遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
お付き合いいただければ幸いです!
もしよければお気に入りや感想などいただけますと捗ります。
よろしくお願い申し上げます。
金曜日の放課後のことだった。
ワールドスタンディングデュエルクラシックーーWSCの開会の二日前である。
もはや使用されていない地学準備室ーー即ちヒーロー部の部室では、ゆきが入れた茶を飲みながら5人はデッキを吟味しながら最終調整をしていた。
忠一「入るよ」
ノック代わりに声を出して将棋部の水原忠一はヒーロー部部室のドアを開けた。
亜美は忠一の顔を見ると意外そうな顔をして片手をあげる。
祭乃木「水原じゃない。ウチまでくるなんて珍しいわね」
忠一「くるみんさんが、案内しろって」
祭乃木「くるみん?」
聞き慣れない言葉に亜美が首を傾げると忠一の腰からひょこりと顔が飛び出した。
にんまりと自信満々な笑みを浮かべ髪は茶色に輝き腰まで長く伸びている。
??「やぁーやぁーヒーロー部諸君、プリチーな天才女子高生! くるみん様の御成だよ!」
甲高い声に忠一の半分ほどの身長。
顔は整っていて赤青緑の三本のヘアピンで前髪を留めている。
ここのせはソファーに首をもたれながら怪訝な顔で彼女を見据えた。
ここのせ「お前さんは確か……前に垂れ幕作ってくれた……?」
脳裏に浮かぶ校舎に取り付けられた垂れ幕。
WSC予選から凱旋した日に飾られていたものである。
??「そう! 私は裁縫部部長にして、天才! なんでもできる系の女子高生! そして君たちのサポーターの第二号さ! 私のことは愛をこめて、くるみんと呼んでくれたまえ!」
茶髪の少女ーー市原桃胡は自信満々な顔で胸をとんと叩く。
良平「く、くるみん? 名前と全然違うけど……?」
くるみん「私の名前の漢字は果物の桃にさんずいがない湖の胡。これを反対にすると胡桃と読める! だからくるみん! 可愛いだろう??」
祭乃木「確かに可愛いわね、じゃあくるみんって呼ぶわ! アタシたちの紹介はいらないかしら?」
くるみん「もちろん! 部長の祭乃木さんに、間宮さん、日和田くん、能瀬くんにルインさんだ。覚えてることを驚くことはない、私は天才だからね!」
良平「……濃いなぁ」
恵「……ユニーク……」
ゆき「あの、サポーター第二号というのは?」
くるみん「うん! 実は私は天才ではあるがデュエルは管轄外でね。ただ水原くんが君たちのことを教えてくれて、試合を見たらとても面白くて! それで私も応援しようと思ったのさ!」
ゆき「わぁぁ! ありがとうございます!」
祭乃木「うん! 頑張ろうって気合いが入るわね! ……あ、それでなんか用だった?」
くるみん「出来たんだ!」
良平「出来たって? 何が?」
くるみん「君たちへの本戦出場祝いさ!」
そう宣言してくるみんはカバンを開けて中に手を突っ込んだ。
そして思い切り引っこ抜くと手には何やら箱が握られている。
祭乃木「これって……?」
くるみん「これは君たちへのプレゼントだ!」
祭乃木「えぇ!? いいの!?」
差し出された腕章を亜美は持ち上げて頭の上に持ち上げた。
不思議そうに見上げる。
祭乃木「それでこれ何?」
くるみん「うん。……WSC本戦は、全国放送されるよね。つまり君たちヒーロー部の活躍が、日本中に発信されるということだ!」
ゆき「うぅ……! それを言われると緊張しますぅ……!」
良平「でもそれが何の関係があるの?」
くるみん「テレビを見た人が君たちが何者なのか、誰が部長なのか、一目でわかった方がいいと思ってね! だから作ったんだ! この完璧な腕章をね!」
にやりと笑いくるみんは亜美の手にある箱の蓋を開けた。
全員が中を覗き込む。
朱色のベースに金色と青の糸が幾重にも縫い込まれ、盛り上げられいる。
そのオウトツはヒーロー部 部長と書かれていた。
ゆき「わぁっ!」
良平「え、これ、全部刺繍、だよな……?」
ここのせ「すげぇ!! フォントも凝ってんなぁオイ!」
恵「……かなりの時間を要すると推測される……」
くるみん「ふっふっふっ! もっと褒めてくれたまえ!! いやぁ、習字に裁縫、炊事洗濯雨あられ! 万事万象に一片の隙もない! あぁ、私って完璧すぎる……」
祭乃木「ホントに凄いわ!! つけていいかしら!?」
くるみん「いいとも! そのために作ったのだからね!」
祭乃木「腕に通してっと……」
箱に手を伸ばして腕章を取り出す亜美。
左腕に輪っかを通して二の腕で安全ピンを取り付けると、腕を下に伸ばしてよく見えるように腕章を右手でつまみ上げた。
祭乃木「どうよ!!」
ゆき「わぁぁ! 凄い! カッコいいですぅ!」
忠一「へぇ、つけただけでちょっと印象変わるね。まさに馬子にも衣装」
くるみん「しかし、少し時間が足りなくてね。部長さんの分だけしか作れなかったんだ。すまないけど、それでいいかな?」
良平「あぁ気にしないで。祭乃木以外はボンクラだから」
祭乃木「ボンクラは、アンタら二人だけよ!」
ここのせ「誰がボンクラだ、こらぁ!」
恵「……ユニーク……」
忠一「くるみんさん、あんまり仕事を増やしすぎない方がいいと思うけど。旗もあるんだろ?」
くるみん「もう終わったとも! 天才プリチー女子高生を侮ってはいけないよ!」
忠一「……左様で」
ドヤ顔で胸を張るくるみんは両手を腰に当てるので忠一はもう何も言わずに目線を下げた。
ゆき「旗? 旗ってなんですかぁ?」
忠一「……君らには関係ないよ」
くるみん「何を言う! 彼らの応援旗を作ろうと君が……」
忠一「余計なことは言わないで、くるみんさん。じゃ、僕たちはいくから」
言葉を遮って忠一がドアに向かって歩いていった。
横目でその背中に向けてくるみんはくすくす笑う。
くるみん「全く素直じゃないなぁ君は。あ、祭乃木くん! 試合の日程が決まったら一報入れてほしいな!その方が我々も動きやすいからね!」
ゆき「え!? もしかして応援に来てくれるんですか!?」
くるみん「もちろんだとも! 水原くんきってのお頼みだからね! それに私もお祭り騒ぎは嫌いじゃないのさ! 滝沢くんも月村くんも、鳴り物を用意すると息巻いているところさ!」
ここのせ「滝沢に月村……。って誰だい」
良平「えっと3組と6組のやつだよね。たしか軽音部」
ここのせ「へぇなかなか心強いじゃねぇか。ジャンジャカやってもらいてぇもんだね」
祭乃木「そうね! アカデミアに負けない応援、頼むわよ!」
くるみん「任せて! 私たちの完璧すぎる応援に酔いしれるがいいさ! では、諸君、本戦頑張ってくれたまえ! Buon viaggio!」
ぴっと人差し指と中指を合わせて二本、ウィンクしながらくるみんは部屋を出ていく。
ちなみにボンビアージョとはイタリア語で良い旅を、という意味だ。
静かになったドアを眺めながらここのせは呟いた。
ここのせ「ついにオレたちにも後ろ盾ができたってわけかい」
良平「学校からは全然守られてないけどね」
ゆき「あはは……」
祭乃木「はっ、学校なんてどうだっていいわ! むしろ見せつけてやるわよ! とにかく水原たちが応援してくれる以上、不甲斐ない戦いはできないわ! 日曜日まで、ひたすら特訓よ!」
全員を一通り見回すと亜美は人差し指を誰に向けるでもなくビシリと突きつけた。
寝る前決闘空間第17話
17話 「開幕! WSC本戦!」
[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム]
かつてキングがいた。
かつて英雄がいた。
両者が激突したとされるデュエルオブフォーチュンカップが開催されたスタジアム。
老朽化などにより改修と建て直しを重ねて元々のスタジアムから外見は変わっていったものの、この街の歴史の象徴として鎮座している。
故にメモリアルスタジアム。
空にはいくつかの細い線が登っていき破裂音を轟かせた。
その昼花火を避けるように報道用のヘリコプターがスタジアムをぐるりと一周空撮している。
スタジアムの麓では大勢の観客が詰めかけている他、マイクを持ったリポーターがカメラマンの前で大袈裟な口調で声を上げていた。
『いよいよ、チームデュエルの頂点を決める戦いが幕を開けようとしています! 世界各国の予選を勝ち上がった注目チームを一挙にご紹介します!!』
そんなネオ童実野シティメモリアルスタジアムの東通用ゲートは、選手通用口となっており腰に魂を宿したデュエリストが闊歩している。
関係者駐車場が見えており、青色のバスが数台並んでいた。
出場者であるヒーロー部ーー否、チームHEROの5人も並んで歩いて通用口を目指していた。
ゆきは落ち着かない様子で天井やら何やら視線を巡らせ半開きの口から声を漏らす。
ゆき「はえ〜〜……」
恵「……何か……?」
ゆき「あ……! えへへ……つい見惚れちゃいましたぁ……。メモリアルスタジアム……凄いところですねぇ……」
良平「まさかここでデュエルをすることになるなんて思わなかったなぁ」
ゆき「うぅぅ、緊張しますぅ……」
ここのせ「オレたちが、これからこのフィールドに立つってんだから信じられねぇよな。ま、今日は開会式だけだけどよ」
祭乃木「開会式だけ、じゃないわよ!」
ここのせの言葉に亜美が顔を向けて言う。
ここのせ「え、まじ?」
良平「あれ? じゃあ予選みたいにいきなり一回戦やるの?」
祭乃木「違うわ。開会式の後、記念式典があるの! なんと立食パーティーよ!!」
ここのせ「な、なんでぇそりゃ。一気に社交界かってんだい……」
ゆき「はぅぅ……!」
恵「……場所は……?」
祭乃木「ネオ童実野シティグランドプリンスホテル!! 凄いでしょ!」
ゆき「えぇ!? あの凄い高級なホテルですかぁ!?」
元々半開きだった口を開け、それを手のひらで覆うゆき。
グランドプリンスホテルとは財界人御用達の超がつく高級ホテルでネオ童実野シティのトップスエリアの最奥にあるビルであった。
良平はげんなりとして肩を落とす。
良平「絶対ドレスコードあるじゃないか……。あ、だから制服着てこいって言ったのか」
祭乃木「そういうこと!」
それから視線を前に向ける。
変わらずスタッフや他チームのデュエリストたちや裏手側から回ってきた一般客の姿で視界が埋め尽くされた。
亜美はそんな雑踏の中に紛れるようにフードを被った人物が人々を縫って歩いている姿を見つけた。
祭乃木「……あれ?」
ゆき「っとと……。どうかしました?」
祭乃木「あの人……どっかで見たような……」
良平「どの人?」
祭乃木「ほら、あそこのフード被ってる……。あっ! わかった!! ねぇ、ちょっと!」
見当がついた亜美は徐に駆け出してフードを着た人物の元へと急ぐ。
肩を叩き振り向かせて顔を確認する。
???「……?」
祭乃木「やっぱり! 輝でしょ!」
フードの中には虚な瞳。
奥に見える紫がかったショートヘアはかつてゴミ処理場で共にカードを拾った少女ーー平畑 輝のものであった。
彼女は意外そうな顔をした後、亜美の後ろに続く他のメンバーを視界にいれて口を開いた。
平畑「……あら。貴女たち、いつぞやの」
祭乃木「久しぶりじゃない! 元気してた?」
平畑「ええ。貴女たちも健勝そうでなによりだわ」
ここのせ「相変わらず旅人みたいな格好してんだな」
平畑「……ファッションよ」
ゆき「平畑さん、大会に出場するんですかぁ?」
平畑「まさか。力を感じ……いえ、少し訳があって様子を見に来たのよ。貴女たちは、開会式を見に来たのかしら?」
祭乃木「違うわ! アタシたち、WSCの本戦に出場するの! 開会式を見に来たんじゃなくて、参加するのよ!」
平畑「そう。凄いのね」
ここのせ「反応薄っ……!」
平畑「私、感情を表現するのが得意ではないの。ごめんなさいね」
さらりと言った後、視線を落とす輝。
そこには双眸を一直線に向ける恵が立っている。
恵「……」
平畑「……あら。女性にそんな情熱的な視線を向けるものではないわ。もっとも貴女が白い花を咲かせるのが趣味ならば、私もそれ相応の対応をしなければならないのだけれど」
恵「……貴女、何者……?」
平畑「……貴女こそ、一体何者なのかしら? あの時はいなかったわね」
恵「……ルイン恵……」
平畑「ルイン……。少し不思議な名前ね」
恵「……」
ここのせ「悪ぃな、平畑。気を悪くしないでくれ。恵は、ちょっと変わっててよ」
良平「そ、そうそう! 人見知りだし!」
恵「……何のこと……?」
平畑「……なるほど、そういうことにしているのね」
それだけ言うと輝は口を閉じてしまった。
ふと足音が近づいてきて全員が音の方を振り返る。
WSCの帽子を被ったスタッフが早歩きで向かっていた。
「チームHEROの皆さん!控え室までご案内しますね!」
ゆき「あ、はい! ありがとうございますぅ!」
平畑「それじゃ、私はそろそろ暇するわ」
祭乃木「うん! またね!」
平畑「ええ、いつかまた」
フードがついたボロ布のようなそれを翻して輝は去っていく。
見送り亜美たちはスタッフに連れられてスタジアムの中へと歩を進めた。
[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム アリーナ]
会場は既に気の早い観客達のざわめきで騒がしい。
そんな観客をさらに煽るように数発の昼花火が打ち上がる。
ざわめきは一体感のある声に変わり、スピーカーからイメージソングが流れはじめた。
『会場の皆様!お待たせいたしましたァァァァァァァァァァァァァァァ!! これより、ワールドスタンディングデュエルクラシックの開会式を開始しまァァァァァァァァァァす!!』
ワァッと観客席から声が上がる。
モニターに各国の言語が表示され、真ん中にデカデカと『Opening the WSC!!』と描写された。
『ワールドスタンディングデュエルクラシックは、世界を股にかけたデュエルの祭典!! 参加するチームは、世界各地32箇所で勝ち抜いた熱きデュエルチームと、前回大会で上位の成績を残した超強豪8チームの合計40チーム!! この超難関を乗り越え、世界最強のデュエルキングスに輝くのは一体、どのチームかァァァァァァァァァァ!!!?』
司会のマイクパフォーマンスに歓声が湧き上がる。
各々が応援するチーム名を叫ぶ者もいた。
『それでは、世界各地で勝ち抜いた32チームを紹介するぞォオオォオオォオオォオオ!!』
選手入場ゲートのスタジアム側の出入り口の両端から白い煙が噴射された。
[カフェlike]
スタジアムから離れた郊外の喫茶店。
設置されたテレビからはやはりWSCの中継の映像が映し出されている。
『チームを紹介するぞォオオ!!』
良平母「……」
常連「コーヒーおかわりお願い!」
良平母「あ、はぁーい」
常連「今日は珍しくテレビつけてるんだね」
良平母「あ、ごめんなさいねぇ、うるさくしちゃって」
常連「いやいや、いいんだよ。WSCの開会式だね。いやーもうそんな時期か。でも女将さん、デュエル好きなんだっけ?」
良平母「特別好きではないですよ? でも、なんとなんと!!良くんが出ているのです!」
常連「え!? あの子が!? こいつはすごい!!」
良平母「良くんは凄い子なのですよ」
慈しみの眼差しで良平の母はお盆を胸にテレビを眺めていた。
[太平洋 洋上 護衛艦はくう艦内]
スタジアムから遠く離れた洋上。
太平洋の波に浮かぶ護衛艦が停泊している。
ここのせ母「…………」
海兵「艦長! ……艦長?」
ここのせ母「……おっと、すまない。考え事をしていた。どうした?」
海兵「はっ! 浦賀水道を巡回中の護衛艦うんしゅうより打電!」
ここのせ母「読み上げろ」
海兵「『ワレ ホウギョクノ カガヤキヲ ミユ』……新しい作戦指令でしょうか
ここのせ母「あの無口男が……! はぁ……。ただの業務連絡だ、気にするな」
海兵「はぁ……」
ここのせ母「船務長!」
船務長「はっ!」
ここのせ母「日本の民営放送電波は捕まえられるか?」
船務長「かなり距離があるので、鮮明には写りませんが、傍受は可能です」
ここのせ母「回してくれ」
船務長「はっ!」
ここのせ母「副長!」
副長「はっ!」
ここのせ母「艦内各員に伝達。これより20分間、休憩を取るように」
副長「は、はぁ。休憩、でありますか」
ここのせ母「左様。休憩中ならば、テレビを観るのも仕方あるまいな?」
副長「問題ありません!」
艦長の意向を受け止めて副長は背筋を伸ばして返答する。
[日本のどこかの孤児院]
スタジアムから遠く離れた都外の孤児院。
そこの談話室には亜美の父が机に座っており光るテレビを見つめていた。
対面には箱の中に詰まったカードを両手に持ちながら男の子は首を傾げた。
男の子「カードのおっちゃん! 今日はすぐに帰らないの〜?」
祭乃木父「そうだね。僕が泊まってるホテルは少し遠いからね。少しだけテレビを観させて貰ってるんだ」
職員「なんでも娘さんがWSCに出場するんだって! 凄いわねぇ!」
男の子「えぇ!? どれどれー!!?」
男の子はカードを持ったまま目を輝かせてテレビに向いた。
[メモリアルスタジアム 入場ゲート内]
メモリアルスタジアムの選手入場ゲートの内部は長方体の箱をコンクリートで作ったような四角い廊下が続いていて、切れた先がスタジアムになっている。
『続いてはァァァァァ、デュエル誕生の地! I2社が本社を置くアメリカよりサンフランシスコ予選を勝ち抜いたチームindependence!』
「hahahaha!」
「wooooooo!」
……
…
前に並ぶチームたちが次々と入場していく。
じわじわと来る自分たちの出番を前にゆきは大きな目をぐるぐるとさせていた。
ゆき「あうあうあぅ〜……!」
ここのせ「おいおい間宮。ちょっとテンパりすぎだぜ」
腕を組みながらここのせは澄ました顔で言う。
足はガクガクとしていた。
良平「いやここのせもじゃん」
苦笑いで良平は突っ込む。
手はブルブルと震えていた。
ここのせ「おめぇもじゃねぇか!」
恵「……ユニーク……」
祭乃木「ちょっとアンタたち! しっかりしなさいよね!! アタシたちの晴れ舞台なのよ!! 堂々としなさいよね!」
ゆき「祭乃木さん、凄いですぅ……。全然動じてない……」
祭乃木「とーぜんよ!!」
両手を腰に当てて亜美はどうだと言わんばかりに笑う。
しかし額や首筋には大量の汗がダラダラと流れていた。
良平「いやめちゃくちゃ汗かいてるーーー!!?」
ここのせ「お前も緊張してんのかい!!」
祭乃木「うっさい!!」
『続いてはァァァァァ!! デュエルの聖地!! 日本はネオ童実野シティ代表ーーー!』
気づけば先頭にきていたチームHERO。
ついにその時がきた。
ゆき「!!」
ここのせ「おっ!」
良平「きた!」
恵「……出番……」
祭乃木「よぉぉし!! さぁ!! いくわよ!! 」
亜美が真っ先に歓声の中に飛び込んでいく。
それに誘われるように、良平も、ここのせも、恵も、そして、ゆきも……。
フィールドに足を踏み入れた。
『超激戦のなか、初出場にして数々の奇跡を起こした意外性No.1チーム! チームHEROォオオォオオォオオ!!』
モニターには『JAPAN Neo domio ctiy : TEAM HERO!!』と表示される。
白い煙が噴射され、登場の演出が流れる。
割れるような歓声が身体を包んだ。
祭乃木「凄い観客ね! 水原たちはどこかしら!?」
歩きながら亜美は歓声に負けぬように大声で話す。
ここのせ「ダメだ!! 人が多過ぎてわからねぇ!」
ワァッと歓声は途切れない。
良平「たしか旗を用意してるんだろ!?」
ワァッと歓声は途切れない。
ゆき「あうあうあぅ〜……!!」
ワァッと歓声は途切れない。
恵「……水原忠一、および市原桃胡はあそこにいる……」
恵が指差し亜美が指の先を目で追った。
祭乃木「どこどこ!!?」
スタジアムの北東側。
亜美たちの右手方向にスタンドの最上段に大きな旗を見つけた。
忠一が旗を支え、くるみんが旗の端を持ちながら手を振っている。
旗には『必勝 ヒーロー部!』と書かれていた。
祭乃木「すごっ!! あの旗も刺繍じゃない!! アタシの腕章に色も合わせてるのね!!」
ここのせ「粋なことをしてくれるぜ!」
『続いてはァァァァァ! 全日本のデュエル部代表! 全国4箇所で開催された日本高校デュエル選手権大会を勝ち抜いた精鋭4名による高決連公認チーム!! チームユニオン!』
後ろからは再び白煙が上がり様々な制服を着た高校生が4名現れた。
『以上32チームが、代表チームだァァァァァァァァァァ!!』
今、アリーナに全チームが並ぶ。
人種や年齢は一切関係ない。
たたデュエリストであるということは変わらない。
良平「凄い……。わかってはいたけど、本当に世界大会なんだな……」
ゆき「あうあう……!」
ここのせ「震えが止まらなねぇぜ……。間宮もあうあう言うだけの機械になっちまったし……」
恵「……ユニーク……」
ここのせの後ろに立つ恵が顔色も表情も変わらずに呟く。
心なしか異音がする気がした。
ここのせ「恵、お前、なんか変な音してねぇ?」
恵「……冷却装置をフル回転させている……」
良平「凄いなぁ、こんな時までキャラクターが崩れない……」
祭乃木「ちょっとアンタたち! ヒーロー部の見せ場なんだからシャキッとしなさい!! ほら、ゆきも!!」
ゆき「あぅ……。が、頑張りますぅ……!」
『フィールドに集いしデュエリストたち!! 君たちはこれより、8つのブロックに別れ、トーナメント形式でしのぎを削ることになる!! ブロックの配置は次の通りだァァァァァ!!』
モニターは派手な音を立てながら映像を切り替える。
ABC-ドラゴンバスターとVWXYZ-ドラゴン・カタパルト・キャノンが咆哮を上げ、一気に分離しそれぞれが飛び立っていく。
Aブロック
・チームindependence
・チームAndiamo
・チームधन्य
………
……
…
Cブロック
・チーム ユニオン
・チーム HERO
……
…
祭乃木「あった!! アタシたちはCブロックね!!」
良平「本戦もトーナメントなのか……」
ゆき「あぅ……。……あれ? 数が合わないんじゃないですかぁ……? トーナメントって2の倍数じゃなきゃダメですよね……?」
恵「……そのためにシード権がある……」
ここのせ「ああ、強豪たちのウルトラシードってやつだな」
『さぁぁぁ!! 次は、いよいよ真打の登場だァァァァァァァァァァ!! 彼らは、ベスト16までのウルトラシード権を持つ、各ブロックに立ちはだかる巨大な壁!! 一般チームがベスト8になるにはこの壁を越えなければならない!!そんな超強豪8チームーー8強を紹介するぞォオオォオオ!!』
司会のマイクにより、さらに会場が湧き上がる。
『まずはAブロック!! アメリカの賞金泥棒!! 世界各地の大会で賞金を巻き上げている凄腕バウンティハンターズ!! チームバンデットォオオ!!」
白い煙が上がってステージの下から現れた3名のデュエリスト。
中央のアメリカ国旗バンダナ男が不適な笑みを浮かべている。
『続いてBブロック!! 前回大会準優勝!! デュエルアカデミアの黒き炎!! チーム煉獄ゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!』
別のステージの奈落が競り上がり、再び三名のデュエリストが現れる。
チーム煉獄、阿久津剛、寺仔リオ、黒河唯一の3名。
全員がデュエルアカデミア最高峰の証たる蒼い制服を身につけていた。
『Cブロック! 世界的企業、海馬コーポレーショングループを背負った企業戦士!! フランスはアルセーヌ社、日本は窪川フードコンポーネンツ、海野株式会社の複合チーム!!チームコーポレートォオオォオオォオオ!!』
また別のステージから白煙が上がりデュエリストが現れる。
ボーイッシュな黒髪女性と金髪ロングの女性青い髪の女性。
全員が高そうなスーツを着こなしている。
『Vブロック!! チーム全員がプロデュエルSリーグ所属! 各地のプロデュエルを魅せてくれ! チームプロフェッサー!』
『Wブロック!! 中華戦線からの刺客!! 大陸最強最大の暴風を巻き起こす!!チームバオフェン!!』
『Xブロック!!I2社のプロ試験デュエリスト集団!! 冴え渡るタクティクスは全チーム最高クラス!!チームアルゴス!!』
『Yブロック!!国際連合所属デュエルチーム!! 諜報活動もなんのその!!チームKGB!!』
次々と紹介されて白煙があがる。
その度に会場は震えんばかりに歓呼が上がった。
『ラストはZブロック!!最大の優勝候補! 前回大会優勝! 最強無敗のデュエルクイーン率いるチームディスティニー!!』
その名が呼ばれた瞬間は、アリーナまで激震が走るような暴風のような歓声があちこちから上がった。
中央ステージから現れた3名のデュエリスト。
ロングの黒コートを靡かせて美しい髪を揺らす。
クイーン。
その名称が指し示す唯一のデュエリスト。
『以上の40チームが各地のデュエルスタジアムで大激突することになる!! それでは、今一度、このWSGの概要を説明するぞ!!」
モニターは再び映像を切り替えて『World Standing duel Classic!!』と表示される。
『WSC本戦も予選同様、3対3のチームデュエル!! ファースト、セカンド、ラストプレイヤーの順に勝ち抜き形式でデュエルを行い、先にラストプレイヤーを下したチームが勝利となる!! そして、この大会を制したチームは正真正銘、世界最強のデュエルキングスの栄誉が送られる!! つまり、世界で最も強いデュエルチームを決める戦いなのだァァァァァ!!』
毎年同じ説明。
しかし何度聞いても新鮮だと思わせるのはマイクパフォーマンスの成せる技か。
『それでは、そんな熱き戦いの幕を開ける開会の宣言を行うぞ!! その重役を担うのは、もちろんこの方!! 最強のデュエルチーム! チームディスティニーリーダー! デュエルクイーンだァァァァァァァァァァ!!』
カツコツと革靴の音をあげなからクイーンは歩く。
誰もが目を奪われる流れるような所作。
登壇するとクイーンはばさりとコートを翻させた。
クイーン『戦場に集いし熱きデュエリスト諸君!この無敗のクィーンを打倒するもの誰ぞある!! 貴様たちの魂と洗練された戦術、大いに期待するぞ!!』
肌を刺激するような強い言葉の波動を感じる。
そう錯覚させるような何かをクイーンは発した。
クイーン『民衆よ!! 我々のデュエルはいわば神聖な儀式!! 刮目し、眼に焼き付け、その鼓動を高めるがいい!! 今、ここに! WS C本戦の開会を宣言する!!』
声高に声を上げ、クイーンは天に向けて右手の人差し指をあげる。
注目せよと。
ここに立てと。
倒してみせろと。
言わんばかりに。
ここのせ「くっ、すげぇ迫力だぜ!!」
良平「ああ、見ただけで強いってわかる……!」
祭乃木「あれが、デュエルクイーン……!」
登壇しどのチームよりも高い場所から見下ろすクイーンを亜美はアリーナから睨みつけていた。
その邂逅は全ての戦いの始まりであった。
◾️後編へと続きます。
◾️余談
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