遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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第19話 「シューティングスター」前編

 

ネオ童実野シティ メモリアルスタジアムの楕円形は、ひさしを大きめに取った半ドーム型である。

上空から見えるこの楕円形の穴は、中央に四角く陣取った白線が支配している。

両端にはデュエリストが二人。

両端にはエースモンスターが二体。

向き合って火花を散らさんばかりの視線がぶつかりあっている。

フィールドの状況は以下の通り。

 

井ノ神裕

LP4000

手札:4

マジックトラップ:

伏せ1

セイクリッドの星痕

フィールド:

セイクリッド・プレアデス

 

日和田良平

LP4000

手札:3

マジックトラップ:

なし

フィールド:

幻獣機オライオン

幻獣機トークン

幻獣機ドラゴサック

 

 

ターンプレイヤーはチームHEROセカンドプレイヤー。

即ち、日和田良平である。

彼はやや茶色ががった短髪を揺らしながら握る手札を一瞥した。

間を埋めるようなマイクパフォーマンスを耳にしながら。

 

『どちらのフィールドにもエースモンスターが並んでいるぞォオオ!! 一体、どちらが勝ち上がるのかァァァァァ!!?』

 

 

 

寝る前決闘空間第19話

『シューティングスター』

 

 

良平は次に目線をずらしフィールドに浮かぶ自身の呼び出したエースモンスターを見上げた。

白と青のラインが入った巨大な軍用機ーー幻獣機ドラゴサックである。

 

良平「ドラゴサックの効果発動! 素材を一つ使って、フィールドに幻獣機トークンを2体生成する!」

 

良平の呼び声に応え、ドラゴサックはエアインテークをフル稼働した。

やがて分身するかのように半透明のプリズム機を二機を出現させる。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「さらに、もう一つの効果! 幻獣機トークンをリリースすることで、フィールドのカードを破壊する! 」

 

続け様に良平は効果を宣言した。

幻獣機トークン一体がキラキラと光に変わり、ドラゴサックの翼に集まっていく。

そしてそれらが空対地ミサイルへと姿を変えた。

轟音を轟かせドラゴサックは翼についたそれを射出する。

白煙がフィールドに一文字に描かれプレアデスに命中、爆発炎上した。

 

『ドラゴサックが放ったミサイルがプレアデスに直撃ィィィィ!! なす術なく破壊されてしまったぞォオオ!!』

 

良平「続けて、レベル3の幻獣機トークンにレベル2の幻獣機オライオンをチューニング!」

 

オライオンがいななき、身体を二つのシンクロリングへと変化させる。

半透明のプリズム機がリングに飛び込み三つの星へと調律された。

 

☆3+☆2=☆5

 

良平「シンクロ召喚! HSR-チャンバライダー!」

 

高く宣言し良平は白いカードをメインモンスターゾーンへ叩きつける。

現れたのは巨大な剣とそれをまるでバイクのように操る騎士であった。

 

HSR-チャンバライダー「ジャキィン!」

攻:2000 風 機械族 星5

 

良平「チャンバライダーは、攻撃宣言時に攻撃力が200アップする! さらに、1ターンに2回攻撃することができる! いくぞ! バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

『チャンバライダーの攻撃が全て通れば、チームユニオンの井ノ神裕は合計4600ポイントのダメージを受け、ワンショットキルが成立するぞォオオ!!?』

 

良平「いけ! チャンバライダー! ダイレクトアタック!」

 

HSR-チャンバライダー「シャァァ!」

攻:2000→2200

 

 

チャンバライダーが突進する。

目指すは相手デュエリスト。

自身の効果により攻撃力が上昇する。

 

井ノ神「リバースカードオープン! トラップカード、エクシーズ・リボーンを発動!」

 

しかし井ノ神は負けじとセットカードを発動した。

 

《エクシーズ・リボーン》

通常罠

 

井ノ神「このカードは、墓地のエクシーズモンスターを特殊召喚させ、さらにこのカードをエクシーズ素材とすることができる! 甦れ! セイクリッド・プレアデス!」

 

墓地ゾーンが光り、そこからモンスターが飛び出した。

白銀の騎士ーーセイクリッドのエースモンスターが蘇る。

 

セイクリッド・プレアデス「ハァァァア!」

攻:2500

 

『エースモンスターのセイクリッド・プレアデスが再びフィールドに現れたァァァァァ!!』

 

井ノ神「さらに、セイクリッドの星痕の効果で、カードを1枚ドローするよ!」

手札4→5

 

彼我の攻撃力の差は300。

チャンバライダーの攻撃ではセイクリッド・プレアデスは対処できない。

良平は手を振るって声を上げた。

 

良平「……攻撃を中止!」

 

主人の声にチャンバライダーはピタと止まり、自軍のフィールドへと引き返す。

フィールドの状況が変わったが故の攻撃の巻き戻しである。

 

ーメインフェイズ2ー

 

良平「メイン2! カードを1枚セットし、ターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

井ノ神「そのエンドフェイズ時、セイクリッド・プレアデスの効果発動! 素材を取り除き、ドラゴサックをバウンス!」

 

今度はプレアデスが銀剣を引き抜き、波動を乗せた剣撃を飛ばす。

翼が絶たれドラゴサックはフゴイド運動を繰り返しながら良平のEXデッキへと不時着した。

 

『蘇ったプレアデスの反撃だァァァァァ!! ドラゴサックはなす術なく、フィールドから消え去ったぞォオオ!!』

 

良平「くっ……」

 

日和田良平

LP:4000

手札:2

マジックトラップ:

伏せ1

フィールド:

幻獣機トークン

幻獣機トークン

HSR-チャンバライダー

 

[チームHERO側ベンチ]

 

効果の応酬。

切り札による交戦。

一連のターン推移を見てここのせは渋い声を出した。

 

ここのせ「井ノ神……。流石はチームリーダーだぜ。良平の攻撃をいなしやがった……」

 

恵「……アドバンテージ差も開いている……」

 

祭乃木「面白いやつね。さぁ、どう出るつもりかしら」

 

亜美は口角をあげてフィールドを眺める。

腕を組み、しかし良平が勝つことをひとときたりとも疑わない。

 

[デュエルフィールド]

 

ードローフェイズー

 

井ノ神「僕のターン!」

手札5→6

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

ドローカードを一瞥した後、カードを握り変えると井ノ神はメインモンスターゾーンへカードを置く。

 

井ノ神「セイクリッド・ポルクスを召喚!」

 

セイクリッド・ポルクス「はっ!」

攻:1700 光 戦士族 星4

 

井ノ神「セイクリッド・ポルクスを召喚したターン、通常召喚に加えて、もう一度セイクリッドモンスターを召喚できる! セイクリッド・シェラタンを召喚!」

 

セイクリッド・シェラタン「やぁっ!」

攻:700 光 獣族 星3

 

井ノ神「このカードは、召喚に成功したとき、デッキからセイクリッドモンスターをサーチできるよ! この効果で、セイクリッド・カドケウスを手札に加える!」

手札4→5

 

デッキから自動選出されたカードを抜き取り見えるように右手の人差し指と中指で挟んで絵柄を向ける。

そして、それを再びメインモンスターゾーンへ叩きつけた。

 

井ノ神「そのまま、カドケウスを特殊召喚!」

 

セイクリッド・カドケウス「ふぅんっ!」

攻:1600 光 獣戦士族 星4

 

井ノ神「セイクリッド・カドケウスはフィールドに他のセイクリッドモンスターがいる場合、特殊召喚できる! さらにカドケウスの起動効果発動! デッキからセイクリッド魔法ーーもう一枚のセイクリッドの星痕をサーチ!」

手札4→5

 

井ノ神「そして、今手札に加えたセイクリッドの星痕を発動!」

 

《セイクリッドの星痕》

永続魔法

 

井ノ神「さぁ、いくよ! レベル4のカドケウスとポルクスでオーバーレイネットワークを構築!」

 

☆4×☆4=★4

 

黒い渦に光が二つ。

それはまるで銀河のよう。

井ノ神は魂が叫ぶように口上を述べる。

 

井ノ神「ーー12の試練を超えた勇者よ、今ここにその輝きを現出せよ!」

 

しかして現れる。

さらなる星の騎士団が。

 

井ノ神「エクシーズ召喚! セイクリッド・オメガ!!」

 

セイクリッド・オメガ「はぁぁぁぁっ!!」

攻:2400 光 獣戦士族 ランク4

 

『ここで井ノ神、強力なエクシーズモンスターを呼び出したァァァァァ!!』

 

井ノ神「二枚のセイクリッドの星痕の効果がそれぞれ発動!」

 

chain1 セイクリッドの星痕

 

chain2 セイクリッドの星痕

 

井ノ神「それぞれカードを1枚、合計2枚のカードをドローするよ!」手札4→6

 

良平「名称ターン1じゃないのか……」

 

発動中のカードを見て良平は思わず声をこぼす。

井ノ神はニヤリと口角をあげて返答した。

 

井ノ神「でも流石に、ターン1はついているけどね。……さらに続けて、セイクリッド・プレアデス1体でオーバレイネットワークを再構築!」

 

★5→★6

 

再び黒い渦がプレアデスを包み込む。

 

井ノ神「ーー赤眼の蠍、空に輝く散開星団! 暗き世界を照らし出せ!」

 

カッと一筋の閃光。

やがて現れたの宇宙のような翼、白銀の龍。

 

井ノ神「エクシーズ召喚! セイクリッド・トレミスM7!」

 

セイクリッド・トレミスM7「ガァァァァァッ!!」

攻:2700 光 機械族 ランク6

 

しかし、まだ黒い渦は消えず。

白銀の龍すらも飲み込む。

 

井ノ神「さらに、セイクリッド・トレミスM71体でオーバレイネットワークを再構築!!」

 

★6→★7

 

井ノ神「エクシーズ召喚! 迅雷の騎士ガイアドラグーン!」

 

迅雷の騎士ガイアドラグーン「フゥゥッ! タァッ!!」

攻:2600 地 戦士族 ランク7

 

『連続エクシーズチェンジ!! しかし、攻撃はM7の方が高かったが、一体何をするつもりなのかァァァァァ!!?』

 

セイクリッド・トレミスM7の攻撃力は2700。

対する迅雷の騎士ガイアドラグーンの攻撃力は2600。

観客はただ攻撃力を下げただけと嘆息する。

 

良平(いや……)

 

しかし良平は、敵の狙いが低い守備力を晒している幻獣機トークンであることを見抜いていた。

 

井ノ神「ガイアドラグーンは、守備モンスターを攻撃したとき、そのダメージを貫通させる!」

 

良平「……」

 

井ノ神「バトル!」

 

井ノ神が拳を握りしめて宣言する。

呼応するように彼のフィールドのモンスターが各々の武器を構えた。

 

ーバトルフェイズー

 

井ノ神「いけ、ガイアドラグーン! 幻獣機トークンに攻撃!」

 

手を差し向けて井ノ神は叫ぶ。

迅雷の騎士が咆哮を上げながら突っ込んでくる。

良平は素早くマジックトラップの発動ボタンを押し込んだ。

 

良平「……速攻魔法発動! ドローマッスル!」

 

《ドローマッスル》

速攻魔法

 

良平「このターン、対象の幻獣機トークンは戦闘・効果では破壊されない! さらに、カードを1枚ドローする!」

手札2→3

 

井ノ神「だが、ダメージは受けてもらうよ!」

 

エフェクトがかかった半透明のプリズム機。

迅雷の騎士は構わずに巨大な螺旋状の槍を幻獣機トークンへと突き立てた。

弾き飛ばされた幻獣機トークンの翼が良平の肩を掠めていく。

 

良平「っ……!」

LP4000→1400

 

『日和田良平に大ダメージが入ったぞォオオォオオ!! チームHERO、またしてもピンチ!!』

 

幻獣機トークンは体勢を持ち直すと再びフィールドを旋回する。

それを尻目に井ノ神はさらにモンスターに檄を飛ばした。

 

井ノ神「追撃! セイクリッド・オメガでチャンバライダーに攻撃!」

 

今度はセイクリッド・オメガが蹄の音を立てて吶喊してくる。

やがてチャンバライダーに向けて光の矢を放ち、貫いてしまった。

バラバラになったチャンバライダーの破片が良平を切り裂いた。

 

良平「くっ……」

LP1400→1200

 

大ダメージに会場は一気に湧き上がる。

劣勢から優勢へ、流れはチームユニオンとスタンドは拍手した。

 

[チームユニオン側ベンチ]

 

冬華「ヒュー! やるじゃん、さっすがリーダー、だね〜!」

 

カメラで決定的な瞬間を切り取った冬華は口笛を吹いた。

ベンチに座り込んでいる時末もこも頬杖をついたまま声を出す。

 

時松「そのまま倒しちゃっていいよ、とりあえず」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

一方のHERO側ベンチではある種の衝撃をもってフィールドの光景を見つめていた。

 

ここのせ「あいつ、強ぇ……!」

 

ゆき「日和田さんがここまで一方的に……」

 

祭乃木「井ノ神のデッキ、かなりよくまとまってるわ……! アカデミアにいてもおかしくないくらいよ!」

 

全国のデュエル部の代表は伊達ではないとベンチメンバーは息を飲み込んだ。

 

[デュエルフィールド]

 

良平(……)

 

ダメージを受けきった良平は鋭く敵フィールドを睨む。

 

井ノ神「僕はこれで、ターンエンドだ!」

 

ーエンドフェイズー

 

井ノ神裕

LP:4000

手札:6

マジックトラップ:

伏せ0

セイクリッドの星痕

セイクリッドの星痕

 

フィールド:

セイクリッド・オメガ

迅雷の騎士ガイアドラグーン

 

ードローフェイズー

 

フィールドの状況と井ノ神の手札を見据え、良平は思案する。

 

良平(……あれだけ手札があってセットカードなし。となると、手札誘発を握っているか、そもそもバックが薄いかの二択)

 

これまでの展開を今一度思い返し、戦術を考える。

良平は相手のプレイングにあたりをつけた。

 

良平(セイクリッドは強力なエクシーズメインのデッキだけど、さっきまでのプレイングを見る限り、展開手段は基本的に"手札から"しかないようだ)

 

視線をずらし井ノ神のデュエルディスクーー否そこにセットされているデッキをみた。

 

良平(ということは、デッキの中はモンスターに比重を置いている可能性が高い。妨害手段もモンスターに拠っているのかも。手札誘発だけが怖いけど、無いならなんとかなるはず……)

 

思考は完了。

良平はデッキトップに手をかけてカードを引き込む。

 

良平「俺のターン!」

手札4

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

引いたカードをチラと見ると再びフィールドを睨む。

目に入れるのは迅雷の騎士。

 

良平(ガイアドラグーンを挿してるデッキに幻獣機トークンを下手に並べるわけにもいかないな……。とはいえ並べないと展開できないからケアの方法を考えながらやる必要があるか……)

 

良平「幻獣機テザーウルフを召喚!」

 

幻獣機テザーウルフ「ガルルルゥ!!」

攻:1700 風 機械族 星4

 

良平「テザーウルフは召喚時、幻獣機トークンを作り出す!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「幻獣機トークン2体とテザーウルフをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、機械族モンスター2体以上!」

 

←機械族+↓機械族+↘︎機械族 = LINK3

 

リンクサーキットから出力されたのはプリズムを纏う黒い軍用機。

 

良平「舞い戻れ! アウローラドン!」

 

幻獣機アウローラドン「Aurora takeoff」

攻:2100 風 機械族 LINK3

 

良平「アウローラドンのリンク召喚時の効果発動! フィールドに3体の幻獣機トークンを呼び出す!」

 

アウローラドンが光り効果を発揮する。

次々と半透明のプリズム機が発艦していくが井ノ神はこれを苦い顔で見つめるのみ。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

 

井ノ神「くっ……」

 

良平「よし、通った……! 手札から速攻魔法、緊急発進を発動!」

 

手札からカードを引き抜き、マジックトラップゾーンに差し込む。

すぐに反応し、フィールドにソリッドビジョンのカードが回転し表示された。

 

 

《緊急発進–スクランブル》

速攻魔法

 

良平「フィールドのトークン以外のモンスターの数が相手より少ない場合、幻獣機トークンをリリースすることで、その数の幻獣機をデッキから特殊召喚できる! 幻獣機トークン3体をリリース!」

 

幻獣機トークン三機が光を放ちながら上空に登っていく。

 

良平「こい、メガラプター! コルトウィング! ハムストラット!」

 

上空でインメルマンターンで三機が地上に戻ってきたかと思うと全機が姿を変えていた。

 

幻獣機コルトウィング「α2 landing」

攻:1600 風 機械族 星4

 

幻獣機メガラプター 「α1 landing」

攻:1900 風 機械族 星4

 

幻獣機ハムストラット「チュー!」

守:1600 風 機械族 星3

 

良平「コルトウィングは特殊召喚した時、幻獣機トークンを2体特殊召喚できる!!」

 

幻獣機トークン「ヒュゥゥン」

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン「ヒュゥゥン」

守:0 風 機械族 星3

 

一瞬にしてフィールドに幻獣機がトークン含めて5体が現れ、フィールドに睨みを効かせた。

 

『ななななんという展開力だァァァァァァ!! あっという間に、日和田良平のフィールドが戦闘機で埋め尽くされたぞォオオォオオ!!!?』

 

井ノ神は背中にひやりとした汗を感じる。

対し観客席は逆転の狼煙に一気に湧き上がった。

 

[メモリアルスタジアム観客席]

 

そんなメモリアルスタジアムの観客席の前線。

どちらの側にも属さぬ中間に位置する席のフェンス前。

ポップコーンが一つ宙に舞い、それが金色の髪を片側だけ団子にした少女の口に入っていく。

彼女がーー彼女たちが着ているものは青い制服。

彼女を含め五人の少女が横並びに座っている。

 

神川「ん〜! Delicious! やっぱpopcornはバターマシマシが最高ネ!ツァンも食べる?」

 

ポップコーンを食べた少女ーー神川 ノエル 美優が隣に座る短髪の少女ーーツァン・ディレに向けて山盛りのバケットを差し出した。

ツァンは眉を顰めて首を振る。

 

ツァン「ちょっと何それ……そんな高カロリーなもの、よく食べられるね……」

 

ツァン・ディレの隣に座るおかっぱでメガネをかけた少女ーー林原麗華が目を向けずに口をあける。

 

麗華「太りますよ」

 

神川「No problem! ワタシ、食べても太らない体質なの!」

 

ツァン「……今、キミはボクを敵に回したよ」

 

弾けるような笑顔の美優にむけて ツァンは軽く頬を膨らませた。

するとさらに二つ隣から鋭い声が飛んできた。

 

唯信「おい、うるさいゾ、観戦の邪魔をするナ!」

 

こちらも目をフィールドから離さずに黒い長髪の少女ーー金 唯信がピシャリと言い放つ。

そんな様子に一番端に座っていた紫色のツインテールに長い足の少女ーー藤原雪乃が口元に手を当てて笑った。

 

ツァン「あ……ご、ごめんなさい」

 

雪乃「あら、金さん、随分とお熱なのね、カ・レ・に」

 

唯信「コロすゾ」

 

雪乃「もう、冗談よ。でも熱心に見ているのは本当のことでしょう? 」

 

唯信「次に会ったとき、息の根を止めるために奴の戦略を分析していただけダ」

 

神川「ユシンがそこまでするのは珍しいわネ! でも、確かに見応えがあるわ!」

 

ツァン「日和田良平……。妨害をものともしないフィールドをコントロールするプレイング……。認めたくないけど、やっぱりアイツ、強い……!」

 

神川「リョーヘイのフィールドをコントロールする戦術に、アドバンテージを堅実に稼ぐイノカミ! アカデミア上位レベルの戦いだワ!」

 

麗華「あのようなデュエリストがアカデミア以外にいるなんて、信じられません」

 

雪乃「チームHEROはともかく、あの井ノ神ってボウヤは、デュエル部の代表でしょう? あんなに実力もエナジーもあるならどうしてアカデミアにこなかったのかしら?」

 

雪乃は整った眉を寄せてフィールドに立つデュエリストを眺める。

目で追うように再び全員が激動のフィールドへ目を向けた。

 

[デュエルフィールド]

 

呼び出したモンスター全機を見渡した後、良平は手を振るって宣言する。

 

良平「ハムストラットの効果発動! フィールドのトークン1体をリリースすることで、墓地の幻獣機を特殊召喚できる! こい! オライオン!」

 

ハムストラットはゆっくりとバンクを振る。

幻獣機トークンはゆっくりと光に包まれ、姿を変えた。

 

幻獣機オライオン「オライラーイ!」

守:1000 風 機械族 星2 チューナー

 

現れたモンスターを見て井ノ神は小さく、チューナー、と呟く。

果たせるかな良平はさらに展開する。

 

良平「レベルが6となったハムストラットに、レベル2のオライオンをチューニング!」

 

シンクロリングに包まれ調律されていく。

 

☆6+☆2=☆8

 

カッと一閃。

良平はEXデッキからカードを抜き取りフィールドに呼び出した。

 

良平「シンクロ召喚! スクラップ・ドラゴン!」

 

スクラップ・ドラゴン「ガァァァァァァァァァァァッ!!」

攻:2800 闇 ドラゴン族 星8

 

良平「さらに、墓地に送られたオライオンの効果で幻獣機トークンを1体生成!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「さらに、メガラプターの効果発動! トークンをリリースし、デッキから幻獣機モンスターを手札に加えることができる! テザーウルフをサーチ!」

手札3

 

幻獣機トークンが消えてデッキより後続をサーチする。

これによりフィールドに残る幻獣機トークンは一機。

つまり幻獣機達のレベルは

 

幻獣機メガラプター

星10→7

 

幻獣機コルトウィング

星10→7

 

井ノ神「再びレベルが7に……!?」

 

良平「レベル7になったメガラプターとコルトウィングでオーバーレイ!」

 

☆7×☆7=★7

 

良平の願いに応え、黒い渦がばちばちと稲妻が走る。

そして再び幻獣機のエース機がフィールドに飛び立った。

 

良平「エクシーズ召喚! 回せ! 幻獣機ドラゴサック!」

 

幻獣機ドラゴサック「mission accepted」

攻:2600 風 機械族 ランク7

 

どよどよと会場が揺れる。

フィールドに佇むモンスターは4体。

幻獣機アウローラドン、スクラップ・ドラゴンに幻獣機トークン、そしてエース幻獣機ドラゴサック。

 

『圧巻!! 再び現れた幻獣機のエースモンスターに加え、強力なモンスターを2体、合計3体もの強力モンスターをたった1ターンで呼び出したぞォオオォオオ!!』

 

井ノ神「くっ……」

 

良平のモンスターが放つ圧力に井ノ神はタタラを踏む。

その表情に良平はさらに思案した。

 

良平(阻害系の手札誘発はなかった。ただ相手は光属性がメインのデッキ……。戦闘を介するとオネストが飛んでくる可能性がある……)

 

フィールドにはモンスターたちが良平の声を待つ。

 

良平「スクラップ・ドラゴンの効果発動! フィールドの相手と自分のカードを1つずつ選択し、それらを破壊する! 対象は、セイクリッドの星痕とドラゴサック!」

 

スクラップ・ドラゴンの身体から四方八方にレーザー光線が射出された。

高出力のレーザーが辺りの地面を痛烈に削りながら破壊対象に向かっていく。

やがてレーザーが発動中のセイクリッドの星痕を貫きバラバラに破壊し尽くす。

一方のドラゴサックはクルクルクルとレーザーを回避した。

 

『フィールドのカードがビームに貫かれたァァァァァァ!! 対して幻獣機はその光線を回避してしまったぞォオオ!!?』

 

良平「幻獣機は、フィールドに幻獣機トークンがいるとき、戦闘・効果では破壊されない!」

 

井ノ神「デメリットを帳消しにするコンボ……!!」

 

良平「さらに、アウローラドンの効果発動! フィールドのモンスターを1体リリースすることで、フィールドのカードを選んで破壊する! 幻獣機トークンをリリースし、セイクリッド・オメガを破壊!」

 

幻獣機トークンが対地ミサイルへと変わりアウローラドンの翼から一直線に向かっていく。

命中したセイクリッド・オメガは爆発し砕け散った。

 

井ノ神「オメガ……!」

 

『チームHERO日和田良平! 爆発的な展開力でフィールドを一掃!! 井ノ神歩、一転窮地!!』

 

ーバトルフェイズー

 

良平「……バトル! いけ! スクラップ・ドラゴンでガイアドラグーンを攻撃!」

 

スクラップ・ドラゴン「ガァァァァァッ!」

攻:2800

 

口からレーザーを放出する。

赤い線が一閃走り、ガイアドラグーンの身体を貫く。

 

迅雷の騎士ガイアドラグーン「ぐぁぁぁぁぁっ!?」

攻:2600

 

ガイアドラグーンは蒸発し、地面にまで着弾したレーザーの余波が井ノ神を飲み込んだ。

 

井ノ神「ぐっ……!?」

LP4000→3800

 

良平「続いて、アウローラドンでプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

幻獣機アウローラドン「FOX2!」

攻:2100

 

アフターバーナーを一気に吹き上げ低空飛行でプレイヤーへと吶喊する。

そして前方の機関砲から弾丸をばら撒いた。

 

井ノ神「うわっ……!?」

LP3800→1700

 

『おぉっとォォオ!!? ここで日和田良平の反撃が決まったァァァァァ!!』

 

ワッと油に水を落としたような歓声があがる。

彼我のライフポイント差はほぼ横並び。

シーソーゲーム。

井ノ神はやや押されたように二、三歩後退するも足を踏み止め手札のカードを抜き取りフィールドへ叩きつけた。

 

井ノ神「ッ……! 手札からトラゴエディアの効果発動!」

 

《トラゴエディア》

効果モンスター

 

巨大なムカデのような悪魔がうねりを上げながら突如としてフィールドに現れる。

井ノ神を守るようにトグロを巻いた。

 

トラゴエディア「ふんっ……!」

守:?? 闇 悪魔族 星10

 

井ノ神「トラゴエディアは、戦闘ダメージを受けた時に、手札から特殊召喚できる! そして、その攻守は、僕の手札の枚数掛ける600ポイントとなる! 僕の手札は5枚、よって守備力は3000!」

 

トラゴエディア「くっくっく……」

守:0→3000

 

良平「……やっぱり手札誘発があったか……! 」

 

嗤うトラゴエディアに良平は目を細める。

敵の守備力は3000。

攻撃権が残っているドラゴサックの攻撃力は2600。

突破は諦める他にない。

 

良平「仕方ない、メイン2!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

良平「ドラゴサックはこのターン攻撃宣言を行っていない! そして、このカードは攻撃を放棄する代わりに、幻獣機モンスターをリリースしてカードを破壊できる! アウローラドンをリリースし、トラゴエディアを破壊!」

 

良平は切り替えて指示を出す。

アウローラドンはミサイルへと姿が変わりドラゴサックに装填される。白煙が凄まじい速度でトラゴエディアにぶつかり爆発を誘発した。

 

井ノ神「くっ……」

 

良平「さらにドラゴサックのもう一つの効果発動! 素材を使って、幻獣機トークンを2体生成する!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

良平「手札から、貪欲な壺を発動!」

 

《貪欲な壺》

通常魔法

 

良平「墓地のモンスター、ハリファイバー、アウローラドン、ハリアード、コルトウィング、チャンバライダーの5枚をデッキに戻し、2枚ドロー!」

手札2→4

 

引いたカードに目を通し良平はカードを三枚手札から抜き取りマジックトラップゾーンへセットした。

 

良平「カードを3枚セットし、ターンエンド!」

 

日和田良平

LP1200

手札:1

マジックトラップ:

伏せ3

フィールド:

スクラップ・ドラゴン

幻獣機ドラゴサック

幻獣機トークン

幻獣機トークン

 

ードローフェイズー

 

井ノ神「……僕のターン!」

手札5→6

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

ドローカードを手札に加えた井ノ神を良平は刺すような目線で監視する。

 

良平(相手の手札は潤沢にある。返す手段はいくらでもありそうだ……。マストカウンターをミスったらやられる……)

 

一方の井ノ神も自身の手札を再度確認していた。

 

井ノ神(……)

 

手札の中にあるカードーーオネストを見つめながら。

 

井ノ神(……戦闘に持ち込めたならオネストを使えていた。けど、オメガは効果破壊されてしまった。日和田くんと言ったか、彼は強い)

 

フィールドに並ぶ強力なモンスター。

井ノ神は認めた。

 

井ノ神(……僕もエクシーズ召喚に持ち込めば、彼を突破できる可能性はあるけど)

 

チラッと再びフィールドを見渡す。

睨むは良平の足元に控える三枚の伏せカード。

 

井ノ神(……バックが3枚。阻害系か攻撃反応系か……)

 

それから井ノ神は思い浮かべる。

試合前のブリーフィングを。

 

井ノ神(……遠木さんがくれた資料には、予選決勝で使った日和田くんのマジックトラップの情報があった。確か、ブレイクスルースキル、空中補給、弾幕回避……。それに機械族ならリミッター解除もあるかもしれない……)

 

試合の資料を写真付きで見せてくれたことを思い出す。

井ノ神はそれらを現在の状況と照らし合わせた。

 

井ノ神(今あると困るのは、ブレイクスルースキルと弾幕回避……。羽根箒はないし、あると考えて撃たせるしかない……)

 

手札のカードを抜き取り、井ノ神はメインモンスターゾーンに置く。

 

井ノ神「セイクリッド・グレディを召喚!」

 

セイクリッド・グレディ「はぁっ!」

攻:1600 光 魔法使い族 星4

 

井ノ神「セイクリッド・グレディは、召喚に成功した時、手札からレベル4のセイクリッドモンスターを特殊召喚できる!」

 

良平「……」

 

井ノ神「この効果で、セイクリッド・ポルクスを特殊召喚!」

 

セイクリッド・ポルクス「ハァァッ!」

攻:1700 光 戦士族 星4

 

井ノ神「……レベル4のポルクスとグレディでオーバーレイ!」

 

☆4×☆4=★4

 

井ノ神「γ、η、θ、δ……。その中心に座して、無窮の煌めきを解き放て!」

 

無窮の煌めきが解き放たれる。

やがて現れる金色の騎士。

 

井ノ神「エクシーズ召喚! セイクリッド・ビーハイブ!」

 

セイクリッド・ビーハイブ「うぉぉぉっ!!」

攻:2400 光 機械族 ランク4

 

井ノ神「セイクリッドの星痕の効果発動!カードを1枚ドロー!」

手札4→5

 

『セイクリッドの新たなモンスターが登場! さらに手札を回復したぞォォオ!!』

 

新たなモンスターの応酬にスタジアムはまた揺れる。

両者の視線がぶつかり合う。

 

井ノ神「……」

 

良平「……」

 

良平は現れたモンスターを見上げ思考を巡らせる。

 

良平(……高打点の光属性モンスター……。相手の手札にオネストがあれば、俺はやられる)

 

自身のライフポイントを考え、そして足元をチラと見る。

 

良平(いや防ごうと思えば防ぐことはできる。ただ、このまま倒された方がチームのことを考えたら良いのかもしれない。戦闘破壊を狙ってくるならスクドラを狙いにくるだろうけど、ドラゴサックを祭乃木に渡せるならありかもしれない)

 

後続までデュエルが続くこのルールにおいて、セカンドプレイヤーに必要なことはどうラストプレイヤーに繋ぐかということだ。

良平は予選での戦いで知っていた。

 

良平(ただ、相手がやすやすとさせてくれるかどうか……。盤面が返されそうなら争うしかない……)

 

一方の井ノ神もフィールドを睨みながら思案していた。

 

井ノ神(ビーハイブが通った。召喚反応系ではないみたいだ)

 

自身の手札と良平の足元に控えるセットカードを見比べる。

 

井ノ神(……オネストを使えば、伏せカードがリミッター解除だったとしても、日和田くんは突破できる……)

 

手札にあるオネストやリミッター解除などを始めとする相手モンスターの攻撃力を参照するパンプアップ効果はチェーンの逆順処理の都合上、先に発動した方が勝つ。

狙いとなるのは戦闘破壊が可能なスクラップ・ドラゴンか。

 

井ノ神(ただその場合、破壊効果と破壊耐性があるドラゴサックがラストプレイヤーに回ることになる……)

 

意識を背後にーー即ち自分のチームのベンチへと向けた。

そこに控えるはラストプレイヤー。

チームユニオン 時松もこ。

 

井ノ神(時松さんなら問題ないかもしれないけど、手札が万全の状況で主力級のモンスターを渡されるのは流石にまずい気がする)

 

再び手札に目を移す。

ライフポイントは1800、手札は5枚。

自身の勝利を諦める要素はまだない。

 

井ノ神(僕の手札はまだ展開ができる。ここは……!)

 

覚悟を決めて井ノ神は手札を握り変えた。

 

井ノ神「手札の銀河戦士は、手札の光属性モンスターを墓地に送ることで特殊召喚できる!」

手札4→3

 

銀河戦士「ハァァッ!」

守:0 光 機械族 星5

 

井ノ神「銀河戦士は、特殊召喚されたとき、デッキからギャラクシーモンスターを手札に加えることができる! 僕はこの効果で、もう一枚の銀河戦士を手札に加えるよ!」

手札3→4

 

デッキから選出されたカードを勢いよく抜き取り見せつける。

そしてそのまま手札に加えることなくメインモンスターゾーンに。

 

井ノ神「さらに、今加えた銀河戦士を同じく特殊召喚!」

手札3→2

 

銀河戦士「ふぅぅっ!」

守:0

 

展開要因がフィールドに現れたのを見て良平は思わず声を上げる。

 

良平「動いてきたか……!」

 

井ノ神「レベル5の銀河戦士2体でオーバーレイネットワークを構築!」

 

☆5×☆5=★5

 

井ノ神「こい! セイクリッド・プレアデス!!」

 

プレアデス「ハァァァァァァッ!」

攻:2500 光 戦士族 ランク5

 

『またまた現れたァァァァァァ!! プレアデス星団の団長、セイクリッド・プレアデス!! これにより、フィールドのカードをバウンスが可能だァァァ!!』

 

白銀の騎士が再びフィールドに降り立ち、フィールドに睨みを効かせた。

フィールドに浮かぶドラゴサックと再び。

 

井ノ神「プレアデスの効果発動! 素材を一つ使って、伏せカードをバウンスする!」

 

良平「それは止めるしかない! トラップ発動! 天威無双の拳!」

 

《天威無双の拳》

カウンター罠

 

chain1 セイクリッド・プレアデス

 

chain2 天威無双の拳

 

良平「このカードは、俺のフィールドに効果モンスター以外のモンスターが存在する場合、相手のカードの発動を無効にする!」

 

井ノ神「効果モンスター以外……幻獣機トークンか……!」

 

透明で巨大な拳が突如現れプレアデスを殴り飛ばす。

 

セイクリッド・プレアデス「ぐっ……!?」

 

空中で宙返りしフィールドに着地するも攻撃動作は封じられてしまう。

井ノ神は動じずにさらにカードを回す。

 

井ノ神「なら、プレアデス1体でオーバーレイネットワークを再構築!」

 

★5→★6

 

井ノ神「煌めけ! セイクリッド・トレミスM7!」

 

セイクリッド・トレミスM7「ガァァァァァッ!」

攻:2700

 

井ノ神「さらにトレミス1体でオーバーレイネットワークを再構築!」

 

★6→★7

 

井ノ神「いでよ! 迅雷の騎士ガイアドラグーン!!」

 

ガイア「ハァァァァァァッ!」

攻:2600

 

『またまた連続エクシーズチェンジ!! この貫通攻撃が決まれば日和田良平のライフは0となるぞォォオ!!?』

 

井ノ神「……バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

井ノ神「ガイアドラグーンで幻獣機トークンに攻撃!!」

 

迅雷の騎士が吶喊する。

狙うは守りの薄い幻獣機トークン。

日和田良平のライフは1200。

貫通ダメージが通れば勝利。

 

井ノ神(通るか……!?)

 

良平「……トラップ発動! ブレイクスルー・スキル!」

 

《ブレイクスルー・スキル》

通常罠

 

良平「対象のモンスターの効果をこのターン無効にする!」

 

ガイアドラグーンの上からチャフが落ちてくる。

チャフから閃光が吹き出しガイアドラグーンの目をくらませる。

 

迅雷の騎士ガイアドラグーン「ぐっ……! ウォォォ!!」

 

闇雲に振り回した螺旋の槍に貫かれ幻獣機トークンは砕け散る。

しかし有効打にはならず貫通ダメージは通らない。

 

井ノ神(ブレイクスルースキル! やはりあったか……!あと1枚……! 攻撃反応ではないはず……! となると、あのリバースカードは、リミッター解除か弾幕回避かのどちらか……! さっきの天威無双の拳みたいに新しいカードならどうしようもないけど、それはもう考えても仕方ない!)

 

目線をあげて井ノ神は拳を握り声を出した。

 

井ノ神「なら……! いけ! ビーハイブ!! 幻獣機トークンに攻撃!!」

 

良平「……!」

 

セイクリッド・ビーハイブから放たれた光の弾丸に幻獣機トークンは撃墜される。

フィールドに墜落する幻獣機トークン見て、視線を井ノ神の手札に向けた。

 

良平(幻獣機トークンを殴ってきた……? 手札にオネストないのか……? でも、幻獣機トークンが全部やられた。これで俺の伏せカードはただのブラフになったな……)

 

良平は再び視線をずらし足元の伏せカードーー弾幕回避を見た。

すると対面から声が聞こえた。

 

井ノ神「日和田くん!」

 

良平「!」

 

井ノ神「君たちは強い。アカデミアでも高決連でもない普通の高校生がここまでなんて、正直信じられない」

 

良平「……全部が実力じゃないよ。カードが偶然噛み合っただけってときもある。俺たちは、どんなチームが相手でも下手したら瞬殺される可能性があるんだ。だから、その時できることを、とにかくやっていくしかない。それが偶然上手くいってるってだけだ」

 

井ノ神「そっか。じゃあきっと、君たちは何か持ってるのかもしれないね。……君たちは、どうして、この大会に出ようとしたんだい。どういう気持ちでこの場に立っているんだ」

 

井ノ神が真っ直ぐに良平を見つめる。

良平は一瞬言葉に詰まった。

だから自分に正直に話す。

 

良平「部活を立ち上げるための実績を作るっていうのが目的だった。けど、今は……少なくとも俺は、あんまり意識してない。これは祭乃木についていった結果だからね。けど、せっかくこんな大舞台でデュエルができるんだから、1つでも多くデュエルしたい。そして、そのデュエルで勝ちたい。俺はそう思ってる」

 

良平の根底に湧き上がるデュエルに対する情熱。

勝ちに対するこだわり。

井ノ神は息を呑んだ。

 

井ノ神「! ……そうか、君もデュエルが好きなんだね。僕は、君たちを舐めていたのかもしれない。アカデミアでもデュエル部でもない君たちを」

 

井ノ神は自分の制服を。

そして良平の制服を。

背に立つメンバーの制服を思い浮かべる。

それだけではない。

ここに立っていない全国のデュエル部たちが着る制服を。

 

井ノ神「僕はデュエル部の星になりたかった。デュエル部にいる人は、ただデュエルを楽しみたいだけの人から、色んな事情があってアカデミアを諦めた人まで様々だ。でもデュエル部は、どうしたってアカデミアには敵わない。そう思われてる。だから、僕たちがこの大会に出て、勝ち上がることで、デュエル部で本気のデュエルをしたいと思ってる人の希望になりたかったんだ」

 

良平「……それは……凄いな」

 

思わずたじろいでしまった。

良平は目の前のデュエリストが持つ戦う理由の大きさに圧倒された。

 

井ノ神「でも、心のどこかで僕は君たちを下に見ていた。アカデミアがある街に生まれて、WSCに出場するくらいの実力があるのに、アカデミアに行かなかった半端者だって。そんなの人それぞれに気持ちも事情もあるはずだって自分が一番知っているはずなのに」

 

良平「…………」

 

井ノ神「そんなシガラミを持ってたら勝てるわけがなかったんだ。……だから僕はこのカードを使う!! アカデミア生と対峙するときまで隠しておくつもりだった最後の切り札を!!」

 

良平「!!」

 

思わず身構える。

湧き上がる闘志と発煙する運命力が良平を押していた。

 

井ノ神「メインフェイズ2! 迅雷の騎士ガイアドラグーン1体でオーバーレイネットワークを再構築!! エクシーズチェンジ!!」

 

★7→★12

 

バチバチと雷鳴が轟く。

黒い渦が一際大きな音を上げる。

 

井ノ神「ーー天空を統べる全知にして全能なる機神!! 今、ここに現出し、その雷霆で全てを焼き尽くせ!!」

 

現る、その巨大にして強大な機神の姿が。

 

井ノ神「エクシーズ召喚!! 叫べ! 天霆號アーゼウス!!」

 

天霆號アーゼウス「ウォォォォオオォォオオォオオォオオ!!!」

守:3000 光 機械族 ランク12

 

雷鳴が鳴り響く。

降り立つフィールドが揺れる。

 

『なんだこのモンスターはァァァ!!? チームユニオン、井ノ神歩! ! 真の切り札を呼び出したぞォオオォオオ!!?』

 

圧倒的な威圧感を以てフィールドを支配する。

これこそが真なる剣と井ノ神は良平をまっすぐに視線を向ける。

 

良平「……くっ……」

 

良平は押し込まれそうなプレッシャーに抗うように歯を強く食いしばった。

 




デュエルパートはどうしても長くなりますね……。
後編に続きます。

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