遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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◼️アニメ設定のおさらい
旧モーメント:
かつて使われていたエネルギー機関。これが暴走したことがきっかけで5dsのサテライトが生まれた。

◼️今回最後の方に英語が出てきますが正しいかわかりません。
訳をつけたので、そういうことを言わせたいのねって思ってもらえたら幸いです。
英語できるニキ・ネキ、いたら教えてください……。


第20話「WSC本戦1回戦終幕 Heroes show up late.」後編

 

フィールドはドラゴンが支配していた。

ドラグニティナイト-アラドヴァルとドラグニティナイト-ロムルス、そして今まさに羽根を羽ばたかせ亜美に飛び掛かるドラグニティナイト-アスカロン。

対峙する亜美のフィールドにはモンスターもマジックトラップカードも影すら見当たらない。

 

「グァァァァァァァァァァッ!!」

 

アスカロンが咆哮を上げてエネルギーを口蓋に集中させた。

 

『この攻撃が通れば、チームHEROは敗北だァァァァァァ!!』

 

誰もが勝負ありと身構える。

亜美に対峙しているもこですら。

 

時松「私の勝ち……」

 

しかし。

亜美の目には未だ炎が灯っていた。

 

祭乃木「させるかァァァァァァ!!」

 

声を上げて亜美は勢いよく手を振り抜く。

デュエルディスクの操作キーを弾いた。

 

祭乃木「墓地の光の護封霊剣の効果発動!!」

 

《光の護封霊剣》

永続罠

 

ピロンッと音がして突如フィールドに四本光の剣が現れた。

それらは侵入を拒むようにして亜美の前に突き刺さり痛烈な閃光を放つ。

 

ドラグニティナイト-アスカロン「グギャァァ!?」

 

時松「うっ……!?」

 

あまりの眩さにもこは手で光を遮った。

アラドヴァルもロムルスも、前線にいたアスカロンも自前の羽根で顔を隠していた。

 

祭乃木「光の護封霊剣は墓地から除外することで、このターン相手モンスターの直接攻撃を封じるわ!!」

 

これ以上は罷らぬと剣は亜美を守り光を放つ。

 

『なんとなんと!! 防いだァァァァァァァァァ!! ついに決着かと思われたその攻撃を耐えたぞォオオ! 奇跡のチーム! チームHERO! 再び奇跡を起こしたようだァァァ!!』

 

ワッと割れるような声が会場を包む。

困惑でもあり熱気でもあり感嘆でもあった。

 

 

時松「光の護封霊剣……!? クソッ、いつのまに……!」

 

歯を噛み締めてもこはデュエルを振り返る。

 

時松「リキッドマンの効果か……あるいは、さっき破壊した伏せカードか……!」

 

祭乃木「さぁ、まだまだデュエルは終わらないわ!」

 

時松「……ッ、けど、モンスター効果を無効にできて全体破壊でも後続を呼べる……! どの道、死にかけなのは変わらないよ。ターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

時松もこ

LP:1800

手札1

マジックトラップ:

なし

フィールド:

ドラグニティナイト-アラドヴァル

ドラグニティナイト-アスカロン

ドラグニティナイト-ロムルス

 

もこのターン終了宣言と共に亜美を囲っていた光の剣がゆっくりと消えていく。

フィールドは依然チームユニオン優勢。

 

【チームユニオン側ベンチ】

 

井ノ神「防がれたか……」

 

井ノ神はフィールドの状況を見ながら感慨深そうに呟く。

隣では奥安が腕を組んで口を開いた。

 

奥安「ハッ、1ターン倒すのが遅れるだけよ」

 

冬華「うーん、どうかなぁ……」

 

取材ノートをパラパラと捲りながら冬華が首を傾げた。

 

奥安「あぁ!?」

 

冬華「ジャーナリズムは小さな嘘しかつけないもの。彼女のこれまでの記事を見る限り、彼女はこの土壇場で力を発揮するみたいなんだよね〜」

 

【チームHERO側ベンチ】

 

一方のチームHEROは、消えていった光の剣に胸を撫でていた。

 

ここのせ「なんとか命を繋いだぜ……!」

 

ゆき「はぁ……! よかったですぅ……!」

 

恵「……しかし、祭乃木亜美の手札はドロー含めて2枚……」

 

ここのせ「それで返せなきゃどの道負けってわけだな」

 

腕を組んでここのせは確認するように言った。

そして、一転して口の端を上げると良平に向く。

 

ここのせ「でもまぁ、なぁ?」

 

信じていた。

彼女の背がこれまでいくつもの難関を振り払ってきたことをここにいる全員が知っている。

良平はここのせの言葉に頷いた。

 

良平「祭乃木ならきっと大丈夫って、そういう妙な安心感があるんだよな」

 

【デュエルフィールド】

 

ードローフェイズー

 

亜美は背中に視線を感じた。

観客の。

あるいは相手の。

否、それは亜美には関係ない。

あるのはバトンを繋いだ仲間たち。

亜美はデッキトップのカードを引いた。

 

祭乃木「アタシのターン!」

手札1→2

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

ーー来た、と亜美は半ば電流が走ったような感覚を持った。

ドローカードを手札に加え、コンマの刹那戦略を練る。

いや打てる手は一つだった。

手札は僅か二枚。

通用するかしないかの勝負である。

亜美はびしりと音が出るような勢いでもこを指差した。

 

祭乃木「さぁ、いくわよ時松もこ! いいえ、チームユニオン!!」

 

時松「やれるもんならやってみろ」

 

祭乃木「手札からネオス・フュージョン発動!」

 

《ネオス・フュージョン》

通常魔法

 

願いを込めてカードをスロットに差し込んだ。

ピロンと発動し効果が起動する。

これに対し発動するカードはない。

 

祭乃木「手札、フィールド、デッキからネオス融合モンスターを融合する!」

 

時松「デッキ融合……!」

 

祭乃木「デッキのE・HEROネオスとE・HEROバブルマンでネオスフュージョン!」

 

七色の渦が巻き起こる。

宇宙を掛けるクエーサーが舞い上がり、渦中をE・HEROネオスとE・HEROバブルマンが飛び込んでいく。

 

祭乃木「ーー今は遠き宙の秩序を担うは銀河の英雄! 勇気を示せ!!」

 

光が一層強くなり渦から一閃の光が飛び出して空を飛ぶ。

 

祭乃木「こい! E・HEROブレイヴ・ネオス!」

 

E・HEROブレイヴネオス「フゥッ、ハァァッ!」

攻:2500→2900 光 戦士族 星7

 

白いボディに青と赤のラインが入った体躯。

亜美の前に静かに降り立ったのはまさに宇宙から来たヒーローである。

 

時松「ふん。攻撃力も足りてない、破壊効果もない。それでどうする気?」

 

祭乃木「そうね。ブレイヴ・ネオスだけじゃ届かないわ。けど、アンタのドラグニティがいろんな仲間の力を借りて更なるドラゴンに進化するように、ヒーローも味方の力を使って勝利をもぎ取るのよ!」

 

時松「はぁ?」

 

祭乃木「見てなさい! 手札から魔法カード発動!! スカイスクレイパー・シュート!!」

 

《スカイスクレイパー・シュート》

通常魔法

 

亜美は喚ぶ。

仲間の攻撃名を冠したカードはフィールドの中央にて輝いていた。

E・HEROブレイヴネオスは力を貯めるように中腰で両拳を握り締める。

 

祭乃木「このカードは、一時的にスカイスクレイパーとフレイム・ウィングマンの力を借りることができるわ! フィールドのE・HERO融合モンスターを対象として、そのモンスターよりも攻撃力が高いモンスターを全て破壊する!!」

 

時松「はぁ!?」

 

祭乃木「いけ! ブレイヴ・ネオス!」

 

亜美の声に呼応してブレイヴネオスが飛び立った。

同時に半透明の摩天楼が現れて竜の渓谷を塗り替えてしまう。

ドラグニティナイトたちは突然のことに慄いていた。

 

E・HEROブレイヴ・ネオス「シェェァァァ、デュァァァッ!!」

 

摩天の頂点に立ったブレイヴネオスは貯めたエネルギーを腕に集め一気に放出する。

力を借りたエネルギーの奔流は赤と緑が混ざってドラグニティナイトたちに命中した。

 

ドラグニティナイト-アスカロン「グギャァァァァァ!!?」

 

ドラグニティナイト-アラドヴァル「ギガァァァァァッ!!?」

 

2匹のドラグニティナイトは光線に貫かれ、断末魔をあげながら爆発する。

凄まじい爆風がフィールドから巻き起こり、もこの癖っ毛を強烈に撫でていく。

 

時松「ッ!! だが、破壊されたところで、アスカロンはーーー!」

 

祭乃木「関係ないわ! スカイスクレイパー・シュートの効果は、まだ続いているわ! この効果で破壊したモンスターの中で1番高い攻撃力分のダメージを相手に与える!!」

 

時松「は、はぁぁぁ!!?」

 

もこは目を見開いて声を出した。

ライフは残り1800。

対し破壊されたアラドヴァルの攻撃力は3300。

 

祭乃木「いくわよ、ブレイヴ・ネオス!! ブレイヴ・スクレイパー・シュゥゥゥゥゥトッ!!」

 

ブレイヴ・ネオスは急降下する。

左手に赤い炎を、右手に風のエネルギーを秘めて。

吶喊してくるヒーローを前にもこは二、三歩後ずさった。

 

時松「う、嘘……!! 私、負ける……!?」

 

信じられないと顔が語る。

しかしブレイヴネオスは問答無用でもこを貫いた。

 

時松「くぁぁぁぁぁっ……!!?」

LP1800→0

 

ビィィッとブザーが鳴り響き、ワッと歓声にスタジアムが揺れた。

 

『けっちゃぁぁぁぁぁく!! 大注目の高校生対決は、奇跡のチーム!! ネオ童実野シティ代表、チームHEROが制したぞォオオォオオ!!』

 

【チームHERO側ベンチ】

 

マイクと歓声が響く中、ここのせと良平とゆきは各々が拳を握りしめた。

 

ここのせ「よっしゃぁぁ!!」

 

良平「よしっ!」

 

ゆき「やりました!! 流石、祭乃木さんですぅ!!」

 

【チームユニオン側ベンチ】

 

奥安「クソッ!!」

 

悔しそうに奥安は膝を叩き歯を食い縛った。

井ノ神も立ち尽くし目を伏せた。

 

井ノ神「僕らの負け、か。悔しいけど、彼らの方が一枚上手だったみたいだ」

 

冬華「うーん、負けちゃったね〜。……けど! ただじゃ転ばないよぉ!!」

 

冬華はカメラを携えてフィールドに向けて駆け出していく。

 

【デュエルフィールド】

 

シュゥゥゥゥゥンッとフィールドのソリッドビジョンが消えていく中、残ったのは二人のデュエリスト。

 

祭乃木「よっしゃっ!!」

 

時松「……ッあーっ!!」

 

亜美はぐっと思わずガッツポーズする中、もこは声を上げて上を向いた。

それから項垂れて目を線にする。

 

時松「あーあ……負けちゃった……。クソッ、これで20単位損した……。卒業まで授業でない計画が……」

 

祭乃木「何よ、アンタそんな条件で出場してたの?」

 

フィールドを進み亜美はもこの前に歩いていく。

もこの呟きに亜美は腰に手を当てた。

 

時松「うるさいよ。私は勉強よりゲームが好きなの。あんたのせいで単位足りないから授業に出る羽目になったけど」

 

祭乃木「おとなしく授業に出なさい。……はい」

 

亜美は右手差し出す。

 

時松「……なに?」

 

訝しげにもこは亜美の右手を凝視した。

 

祭乃木「正々堂々戦ったんだから、握手、でしょ」

 

時松「……ばっかじゃないの」

 

ぷいっともこは癖っ毛を揺らしてそっぽを向いた。

亜美は一瞬呆気に取られたがすぐに持ち直してもこの右手を強引に掴む。

 

祭乃木「もぅ! ほらっ!」

 

時松「あっ、ちょっ……!」

 

普段あまり人に触れないもこの手は亜美の手のぬくもりに当てられて赤くなっていく。

そこに丁度カメラを携えた冬華が駆けつけてファインダーを覗いた。

 

冬華「おっ! ナイスタイミング!! 激写激写!!」

 

時松「あぁ!! しゃ、写真はだめ!!」

 

祭乃木「あ! 約束よ! 一面はアタシたちだからね!」

 

冬華「もっちろーん!!」

 

時松「や、やめ……!! もー!! ばかぁぁぁ!!」

 

ジタバタともこは顔まで真っ赤になって亜美に掴まれた手を振り解こうと躍起になっていた。

双方のベンチからチームメンバーもフィールドに集まってきた。

 

良平「やめてやれよ、祭乃木」

 

ここのせ「嫌がる女子を写真に収めるってのは悪趣味が過ぎるぜ、記者さんよ」

 

冬華「はーい」

 

悪びれもせず冬華はぺろっと舌を出してようやくカメラを納めた。

後からフィールドに現れた奥安は苛立ちを隠せないように明後日の方を見つめている。

 

奥安「……クソッ!」

 

ゆき「な、なんだか怒ってます……?」

 

恵「……」

 

ここのせ「放っておけよ。拳闘士にとっちゃ、悔しがるってのは相手への敬意の意味もあるんだぜ」

 

井ノ神「……チームHERO、いやヒーロー部」

 

井ノ神はまっすぐに亜美を見る。

亜美を先頭にヒーロー部の四人も井ノ神に視線を返した。

 

井ノ神「君たちに勝てなかったことは本当に悔しい。だけど、君たちはそれだけ強かった。悔しくても悔いはない」

 

祭乃木「デュエル部の代表に、そこまで言われるならアタシたちも全力で戦った甲斐があるわ!」

 

井ノ神「うん。……チームHERO、アカデミアでも高決連でもない高校生デュエリストチーム。君たちに僕の夢は託す。アカデミアも、並み居る強豪も全て振り払って、勝って勝って勝ちまくってくれ」

 

祭乃木「任せなさい! アンタの夢を引き継ぐなんて大層なこと言う気はないけど、アタシたちは誰にも負ける気はないわ。この大会のヒーローは、アタシたちよ!」

 

井ノ神「頼もしいな。……頼んだよ、ヒーローたち」

 

『これにて、大注目! Cブロック第一試合を終了だァァ!! 続いて15時よりCブロック第二試合を始めるぞォオオ!! お楽しみにィィ!!』

 

…………

……

 

【ネオ童実野シティ 旧サテライトエリア 旧モーメント跡地】

 

一方同時刻。

旧モーメント跡地は廃墟と化した旧サテライトにあった。

現在も人は住んでおらず、使い物にならないビルが倒壊寸前で並んでいる。

そこに黄色いコアに銅と銀の筐体の不気味な機械が浮遊していた。

機械からは平坦で無機質な、そしてノイズだらけの音声が流れている。

 

『シス…ムを自…モードで起動します。C:¥tierra¥qliphoth.exe の実行を許可しますか? ...[Y]』

 

「ひぃぃ!! ば、化け物だァァァ!!」

 

前に腰を抜かした男性が尻を地面につけて恐怖で動かない足をなんとか引きずるように腕で後ずさる。

 

『C:¥tierra¥qliphoth.exe を実行します。C:¥tierra¥qliphoth.exe を実行します。C:¥tierra¥qliphoth.exe を実行します。』

 

不気味な機械の塊か突如、レーザーを縦横に射出して辺りを破壊する。

 

「ギャァァァ!だ、誰か!! 誰か助けてくれェェ!!」

 

男性は成す術なくうずくまり涙を流して叫んだ。

その瞬間、地面を踏む音がする。

 

???「ーー堕ちなさい。影衣融合」

 

《影衣融合》

???

 

フィールドにビジョンが浮かび黒い影が辺りを侵食していく。

男が怯えた顔で足音の方向を見るとボロ布をフードのように被った人影が見えた。

シルエットと身長から女性だとわかる。

 

フードの女「そこの貴方。巻き込まれたくなかったら死ぬ気で逃げることね。一切、振り向くことなく一目散に」

 

「ひぃぃぃ!!!」

 

弾かれるように男は走り去っていく。

少女とも言えそうな人影が何者なのかを考える余裕はない。

黒い影が少女を包み込んでいく。

風塵が巻き上がりバサッとボロ布のフードを跳ね飛ばす。

黒い髪に光の灯らぬ瞳ーー平畑輝が自分の身体を影に侵食させていた。

 

平畑「……いくわよ、機殻ども」

 

…………

……

 

【ネオ童実野シティ メモリアルスタジアム フィールド入場口】

 

試合が終わり、チームユニオンと別れてから控え室に戻るためにヒーロー部の5人は選手通用門からスタジアム内に戻る。

フィールドの光が遠ざかり、打ちっぱなしのコンクリートが少し薄暗く感じる。

 

祭乃木「とりあえず、一勝ね! どっかご飯食べにいきましょ! 腹が減って仕方ないわ!」

 

ゆき「はい! ぜひいきましょう!」

 

良平「反省会も込めてね。今回は結構反省点が多かった」

 

ここのせ「だな。今後のためにもやっとかねぇと。今回は特にバトンの渡し方が悪かったな」

 

良平「うん。セカンドプレイヤーである俺がもう少し余力を残して、三人目をしっかり相手できなきゃダメだった。そうしたら祭乃木がもう少し楽に勝てたはずなんだ」

 

ゆき「でも、お相手の方もかなりの実力者でしたし、一人で二人を相手するのは難しい気がしますぅ……」

 

早くも反省会が始まりそうな雰囲気に亜美はパンパンと2回手を叩いて切り替えた。

 

祭乃木「はいはい! せっかく勝ったんだからウジウジしない!反省するところは反省するけど、喜ぶところは喜ばなきゃダメよ!」

 

良平「まぁ、そうか。そうだな」

 

ゆき「まずは、美味しいものを食べてから色々考えましょう!」

 

恵「……」

 

最後尾を歩いていた恵は相変わらずの無表情。

しかし不意に何かを感じ取ったかのように眉をぴくりと動かし足を止めた。

 

恵「……!!」

 

ゆき「……恵さん?どうしました?」

 

恵「……強大な時空震を観測……」

 

恵の口から出た言葉にゆきは首を傾げて周りを見た。

頑丈なコンクリートと蛍光灯。

ちらとも揺れた形跡はない。

 

ゆき「え? 地震? 揺れましたか?」

 

恵「……地震ではない。時空震……」

 

大真面目に恵が言うのでここのせは両肩をすくめてため息をついた。

 

ここのせ「おいおい、またそれかよ」

 

良平「堂に入ってるけど、今日はまた急だね」

 

いつもの厨二病発言だと流そうとするここのせと良平だったが、亜美は一瞬考えてから恵を見据える。

恵は無表情で、真っすぐに亜美を見つめていた。

 

祭乃木「……待って二人とも」

 

恵「……」

 

祭乃木「……恵、アンタがたまに言うその時空震っての。本気で言ってるのよね?」

 

恵「……ん……」

 

銀色のツインテールをわずかに揺らして恵は頷く。

そしてまたまっすぐに亜美の目を見返す。

嘘をついたりふざけたりする様子が微塵も感じられない。

それどころか信じてほしいと言わんばかりにまっすぐな瞳を向ける恵。

 

祭乃木「……わかったわ。なら、その時空震っていうのをアタシたちに詳しく教えて」

 

ここのせ「祭乃木、お前……」

 

祭乃木「たしかにアタシも、ただの中二病って思ってたわ。けど、これまで恵と一緒にいたらわかるでしょ。恵は、アタシたちのことをちゃんと考えてくれてるめちゃくちゃいい奴だって。そんな恵が、わざわざこの場で、ふざけるとは思えないのよ。恵が本気で言うなら、アタシは信じないわけにはいかないわ」

 

良平「……」

 

ここのせ「……そう、だな……」

 

ゆき「恵さんには、カードをもらったりアドバイスしてもらったり沢山助けてもらいました! 何か困ってるなら、力になりたいです!」

 

祭乃木「恵、アンタの話を理解できるかわかんないけど、まずはーーー」

 

そんな会話の最中、カツンカツンとヒールがコンクリートを踏む甲高い音が響いた。

 

???「ーーー時空震とは、空間に強い力が加わった際に起こる歪みのことだ」

 

突如響いた女性の低い声に全員が振り向いた。

そこには黒いロングコートと腰まで伸びている金色の髪を靡かせた長身の女性が腕を組んで立っている。

 

???「少年少女の口からその言葉を聞くとは、また異なことよ」

 

その姿に5人は目を見開いた。

 

ここのせ「なっ……!!?」

 

祭乃木「あ、アンタは……!!」

 

ゆき「あ、あぁ……!」

 

良平「ク、クイーン……!! 」

 

クイーン「くっくっく、良い反応だ」

 

女性ーークイーンはニヤリと笑いヒーロー部を見ていた。

 

祭乃木「クイーン……!? あ、アンタが、なんで意味知ってんのよ……!?」

 

クイーン「さて、何故だろうな。……それよりもチームHERO諸君。初戦突破、おめでとう」

 

良平「は、はぁ」

 

ここのせ「……」

 

しんと静まり返るような場の空気にクイーンは不思議そうに手を顎に当てて言った。

 

クイーン「ふむ。初出場のチームが、初戦を突破したというのに、あまり喜ばないのだな」

 

ここのせ「い、いや、喜びてぇんだがよ。あんたの情報量が多すぎてイマイチ着いてこれてねぇっていうか……」

 

クイーン「なるほど、それは失礼した。だが、私としては君たちに会っておきたかったのだ。特に祭乃木くん、君のような奇跡のデュエリストにはね」

 

祭乃木「あ、アタシ……?」

 

クイーン「うむ。初出場にして数多の奇跡を起こす圧倒的な運命力を持つデュエリスト。何よりこのクイーンと同じくHEROを使いこなすとあれば、否が応にも運命を感じざるを得まい」

 

腕を組んで亜美を見下ろすクイーンに亜美は負けじと視線をぶつけて返す。

その様相に思わず声が漏れた。

 

ここのせ「く、クイーン直々に……」

 

ゆき「祭乃木さん、す、すごいですぅ……!!」

 

祭乃木「え、えらく褒めてくれるわね。なんか裏があるんじゃないの?」

 

クイーン「ふふ、そう身構えなくて良い。何、君たちを特別扱いしてるわけではないよ。私はクイーンとして、できる限り他のチームと交流している。今回もその一旦、というだけさ。大会を通じてより強いデュエリストを見つけ、より洗練させていくというのもクイーンの務めよ」

 

祭乃木「ふーん、なるほどね」

 

クイーン「だが、君たちに注目しているのも事実。並み居る強豪を払い除け見事クイーンの前に立ってみせよ」

 

祭乃木「当然よ! でも、クイーン、アンタだって負ける可能性があるのよ! 油断しないことね!」

 

クイーン「くっくっ! この無敗のクイーンに言うとは恐れ入ったぞ」

 

祭乃木「無敗なのは今年までよ! クイーン、アンタはアタシが……いいえ、アタシたちが倒すわ! 首洗って待ってなさい!」

 

亜美は口角をあげて指をさした。

クイーンは最初驚いたように目を丸くしてから喉の奥を鳴らすように笑う。

 

クイーン「よかろう。若きデュエリスト諸君! このクイーン、貴君らとまみえるその時まで、何があろうと無敗を約束しよう。故に、勝ち上がるがよい。頂点で戦えることを楽しみにしているよ」

 

それだけ言うとクイーンは踵を返す。

長いコートと髪がバサリと鳴る。

 

祭乃木「……あっ! 待った! さっきの時空震とかってやつは!!?」

 

クイーン「なに瑣末なことだ。諸君らが気にしなくてもよい。それにもう落ち着いているよ」

 

ゆき「そ、そうなんですかぁ……?」

 

確認するように恵を見ると恵は無表情で頷く。

 

恵「……すでに収束している……」

 

祭乃木「クイーン、アンタ一体何者なのよ……?」

 

クイーン「ふふ、私はただのデュエルクイーンさ。さぁ、諸君らには次なる試練が待っている。まさしく神との試練がね」

 

それだけ言うと今度こそ通路を歩いていってしまった。

後には高級そうな香水の香りだけが残っている。

 

ゆき「い、行っちゃいましたねぇ」

 

ここのせ「かぁー、デュエルクイーン……有無を言わさない威厳ってやつを感じるぜ……」

 

良平「数分で肩がこったよ……」

 

祭乃木「しっかし、神との試練……? なんなのよ、それ」

 

もはや姿の見えなくなったクイーンが去っていった場所を5人はしばらく見つめていた。

 

…………

……

 

極東の島国でWSC1回戦が決着したが、WSCはまさにワールドワイドな大会であり海を挟んだ遠き国でも戦いが繰り広げられていた。

 

【スウェーデン ストックホルムデュエルコロシアム】

 

ズンと地響きがしてデュエルフィールドは粉塵が巻き上がる。

ブザーが鳴り響き勝敗が決していた。

フィールドに立つ銀髪の男性がぴょんぴょんとジャンプする。

 

銀髪の男性「woo-hoo! I'm did it!」

訳:やったぜ! 俺たちの勝ちだ!

 

ベンチから集まってきた男性のチームメイトらしき青髪ショートの女性が銀髪の男性の頭を叩いた。

 

青髪ショートの女性「Hey Verle! Don't be flirty! it will be rude!」

訳:こら、ヴァール! はしゃぐんじゃないわよ! 相手に失礼でしょ!

 

続いて同じくチームメイトの茶髪の男性と金髪ロングの女性もフィールドに集まってくる。

 

茶髪の男性「Good grief……」

訳:やれやれだな……

 

銀髪の男性「Don't get angry, Metis……。Hey! Selena!Who are the next TEAM!?」

訳:怒んなよミーティス……。なぁ、セレナ! 次のチームはどいつなんだ!?

 

金髪ロングの女性「well……」

訳:えーっと……

 

セレナと呼ばれた女性はタブレットを操作して確認する。

 

金髪ロングの女性「Ah,next team is teamHERO.It's a Japanese team」

あっ、次のチームはチームHEROみたいですね。日本のチームですよ

 

銀髪の男性「Japan!?? samurai!? sush!? ninja!!?」

訳:日本!? 侍か!? 寿司か!? それとも忍者か!?

 

青髪ショートの女性「How dumb」

訳:馬鹿

 

茶髪の男性「……My goddess Whoever do not adjust」

訳:ふっ、誰が相手でもオレ達の神は手は抜かない

 

トリガーだったかのように

茶髪の男性と青髪ショートの女性と銀髪の男性の片目が光る。

それは溢れるエネルギーを抑えるように文字のようなものが浮かび上がっていた。




◼️次回予告
寝る前決闘空間第21話
『ヒーロー部大遠征! いざ、海を超え!』
デュエルスタンバイ!

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