遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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形式を台本式+ちょっとだけ地の文でやってますが、アンケートの結果次第では前の話をちょっとずつ修正していくかもです。
ただねぇ……。
ただでさえ文字数多いのに地の文入れたらもっと冗長になる気がする……。
アンケートは今のところ、「今のままでいい」と「小説風」とで拮抗しているのでこのままでいきます。
よろしければご感想等いただけるとありがたいです!
よろしくお願い申し上げます。


第11話「不肖間宮ゆき! 特訓します!」前編

ワァッと耳鳴りすら起こるような地響きにも似た歓声が耳をつんざいている。

100mを全力で駆け抜けたかのような息苦しさで肩を上下させていた。

視界はモヤがかかっている。

蒙昧な景色。

しかし腕についた決闘盤と歓声がスタジアムにいることを教えてくれる。

間宮ゆきは流れる汗とあがりに上がった息をどうしていいかわからない。

 

祭乃木『ゆきー!! 頼むわよぉ!』

 

後ろから亜美の声がして振り返る。

そこにはヒーロー部の部員がベンチに一文字に並び声を上げていた。

 

ここのせ『気張れぇ! 間宮ァ!』

 

ここのせの声援にゆきは『あうぅ………』と声を漏らしながら前を向く。

フィールドには。

 

白銀の機龍ーーサイバー・ドラゴンが。

最強の融合モンスターーーキメラテック・フォートレス・ドラゴンが。

最悪の先兵ーーサイバー・ドラゴン・インフィニティ2体が。

 

『フハハハハハハハハッ!! 這いつくばれェ!!』

 

相手デュエリストが高笑いをしている。

黒い長髪に切れ目の鋭い瞳。

そして孤高の蒼い制服。

 

ゆき『あぅぅぅ……!』

 

目をぐるぐるとしながらゆきは口を開けた。

また後ろからチームメイトーー良平の声がする。

 

良平『間宮! 手札には可能性があるはずだ!! 諦めるな!』

 

ゆき『はぅぅぅ……!!』

 

そんなこと言われても。

手札は?

モンスターは?

見当たらない。見当たらない。見当たらない。

目がぐるぐると回る。

 

ゆき『わ、わ、わーーー』

 

…………

……

 

 

【ネオ童実野シティ 天神地区 ゆきの家 ゆきの部屋】

 

チュンチュンチュンと雀が鳴く穏やかな朝。

ゆきの部屋からは目覚まし時計の音が鳴り響く。

 

ゆき「ーーわたしの!! タァーーン!!」

 

布団を跳ね飛ばし、勢いよく振った腕はベッド横のタンスに思い切り衝突する。

タンスの上にあった写真立てと目覚まし時計と猫の置物がガラガラと床に落ちては大袈裟な音を立てた。

窓を貫通するほどの音に近所の雀は慌てて飛び立っていく。

 

ゆき「痛ぁぁぁいー!! 」

 

思わず飛び起きて手抑えた。

ひとときジタバタとしてからゆきは思い出したように周りを見る。

見慣れた自分の部屋。

 

ゆき「……あ、あれぇ? サイバー・ドラゴンはぁ……??」

 

半寝ぼけで自分の左腕を見ると決闘盤はついておらず、代わりにピンク色の寝巻きの袖がひらひらとしていた。

夢か、とゆきは胸を撫で下ろす。

 

ゆき(夢の中だけど、みんな必死に応援してくれてた……)

 

トットットッと足音がしてゆきは顔をあげた。

やがてコンコンとノックされて、ややあって母が顔を出す。

 

ゆき母「ゆき? すごい音したけれど、大丈夫? 入るわよ?」

 

ゆき「あ、お母さん」

 

今になってまたジンジンと痛む手を抑えゆきはベッドの上から応対する。

 

ゆき母「あーあー、すごい散らかってるじゃない。どうしたの?」

 

ゆき「ちょっと寝ぼけてて……」

 

ゆき母「そうなの? わたしのターンって聞こえたけど……」

 

ゆき「き、聴こえてたの!?」

 

ゆき母「デュエルをする夢でも見たの? ゆきもすっかりデュエリストね」

 

母がクスクスと笑うのでゆきは顔が赤くなるのを感じた。

 

ゆき「うぅ……///」

 

ゆき母「あ、そうそう! 今月末、お休みが取れたのよ。あなた達の試合、やっと観に行けそうよ」

 

ゆき「えっ……? お、お母さん観に来るの……?」

 

ゆき母「お父さんにも見せてあげたかったなぁ。結構楽しみにしてるのよ。いつも話してる部活の子たちも会ってみたいしね」

 

ゆき「そ、そうなんだ! あはは……」

 

八の字に眉を顰めてゆきは乾いた笑いを漏らす。

それからハッと思案した。

 

ゆき(お母さん、観に来るなんて……しかも、月末って……)

 

それから朝食を済ませて身支度も終え、学校へと赴く。

特に何もない平日。

 

【童実野第二高校 2組教室】

 

学校のチャイムが鳴った。

既に4時間授業を終えていて昼休みに突入する合図だった。

しかしゆきは席に座ったままデュエルの教科書を読んでいる。

カードの種類やらチェーンの組み方、カードとカードのコンボなども紹介されていた。

 

ゆき「うーん……」

 

しかしゆきは唸りながら教科書を閉じる。

教科書には当たり前だがサイバー流や六武衆デッキの攻略方法などない。

ゆきはスクールバックからデッキケースを取り出して中を見た。

 

ゆき「うう〜ん……」

 

何度も読み返した聖騎士達の効果テキスト。

当たり前だがそれ以外のものは記載されていない。

ゆきはがっくりと肩を落としてしまった。

 

「あれ? ……ごめん、間宮さん、ちょっといい?」

 

ゆき「……へ? は、はい! 何でしょうか?」

 

話しかけられると思っておらず、油断したところだったからゆきはびくりと跳ねた。

それから声の方を見上げると同じ制服、同じクラスの女子生徒がゆきのカードと教科書を指差している。

 

「今日ってデュエルの授業あったっけ?」

 

ゆき「あ、いえ! 今日はないですよ!」

 

「よかったぁ〜、カードも教科書も持ってきてないから焦ったよ〜! でも、どうして教科書なんて読んでるの?」

 

ゆき「今、デュエルの勉強中なんですぅ。近々、試合に出ることになってしまって……」

 

「試合……? え……もしかして……WSC……?」

 

ゆき「そうですぅ! どうして知ってるんですかぁ?」

 

「うわ……本当だったんだ……。しかも間宮さんか……」

 

ゆきの返答に女子生徒は独り言のように呟いてから、取り直すように手を振った。

 

「あ、あ〜……えーっと……ちょっと噂になってて……。ウチの生徒が出てるんじゃないかって……」

 

ゆき「そうなんですかぁ!?」

 

「うん……まぁ……ね? ……目立ちたがりの人たちもいるなぁって……あ、わ、私は応援してる……よ?」

 

ゆき「あ……あはは……」

 

流れに流れている女子生徒の目をみてゆきは流石に額面通りには受け取れずに愛想笑いを返した。

 

ゆき(こ、これは、あんまり良くない噂のされ方ですぅ……)

 

「あ、邪魔しちゃってごめんね! 頑張ってね!」

 

ゆき「は、はぁ」

 

女子生徒は気まずさを振り払い踵を返した。

そしてやがて仲の良いであろう生徒に合流して去って行った。

 

ゆき(うぅ……これは、予選で負けちゃったら針のむしろですぅ……)

 

その背を見送りゆきは思案する。

 

ゆき(お母さんも観にくるし……。それに祭乃木さん達もヒーロー部の為にここまで勝ち上がってきてる……)

 

席に座ったままゆきは考えを巡らせる。

そんなことは梅雨知らず、教室の後ろのドアから亜美が入ってきた。

 

祭乃木「おーい、ゆきー! 部室いくわよー!」

 

ゆき「祭乃木さん!」

 

ガタッと勢いよく席を立つ。

亜美は急なことに目を丸くして口を開けた。

 

祭乃木「な、ど、どうしたの?」

 

ゆき「わたし……特訓します!!」

 

祭乃木「へ?」

 

 

 

寝る前決闘空間 第11話

『不肖間宮ゆき! 特訓します!』

 

 

 

 

 

[童実野第二高校 ヒーロー部部室]

 

祭乃木「え? 噂が立ってる?」

 

ポットでカップラーメンにお湯入れながら亜美はゆきの言葉を繰り返した。

 

ゆき「はい……」

 

お弁当を膝に乗せ、ゆきは力なく答えた。

対面に座っている良平は購買で買った親子丼の蓋を開けながら声を出す。

 

良平「噂っていうか、ウチのクラスではみんな知ってるよな。まぁ、どっちかっていうと茶化されてるけど」

 

祭乃木「その度に、アタシが言ったやつに蹴り入れてるわ! おかげで脚力が上がった気がする」

 

自慢げに亜美が胸を張るとここのせが良平と同じく購買で買ったカツカレーにスプーンを刺しながら口を挟む。

 

ここのせ「この間、祭乃木の蹴りが癖になるって話聞いたけど、そいつお前の蹴りが目当てなんじゃねぇか?」

 

恵「…………」

 

同じく聞いていたらしい恵がここのせの言葉に一度だけ頷いた。

 

祭乃木「なっ! なにそれ!?」

 

良平「祭乃木の蹴りは、とりあえず置いておいて……」

 

祭乃木「ちょっと!?」

 

亜美は抗議するものの良平は気にせず話を進めた。

 

良平「2組とかそっちの方は、ある意味異文化だからな。こっちの話が変な風に伝わってるのかも」

 

童実野二高は学校の構造としては珍しく、1から3組までの教室と4から6組までの教室の間に吹き抜けと階段がある。

別にそういうルールはないが、なんとなくそこを隔てて合流があまりなくなるのだ。

 

ゆき「うぅ……わたしはなんだか居心地悪いですぅ……」

 

ここのせ「間宮だけあっちだからな」

 

ゆき「それに、お母さんも観に来るって……」

 

言われてから良平は合点がいったような顔をした。

 

良平「あ、そうか。普通こういうのは親も観に来るもんだよな。俺たちは、あんまりそういうのなかったから忘れてたね」

 

亜美はラーメンを啜って咀嚼。

飲み込んでから答えた。

 

祭乃木「アタシの親父はどこほっつき歩いてるかしらないしね」

 

ここのせもペットボトルのミルクティーを飲んでから口をあける。

 

ここのせ「オレんとこも、両親が外洋に出ちまって日本にいねぇし、良平んとこは自営業だからクソ忙しいからな」

 

恵「……」

 

ここのせの話を尻目に黄色い箱の栄養バーをポリポリと食べる恵。

ゆきは弁当を机に置いて話を続けた。

 

ゆき「来てくれるのは嬉しいけど……よりにもよって……。それに、みなさんが必死に戦って勝ち上がっているのを知っているので……」

 

祭乃木「そんなプレッシャーを感じなくていいわよ? サンドリヨン以外はアタシ出てないし」

 

ここのせ「大抵は良平が頑張ってただけだからな」

 

良平「あはは……」

 

ゆき「と、とにかく! 何としても本戦に出ないと立つ瀬がありません!それにわたしもヒーロー部の一員として試合を任せてもらうんですから、かっこ悪い戦いはできませんからね!」

 

祭乃木「なるほど、それで特訓ってわけね! いいじゃない! 付き合ったげるわ!」

 

ゆき「……それで……その……デュエルの特訓ってどうしたらいいんですかぁ……?」

 

祭乃木「デュエルは度胸あるのみ! と、いいたいけど……あ〜そうねぇ……うーん、たくさんデュエルして、自分のデッキを回すくらいしか思い浮かばないわね……」

 

ここのせ「オレらとやるか?」

 

良平「うーん、既に何回かやってるし、手の内が割れてるからなぁ」

 

祭乃木「恵! なんかいい案ない?」

 

ここまで発言なしの恵に亜美が水を向けた。

恵は特に驚きもせずにあっさりと回答する。

 

恵「……デュエルの演習を行うならば、ADSを使うことを推奨する……」

 

ゆき「えーでぃーえす……? なんですかぁそれ?」

 

恵「……オートマチックデュエルシステム。現代でもプロ養成所などで使用されているデュエルプログラム。デュエルルーチンを搭載したAIと仮想デュエルを行うことが可能。つまり私の先輩……」

 

ここのせ「へぇ、そんなのがあるんだな」

 

ゆき「すごそうですぅ!」

 

良平「ちょっとやってみたいかも」

 

祭乃木「でもそんなの持ってないわよ」

 

恵「……データは私が持っている。カードプールデータが不足しているため、サイバー流や六武衆との対戦は不能だが、デュエル自体は可能。ただ、あなたたちがプレイする場合にはデバイスが必要……」

 

ここのせ「デバイスねぇ」

 

祭乃木「要するにパソコンでしょ? 放課後、水原に借りましょ!」

 

 

[放課後 将棋部部室]

 

放課後になってからヒーロー部はいつものヒーロー部ーー即ち不法占拠した地学準備室ではなく、文化部部室棟に集合していた。

 

祭乃木「忠一ぃ! 入るわよぉ!」

 

将棋部のドアをノック代わりに声を上げてから亜美が押し入る。

 

忠一「ん」

 

中には将棋盤に向かい一人で駒を進めているメガネの少年ーー水原忠一が席に座っていた。

彼はこちらを一瞥すると眉を顰めた。

 

ゆき「お、おじゃましますぅ」

 

ここのせ「今日は水原しかいねぇのか?」

 

忠一「今日、も、だけどね。で、何の用? ぞろぞろとお揃いで」

 

忠一はめんどくさそうなのを隠しもせずに声を出す。

そんな彼にゆきは近づいた。

 

ゆき「貴方が水原さんですね! お名前はかねがね……。私、2組の間宮ゆきって言います!」

 

忠一「はぁ」

 

ヒーロー部の面々とは思えない程に礼儀正しい姿勢に忠一は肩透かしを食らったような声を出す。

 

ゆき「この選手票とネームプレート用意してくださってありがとうございます! とっても便利ですぅ!」

 

忠一「それは何より。……あー、6組の水原。呼び方はなんでも。一応、よろしく」

 

ゆき「はい!」

 

ニコニコと朗らかな笑みを浮かべるゆきに忠一はやりにくそうな顔をしている。

良平がそんな彼に別の机にあるノートパソコンを指差して言う。

 

良平「それで、水原。本題なんだけど」

 

忠一「うん」

 

良平「パソコンを貸してほしいんだけど、いいかな?」

 

忠一「構わないけど、何に使うの?」

 

身体をこちらに向けて腕を組む忠一。

それに対して亜美が答えた。

 

祭乃木「えーでぃーえす? とかいうアプリを入れたいのよ。データはあるみたいなんだけどさ」

 

忠一「ふーん。ま、入れるのは構わないけど、そのパソコン、あまり容量ないぞ」

 

恵「……確認したい。許可を……」

 

後ろに控えていた恵がすっと前に出て、忠一の顔をまっすぐに見た。

忠一は見慣れない銀髪に目を丸くしながら答える。

 

忠一「え? あ、あぁ、いいけど」

 

恵「……感謝する……」

 

言うが早いか、恵はノートパソコンを起動させた。

カタカタとキーボードを入力しパスワードを聞くまでもなく突破している。

忠一はそんな彼女を怪訝な顔で見ながら小さく疑問を呈した。

 

忠一「……誰?」

 

ここのせ「ウチのクラスに転校してきたルイン恵だ。呼ぶときは、ひらがな3つでめぐみ、だそうだ」

 

忠一「外国人?」

 

銀髪と苗字から忠一は聞き返すと亜美はニヤと笑いながら声を出した。

 

祭乃木「デュエルロイドよ」

 

忠一「は?」

 

祭乃木「自称ね」

 

聞いてから忠一はバカバカしいと言わんばかりに背もたれにもたれかかりため息をついた。

それからゆきのほうを見上げた。

 

忠一「……お前らの周りにはネジ飛んでるやつしか集まらないのか? ……間宮、こいつらと関わると知能が下がるぞ」

 

祭乃木「なぁんですって!?」

 

ゆき「あ、あはは……。でもわたしはヒーロー部、大好きですよ!」

 

忠一「さいですか」

 

興味を失ったように、忠一は再び将棋盤に向き直し、駒を持って思案を始めた。

一方でキーボードの音が止まったかと思うと恵が振り向く。

 

恵「……容量が足りない。これではダウンロードできない……」

 

良平「ダメかぁ」

 

祭乃木「ちょっと! 余計なもんとか入ってないでしょうね!」

 

忠一「入ってるけど、消したところで大して変わらんよ。性能のいいパソコンがいいなら、パソコン室にいけ」

 

無関心とばかりに将棋雑誌と譜面を見ながら忠一はいい返した。

 

ここのせ「どうする? パソコン室いくか?」

 

祭乃木「入れられないんじゃ仕方ないわね」

 

ゆき「……あのぉ、さっきから気になってたんですが、水原さんは何をしてるんですかぁ? 一人で将棋を打ってるように見えるんですが……」

 

パソコンではなく忠一を見ながらゆきが小首を傾げた。

忠一は手を止めてゆきに向く。

 

忠一「ん? 詰将棋だよ。知らない?」

 

ゆき「詰将棋?」

 

忠一「元から盤面が設定されてて、そこから限られた手数で詰みまで持っていく将棋の練習の一つだよ。ボードゲームだと割とメジャーな練習だと思うけど」

 

ゆき「へぇ! なんだかパズルみたいですぅ」

 

忠一「まぁ、パズルといえばパズルだね」

 

祭乃木「デュエルにもあるわよね、詰めデュエル。あんまりやったことないけど」

 

良平「結構難しいしな。でも練習にはなるよ」

 

ゆき「デュエルにもあるんですねぇ!」

 

恵「……ADSにも詰めデュエルは存在する。詰めデュエルのみならば、このパソコンでもインストールが可能……」

 

祭乃木「マジで!? じゃあ入れてみてよ! いいでしょ?」

 

忠一「構わんよ」

 

恵「……わかった……」

 

許可を得てから恵は再びとてつもない速さでキーボードを入力する。

それからUSBの刺し口に手をかざした。

すると直ぐに画面に『ADSをインストールしています』と表示される。

やがてインストールが完了し画面には、

『automatic duel system』

・deck build

・auto duel

・composed duel

とややサイバーチックなデザインで表示されていた。

 

祭乃木「おっ! これがADSなのね! ちょっと近未来的でカッコいいわね」

 

ここのせ「おい、これ英語じゃねぇか!」

 

恵「……カードは日本語になるように設定している。プレイングに支障はないはず……」

 

良平「へぇ、デッキも作れるんだね」

 

恵「……本来ならば7000種程度のカードプールからカードを選択しデッキビルドを行うことができる。現在は容量の問題で使用できない……」

 

祭乃木「なるほどねぇ、こりゃ確かにプロ御用達って感じするわ。じゃあ、早速、詰めデュエルやってみましょ!」

 

恵「……詰めデュエルは、一番下のモード……」

 

良平「間宮の練習だし、ここ座りなよ」

 

良平はPCの前の椅子を引いて指差した。

 

ゆき「は、はい! では、いきます!」

 

着席してからマウスをカチリと押す。

PC画面にはLevel selectと出ておりLevel1〜Level20と続く。

 

ここのせ「なるほどな、レベルが上がるほど難しくなるってわけか」

 

ゆき「ま、まずはレベル1から……」

 

ーLevel1ー

[自分手札]

《終末の騎士》

《ダーク・アームド・ドラゴン》

《緊急テレポート》

《魂を削る死霊》

 

[自分デッキ]

《D-HERO ディアボリックガイ》

《ゾンビキャリア》

《クレボンス》

《サイコ・コマンダー》

《D-HERO ディアボリックガイ》

 

[自分墓地]

なし

 

[自分EXデッキ]

X-セイバーウェイン

大地の騎士ガイアナイト

スクラップ・ドラゴン

邪竜星ガイザー

 

[フィールド]

自分側

伏せカード1

《砂塵の大竜巻》

 

相手側

伏せカード1

 

[相手情報]

手札0

墓地0

LP7100

 

クリア条件

このターン中に勝利。

 

恵「……カーソルを合わせてクリックすることで、カード情報を参照やカードの使用が可能……」

 

ゆき「了解です! ……って、えぇっ!? ライフが7100もありますぅ!?」

 

ここのせ「大量展開して削りきるしかねぇな」

 

祭乃木「まずは、色々試してみるのがいいんじゃない?」

 

ゆき「そ、そうですね! ではいきます! ……えーっと手札は……ふむふむ……。デッキの中身も見られるんですねぇ」

 

良平「デッキや墓地から如何に展開するかが鍵になるわけだね」

 

ゆき「よーし! では、手札の終末の騎士を召喚です!」

 

[フィールド]

終末の騎士

攻:1400 闇 戦士族 星4

 

ゆき「効果発動! デッキから……そうですね……では、ゾンビキャリアを墓地に送ります!」

 

[墓地]

ゾンビキャリア

 

ゆき「えっと……? 緊急テレポートの効果は……?」

 

恵「……緊急テレポート。速攻魔法。手札・デッキからレベル3以下のサイキック族を特殊召喚する。特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズに除外される……」

 

ゆき「なるほど! えっとサイキック族のカードは何がありましたっけ……?」

 

良平「対象になるのは、デッキ内のクレボンスとサイコ・コマンダーだね」

 

ゆき「クレボンスは……レベル2で攻撃力1200……。サイコ・コマンダーはレベル3で1400……。よし、ここは、緊急テレポートを発動して、サイコ・コマンダーを特殊召喚です!」

 

《緊急テレポート》

速攻魔法

 

[フィールド]

サイコ・コマンダー

攻:1400 闇 サイキック族 星3 チューナー

 

終末の騎士

攻:1400 闇 戦士族 星4

 

 

ゆき「あ、あれ……? 全然足りない……? ぼ、墓地のゾンビキャリアの効果発動! えっと……? 手札のカードをデッキの上に置いて、墓地から特殊召喚!」

 

《ゾンビキャリア》

効果モンスター

 

手札:

魂を削る死霊→デッキトップ

 

[フィールド]

ゾンビキャリア

攻:200 闇 アンデット族 星2チューナー

 

サイコ・コマンダー

攻:1400 闇 サイキック族 星3 チューナー

 

終末の騎士

攻:1400 闇 戦士族 星4

 

ここまで展開してから良平が不意に「あっ」と呟いた。

画面を見ると相手が動いている。

 

[相手伏せカード]

 

《月の書》

速攻魔法

 

終末の騎士

セットモンスター

 

月の書が発動し問答無用で終末の騎士を裏側にしてしまう。

 

ゆき「えぇっ!?」

 

祭乃木「あちゃ〜、攻撃反応系じゃなかったかぁ」

 

良平「最初に砂塵を発動させないとダメみたいだな」

 

ゆき「も、もう一回、ですぅ!」

 

恵「……リスタートする場合は左クリックのメニューで選択可能……」

 

ゆき「左クリックっと……」

 

【再チャレンジ】

 

今度は砂塵の大竜巻を発動してから、さっきの手順に戻ってくる。

 

[フィールド]

終末の騎士

サイコ・コマンダー

ゾンビキャリア

 

ゆき「こ、今度こそシンクロ召喚です! レベル4の終末の騎士に、レベル2のゾンビキャリアをチューニング! シンクロ召喚!」

 

星4+星2=星6

 

《大地の騎士ガイアナイト》

シンクロモンスター

 

[フィールド]

サイコ・コマンダー

攻:1400

大地の騎士ガイアナイト

攻:2600 星6 地 戦士族

 

ゆき「あ、あれ……?」

 

ーバトルフェイズー

 

ゆき「サイコ・コマンダーで攻撃!」

 

相手LP7100→5700

 

ゆき「ガイアナイトで攻撃!」

 

相手LP5700→3100

 

ゆき「あぁ……!削りきれません……!!」

 

[you lose]

 

ばーんっと効果音付きで画面にデカデカと表示される。

 

ゆき「あぅぅ……」

 

ここのせ「まぁ、何となく足りねーなってのは気付いてた」

 

祭乃木「そんな落ち込まないの! 何回もチャレンジすりゃいいのよ!」

 

ゆき「は、はい! まだまだいきますよ!」

 

【3回目チャレンジ】

 

ゆき「うぅぅ、また足りません……」

 

相手LP2000

[you lose]

 

【5回目チャレンジ】

 

ゆき「さっきより展開できませんでしたぁ……」

 

相手LP5200

[you lose]

 

【10回目チャレンジ】

 

ゆき「ーー邪竜星ガイザーをシンクロ召喚! さらに、墓地の闇属性は3体! ダーク・アームド・ドラゴンを特殊召喚!」

 

ガイザー攻:2600

ダムド 攻:2800

 

ゆき「手札をデッキに1枚戻して、ゾンビキャリアを特殊召喚!」

 

ゾンキャリ攻:200

 

ゆき「……これでも届かない……」

 

相手LP1500

[you lose]

 

ゆき「あぅぅ……難しいですぅ……」

 

ここのせ「流石プロ御用達だな……。レベル1から難しいぜ」

 

祭乃木「うーん……そうねぇ。……良平、アンタどうせ解けてるんでしょ? ちょっとヒントだしてあげてよ」

 

亜美は腕を組んでいる良平の脇腹をつんとついた。

 

良平「解けてるかどうかわからないけど……。そうだな……。間宮、EXデッキにX-セイバー ウェインがいるだろ? こいつはシンクロ召喚したとき、手札のレベル4以下の戦士族を特殊召喚できるんだ」

 

ゆき「そんな効果があるんですね! 見落としてましたぁ……」

 

良平「その効果を使えれば、手札の終末の騎士を特殊召喚できるはずだ。つまり、召喚権を使わなくても終末の騎士を場に出すことができるよ」

 

ゆき「なるほど!! つまり、召喚権を別のカードに使えるってことですね! よーし、もう一度やってみます!」

 

ここのせ「ほかに通常召喚できんのは、魂を削る死霊しかねぇな」

 

良平「魂を削る死霊は星3、つまり緊急テレポートの効果で星2を特殊召喚すれば、X-セイバーウェインまでいけるね」

 

ゆき「よーし、いきますよ! まずは、伏せカードオープン! 罠カード、砂塵の大竜巻を発動! 相手の伏せカードを破壊します!」

 

《砂塵の大竜巻》

通常罠

 

ゆき「続いて、魂を削る死霊を通常召喚!」

 

[フィールド]

 

魂を削る死霊

攻:300 星3 闇 アンデット族

 

ゆき「速攻魔法、緊急テレポート発動です! 呼び出すのは、クレボンス!」

 

《緊急テレポート》

速攻魔法

 

[フィールド]

 

魂を削る死霊

クレボンス

攻:1200 星2 闇 サイキック族

 

ゆき「レベル3の魂を削る死霊に、クレボンスをチューニング! X-セイバー ウェインをシンクロ召喚です!」

 

☆3+☆2=☆5

 

[フィールド]

 

X-セイバー ウェイン

攻:2100 星5 地 戦士族

 

ゆき「効果発動! 手札の終末の騎士を特殊召喚です!」

 

[フィールド]

 

ウェイン

終末の騎士

攻:1400 星4 闇 戦士族

 

ゆま「終末の騎士の効果を発動! デッキから闇属性のモンスターを墓地に送ります! 送るのは……うーん……、今の手札はダークアームドドラゴン……。捨てちゃうのはもったいないのでゾンビキャリアはだめですね……。ディアボリックガイなら墓地の効果が使えますね! ディアボリックガイを墓地へ!」

 

[デッキ]→[墓地]

D-HEROディアボリックガイ

 

良平「そうだ! こうすれば、ディアボリックガイも出せるし、墓地のモンスターも整っている!」

 

ゆき「はい! 墓地の闇属性は3体! ダークアームドドラゴンを特殊召喚です!」

 

[フィールド]

 

ウェイン

終末の騎士

ダムド 攻:2800 星8 闇 ドラゴン族

 

ゆき「さらに! ディアボリックガイを墓地から除外して、デッキから同名カードを特殊召喚します!」

 

[フィールド]

 

ウェイン

終末の騎士

ダムド

ディアボリックガイ

攻:800 星6 闇 戦士族

 

ゆき「バトル! 全てのモンスターでダイレクトアタック!です!」

 

相手LP7100→0

 

[you win!!]

 

ゆき「やったぁ!! できましたぁ!」

 

祭乃木「やったわね!ゆき!」

 

ここのせ「やるじゃねぇか! ……ま、良平も流石だな」

 

良平「やめろよ、たまたまだから」

 

ゆき「たしかに日和田さんのアドバイスがなければできませんでした……。もっと頑張らないと、ですね……」

 

少しだけ肩を落としてゆきが言うと、忠一が声を出した。

見ると将棋盤から目は離さず盤面を睨んでいた。

 

忠一「詰め将棋ってのは」

 

ゆき「?」

 

忠一「解くことに意味があるわけじゃない。仮説思考力を鍛える、つまり考えることに意味がある。……だから、まぁもっと素直に喜んでいいんじゃない?」

 

ゆき「水原さん……。はい! ありがとうございます!」

 

祭乃木「なによ、アンタにしちゃ珍しくいいこと言うじゃない」

 

忠一「俺はいつもいいことを言っているよ。君らが聞かないだけで」

 

良平「ホントかなぁ」

 

ここのせ「ま、その仮説思考力とやらをもっと鍛えようや。今のはレベル1なんだろ? どんどん先行こうぜ」

 

ゆき「はい! では、レベル2いきます!」

 

前のめりでゆきはパソコンに齧り付いた。

 

…………

……

 

相手LP8000→0

 

[you win!!]

 

ゆき「レベル12クリア!です!! やりましたぁ!!」

 

ここのせ「すげーなぁ、オイ!」

 

良平「正直、俺も怪しかった……。間宮、やるなぁ」

 

祭乃木「ゆきは地頭がいいからねぇ」

 

ゆき「えへへ……! じゃあ、また続きを……」

 

続きに手を伸ばそうとした瞬間である。

キーンコーンカーンコーンと聞き慣れたチャイムが響く。

その音にゆきは夢中になりすぎたと後ろ頭に冷や汗をかいた。

 

ゆき「あれ? い、今何時ですかぁ!?」

 

恵「……日本標準時18時30分7秒……」

 

ゆき「ご、ごめんなさい! わたしばっかりずっとやってて……!」

 

祭乃木「いいのよ! ゆきの特訓なんだから! それより、どう? やってみて」

 

ゆき「はい! なんだか、カードを扱う力が増した気がしますぅ!」

 

ここのせ「なら、実際に自分のデッキを回してみるか。相手になるぜ」

 

ゆき「はい! ぜひ!」

 

とゆきが目を輝かせていると忠一がわざとらしく咳払いをした。

 

忠一「盛り上がってるところ悪いんだけど」

 

それから見せびらかすように鍵を左右に振って音を鳴らす。

 

忠一「最終下校時間になったから、将棋部は店じまいだ。やるなら他で頼む」

 

ゆき「あ、すみません、何時間も! 今日はありがとうございました!」

 

ぺこぺことゆきは何度も頭を下げる。

 

忠一「はいはい」

 

それから全員でざっと片付けて電気を消した。

廊下に出て忠一が将棋部部室の鍵をかける。

 

忠一「じゃあ、俺は職員室に鍵を返しにいくから。ここで」

 

祭乃木「うん。今日はありがとね、助かったわ」

 

忠一「ん」

 

愛想は振りまかないが別段嫌味を言うでもなく去っていく。

亜美は見送ることはせずに全員に振り向いた。

 

祭乃木「さてと、これからどうする? デュエルしにいく?」

 

良平「間宮次第だね。門限とか大丈夫?」

 

ゆき「20時前までに帰れば、お母さんも心配しないと思うので、それまでだったら大丈夫ですよ! ぜひ、デュエルしたいです!」

 

ここのせ「デュエルすんなら、ショップの近くのデュエセンがいいよな」

 

ゆき「デュエセン??」

 

良平「街中にデュエルできるところがあってさ。まぁいけばわかるよ」

 

祭乃木「よっしゃ! じゃあ行きましょ!」

 

ゆき「おー!」

 

太陽がやや傾いていて空を朱色に染めている。

しかしヒーロー部はまだまだこれからと街へと繰り出していった。




※詰めデュエルは昔、DSのゲームかなんかに入ってたやつを思い出して書いてます。
※デュエセンは、バッティングセンターみたいなノリ、デュエルできる場所が街にあるイメージです。
後編もデュエル特訓回です。
WSC決勝戦は次の次の更新からになります。
ご了承ください。

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