リコリス・リコイル/their other story 作:秋乃楓
喫茶リコリコの地下
更衣室から繋がった地下室には本来の喫茶店には絶対に無い物がそこには有った。それは射撃場であり様々な銃器だけではなく、それら銃器に使用する弾薬も貯蔵されていた
「地下にこんな場所が・・・」
千束の後から来たレナは思わず呆気に取られてしまう
喫茶店というイメージには到底そぐわないのだから。
「此処なら安心して練習出来るでしょ?あ、それと使い終わったら片付けと鍵だけ閉めてね?」
千束は立ち止まり、振り向く
そしてレナに鍵を手渡す
レーンの奥には人の形をした的がぶら下がっている
雰囲気はDAに居た時に使っていた射撃場と似ていた
「でも、本当に上手く撃てる様になりますか?・・・やはり、サイトが有った方が良い気がします」
ダットサイトを取り外している為、命中精度は以前よりも落ちるのは目に見えて解っている。
悪戯に外して弾薬の備蓄を減らしてしまう事がレナにとって気掛かりだった
「心配ご無用!こんな事も有ろうかと先生を呼んでまーす!どうぞ!」
千束が得意げにドアの方を指さす
すると誰かが入って来る
「・・・私、先生じゃありませんけど」
たきながリコリスの制服姿で入って来た
「ええー?急所狙うのなら、たきなの方が上手いじゃん?私は誰かさんみたいに無闇やたらに人なんて殺さないし? 」
千束はケラケラと笑っている
「はぁ・・・それ、褒めてます?それともバカにしてます?」
じーっと千束の方を見つめる
「バカになんてしてないでしょー?まぁ、兎に角!同じセカンドなんだから仲良くしてね!それじゃ、頼んだよー!」
千束は手を振りながらドアを開け、外へ出て行く
「ちょっと、待って下さい!まだ、何すれば良いか聞いてませんけど!?」
慌ててドアの方へ向かうと顔だけ覗かせ、たきなが叫ぶ。
すると、たきなに任せるー!とだけ返事が返ってきた
「はぁ・・・肝心な事は私任せですか・・・。仕方ない、取り敢えず始めましょうか 」
頭を抱えながら溜息をつくと、レナの方へ向き直る。
「はい、宜しくお願いします」
レナは頷き、ゴーグルとイヤーマフを付ける。そして自身のハンドガンをカバンから取り出し、安全装置を外すと的へ狙いを定めてから発砲した
乾いた音と共に薬莢が落下する
人型の的には確かに弾が当たってはいるが、数字の書かれた枠からは少し逸れてしまっている
「ッ・・・!」
レナは数回程、引き金を引いて発砲する。だが胴体に当たるも何れも逸れており、真ん中には当たらない
「撃つのを止めて下さい。充分ですから」
たきなはレナへ近寄ると肩を叩き、撃つのを止めさせる
「・・・基礎的な部分は出来ていますが、恐らく当てようとして焦って引き金を引いてるのでは?千束から元々、その銃にはダットサイトが付いていたと聞いてます。なので、その時の癖が抜けてないのかと」
たきなは的確に指摘する
サイト無しで撃つのは今が初めてなのだから。サイトなら点に合わせれば当てられるが、サイト無しだと頼れるのは己の目となる
「1発でも多く的に当てられれば・・・って思って・・・」
レナは自ずと口を開く
「先ずは、その焦りを無くす所からですね。私も他人に教えられる様な立場では有りませんが・・・それでも、実戦で活かせる位にはしましょう」
たきなは頷くと発砲時の構え方や銃の持ち方を1から教えていく
それから約数時間程、練習するとその日は終わった。
ある時は店での休憩時間に
またある時は閉店後に。
リコリスとしての仕事が入った時は教えて貰った事を自主的に繰り返す
始めた時と比べると少しずつ、当たる様になっていった。
「いいですか?この場合はこうで・・・」
別の日は射撃練習では無く、物陰から相手を撃つ場合の自身の位置等。DAで教わった事を覚えている限りではあるが
座学という形でたきなはレナへ教えた。
「お、頑張ってる?あらら、寝ちゃってるか・・・お疲れさん」
千束はこっそりと部屋へ入る。そこには疲れたのか机の上で寝てるレナの姿があった。
千束は彼女に布団を掛けてあげると部屋を後にした
ー数週間後ー
再び、地下室の射撃場へ訪れたレナは普段通りに自身の銃を取り出し、支度を済ませてからレーンへ立つ。そして安全装置を外した後、発砲する
薬莢が落下すると、的には真ん中に穴が空いていた。外れても真ん中から少しズレた辺りに穴が空いている。
「やった・・・!」
レナは思わず声を漏らす。
すると後ろから拍手をされ、振り向くと
たきなが立っていた
「おめでとうございます、これで当てられる様になりましたね。後は実戦で試してみましょう」
心做しか、たきなは微笑んでいた
自分の教えが誰かの役に立ったと思うと喜ばずにはいられないのだった。
「その・・・ありがとうございました。井ノ上さん」
レナは銃の安全装置を戻し、テーブルへ置くと頭を下げた
「おいっすー!2人ともお疲れさん!早速だけど案件入ったぜぃー!」
いきなり来た千束がドアを開けると顔だけをひょっこり覗かせる
「行きましょう!」
たきなはレナへ声を掛けると
足早にドアの方へ向かう
「はいッ!」
レナもまた、2人の後を追うように向かった。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
内容は極めて単純だった
近所のコンビニで強盗事件が有り、犯人が逃げているとの事
しかも未だ遠くへは逃げていない
本来なら2人だけで充分なのだが
実戦も兼ねてレナも入れた3人。
「あれぇ?おっかしいなぁ・・・確かこの辺の外だけど・・・」
事件の有ったコンビニから少し離れた場所の交差点へ差し掛かると、千束達は足を止める。
「車で移動したとかは?」
たきなは駐車場を指さす
走って逃げるよりは確実な手段だろう
「2人とも・・・ワンチャン、掛けてみっか?」
千束は、にぃっと笑うと逃げたと思わしき方向へ走って行く
3人が辿り着いたのは広めの公園。そして追っ手を巻いたと思ったのか定かでは無いが男が数人居た。しかもその内の1人は覆面をしている
恐らく、奴が主犯格だろう
数人は主犯格の男が取り出した金銭の束を分け合おうとしていた
「私が正面から。たきなとレナは残りを!あとバックアップ宜しく!」
千束は銃を取り出し、走り出すと策を軽々と飛び越える。男らはそれに気付くと1人は後ろへ下がり、残りの3人は拳銃を取り出すと千束へ発砲する
「おっとっとぉ!?危ないんだから・・・ッ!」
2人が発砲した弾丸を避けると、1人目の腹部へ銃を押し付けて発砲。赤い煙が立ち上り、男が倒れる。そしてオマケにと言わんばかりに数発撃ち込む。
「はい、お疲れさん!」
千束が振り向こうとするのだが、男はその隙を付いて後ろから千束を狙おうとする。だが、それは見事に失敗する。
突如として何かが男の両足や腕に巻きつくと倒れ込む
「・・・この距離なら、コレで充分です」
男から数メートル離れた位置の草むらからたきなが出て来る。
「たきなナイスゥー!」
千束はグッと親指を立てて見せる。
一方のレナは主犯格を追い掛け、ついに追い込む事に成功する。
レナが銃を向けながら照準を合わせると男は同様しながら此方を睨み付ける
「クソッ・・・こうなったら!」
男は持っていた包丁を取り出し、レナへ向ける。街灯の光で包丁の刃が不気味に光る
「刃物か・・・!」
レナは少し焦りながら男を睨む。
だが追い込まれた男は最早、袋のネズミと言っても過言では無いが
「銃を捨てろ・・・早く!」
男はレナを脅し、刃物をチラつかせる。
そして勝ったと言わんばかりの笑みを浮かべていた
「ガキが一丁前に警官のマネか?嘗めた事しやがってぇえッッー!!」
銃を捨てろと言っても応答しなかったレナへ対し、男は容赦無く斬り掛かる
「ッ・・・!」
後ろへ下がるが男の振り回した包丁の刃で髪が切れ、数本が散らばる
「あの世で後悔するんだな・・・俺にそんなモノ向けた事を!」
今度は突きを繰り出す。
だがDAではリコリスの必須事項として体術訓練も受けていた。咄嗟の事とはいえ、身体が覚えている。
即座に背負っていたカバンを片手で前へ突き出したのだ
「うぉおッ!?」
男が動揺するとカバンにナイフが弾かれ、落下する
それをレナは見逃さずに片足で蹴飛ばす。
「ガキの癖にバカにしやがって・・・!!」
唯一の武器を無くした男は思わず後退る。後は銃で急所を撃てば全て終わる。
(命大事に)
千束の言葉がレナの脳裏を過ぎる。
すると、男に向けていた銃を下ろしてしまった
「へへ・・・今だ、死ねぇええッッ!!」
チャンスとみた男はレナへ目掛けて掴み掛かろうとする。
首さえ締め上げれば、意図も簡単に殺せる。そう思っていた
「この・・・ッッ!!」
男が掴み掛かろうとした途端、レナは片足を振り上げては男の股下を蹴り上げる。
悲鳴と共に男は足元へと崩れ落ちた
「レナ、大丈夫だった・・・ありゃー・・・コレは・・・男にとって痛いわなー・・・」
千束、たきなはレナの元へ来ると
彼女の前で男が股下を抑えているのを目撃する。たきなは何も思ってないが、千束は苦笑いし手を合わせている
「・・・命、大事に。それを守っただけです。教えて貰った事はまた次の機会に生かします」
そう呟くとレナはカバンへ銃をしまった。
「け、けどさぁ・・・男にとっちゃ此処が命よりも大事な・・・」
千束は男の方をチラチラ見ながら話す
「・・・?どういう意味ですか、千束?私にも解る様に説明をして下さい 」
気になったのか、たきなが千束の方を向く
「ぬぁーッ!!そんなシモの話を私に聞くなぁーッ!!」
千束は思わず顔を真っ赤にして叫ぶ
「ぷッ・・・ふふふッ・・・」
そんな2人のやり取りを見ながらレナはクスクスと笑っていた。
この人達となら私は上手くやって行ける
。まだ微かでは有るが、そう思えた
3人は気づいて居ないが、男達を鎮圧する迄の様子を一台の不審なドローンが捉えていた。
「・・・青いのが2人、赤いのが1人。アレがリコリスかぁ・・・やっと見つけた!!都市伝説じゃ無かったんだぁ!!」
ドローンの映像を通じ、1人の男がモニターの前で両手の拳を突き上げて喜んでいた。
これからが僕の本当の伝説が始まるんだと意気込みながら・・・。