兎にも角にも続きでござります。
早朝。
雲一つない晴天である今日のこの天気のように、最近の国王は頗るご機嫌である。
苦労もあるが、それ以上に皆が一段となり暮らしを良くしようと協力しあう現状、それはまさに夢にまで見た平和の光景であった。
魔王討伐に力を注いだ名君として、我ながら国民からの支持も厚く、今後の歴史に間違いなく名を残す事ができるであろう事に国王は大変浮かれている最中であったのだ。
だから、血相を変えた勇者、アルフが慌ただしく参上した時に酷く困惑した。
「どうしたというのだ、そんなに慌てて」
「魔王よりも悍ましい魔力を持ったモノが現れました! そして、ゼスタが、アイツが襲われ、現在消息不明となっています!」
その一報にて国王は、この世界は再び恐怖に晒されることになったのである。
そんな事はつゆ知らず。
寝心地の悪い自然のベッドで惰眠を貪り続けていたゼスタは、太陽が頭上にきた頃にようやく目を覚ました。
「あー、あーー…… うん! 声昨日のまんま変わってないし、戻ってないなコリャ」
やはりあれだけの魔力が暴走して発動した魔法なだけある。 自然に元に戻る可能性は低いと見たほうがいいかな。
と、なれば……
やはり家に戻るしかないだろう。 元に戻ろうにも資料は全部家に置いてあるし、第一お腹すいた。 腹を満たさねば頭は働かない、貯蔵してある野菜も早く食べねば腐ってしまう。
一夜明けたし、流石のアルフももう居なくなっている事だろう。
昨日と同じように瞬間移動の魔法を発動させようとして、気がついた。
「あれ? 魔力が増えてる…… そういえば昨日あんなに消耗激しい魔法使っても疲れなかった…… ううむ。 暴走した時に砕けた魔石の魔力が僕の中に溶け込んだのかなぁ、肉体変化の魔法だし、変身する時に周囲の魔力取り込んでてもおかしくは、ない、のかな? これも検証が必要だなぁ。 元に戻る時に魔力以外の変なモノでも取り込んだら最悪だ」
やる事がどんどん増えていく。
まあ、何はともあれ一先ず帰ろう。 まずは腹ごしらえからだ。
そうして僕は魔法発動させ、無惨に風通しが良くなった自宅前へと到着した。
そうだ、この家も直さなくては。
しかしながら姿を戻す事が最優先だ。 家なんか別にやわかいベッドと食べ物があればそれでいい。
食糧庫から適当な野菜をいくつか咥えながら自室へと向かう。 ううむやはり生野菜は青臭い。 そんな感想を抱きつつ部屋に入った僕に雷に打たれたような衝撃が走った。
荒らされた部屋。 引き出しの中や壁に貼り付け整理整頓していた魔法の資料たちは軒並み床へと散らばっていた。 そして、何よりも……
「変身魔法の資料が、どうしてこんなグシャグシャに!」
クソが! 絶対アルフの仕業だろう!
んにゃろうめ、手当たり次第に漁りやがったな! んな事してもここには暗号化してある研究の成果以外何にもありゃしないって、のに……
「ゲッ! まさか!」
床に散乱する資料を片付けながら僕はとあるものを探す。
そう、昨日砕け散った魔石のかけらだ。 案の定、一欠片も見つけることはできずに僕はそれをアルフが持ち去ったと悟ったのである。
「あーあ、パクってきたのバレたかなぁコリャ。 まー仕方ない、切り替えていこ」
案外知らぬ存ぜぬでお説教を回避できるかも知れないし。
そう開き直って僕はまず部屋の片付けに勤しむ事にした。
「すまぬ、お主達を何度も頼ってしまう無力な儂を許してほしい。 ……敵は、得体の知れない怪物じゃ。 目的も何一つ分からぬ。 どうか、無事に帰ってきて欲しい、この世界にはまだまだお主らの力が必要なのだ」
「「「はっ!」」」
「先ずは彼、ゼスタの研究室をもう一度調査してきて欲しい。 優秀な彼の事じゃ、きっと何か手掛かりを残してくれている事じゃろうて」
そう勇者達に告げた王は力なく項垂れてしまった。 無理もない、ようやく去った災厄が再び襲いかかってきたのだ。 それも、より不気味さを増して。
その姿を見たアルフら一行は王の間から退いた。 問題を解決する為、ゼスタの家へと向かう為だ。
重い沈黙が流れる道中にて。
「……アルフよ、確かにゼスタの奴はやられてしまったのか?」
重々しい口を初めに開いたのは隻眼の剣士、ローシュであった。 魔王との戦いで片目を失いはしたが、未だこの国で敵うもののいない剣豪である。
「……うん。 わっ、私も気になる。 あの、大馬鹿が、そんな簡単に死んじゃうわけないよ。 きっと、ひょっこり戻ってくるに決まって……」
グズグズの泣き顔で、時折えずきながらそう続けたのは精霊使いのセレーヌである。 彼の生死不明の知らせを聞いてからずっとこの調子であった。
「死んだなんて思ってないよ」
最後にそう紡いだのはアルフだ。
親友として、相棒としてゼスタの力量を一番深く理解している彼は冷静にそう判断した。
「家の周辺がね、綺麗すぎたんだ。 争った様な形跡は何一つ無かった。 いくら得体の知れない敵だったとしても、アイツが何の抵抗も出来ずにやられるなんて僕には想像できない」
「……じゃ、じゃあ! やっぱりあの馬鹿生きてるのよね!」
「うん。 きっと生きてるさ」
未だ涙は流れていたが、幾許か表情が軽くなったセリーヌ。 足取りも速くなり二人よりも先を進む。 そんな彼女に聞こえぬようにローシュは耳打ちをした。
「やはり…… 無事に、とは言わぬのだな」
「……無事だったら、きっと僕よりも先に王様の元へ報告しに行っているさ。 あの化け物は、ゼスタは消えたと言っていた。 それがどういう意味なのか、まだ判らない。 もしかしたら…… って考えは消しきれないよ。 でも、動かないと、何も解らない。 その為にもセリーヌにもなるべく憂いがないように行動して欲しいからさ。 ……勿論、僕自身に言い聞かせてるのも大きいけどね」
「そうだな。 俺もそう思い込む事としよう。 さて、奴の援護がない旅となるか…… 大層以上に骨が折れそうだ」
前日とほぼ同じ時刻。 夕暮れが遠くの山々に影を落とし始めた頃、三人は彼の家へと続く丘へと差し掛かった。 各々が秘めた感情を表情へと映して。
そんな彼らを、件の化け物が壊れた家の中から見つめていた事さえも知らずに。
2000字程度の文量なのに時間がかかるのん。 明日はお休みだからスマブラしながら続き書いてくのん。
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