遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
[ネオ童実野シティ 童実野デュエルスタジアム デュエルフィールド]
フィールドの四方を囲む大型ソリッドビジョン機はジリジリと音をあげながら最大出力で投影している。
ソリッドビジョン機はかつて開発者が味わった死の恐怖を再現することを目指して作られたという。
今、フィールドに立つ者は、或いは観戦している者はそれに近い感覚を味わっているに違いない。
赤と白と黒の身体に三つ首。
銃を思わせるフォルムをしたモンスターは、5つものリンクマーカーを占領していた。
『なななななんだこのモンスターはァァァァァ!!? 前代未聞!! LINK4を超えたLINK5のモンスターだァァァァァ!! デュエルアカデミア、チームツンドラの最大の最強の隠し球だァァァァァァァァァァ!!』
ーーーワァァァッ、と歓声が湧き上がる。
祭のように興奮した声である。
フィールドに立つ金色に片側お団子の少女ーー神川 ノエル 美優はプライドを蒼に染めた制服を靡かせて、口角を上げて対戦者ーー祭乃木亜美を睨みつけた。
神川「ヴァレルエンド・ドラゴンは、戦闘・効果では破壊できず、効果の対象にもならないワ! そして、フィールドのモンスター効果を無効にし、ヴァレットモンスターを復活させる!! さぁ、HERO girl! 貴女のターンよ!!」
ーエンドフェイズー
神川 ノエル 美優
LP:1200
手札1
伏せ0
フィールド:
ヴァレルエンド・ドラゴン
セットモンスター
ードローフェイズー
祭乃木「くっ……! アタシのターン!」
亜美は唇を噛み締めながら。
眼前の巨大モンスターを睨みながら。
デッキトップに手をかける。
祭乃木(流石に、心臓バクバクしてるわ!)
うるさい程に脳内に木霊する心音。
血流が加速して、皮膚と脳を沸騰させる。
他の音は聞こえない。
他の音はいらない。
祭乃木(ゆき、良平、ここのせ、恵……! みんなの想いをアタシが果たす! それが部長の役目よ!)
絞られた思考から己の願いが胸をかけた。
祭乃木「……いくわよ!! ドロォオオ!」
手札2→3
ちらっと引いたカードを見る。
祭乃木「!!」
亜美は目を見開いた。
可能性が見える。
乗り越えるべき壁を踏破するそれが。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
祭乃木「モンスターをセット! 」
バシリとデュエルディスクにモンスターを裏側で置く。
呼応してセットモンスターが裏側にてフィールドに現れた。
祭乃木「さらにブレイブネオスを守備表示に変更!」
E・HEROブレイブネオス「はぁっ……!」
攻→守:2000
祭乃木「カードを2枚伏せてターンエンド!」
引いたカードを伏せ手札は0に。
亜美はそれでも諦めぬ。
ーエンドフェイズー
祭乃木亜美
LP:500
手札0
伏せ2
フィールド:
E・HEROブレイブネオス
No101.S.H.Ark knight
セットモンスター
『チームHERO、祭乃木亜美、守備に徹したぞォオオ!!なす術なしかァァァァァ!?』
神川「エンドフェイズ時、ヴァレルエンドの効果発動!! フィールドのモンスター1体の効果を無効にし、墓地のヴァレットモンスターを復活させる!! ブレイブネオスの効果を無効にし、カモン! ヴァレット・トレーサー!!」
ヴァレルエンド・ドラゴン「ガァァァァァァァァ!!」
LINK5のモンスターが咆哮を上げる。
そして、三つの首、その口内に搭載されたリボルバー型の銃口が火を吹く。
シリンダーの回転と共に鈍い銃声が轟き、ブレイブネオスに弾丸を撒き散らした。
E・HEROブレイブネオス「ぐっ……!」
散らばった薬莢が噴煙を上げ、そこからヴァレット・トレーサーが現れ再び叫びを響かせた。
ヴァレット・トレーサー「グギャアァァァァァ!!」
攻:1600 闇 ドラゴン族 星4 チューナー
『LINK5、ヴァレルエンド・ドラゴンの銃口が火を吹いたァァァァァ!! 新しい弾丸がフィールドに現れたぞォオオ!』
ードローフェイズー
神川「私のturn!」
手札1→2
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
神川「ヴァレルロード・S・ドラゴンをreverse!」
決闘盤のメインモンスターゾーンに手を伸ばし、セットされていたカードをバシリと表側にした。
飛び出るようにヴァレルロード・S・ドラゴンが再びフィールドに舞い降りる。
ヴァレルロード・S・ドラゴン「ゴガァァァァァァァァ!」
攻:3000 闇 ドラゴン族 星8
神川「ヴァレルエンドの効果! Ark knihtの効果を無効にし、墓地からシェルヴァレット・ドラゴンを蘇生!!」
シェルヴァレット・ドラゴン「シャァァ!」
守:2000 闇 ドラゴン族 星2
神川「ヴァレット・トレーサーの効果! フィールドのモンスターを破壊し、デッキからヴァレットモンスターを呼び出す! シェルヴァレットを破壊!」
ヴァレット・トレーサーが銃撃を放ちシェルヴァレットが撃ち抜かれる。
薬莢が地面を鳴らし、それが新たなモンスターを呼び起こす。
神川「カモン!メタルヴァレット・ドラゴン!」
メタルヴァレット・ドラゴン「シャァァァァァァァ!」
攻:1700 闇 ドラゴン族 星4
フィールドにはLINK5、ヴァレルエンド・ドラゴン。
さらに切り札級のヴァレルロード・S・ドラゴン。
そこに低級アタッカーのヴァレット・トレーサー、メタルヴァレット・ドラゴン。
モンスターたちが亜美を見下し待ちきれぬとブレスを吐く。
祭乃木「……!」
ーバトルフェイズー
神川「Battle!! ヴァレルエンド・ドラゴンはフィールドのモンスター全てに攻撃できるワ!! 万雷のブラス・ヴァレットォオオ!!」
神川 ノエル 美優は腕を振り抜き祭乃木亜美に向けて指をさす。
返事をするようにヴァレルエンド・ドラゴンは大きく口をあけた。
銃口が亜美のフィールド全てに照準を合わせた。
ヴァレルエンド・ドラゴン「グガァァァァァァァァ!!」
攻:3500
暴風のようだった。
そこにあるもの全てを破壊する弾雨が亜美のフィールドに降り注ぐ。
No101.S.H.Ark knight「ギィィィィィ!!」
E・HEROブレイブネオス「グォオォオオ!!?」
セットモンスター →ブレイズマン
亜美を守っていたモンスター達は成す術なく弾け飛ぶ。
フィールドは一撃で焼け野原。
亜美は思わず歯を噛み締める。
祭乃木「…………」
『圧倒的なパワー!! その凶弾により祭乃木亜美のフィールドは全滅だァァァァァ!!』
マイクパフォーマンスが最高潮になった観客を煽る。
美優はそんなものには目もくれず自軍の僕に檄を飛ばした。
神川「くらえ!! ヴァレルロード・S・ドラゴン! direct attack!! 迅雷のヴァレルファイアァァァァァ!!」
ヴァレルロード・S・ドラゴンはエネルギーを溜め込む。
敵を潰すために最大の力を貯める。
【チームHERO側ベンチ】
良平「祭乃木!!」
ここのせ「祭乃木ィィ!」
ゆき「祭乃木さぁぁぁん!!!」
ただ、その攻撃を待つばかりの亜美にチームメンバーは叫ぶ。
敗北という現実を浴びせようと躍起になるモンスターと歓声に、負けじとばかりに声を上げる。
【チームツンドラ側ベンチ】
一方のチームツンドラは勝ちを確信したように息をついた。
雪乃「流石に勝ったでしょう」
ツァン「よし!」
唯信「……ふんっ」
麗華「……」
【デュエルフィールド】
まるで時が止まったように。
一瞬の静寂の後、耳を劈くような銃声が、弾雨が、亜美を包み込む。
地面に着弾しては硝煙が巻き上がり、巻き上がり、巻き上がり。
灰色の煙がフィールドを飲み込んでしまった。
『勝負あったかァァァァァァァァァァァァァァァ!!?』
【チームHERO側ベンチ】
ここのせ「ちくしょう!!!」
良平「く……」
ゆき「あぅぅ……!」
負けた、と。
勝負が決まってしまった、と。
視線を落とした。
しかし、唯一、フィールドを見つめ続けた恵がピクリと動く。
恵「……!」
ゆきが恐る恐る顔を上げた。
未だにフィールドには噴煙が残っている。
しかし、そこに立つ決闘者は決して敗北者にあらず。
何故なら。
ゆき「……いや……! あれ!!」
ゆきは指を指す。
そのヒーローの姿を。
【デュエルフィールド】
ズッ、と地面を踏む音がする。
モクモクと硝煙が上がっている。
ズッ、と地面を踏む音がする。
モクモクとした硝煙が晴れていく。
刹那。
風を切り、未だに残る灰色の煙を纏いながらヒーローが降り立った。
E・HERO Great tornado「ハァァッ……!」
神川「なっ!?」
祭乃木「……」
亜美は静かに笑った。
フィールドにカードが発動している。
《マジスタリー・アルケミスト》
通常罠
神川「whats!!?」
祭乃木「アタシの……アタシたちの戦いは、まだ終わっちゃいないわよ!! 」
『おぉっとォオオ!!? 祭乃木亜美のライフは未だ0になっていないぞォオオォオオ!!』
祭乃木「……アタシは諦めない! デュエルは、最後までわからない! 99パーセントわからないから!!」
亜美は真っ直ぐに美優を見つめる。
その瞳は決して揺るがぬプライドを秘めていた。
神川「っ……!!」
ーー〈鍵をかけた部屋、ひとりぼっちで君が泣いてた〉ーー
祭乃木「マジスタリー・アルケミストは、墓地のHEROを4体を除外して、墓地のHERO融合モンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できる! 」
ーー〈俯向くその目に、昨日ばかり写していても進めやしないさ〉ーー
神川「それでも! ヴァレルロード・S・ドラゴンの方が攻撃力は……。っ……!!」
言いかけてから美優は気付く。
E・HERO Great tornado「ふぅぅん……!」
攻:2800→5600
神川「攻撃力……5600……!?」
祭乃木「マジスタリー・アルケミストの効果で除外したHERO4体が、風、水、炎、地だった場合、特殊召喚したモンスターの攻撃力は2倍になる!! アタシが除外したのは、エアーマン、ブレイズマン、リキッドマン、そしてガイア!! これにより、グレートトルネードの攻撃力は2800の二倍となる!」
ーー〈朝になったら、迎えに行くよ〉ーー
神川「……くっ! サベージの攻撃を中止!!」
ーメインフェイズ2ー
神川「メイン2! サベージとヴァレット・トレーサーをLINKマーカーにSET! 」
←ヴァレットモンスター+↓モンスター=LINK2
神川「LINK召喚! ソーンヴァレル・ドラゴン!」
ソーンヴァレル ・ドラゴン「ガァァァッ!」
攻:1000 闇 ドラゴン族 LINK2←↓
神川「LINK召喚時、手札を1枚捨てて、フィールドのモンスターを破壊するワ!」
手札2→1
ーー〈みんな同じさ、弱いけど〉ーー
祭乃木「速攻魔法発動! 禁じられた聖杯!!」
《禁じられた聖杯》
速攻魔法
祭乃木「フィールドのモンスターの効果を無効にする!」
chain1 ソーンヴァレル・ドラゴン
chain2 禁じられた聖杯
空中に黄金の聖杯が現れ、雫を垂らす。
ソーンヴァレル ・ドラゴン「ギィィィ!!」
攻:1000→1400
苦しむような声を上げて効果が無効になる。
美優は薄くなっているEXデッキと今や死に札となった手札のカードを睨みながら歯を食いしばる。
神川「……ぐっ……くぅ……ターン……エンド……!」
ーエンドフェイズー
神川 ノエル 心優
LP:1200
フィールド:
ヴァレルエンド・ドラゴン
ソーンヴァレル・ドラゴン
ヴァレルロード・S・ドラゴン
ードローフェイズー
ーー〈そこに壁なんて、本当はないんだ〉ーー
祭乃木「アタシのターン!」
手札0→1
ースタンバイフェイズー
神川「standby phase!! ヴァレルエンド・ドラゴンの効果発動! 対象はメタルヴァレット・ドラゴン!」
対抗とばかりに美優は叫ぶ。
しかし。
ヴァレルエンド・ドラゴン「……!?」
カチン、カチンと不発。
薬莢不良。
その様子に美優は思わずヴァレルエンド・ドラゴンを見上げた。
神川「……っ!? 発動できない……!?」
祭乃木「無駄よ! マジスタリー・アルケミストの効果により、4属性を除外した場合、発動時のフィールドの表側表示カードの効果は全て無効になっているわ!」
神川「No way!! Oops!」
ーー〈君が感じてるほど〉ーー
ーバトルフェイズー
亜美は拳を握る。
想いを背に。
闘志を瞳に。
祭乃木「バトル!! これがアタシたちの最後の攻撃よ!! いけ!グレートトルネード!! ヴァレルエンド・ドラゴンに攻撃!! アルケミック・ヒーロー・ストォオオム!!」
拳を突き出した。
【チームHERO側ベンチ】
「「「いっっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」
全員が前のめりに。
願いを込めて。
腹の底から。
【デュエルフィールド】
E・HERO Great tornado「ハァァァァァッ!! ダァァァァァァァ!!」
攻:5600
炎。
水。
風。
地。
エレメントの力を拳に纏わせ、風のヒーローが翔ける。
しかして爆発的な力をLINK5の巨体に叩き込んだ。
ヴァレルエンド・ドラゴン「グギャアァァァァァァァァァァ!!?」
攻:3500
絶叫。
龍が悲鳴を上げる。
そして爆炎。
地面を、風を、空間を。
揺らす。
揺れる。
神川「ッァァァァァアアアア!」
L P1200→0
凄まじい爆風が神川 ノエル 美優を貫いていく。
ライフカウンターは止まり鈍いブザーが鳴り響いた。
静寂。
デュエルスタジアムが止まる。
時を動かしたのはスタジアムDJのマイクであった。
『き、決まったァァァァァァァァァァァァァァァ!!! 激戦に次ぐ激戦!! 一瞬たりとも目の離せない大接戦を制したのはァァァァァ!! 初出場!! チームHEROだァァァァァァァァァァ!!!』
【チームHERO側】
良平「ぃよしっ!!」
思わず腰を深く落とすほどに両手を握る。
ここのせ「っしゃァァァァァ!!」
思わず握った拳を振り上げる。
ゆき「かった……? 私たち、勝ったんですか……? ……う…うっ……ぁぁあ……!」
思わず我慢していた雫が頬を濡らす。
恵「……お疲れ様」
【とある家】
『決まったァァァァァァァァァァ!』
テレビを見ていた同級生ーー水原忠一は周りを顧みずに
忠一「……よしっ!!」
と声をあげた。
手を握っていたらしく手汗で濡れていた。
そして思い立ったようにスマートフォンを取りダイヤルを押す。
数秒のコールのうちに相手が出る。
忠一「……あ、もしもし。少し頼まれてほしいんだが……」
【デュエルフィールド】
フィールドには二人の決闘者が肩で息をしている。
祭乃木「……はぁ…はぁ……」
神川「……はぁ……はぁ……」
やがて美優はメインモニターに映る現実を見て、膝に両手をついた。
神川「……そんな……!! ……ワタシ達が……負けるなんて……!」
一方の亜美は目を丸くして周りを見た。
決闘盤に刻まれたライフが煌々と光っている。
祭乃木「……アタシ、やったのね……。予選、突破したのね……!! よっしゃぁぁ! やってやったわ!」
不意に後ろから複数の足音がする。
ここのせ「祭乃木ィィィ!」
良平「祭乃木!」
恵「……」
ゆき「ざいのぎざぁぁぁんァァァァァ……!」
祭乃木「ちょっとちょっと、どうしたの、ゆき!?」
振り返るとゆきが眉を八の字にしてポロポロと涙を流している。
亜美は彼女の頭に手を置いた。
ゆき「うれじぐで……楽しくて……とっても緊張しましだぁ……! うっ……ァァァァァ……!」
祭乃木「もう……! 大袈裟よ!」
良平「いや、何回も、もうダメだって思ったよ……」
祭乃木「はっ、アタシを誰だと思ってんのよ!」
ここのせ「さすがはオレたちの部長さまだぜ!」
祭乃木「何よ、引っかかる言い方ね! ……ここのせ、これ返すわ!」
亜美は決闘盤からカードを引き抜き、黒い縁のカードを差し出した。
超弩級砲塔列車グスタフマックスである。
ここのせ「へへ、良平に貸したもんが祭乃木から返ってきやがった。チーム戦だったってのを改めて感じるぜ」
恵「……まさにチーム全員でデュエルをしていた。こんなこと……私のデータには、ない……」
恵の言葉に全員が頷いた。
そんな中
神川「hey! HERO girl!いいえ、team HERO! 」
と声がして、ヒーロ部は振り向く。
神川が金色の髪を靡かせてゆっくりと歩いてきていた。
神川「……正直、自分たちの敗北が信じられないワ。けれど、貴女達のデュエルは素晴らしかった」
後ろからはチームツンドラのメンバーが重そうな足取りで向かってきていた。
ツァン「……ボクが……もっと有利に回していれば……!
雪乃「勝負は時の運よ。勝つときも負けるときもあるわ」
唯信「チッ……! 」
麗華「私の完璧なマネジメントが……一体何が悪かったの……?」
神川「ハイハイ!」
暗い雰囲気を晴らすように美優は手を叩く。
神川「デュエルアカデミアの最後のpride! ちゃんと礼を尽くすわヨ!」
唯信「チィッ……!」
胸の下で腕を組み、唯信はそっぽを向いて舌打ちをした。
それを尻目に美優はさらに一歩、亜美に近付き右手を差し出す。
神川「NICE duelだったワ! 本戦、応援する! 」
祭乃木「ええ! 任せなさい!」
亜美も右手で応じ、強く握った。
神川「でも! また再戦させてネ! 次は勝つワ!」
蒼い制服は負けても誇り高く笑っていた。
唯信「日和田良平!!」
と唯信が他は気にせず良平を一直線に睨む。
良平「!?」
唯信「貴様の事は忘れんゾ……! 必ず雪辱を晴らス……! 首を洗って待っていロ!!」
良平「……怖っ……」
ここのせ「目ぇつけられたな良平」
『決勝戦は初出場のチーム!! チームHEROの勝利で幕を閉じたァ! これによりネオ童実野シティ代表はチームHEROに決定だァァァァァ!!』
ワァァッと拍手と歓声が再び湧き上がった。
と同時にカメラマン達が我先にと駆け寄りファインダーを覗き込む。
ゆき「へ??」
そして断りもなくフラッシュを放つ。
ゆき「わっ!?」
祭乃木「ちょっ!? いきなり!?」
ここのせ「おい! 事務所通せよ!」
良平「事務所なんかないだろ」
恵「……もしかして:学校……」
雑談すらもかき消すようなシャッター音。
さらにマイクを持ったリポーターが、大袈裟なカメラと一緒に駆けつけてきた。
リポーター「皆さん! 本戦進出おめでとうございます!! 今のお気持ちは!?」
マイクを亜美に向けて差し出す。
祭乃木「え!? アタシ!? んっん! 最っ高の気分です!!」
リポーター「とっても素直な感想ですね!! ところで、皆さんは、高校生のチームとお聞きしましたが、デュエル部ですか?」
祭乃木「いいや、デュエル部じゃないわ」
良平「部活ではありますよ。学校が俺たちの部活を認めてくれないんですけどね」
ここのせ「だから、まぁ、非公式の活動ってことになるな」
ゆき「ですです!」
恵「……」
恵も静かに頷く。
リポーターは要領を得ぬと首を傾げた。
リポーター「非公式の部活……? じゃあ、貴女たちは一体、何者なんですか?」
リポーターの発言に亜美は目を光らせた。
ニッと笑い胸を張る。
祭乃木「よくぞ聞いてくれました!!」
ヒーロー部たちはお互いの顔を見て笑みをこぼす。
そして亜美の言葉を待った。
祭乃木「アタシたちは!! 童実野第二高校!!」
そして全員が声を出す。
「「「「「ヒーロー部!!」」」」」
…………
……
…
【デュエルアカデミア本校】
ネオ童実野シティから数海里離れた場所。
東京湾にポツンと佇む島にはドームのような施設と巨大な校舎がある。
その地下にある暗い部屋には折れたダーツが転がっている。
白いシーツが広がるベッドで蒼い制服をそこら中に脱ぎ捨てている が二人。
片方はカラー材で染めた茶色の長髪を緩くパーマを当てた少女。
片方は黒髪に眉間に寄ったシワを隠すこともしない少年。
少年ーー阿久津剛はデッキを傍に置き紫の煙を吐く。
デッキトップにはインフェルノイドとかかれている。
阿久津「……ふぅ〜」
「ねぇ〜聞いたぁ? アカデミアのチーム、負けちゃったんだってぇ〜。かわいそ〜」
少女は阿久津にしなだれかかり甘えたような声で言った。
阿久津「……あっそ、どうでもいいわ」
…………
……
…
【ネオ童実野シティ プリンスホテル VIPルーム】
巨大な液晶テレビを眺めながら長髪をまとめることもせずに優雅に紅茶を飲んでいる。
クイーン、と呼ばれているデュエリストであった。
クイーン「ふふ……」
絵草「やりおった……! あの素人チームが……!」
アバンス「……」
クイーン「本戦が楽しみだよ。……さて、行こうか。我々のデュエルを、民衆が待っている」
クイーンはカップを置くと立ち上がる。
黒のロングコートが翻り、バサリと音が鳴った。
…………
……
…
【次の日 ネオ童実野シティ 通学路】
翌日。
朝というものは平等にやってくるもので、それはWSCの予選で優勝したとしても変わらない。
ゆき「……うーん」
ゆきは金色に無地のカードパック見ながら歩く。
慣れた道だけに注意力は散漫である。
祭乃木「おっはよー!!」
そんな彼女の肩を叩き亜美が隣に並ぶ。
ゆき「あ、おはようございます!」
祭乃木「あ、それ昨日もらった記念パック? そういや、アタシもまだ開けてないわ。昨日は疲れてすぐ寝ちゃったし」
ゆき「わたしもです。何が入ってるんでしょう?」
祭乃木「大会優勝チーム限定って言ってたし、きっとレアカードが入ってるわよ!」
そんな会話をしていると交差点に三人の人影が並んでいた。
ここのせ「よーっす」
良平「おはよう、二人とも」
恵「……おはよう……」
合流するように5人は歩く。
祭乃木「みんな、朝の新聞読んだ!? アタシたちが載ってたわよ!! 本戦出場ってのを実感するわね!!」
ゆき「はい! 驚いちゃいましたぁ、お母さん、すごい喜んじゃって切り抜きまで作ってましたよ……」
恵「……ネットにも小さくではあるが、ヤフーニュースに載った……」
良平「これならあの教頭も認めてくれるかもな」
ここのせ「くっくっ、あのハゲ野郎が狼狽える姿が目に浮かぶぜ」
やがて校門にまで辿り着くと5人は速度を落とした。
何やら生徒たちが詰まっていて皆が校舎を見上げている。
忠一「……」
女子生徒「……」
ゆき「あれ? あそこにいるの水原さんじゃないですかぁ?」
良平「本当だ」
祭乃木「おーい!! 忠一ぃぃ!!」
忠一「……? あぁ、おはよう」
祭乃木「なにしてんのよ? 入んないの?」
女子生徒「おっ、主役さんたちが登場だね!」
不意に甲高い声が忠一の足元から聞こえた。
見てみるとそこには忠一の半分ほどの身長で茶色かかったウェーブ髪の生徒がいた。
彼女はしたり顔で指を指す。
女子生徒「見てみなよ、この素晴らしい作品をね!!」
ゆき「へ??」
指差した方を見上げるとそこには垂れ幕があった。
『祝!! 童実野第二高校 ヒーロー部 ワールドスタンディングデュエルクラシック 本戦出場!!』と。
今まで無かったそれが堂々と風に靡いていた。
「あ! きたぞ! ヒーロー部だ!」
「間宮さん!! テレビ見たよ!! めっちゃかっこよかった!」
「おめでとう!」
「日和田ー! お前すごいなぁ!」
「祭乃木さん……! はぁはぁ……!」
「ここのせ、控えでワロタ」
ゆき「わっ! あ、ありがとうございますぅ!」
ここのせ「誰だ控えって言ったやつ!!」
祭乃木「なっ!? なによこれ! すごいじゃない!!」
女子生徒「ふはは、もっと褒めてくれたまえよ! この超ぷりちーな天才女子高生、くるみん様じゃなければ、あそこまで目立つアーティスティックな文字は書けないさ!!」
【裁縫部 自称天才女子高生 市原桃胡 通称くるみん】
良平「だ、誰……?」
忠一「……俺のクラスメイトでな。裁縫部のエースだ」
良平「そうなんだ。で、でもどうしてこんなの作ってくれたの?」
くるみん「ふふふ、それはねぇ……」
忠一「さぁ? 誰かニュースとかテレビを見たミーハーな奴の仕業じゃない? 全くバカバカしいよね。君たちもはやく教室に行かないと遅刻するよ。行こう、市原」
くるみん「おやおや、今日はなんだか大人しいじゃないか〜! 可愛くて好きだよ、私は! くははっ!」
メガネを押さえて去っていく忠一に、彼女はニマニマと笑いながらついていく。
良平「……なーんだ、素直じゃないやつ」
祭乃木「あーあ、アイツ、これだから嫌いになれないのよね! 」
ゆき「なんだか心がポカポカしますね! これがわたし達が勝ち得たもの、なんですね」
祭乃木「さぁ!! 今日も一日、頑張るわよ! ……どいたどいた! ヒーロー部のお通りよ!!」
気をよくした亜美は胸を一段と張って、生徒たちの間を通っていく。
ここのせ「おう!」
良平「よし」
恵「……」
ゆき「はい!」
そう。
彼らは、歩きはじめた。長く続いていくその道を。
▪️あとがき
ひとまずWSC予選編は終わりなので次から本戦編になります。
14話なのでワンクール終わりって感じです。
余談ですが筆者は遊戯王GX世代でして最も思い入れがある作品がGXです。なので意識的にGXのオマージュを取り入れています。
その結果、個人的GXといえばという曲「99%」を使わせていただきました。
不愉快だったら申し訳ございません。
よければ感想等を頂ければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
▪️楽曲
99%
作詞:丸山 和弘
曲:BOWL
▪️次回予告
次回 寝る前決闘空間第15話
『星のカード』
デュエルスタンバイ
地の文や台詞形式について
-
今のままで良い
-
台詞のみの台本形式の方が読みやすい
-
小説のような形式の方が読みやすい