遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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元々前後編のつもりでしたが、長すぎたの後編の前半を中編に、後半を後編にしました。
そして土曜日日曜日と忙しく日曜日に更新できませんでした!


第16話「ヒーローの起源」後編

 

 

あれから4日ほど日が流れていた。

測定まであと3日という瀬戸際だが結果は芳しくないと言わざるを得なかった。

放課後、亜美たちが自由に使える時間のほぼすべてをつぎ込んだにも関わらずである。

 

学校はもう昼休みに入っている。

外からは活発な声が聞こえてくる中、教室で三人は机を囲っていた。

地図の上にはまた一つ大きなバツ印が追加された。

キュッキュッキュッと油性のペンが鳴き声を上げる。

 

 

祭乃木「あぁー! 全然見つからないわ!」

 

机にベターと上半身を突っ伏して亜美は言う。

じんわりとした汗が彼女の額にうっすらと広がる。

ペンを持ったまま良平は机に広がる地図を見下ろして口を開いた。

 

 

良平「うーん。そもそも本当にあそこにあるのかも怪しいしなぁ……」

 

祭乃木「その星遺物カードってやつの情報は他にもないわけ?」

 

突っ伏したまま亜美は横目で見上げるようにここのせを見ると、背もたれに寄りかかりながら首を振った。

 

ここのせ「一応探しちゃいるんだがよ……。昔、プロデュエリストが持ってたとかは書いてあるんだが、どこで手にいれたかは書いてねぇんだよな」

 

良平「この間、一応、ショーケースとかストレージを探してみたけど、なかったしなぁ」

 

祭乃木「じゃあやっぱり地道に探すしかないわね」

 

ここのせ「あぁ。オレたちは自由にカードを買ってたりはできねぇからな。

これしか道はねぇのさ。……悪ぃ、ちょいとトイレに行ってくるわ」

 

ずっとリノリウムを鳴らして椅子を下げてここのせは立ち上がる。

 

 

良平「行ってらっしゃーい」

 

祭乃木「あと5分で授業よ! さっさと戻ってきなさいよ!」

 

亜美は上半身をあげるとここのせの背中に忠告した。

 

 

学校のトイレは汚いわけではないが古いにおいがして、その大半はいつからおいてあるのかわからない芳香剤のそれである。

ここのせは一息つくと蛇口をひねり手を差し出した。

ひんやりと冷たいそれで手をゆすぎながらぼんやりと心の中で独り言ちをこぼす。

 

ここのせ(……やっぱり見つからねぇか。流石に心が折れそうだぜ……。しっかし、アイツら、変な奴らだな。こんなこと、手伝ってくれるんだからな)

 

正直言ってここのせは、この無謀な計画はあくまで諦めるための儀式のようなものだと思っていた。

はた目から見て馬鹿馬鹿しい独り相撲だと。

だが亜美も良平も一言も冷や水をかけることはない。

そう、だから。

ここのせも。

 

トイレから出て教室に戻る道すがら。

ほかの生徒の話し声が耳に入ってきた。

 

「なぁ! これみてくれよ! すげぇレアカードが当たったんだ!」

 

「えぇ! すげぇ! ウルトラレアじゃん! いいなぁ!」

 

「へへへ! これでまた強くなったぞ! もしかしたら今年の測定は高いって言われるかもな!」

 

「あ、測定っていえばさ。ウチの学年に、運命力0のやつがいるらしいよ!」

 

ここのせ「!!」

 

思わず足を止めた。

その言葉はここのせの心臓を揺るがすには十分すぎた。

 

「0!? まじかよ!! 俺、そんなこと言われたら恥ずかしくて学校これないやー!」

 

「だよなー! よかったーおれにはあってー」

 

ここのせ「……」

 

知らず知らずのうちに拳を握っていた。

太陽が雲の裏に隠れ、斜陽が消える。

教室の喧騒が、ここのせには遠く感じた。

 

次の日。

すなわち測定まで残り2日。

旧サテライトエリアでは相変わらずの体操着で少女と少年がゴミの山で額を合わせている。

 

祭乃木「今日は休みだから、一日中探せるわ! 良平! 地図出して!」

 

良平「はいはい」

 

背負ったリュックから水筒とタオルをかき分けてクリアファイルを取り出した。

そして中からもはや真っ黒と言ってよいB4のプリントを広げて見せた。

 

ここのせ「……結構、探し尽くしたな……」

 

祭乃木「何言ってんの! まだGエリアが残ってるわ! 片っ端から探しまくるわよ!」

 

亜美はひと際大きな声で鼓舞をして進むべき方向を指さした。

 

 

〜1時間後〜

 

廃車の隅。

ガラクタの海を渡り、廃材をどかす。

 

ここのせ「ここはどうだ!!? ……くそ、ないか!」

 

〜2時間後〜

 

うずたかく積まれているブロック状の鉄くずの上。

潮の香が鼻をかすめていく。

 

良平「これは!? ……あー違うかぁ……」

 

…………

……

 

~6時間後~

 

またも見飽きた黄昏が夜を誘う。

三人はへたり込むようにゴミの山の中で両手を膝についていた。

 

祭乃木「はぁはぁ……」

 

良平「ふぅ……足が痛い……」

 

ここのせ「くっ……!」

 

そして刻まれるバツ印。

Gエリアの一部はこれでもう用済みとなってしまった。

 

夜の街灯の下。

三人は消沈した様子で岐路につく。

 

良平「こんなに探してるのに……見つからないな……」

 

ここのせ「くそ……!!」

 

祭乃木「諦めちゃダメ!! まだ明日一日あるわ!! 明日はGエリアだけじゃなくて、他のところももう一回探すわよ!」

 

曇った顔を振り払うように亜美は腰に手をあてて二人を覗き込んだ。

 

…………

……

 

そして次の日。

測定まで残り1日となった昼の旧サテライトエリア。

雲が太陽と空を完全に覆いつくし、暑さだけがこびりつく。

亜美と良平とここのせはもはや初めて見る場所はないといえるこの場所に再三立っていた。

 

ここのせ「……」

 

祭乃木「まだ見落としがあるかもしれないわ! あっちの方みてみましょ!」

 

良平「そうだね」

 

 

亜美の声がこだまする。

三人は足取りが重いことを気づかないふりをして歩く。

何かの廃材で切った足の切り傷はもはや数える気もない。

ゴミの山は無常に知らん顔で三人を取り囲んでいる。

 

 

………

 

……

 

 

どんなに拒んでも時は流れてしまうもの。

旧サテライトエリアはもう太陽の姿はなく、まだ低空ではあるが月が空に居座っている。

車のヘッドライトが遠くの街を照らし出し、ダイダロスブリッジのイルミネーションが光る。

 

 

祭乃木「……はぁはぁ……!」

 

良平「……ぜぇはぁ……」

 

ここのせ「ハァハァ……」

 

もう三人がこの場所にいることを世界のだれもわからない。

それくらいにあたりに光量はない。

亜美は苛立たし気に地面を鳴らす。

 

祭乃木「あーもう! 何でないのよ……!!」

 

良平「暗くてもう見えなくなってきたな……」

 

祭乃木「まだよ! まだ見えるわ!! 絶対見つけるわよ!」

 

いつも以上に声を張り上げ亜美は負けじと地面を見る。

見えるのは自分の足と地面だけ。

 

 

ここのせ「祭乃木」

 

もはや下をみることなく。

ここのせは声をだした。

 

祭乃木「なによ!?」

 

ここのせ「……もういいよ」

 

祭乃木「え?」

 

ここのせ「もう、いいんだ。……帰ろう」

 

声は沈み、しかし、あえて作ったような声。

悲痛な声に良平は思わず声を漏らしてしまった。

 

良平「ここのせ……」

 

ここのせ「二人とも……ありがとな」

 

それだけ言うとここのせは踵を返して歩き出す。

心なしか速足で、あっという間に橋へと続く階段を踏み込んでいく。

 

祭乃木「待ちなさい!」

 

亜美はそんな彼の背中を追い走り出す。

速足のここのせはさっさと階段登ってしまい橋の上まできてしまった。

 

ここのせ「……」

 

祭乃木「待ちなさいったら!!」

 

追いついた肩に手をかけ、引き留めるようにぐいと引く。

ここのせは足を止めて顔だけ振り向く。

 

ここのせ「……なんだよ」

 

祭乃木「諦める気!? まだわからないじゃない!!」

 

ここのせ「見つからねぇよ!! ハナから見つかるわけなかったんだよ!!」

 

心の中のぐじゅりと膿んだものがここのせの声に絡みつく。

慌てて追いかけてきた良平が息をきらしながら後方から声を上げた。

 

良平「……はぁはぁ……こ、ここのせ……! 本当に諦めちゃうのか……!?」

 

ここのせ「決めてたからな。時間切れだ。オレはデュエルをーーー諦める」

 

言い切るとき。

間際。

ここのせは言いたくないと心で強く思う。

でも時間切れだ。

先延ばしにしてたゲームオーバーだ。

 

 

祭乃木「待ってってば! 他には……! 他には何か方法はないの!?」

 

ここのせ「そんなもんねぇよ!! もうどうしようもないんだよ! オレにデュエルをやる資格なんてなかったんだ!!」

 

拳を握りしめここのせは叫ぶ。

不条理。

不合理。

亜美はそれを呑み込めない。

呑み込ませてはいけないと心が訴える。

 

 

祭乃木「アンタは……!! アンタはそれでいいの!?」

 

響く言葉。

ここのせは首を振った。

 

ここのせ「……ッ! うるせぇ!」

 

そして腰に付けたケースから乱暴にデッキを取り出した。

デッキトップには黒いカード。

 

ここのせ「こんなもん!」

 

ここのせは腕を振りぬいた。

デッキがーーーカードが宙を舞う。

そして数秒の滞空の後、橋の下に落ちていった。

 

良平「あっ……!」

 

手を伸ばす。

しかし一枚たりともとることはかなわず。

ここのせは振り切るように走りだした。

がむしゃらに。

 

良平「ここのせ……!! ど、どうする、祭乃木! ……あれ?」

 

橋には一人。

良平だけが取り残されていた。

 

 

[街中]

 

車のテールランプがにじむ。

街も人も境がなくなったように歪んでいる。

ここのせは走った。

何もかもを振り切るように。

何もかも断ち切るように。

後ろ髪が引かれても、ここのせは走るのをやめなかった。

 

ここのせ「……くそッ! くそッ……!」

 

口から呪詛を流しながら。

道行く人も何もかもどうでもいいと叫びながら。

 

 

[ここのせ宅]

 

自宅に戻ると、珍しく電気がついている。

心なしかいい香りも漂っている。

だが今のここのせにとってそれほど煩わしいものはなかった。

玄関を開け放つとすぐに母がリビングから現れた。

 

ここのせ母「おお、心! 帰ったか! 私たちも……」

 

ここのせ「ッ……!」

 

だが話などする気も起きず、ここのせは勢いのまま靴を脱ぎ捨ててしまった。

 

ここのせ母「お、おい! どうした!? 心!」

 

ここのせ父「……」

 

追おうとする母を父は手で制した。

そして、首を振ってそっとしておけ、とつぶやいた。

 

部屋の扉を乱暴に閉め、後ろで鍵をかける。

嗅ぎなれた自分の部屋の匂い。

 

ここのせ「ハァハァ……!!」

 

それがここのせの心を緩めてしまった。

 

ここのせ「ッ……!」

 

一回息が詰まったように引っ込み、それがトリガーだったかのようにボロッと雫がこぼれてくる。

だめだとまれと言い聞かせてももはやどうにもならず。

 

ここのせ「〜〜〜〜ッ!!」

 

あふれ出るのは涙だけにあらず。

 

ここのせ「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

悔しさ。

やるせなさ。

吐き出すためにここのせは声の限りをあげた。

 

…………

……

 

本当はいつまでだって泣いていたかった。

しかし、涙というのは不思議なもので引っ込んでしまうと何故か少し落ち着いてしまう。

ここのせは、ベッドで横になり足を畳んで丸くなる。

 

ここのせ「……」

 

何時かはわからないが、食事をする気分にもならない。

ドアの向こうからは足音がしてそれが部屋の前で止まった。

やがて母の声が聞こえてくる。

 

ここのせ母「……心。何があったかはわからんが、いつまでそうやって篭っているつもりだ。せっかく家族が揃ってたというのに寂しい夕餉になったではないか」

 

ここのせ「……」

 

ここのせ母「ハァ、やれやれ……。夕食はここに置いておく。腹が減ったら食え」

 

お盆が床に置かれて乾いた音がする。

すると不意にインターホンが鳴った。

 

ここのせ母「ん? こんな時間に誰だ」

 

ここのせ「……」

 

どうせ宅急便か何かだろうと。

知らん顔をしようとするが、ドアの向こうから聞こえる会話がそれを許さなかった。

 

 

「はーい。……なっ!!? お前たちボロボロじゃないか!? こんな時間に一体何があったんだ……!? え?心か? 居るにはいるが……」

 

会話の主にピンと来てここのせは、跳ね起きた。

乱暴にドアを開けて駆け出す。

 

ここのせ「……ッ!」

 

玄関口まで飛び出してみると母が立って玄関を開けている。

その向こうに少女と少年がいるのが見えた。

 

ここのせ「てめぇら!! 何しに……あっ!?」

 

祭乃木「あ! ここのせ!」

 

良平「よかった……」

 

ここのせは思わず目を見張った。

二人はボロボロで泥だらけだった。

顔にも腕にも足にも、汚れがついている。

 

ここのせ「お、お前ら……! 何やって……」

 

良平「ここのせ、これ……」

 

おずおずと良平は手を差し出した。

それはカードの束ーーデッキであった。

一番上には黒いカード、ドレッドノイドが置いてあった。

 

ここのせ「そ、それ……! オレが捨てた……!? どうして……!?」

 

祭乃木「アタシはデュエルで人を救うって決めてるのよ! 今、目の前でデュエルで傷ついてるアンタを、ほっとくなんてできないわ!!」

 

良平「祭乃木が、このままじゃ絶対後悔するって。だから……拾ったんだ 」

 

良平は語る。

走り去った後の彼らを。

 

〜回想〜

 

夜の旧サテライトエリアはもはや暗く、月の光と街灯だけが頼りだった。

亜美は地面を半ば這うようにして探す。

 

祭乃木『このままでいいわけない!!』

 

良平『祭乃木……』

 

祭乃木『このままここのせをほっといたら、アタシはヒーロー失格よ!! お願い良平! 手伝って!!』

 

〜回想終了〜

 

 

そうして再びデッキとなったカードたち。

それが今、ここに。

 

良平「時間かかったけど、さ。これ、大切なカードなんだろ」

 

ここのせ「だけどオレはどうせ……!」

 

デッキから目を逸らしてここのせは言う。

しかし、亜美はそれを遮るように声を出した。

 

祭乃木「運命力っていうのは確かに大切なのかもしれない! けど、デュエルは全部ひとりでやらなきゃいけないものじゃないわ!」

 

ここのせ「!!」

 

祭乃木「 アタシや良平と一緒にカードを集めればいいじゃない! 一緒にデッキを考えればいいじゃない! だから! だから諦めないでよ!」

 

ここのせ「祭乃木……!」

 

良平「ここのせ。全部諦めるなんて、そんなの悲しすぎるよ。俺も、祭乃木も手伝うからさ、一緒にデッキを作ってみようよ」

 

なんでここまでしてくれるんだ。

ここのせは再び目の奥からじんわりと熱いものが込み上げてくるのを感じる。

しかしそれは悔しさにあらず。

やるせなさにあらず。

 

ここのせ「〜〜〜〜!!」

 

しかし、人前でそれを溢すのは恥ずかしい。

ここのせは慌てて右腕でゴシゴシと拭きさってしまった。

 

ここのせ「馬鹿野郎! こんな時間まで、危ねぇだろうが!」

 

祭乃木「うっさいわね! ほら、アンタのデッキでしょ! 受け取りなさい!」

 

ここのせ「……あぁ!」

 

ガシッと確かに掴む。

ここのせがデッキを。

様子を見守っていたここのせの母が腕を組む。

 

ここのせ母「ふむ……。どうやら訳ありのようだな」

 

祭乃木「あ! ご、ごめんなさい! 人の家の玄関で騒いじゃったわ!」

 

ここのせ母「いいや、ウチの息子が迷惑をかけたようだからな。フンッ!」

 

ゴチンッと音がして、脳天からズンと衝撃。

 

ここのせ「痛ってぇ!! 何しやがんだよ!」

 

ここのせ母「先程、捨てたと聞こえてな。誰が買い与えたと思っているのだ」

 

ここのせ「悪かったよ……」

 

ここのせ母「まったく……。二人とも、名前は?」

 

祭乃木「アタシ、亜美! 祭乃木亜美!」

 

良平「日和田良平です」

 

ここのせ母「祭乃木ちゃんに日和田くんだな。よろしい、上がっていきなさい。今、風呂を用意する」

 

祭乃木「えぇ!? 悪いわよ!」

 

ここのせ母「子供が遠慮するものではない。それに大切な子供をそんなボロボロの状態で帰したとあっては能瀬家の沽券にかかわるからな」

 

良平「で、でも時間が……!」

 

ここのせ母「二人の家には私から連絡しておく。説明も必要だろうからな」

 

祭乃木「じゃ、じゃあお邪魔します!」

 

ここのせ母「うむ。……まずは風呂に直行してもらいたいが、祭乃木ちゃんは女の子か。日和田くん、日本男児たるもの順番は譲れるな?」

 

良平「は、はい」

 

ここのせ母「良い返事だ。では、祭乃木ちゃん、ついてきなさい。心は、ちゃんと客人をもてなすように」

 

亜美は泥だらけの靴を脱ぎ、泥を落とさないようにゆっくりとあがる。

そしてここのせの母についていった。

 

良平「あ、ここのせ。デッキ、確認してみてよ。暗かったからちゃんと揃ってるかわからなくてさ」

 

ここのせ「ああ」

 

シャッシャッシャッと簡単に確認する。

 

ここのせ「あ!?」

 

しかし途中見慣れぬカードが混ざっており手を止める。

 

良平「ど、どうしたの?」

 

ここのせ「こ、これ!!」

 

素早く抜き取りカードを見せる。

それはスターターデッキには無いカード。

星遺物の胎動と星遺物の守護龍メロダークと書かれている。

 

良平「あぁぁぁ!!? 星遺物カード!!?」

 

祭乃木「え!? 何なに!? どうしたの!?」

 

廊下を引き返して来た亜美が慌てて覗き込む。

 

祭乃木「って、あぁぁぁ!!?」

 

ここのせ「お、お前ら! 見つけてくれたのか!?」

 

良平「ち、違うよ!! あんまり見えてなかったから、紛れ込んだのかも……!」

 

祭乃木「なんでもいいわ!! やったぁ!! やったわぁぁぁ!! 見つけたわぁぁ! やったわね! ここのせ!!」

 

良平「すごい! 本当に見つかるなんて……!!」

 

ここのせ「……オレ……。オレ……! やったぜぇ……!!」

 

グスグスと鼻を鳴らしてここのせはカードを抱き抱える。

母は三人を見据えて呟く。

 

ここのせ母「……ふむ。なんだかよくわからんが……。どうやら心は、良い友達を持ったようだ。……んっん! こら! 泥だらけで走り回るんじゃない!」

 

祭乃木「あ、忘れてたわ! ごめんなさい!」

 

…………

……

 

風呂に入ってさっぱりしたところで、ここのせの部屋に集まる。

 

祭乃木「さぁ! 綺麗になったところで!さっきのカード、アタシにもよく見せてよ!」

 

ここのせ「いいけどよ……。お前ら帰らなくていいのか?」

 

良平「ここのせのお母さんが、もう遅いから泊まっていけって」

 

祭乃木「そういうこと! というわけで急遽だけど、デュエル合宿よ!」

 

良平「それで、このカードはどんなカードなんだろう」

 

増えていた星のカードを床に並べる。

 

祭乃木「えーっと? デッキか手札からレベル9のモンスターを特殊召喚するカードみたいね」

 

良平「デッキからリクルートするには種族と属性が違う必要があるのか……。でも全然バラバラのテーマでもレベル9なら強引に出せるってことか」

 

ここのせ「レベル9か……。このメロダークってやつもレベル9だし、あとはこいつが使えるな!」

 

ここのせはカードボックスからカードを一枚取り出す。

 

良平「巨大戦艦ブラスターキャノンコア……。巨大戦艦のカードか」

 

ここのせ「ゲームの特典カードだったんだ。生きる日がきたぜ!」

 

良平「あ、レベル9が出せるならランク9も狙えるな。ここのせ、これ使ってよ」

 

今度は良平がデッキケースからカードを取り出して差し出した。

原子力空母エンタープラズニルと書かれている。

 

ここのせ「え!? いいのか!?」

 

良平「俺じゃ使いこなせないからさ」

 

ここのせ「おぉ! これでドレッドノイドと合わせて艦隊が作れるぜ!! サンキューな! 良平!!」

 

良平「うん!」

 

祭乃木「レベル9だけじゃ、デッキが重たいから、レベル4もいれましょ! たとえばこれなんか……」

 

良平「あ、いいね!」

 

ここのせ「こいつはどうだ……」

 

そうして夜が更けていく。

 

…………

……

 

ーーそして。

測定当日。

学校ホールは学年全員が並んでいる。

当然亜美たちも軒を連ねていた。

 

祭乃木「いよいよ、この時がきたわね……」

 

ここのせ「くそ、緊張するぜ……」

 

祭乃木「ていうかわざわざ学年全員を集めなくてもいいのにね」

 

良平「こっちのほうが先生たちが管理しやすいんだよ」

 

祭乃木「へぇ、流石議長団」

 

良平「それ褒めてる?」

 

そんな会話もほどほどに、準備が整ったのか教師が前に立つ。

 

先生「はい、じゃあこれから検査を始めます。今日みてくれるのは、デュエルアカデミアの先生です。失礼のないようにお願いしますよ」

 

検査官「よろしくお願いします」

 

紹介された検査官は、青色のスーツを着ている。

腕には大袈裟なデュエルディスクがついていて威圧感がある。

 

 

先生「じゃあ名前を呼ばれたら前に出てきてくださいね」

 

祭乃木「それにしたって、なんか大袈裟じゃない? わざわざアカデミアからなんて」

 

ここのせ「5年からデュエルアカデミアの推薦が始まるからな。だからわざわざアカデミアから呼んでるのさ」

 

祭乃木「ふぅん。なんか値踏みされてるみたいで嫌なカンジね!」

 

先生「祭乃木さーん」

 

良平「あ、呼ばれてるよ」

 

祭乃木「はいはーい」

 

テクテクと検査官の前まで歩いていく。

 

検査官「はーい、じゃあよく見せてね」

 

デュエルディスクに力の集約と書かれたカードをセットする。

そして頭から足まで凝視された。

 

祭乃木(……なんか胡散臭いわ)

 

すると検査官は目を見開き、声を上げる。

そして入学パンフレットを半ば強引に差し出した。

 

検査官「こ、これは!! 凄まじい運命力だ!! 是非アカデミアの入学を検討してみて!」

 

祭乃木「え?」

 

ザワザワと騒然となる。

 

ここのせ「すげぇな、祭乃木のやつ!」

 

良平「た、確かに祭乃木、引き強いもんなぁ……」

 

しかし亜美はぷいとそっぽを向いて踵を返して歩いていく。

 

祭乃木「いらないわ! さ、次いって!」

 

先生「こら! 祭乃木!」

 

検査官「……いいんですよ。さ、次を」

 

先生「じゃあ、次……」

 

ここのせ「お前、凄いな……」

 

祭乃木「ふん! 胡散臭いったらないわ!」

 

先生「日和田くーん」

 

良平「はい」

 

検査官「ふむ。君もかなり高いね。アカデミアの合格ラインを超えているよ。入学を検討してみてね」

 

良平「は、はぁ」

 

ここのせ「アイツもかよ! こりゃプレッシャーだぜ……」

 

祭乃木「きっと大丈夫よ!!」

 

先生「能瀬くーん」

 

ここのせ「よし、行ってくるぜ……!」

 

意を決してここのせは前に出る。

 

ここのせ「……」

 

検査官「ん?君は……。前にアカデミアに来てくれたね。君は、大丈夫だ。戻っていいよ」

 

先生「あ、そうですか。じゃあ次…」

 

ここのせ「待ってくれ、ちゃんと見てくれよ。今年は違うかもしれないだろ」

 

検査官「はぁ……。じゃあ一応ね」

 

渋々といった様子で、検査する。

 

ここのせ「…………」

 

検査官「……変わらないよ。君の運命力は0だ。悪いことは言わない。デュエルは諦めなさい」

 

ここのせ「……そ、そんなバカな……!」

 

良平「え!?」

 

祭乃木「嘘よ!」

 

検査官「運命力は生まれつきのものだ。後からどうにもならないんだよ。君にデュエルは無理だ。悪いことは言わない。デュエルは諦めた方が君のためだ」

 

ここのせ「……」

 

立ち尽くす。

最初に思ったのは不甲斐なさ。

手伝ってもらって星遺物カードを手に入れてまで。

 

「ぷっ」

 

ここのせ「!」

 

後ろを振り向く。

 

「あははははははっ! 0だって!! ダッセェー!!」

 

「えー、やばー!」

 

あははははははは!

アハハハハハハハハハハハッ!

 

嘲笑の雨。

ここのせは拳を握った。

 

ここのせ「……」

 

逃げ出してしまいたい。

そう思ったときだった。

 

祭乃木「ーーーーふっざけんじゃないわよ!!!」

 

怒号。

亜美の声だった。

シーンと辺りが静まり誰もが亜美を見た。

 

祭乃木「アンタなんかに何がわかんのよ!! 笑ってるアンタらもよ!! ここのせが……! ここのせが今日どんな想いでここに来たか!! アンタらなんかにわかるもんか!!」

 

良平「祭乃木……」

 

祭乃木「どいつもこいつも、ふざけんじゃないわよ!! アンタの言うことなんて信じないわ!! ここのせは……! ここのせは!!」

 

必死に言葉を紡ぐ亜美。

そんな彼女を見てここのせは震える手を解く。

 

ここのせ「祭乃木!!」

 

祭乃木「ッ!」

 

もう悔しくはない。

もう恥ずかしくない。

ここのせにはーー。

 

ここのせ「サンキュー。……でも大丈夫だ。オレの心はまだ死んじゃいないぜ」

 

祭乃木「ここのせ……」

 

ここのせ「お前は言ったな。デュエルはひとりの力だけでやらなきゃいけないものじゃないって。オレは……オレのデッキはそれを知っている」

 

ここのせは腰につけたケースからデッキを取り出した。

そして検査官を睨みつける。

 

良平「……!」

 

ここのせ「おい! この節穴野郎! お前が言うことが本当ならオレはデュエルで勝てねぇはずだな!? そいつを今、ここで覆してやるぜ!」

 

検査官「なっ!?」

 

ここのせ「そこのお前!」

 

「お、俺か!?」

 

ここのせ「今ここでオレとデュエルしろ! バカにするなら勝ってからにしな!」

 

「はぁ? 運命力0に負けるわけないだろ! いいぜ!あとで後悔するなよ!」

 

ここのせ「いくぜ!」

 

「ボコボコにしてやる!」

 

互いに左腕につけた小型のディスクを起動させる。

 

先生「こら!! やめなさい!!」

 

良平「先生!! やらせてください!! これは、ここのせにとって大切なデュエルなんだ!!」

 

祭乃木「ここのせ!! アンタの……いいえ、アタシたちの想い、全力でぶつけなさい!!」

 

ここのせ「おう! ……さぁ、いくぜ!」

 

ここのせ「デュエル!」

LP4000

 

「デュエル!」

LP4000

 

「先攻はもらった! 俺のターン!」

 

ーメインフェイズー

 

「いきなりきたぜ、切り札! 神獣王バルバロスを召喚!」

 

神獣王バルバロス「ガァァァァァァァァッ!!」

攻:3000→1900 地 獣戦士族 星8

 

「こいつはレベル8だけど、攻撃力を1900にすることで、リリースなしで召喚できる!」

 

ここのせ「妥協召喚……!」

 

「そして手札から愚鈍の斧を装備!」

 

《愚鈍の斧》

装備魔法

 

神獣王バルバロス「ガルァァァァァァァァァァァァァッ!!」攻:1900→4000

 

 

祭乃木「攻撃力4000!?」

 

良平「そ、そうか! 愚鈍の斧は装備モンスターの攻撃力を上げるだけじゃなくて、効果を無効にする! 妥協召喚したとき1900になる効果が無効になったのか!」

 

 

すげぇ!!

これじゃすぐ終わるよ!

周りの小学生たちが口々に言う。

 

 

「どうだ! カードを1枚伏せてターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

男子

LP:4000

手札2

伏せ1

魔法罠:愚鈍の斧

フィールド:

神獣王バルバロス

 

ードローフェイズー

 

ここのせ「オレのターン!」

 

想いを乗せてデッキトップに手をかける。

何か力がデッキから伝わってくる。

そんな気がした。

 

良平「!!」

 

良平(さっきまでと違ってここのせから力を感じる! なんだこれ!?)

 

検査官「なっ!? 微量な運命力を感じるだと!? ……いやこれは……??」

 

ここのせ「すげぇ……! 今までと違う手札だぜ……!」

 

「な、なんだよ」

 

ここのせ「いくぜ! こいつは相手フィールドのモンスターがこっちより多い場合に特殊召喚できる! こい、巨大戦艦ブラスターキャノンコア!!」

 

巨大戦艦ブラスターキャノン・コア

攻:2500 地 機械族 星9 カウンター0→3

 

ここのせ「さらに通常召喚! こい、召喚僧サモンプリースト!」

 

召喚僧サモンプリースト「ふぉふぉふぉっ」

攻→守:1800 闇 魔法使い族 星4

 

ここのせ「サモンプリーストの効果発動! 手札の魔法を1枚墓地に送り、デッキからレベル4モンスターを特殊召喚できる! こい、もう一体のサモンプリースト!」

 

召喚僧サモンプリースト「ふぉふぉふぉっ」

守:1800 闇 魔法使い族 星4

 

「そんな雑魚を並べたところで攻撃力4000のバルバロスの前じゃ意味ないんだよ!」

 

ここのせ「まだまだ、こっからだ! 見せてやるよ! これがオレの……オレたちの力だ! 手札から速攻魔法、星遺物の胎動を発動!」

 

《星遺物の胎動》

速攻魔法

 

検査官「なに!? 星遺物カードだと!?」

 

ここのせ「フィールドのレベル9モンスターと種族、属性が違うレベル9モンスターをデッキから二体特殊召喚できる! こい、星遺物の守護龍メロダーク! ワルキューレ・シグルーン!」

 

星遺物の守護龍メロダーク「ゴガァァァァァァァァァッ!!」

攻:2600 風 ドラゴン族 星9

 

ワルキューレ・シグルーン「ハァァァァッ!」

守:2400 光 天使族 星9

 

ここのせ「さぁ、艦隊のお出ましだ! レベル9のメロダークとシグルーンでオーバーレイ!」

 

☆9×☆9=★9

 

ここのせ「ーー海の要塞、大空の支配者よ! 遥かなる水平線に勝利を刻め!」

 

黒いオーバーレイネットワークに稲妻が走り、航空母艦が姿を現した。

 

ここのせ「エクシーズ召喚!抜錨だ! 幻子力空母エンタープラズニル!!」

 

幻子力空母エンタープラズニル

攻:2900 風 機械族 ランク9

 

ここのせ「続けて! レベル4のサモンプリースト2体でオーバーレイ!!」

 

☆4×☆4=★4

 

ここのせ「ーー四方を守りし真金の城よ! 遥かなる水平線に勝利を刻め!!」

 

それは鋼の要塞。

海を往く海神の如き剛体。

今それが錨をあげる。

 

ここのせ「エクシーズ召喚! 抜錨せよ、No27弩級戦艦ドレッドノイド!!

 

No.27弩級戦艦ドレッドノイド「ボォォォオオォオッ!」

攻:2200 水 機械族 ランク4

 

汽笛を鳴らし、ここのせのフィールドに出撃する。

ここに艦隊と相成った。

怒涛の展開に一瞬怯んだものの男子生徒は攻撃力を見て笑う。

 

「へっ……! 驚かせやがって……! 攻撃力はどれも雑魚ばっかりじゃんか!」

 

ここのせ「物理がダメなら効果で殴る!! エンタープラズニルの効果発動! 素材を一つ使って、フィールドのカードを除外する!」

 

「なっ!! 除外!?」

 

ここのせ「第一次攻撃隊、全機発艦!! 急降下爆撃!!」

 

エンタープラズニルは、号令を受けてカタパルトを起動させる。

全通式甲板の上にはプリズム体の航空機が出現した。

次から次へと射出され、よく訓練されたダンサーのように一気呵成に急降下した。

そして抱えた爆弾をバルバロスに向けて投下する。

 

神獣王バルバロス「ゴギャァァァァァァッ!!」

 

炸裂した無数の爆弾が爆炎を上げ、バルバロスの身体を粉微塵に粉砕してしまう。

男子生徒は呆気なく散ったモンスターの残骸を見上げた。

 

「あぁ! バルバロスが!!」

 

祭乃木「いっけぇ!! ここのせ!!」

 

優勢。

亜美は声を上げる。

 

ーバトルフェイズー

 

ここのせ「バトル!! ブラスターキャノンコアでダイレクトアタック!!」

 

巨大戦艦ブラスターキャノン・コア「ヒュンヒュンヒュン」

攻:2500

 

円盤状の戦艦からビーム砲が炸裂し、それが男子生徒を貫いていく。

 

「うわぁぁぁ!?」

LP4000→1500

 

ここのせ「とどめだ! いけ! ドレッドノイド! ダイレクトアタック!」

 

ソリッドビジョンの波を掻き分け、戦艦が進む。

主砲を回転させる。

 

「と、トラップ発動! 炸裂装甲!」

 

《炸裂装甲》

通常罠

 

「攻撃してきたモンスターを破壊する!」

 

ここのせ「無駄だ! ドレッドノイドは素材を一つ使うことで不沈艦と化す!!」

 

爆弾を纏わせた網状のものがドレッドノイドに纏わりつく。

いくつもの爆発が船体を揺らす。

しかしドレッドノイドは沈まない。

ただ悠然と海を往く。

 

ここのせ「くらえ!! 30センチ砲、撃ち方始めぇ!!」

 

手を振るいここのせは叫ぶ。

戦艦は応え、猛々しい轟音を上げ主砲弾を撃ち出した。

そして、放物線を描いた砲弾が少年に命中した。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁ!!?」

LP1500→0

 

シンと静まり返り、誰も彼もがピタと止まる。

やがて静寂を切り裂いたのは亜美の声だった。

 

祭乃木「や……」

 

ここのせ「ッ!」

 

祭乃木「やったわぁ!! ここのせの勝ちよ!!」

 

良平「ここのせが勝った!! 勝ったんだ!」

 

二人は思わず駆け出して半ば抱きつくようにここのせの肩を叩く。

 

ここのせ「どわっ!? お、オレ……か、勝ったのか……! 始めて、始めて勝った……! うォオオォオオ!!」

 

「そ、そんな……」

 

ザワザワと辺りが騒然としている。

笑っていた生徒たちはバツが悪そうに下を向いていた。

 

検査官「ば、ばかな……! こんなことが……!!」

 

祭乃木「見たかってーの!! これが、ここのせの力よ!! アンタの言うことなんか全然正しくないんだから!!」

 

検査官「ぐっ……! 星遺物といい、なんなんだお前たちは!!?」

 

余裕がなくなった検査官の言葉に亜美はニッと口角をあげた。

そして腕を振り上げて宣言する。

 

祭乃木「いいかしら!? よく聞きなさい!! アタシたちは!!」

 

上げた手をビシリと突きつけ声高に。

 

祭乃木「ヒーローよ!」

ここのせ「祭乃木団だ!」

良平「議長団だ!」

 

祭乃木「ってバラバラじゃない!! 合わせなさいよ!!」

 

良平「擦り合わせしてないだろ!」

 

ここのせ「決めとけよ!」

 

祭乃木「もぉぉぉぉ〜!!」

 

…………

……

 

 

[そして現在 カフェlike]

 

カフェの四人掛け席で亜美は肘をついてグラスに入った水を飲む。

対面の席にはゆきと恵が座っていて真ん中にはクッキーの皿が鎮座していた。

 

祭乃木「ま、そんなわけで、アタシたちは仲間になったってわけよ」

 

ゆき「そんなことがあったんですねぇ……。なんだか凄いですぅ」

 

恵「……ユニーク……」

 

良平「あのさぁ、祭乃木」

 

上から良平の呆れた声。

ウェイトレスモードの良平がお盆に乗せたココアを机に置く。

 

祭乃木「あによ?」

 

良平「女子会やるなら場所選んでくれよ」

 

祭乃木「喫茶店なんて女子会に持ってこいでしょ!」

 

良平「せめて俺がシフトじゃないときにやってよ! なんでウチなんだよ!」

 

祭乃木「うっさいってーの! ココア置いてさっさと帰んなさい!」

 

良平「横暴だな……」

 

そんな会話しているとカウンター席から声がする。

 

ここのせ「バイトってのはクレーマー対応が大変だなぁ」

 

良平「……いやお前もその一味なんだけど! せめて纏めて座れよ! 掃除が面倒だろ!」

 

ここのせ「あいつらが昔話なんか始めっからだろうが! せっかく飯食おうと思ったのによ……」

 

恥ずかしそうにそっぽを向き、水を一気に飲み干すここのせ。

ゆきはその姿をニコニコと眺める。

 

祭乃木「まったく……」

 

とココアを飲もうとした刹那。

机の上に置いておいたスマートフォンが二、三度振動する。

 

ゆき「あ、祭乃木さん。携帯鳴ってますよ」

 

祭乃木「はいはーいっと。あ、メールだわ。おっ!」

 

ゆき「誰からでした?」

 

祭乃木「WSG運営委員会からよ!」

 

ここのせ「え、まじか!?」

 

良平「何の連絡!?」

 

離れていた二人も急いで亜美の元へと集まってくる。

亜美はスマートフォンを操作し、メール文面を読んだ。

そして内容を理解した後、全員を見渡した。

 

祭乃木「WSG本戦の開会式と抽選会の日程よ!! 日程は、2週間後の日曜日! 場所は、ネオ童実野シティメモリアルフィールド!!」

 

良平「メモリアルスタジアム!?」

 

ゆき「わぁっ! 凄いところですぅ! い、今から緊張で吐きそうですぅ!」

 

良平「は、吐くなよ?」

 

恵「……ユニーク……」

 

ここのせ「へへっ、楽しみだぜ!」

 

祭乃木「いよいよ始まるのよ! WSC本戦が!!」

 

ここにいる5人が。

まさかアカデミアでもない高校生が。

誰が思うだろうか。

机に置かれたココアはコップを結露させ、氷がからりと鳴った。

 

 





◆次回について
17話から本格的に大会本戦編になります。
なるんですが、その前にあと1話だけ挟ませてください!
本戦早く見たい方には申し訳ございません!!

◆次回予告
寝る前決闘空間 第16.5話
『少年少女奮闘記』


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