・・・仲間の1人が人質に取られても誰1人動こうとしなかった。でも、気が付けば私は勝手に動いて、敵を殺して仲間を助けていた・・・そして私は転属になった。勝手な行動をし、作戦を妨げる者はDAに必要無いと」

 

思い出したくは無いが、全ては事実。

今更それをどうこうする事は出来ない

否定するつもりも無い。自分の行動は正しかったとも言う気は無かった

千束は少し考えてから話を切り出した

 

「動いたのはレナが仲間を大切だと思ったからでしょ?確かに、情報持ってた奴を消しちゃったのは不味いけど・・・それでも、仲間を助けたいと思った。だからレナは間違ってないよ」

 

千束は頷きながらレナの言った事を受け止める。初めて自分のした事を解ってくれた人に出会った事で、内心軽くなった気がした

 

「ところで、何でレナの銃にはダットサイト付いてんの?サイレンサーは聞いた事有るけどさ」

 

ふと千束は首を傾げる

そもそもダットサイトとはドットサイトとも呼ぶのだが所謂、照準器であり

赤い点をターゲットに重ねて引き金を引くだけで命中させることが出来る物。

光学照準器の1つだ

何故、レナの銃にはダットサイトが搭載されているのか。それが千束にとって気掛かりだった

 

「私の射撃能力はサイト抜きだと余り高くは有りません。訓練してた時は的に中々当てられず、模擬戦でも上手く行かなくて・・・。そんな中、夏野さんが私にくれたんです。これが有れば、どんな物だろうと必ず当てられるって」

 

ダットサイトを付ければ、本人の射撃能力が低くても命中制度を上げられる。

更に、彼女が離れる前のチーム編成も夏野自身がレナを組み込む様に上へ掛け合った事もレナは明かした

 

「ふぅん・・・じゃあ、余計に複雑って事か・・・。レナからしたら、その人は恩人だもんねぇ?」

 

千束はボソッと呟いた

恩を仇で返す。それに近い形でチームを去ったのだから尚更だ

そして今まで黙ってたクルミも声を出した

 

「じゃあ、ダットサイト無しだとお前の弾はマトモに当たらないって事か。もし戦闘中のアクシデントで壊れたらどうする気だ?DAもDAだな、コイツを組み込んだ理由を知りたいよ」

 

じっとレナの方を見つめる

事実、クルミの言う事は間違ってはいない

 

「・・・そうです、私はコレが無ければ無力です。今までもコレに頼って来たから」

 

クルミの言葉はレナに真っ直ぐ突き刺さる。間違ってはいない、照準器さえ有れば簡単に急所も狙える

悪魔で照準器さえ有ればの話だが

 

「こーら!クルミ、そういう事言わない!レナが可哀想でしょ?まったく・・・思った事を直ぐに言えば良いってもんじゃないんだからさぁ」

 

千束が話へ割って入ると微妙な空気が少し晴れた。だが途端に千束は席を外し、何処かへ行ってしまう

 

「・・・悪かった、ボクにも悪気は無かったんだ。お前の事も知っておこうと思って」

 

千束が居なくなってからクルミが話を切り出す。

 

「大丈夫です。気にしてませんので」

 

そう言われるとレナは気にしてないとだけ伝える。何処と無くだがまた少し空気が悪くなる

 

「お待たせー!レナのカバン、これで合ってるっけ?」

 

千束が持って来たのはレナが任務時に使用する為のカバン

そして千束は慣れた手つきで銃の入っている側を開き、中から銃器を取り出す

 

「お、おい!?まさかボクを撃つんじゃないだろうな!?悪かったよ、ボクが軽率だった!だから・・・その、撃たないでくれ!」

 

何かを察したのかクルミが動揺する

まるで怯えた小動物の様に小刻みに震えている

 

「あのねー、銃出したからって撃つ訳無いでしょ?コレをこうして・・・っと」

 

千束はクルミの心配を他所に、テーブルの上にレナの銃を置く。

するとダットサイトを取り外した

 

「錦木さん、これが無いと私は・・・」

 

レナは咄嗟に切り出す

ダットサイトが無ければマトモに当てられないのだから、取り外すという事は

レナは役に立たないと言ってるのにも等しい

 

「大丈夫、うちの下は射撃場だからそこで練習すれば良いじゃん!練習重ねれば絶対、当てられる様になるって!それに・・・もう1人、うちにはリコリスが居るしね」

 

千束は外したダットサイトを手に持つと

それをポケットへしまう

 

「これで今までのレナは終わり。此処からは新しいレナだよ。サイトを使わないで、自分の目で見据えて狙うんだ。そして二度と周りに無能だなんて言わせない位に強くなる。まぁ、私もたきなも負けてらんないけどね」

 

千束は両手でレナの手を握り締めた

 

「過去ばっか気にしたって悲しくなるだけだよ。もっとさ、レナは気楽に自由に生きていいんだよ。過去は変えられないけど、これから先なんて誰にも解らないんだから」

 

千束はレナの方を見ながら微笑んだ

この人は今まで私が関わって来た人達と比べ、優し過ぎる。まるで大きな陽だまりの様な温かさと温もりを感じる程

 

「あの・・・盛り上がってる所、悪いんですけどとっくに休憩時間終わってますよ?」

 

襖を開けたたきなが此方をじーっと見ている。さっさと仕事しろと言わんばかりの目だ

 

「「直ぐに行きます!(行くから!)」」

 

レナと千束の第一声が被る

お互いに少し笑いながら部屋を後にした

 

「・・・クルミも働いて下さい、手が回らないんですから!」

 

2人が部屋を後にしてから、後ろでたきながクルミへ催促している

 

過去は変えられないが、未来は変えられる。レナはその言葉を胸に止めると午後の仕事へ戻って行った

 

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