遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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お盆休みなので早めに投稿します。


17話「開幕! WSC本戦!」後編

 

開会式が終わり、会場では今大会のイメージソングを歌っているアイドルのパフォーマンスが繰り広げられていた。

選手はその間に会場を移動して式典に参加する手筈になっている。

ヒーロー部の5人は恵を先頭にしてオズオズと歩いて行く。

式典の会場となる超高級ホテルーーグランドプリンスホテルに向けて。

 

恵「……こっち」

 

祭乃木「凄いわね、恵。ホテルの住所言ったら案内してくれるなんて」

 

ゆき「迷わず進んでますねぇ」

 

ここのせ「一家に一台恵ナビ、だな」

 

良平「家電じゃないんだから」

 

ここのせ「でもデュエルロイドだろ?」

 

ゆき「それって家電なんでしょうかぁ……?」

 

つつがなく突き進んでいく恵の背を追いながら会話する。

恵はというと表情を変えるでもなく、振り返るでもなくただ歩くのみ。

やがて見慣れぬ高層の建物の前で足を止めるとようやく身体ごとこちらを向いた。

 

恵「……到着……」

 

祭乃木「ありがと! ……って……」

 

亜美は言葉を失った。

見上げてみると首が痛くなるような高さ。

さらに奥行きもとんでもなく、ロビー前の車寄せには黒の高級車が何台も止まっていた。

 

ゆき「はわわ……!」

 

良平「でっかー……」

 

 

[高級ホテル グランドプリンスホテル ラウンジ]

 

中に足を踏み入れるとまずは香るフレグランス。

頭上に輝くシャンデリアにオブジェクトなのか謙虚な壺が並んでいる。

そして、こちらが何かする前にホテルマンが「いらっしゃいませ」と深々頭を下げてきた。

明らかに庶民的なホテルと異なる対応にゆきは亜美に半ば飛びつくように耳打ちする。

 

ゆき「さ、さ、祭乃木さん……! ドレスコードってせ、制服で大丈夫なんですよね……!?」

 

祭乃木「そ、そのはずよ……! ね、良平!?」

 

良平「そうだと思うけど……」

 

ここのせ「昔親の知り合いの結婚式には制服で連れてかれたから多分あってるはずだぜ。ただ、こんなスゲェホテルでも通用すんのかは知らねぇけどな」

 

恵「……?」

 

4人は塊になってヒソヒソと話すので取り残された恵は小首を傾げていた。

するとホテルマンが「お客様」とその塊に向けて声を出した。

 

「WSC本戦参加チームの方ですね。念のため、選手票を拝見いたします」

 

祭乃木「は、はい!」

 

代表して亜美は首から下げてるケースを見せる。

そこには選手票が収納されていて、チームHEROの名が刻まれている。

 

「確認いたしました。チームHERO様御一行ですね。こちらへどうぞ」

 

祭乃木「よ、よし! みんないくわよ!」

 

ゆき「はぅ〜、今日だけで一生分、ドキドキしてる気がしますぅ……」

 

今度は亜美を先頭に恐る恐るホテルマンについていく。

赤い絨毯を踏んで二つめのシャンデリアを潜った先に一際大きな観音開きのドアを引くと奥には再び巨大な空間が広がっていた。

 

丸いテーブルがいくつも並び、中央の四角いテーブルにはデカンタに入った様々な飲み物や高級スイーツに高級食材がずらりと用意されている。

 

ゆき「わぁぁ……!」

 

良平「うぉぉ……、す、すごっ……!」

 

ここのせ「おいおい……! ターキーレッグなんて遊園地以外で食っていいのか……!?」

 

「会場内の食べ物飲み物は全てバイキング形式となっております。式典が始まるまで、ご自由にお召し上がり下さい」

 

祭乃木「はい!」

 

亜美が返答するとホテルマンは一礼して去っていく。

再び式典会場を見渡して良平は声を出す。

 

良平「立食って言ってたけど、一応席があるんだね」

 

ここのせ「適当に座っていいのか?」

 

恵「……席がある……」

 

ゆき「へ?」

 

恵「……あそこ……」

 

恵は式典会場の一角を指差した。

席の上のプレートにはチームHEROと書かれている。

 

骨つき肉。

フカヒレ。

キャビアのせフォアグラ。

などなど。

普段、手に取るどころか目に入ることすらない食べ物。

自分たちのテーブルに運ぶと亜美は大きく口を開けて肉に齧り付いた。

 

祭乃木「あーん」

 

口に入れた瞬間、ジュワリと甘みの強い脂が溢れ旨みが広がる。

亜美は咀嚼し飲み込むと目を見開いた。

 

祭乃木「ウマッ!? 何これ!?」

 

ゆき「すごいですぅ……! あむっ! おいひいですぅ!」

 

ここのせ「……こんなもん食ったら今後購買の弁当食えなくなりそうだぜ……!」

 

良平「一生に一度あるかないかだなこれは……。それにしても、俺たち浮いてるなぁ、やっぱ」

 

顔をあげて周りを見てみると他のチームは、他の卓に座って歓談していてほぼ全員がスーツやドレスを着用している。

顔つきも幼い人間はいない。

 

ここのせ「だいぶ人も集まってきたな」

 

ゆき「他のチームは、ほとんどみんな大人の人ですねぇ……」

 

祭乃木「でも、アタシたち以外も高校生いるじゃない」

 

ここのせ「アカデミアだろ?」

 

祭乃木「それもそうだけど、ほら、アタシたちと同じブロックの」

 

良平「ああ、チームユニオン、だっけ」

 

良平は開会式の電光掲示板を思い返す。

ABCとVWXYZに分かれた8つのブロック。

ヒーロー部と共にCブロックに組み込まれたチームである。

 

ここのせ「あ、そうか、忘れてたぜ。アカデミア以外の高校生がこんなに出場するってのは珍しいんじゃねぇのか?」

 

良平「高決連のチームって言ってたね」

 

ゆき「高決連って何ですかぁ?」

 

聞き慣れぬ単語にゆきは首を傾げる。

するとすぐに恵が答えた。

 

恵「……公益財団法人日本高校デュエル連盟の略称。地理的にデュエルアカデミアから離れている各地の高校にデュエル部を設置するなど、デュエルモンスターズの門戸を開くことを目的とした団体……」

 

ゆき「へぇ、そんなのがあるんですねぇ」

 

ここのせ「ま、ネオ童実野シティは高決連の活動の範囲外だからな。馴染みがねぇのさ」

 

良平「そもそも、ネオ童実野シティにデュエル部がある高校は童実野高校くらいだからね。まぁ童実高は不良が多すぎて碌に活動もしてないらしいけど」

 

祭乃木「で、その高決連のチームがアタシたちの最初の相手なわけでしょ」

 

ゆき「そ、そうなんですかぁ……!?」

 

祭乃木「え、開会式でトーナメント表出てたじゃない」

 

ゆき「ご、ごめんなさい……。開会式はドキドキしすぎて話があんまり頭に入ってこなくて……」

 

良平「うん、まぁわかるよ」

 

祭乃木「多分アタシたちと同い年くらいでしょ? どんな奴らなのかしら?」

 

ここのせ「この会場にいるんなら、挨拶くらいしておきてぇところだな」

 

良平「いるんじゃないかな。相手も制服だろうし、探しやすいはずだよ」

 

祭乃木「うーん……」

 

辺り見回してみるも先程から変わらずそれらしい人物群はいない。

と思いきや亜美たちがはいってきた扉が再び開く。

そこから3名異なった制服を着た高校生が入ってきた。

 

ここのせ「おっ、あれじゃねぇか?」

 

ゆき「見たことない制服ばかりですねぇ」

 

祭乃木「ねぇ!」

 

不意に亜美はガタッと椅子を鳴らして立ち上がり、その一群まで駆けていく。

 

良平「あ、ちょっ、祭乃木!」

 

他のメンバーも彼女を追って席を立った。

 

祭乃木「アンタたち、チームユニオンでしょ?」

 

??「なんだぁキサマァ」

 

詰襟にリーゼントの男が亜美をにらみつけながら声を荒げる。

 

???「こら、やめないか!」

 

隣に立つ肌色のブレザーの制服の男子生徒が、リーゼントの男を制するように肩を掴み下がらせると人のよさそうな顔で頭を下げた。

???「ごめんね、彼、気が立ってるみたいで……。えっと君たちは、チームHERO、かな?」

 

祭乃木「そうよ! アタシは亜美! 祭乃木亜美! チームHEROのリーダーよ!」

 

???「君があのヒーロー使いの! 僕は井ノ神。一応、チームユニオンの主将を務めさせてもらってる」

【優し気なチームユニオンリーダー 東北代表 井ノ神裕】

 

温和な雰囲気を漂わせている肌色のブレザーの制服--井ノ神裕はにこりと笑った。

それから下がらせたリーゼントの男を手でさして紹介する。

 

井ノ神「こっちは奥安くん」

 

奥安「チームHEROだかなんだか知らねぇが、てめぇらなんざ、俺様の拳で一撃よ!!」

【喧嘩早いリーゼント男 東海代表 奥安拳士】

 

祭乃木「ほぉ、アンタ中々生きがいいじゃない! で、そっちは?」

 

二人の男子生徒の後ろ。

一回り程低い慎重に腰まで伸びた癖毛の黒髪。

制服は深緑色のブレザー。

両手で携帯ゲームを操作していてこちらをちらとも見ない。

 

井ノ神「ああ、彼女は時松さん。ゲームが好きみたいで、ずっとゲームしてるんだ」

 

時松「…………」

【髪ボサボサゲーム女 北海道地方代表 時松もこ】

 

ゆき「ほんとにずっとゲームしてますねぇ」

 

ここのせ「あんな奴でも代表なんだろ? 」

 

祭乃木「こら、ここのせ! 失礼でしょ! ほら、アンタたちも挨拶しなさい!」

 

ここのせ「へーい。……オレは能瀬心、略してここのせだ。よろしく」

 

ゆき「間宮ゆきですぅ! チームHEROのベンチウォーマーです!」

 

良平「日和田良平です」

 

恵「……ルイン恵……」

 

井ノ神「能瀬くんに、間宮さん、日和田くん、レインさんだね。ごめん、僕たちの他にもう一人いるんだけど、監督と一緒に挨拶しに行っててさ」

 

そんな会話をしていると、また入り口の扉が開きスーツを着た男性が「おーい、全員、集合!」と手招く。

 

井ノ神「あ、はい! ごめん、行かなきゃ! みんないくよ!」

 

奥安「仕方ねぇな……」

 

時松「……」

 

三人は特にお互い会話することなく歩いていく。

 

ゆき「……行っちゃいましたね」

 

祭乃木「うーん、思ったよりドライな連中ね。もっと運動部みたいな感じかと思ってたわ」

 

良平「顧問の先生に呼ばれたりしてるのは、ザ・部活って感じだけど」

 

ここのせ「まぁ、しゃあないんじゃねぇか? アイツら連合チームだろ? 高校も地域すら違う連中だからな、あんまり友達って感じじゃねぇんだろうな」

 

恵「……しかし、実力は折り紙つき……」

 

良平「たしかに、各地のデュエル部の代表だし、侮れない相手だ」

 

ゆき「油断は禁物、ですね!」

 

それから席に戻ろうと踵を返しかけたところで会場がざわざわと騒がしくなった。

亜美は足を止めて周りを見る。

 

祭乃木「ん? 何かしら?」

 

良平「なんか急にザワザワし始めたな……」

 

「クイーンが来たらしいぞ……」

「最大の優勝候補か……」

 

他の卓では額を寄せ合ってヒソヒソと話している。

耳をそばだてるゆき。

 

ゆき「クイーン……? も、もしかして……」

 

刹那。

会場にガチリと音が響く。

奥から革靴が床を踏む音に誰もが視線を向ける。

夏を感じさせない黒のロングコートに美しい長髪。

女性である。

故にクイーン。

 

クイーン「……」

 

その後方に並ぶは二人の男。

片方は、薄い青色の髪を後ろで括っている。

白い服に肩と襟首に黄色い線が入った服。

チームディスティニーメンバーのアバンスという男だ。

 

アバンス「……」

 

もう片方も青みがかった髪を短く刈り上げて、青いアロハシャツに黒い短パンを履いた浅黒い肌の男性。

チームディスティニーの絵草霜である。

 

絵草「……」

 

彼ら三人こそ、今大会のZブロックに立ちはだかる8強。

最強のチームであった。

ここのせは口角をあげて呟く。

 

ここのせ「……おいでなすったぜ、クイーンがよ」

 

良平「開会式でも見たけど、やっぱオーラがハンパないな……」

 

祭乃木「……デュエルクイーン……。アタシと同じ、ヒーロー使い……」

 

亜美は流れるように長髪を揺らし視線を浴びながら歩くクイーンを睨みつけた。

一方のクイーンは視線に捕らわれることなく悠々と己の歩みを続ける。

すると不意に卓の一角から銀髪の外人男性が駆け寄りクイーンの前に立った。

 

「Hei! 〜〜〜!」

 

英語でペラペラと話しかけ、やや大袈裟な身振りをみせた。

と思うと後ろから青い髪のこちらも白人らしき女性が慌てて走っていき銀髪の男性の頭を叩く。

続いて茶髪の外人男性と金髪の女性も歩み寄りクイーンに言葉をかけていた。

クイーンは難なく英語を返して会話している。

 

恵「……」

 

ゆき「わぁ、英語で喋ってますぅ……!」

 

良平「流石デュエルクイーン……。海外遠征なんかも多いだろうしなぁ……」

 

ここのせ「あの外人たちもチームはなんだろうな」

 

恵「……彼らはチームラグナロク。北欧予選を勝ち抜いたチーム……」

 

恵が答えると、スピーカーからブッとスイッチが入る音がして声が流れ始めた。

 

『それでは時間になりましたので、式典を始めさせていただきます。皆さま、一度、ご着席ください』

 

閑話は休題となり、卓に着く。

壇上にはマイクが置かれていて横に司会者用の教卓がある。

 

「皆さま、会場にお集まりいただき誠にありがとうございます。これよりWSG本戦の記念式典を開催いたします。まず始めに、開催地となったネオ童実野シティ長官よりご挨拶をいただきます」

 

背後のモニターには話した内容らしきものが英語字幕で流れている。

亜美たちの前後の卓には明らかに日本語ではない言葉が飛び交っていてまさにワールドワイドな大会であることを実感させられる。

 

「ワールドスタンディングデュエルクラシックの開会式を行いましたメモリアルスタジアムは、かのネオ童実野シティ大災害から完全に復興したことを記念して建てられました。そのメモリアアルスタジアムで〜〜〜」

 

亜美は名前を忘れてしまった長官がツラツラと話すのを聞き流していたが視界の端でゆきがキョロキョロとしているのが見えて小声を出す。

 

祭乃木「……どうしたの?」

 

ゆき「あ、い、いえ……! 別に……」

 

祭乃木「何か探してる?」

 

ゆき「い、いえ……。ただ、チーム煉獄の方と鉢合わせたら、ちょっと気まずいなと思って……」

 

そう言ってゆきは眉を八の字にして笑う。

 

ここのせ「確かにな……。しかし、連中の姿が見当たらねぇぜ?」

 

祭乃木「参加は強制じゃないけどさ。レギュレーションの説明なんかもあるのに、参加しなくていいのかしら?」

 

良平「まぁでも、変に鉢合わせるよりかは良かったと思うな」

 

ゆき「は、はい……。実は私もちょっとだけ安心しちゃいました……」

 

「ありがとうございました。続きまして……」

 

…………

……

 

「以上をもちまして、記念式典を終了いたします。この後、17時までご自由にご歓談いただけます。それでは、短い時間ではありますが、どうぞ最後までお食事など、お楽しみ下さい」

 

いつの間にかお偉方の話が終わっていたらしく、他の卓では足早に帰るチームや酒を取ってきては次々に飲んでいくチームも見えた。

 

良平「だってさ、どうする?」

 

ここのせ「せっかく高級食材にありつけるんだ。腹いっぱい食わねぇと損だぜ」

 

良平「卑しいなぁ」

 

祭乃木「でも、一理あるわ。ちょっと遅いけど、昼ご飯の面もあるわけだし、もう少し食べてから帰りましょ!」

 

空になってしまった取り皿を掴んで立ち上がる亜美。

その背後にそろりと近づく人影一つ。

 

「あのぉ〜! ちょっとよろしいですか〜!?」

 

ゆき「ひゃっ……!?」

 

ここのせ「うおっ! な、なんだお前は!?」

 

ゆきは肩を跳ねさせてここのせは半立ちで警戒する。

見るとそれは半袖の白シャツにウェーブのある茶色のセミミドルの髪。

首から下げた一眼レフを両手に携えた少女だった。

 

???「あっはっはっ! 失礼! 私、こういう者でーす!」

 

少女は舌を出して頭をかくと名刺を差し出してきた。

 

祭乃木「なになに……? 高校生新聞フォーカスフォース 記者 とおき とうか……?」

 

冬華「そう! 高校生新聞フォーカスフォース! 読んだことあります??」

【高校生新聞記者 遠木 冬華】

 

良平「無いなぁ」

 

冬華「うーん、残念!」

 

ゆき「あ、でも図書室に置いてありますよね。一度だけ読んだことがあります」

 

冬華「おっ、読者はっけーん! その新聞の記事にあなたたちのことも書きたいと思いまして〜! 今回は高校生が大活躍の大会なんで! 是非インタビューさせて下さい!」

 

祭乃木「そういうことね! いいわよ!」

 

冬華「どもー! では、まず! この大会への意気込みを聞かせてください!」

 

祭乃木「そうね、アタシたちヒーロー部は今、学校に認められていないの。だから、実績を残して認めさせてやるわ! いけるところまで勝ち上がる! 目指すは優勝! これがアタシたちの意気込みよ!」

 

冬華「なるほど! 熱い気持ちを感じますね! では、次に、チームHEROは初出場にしてあのネオ童実野シティ予選を勝ち抜きました。強さの秘訣は一体なんでしょうか?」

 

祭乃木「うーん、何かしら? なんだと思う?」

 

亜美は腕を組んで振り返る。

そこには当然ヒーロー部の面子。

 

ここのせ「正直、デッキパワーはチームツンドラに完全に負けてたからな」

 

良平「そうだね、間宮が場を整えてくれなかったら、サイバー流に良いようにされてただろうからなぁ」

 

ゆき「そんな……! あの時は必死でしたし、皆さんのアドバイスがなければ、何もできずに負けてました……」

 

恵「……」

 

四者四様の表情と感想。

しかし亜美はニッと笑い、冬華に向く。

 

祭乃木「ま、つまり! アタシたち一人一人は大した力はなくても、力を合わせれば最強ってことよ!」

 

冬華「ふむ、なるほど……」

 

亜美の言葉をメモにしたためると再び顔をあげる。

 

冬華「さて、次の試合は注目の高校生対決ですね! どのような順番で戦うか決まってますか?」

 

祭乃木「まだ決めてないわ。チームユニオンのことを調べてからじゃないとね」

 

冬華「ふむふむ。ちなみに、ネオ童実野シティ予選は間宮ゆきさんが先発でしたが、いつもそうなんですか?」

 

ゆき「い、いえ! 私はベンチウォーマーです!」

 

水を向けられたゆきは必死に両手を振って否定する。

 

ここのせ「基本選出は良平、オレ、祭乃木の3人だからな」

 

冬華「そうなんですね! ちなみに、えっと能瀬心さんはどんなデッキなんですか?」

 

ここのせ「そいつは見てからのお楽しみだぜ!」

 

良平「一言で言えないだけでは?」

 

ここのせ「悲しいことを言わないでくれ」

 

冬華「ふむふむ、だいたいわかりました! では、記事になったら、また高校に記事を送りますね! では!」

 

メモをパタンと閉じて冬華は作ったような笑顔を浮かべたかと思うと手を上げて走っていった。

そのまま入り口まで走って会場を出て行ってしまった。

 

ゆき「なんだか嵐のような方でしたねぇ」

 

祭乃木「うん。それにインタビューってのは、あんまり慣れないわね。……さ、じゃあ満足するまで食べたら帰りましょ! で、帰ったら作戦会議よ!」

 

…………

……

 

[ネオ童実野シティ 高層タワーマンション 恵の部屋]

 

恵「……どうぞ……」

 

タワーマンションの23階の部屋を恵は開けて、目配せする。

相変わらず殺風景な部屋に5人は入り込んでポツンと置いてある机の側に座った。

 

ここのせ「だぁぁぁぁ、疲れたぁぁぁ」

 

良平「ふぅ……、飯はうまかったけど、肩こるな。一生に一度でいい……」

 

祭乃木「こーら、男ども! ヘタってる場合じゃないわよ! アタシたちの試合は明後日! 作戦会議よ!!」

 

ゆき「全国のデュエル部代表の方々……。どんなデッキを使ってくるんでしょうか……?」

 

祭乃木「恵! 調べられる?」

 

恵「……当然……」

 

すでに起動させていたパソコンに手を伸ばし恵はカタカタとキーボードを打ち込む。

 

祭乃木「あ! ハッキングはダメよ!」

 

恵「……ん……」

 

ゆっくり頷く恵。

次々と画面が推移していく。

 

恵「……日本高校デュエル連盟選手権大会の記事が散見される。該当地域の記事をピックアップする……」

 

素早くパソコンを操作し画面にいくつかのタブを表示した状態で恵は振り向いた。

 

恵「……チームユニオンのメンバーの関連記事を表示した……」

 

祭乃木「見せて!」

 

亜美は恵の肩に手を置いてズイと画面に顔を近づけた。

PC画面には『高決連選手権大会 東北大会。優勝は東北桐蔭デュエル部!』と書かれている。

 

祭乃木「……東北桐蔭高校……ふーん、あの井ノ神ってやつは東北の人なのね」

 

良平「使用デッキはセイクリッドか。いいデッキ持ってるなぁ」

 

それから別のタブを開く。

今度は東海学院高校と書かれた記事で奥安拳士と拘束具をつけたモンスターが写っている。

 

ここのせ「こっちは、あのリーゼント野郎か。写真暑苦しいな……。思いっきりモンスター写ってるし」

 

ゆき「なんていうモンスターなんですかぁ?」

 

良平「これは……リードブロー、かな」

 

祭乃木「リードブロー? じゃあ、BKってことかしら」

 

ここのせ「イメージ通りだけどよ……」

 

ゆき「えーっと、あれ? 時松さんのことが書かれてませんね」

 

恵「……インタビュー、写真掲載NGとのこと……。使用デッキも不明……」

 

良平「それに、あと一人いるって言ってたけど、わからないな……」

 

祭乃木「けど、二人のデッキは割れたわ! とりあえず、作戦を立てていくわよ!」

 

ゆき「誰が最初に出てくるんでしょう……?」

 

良平「BKもセイクリッドも先発行けそうだけど……。でも個人的にはBKが来そうな気がするな」

 

ゆき「どうしてですか?」

 

良平「BKは硬いし打点もあるからさ。切り込み隊長には良さそうな気がするんだ」

 

ゆき「なるほど??」

 

ここのせ「オレも同感だぜ。あの野郎、相当喧嘩っぱやかったしな」

 

祭乃木「そうね。アタシもそう思うわ。じゃあ先発はBKとして、こっちはどうする?」

 

良平「うーん。偉そうに色々言ったけどBKとデュエルしたことはないんだよな。カードカタログで効果は知ってたけど……」

 

ここのせ「周りにあんな暑苦しいやつ居なかったからな」

 

祭乃木「確かBKのエースモンスターは、破壊耐性があるのよね」

 

良平「それに破壊されるたびにパワーが上がっていくモンスターだ」

 

ゆき「恐ろしいモンスターですぅ」

 

ここのせ「幻獣機だときつそうか?」

 

良平「どうかな……。幻獣機も戦闘には弱くないけど、パワーで押し切られるときついかもな……」

 

祭乃木「うーん、効果破壊せずに倒すとなると……。ここのせのエンプラくらい?」

 

ゆき「あと、恵さんのデッキにもそういうカードありますよね?」

 

恵「……ドーハスーラのこと……?」

 

ここのせ「とすると、オレか恵が先発か?」

 

恵「……しかし、私のデッキは……」

 

祭乃木「大丈夫よ、恵。しっかり工夫すればアンデットワールドはチーム戦では強いと思うわ! ただ、アタシとしては恵は温存しておきたいのよね」

 

良平「たしかに、恵はこれまで一度も選出してないからな。急にアンデットワールドが飛んできたら、かなり意表がつけるね」

 

祭乃木「そ! だから恵は一番有効な時に出したいのよ!」

 

ゆき「恵さんは、私たちの秘密兵器、ですね!」

 

恵「……そう……」

 

ここのせ「じゃあ先発はオレがいくぜ」

 

良平「なら俺は次鋒だね」

 

祭乃木「そして、アタシがラストね!」

 

ゆき「精一杯応援します!!」

 

恵「……ん……」

 

外から入る夕陽が揺れて5人の影がフローリングに映し出す。

来るべき決戦の日に向けた作戦が決定した瞬間であった。

 

[一方 ネオ童実野シティ ビジネスホテル 談話室]

 

ネオ童実野シティの駅前にあるビジネスホテルでは異なった制服の四人とスーツを着た男性がソファに座っている。

 

井ノ神「それじゃ、ミーティングを始めるよ」

 

奥安「おう」

 

時松「……」

 

井ノ神の一言に返事もせず、ピコピコと携帯ゲームをプレイする時松もこ。

教師が指をさして注意する。

 

教師「こら、ゲームをしまいなさい」

 

時松「……」

 

奥安「おいゲーム女! 明日勝つ気あるんだろうな!? 生意気にもアカデミアを倒しやがった連中だぞ!」

 

時松「気持ちなんてプレイングに関係ないし。とりあえず」

 

奥安「あぁ!?」

 

ガタンと席を立つ。

井ノ神は半立ちで手を差し向けて止めた。

 

井ノ神「やめろって! ……はぁ、ごめん、じゃあ明日の順番を決めるよ。新しい情報は何かある? ーーー遠木さん」

 

井ノ神はもう一度ソファに座ると隣の少女に声を掛ける。

少女は首からかけた一眼レフを触りながら答えた。

 

冬華「あんまり革新的な情報はないかな〜」

[高校生新聞記者 兼 チームユニオン所属 遠木冬華]

 

それからメモをパラパラと捲る。

 

冬華「ただ、チームHEROの基本選出は、幻獣機使いの日和田良平、星遺物カードを使ってくる能瀬心、そしてリーダーの祭乃木亜美の三人みたいだね! そして、強さの秘訣は仲の良さにあるんだそうだよ!」

 

奥安「仲の良さ? はっ、馬鹿かよ。信じられんのはてめぇの拳だけよ!」

 

井ノ神「まぁまぁ」

 

時松「それなら、その拳とかいうので倒して。それなら楽できるし、とりあえず」

 

奥安「女に挑発される謂れはないが、いいだろう!! 俺様が殴り込んでやる!」

 

時松「楽したいから、ラストやる」

 

井ノ神「じゃあ、セカンドは僕がやるよ」

 

冬華「みんな、ちゃんと活躍してね〜? フィルムガンガン使うんだからさ!」

 

爛漫な声が響き夜はふける。

街は静かに眠っていく。

 

…………

……

 

[ネオ童実野シティ メモリアルスタジアム]

 

二日の日が流れ、メモリアルスタジアムにはまた多くの人々が詰めかけていた。

モニターには

『WSCメインステージ! Cブロック第1試合!!』

『チームHERO vs チームユニオン』

と表示されていた。

 

異色な光景である。

高校生のデュエリストといえばデュエルアカデミア一択だ。

それ以外はアマチュアにもなれない素人。

それが一般常識てある。

しかしここに並ぶ2チームはどちらもアカデミアに非ず。

 

『レディィィィィィィスエーーンドジェントルメェェェェェン!!! 昨日に引き続き、このメモリアルスタジアムで熱い戦いの火蓋が切って落とされるゥゥゥゥゥゥ!!』

 

MCがマイクパフォーマンスを熱く読み上げる。

ワァッと会場が揺れた。

 

[チームHERO側 観客席]

 

ギターを調律する音やカチャカチャと旗を調整する音がする。

 

くるみん「滝村くん! もう少し左に傾けられるかい? あー、そうそういい感じ!」

 

男子生徒に向けて両手をメガホンのようにして声を出すくるみん。

そんな彼女の後ろにげんなりとした顔で立つ忠一。

タッパの良い体には詰襟を着せられている。

 

忠一「くるみんさん、俺のこの格好は何……?」

 

くるみん「応援といえば、詰襟! これはもはや正装なのさ!!」

 

忠一「左様で……」

 

もはや抵抗する気も起きぬ忠一はふとスタンドを見渡す。

 

忠一(まだまだ席はガラガラだな。相手は満席、か)

 

同じ高校生対決であったとしても、オッズは歴然。

無名の高校と大会実績のあるデュエル部の代表。

故に実力差は圧倒的と誰もが思う。

 

そんな世間の評価はそっちのけで。

メモリアルスタジアムの選手入場口にはヒーロー部ーーチームHEROは円になっている。

 

祭乃木「もうこの入り口も慣れっこね!」

 

ここのせ「オレ、めちゃくちゃ緊張してるぜ。先発ってこんなやばいんだな」

 

良平「わかる〜……」

 

ゆき「皆さん! せっかくなので、またやりましょう! 手を出してください!」

 

ゆきが笑顔で全員の顔を見回す。

 

祭乃木「よーし!」

 

良平「うん」

 

恵「……」

 

ここのせ「オレの緊張を吹っ飛ばしてくれ」

 

全員が手を真ん中に差し向けて重ねる。

 

ゆき「はい、では、祭乃木さん! お願いします!!」

 

ゆきに水を向けられた亜美は「んっん!!」と咳払いする。

そして重ねた手にぐっと力をいれる。

 

祭乃木「いい? 強気でいくわよ!! この大会のヒーローはだれ!!?」

 

ゆき「わたしたちです!」

ここのせ「オレたちだ!」

良平「俺たち!」

恵「……我々……」

 

祭乃木「そう!! ヒーローは誰にも負けないのよ!! さぁ、勝ちにいくわよ!!」

 

亜美の一際大きな掛け声に全員が呼応して声を上げ、拳を振り上げた。

そして入場ゲートから並んでアリーナへと出撃する。

 

『本日の試合はCブロック第1試合!! これもまた注目の1戦!! 前代未聞の日本の高校生対決!! 日本各地のデュエル部の代表チーム! チームユニオン対! 激戦区のネオ童実野シティ代表!! 奇跡のチーム! チームHERO!!』

 

耳をつんざくような歓声。

揺れる空気。

そして相対するチームユニオンとチームHERO。

中央に立つ主将、井ノ神が中央に立つ部長、祭乃木亜美に向けて声を出す。

 

井ノ神「高校生対決、負ける気はないよ」

 

祭乃木「それはこっちのセリフよ! ……って、ん?」

 

並んでいる相手メンバーに亜美は目を向ける。

首から下げた一眼レフ。

亜美は目を見開いた。

 

冬華「あ、見つかった」

 

祭乃木「あぁぁぁぁ!! アンタ! 新聞記者の!!」

 

ここのせ「て、てめぇ! チームユニオンだったのか!?」

 

冬華「あっはっはっ! まぁ新聞記者なのも嘘じゃないんだけどね〜」

 

良平「強かなだな……」

 

ゆき「マスコミってすごいですぅ……」

 

恵「……しかし大きな情報の流出は確認できていない……」

 

祭乃木「まぁいいわ! アンタ! アタシたちが勝ったら、一面記事にしなさいよ!!」

 

ビシリと音が出るような勢いで亜美は冬華に指を差し向けた。

 

冬華「あはは〜、わかったよ〜」

 

『さぁぁぁぁでは、両者デュエルスタンバイだァァァァァ!!』

 

閑話休題せよと言わんばかりにマイクパフォーマンスが入る。

亜美はここのせの背を叩く。

 

祭乃木「頼んだわよ! ここのせ!」

 

ここのせ「よぉし、いくぜ!!」

 

一方で、相手側からは奥安拳士が右手の拳を左手のひらに叩きつけながら前に躍り出た。

 

奥安「ふん、素人どもをのめしてやる!!」

 

井ノ神「頼むよ!」

 

『チームユニオンのファーストプレイヤーはァァァァァ! 炎の拳を持つデュエリスト!! 東海学院デュエル部、奥安拳士!! 対するは、チームHERO! 実力は未知! 星遺物のデュエリスト! 能瀬心ォオオ!!』

 

両者がデュエルフィールドの両端に立つ。

互いにデッキをセットし決闘盤を展開した。

 

ここのせ「てめぇが先発か、読み通りだぜ!」

 

奥安「素人どもが! アカデミアとの対決を阻んだ重み、拳に乗せて叩き混んでやらぁぁ!!」

 

『それではいくぞォオオォオオォオオ!! スリィィィィィ、ツゥゥゥゥゥゥゥ、ワァァァァァァァァン!! デュエルスタァァァァァァァァァァトォオオォオオ!!』

 

「「デュエル!!」」

 

両者カードを5枚デッキトップより加え前のめりに構える。

今ここにWSC本戦 Cブロックの第一回戦の火蓋が切って落とされた。




◆次回予告
寝る前決闘空間 第18話
『炎の拳、夜空に輝く星座の騎士団!』

◆あとがき
WSCは、現実世界のオリンピックとWBC(世界野球)と夏の甲子園をイメージしてます。
なので夏に投稿できて嬉しいです。

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