遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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WSC予選編の日常回です。
予選は一部のデュエル以外はダイジェストでお送りします。

ダイジェストの理由:
一応書いてはあるのですが、そこまで重要ではない試合はバッサリ切った方が中弛みしないと思いました。
もしカットしたデュエルをカットせずに読みたい場合は感想にてお伝えください。

なお本戦は全てのデュエルを描きますのでご容赦ください。


第9話「WSC予選2〜5回戦 勉強デュエル」前編

 

[ネオ童実野シティ 第2デュエルスタジアム]

 

WSC予選が開催してから早くも一週間が経過していた。

開催してからほぼ毎日デュエルスタジアムではデュエルチームが凌ぎを削っており、デュエルの熱狂はさらに白熱していた。

バトルシティと化しているのは何もここネオ童実野シティだけではない。

世界各地40ヶ所で予選が行われ、各地の代表を我こそはと奪い合っているのである。

 

ネオ童実野シティ 第二デュエルスタジアムは、ネオ童実野デュエルスタジアムの隣にあるグラウンドで普段はプロデュエルのマイナーリーグが使っているスタジアムであった。

観客席は物好き数名だけが座っていて売り子もアナウンスもない。

そんな中、WSCネオ童実野シティ予選の第4回戦が行われていた。

 

良平「幻獣機ドラゴサック、ハリアード、メガラプターでダイレクトアタック!」

 

良平がそう宣言するとアフターバーナーを噴出し巨大な軍用機ーー幻獣機ドラゴサックが空を切り裂き、二機の戦闘機ーー幻獣機ハリアード、幻獣機メガラプターが追従する。

幻獣機たちは一気に降下すると各々の火器を相手決闘者に放った。

 

「ぎぇぇええええええええっー!!?」

LP3000→0

 

断末魔と共に相手は吹き飛び、ドサリと地面に墜落した。

それと共にビィッとブザー音が鳴りメインモニターに、勝者 チームHEROと表示された。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ゆき「やったぁ! 日和田さん、流石ですぅ!」

 

勝利の音がするとともに小さく飛び跳ねるゆき。

それを尻目にここのせは腕を組んだ。

 

ここのせ「……3タテかよ。なんか拍子抜けだな」

 

メインモニターのチームHEROの名の下には黒い丸が三つついている。

フィールドからは良平がゆっくりと歩いて戻ってきた。

相手プレイヤーはというと、声をかける隙もなくそそくさと帰ってしまったらしい。

 

ここのせ「お疲れ。三人の相手とは恐れ入るな」

 

良平「どうかなぁ。俺の手札が良かったのもあるけど、相手のファーストプレイヤー事故ってたからなぁ」

 

恵「……相手の最大の敗因は烈風の結界像を突破できなかったことにある……」

 

良平の顔をジッと見上げて恵がぽそりと言う。

ゆきは、納得いったと言わんばかりにうなづいた。

 

ゆき「風属性以外特殊召喚できないってやっぱり大変なんですねぇ」

 

ここのせ「相手のバックも薄かったしな」

 

付け足すようにここのせが声を出した。

亜美は腕を組んで微妙な表情のまま、うーん、と唸る。

 

祭乃木「勝つのは嬉しいんだけど、なんかつまんないわね。アタシの出番がないじゃない!」

 

そんな亜美の言葉にゆきは眉を八の字にして笑った。

 

ゆき「二回戦も三回戦も日和田さんとここのせさんで終わっちゃいましたからね」

 

祭乃木「一回戦のサンドリヨンが一番強かったわ……」

 

ため息まじりに肩を落とす亜美に、ここのせは右手を腰に当てて返答する。

 

ここのせ「ま、苦戦するよかマシだろ。それに本戦じゃあこうはいかねぇだろうしな」

 

祭乃木「そうね。その時まで我慢するわ」

 

それから気を取り直したように亜美は顔を上げ、恵に向いた。

 

祭乃木「それで次の試合はいつだっけ?」

 

恵「……第5試合は3日後の17日……」

 

祭乃木「三日後かぁ」

 

意外と近いなと亜美は思案した。

「三日後……」と良平が確認するように呟きポケットからスマートフォンを取り出した。

画面に映る今日の日付と曜日を確認してから声を出す。

 

良平「あれ……? 三日後って平日じゃないか」

 

恵「……試合プログラム上仕方のないこと……」

 

初めから知っていたかのように恵は答える。

ゆきは人差し指を口元にトントンと当てた。

 

ゆき「学校をお休みしなくちゃいけないですね……」

ここのせ「学校サボるか?」

 

両手を頭の後ろに回してここのせが言うと亜美はゆるりと首を振った。

 

祭乃木「アタシらだけならバックレればいいけど、ゆきや恵がいる以上、そういう荒事はよくないわ。公休の申請をしましょ」

 

「じゃあ」と良平が引き継いだ。

 

良平「明日、先生たちに言おう。……すんなり行けばいいんだけど……」

思い浮かぶは教頭の顔だった。

さりとてその場では何ともならぬ事情に亜美は手を叩いてチームメンバー達を撤収させた。

 

 

[翌日 童実野第二高校 2組教室]

 

ゆき「……ということで、17日の授業をお休みしたいんですけど……」

 

自分のホームルームである童実野二高の2組教室で昼休み前にゆきは担任である中河西あかね教諭に声をかけた。

クラスは各々が弁当や菓子パンを取り出している。

あかねはパッと明るい顔でゆきに応対した。

 

あかね「あぁ、WSCの予選見ましたよ! テレビにちょっと映っていましたね! 今、どこまでいったのかしら?」

 

ゆき「次、5回戦なんです! あと3回勝てば予選通過です!」

 

あかね「5回戦!? すごいわね!」

 

ゆき「えへへ……! ありがとうございますぅ!」

 

あかね「先生、応援してるからね! じゃあ17日、お休みの申請しておくわね。公休には、先生の判子と教頭先生の認印がいるから、放課後に許可証を渡しますね」

 

ゆき「ありがとうございます!」

 

暖かい笑みにゆきは深々と頭を下げる。

お弁当を持って教室を後にするゆきの姿をあかねは満足そうに眺めていた。

 

[放課後 童実野第二高校 ヒーロー部部室]

 

ヒーロー部が根城にしている地学準備室は、近頃は埃っぽさはもうない。

至る所がしっかりと水拭きされており資料や資材は全て棚の中に納められている。

 

良平「うーん、ハリアードはピン刺しかなぁやっぱ……」

 

部室内では良平が中央のソファに座り自らのデッキを眺めていた。

傍らでは亜美とゆきが対面に座りカードを展開している。

当然、決闘盤を用いずに机にシートをひいてである。

 

祭乃木「E・HEROブレイズマン召喚、効果発動! デッキから融合を手札に加えるわ!」

 

ゆき「はい!」

 

祭乃木「そのまま融合! きなさい、E・HEROノヴァマスター!」

 

ゆき「ではトラップ発動です! オリファンの角笛! 墓地の聖剣カリバーンを除外して、フィールドのカードを一枚を破壊します! ノヴァマスターを破壊です!」

 

祭乃木「なっ……! やるわね……!」

 

練習の賜物かゆきは亜美に対しても引けを取らぬデュエルをみせている。

ゆきの隣では空いているソファにここのせと恵が座っていた。

ここのせはタオルを目にかけて昼寝をしていて恵は決闘盤の一部を分解して整備している。

そんな中、不意に天井についているスピーカーからノイズが聞こえた。

かと思いきやピンポンパンポンと注意を引くチャイムがしてから男性の声が流れた。

 

『2組の間宮、4組の祭乃木、日和田、5組の能瀬、レイン、至急職員室までくるように!』

 

ガチャンと音を立てて通信が切られた。

亜美は手を止めて思わず天井のスピーカーに眉を顰めた。

 

祭乃木「は? なにこれ? 呼び出し? 良平、アンタらなんかやった?」

 

良平「いや何もないよ……」

 

「あっ」とゆきが手を叩いて二人を見た。

 

ゆき「きっと公休のことですよ! 中河西先生が許可証を用意してくれるって言ってましたぁ」

 

良平「……その割にはなんか攻撃的だったんだけど」

 

放送のトーンからしてあまりいい予感がしない良平は頬を掻いた。

 

[童実野第二高校 職員室]

 

職員室は奥に全体を見渡すような形で配置された重役用の席がある。

そこに教頭は座り机を叩いた。

 

教頭「そんなもの認められない!」

 

「どうしてですか!」と反論するのは前に立つあかねだった。

 

あかね「生徒たちが頑張ろうとしてるのに!」

 

祭乃木「失礼しまーす」

 

ガラガラと職員室の戸を開けて亜美を筆頭にヒーロー部の5人が入ってくる。

ザワザワとした雰囲気は一層強く増した。

あかねは振り返り、亜美たちの顔を見ると「あっ……」と声を漏らした。

 

ゆき「中河西先生! 公休の許可証はどうなりましたかぁ?」

 

あかね「それが……」

 

教頭「お前らか! 公休なんて認めんからな!」

 

椅子から立ち上がらん勢いで教頭はこちらに向かって叫んだ。

亜美は眉を釣り上げて口を開ける。

 

祭乃木「ちょっと! いきなりなんなのよ!」

 

教頭「お前たちのお遊びで公休は出せんと言っている! ほかの生徒に、特に頑張っている運動部に示しがつかん!」

 

祭乃木「アタシらは遊びじゃないわ! 本気でやってんのよ! だから大会まで出て結果出してんでしょ!」

 

教頭「なーにが結果か! こんなお遊びで結果もあるか! 予選程度では結果にもならんわ!」

 

「教頭先生!」とあかねがまたも声を荒げた。

 

あかね「その言い方はあんまりです! 生徒たちが自分たちで掴んだ結果なんですよ!?」

 

教頭「知らん! そもそも17日からは中間試験のテスト週間だ! 部活動は停止している期間! 勉強に支障が出るような行為は認めるわけにはいかない!」

 

叩きつけるような言いようにここのせは隣に立つ良平に首を向ける。

 

ここのせ「取って付けたような理由だな……」

 

良平「とにかく、なんでも理由をつけて公休を出さない気か……」

 

ゆき「あぅぅ……」

 

ゆきが思わず力なく言葉を漏らした。

しかし亜美は引かずに腕を組み、教頭を見つめ返す。

 

祭乃木「何よそれ! じゃあいいわ!要は、アンタはアタシたちがタダで公休を取るのが気に入らないんでしょ! だったら条件付でどうよ!」

 

教頭「条件だと?」

 

祭乃木「アタシたちが成績を落とさずに、WSCの予選を通過すれば認めざるをえないでしょ! これ達成したらアタシたちの休みを公休扱いにしてもらうわ!」

 

教頭「な、なんだと……!? し、しかし……!」

 

この後に及んでモゴモゴと口をゴネる教頭。

恵は相変わらずの無表情で声を出した。

 

恵「……貴方はWSCに参加することを遊びと表現した。しかしWSCは文部科学省と教育委員会も協賛している……。……告発すれば減給と降格は免れない……」

 

教頭「なっ……! 私を脅すというのかね!?」

 

腰を上げるようにして反論する教頭に亜美はふんと鼻を鳴らした。

 

祭乃木「先に権力を振りかざしてきたのはそっちでしょ! とにかく! 認めてもらうわよ!」

 

教頭「ぐっ……! わかった……! だが、条件は、全員次の中間試験で、前回より総合点を20点以上上げることも追加だからな!」

 

祭乃木「いいわよ! やってやろうじゃない! ……アンタら!」

 

啖呵を切ってから亜美はヒーロー部全員を見渡した。

それから左手を腰に当て、右手でびしりと指差す。

 

祭乃木「ヒーロー部合宿第2弾! 勉強強化合宿! やるわよ!」

 

 

 

寝る前決闘空間 第9話

『WSC予選2〜5回戦 勉強デュエル』

 

 

 

[ネオ童実野シティ タワーマンション 恵の部屋]

 

恵「……入って……」

 

制服のまま恵が自身の部屋のドアを開けた。

亜美は靴を揃えて中に足を踏み入れる。

 

祭乃木「相変わらず殺風景な部屋ね」

 

ゆき「で、でも集中できそうじゃないですか!」

 

ゆきはこの広くて何もない部屋に精一杯の褒め言葉をかけた。

それを尻目に良平は後ろ頭を掻きながら恵を見下ろす。

 

良平「ごめんな、いつも合宿に使わせてもらって」

 

恵「……構わない……」

 

返答してから恵は中空を眺めて思案する。

それから良平を見上げて口を開けた。

 

恵「……お茶、飲む……?」

 

良平「え、お茶あるの?」

 

恵「……前にここのせに、作っておくように言われた……」

 

聞いた瞬間、亜美は眉を吊り上げてここのせに拳を振り下ろした。

「でっ!」とここのせは悲鳴を上げる。

 

祭乃木「こんの馬鹿! 何偉そうにしてんのよ!」

 

ここのせ「だってお茶あった方がいいだろ!?」

 

祭乃木「アンタが馬鹿みたいに飲むだけでしょ! 恵! ここのせの戯言にいちいち付き合わなくていいからね!」

 

恵「……? ……わかった……」

 

「まぁまぁ」と苦笑いで良平が場を収めてから亜美に言葉を振った。

 

良平「……それで、勉強合宿って具体的にどうすんの?」

 

祭乃木「まず17日に休むわけだからその日の予習が必要ね。あとは、総合点を20点上げるならそれ相応の努力がいるわ」

 

良平「うーん……。20点かぁ……。主要科目8つで2、3点上げなきゃいけないのか。……いやそれなら意外といけそうだな」

 

ここのせ「簡単に言ってくれるなよ……。学年11位のお前はいいかもしれねーけどよ」

 

祭乃木「え? 良平ってそんな頭良かったっけ?」

 

良平「頭がいいわけじゃないよ。ちゃんと勉強すれば誰だってできることだよ」

 

ここのせ「かーっ、これだからできるやつはちげーよなぁ」

 

良平「やめろ。……というか成績なら間宮の方がいいだろ。学年5位だぞ」

 

良平はすまし顔でゆきを指差した。

一方のゆきは慌てて両手のひらを胸元で振る。

 

ゆき「そ、そんな……! わたしはほかにやることがなかっただけで……」

 

しかし学年5位であることは否定しない。

亜美はがっくりと肩を落とした。

 

祭乃木「あーあ、じゃあ特訓が必要なのはアタシとここのせだけじゃない! 」

 

良平「いやそうでもないぞ。結局20点上げなきゃいけないんだから」

 

祭乃木「……まぁ、そういう点から見れば、アンタらのが大変か。60点からからと80点からとじゃ、上がりやすさが違うもんね。……あれ? そういえば恵はどうなの? 転校生だからテストはまだ受けてないでしょ?」

 

亜美は振り返り恵に目を向けた。

銀色のツインテールから覗く双眼は作り物のように綺麗だ。

 

恵「……受けていない。そもそも私は勉強という行為は必要ない。基礎的な演算プログラムだけでも、高校内容など九九も同然……」

 

祭乃木「またその設定? じゃあ恵は習ってない数学の問題とかも解けちゃうってこと?」

 

恵「……そう……」

 

ここのせ「ホントかよ……? 間宮、なんか問題出してみてくれよ」

 

ゆき「は、はい! では……」

 

教科書をパラパラと捲る。

 

ゆき「えっと……17日は多分この辺ですね……。数列の問題です! 次の数列の一般項An、初項から第n項までの和Snをそれぞれ求めよ。①初項が7、公差が-3の等差数列」

 

呪文のように読み上げるゆきにここのせはお手上げと言わんばかりに肩をすくめた。

 

ここのせ「さっぱりわかんね」

 

祭乃木「まだ習ってないもの」

 

しかし恵は一切動じずに無表情のまま答える。

 

恵「……An=-3n+10 Sn=-3/2n2+17/2n……」

 

祭乃木「早っ!? 即答じゃない!?」

 

ここのせ「合ってんのかすらわかんねぇ」

 

ゆき「せ、正解ですぅ……」

 

良平「途中式も書かずに……。すごい予習をしてる……のか……?」

 

祭乃木「ゆき! 他の問題!」

 

ゆま「は、はい! では……」

 

またしても教科書をパラパラと捲る。

 

ゆき「(5+2i)x+(2-2i)y=16-2i のxとyの実数を求めてください!」

 

恵「……x=2 y=3……」

 

ゆき「せ、正解ですぅ……!」

 

祭乃木「……ここのせ! 歴史の問題!」

 

ここのせ「1922年2月6日にアメリカ、イギリス、フランス、日本、イタリアの五カ国間で取り決められた条約は?」

 

恵「……ワシントン海軍軍縮条約……」

 

ここのせ「正解……」

 

祭乃木「なっ……! 恵、アンタ天才少女だったのね……!」

 

恵「……違う。私はデュエルロイド……」

 

誇るでもなく恵は訂正した。

しかしここのせはそれを聞き流す。

 

ここのせ「なんだかよくわかんねーけど、設定に見合う実力はあるらしいな」

 

祭乃木「ウチの部はみんな優秀ね! ……アタシたちも頑張らないとやばいわよ、ここのせ!」

 

ここのせ「……へいへい、頑張りまーす」

 

良平「じゃあ、わからないところは恵や間宮に聞くとして……、手分けしてやろうか」

 

各々はスクールバックから筆記用具とノート、教科書や問題集を取り出して机や床に置いた。

 

[英語]

 

ゆき「ここの文法が……」

 

祭乃木「ふむふむ」

 

ここのせ「読めねぇ」

 

良平「behaviorは読めるだろ……」

 

[数学]

 

恵「……そこの答えは3……」

 

祭乃木「なんで!? ……あっ! ここがミスってんのね!」

 

ゆき「ここのせさん、そこの方程式の立式の仕方が違うと思いますぅ……」

 

ここのせ「カス」

 

良平「匙を投げるな」

 

[古典・漢文]

 

ゆき「うぅ……書き下し文に直す……難しいですぅ……」

 

祭乃木「何コレ、こんなのできんの?」

 

ここのせ「臣固より王の忍びざるを知るなりっと……」

 

良平「これはできるのか……」

 

[化学]

 

良平「えー、イオン……? 中学でやってないな……」

 

ゆき「水素と酸素の電気分解では、2H2Oだから……。あれ? 2e -?」

 

恵「……陰極では還元反応が発生する……。……したがってこの反応式となる……」

 

祭乃木「化学って面白いけど、やっぱよくわかんないわね……」

 

そんなこんなで数時間。

すっかりと太陽は傾き、空は暗くなり始めていた。

全員がキリのいいところまでいってから亜美は号令をかけた。

 

祭乃木「はい! 一旦休憩!!」

 

ここのせ「あぁー……恵、お茶もらうぞ〜」

 

恵「……どうぞ」

 

冷蔵庫に向かっていくここのせを恵は目で追いかける。

ゆきは軽く伸びをして背中を伸ばしていた。

 

ゆき「とりあえずひと段落ですね……」

 

良平「でも明日以降もやらなきゃいけないんだよなぁ……」

 

良平も足を伸ばして天井に見上げている。

ここのせから目を外して恵は亜美に顔を向けた。

 

恵「……祭乃木亜美……」

 

祭乃木「なに?」

 

恵「……私は何点取ればいい……?」

 

祭乃木「へ? ……あー、そうねぇ……。とりあえず90点くらい取れればいいんじゃない?」

 

良平「とりあえずで取れる点数じゃないだろ」

 

恵「……わかった……」

 

「んぐんぐ……ぷはぁ!」と紙コップで麦茶を飲み干すここのせ。

それから会話に加わった。

 

ここのせ「わかったって言えるとこがすげぇよな。ホントにロボットみてぇだ」

 

恵「……本当のこと……」

 

そう返す恵にゆきは小首を傾げて前から気になっていたことを質問する。

 

ゆき「そのデュエルロイド、というのはどういうものなんですかぁ?」

 

良平「禁則事項とかで言えないんじゃないか? お約束だけど」

 

昔見たアニメになぞらえて良平が冗談をこぼす。

しかし恵はクスリとも笑わずに答えた。

 

恵「……確かに禁則事項は存在する。ただし、その大半はすでにアンロックされている……」

 

祭乃木「アンロック? なんでよ?」

 

恵「……私のマスターは87年前に不動遊星とのデュエルに敗北し、逆回転した遊星ギアを停めるために犠牲になった……。……その際に、私はイリアステルのデュエルロイドとしての任を解かれている……」

 

ここのせ「は?? イリアステル?」

 

ゆき「それって歴史の教科書に出てくる事件ですよね……? ネオ童実野シティ大災害……」

 

ゆきは傍らに落ちている歴史の教科書を一瞥して呟いた。

ネオ童実野シティ大災害。

突如として謎の飛行物体ーーアーククレイドルがネオ童実野シティ上空に現れ、それらを巡る戦いにより街に大きな被害を受けた事件である。

 

祭乃木「な、なんか壮大な話ね……。アンタ、小説家になれるわよ」

 

恵「……小説ではない……」

 

ここのせ「でも突拍子がなさすぎだぜ」

 

良平「相変わらず凄い発想力だ……。中二のときのここのせより凄いかも」

 

ゆき「ちゅ、中学2年生のときのここのせさんに何があったんですか……?」

 

祭乃木「そりゃもう凄かったのよ」

 

ここのせ「やめろ」

 

恵「…………」

 

ゆき「聞いてみたいですぅ!」

 

祭乃木「まずね、人を突き飛ばすときに獅子戦吼!って技名叫んでたり……」

 

ここのせ「おいやめろ! そんなん言ったら良平だってーー」

 

良平「なっ……! 言うなよ!」

 

ゆき「ぷっ……! あははっ」

 

祭乃木「ホント、男子ってガキよねぇ」

 

ゆき「祭乃木さんは、そういうのないんですかっ!?」

 

ワクワクとした表情でゆきは亜美に目を向けた。

亜美は目を逸らして腕を組む。

 

祭乃木「あ、あ、アタシにあ、あるわけないでしょお……!!」

 

良平「祭乃木はね……」

 

祭乃木「言わせるかぁ!!」

 

良平「痛てててて!!!」

 

亜美は良平の頭に手を回しヘッドロックをかけた。

良平は痛みからジタバタと抵抗する。

 

恵「………」

 

取り残された恵は、ここのせを見つめる。

ここのせは亜美と良平を見て笑っているだけでこちらには気付かない。

 

恵「……嘘つき……」

 

ポソリと恵はつぶやいた。

その声は殺風景な部屋の中で響くことなく霧散した。




後編に続きます。

■今回の禁止カード

・烈風の結界像
2006年8月10日発売のCYBERDARK IMPACTにて登場。
2023年1月改定を以て禁止カードに指定されました。
これを書いている当初はまさかこのカードが禁止になる日が来るとは思いませんでした。
時代の流れを感じるカードですね。

■ネオ童実野シティ大災害について
要するに遊戯王5Dsのアポリアから最終回にかけての戦いについて、この世界ではそのように呼ばれています。

地の文や台詞形式について

  • 今のままで良い
  • 台詞のみの台本形式の方が読みやすい
  • 小説のような形式の方が読みやすい
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