変身魔法失敗したら世界が敵になった   作:大仰多仰大

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ペットロスにより投稿くそ遅くなりやした。


変身失敗したら辻褄があった

 

 魔王の娘。 そう自らを称した少女はさらりと笑って僕の側を離れない。

 先ほどまでの彼女の醜態だけを取れば到底信じない内容だが、今なお身体に残留する痛みがそれを僕に納得させた。

 

「も、目的は、なんだ」

 

「もくてき? えっ…… な、何の?」

 

「こ、この世界に来た目的だ!」

 

 わざわざ聞くまでもない事か…… 頭のどこかで冷静な自分の声が聞こえた。

 

 魔王を倒した時、僕達は確かに奴の城にあった魔族達が住む世界とのゲートは封じた筈だ。 つまりは、あの強固な結界を破壊してまでこの世界に現れる理由、決まっている。 再びの地上侵略だろう。

 

「ええっと…… 目的、目的…… うーん、あっ、そう! 観光! 観光…… になるのかな?」

 

「ふ、ふざけるなっ!」

 

 あからさまにふざけた返答に怒鳴り声をあげる。 

 

「ひゃい! ご、ごめんなさい! い、家出です!」

 

「ぼ、僕を馬鹿にしているのか!? また世界を支配するつもりだろうっ!」

 

「そ、そんな事できない……」

 

「嘘をつくな! じゃあなんで、魔族のお前がこの世界に出てきてるんだ!」

 

「だ、だって、部屋の鍵が空いていたから。 外に出るチャンスなんて初めてだったんだもの、わ、私だって一度くらい外の世界を見てみたかったの! そっ、それが悪い? いいえ、絶対悪くない!」

 

 そう言い切った彼女。 必死な所作のせいか、それとも先の情けない姿を見ていたせいか。 不思議なくらいにその言葉が胸にストンと落ちてきた。 

 

「……ちょ、ちょっと待って。 ほ、本当にただの家出してきただけなの?」

 

「さっきからそう言ってるじゃん!」

 

 ああ、そう言えばコイツ馬鹿だった。 この必死さを保ちつつ嘘を織り交ぜるなんて芸当はできないだろう。

 

「世界を侵略するつもりは?」

 

「ない! 怖い!」

 

「魔王の、親の敵討とか、考えてないのか?」

 

「ない! そもそも私を部屋に閉じ込めてたパパなんて大嫌い!」

 

「……この山に来た理由は?」

 

「キノコって食べ物を食べたかったから!」

 

「お前の名前は?」

 

「アイジス!」

 

「アイジス…… 今、君がやりたい事は?」

 

「部屋に戻りたい!」

 

 分かった、ようやく理解できた。 一応の警戒はしなければならないだろう。 どうやって魔界からやって来たのかも聞かなければならない。 だけど、それ以上に僕はどうしても彼女に伝えたい事があった。

 

 

「お前、やっぱ凄い馬鹿なんだな」

 

「ひ、酷いわ!」

 

 

 

 

「だいたい貴女だって地上にいるくせに私ばっかり言うのは狡いわ」

 

 お互い落ち着きを取り戻して暫らくの時間が過ぎた。 そんな折に彼女、魔王の娘のアイジスは僕にそんな言葉を投げかけてくる。

 

 魔界から見てこの世界の事を地上と呼んでいるらしい。 実際にこの世界の下に魔界が広がっているなんて事は無い筈なのだけど、古くからそう言われているのだそうだ。

 

「何言ってんだ、僕は人間だ。 人間が地上にいて何が悪い」

 

「冗談っていうの初めて聞いた…… あんまり面白くないのね……」

 

「冗談なんて言ったつもりはない。 それよりアイジスさんよ、あんたどうやって地上までやって来たんだ? 魔王城にあったゲートは封印されてる筈だぞ」

 

「封印? そんなのあったかしら…… 適当にあちこち探検してたらいつの間にかこっちに来ていたから……」

 

 解らない、と。 ああ、そういえば帰り道が分からないとか言っていたっけ。 しかし、コイツは魔王の娘というのは置いておいて大した危険はないだろうが、もしも他の魔族達も現れていたら大変だ。

 何とか出て来た場所を特定しないといけない。 そして早急に王とアルフ達に伝えなければ。

 

 そんな思考を巡らせている最中、再びアイジスが声を上げた。

 

「そういう貴女はどうやって地上に来たの?」

 

「来るも何も、僕は生まれも育ちもこの地上の世界だ」

 

「へぇー、地上にも魔族っていたのね。 知らなかったわ」

 

「……何言ってん? 人間がこの世界にいるのなんて当たり前の事じゃないか」

 

「さっきから貴女は冗談ばっかり。 そんな凄い魔力を持っているのに人間な訳ないじゃない。 あんまり面白くないから言わない方がいいと思うわ」

 

「……は? 魔力?」

 

「うん。 まるでパパみたい」

 

 素っ頓狂な顔して何を馬鹿な事を、それこそ冗談だろう。 確かに僕は他の魔法使い達よりも多くの魔力を有して入るだろうが、僕たち人間と魔族では魔力の質が違う。

 ましてやこいつの親父、つまりは魔王の魔力は今思い出しても背筋が凍るようなものだった。 

 

 そんな魔力と似ているだなんて事はあり得ない。 

 

 だが、何故だろう。

 アイジス、こいつの言葉には僕を揶揄うといった感情が感じられない。 見たものそのままを口にした、まるで幼子のような純粋さがあった。

 

 そういえば、衝撃魔法を使った時……

 

 あの異常な威力は一体なんだったんだ? それにローシュの攻撃があんなにスローに感じられたのもおかしい。 死に際の集中力なんてものがそう都合よく働くものだろうか?

 

 思考を巡らすとボロボロと埃が落ちてくる。 生き残った事の喜び、そしてアイジスと出会った事で考える事を後回しにしていた。

 

「ちょ、ちょっと離れてくれ。 確認したい」

 

「確認? 何の?」

 

 そうだ。 そもそも僕がこの場所まで逃げて来た理由は、アルフ達に襲われたからだ。

 何故襲われたのか、その理由は分からなかった。 が、もしも、もしもアイジスの言っている事が正しいとしたら?

 

 魔王のような魔力を持った者が唐突に現れたら、僕達は、あの旅をしていた僕達はいったいどうしていただろう。

 

 __決まっている、即座に討伐に動き出す。

 

 

 バラバラだった疑問の答えに辻褄が縫い合わさっていく。

 

 掌に魔力を集中させて質を見定めた。

 

 ……ああ、なんて事。

 これじゃあまるで、化け物だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか…… 件の奴と再び相対したと。 そして……」

 

「はい…… アイツの、ゼスタの家は全壊しました。 ……手掛かり、収穫は、ゼロです」

 

 明け方。 アルフ達は昨夜の一件を王へと報告すべく再び王宮へと戻っていた。

 

「正直、解らない事が多すぎます。 奴の企み、正体。 動き出そうにも、これじゃあどうしていいものか……」

 

 重苦しい沈黙が空間を包んでいた。 誰もが一様に口を閉ざし、次の言葉を紡げないでいる。

 ただただ時間だけが無為に過ぎ去っていく。 ここにいる誰もがそれに焦りと苛立ちを覚えた。

 

 

 しかしそんな状況は唐突に終わりを迎えた。

 慌ただしく開け放たれた扉。 その先には大きく肩で呼吸をする一人の兵士。

 

「至急報告したい事が!」

 

 そして真っ青な顔をした兵士は震える声を張り上げた。 その口から語られるは希望を告げる福音か__ 否。

 

「ほ、報告します! 魔王城にて、魔界に繋がる封印が何者かによって解かれた模様! 駐屯していた兵士はそこから現れたナニカによって全滅! さ、さらに、その付近の村にて魔王の娘を名乗る者が現れたとの事です!」

 

 絶望を知らせる警鐘であった。




これは、コメディなのだろうか? ボブは訝しんだ。
前書きにも書かせていただきましたが、愛犬が旅立ち何もやる気が起きなくなっておりました。 何とか立ち直ったのでまた投稿していきます。

感想等ございましたら書いて頂けると幸いです。
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