遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
今回は準備回ですが、WSC準決勝はここで消化します。
次回がWSC予選の決勝戦となります。
今回はそのための準備回です。
【ネオ童実野シティ 繁華街】
学校を飛び出したヒーロー部の5人は、その足で繁華街へ繰り出していた。
中華レストランや出店、キッチンカーなどが立ち並ぶこの一角は常に人がいて騒がしい。
とりわけ特に目立つのはガチャガチャと音が漏れるゲームセンターとその隣に併設されているネオンと巨大な看板が取り付けられた建物である。
看板には旧型の決闘盤と共に大きく「I2デュエルセンター」と書かれていた。
ゆきはそれを指差して声を出した。
ゆき「あ! この大っきい建物、デュエルする場所だったんですねぇ」
良平「デュエルする人じゃないとあまり気にしないよね」
返事のように良平が頷く。
ゆき「デュエルセンターの略で、デュエセン、ですね」
良平「うん。まぁ決闘盤があればここでやる必要はないんだけど、ここは不特定多数の人とデュエルできるときもあるんだ。相手がいないときはコンピューターとも対戦できるし」
ゆき「へぇ、そうなんですね! 楽しみです!」
ウキウキとした気持ちでデュエルセンターを眺めるゆき。
反してやや離れた場所から亜美の呼ぶ声が聞こえた。
祭乃木「ゆきー! こっち寄ってからいくわよー!」
ゆき「え?」
振り返ると対面にある別の2階建ほどの店の前で亜美が手を招いている。
ガラスの向こうにはショーケースが所狭しと並んでおり、何を取り扱っている店かすぐにわかった。
ゆき「カードショップですかぁ?」
目的が分からずに小首を傾げていると良平が補足する。
良平「デュエセンは1プレイ300円なんだけど、そこのカードショップのレシートがあれば1回無料でできるんだ。ボリュームシリーズ1パックだけ買えば半額でできるよ」
ゆき「なるほど! お財布に優しいですね!」
そんな会話もそこそこにショップの自動ドアに足を踏み入れる。
中は白いタイルに綺麗なショーケースが並んでいて奥まったところに大量のカード棚があった。
床を清掃している店員が、いらっしゃいませ、と挨拶をする。
恵「……」
店に入ったとたん恵がスタスタと奥まで歩いて行ってしまった。
気付いたここのせは手を伸ばすも触れることは叶わず。
ここのせ「あ、おい、恵! ……フラフラどっか行っちまったぜ」
すると亜美が背中をトンと押した。
祭乃木「アンタ、同じクラスなんだからちゃんと面倒見てよね! ストレージ見に行ったんでしょ。はぐれるとよくないし、付き添ってあげて」
ここのせ「へいへい」
抵抗するでもなくここのせは恵に追従する。
尻目にゆきはパックの購入札を持ってレジに向かった。
ゆき「わたし、買いますね! 今回はボリューム11を買ってみます!」
祭乃木「はーい」
良平「祭乃木は買わないの?」
祭乃木「うーん、今はデッキのバランス崩したくないし、いいわ。アンタは?」
良平「俺は一つ買ってこようかな」
良平も吟味するようにパック札を見つめ、Vol.9という札を手に取った。
一方ストレージゾーンでは恵がカード束が収納された棚を端から端まで首だけ回して見通すと触れることなく引き返していた。
恵「……」
ここのせ「お前、何がしたかったんだよ……。ストレージの束をじっと見ただけじゃねぇか……」
恵「……ストレージ内に、ヒーロー部員のデッキに採用できるカードは存在しなかった……」
ここのせ「カード1枚も見てねぇじゃねぇかよ……」
ゆき「買ってきましたー! ……あれ? 日和田さんは?」
祭乃木「アイツも買いに行ったわよ」
亜美は後ろ指でレジを指す。
見るとちょうど会計をしている良平の背中があった。
そんなヒーロー部員たちの横を小学4年生ほどの少年二人が通り過ぎていく。
小さな手にはカードパックと今まさに邂逅したばかりであろうカードがあった。
「……うぅん 、イマイチだなぁ……」
「……おれもー」
二人の腰にはデッキケースが付いている。
ゆきは店を出て行く彼らを見ながら思わず声を出した。
ゆき「わぁ、あんな小さい子たちもやってるんですね!」
ここのせ「リトルリーグもあるからな、小学生でも立派なデュエリストだぜ」
良平「かなり昔だけど小学生のデュエリストが一瞬全米チャンピオンになったこともあるし、侮れないよな」
ゆき「そ、そうなんですかぁ!?」
祭乃木「まー、それはかなり特殊なパターンだけどね! さ、じゃあデュエセンにいきましょ!」
亜美は店の外を指差した。
【童実野シティデュエルセンター】
中はちょっとした体育館よりも広いと感じるほどのサイズ。
しかし、それでもガヤガヤと雑踏が起きるほどに人がいる。
奥を見ると5箇所ほど大きなフィールドがあり両端にはデュエリストが立つゴンドラのような箱があった。
周りには観戦用なのかプラスチック製のベンチが敷設されている。
祭乃木「平日の割には結構人いるわね」
亜美は中がほとんど空っぽのスクールバッグをベンチに置き腕を組んで座った。
隣に良平が同じく自分と、それから預かったゆきのスクールバッグを置いた。
良平「WSCやってるからね。それなりに影響あるんだろうな」
デュエルコートの左側ゴンドラには間宮ゆきが、右側にはルイン恵が入り込み向かい合っている。
ゴンドラの外にここのせは立っていてゆきに使い方を教えていた。
ゆき「よろしくお願いします、恵さん!」
恵「……ん……」
ここのせの指示でゆきはおぼつかない手つきでレシートのバーコードを機械に読み取らせ、対人戦を選択する。
するとゴンドラが少しだけ持ち上がり、デュエルフィールドが起動した。
ゴンドラ前部には決闘盤をそのまま大きくしたような装置が取り付けられていてゆきはそこにデッキをセットした。
ゆき「デュエル!」
LP4000
恵「……デュエル……」
LP4000
【コート外】
無事にデュエルがスタートしたことを確認するとここのせも亜美と良平が座るベンチに合流し、預かっていた恵のスクールバッグと共にどかりと座った。
ここのせ「しかし、間宮と恵か。何気に初対戦か?」
良平「ここのせがやるんじゃないんだ? 学校出るときはそんな感じだったけど」
ここのせ「間宮に教えてやってたら、恵のやつがそのままフィールドに入ってったんだよ」
祭乃木「出番取られてんじゃない。……あ、良平、開けんの?」
話しながら良平がパックを取り出したのを亜美はめざとく指摘する。
良平はパックを丁寧に開封しながら「うん」と答えた。
ここのせ「どうよ?」
良平「今のところ持ってるやつが多いな」
5枚入りのカードを順繰りにスライドして確認する。
良平「あ」
4枚目のカードはレアリティがついたカードで
《HSR-チャンバライダー》
と表記されていた。
祭乃木「おー、光り物がでたわね!」
良平「風属性機械族のレベル5シンクロか。これは使えそうだ」
ここのせ「やっぱりお前は風属性機械族ばっか当たるんだな」
【デュエルコート】
一方、デュエルコートでは初期手札を用意したところでゆきは外のベンチに目を向けていた。
ゆき「な、何話してるんでしょう……?」
恵「……間宮ゆき……」
完全に意識外のところからフルネームを呼ばれて慌てて恵に向く。
相変わらずの無表情で恵はまっすぐにこちらを見ていた。
ゆき「は、はい!?」
恵「……先攻はどうする……? ……私はどちらでも構わない……」
ゆき「えっと……では、先攻を貰います!」
恵「……わかった……」
それだけ会話すると恵はまた無表情でゆきの様子を見ていた。
ゆきは見慣れない機械にセットされた自身のデッキを見て深呼吸をしてから手札に手をかけた。
ーメインフェイズー
ゆき「では、いきます! 手札から魔法カード、聖杯の継承を発動です!」
《聖杯の継承》
通常魔法
【コート外】
良平「あ、始まった」
デュエルコートの様子を確認して良平はカードをデッキケースに仕舞い込んだ。
祭乃木「ゆきが先攻みたいね」
【デュエルコート】
ゆき「聖杯の継承の効果で、デッキから聖騎士または聖剣を手札に加えます! 聖騎士モルドレットをサーチです!」
手札4→5
自動で選出されたカードを抜き取り恵に見せ、それからそれをメインモンスターゾーンに置く。
ゆき「そのまま、今加えた聖騎士モルドレットを通常召喚!」
聖騎士モルドレット「ハァァッ!」
攻:1700 光 戦士族 星4
フィールドに呼び出された聖騎士モルドレッドがデュエルフィールドで具現化する。
現れたそれは通常のソリッドビジョンとは異なり、細部まで細かくより立体的にリアルに映し出されていた。
ゆき「わっ、凄い綺麗ですぅ……!」
恵「……この時代では最新のソリッドビジョンシステムが採用されている……」
ゆき「へぇ! ……あっ……んっん! では、手札から装備魔法、聖剣-クラレントを発動! モルドレットに装備します!」
《聖剣-クラレント》
装備魔法
ゆま「聖騎士モルドレットの効果を発動です! 自分フィールドに他にモンスターがいない場合、デッキから聖騎士モンスターを特殊召喚し、その後、聖剣カードを破壊します! 来てください! 聖騎士-イヴァン!」
聖騎士モルドレットが聖剣を掲げる。
剣は発光し新たな聖騎士がフィールドに現れた。
聖騎士イヴァン「ハッ!」
守:1600 光 戦士族 星4
光が収束すると聖剣クラレントは役目を終えたかのようにガラスのように砕け散っていく。
ゆき「破壊された聖剣クラレントの効果発動!」
しかし聖剣はただでは死なず。
破壊された場合にフィールドの再装備可能となる。
静観していた恵は手札に手を伸ばした。
恵「……その効果の発動にチェーンし、手札の朔夜しぐれを墓地に送って効果を発動する……」
ゆき「あうっ!?」
《朔夜しぐれ》
効果モンスター
chain1 聖剣-クラレント
chain2 朔夜しぐれ
恵「……このカードは、そちらの場に表側表示でモンスターが特殊召喚された場合に、手札から墓地に送ることで、その効果をターン終了時まで無効にする。また対象となったモンスターがこのターンに墓地に送られた場合、その攻撃力分のダメージを与える。対象は聖騎士イヴァン……」
【コート外】
祭乃木「厄介な手札誘発ね。リンク素材にもしにくいわ」
良平「間宮のデッキの展開パターンを止められちゃったな」
【デュエルコート】
ゆき「あぅぅ……」
恵「……相手の伏せカードだけでなく手札にも注意が必要……」
ゆき「なるほどぉ……。……で、でも、このままでは終わりません! クラレントをイヴァンに装備です!さらにレベル4のイヴァンとモルドレットでオーバーレイ!」
☆4×☆4=★4
ゆき「NO.86 H-C ロンゴミアントをエクシーズ召喚!」
NO.86 H-Cロンゴミアント「ハァァァッ!」
守:1500→3000 闇 戦士族 ランク4
ゆき「ロンゴミアントは、エクシーズ素材の数に応じて効果が追加されます! 2体の場合は攻守が1500ポイントアップし、さらに戦闘では破壊されません!」
恵「……」
ゆき「カードを1枚セットして、ターン終了です!」
ーエンドフェイズー
間宮ゆき
LP:4000
手札:3
伏せ:1
フィールド:
NO.86 H-Cロンゴミアント
【コート外】
良平「ロンゴミアントなんて持ってたのかぁ」
ここのせ「テーマカードじゃねぇけど、ロンゴミアントのモチーフは聖槍ロンゴミニアド。アーサー王の武器の一つだぜ。テーマに合ってるな」
【デュエルフィールド】
ードローフェイズー
恵「……私のターン……」
手札4→5
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
恵は手札を見通し、やがて1枚カードを場に伏せる。
恵「……モンスターをセット……」
裏守備表示のカードがフィールドに浮き上がる。
恵は特に感嘆することなく次のカードを魔法罠ゾーンに差し込んだ。
恵「……手札から魔法カード、愚かな埋葬を発動する……」
《愚かな埋葬》
通常魔法
恵「……デッキよりモンスターカードを1枚墓地に送る。屍界のバンシーを墓地へ……」
黒い瘴気を伴って墓地にカードが送られる。
恵「……カードを1枚セットしターンエンド……」
ーエンドフェイズフェイズー
ルイン恵
LP:4000
手札:2
魔法罠:1
フィールド:
裏守備モンスター
ゆき「恵さんのエンドフェイズ時に、ロンゴミアントの強制効果が発動します。エクシーズ素材を1枚墓地に送らなければなりません……」
NO.86 H-Cロンゴミアント
守:3000→1500
ードローフェイズー
ゆきら「では、私のターンです! 」
手札3→4
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
ゆき「E・HEROシャドーミストを通常召喚!」
E・HEROシャドーミスト「シュッ……」
攻:1000 闇 戦士族 星4
ゆき「シャドーミストとロンゴミアントをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、戦士族モンスター2体!」
↙︎戦士族+↘︎戦士族=LINK2
ゆき「聖騎士の追想 イゾルデをリンク召喚です!」
聖騎士の追想イゾルデ「フフフ……」「はぁ……」
攻:1600 光 戦士族 ↙︎↘︎LINK2 EXゾーン
ゆき「イゾルデのリンク召喚時の効果とシャドーミストが墓地に送られた時の効果が、それぞれ発動します!」
chain1 聖騎士の追想イゾルデ
chain2 E・HEROシャドーミスト
ゆき「まずは、シャドーミストの効果で、デッキからE・HEROモンスターをサーチします! E・HEROアナザーネオスを手札に加えます!」
手札3→4
ゆきは随分慣れた様子でカードを操っていく。
ゆき「さらに、イゾルデの効果でデッキから戦士族モンスター、焔聖騎士-アストルフォを手札に加えます!」
手札4→5
恵「……」
ゆま「さらに! イゾルデのもう一つの効果を発動です! デッキから装備魔法、聖剣-ガラティーン、聖剣-カリバーン、天命の聖剣、聖剣-EXカリバーンを墓地に送って、その枚数分のレベルの戦士族モンスターをデッキから特殊召喚します! 来てください! 聖騎士モルドレット!」
聖騎士の追想イゾルデたちは「「聖騎士の追想はこの胸に……」」と声を揃えて剣を掲げた。
その光が収束し、聖騎士が飛び出した。
聖騎士モルドレット「ふんっ!」
攻:1700 光 戦士族 星4
ゆき「モルドレットは、装備魔法を装備していないときは、通常モンスターとして扱います! そして聖騎士ガヴェインは、フィールドに光属性の通常モンスターが存在する場合、特殊召喚できます!」
聖騎士ガヴェイン「ハァァッ!」
攻:1900 光 戦士族 星4
ゆき「レベル4のガヴェインとモルドレットでオーバーレイ!」
☆4×☆4=★4
ゆき「ーー汝、輪転する運命の撚り糸。泉の元に来たれ、聖剣の担い手よ!!」
心の奥から溢れる詠唱。
オーバーレイネットワークが一層強く輝き聖剣を携えた騎士が姿を現した。
ゆき「エクシーズ召喚! 来てください、聖騎士王アルトリウス!」
聖騎士王アルトリウス「ハァァッ、タァッ!」
攻:2000 光 戦士族 ランク4
ゆき「アルトリウスは、エクシーズ召喚に成功した時、墓地の聖剣を3種類まで装備できます! 対象は、カリバーン、ガラティーン、EXカリバーンの三種類!」
墓地に眠る聖剣を呼び起こす効果を放つ。
しかし恵は整然と対抗札を起動させた。
恵「……墓地の屍界のバンシーの効果を発動する……」
chain1 聖騎士王アルトリウス
chain2 屍界のバンシー
恵「……このカードを墓地から除外することで、手札・デッキからアンデットワールドを発動させる……」
屍界のバンシー「うぅ……!」
フィールドが一瞬にして暗転し、フィールドに毒沼が広がる。
全てが腐り果てたような世界。
荒廃した世界。
《アンデットワールド》
フィールド魔法
フィールドを見渡してゆきは思わず声を上げた。
ゆき「これが、アンデットワールド……!」
恵「……アンデットワールドが発動している間、お互いのフィールド、墓地のモンスターは全てアンデット族になる……」
ゆき「えぇ!?」
毒沼からただよう霧に包まれた聖騎士たちは見る間に肌が爛れ、腐り落ちていく。
それはまるで生きる屍のこどし。
聖騎士の追想イゾルデ「なんてこと!? 私の美貌が……!」「不幸です……」
戦士族→アンデット族
聖騎士王アルトリウス「くっ……」
戦士族→アンデット族
恵「……間宮ゆき、あなたのデッキの聖剣は一部を除き、戦士族にのみ装備可能な装備魔法。アンデット族となった今、装備不可能……」
ゆき「 ……うぅ、EXカリバーンしかつけられません……」
聖騎士王アルトリウス「ぐっ……」ジャキン つ聖剣-EXカリバーン
かろうじて装備対象が「聖騎士」となっているEXカリバーンのみを携え、聖騎士王は苦渋の顔を浮かべた。
【コート外】
良平「なるほど、あれが聖騎士の弱点の一つなんだな」
祭乃木「恵がチーム戦に出たがらないのはこういうことだったのね……」
…………
……
…
そのままデュエルは展開していき、終始恵がリードする展開であった。
ゆきは必死のカード捌きで耐えるものの長くは続かず。
【数分後…… デュエルコート】
恵「……死霊王ドーハスーラでダイレクトアタック……」
死霊王ドーハスーラ「ゥゥゥ……!」
攻:2800
恵が繰り出した死霊王の紫色のブレスに貫かれついにライフが尽きてしまった。
ゆき「あぅぅ……!」
LP2600→0
ライフが0になった瞬間、ファンファーレが鳴り響く。
やがてソリッドビジョンは消え去り二人のゴンドラは元の位置まで戻ってきていた。
【コート外】
ゆき「負けちゃいましたぁ……」
とぼとぼとベンチに戻ってくるゆき。
ここのせは片手をひらひらさせて答えた。
ここのせ「相性が悪かったな」
良平「あそこまでメタられることはないと思いたいな……」
祭乃木「でもめちゃくちゃ厳しい条件でのデュエルでも、善戦してたじゃない! 度胸がついたんじゃない?」
ゆき「そうですね! それに私のデッキの弱点も見えた気がしますぅ!」
恵「……種族を変更される場面は実際のデュエルでは多くない。ただ、何らかの阻害、特にモンスター効果や魔法カードの発動の阻害受けた際の対抗手段は検討しておきたい。いくつかのカードを渡しておく……」
恵は腰についた箱に手をかざす。すると自動で箱が開きデッキやサプライなどを収納するスペースが現れた。
そこからカード何枚かを取り出してゆきに差し出した。
ゆき「わっ! いいんですかぁ?」
恵「……ん……」
返事の代わりにこくりと頷く。
亜美はそんな恵の頭をガシガシと撫でた。
祭乃木「恵、アンタなんだかんだ優しいのね……! 」
恵「……頭部には電源ユニットがある。不用意に撫でるのは辞めてほしい……」
恵の抗議を無視して亜美は恵の頭を撫で続けた。
それを横目に良平はゆきに向く。
良平「間宮のデッキは、聖騎士と聖剣のバランスが難しいし、デッキスペースもギリギリだろうから、採用するカードは慎重に選んだ方が良さそうだね。なにかあれば、相談に乗るよ」
ゆき「ありがとうございます! 今日、早速、お家でデッキ組み直してみます! みなさんにラインや電話するかもです!」
祭乃木「どんと任せておきなさい! 」
ここのせ「じゃあ、時間も時間だし帰るか?」
ゆき「そうですね。……あ、そう言えば、パックをまだ開けてませんでした」
ワンプレイするために買ったパックをポケットから取り出す。
囲むようにして全員がそれを覗き込んだ。
祭乃木「じゃあ、最後にそれだけ確認して解散しましょうか」
ゆき「で、では……!」
慎重にパックを開封してカードを取り出す。
ゆき「ふむふむ……。……あっ!?」
5枚目のカード。
金色の箔押しにカード全体が光っているカードが4枚目の裏から顔を覗かせた。
《焔聖騎士帝-シャルル》
祭乃木「えぇ、レアカードじゃない! やったわね!」
良平「しかも聖騎士カードだ! 見たことないな……」
ゆき「うわぁぁ、なんだかとってもラッキーですぅ!」
ここのせ「羨ましいぜ」
祭乃木「これは幸先いいじゃない! デッキを組み直したら、またデュエルしましょ!」
ゆき「えへへ……! はい!」
当たったカードを胸に抱いてゆきはニコニコと返答した。
【その日の夜 ゆきの部屋】
家に帰ったゆきは夕飯を済ませてしまうと部屋に篭り切っていた。
カードデッキとカードストックを並べて眺める。
ゆき「うーん……」
いつかの夜のようにデッキ見つめ、目に止まった二枚のカードを手に取った。
焔聖騎士帝シャルルと聖騎士王アルトリウス。
ゆき「こっちはシンクロモンスター、こっちはエクシーズモンスター……。使い分けられるデッキにしたいな……」
それから今日手に入った焔聖騎士帝シャルルに注目する。
ゆま「レベル9のシンクロモンスター……。どうやって出せばいいのかな……」
ゆきは「えっと……」と独り言をこぼしながら手作りのカードボックス を漁った。
そして同じく白い枠のカードを手に取った。
ゆき「このカード、シンクロモンスターなのにチューナーだ……。このカードをうまく使えば出せるかな……」
しかし、自分のデッキに上手く組み合わせることはできるだろうか。
ゆき「日和田さんに相談してみようかな……」
机に置いてあるスマートフォンをとり、指を走らせる。
ゆき「えっと、ライン開いて……」
集中して画面を操作しメッセージを送った瞬間、コンコンコンとドアが鳴った。
奥から母の声がする。
ゆき母「ゆき? 入っていい?」
ゆき「うん! 」
ガチャと控えめな音がしてゆきは振り返る。
ゆき「何、お母さん?」
ゆま母「昨日からすごく頑張ってるでしょう? お夜食のクッキー、持ってきたわよ」
見ると両手でお盆を持っていて菓子とジュースが乗っている。
ゆき「わぁ、ありがとう!」
受け取ろうと腰を浮かせた瞬間、ゆきのスマートフォンが振動した。
画面には日和田良平の名前。
ゆき母「あら、携帯鳴ってるわよ」
ゆき「えっと……はい、間宮ですぅ。あ、日和田さん! そうなんです、ちょっと相談が……あっ、ちょっと待ってくださいね! ……ごめん、お母さん、ちょっと電話するね」
ゆき母「うふふ、はーい」
そう返事をすると母は盆を机の邪魔にならないところまで持っていく。
ゆき「……あ、おまたせしました! それでですね……!」
慌ただしく耳と肩でスマートフォンを固定して両手にカードを持っている。
前までは考えられない姿に母は目尻を下げた。
ゆき母「うふふ……頑張ってね、ゆま!」
それから特訓の日々は続き……。
ゆきは組んだデッキでデュエルを重ねていく。
【数日後 童実野第二高校 将棋部部室】
パソコンの前でゆきは息を詰まらせる。
ヒーロー部員は後ろから息を呑んで画面を見つめている。
やがてゆきはあっと声を上げた。
ゆき「やった! やりました! レベル20クリアです!!」
『you win! Congratulations!』
祭乃木「えぇぇ!? あの難題を解いたの!? やるじゃない、凄いわね!!」
恵「……おめでとう……」
ここのせ「すげーな、オレはもう半分諦めてたぜ……」
良平「あとはもう実戦あるのみだね」
ゆき「はい!」
ここのせ「よっしゃ、まずはオレが相手だぜ!」
忠一「やるなら外で頼む」
【さらに数日後 第7試合(準決勝) 童実野デュエルスタジアム 外】
疎に人がスタジアムにいる中、ヒーロー部は円陣になっている。
祭乃木「いよいよ準決勝まできたわね! これに勝てば、次はあのチームツンドラ戦になるわ! アンタらも準備万端ね?」
ここのせ「おうよ! さんざっぱら、チームツンドラの対策について話してたが、今日負けたんじゃあ話にならねぇからな」
良平「あまり手の内を晒さずに勝ちたいな」
祭乃木「言うわねぇ、流石、良平」
良平「やめろ」
恵「……今日の相手は、チームハーキュリーズ。8年前に一度本戦に出場経験がある古豪……」
祭乃木「流石にここまで上がってくるだけはあるってわけね! 腕が鳴るわ!」
ゆき「今日もばっちり応援しますよ!」
ここのせ「間宮もここ数日でめちゃくちゃ強くなったからな、なんなら初陣を今日に早めっか?」
ゆき「えぇ!?」
祭乃木「ダメよ! ゆきはヒーロー部の秘密兵器なんだから!」
ここのせ「わーってるよ、冗談冗談。だいたい、オレは予選じゃ今日が戦い納めなんでな。鬱憤晴らしにボコボコにしてやるぜ! 良平、3タテすんなよ?」
良平「できないよ。……でも、マジで勝たないと格好がつかないからな」
恵「……金唯信を釣り出すならば、日和田良平が場を荒らすのが有効……」
良平「まー……やるだけやってみる」
祭乃木「よっしゃ、じゃあ行くわよ!」
ざっと足を踏み出すヒーロー部ーーチームHERO。
そして
………
……
…
数時間後、ビィィとブザーが鳴り響く。
モニターには大きく表示されていた。
【チームHERO 勝利】と
【ネオ童実野シティ プリンセスホテルスィートルーム】
一方、スタジアムから離れた場所。
豪華なホテルの豪華な部屋で蒼い制服の少女たちが円卓を囲んでいた。
その聖服オベリスクブルーの証。
チームツンドラの林原麗華は眼鏡を持ち上げて片手で持つバインダーを睨んだ。
麗華「次の対戦相手が決まりました」
真っ先に反応したのはチームツンドラのチームリーダー。
金の長髪に右側にだけ団子を作っている少女ーー神川 ノエル 美優。
神川「次はどこ? team Herculesかしら?」
麗華「いいえ、ハーキュリーズは敗退しました。次の相手は、チームHEROです」
神川「team HERO? who?」
美優が小首をかしげると対面に座っていたピンクのショートカットの少女ーーツァン・ディレがあっと手を叩いた。
ツァン「第1試合で隣のフィールドだったチームだよ。ほら、この間、ファミレスで会った……」
すると納得がいったと言わんばかりに美しい紫色のツインテールの先を指で弄っている少女ーー藤原雪乃が声を出した。
雪乃「あぁ、攻撃力8000を破ったっていうあのポニーテールの女の子がいるチームねぇ」
その大名にフンッと鼻で笑う少女ーー金 唯信は、黒髪ロングで黒のトレーナーを着ている。
唯信「どうせ、まぐれ勝ちした素人集団ダ。恐る恐るに足りン」
麗華「……そう断定するほどにデータがありません。彼らは初出場ですので。ただ、言えるのはデュエルにビギナーズラックは無いということです」
神川「レイカの言い分にも一理あるわネ。それで? チーム編成はどうするの? いつも通り?」
麗華「……相手のチームメンバー5名のうち、3名はデッキが割れています。その中で、最も注意が必要なのは、これまでファーストプレイヤーだった幻獣機使いの日和田良平と、チームリーダーのHERO使い、祭乃木亜美の2名です」
ツァン「幻獣機……地味すぎて逆にレアかも……」
雪乃「でも機械族のデッキでしょう? なら、金さんで完封できるじゃない」
唯信「捻り潰してやル」
麗華「……私もそう思いますが……チームHEROには控えのメンバーが二人います。先発を変えてくる可能性もあります。もっとも、他のメンバーはこれまで一度も出場していませんが……」
神川「決勝戦にそんなメンバーを出してくるかしら?」
ツァン「でも、機械族のデッキじゃ、金さんに勝ち目がないし、ワンチャンス狙ってくるかも……」
雪乃「となると、先発はツァンさんかしら?」
麗華「そうですね、先発をツァンさんに変更し、金さんを次鋒に回しましょう。ラストは、神川さんでいいですね?」
神川「ok!」
誇り高き蒼き制服の少女たち。
彼女らは圧倒的な自信と実力とーーそしてプライドを以てニヤリと笑った。
◾️余談
2023年4月発売のパックで焔聖騎士が強化されましたね。
めちゃくちゃ嬉しいですが、作品に反映されるのは当分先です……。
作り置きしてるとこういうことになるんですね。
◾️次回予告
次回 寝る前決闘空間 第12話
『WSC予選決勝 騎士vs侍 剣の理、ここにあり』
デュエルスタイバイ
地の文や台詞形式について
-
今のままで良い
-
台詞のみの台本形式の方が読みやすい
-
小説のような形式の方が読みやすい