遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

33 / 87
この前後編が過去編になってます。


第16話「ヒーローの起源」前編

これは、祭乃木亜美が童実野第二高校に入学しヒーロー部として活動するよりも8年前のこと。

当時でも型落ちだったテレビが、二世代三世代前のようなアパートで光っている。

食い入るように見ている少女が一人。

当時から後ろで髪を留めている祭乃木亜美。

小学4年生の頃である。

 

『正義のヒーロー、ウルトラ仮面グレンジャー! 悪を成敗する! ハァァァァッ!』

 

祭乃木「かっこいー!!」

 

目をキラキラと輝かせ、悪を倒すヒーローを眺めた。

そんな娘を慈しみの眼差しを向けながら、父は背中から声をかける。

 

祭乃木父「亜美は本当にそれが好きだね」

 

祭乃木「うん! だってかっこいーもん! 誰かが困ってたり泣いてたりしたら、すぐに駆けつけるのよ! めちゃくちゃかっこいいわ!」

 

テレビから目を逸らさずに亜美は答える。

画面上ではヒーローが悪の攻撃に晒されて地面に伏せていた。

ヒーローは傷付きながらも身体を張って立ち上がろうとしている。

 

祭乃木父「……そうだね」

 

父は視線を外し、無意識のうちに部屋の隅に目を向けていた。

仏壇が周りとそぐわぬ様相で佇んでいる。

遺影には笑顔の女性が写っていて、それがテレビを見る娘に重なった。

亜美はそんな視線、つゆ知らず、無邪気に言う。

 

祭乃木「アタシも、こんな風にヒーローになりたい!」

 

時が流れて。

学校では主体的に行動できる学年に差し掛かった頃。

休み時間の廊下で人の身体を痛烈に殴打する音が響いた。

 

男子「ぎゃあっ」

 

振り抜いた拳が同級生の男子の頬を打ち抜く。

男子は地面に転がり悲鳴をあげた。

対峙する亜美はビシリと指をさし男子に宣言してやった。

 

祭乃木「どうよ! これに懲りたら二度とこの子にちょっかい出すんじゃないわよ!」

 

亜美の背中にはオドオドとした女の子。

殴られた男子は悔しさやら恥ずかしさやらで次から次へと涙がこぼれ、ついには走り出してしまった。

 

男子「う……うわぁぁぁぁん!」

 

祭乃木「はっ! 情け無いやつ! ……もう大丈夫よ!」

 

拳を握ったまま走り去っていく男子を見送ると、亜美は笑顔で振り向いた。

しかし。

 

女子「ヒッ……! ご、ごめんなさい!」

 

祭乃木「あ、ちょっと!」

 

背中にいた女子は恐怖の目を向けたまま、逃げるように去っていった。

また別の日。

 

男子2「オラオラ〜」

 

男子3「や、やめてよ……」

 

幾分か背の高い男子が、やや背の低い男子を小突いていた。

攻撃を庇うようにして小さい男子は頭を抱える。

 

祭乃木「こらー!!」

 

亜美は見つけた瞬間、拳を握り走り出す。

そしてそのまま殴りかかった。

 

男子2「ぎゃぁぁっ!?」

 

祭乃木「アタシの前でイジメとはいいどきょうね! 悪いやつは懲らしめてやるわ!」

 

男子2「ぐぅ……くぅ……うぅぅ……」

 

祭乃木「あ、あれ?」

 

応戦してくるかと身構えていた。

しかし、殴られた男子は頬を抑え泣きながらうずくまってしまう。

その瞬間、背後から雷のような怒声が響く。

 

先生「こら、祭乃木!! またイジメてるのか!?」

 

祭乃木「ち、違っ……! こいつが……!」

 

先生「謝りなさい!」

 

祭乃木「嫌よ! だってアタシ、悪くないもん!」

 

先生「何っ!? 二人とも泣いてるじゃないか! お前がやったんだろ!」

 

見ると守ったはずの小さな男子も頭を抱えたまま、ぼろぼろと泣いている。

 

祭乃木「違う! アタシじゃない!」

 

先生「まだ言うか! 職員室に来なさい!!」

 

祭乃木「違うって言ってるでしょ!? ……ねぇ! アンタもなんか言ってよ!」

 

男の子3「……ッ……」

 

亜美の声に一瞬びくりと肩を上げたあと、拒絶するように首を振った。

 

祭乃木「な……!? なんで……」

 

 

 

[職員室]

 

「どういう教育してるんですか!? オタクは!? 」

 

職員室では殴られて怪我をした男子生徒の母親が、とてつもないことをしたとばかりに声高に怒声をあげた。

 

祭乃木父「……すみませんでした」

 

亜美の父はとにかく頭を下げて場を取り持っていた。

男子生徒はまるで悲劇の主人公のように泣いている。

亜美は痛いくらいに歯を食いしばってその場の床を見ていた。

相手の顔を見ないのはせめてもの抵抗。

 

学校から帰り道。

空は紅色に染まり、道は閑散としてしている。

郊外の路地を父と二人で並んで歩く。

 

祭乃木「……」

 

祭乃木父「……」

 

会話はない。

亜美は下を向いて歩く。

 

祭乃木「……」

 

そんな亜美をちらと見ると父はわざとなのか妙に明るい声を出した。

 

祭乃木父「……駅前に、新しい回転寿司屋さんができていたよ」

 

話題を変えようとしてくれている。

それは亜美にもわかる。

でも。

今は。

この理不尽を吐き出したいのだ。

亜美の足はぴたと止まった。

 

祭乃木父「……今度一緒に……亜美?」

 

祭乃木「……アタシ、悪くないもん……」

 

涙はーー出ない。

否、出さない。

亜美は両手に拳を作り肩を怒らせた。

 

祭乃木父「亜美……」

 

父も足をとめてこちらを見る。

どんな表情をしてるかは亜美からは見えない。

 

祭乃木「アタシ、悪くない……! だって、アタシはあの子を助けようと思って……!」

 

祭乃木父「……わかっているよ」

 

悲痛な亜美の声に、父は亜美の前にしゃがみ込んだ。

その目は怒っていない。

哀れんでもいない。

正義を知るまっすぐな目。

 

祭乃木父「……亜美は優しい子だからな。……でもな、亜美。ーーー暴力では人を救えないんだ」

 

その言葉が涙の代わりに亜美の胸を湿らせる。

ただその言葉は亜美の胸に浸透する。

 

…………

……

 

それから次の週の小学校 。

「〜〜で〜〜これが〜」

黒板の前で教師が授業をしている。

何事もなかったかのような日常。

 

祭乃木「……」

 

しかし亜美は筆を取らず、代わりに頬杖をついてボーっと眺めている。

 

祭乃木(アタシは、考えた。暴力はいけない。でも、悪は倒さねばならない。悪を倒すには力がいる。暴力以外の力がーー)

 

正義を通すために己が悪になっては本末転倒。

枕に沈めた理不尽をようやっと飲み込んだが、二度とはごめんである。

そんな中、教師の声がその部分だけ鮮明に聞こえた。

 

「…はい、このようにしてエネルギー機関フォーチュンはデュエルの力を使って駆動してるわけですね〜。このフォーチュンは、あのネオ童実野シティ大災害から、デュエルで街を救ったデュエリスト不動遊星さんが開発したもので〜」

 

祭乃木(デュエルの力……。デュエルで、街を救う……!)

 

不意にぴんときた。

すっと胸の支えが取れたように感じる。

 

祭乃木「それだ!!」

 

先生「へ!?」

 

亜美は思わず声をあげた。

ワインパーティ効果に最大限の感謝をささげて。

 

寝る前決闘空間

「第16話 ヒーローの起源」

 

 

それからしばらくした小4の冬。

終業式前の小学校では大掃除が行われるのだが。

 

祭乃木「スパークマンでダイレクトアタック!! スパークフラーッシュッ!!」

 

亜美は手を翳して指示を出す。

左腕にはやや大きいデュエルディスクが光る。

 

E・HEROスパークマン「ハァァァァッ、タァッ!」

 

電撃が対戦相手の身体を貫く。

 

男の子「ウギャァァ!!」

LP1200→0

 

しかし、それはソリッドビジョン。

痺れたように感じるだけの虚像。

だが効果は虚像にあらず。

 

祭乃木「アタシの勝ちよ!! さぁ、これに懲りたら掃除サボんじゃないわよ!!」

 

男の子「く、くそぉ……! なんなんだよお前のデッキ!! ショボいモンスターばっかりなのに!」

 

祭乃木「アタシのヒーローデッキは、仲間たちと力を合わせて戦うのよ! 一人一人は大した攻撃力じゃなくても、連携すれば最強よ!」

 

男の子「ぐ、ぐぬぬ……」

 

祭乃木「さて、デュエルで決めたことは守る! それが常識でしょ! さぁ、掃除やるわよ!」

 

男の子「わかったよ……」

 

亜美が差し出した箒をしぶしぶ受け取った。

 

祭乃木(デュエルはこの世の神秘……! デュエルの力は世界を変える力をもつ!)

 

本に書いてあったこと、そのままである。

 

祭乃木(つまりは、暴力じゃない新しい力! アタシはデュエルで人を救うヒーローになるわ!!)

 

ーーーーここにまた一人決闘者が生まれた。

 

その日の夜。

亜美の家の食卓にはコンビニメンチカツなどが並ぶ。

 

祭乃木「いっただっきまーす!!」

 

祭乃木父「いただきます」

 

祭乃木「ん〜! うまいわ!」

 

祭乃木父「亜美、最近、学校はどうだたい? 父さんが呼ばれることはあまりなくなったけど……」

 

祭乃木「心配むようよ! もうケンカして父さんが呼び出されることはないわ! 今のアタシには、カードたちがあるもの!」

 

祭乃木父「ははは、亜美が急にデュエリストになる、なんて言うから驚いたよ」

 

祭乃木「暴力は父さんにめーわくがかかるからね。デュエルなら大丈夫でしょ! このE・HEROってカード、気にいっちゃったわ!」

 

祭乃木父「本当に亜美らしいカードだね。でも、父さんも安心したよ。亜美にも、デュエルをする友達がいるみたいだからね」

 

祭乃木「は……?」

 

祭乃木父「学校でデュエルをしてるんだろう?」

 

祭乃木「……」

 

意識の外からの一撃。

ポロッと箸を落とす。

カランカラーンと乾いた音が鳴り響く。

 

祭乃木父「え?」

 

祭乃木亜美 10歳。

この時、友達0。

父への視線を明後日の方に逸らす。

 

祭乃木「……ひ、ヒーローは孤独なものよ……」

 

祭乃木父「えぇ……」

 

祭乃木「あれ……ちょっと待てよ……」

 

亜美は思い返す。

自分の言葉を。

 

『アタシのヒーローデッキは、仲間たちと力を合わせ戦うのよ! 一人一人は大した攻撃力じゃなくても、連携すれば最強よ!』

 

祭乃木「……」

 

E・HERO→仲間と連携して戦う→強い

 

祭乃木亜美→孤独→弱い

 

祭乃木「……な」

 

祭乃木父「?」

 

祭乃木「仲間を作らなきゃ!!!」

 

ガチャンッと卓を揺らす音が響き渡った。

 

 

待ちに待った小5の春。

新学年の始まりである。

亜美は机と椅子をガタガタと持ち運びながら去年から変わった教室を見渡した。

 

祭乃木(待ちに待った新学期! あんまり意味のないクラス替えと席決め! クラスメイトも見たことある連中が多いけど、とにかく仲間作りよ! )

 

孤独では弱いという方程式の元、亜美は意気揚々とクラスメイトたちを見る。

 

祭乃木(デュエルで人を救うなら、仲間もデュエルが強くないとね!)

 

そんなことを考えていると隣の席になったであろう男子が机を置く。

 

「よいっしょっと……」

 

祭乃木「ん? アンタが隣なのね」

 

「あー、えっと祭乃木だっけ。うん、よろしく」

 

祭乃木「んー、アンタのこと、見たことはあるけど、話したことはないわね。名前は?」

 

「日和田良平」

 

祭乃木「じゃあ、良平ね。アンタ、デュエルはするの?」

 

良平「え? ……あぁ……あんまりやらないかな」

 

隣になった男子ーー日和田良平は目を逸らしつつ答えた。

 

祭乃木「でも、それってデッキケースでしょ?」

 

目ざとく机に置いてあるケースを指差す亜美。

 

良平「あー、これは、授業用だからスターターデッキしか入ってないよ。」

 

祭乃木「……ホントかしら?」

 

良平「ホントだよ。みてみる?」

 

祭乃木「どれどれ……」

 

カードを捲る。

ゴブリン突撃部隊

ターレットウォーリア

隼の騎士

ガードブロック

 

祭乃木「確かにスターターデッキね」

 

良平「俺、デュエル苦手なんだ。学校でも授業以外ではデュエルやらないしね」

 

祭乃木「ふーん」

 

苦笑いする良平に亜美はつまらなそうに返答した。

そんな中、教室の扉から教師が顔を覗かせて教室を見渡す。

良平を見つけると手招きをした。

 

「あ、日和田くん! ちょっといいかな? 議長団についてなんだけど」

 

良平「はい!」

 

祭乃木「議長団? 何よそれ?」

 

聞き慣れない単語に亜美は首を傾げる。

すると良平はデッキケースをランドセルにしまうと代わりに筆箱を取り出した。

 

良平「委員会みたいなものだよ、学校のルールを決めたりする。去年庶務だったから……」

 

祭乃木「へぇ、そうなんだ」

 

「日和田くーん?」

 

良平「はい、今行きます!」

 

小走りで走っていく背を眺めながら亜美は腕を組む。

 

祭乃木「優等生ってわけね」

 

それから視線を切って自分の席に座ろうとした刹那。

教室中を駆け回る同級生の男子二人が目の前を過ぎていく。

 

「ぎゃはははっ」

 

「待てー!」

 

ガンと隣のーーつまり良平の机に足がぶつかり、中身がバサバサと音を立てて転がり出ていく。

リノリウムの床に机が擦れて甲高い音が鳴る

 

「やべっ」

 

祭乃木「こらぁ!! アンタたち!!」

 

「げっ! 祭乃木!!」

 

「に、逃げろー!!」

 

「ま、待てよ!」

 

祭乃木「こら! 待ちなさい!」

 

一目散に逃げていく二人を追おうとするも床に散らばったものも放っておけず亜美は腰を折ってそれらを拾い集めた。

 

祭乃木「……ったくもー……」

 

ノートやら教科書やらデッキケースやら。

勢いあまってケースの蓋は半開きになり一枚カードが飛び出ていた。

 

祭乃木「ん?」

 

何気なく拾ってからカードをよく見るとそこには見たことない絵柄。

人工衛星とライオンが合体したようなカード。

幻獣機オライオンと書かれている。

 

祭乃木「幻獣機? 知らないカードね……。こんなのスターターデッキに入ってたかな……」

 

呟いてから半開きのデッキケースを見ると先程良平がランドセルにしまったものよりも上等なケースに見える。

 

祭乃木「……」

 

それから時間が流れて昼休み。

給食の時間が終わりガチャガチャ食器戻すと誰も彼もが浮かれ出す。

 

「休み時間だー! デュエルしようぜ!」

 

「よっしゃぁ!」

 

男子たち数名が小型のデュエルディスクを展開する。

 

「俺の先攻! ゴブリン突撃部隊を召喚!」

 

やや離れた場所では一人男子生徒がその光景を眺め、羨ましそうな顔をした後、「……チッ……」と舌打ちをしてベランダに出て去っていくのが見えた。

それ以外でも女子たちもカードを見せ合っている。

 

「ねぇねぇこのカードみて! この間当たったの!」

 

「えー! 可愛い!」

 

ほとんどの男子がデュエルをしているが教室の中に良平の姿はない。

 

祭乃木「……」

 

亜美はやや考えてから廊下に飛び出した。

クラスの男子たちが使っていたデッキはスターターデッキだった。

しかし。

 

祭乃木「スターターデッキには、やっぱりあんなカードは入ってないはずだわ!」

 

朝に見た幻獣機というカード。

 

祭乃木「もしかしたら、スターターデッキ以外のデッキを使いこなしてるかもしれない! アタシの勘だけど、あいつは、きっと強いわ!」

 

独り言を言いながら廊下を練り歩く。

やがて議長団室と書かれた教室の前にたどりつくと亜美はその札を見上げた。

 

祭乃木「ぎちょーだん室……。ひとけはないけど、もしかして……」

 

ガラガラッと引き戸をあけて中を見る。

コの字型に整えられた机。

広々とした空間の中、男子生徒が一人、座っていた。

 

良平「うーん……」

 

手札を眺めながらカードを慎重に選ぶ。

前にはデュエルが展開している。

しかし相手はいない。

 

良平「……オライオンを除外して、デザー召喚……」

 

祭乃木「……それ何やってるのよ?」

 

良平「うわぁぁっ!?」

 

急に話しかけたからか、男子生徒ーー良平はガラガラと音を立てて椅子を転がり落ちていく。

痛烈に腰を打ち良平はぎゃっと悲鳴をあげた。

 

祭乃木「ちょっ、ちょっと大丈夫!?」

 

良平「いてて……。さ、祭乃木か……。なんでここに……」

 

祭乃木「アンタ、昼休みになったらとっとと出てったでしょ。聞きたいことがあったから探したのよ」

 

良平「聞きたいこと?」

 

祭乃木「でも、それも解決したわ。アンタ! スターターデッキって嘘でしょ! 」

 

良平「なっ……!」

 

祭乃木「その幻獣機ってのが、アンタのホントのデッキなんでしょ!」

 

ビシリと指をさす。

良平は亜美から目を逸らし、定まらぬ視線をあちこちに泳がせた。

 

良平「げ、幻獣機? し、知らないカードだなぁ……」

 

祭乃木「くだらない嘘ついてんじゃないわよ!! アンタ、実は強いでしょ! アタシのヒーローレーダーがびんびんに反応してるわ!!」

 

良平「な、何言ってんのかわかんねぇよ!」

 

祭乃木「アタシ、強い奴を探してるのよ! アタシとデュエルしなさい!」

 

良平「……デュエルは苦手だって言ったろ。やらないよ」

 

祭乃木「なぁにぃ!? あ、アンタ! そんなデッキぶん回しておいて苦手なわけないでしょ!」

 

良平「た、たしかに……。と、とにかく! デュエルはやらないって決めてるんだ!」

 

祭乃木「納得できないわ! デュエルしなさい!」

 

良平「嫌だって! 勘弁してくれよ!」

 

水掛け論。

仲裁したのはチャイム音。

間延びした音にこれ幸いと良平はカードをさっと仕舞うと逃げるように教室を出た。

 

良平「あ、昼休み終わりだ残念だなぁ教室戻らなきゃ」

 

祭乃木「こら! 待ちなさい!」

 

〜5時間目〜

 

祭乃木「デュエルしなさい!」

 

良平「授業中だぞ!」

 

〜10分休み トイレ前〜

 

祭乃木「デュエルしなさいよ!」

 

良平「トイレ行かせろ!」

 

〜6時間〜

 

良平の机に手紙がポスッと投げられる。

 

良平「ん?」

 

開くと中には

『デュエルしなさい!』

 

良平「おい!」

 

思わず隣を睨みつけた。

 

放課後。

通学路には二人の小学生。

即ち亜美と良平である。

専ら逃げるように歩く良平に亜美が追従してるだけだが。

 

祭乃木「デュエルしなさいってば! しつこいわねぇ」

 

良平「しつこいのはお前だ! なんで俺なんだよ!」

 

祭乃木「だってアンタ強そうなんだもん」

 

良平「強いやつと戦いたいならデュエセンいけばいいだろ!」

 

祭乃木「デュエセンじゃ駄目なのよ! アタシ、今、仲間募集中なの! ヒーローには仲間が必要なのよ! 強い仲間が!」

 

良平「だったら俺はだめだよ! 俺は喧嘩弱いぞ!」

 

祭乃木「だから暴力じゃない力! デュエルで悪い奴を懲らしめるのよ! そのためには、アンタの力が必要なの!」

 

良平「デュエルも苦手だって言っただろ!」

 

祭乃木「嘘よ! カードもちゃんとデッキケースに入れてるし、デッキもきっちり回してたでしょ!」

 

耐えかねた良平は足を止め、亜美に振り向いた。

 

良平「人とやるのが苦手なんだよ!」

 

祭乃木「どういうことよ!?」

 

良平「勝つとめちゃくちゃイチャモンつけられるし、空気も悪くなるだろ! 人とデュエルなんて、やったって楽しくないんだよ!」

 

祭乃木「そんなの相手が悪いだけでしょ! なんでアンタが苦手にならなきゃいけないのよ!」

 

良平「なんでって!! ……なんでだろう」

 

祭乃木「相手がしょうもないから、デュエルが楽しくないのよ! 自分が負けて相手にイチャモンをつけるやつなんてデュエリストじゃないわ! アタシが本当のデュエルってやつを教えてやるわ!」

 

良平「ほ、本当のデュエル……?」

 

祭乃木「アタシは正々堂々勝負するし、負けたからって文句は言わないわ。けど、アタシは強いわよ」

 

良平「そういうこと言うやつは全員負けたときにめちゃくちゃ言ってくるんだよ!」

 

祭乃木「ふーん、勝つ前提じゃない。腕には自信があるようね! いいわ! 面白いわ!」

 

ニヤリと笑う亜美に良平は頭を掻きむしった。

 

良平「あー!なんか墓穴掘った気がする!!」

 

祭乃木「いい!? デュエルでアタシが勝ったら、アンタはアタシの仲間になる! アンタが勝てば手を引くわ!これでいいでしょ!?」

 

良平「あーもう! わかったよ! 悪いけど、やるからには手加減はできないからね!」

 

祭乃木「はっ!アタシとのデュエルで手加減なんかする暇ないってーの!」

 

言うが早いか亜美は左腕にデュエルディスクを装着して構える。

 

良平「え、ちょっと待って。デュエルディスクでやんの?」

 

祭乃木「当たり前でしょ! 地面でやるわけないでしょうが!」

 

良平「いや学校に持ってきてないよ! 授業もなかったし!」

 

祭乃木「アンタそれでもデュエリストなの!?」

 

良平「もーうるさいなぁ。とにかく取ってくるから!」

 

再び早歩きで良平が歩を進めるので、亜美はデュエルディスクを待機モードに戻すとまた良平の後ろをついていく。

 

祭乃木「逃げないようにアタシもついてくわよ!」

 

良平「逃げないよ……」

 

しばらく歩いていくも中々辿り着かないので亜美は良平の肩をつつく。

 

祭乃木「アンタん家ってどこよ」

 

良平「そこだよ。ほら坂の下のところ」

 

郊外から中央広場に向かう道路。

交差点になっている対岸。

東側は坂になっていて、その最下部に小洒落た店があった。

 

祭乃木「あそこ喫茶店じゃないの」

 

良平「ウチの両親が経営してるんだよ。自営業ってやつ」

 

入り口の側まで来ると木彫りの看板がぶら下がっている。

古き良き喫茶店という感じ。

 

祭乃木「へぇ、カフェlike、なかなかお洒落な喫茶店じゃない」

 

良平「そこで待ってて。取ってくるから」

 

祭乃木「早くしなさいよ!」

 

良平「わかってるよ」

 

良平は入り口のドアを引いて中に入っていく。

カランカランとベルの音が鳴るのが喫茶店らしさを醸し出している。

 

祭乃木「……ふーん」

 

手持ち無沙汰で亜美は中腰でメニュー看板見た。

 

祭乃木「ココアセットにケーキセット! 美味しそうね! ……ん? ハーピィーアイスクリーム? 何これ?」

 

再びカランカラーンとベルの音。

 

祭乃木「あ、良平!」

 

振り向くとまず目に入るのは茶色のエプロン。

 

???「あらぁ?」

 

そして聞こえた女性の声。

見上げるとおっとりした女性の顔があった。

 

祭乃木「あ、間違えたわ……。あはは、ごめんなさい」

 

ペコリと頭を下げると女性はニコニコと笑って膝を曲げて顔を見つめる。

 

???「随分可愛いお客様ねぇ。良くんのお友達かしら?」

 

祭乃木「デュエルでアタシが勝てばそうなるわよ! えっと、お店の人ですか?」

 

???「うふふ、実は、良くんのお母さんなのです」

 

祭乃木「え!? お母さんなの!? ウエイトレスさんかと思ったわ!」

 

良平母「うふふ、ありがとう」

 

祭乃木「アタシ、祭乃木亜美! 良平と同じクラスなのよ!」

 

良平母「そうなのぉ。じゃあ亜美ちゃんね。……それにしても良くんったら、女の子をこんなところで待たせるなんて罪な子ね。中入る?」

 

祭乃木「アタシ、お金持ってないわ!」

 

良平母「まぁまぁ、お金なんていいのに」

 

祭乃木「まだ良平と仲間になってないウチはダメだと思うの! だから、今はただのお客さんよ! お客さんはお金を払うものよ!」

 

良平母「うふふ、本当に可愛らしいお客様ね。でもせっかく来てくれたんだから……。そうねぇ……。ハッピーアイスクリーム?」

 

祭乃木「へ?」

 

良平母「言ってみて? はい、ハッピーアイスクリーム!」

 

祭乃木「は、はっぴぃーあいすくりーむ?」

 

良平母「はい! よくできました! ちょっと待っててねぇ」

 

未だ理解が及ばない中、店に引っ込んでいく良平の母。

 

祭乃木「え? な、なんだったのかしら?」

 

ミオちゃん「はい、お待ちどうさま。これ、どーぞ♪」

 

すぐに戻ってくるとカップアイスを差し出してきた。

亜美は目を丸くして両手を胸の前で振る。

カップの絵柄にはデフォルメされたハーピィ三姉妹。

 

祭乃木「ええ!? あ、アタシ、お金ないってば!」

 

良平母「うふふ、実は今、キャンペーン中なのです。ハッピーアイスクリームって言うとアイスがサービスになるの。幸せのハッピーとハーピィでかけてるのよぉ」

 

祭乃木「す、すごい、スプーンが羽箒型だ……。ありがとうございます! いただきます!」

 

良平母「ゆっくり食べてねぇ」

 

刹那再びベルの音。

アイスを頬張りながらそちらを見ると今度こそ良平が出てきた。

手にはデュエルディスクがついている。

 

良平「ようやく見つけた……。奥の方にしまってたのか……。ってなんかアイス食べてる」

 

良平母「あ、良くん! ダメでしょ、こんなところでお友達を待たせちゃ」

 

良平「うわっ! すぐ戻ってくるつもりだったんだって!」

 

両手を腰に当てて良平を見下ろす母に良平は慌てて口を開けていた。

それを尻目に亜美はカップアイスを一気にかきこんだ。

 

祭乃木「はぐはぐ……ごっくん! ぷはっ! めちゃくちゃ美味しかったわ!」

 

良平母「まぁ! もう食べちゃったの?」

 

祭乃木「はい! 良平とのデュエルがあるからね! さぁ! やるわよ!」

 

良平「うん。じゃあ、行ってきます」

 

良平母「はーい! じゃあ亜美ちゃん、また来てね!」

 

手をふりふりと振る良平の母。

彼女に見送られた亜美と良平は郊外を歩き、近所の公園へとやってきた。

遊具で遊ぶ子供も数人いる中、亜美と良平は対峙しデュエルディスクを構える。

 

祭乃木「さぁ! 思ったより時間かかったけど、やるわよ!」

 

良平「うん。いくぞ!」

 

 

祭乃木「デュエル!!」

LP4000

 

良平「デュエル!」

LP4000

 

デュエル開始とともに両者のディスクの液晶が明滅する。

やがてモニターに抽選された結果が表示された。

先攻は日和田良平である。

 

ーメインフェイズー

 

良平「先攻はもらった! いくぞ!」

 

祭乃木「かかって来なさい!」

 

良平「幻獣機テザーウルフを召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ「ガルルルゥ!」

攻:1700 風 機械族 星4

 

祭乃木「出たわね! 幻獣機!」

 

良平「テザーウルフは、召喚したとき、フィールドに幻獣機トークンを作り出す! さらに幻獣機は、フィールドの幻獣機トークンのレベル分、自身のレベルを上げる!」

 

狼型の戦闘ヘリが咆哮しプリズム体の戦闘機がロールしながら現れた。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機テザーウルフ「ガルゥ!」

星4→7

 

良平「カードを2枚セットして、ターンエンドだ!」

 

ーエンドフェイズー

 

日和田良平

LP:4000

手札:2

伏せ:2

フィールド:

幻獣機テザーウルフ

幻獣機トークン

 

ードローフェイズー

 

祭乃木「アタシのターン!」

手札5→6

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

祭乃木「きなさい! E・HEROエアーマン!」

 

E・HEROエアーマン「ハァァッ、タァッ!」

攻:1800 風 戦士族 星4

 

祭乃木「エアーマンの効果発動! 召喚、特殊召喚したとき、デッキからHEROモンスターを手札に加えることができるわ! デッキからバーストレディを手札に加えるわよ!」

手札5→6

 

良平「E・HEROか……。戦うのは初めてだ」

 

祭乃木「一気に攻めるわよ! 手札から融合を発動!」

 

《融合》

通常魔法

 

祭乃木「手札のフェザーマンとバーストレディを融合!」

 

青と紫の渦ーー融合演出が現れる。

風のヒーローと炎のヒーローが飛び込んでいく。

亜美は胸に手を当て、奥底から湧き出る旋律を口にする。

 

祭乃木「ーーこの世総ての善と成る者、それは常世総ての悪を敷く者! いでよ、風と炎の勇者!」

 

渦の中央が輝き新たな英雄が姿を現す。

 

祭乃木「融合召喚! E・HEROフレイムウィングマン!」

 

E・HEROフレイムウィングマン「ハァァッ!」

攻:2100 風 戦士族 星6

 

良平「……手札融合……!」

 

ーバトルフェイズー

 

祭乃木「バトル! エアーマンで幻獣機トークンに攻撃!」

 

E・HEROエアーマン「トゥアァァァァァ!」

攻:1800

 

幻獣機トークン

守:0

 

エアーマンの羽から射出される空気の砲弾にプリズム体のトークンは撃墜された。

 

祭乃木「続いて、フレイムウィングマンでテザーウルフに攻撃! フレイムシュート!!」

 

良平「トラップ発動! 空中補給(エアリアルチャージ)!」

 

空中補給(エアリアルチャージ)

永続罠

 

良平「空中補給は、フィールドに幻獣機トークンを呼び出すカード! こい、幻獣機トークン!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

祭乃木「関係ないわ! 攻撃を続行!」

 

E・HEROフレイムウィングマン「タァァァッ!」

攻:2100

 

幻獣機テザーウルフ「ガァァァッ!」

攻:1700

 

フレイムウィングマンの放つ炎の弾丸がテザーウルフに命中。

爆発し粉塵を巻き上げる。

 

良平「……」

LP4000→3600

 

祭乃木「どうよ!」

 

モクモクと灰色の煙が蔓延する。

しかし、刹那、その煙を切り裂くように戦闘ヘリが飛び出す。

 

幻獣機テザーウルフ「ガルルルゥ!」

 

祭乃木「え!?」

 

良平「幻獣機は、幻獣機トークンが場にいる時、戦闘・効果では破壊されない!」

 

祭乃木「へぇ、やるじゃない! カードを1枚セットしてターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

祭乃木亜美

LP:4000

手札:1

伏せ:1

フィールド:

E・HEROエアーマン

E・HEROフレイムウィングマン

 

良平「エンドフェイズ時、空中補給の維持コストで幻獣機トークンをリリースする」

 

幻獣機トークンがゆっくりと消えていく。

 

ードローフェイズー

 

良平「俺のターン!」

手札2→3

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

良平「幻獣機メガラプターを召喚!」

 

幻獣機メガラプター「a1 takeoff!」

攻:1900 風 機械族 星4

 

良平「空中補給の効果発動! 幻獣機トークンを場に生成!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「さらに、幻獣機メガラプターの強制効果が発動する! トークンが特殊召喚されたとき、追加で幻獣機トークンを作り出す!」

 

幻獣機メガラプターがアフターバーナーを蒸し、残像を作り出す。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

ーバトルフェイズー

 

良平「バトル! 幻獣機メガラプターで、エアーマンに攻撃!」

 

幻獣機メガラプター「a1 fox3!」

攻:1900

 

E・HEROエアーマン「グァァァァっ!?」

攻:1800

 

メガラプターに搭載された機関砲が火を吹いた。

無数の弾丸がエアーマンを貫いていく。

耐えきれずエアーマンの体はガラスのように砕け散った。

 

祭乃木「うわっ!?」

LP4000→3900

 

余波が亜美を飲み込み、わずかにライフを削り取る。

 

祭乃木「やるじゃない!」

 

良平「続けて、テザーウルフでフレイムウィングマンを攻撃!」

 

祭乃木「フレイムウィングマンの攻撃力の方が上よ! 迎え撃って!」

 

E・HEROウィングマン「ハァァッ!」

攻:2100

 

幻獣機テザーウルフ「ガルルゥ!」

攻:1700

 

 

良平「テザーウルフの効果発動! フィールドの幻獣機トークンをリリースすることで、攻撃力が800ポイントアップする!」

 

祭乃木「なっ!?」

 

幻獣機トークンがテザーウルフよりも先行しフレイムウィングを惑わすように周囲を飛び回る。

テザーウルフはローターを最大出力で回転させて吶喊した。

 

幻獣機テザーウルフ「ガァァァッ!」

攻:1700→2500

 

E・HEROフレイムウィングマン「ぐぉぉぉっ!?」

攻:2100

 

テザーウルフの機関砲が炸裂、成す術なくフレイムウィングマンは粉砕された。

流れ弾が亜美の頬や足を掠めていく

 

祭乃木「あぁ!?」

LP:3900→3500

 

攻撃が止み、良平のフィールドに戻っていくテザーウルフを睨みながら亜美は唖然と声を出す。

 

祭乃木「フレイムウィングマンがこんなあっさり……!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

良平「メイン2! レベル7になってるテザーウルフとメガラプターでオーバーレイ!」

 

幻獣機はフィールドの幻獣機トークンのレベル分、レベルが上昇する。

幻獣機トークンは1体。即ちレベルが3つ上がり二機のレベルは7。

黒い渦ーーオーバーレイネットワークが妖しく光る。

 

☆7×☆7=★7

 

やがて良平の口から無意識のうちに飛び出る調べ。

 

良平「ーー飛び立て、願いを乗せた鉄の翼! 回せぇ!」

 

呼応。

エンジンを震わせて巨大な軍用機が空を支配する。

 

良平「エクシーズ召喚! 来てくれ! 幻獣機ドラゴサック!!」

 

幻獣機ドラゴサック「Mriya takeoff!」

攻:2600 風 機械族 ランク7

 

巨大で優美なそのモンスターを亜美は見上げ、闘志から笑みが溢れる。

 

祭乃木「でっか! そいつがアンタの切り札ってわけね!」

 

良平「ドラゴサックの効果発動! 素材を一つ使って、フィールドに幻獣機トークンを2体作り出す!」

 

幻獣機ドラゴサック「mission acceptance」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「さらに、もう一つの効果発動! 幻獣機トークンをリリースすることでフィールドのカードを1枚破壊できる! 幻獣機トークンをリリース! 対象は、その伏せカード!」

 

祭乃木「なら! リバースカードオープン! 奇跡の残照!」

 

《奇跡の残照》

永続罠

 

chain1 幻獣機ドラゴサック

 

chain2 奇跡の残照

 

祭乃木「このターン戦闘破壊されたモンスターを復活させるわ! 戻ってこい! エアーマン!」

 

E・HEROエアーマン「はぁっ!」

攻1800 風 戦士族 星4

 

祭乃木「エアーマンの効果発動! デッキからHEROカード、アナザーネオスを手札に加えるわ!」

手札1→2

 

効果解決時にドラゴサックが発射したミサイルが役目を終えた奇跡の残照を破壊する。

 

良平「うまく躱されたか……。空中補給の維持コストで幻獣機トークンを1体リリース。これでターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

日和田良平

LP:3600

手札:2

魔法罠:

伏せ1

空中補給

フィールド:

幻獣機ドラゴサック

幻獣機トークン

 

ードローフェイズー

 

祭乃木「アタシのターン!」

手札2→3

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

引いたカードを手札に加え、亜美はフィールド上空に居座るドラゴサックを見上げる。

横にはプリズム体の戦闘機が帯同していた。

 

祭乃木(幻獣機はトークンがいる限り、戦闘・効果じゃ破壊できない。けど、対象に取れるなら破壊以外で除去してやるわ! ランク4の出番よ!)

 

祭乃木「E・HEROアナザーネオスを召喚!」

 

E・HEROアナザーネオス「とぉっ!」

攻:1900 光 戦士族 星4

 

良平「その召喚時、トラップ発動! 激流葬!」

 

《激流葬》

通常罠

 

良平「フィールドのモンスターを全て破壊!」

 

祭乃木「なぁっ!?」

 

思惑の外。

切り札毎飲み込む濁流。

アナザーネオスも。

エアーマンも。

幻獣機トークンすら。

だが唯一、幻獣機ドラゴサックのみはロールしながら上昇して激流を回避する。

 

祭乃木「あのデカイやつ、激流を避けた!?」

 

良平「ドラゴサックは幻獣機トークンが身代わりになって破壊されない! ……ランク4はやばいからな」

 

祭乃木「……やるわね、アンタ! やっぱアンタ強いわ! いいわね、めちゃくちゃ楽しいわ!」

 

良平「た、楽しい……?」

 

祭乃木「ええ! アンタが次に何をしてくるのか! アタシの次の作戦は通じるのか! ドキドキするでしょ! これが楽しくなくて、何が楽しいのよ!」

 

良平「で、でも、今はピンチなんだぞ! それでも楽しいのかよ!」

 

祭乃木「もちろんよ! それにデュエルってのは可能性に満ちているのよ!? まだまだこっからよ!」

 

良平「!!」

 

亜美の体からなのか。

目からなのか。

魂からなのか。

気迫と闘志が燃え上がり、良平は気圧された。

見えない熱に押されたように。

 

良平(なんだこれ……! ここから返されたことなんてないのに!こいつは超えてくるってわかる……!)

 

良平の肌が鳥肌だつ。

根拠なき、しかし確実たる予感が貫く。

亜美は口角をあげてカードをスロットに差し込んだ。

 

祭乃木「手札から魔法発動! 死者蘇生!」

 

《死者蘇生》

通常魔法

 

祭乃木「墓地のエアーマンを特殊召喚するわ!」

 

E・HEROエアーマン「はぁっ!」

攻:1800 風 戦士族 星4

 

祭乃木「エアーマンの効果で、アタシはバブルマンを手札に加えるわ!」

手札1→2

 

デッキから自動選出されたカードを良平に向ける。

そしてカードを持ち変えると別のカードを裏側でスロットに差し込む。

 

祭乃木「カードを1枚セット! これでアタシの手札はバブルマンのみ! バブルマンは手札がこのカードだけのとき、特殊召喚できるわ!」

 

E・HEROバブルマン「ふんっ!」

守:1200 水 戦士 星4

 

これにてレベル4が2体。

良平は苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

良平「くっ……! これは……!」

 

祭乃木「レベル4のエアーマンとバブルマンでオーバーレイ!」

 

☆4×☆4=★4

 

祭乃木「エクシーズ召喚!No.101 S・H・Ark Knight!」

 

No.101 S・H・Ark Knight「ギギギィ……」

攻:2100 水 水族 ランク4

 

祭乃木「効果発動! 素材を2つ取り除いて、フィールドのモンスターを吸収するわ! ドラゴサックを吸収!」

 

No.101 S・H・Ark Knightは銀色の機体から錨を撃ち出し、ドラゴサックを絡めとる。

空から引きずり下ろし、ドラゴサックを破壊。吸収してしまう。

 

良平「くっ、やられた……!」

 

ーバトルフェイズー

 

祭乃木「バトル! アークナイトでダイレクトアタック!」

 

ガラ空きとなった良平の場をArk Knightが進軍。

錨で良平を吹き飛ばした。

 

良平「ぐぁっ!?」

LP3900→1800

 

祭乃木「ターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

祭乃木亜美

LP:3500

手札0

伏せ1

フィールド:

No.101 S・H・Ark Knight

 

良平「……空中補給の効果発動! 幻獣機トークンを作り出し、そして維持コストでリリースする!」

 

幻獣機トークンが一瞬だけフィールドに現れすぐに消えていく。

その行為に亜美は怪訝な顔をした。

 

祭乃木(さっきの攻撃で幻獣機トークンを出せば攻撃を止められたのに、なんでやらなかったの……?)

 

ードローフェイズー

 

良平「俺のターン!」

手札2→3

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

良平「手札から魔法発動! 愚かな埋葬!」

 

《愚かな埋葬》

通常魔法

 

祭乃木「愚かな埋葬!?」

 

良平「デッキからモンスターを墓地に送ることができる! 俺は幻獣機オライオンを墓地に送る!」

 

液晶を操作し、選出したカードがデッキから墓地に送られる。

するとさらにカードが発動した。

 

《幻獣機オライオン》

効果モンスター

 

良平「今墓地に送られたオライオンの効果発動! オライオンが墓地に送られた場合、幻獣機トークンを特殊召喚できる!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「さらに空中補給の効果で、幻獣機トークンを場に特殊召喚!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「そして、速攻魔法、緊急発進(スクランブル)を発動!」

 

《緊急発進》

速攻魔法

 

良平「緊急発進はフィールドのトークン以外のモンスターが相手より少ない場合にのみ発動できる! フィールドのトークンを好きな枚数リリースし、その数分デッキから幻獣機を呼び出す!」

 

祭乃木「なんですって!?」

 

良平「2体リリースし、こい、幻獣機たち!メガラプター! コルトウィング!」

 

プリズム体の戦闘機が一層光り輝き、霧散すると共に虚空を切り裂いて戦闘機たちが緊急発進する。

 

幻獣機メガラプター

攻:1900 風 機械族 星4

 

幻獣機コルトウィング

攻:1500 風 機械族 星4

 

良平「コルトウィングは、特殊召喚されたとき、場に幻獣機がいるとき、幻獣機トークンを2体作り出す!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「さらに、メガラプターの強制効果でトークンを1体生成!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「コルトウィングの効果発動! トークンを2体リリースすることで、フィールドのカードを破壊して除外する! 伏せカードを破壊!」

 

祭乃木「くっ! リバースカードオープン! 強制脱出装置!」

 

《強制脱出装置》

通常罠

 

chain1 幻獣機コルトウィング

 

chain2 強制脱出装置

 

祭乃木「この効果で、メガラプターを手札に戻すわ!」

 

良平「フリーチェーンだったか」

手札1→2

 

トラップによりディスクからカードが弾かれる。

良平はそれを手札に加えるとすぐさまフィールドに置き直した。

 

良平「だが、俺はこのターン、まだ通常召喚していない! 戻されたメガラプターを再び召喚!」

 

幻獣機メガラプター「a1 takeoff!」

攻:1900 風 機械族 星4→7

 

良平「メガラプターの効果発動! 幻獣機トークンをリリースすることで、デッキから幻獣機をサーチできる! 幻獣機トークンをリリースし、テザーウルフを手札に加えるぞ!」

手札1→2

 

良平「さらに、墓地のオライオンの効果発動!」

 

祭乃木「墓地から発動ですって!?」

 

良平「このカードを除外し、幻獣機を追加で召喚できる! こい、テザーウルフ!」

 

幻獣機テザーウルフ「ガルルルゥ!」

攻:1900

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

テザーウルフの召喚時の効果により幻獣機トークンが現れる。

 

良平「これで幻獣機トークンは1体! レベル7となったメガラプターとコルトウィングでオーバーレイ!」

 

☆7×☆7=★7

 

良平「再び空に上がれ! ドラゴサック!」

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600 風 機械族 ランク7

 

祭乃木「くっ……! また出てきた!?」

 

良平「ドラゴサックの効果発動! 幻獣機トークンを2体生成!」

 

幻獣機トークン

幻獣機トークン

 

良平「バトルだ! テザーウルフでアークナイトに攻撃!」

 

幻獣機トークンをリリースし、テザーウルフは加速する。

 

幻獣機テザーウルフ「ガァァァ!」

攻:1700→2500

 

No.101 S・H・Ark Knight「ギギギィ……!」

攻:2100

 

祭乃木「ぐっ……!」

LP3500→3100

 

祭乃木「アークナイトは素材を使うことで、破壊を免がれるわ!」

 

良平「なら、ドラゴサックでアークナイトに追撃!」

 

幻獣機ドラゴサック「fox2!」

攻:2600

 

No.101 S・H・Ark Knight「ギギギィ!」

攻:2100

 

ドラゴサックかミサイルを放つ。

直撃弾を受けたアークナイトは今度は耐えられず爆散した。

噴煙が亜美を包む

 

祭乃木「あぁぁ!」

LP3100→2600

 

良平「ターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

日和田良平

LP:1800

手札:1

魔法罠:なし

フィールド:

幻獣機ドラゴサック

幻獣機テザーウルフ

幻獣機トークン

幻獣機トークン

 

祭乃木「ぐ……」

 

旗色の悪い亜美は口を紡ぐ。

 

良平(祭乃木の手札は0。流石に……)

 

チェックメイトだ、と。

しかし。

亜美は不機嫌になるでも。

いちゃもんをつけるでもなく。

笑った。

 

祭乃木「ふっ! あははっ! アンタ、ホントにすごいわ! アタシ、ここまで追い詰められたの、初めてよ!」

 

良平「……祭乃木、諦めてないのか……?」

 

祭乃木「モチ! 絶対、アンタを仲間にしてやるんだから!」

 

良平「でも、手札はもう0だぞ!」

 

祭乃木「ドローすれば1枚よ! このドローには沢山の可能性があるわ!! 見てなさい! ヒーローはこっから大逆転するのよ!」

 

ードローフェイズー

 

亜美がデッキトップに手をかけた時、良平は確かに感じた。

波導のような、炎のような、フレアのような何か。

 

良平「……!」

 

良平(……なんでだ。なんでこんなにドキドキしてるんだ……! やばいって確かに感じてる……!)

 

祭乃木「アタシの、ターン! ドロー!」

 

引いたカードが光ったように見えた。

亜美はドローカードを見て、口角をあげる。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

祭乃木「よっしゃ! いいカードを引いたわ! 手札から、ホープ・オブ・フィフスを発動!」

 

《ホープ・オブ・フィフス》

通常魔法

 

祭乃木「ホープオブフィフスは、墓地のE・HEROを5体選択してデッキに戻して、2枚ドローするカード! でも手札とフィールドが0のときは、3枚ドローできるわ!」

 

良平「な!? こ、この土壇場で……!?」

 

祭乃木「墓地のフェザーマン、バーストレディ、バブルマン、アナザーネオス、エアーマンをデッキに戻して、3枚ドロー!!」

手札0→3

 

祭乃木「きて! スパークマン!」

 

E・HEROスパークマン「ハァァッ!」

攻:1600 光 戦士族 星4

 

良平「なにをする気だ……!」

 

祭乃木「いくわよ! 手札から魔法発動! ミラクルフュージョン!」

 

《ミラクルフュージョン》

通常魔法

 

良平「み、ミラクルフュージョン……!」

 

祭乃木「ミラクルフュージョンはフィールドと墓地のカードを除外して融合するカード! アタシはフィールドのスパークマンと墓地のフレイムウィングマンで融合!!」

 

スパークマン・フレイムウィングマン

融合演出の渦に飲み込まれていく。

それは奇跡を起こす融合。

 

祭乃木「ーー闇を照らす眩き光のヒーロー! 魔天を切り裂け!」

 

舞い降りる。

光のヒーロー。

 

祭乃木「融合召喚! E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン!!」

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン「ハァァッ……」

攻:2500 光 戦士族 星8

 

良平「シャイニング・フレア・ウィングマン……! 見たことある……! そいつは墓地のE・HEROの数だけ火力を上げるカード! だけど、墓地にはもうHEROはいない! 攻撃力は上がらないぞ!」

 

祭乃木「関係ないわ! バトル!! 」

 

ーバトルフェイズー

 

祭乃木「シャイニング・フレア・ウィングマンで、テザーウルフに攻撃!!」

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン「ダァァァァッ!」

 

良平「幻獣機はトークンがいるときは破壊されないぞ!」

 

祭乃木「わかってるわ! けど強引に押し通す! 速攻魔法、禁じられた聖杯!」

 

《禁じられた聖杯》

速攻魔法

 

祭乃木「フィールドのモンスターを選択して、そのモンスターの攻撃力を400アップさせる代わりに効果を無効にする! テザーウルフの効果を無効!」ビシッ

 

聖杯が虚空から現れる。

中の聖水がこぼれ落ち、テザーウルフを濡らす。

 

幻獣機テザーウルフ「グルルぅ……!」攻:1700→2100

 

良平「ッ! まずいっ!」

 

祭乃木「行けぇ! シャイニング・フレア・ウィングマン! シャイニング・シュゥゥト!!」

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン「トゥァァァァァァ、ハァァァァァァァッ!!」

攻:2500

 

光を拳に溜め、翼を広げて直進。

渾身の一撃を叩き込む。

 

幻獣機テザーウルフ「ガァァァッ!!」

攻:2100

 

一撃必殺。

撃墜。

 

良平「うわっ!?」

LP1800→1400

 

祭乃木「シャイニング・フレア・ウィングマンは破壊したモンスターの攻撃力分のダメージを相手に与えるわ! くらえ!!

 

E・HEROシャイニング・フレア・ウィングマン「ハァァァァァァァァッ!!」

 

光弾が放たれる。

それは日和田良平のライフ、その全てを削りとった。

 

良平「うわぁぁぁっ!」

LP1400→0

 

あまりの衝撃に良平は尻をつく。

 

良平「……ッ」

 

良平「ま、負け、た……?」

 

ダメージの衝撃だけにあらず。

良平は、その敗北を、改めて認識する。

 

良平(……初めて負けた……! 展開は悪くなかった……。けど負けた……!)

 

祭乃木「よっしゃあ!」

 

良平(……悔しい、次は勝ちたい、そんな気持ちが溢れてくる……! デッキの中、戦略……色々考えが止まらない……!)

 

祭乃木「アタシの勝ちよ! 良平!」

 

良平「祭乃木……」

 

亜美を見上げる。

太陽のような笑顔。

それはどこまでも良平の心を照らす。

 

良平(……祭乃木とのデュエルが、俺を、幻獣機をもっと強くしてくれる気がする……。そうか……デュエルって楽しいな)

 

祭乃木「約束通りアンタは今日からアタシの仲間だからね!」

 

亜美は自信満々で指をさした。

 




文字数があまりに多すぎて読んでもらえないのでは……と不安になってます。
次回まで過去編です。
アンケートや感想をお聞かせください!

文字数が15000超えた場合

  • そのままでも読める
  • しんどいので半分にしてほしい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。