変身魔法失敗したら世界が敵になった   作:大仰多仰大

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変身失敗したら襲われた

 

 

「ううむ、やっぱり理論は間違ってないよなぁ」

 

 部屋をあらかた片付けた後、早速元に戻るべく検討と検証を重ねていく。

 

 その結果、一つの仮説が立った。

 

 恐らく姿が戻らないのは魔力が暴走したせいであろう。 イレギュラーはあの魔石が暴走したという事だけ、それを鑑みてまず間違いない。 そのせいで術式の一部が変異し、元に戻る際のスイッチがロックされた状態になっているのだろう。

 

 問題はどの部分が変異したかが分からないという事だ。

 下手に式を弄ってしまうのは頂けない。 最悪、体の構築が出来ずに死んでしまうという事もあり得る。

 

 せめてあの魔石が手元にあれば、カケラとはいえ何かしらのヒントが得られたかも知れないが、残念ながら手元にはない。

 

「だークソ! やっばいなぁ、こんな魔法開発するんじゃ無かったよ全く」

 

 どうにも解決の突破口がない。 気づけば窓の外は陽が落ちかけているし、なんの成果もないまま一日が終わってしまいそうだ。 

 

「徒労の一日か…… 勿体ないなあ」

 

 ため息と共につい口が溢れる。

 

 ……うん。 勿体ない。 貴重な残りの人生の一つをこんなマイナスな気持ちで終わるのは非常に勿体ない。

 

 そうだ、家の修理をやってしまおう。 そのついでに増えた魔力の確認も。 身体を動かせば何かポンと閃くかもしれないし。 思えば姿が変わってから碌に体を動かしていない、その確認も含めてすぐに動こう。 善は急げだ陽が暮れる前に。

 

 一つ気合を入れ直し外へと出た。 

 一つ大きく深呼吸。 

 一つの間を置いて中へ戻った。

 

 気のせいかしらん? 遠く、丘の麓にに今一番見たくない連中がいた気がする。

 誰もいない家の中を物音を立てない様に慎重に移動して、窓からそっと見つめた。 後悔した。

 

 あらあら、昨日ぶりとお久しぶりの顔が揃っておいでなすって。 うふふ、どうして皆んなそんなに重装備なのかしら? 魔王に挑んだ時と同じ格好なんてして、ここには可愛らしい女の子しか居なくてよ!

 

 

 ……何しに来たんだアイツら!

 

 魔石パクったのやっぱりバレてた!? それを咎めに? いや、それならあんなガチガチに固めてなんか来ないだろ、したらば、なんだ?  あの三人があんな格好でここにくる理由は一体何なんだ!?

 

 思考がグルグルと回る。

 

 あの三人はまず間違いなく僕の家を目指してやって来ている。 つまり、目的は僕だ。

 僕は一体何をした? そう、姿が変わった、魔法の失敗のせいで。 しかしそれにアルフは勘づいた様子は無かったし、仮に気づいていたとして、それがあの格好でくる理由にはならないだろう。

 

 ……来る理由? 

 

 そうだ、そもそもなぜ昨日アルフは家にやって来た? 声の調子はいつもと変わらなかった、可笑しかったのはその後の行動だ、家を壊すなんて事、普通じゃあない。 何かがあった、既に、昨日の時点で何かがあったんだ。

 あの旅の始まりだって、あの調子で唐突に尋ねて来て半ば強引に連れ出されたんだ、どんな厄介事だったとしても不思議じゃあない。

 

『何者だ……』

 

 あの時のアルフは異常に警戒していた。 あれほど…… それこそ家を壊すほどに。 

 それは何故だ。

 僕がいなかったから? それとも見知らぬ顔が僕の家にいたから? ……いや、その両方か? 仮にそうだとしよう。

 

 それとあの格好を結びつける理由は?

 

 巡る思考を遮る様に、気づけば視界の三人はもうすぐそこまで来ている。

 

 どうすればいい? 

 

 ……決まっている。

 僕は急ぎ迷彩魔法を発動させる事にした。 

 

 やり過ごそう。 少なくともアイツらの目的が分かるまで下手に姿を出さない方がいいだろう。

 

 そうして姿を消す事暫し。

 案の定彼らは家へと上がり込んできた。

 

「僕はゼスタの部屋を見てくるよ。 昨日は落ち着いて探していなかったからね」

 

「じゃあ私はこの部屋を」

 

 怖えぇぇ、こっち来んなよ頼むから。 てか、僕に用事があったんじゃないのか? 何を探そうとしているんだろう?

 

 アルフは僕の部屋へ、セレーヌは僕がいるこの部屋にて何かする様だ。

 

「待て」

 

 ローシュは…… 何だ? 何故か動き出そうとした二人を呼び止めた。 そのまま腰の剣抜き出し…… って、ヤバい!

 

 咄嗟にその場から離れた。

 瞬き程の間を置き、僕が立っていた場所は激しく切り裂かれていた。

 そして、僕は動いた事により迷彩魔法は解かれ、姿が露わになってしまう。

 

「やはり、いたな」

 

「どうして、分かった?」

 

「姿は見えずとも気配が殺しきれていない」

 

 意味分かんねえよ剣術バカ! てかいきなり殺す気の斬撃放ってくんな! 

 そんな文句も口が震えて出てこない。 めちゃくちゃ怖え、こんなのと対峙した魔物の気持ちなんか知りたくなかった。

 

「ハアッ!」

 

「精霊よ、眼前の敵を焼き尽くせ…… ファイア!」

 

 続けてアルフは剣を振るい、セレーヌは精霊術で攻撃を加えて来た。

 

「ば、バカ、ちょっと待ってくれって!」

 

 絞り出した僕のカスッカスの叫びは奴らの耳に届いていない様だ。 狭い家の中、ひっきりなしに攻撃が飛んでくる。

 

 ヤバい、訳わからんが、マジで殺される。

 家が壊れるとか気にしている場合じゃない、一旦コイツらを引き離さないと!

 

 その一心で僕は衝撃魔法を発動させた。 大した魔法じゃない、牽制用の、精々が家の外へ吹き飛ばす程度の威力の魔法だ。

 

 しかし、予想外の事態が起こった。

 

 想定外の威力。 彼らを吹き飛ばすどころか、僕を中心としてまるで爆発でも起こしたかのような衝撃が走った。

 

「グッ! うわあああっ!!」

 

「こ、こんな! キャァ!」

 

「くっ…… ヌアアア!」

 

 三人は叫び声と共に吹き飛んでいく。 吹き飛んだ先でしっかり受け身をとった辺り流石勇者御一行、大したダメージは受けていない様である。

 しかし、問題は別にある。

 

「ああっ、家が、ゼスタの家が!」

 

「ああっ、僕の家が! 研究の成果が!」

 

 木端微塵になってしまった。 パラパラと地面に落ちる瓦礫を残してさっぱりと。

 

「あああああ、資料も無しに、どうやって元に戻ればいいんだあ……」

 

「戦いの最中に余所見とは、随分と余裕だなぁっ、化け物!」

 

 気づかぬ間に再びローシュが切り込んで来ていた。 もう躱せる距離も残っていない。

 

 

 

 え? ヤバい、これ、死…… 死ぬ。

 

 

 死を目前としたせいか、振り下ろされる刃が突然スローになった。 ゆっくりと、ゆっくりと僕の心臓目がけて進んでくる。 ああ、まさか仲間の攻撃で死ぬ事になるとは思わなかった。 

 まだまだ研究したりない。 もっと沢山の魔法を開発したかった。 

 また皆んなと平和になった世界を旅してみたかった。 もっと沢山の思い出を作りたかった。

 

 

 刃が迫る。

 

 

 うーん…… と。 あっ、可愛い子とスケベだってしたかった、結婚だってしたかった。 

 

 

 刃が迫る。

 

 

 ……えーっと、そうだ。 晩御飯も食べたかった、最後の食事生野菜って、味気ないじゃない。 最後に美味しいもの食べたかったな。 

 

 

 

 刃が…… 迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 ……まーだ時間かかりそうですかねぇ。 

 

 

 

 

 

 刃が……

 

 

 

 おっっせえ!! 何これ!?  死の間際の集中力ったって限度があるだろうに!

 

 ん…… あれ? これワンチャン瞬間移動間に合うんじゃね? どうせこのまま何もしなかったら死ぬんだ、ダメで元々、発動させてみよう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 殺った! 

 そうアルフが確信したのも無理はない。

 

 閃光のようなローシュの斬撃をあの距離で躱す事などあの魔王でも不可能だったのだから。 得体の知れないこの化け物とて、不可能な事に思えた。

 

 しかし、現実はアルフに恐怖を叩きつけた。

 

「ヌン!」

 

 最高速度で振り切られた刃。 地面さえもその剣圧にて切り裂かれている。

 しかし、そこにあの化け物の姿はなかった。

 

「き、きえ、た?」

 

「……まさか、この距離で躱されるとは」

 

 アルフは素早く辺りを警戒し、攻撃に備えた。 しかし、何も起こらない。

 

 そして幾許かの時間が過ぎ、彼らはあの化け物がいなくなった事を理解したのである。

 

 三人は大地へと膝をつく。

 皆一様に冷や汗をかき、動悸が止まらない。

 

「じょ、冗談でしょ、あのふざけた魔力…… せ、精霊達が怯えて……」

 

「何故アイツはここに…… 一体ここで何をしていたんだ?」

 

「何故、奴がここにいたのかは分からん…… が、どうやら俺たちの求める答えは消えてしまったようだ」

 

 そう呟くローシュの視線の先には、すっかりと更地のようになってしまったゼスタの家。

 

「ど、どうしよう…… こんなんじゃ、もしあいつが何か残してくれてたとしても、分かんないよ」

 

「……とにかく、ここを離れよう。 まだ奴が近くにいるかも知れない」

 

 こうして彼らの旅は何の情報も得られぬままに始まったのであった。

 

 




おかしいなぁ、土日で沢山書こーって思っていたのに……
気づけばもう月曜日じゃないですかヤダー!


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