遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
アニメ効果のカードが登場します。
星界の三極神のカードをOCGではなくアニメ効果のものにします。
具体的なテキストは作中に記載します。
なお効果テキストは作者が考えたものではなく、アニメで確認されているテキストとなります。
ご了承ください。
◾️注意2
小説形式にしてみました。
やはり文字数が多いような気がします。
よければ感想等をお聞かせください!
記録の中にノイズが走る。
古い古い記録である。
破壊されたビル。
硝煙と血の匂い。
散らばるカード。
瓦礫から助けを求めるように伸びた命亡き者の手。
記録の中にノイズが走る。
灰色の空から雨が降る。
寒くはない。
遠くから爆発音。
聞こえないはずの悲鳴が聴こえる気がする。
記録の中にノイズが走る。
視界が赤い。
灰色の汚い雨が目に入る。
少女は立ち尽くしていた。
瓦礫と死体が転がる街で。
少女は知っていた。
この世界はもう死んでいる。
この世界はもう終わっている。
ーープツンッと記録はそこで途絶えている。
古い古い記録である。
しかしあり得たかもしれぬ記録である。
寝る前決闘空間第21話
『VS チームラグナロク! 神の威光を打ち砕け!』
煉瓦造りの美しい街の外れ。
冷たい風が吹く開けた場所にポツリと佇む記念館の前で。
あまりに巨大なーー神という概念を絵に描いたような紅いローブを纏う人形のモンスターと人の不安を具現化したような不気味な機械の化け物が対峙していた。
「ッgなnトiのoモdる知rヲu悪o善yりナnにoウよyノ」
機械の化け物は早口で人外の音声を出す。
目の当たりにしているヒーロー部の5人は一歩も動くことはままならない。
知ってか知らずか人形のモンスターを従えているデュエリストーー銀色の短髪にスラリと背の伸びた青年が口角を上げた。
「へへ! よそ見すんなよ!お前は、このヴァール・カーターが相手になるぜ!」
ヴァールと名乗る青年の左目が光る。
青白い光に浮かぶ口を意味するルーン文字。
「……ッ」
彼の後方にはギュッと両手合わせて握り祈りのポーズで魔法陣のようなものを展開している金髪ロングの女性。
良平は圧倒されながらもなんとか声を上げた。
「あの人たちから……凄い力を感じる……!」
「化け物には化け物ってわけか……!」
良平の言葉にここのせも同意する。
風が吹き荒れて上空まで砂塵を巻き上げていく。
「いくぜ! オーディン!」
銀髪の男性が腕を振り下ろす。
「ーーヘヴンズ・ジャッジメントォォ!!」
掛け声と共に巨大なモンスターは手を振り上げる。
虚空から神造の武具をいくつも呼び出してそれらを雨のように射出した。
「譌螳壼?、繧定カ?∴縺溯イ?闕キ繧呈、懃……衍縲ょシキ蛻カ繧キ繝」繝?ヨ繝?繧ヲ繝ウ繧定。後>縺セ縺」
対峙する機械の化け物はまたも早口で意味不明な音声を流し半透明なバリアのようなものを展開する。
しかし数秒たりとも保つことは叶わずバリアごと化け物は貫かれた。
そのエネルギーの余波が凄まじい衝撃波となって四方に広がった。
「っ! みんな! 伏せて!!」
慌てて亜美は首だけ振り返り後ろに控える部員たちに向けて叫ぶ。
まずゆきの真っ青な顔と良平の驚いたような顔が目に入る。
「あっ……!」
「うっ……!」
逡巡する間もなく亜美の背後がさらに光り、半透明のレインボードラゴンがとぐろを巻くように亜美達を包み咆哮する。
「キュォオオォオオ……!」
「あれは……レインボー・ドラゴン……!?」
遠くから驚愕の声が聞こえた気がした。
レインボードラゴンの嗎に呼応して、
半透明のE・HEROネオスが。
M・HEROダークロウが。
神聖騎士王アルトリウスが。
幻獣機オライオンが。
それぞれのマスターの前に立ち衝撃波を受け止めた。
「あ、アンタたち……!」
亜美は思わず叫ぶ。
「守ってくれてるのか……!?」
良平も目の前の出来事にただ口を開けることしかできぬ。
衝撃波はさらに横に流れていく。
恵は無表情のまま片手を前に突き出した。
「……擬似運命力、凍結展開……」
ポツリと呟いたかと思うと手のひらからエネルギーの奔流が現れて、一人分を守るようなシールドらしきものを展開した。
各々が衝撃を防ぐ中、レインボードラゴンが叫びながら慌てたようにここのせを振り向いた。
「どわぁぁぁぁぁぁ!!!?」
唯一、衝撃波を防ぐ手立てがなかったここのせは、まるでトラックにぶつかったような衝撃を感じた。
身体は容易く吹き飛ばされて宙を舞う。
「ここのせーー!!」
「こ、ここのせさん!」
良平とゆきの叫びが木霊する。
「くっ……!?」
亜美は素早く振り向いて駆け出そうと前屈みになっていた。
「うぉぉぉ……!!?」
しかし亜美が間に合うはずもなくここのせは痛みを覚悟して目を瞑った。
そんな中、後ろから地面を蹴るような足音がする。
足音の人物は落ちていくここのせの身体を抱き止めるとやや足を地面に滑らせて止まった。
「あれ……?」
「大丈夫か」
見上げると茶色のウルフカットに青い目の青年の整った顔がそこにあり、精悍な眼差しでこちらを見ていた。
「お、ぉお、ありがとうっす」
ここのせは呆気にとられてぼんやりと声を出す。
すると、さらに別の地面を駆る足音がして銀髪の青年に向かっていく。
それは青いショートカットの女性であり、彼女は握り拳を銀髪の青年に振り下ろした。
「こら!! 馬鹿ヴァール!!」
「いってぇ……!?」
拳をもろに頭に受けた銀髪の青年は両手で頭を押さえピョンピョンと飛ぶ。
青いショートカットの女性はスレンダーな細い腰に左手を当て、右手の拳を震わせたまま噛みつきそうな勢いで青年に向けて口を開いた。
「馬鹿っ!! 周りをよく見なさいよ! 他の人巻き込んでるでしょ!! 」
「えぇ……だ、だってよぉ〜……」
「だってじゃない! 街中では威力を抑えろって何回言ったらわかんの!?」
ガミガミと叱られている青年を尻目に、先程まで祈りを捧げていた金髪ロングの女性がここのせの下まで走ってきた。
「ごめんなさい……! 怪我はありませんでしたか……!?」
身体のくびれがハッキリとしていて頭を下げた拍子に、一際大きな山が僅かに揺れる。
ここのせは思わずそれを見て
(でかっ……)
と思ったあと、凝視してはまずいと目を逸らしてから
「あぁ、大丈夫っす……」
と答えた。
ウルフカットの青年は寡黙にここのせを地面に下ろす。
ここのせは改めて自分のどこにも異常がないことに安堵した。
見ると亜美がこちらに向かって走っていた。
「ここのせ! 大丈夫!?」
「おぉ、この通り、ピンピンしてるぜ。この人のおかげだ」
「そう。……ありがとう! 助かったわ!」
亜美は顔を茶髪の青年に向けて言う。
彼はにこりともせずに「あぁ」とだけ答えた。
「ててて……ごめんな、巻き込んじまって! ちょっとハッスルしちゃってさ」
頭をさすりなから銀髪の青年もこちらに向かって歩いてくる。
近くにくるとスラリと伸びた身長がより際立っていた。
機械の化け物は煙を上げて崩れ落ち、やがてスーッと消えていってしまった。
やがてそこにバラバラッと音を立ててカードが落ちた、
「え……か、カード……?」
ゆきが首を傾げると茶髪の青年はそこに走っていった。
「お前達はここにいろ」
「あっ……!」
あまりにも唐突だったので亜美は短く声を上げることし出来なかった。
良平はここのせに向いて申し訳なさそうに口を開く。
「なんかごめん……。俺たちだけ……」
「いや……。てか、なんでお前ら大丈夫だったんだ……?」
ここのせが聞くとゆきも不思議そうに辺りを見回していった。
「その……レインボードラゴン達が守ってくれたんですぅ……」
「なんでぇそりゃ……。それならオレのことも守ってくれよ……。ありゃ一体なんだったんだ……?」
ヒーロー部の5人はその場で化け物がいた場所を凝視した。
茶髪の青年がそこに落ちていたカードを拾いあげる。
黒いオーラのようなものを纏っていた。
青髪の女性も彼の元に駆け寄って声を出す。
「アルス、どうだった?」
「ダメだ」
言ってピラッとカードを向けると、それは黒い煙を上げながらゆっくりと消えていった。
「こいつも、ただの手下ってわけかー」
後ろ頭に両手をおいて銀髪の男性がつまらなそうに呟いた。
そんな様子を見て亜美は思わず声を上げる。
「ねぇ!」
「ん?」
「さっきのは、一体なんだったの?」
亜美が尋ねると金髪ロングの女性が困ったように言い淀む。
「え、えっと……」
「あー、どう言やいいんだろうなぁ……」
両手を頭の後ろに置いたまま銀髪の青年もうーんと唸った。
それから茶髪の青年もゆるりと首を振る。
「正直、一般人はあまり関わらない方が良いんだがな……」
「そうは言っても、もう関わっちゃったもんは仕方ないじゃない」
亜美が言い返すと青い髪の女性は右手を顎に当てて頷いた。
「まぁ、そうね。……今ね、スウェーデン中で事件が起きてるの。ああいう変なモンスターが現れるっていう不思議な事件がね」
「はぁ……」
要領を得ないとばかりに良平はぽかんと返事をする。
その横でここのせは眉を顰めて肩をすくめた。
「北欧といや神代の神秘が残ってるイメージはあるけどよ……。北欧怖ぇ……」
言葉を飲み込んでから亜美はさらに質問を返す。
「モンスターって……どういうことよ?」
「ごめんなさい……。実はわたしたちも、詳しくはわかってないんです……」
目を伏せて金髪ロングの女性が目を伏せて俯いた。
言葉を繋ぐように隣に立つ茶髪の青年が口を開ける。
「俺達もアレには手こずっていてな。今のところわかっているのは、アレには現代兵器は通用しないことと、デュエルモンスターズの力を借りなければ倒せない、ということだけだ」
「デュエルモンスターズの力……」
反芻するように亜美は呟く。
あり得ないと言いたいが目の前の現実がそれをさせない。
「ま、デュエルモンスターズならなんでもいいわけじゃないけどな。俺たちもルーンの瞳とセレナの祈りがないとどうしようもないんだ。……それよりも。なぁ!」
ズイッと銀髪の青年が長身を折って顔を近づける。
「ひゃっ……!?」とゆきは驚いて小さく悲鳴をあげた。
「お前ら日本人だな!? しかも、その服は、日本の制服ってやつだろ!?」
「は、はい、そうですけど……」
ゆきがなんとか答えると、今度は青髪の女性があっと声を上げて亜美の腕についている腕章を指差した。
「その腕章!あなた達、もしかしてチームHEROじゃない!?」
「ええ、そうよ。けど、よくわかったわね」
亜美は自慢げに腕章を向けて答える。
すると銀髪の青年が口角をあげた。
「わかるぜ! だって次の対戦相手なんだからな!」
「え? じゃあアンタたちは、チームラグナロク!?」
「ああ!」
ニカッと笑い銀髪の青年が大きく頷いたのでヒーロー部の5人は恵を除いて目を丸くした。
それは相手も同じらしく茶髪の青年も驚いたように声を出した。
「そうか。お前らが。数奇なこともあるものだな」
「ホントね! ……アタシは亜美! 祭乃木亜美! チームHEROのリーダーよ!」
自分の胸に手を当てて亜美は言う。
すると銀髪の青年も言葉を返した。
「おう!お前のことは知ってるぜ! 噂のヒーロー使いだろ! 俺はヴァールだ! よろしくな! んで、こっちの青いのがミーティス、茶髪がアルス、金髪がセレナだ!」
後ろに控える3人をそれぞれ指差して言うので青髪の女性ーーミーティスがわなわなと拳を振い、銀髪の青年ーーヴァールに振り下ろした。
「雑すぎっ!」
「うっ……」
「まったく……。ミーティス・ティシアーよ! 改めて、さっきは巻き込んでごめんね」
こちらを向くとミーティスは柔らかく笑った。
その姿にゆきはぺこりと頭を下げた。
「いえ! むしろ助けていただいたようなものですし……。えっと、間宮ゆきと申します!」
「日和田良平です」
「能瀬心、略してここのせだ!」
「……ルイン恵……」
続いて他のメンバーも名乗ると茶髪の青年と金髪ロングの女性もそれぞれこちらに向いた。
「アルス・ヴェインだ」
「セレナ・フローリアと申します。皆さんに怪我がなくてよかったです……」
金髪の女性ーーセレナが胸を撫で下ろしてホッとしたように言った。
亜美はその相手ーーチームラグナロクを見回してふとした疑問をぶつける。
「そういえば、何気なく喋ってるけど、アンタたち、日本語喋れるのね」
「あー、あまりにスッと喋ってたから気付かなかった」
言われてみればと良平も賛同するもヴァールは首を傾げる。
「へ? 日本語なんて喋れないよ。お前らがスウェーデン語喋ってんだろ?」
「は? いやいや思いっきり喋ってるじゃん!」
ここのせが指摘するもヴァールはお手上げと言わんばかりに両手を軽く上げた。
「日本語は難しいから覚えらんないぜ……。寿司と富士山と忍者しか知らないよ」
「どういうことでしょう……?」
ゆきがうーんと唸るとセレナが静かに声を出した。
「恐らくルーンの瞳の力だと思います」
「るーんの瞳?」
「あぁ、これの力だったのか! 納得納得!」
言うとヴァールの左目がほのかに光りはじめ、ルーン文字が浮かぶ。
ヴァールだけでなくアルスとミーティスの左目も光っている。
良平は思わず目を見開いた。
「目が光った!?」
「はわわわわ……」
ゆきも青ざめて口を開けている。
そんな様子にセレナが慌てて説明した。
「えっとルーンの瞳といって、私の家に代々伝わる極神のカード、その所持者の左目に現れる不思議な力を持った瞳です」
「意思の疎通が必要な相手ならば、こういう芸当も可能、ということか」
セレナの説明にアルスがふむと納得したように言う。
「うん。けど、実際に見るのは私もはじめてだよ」
「ふーん?」
どこか訝しむように亜美は腕を組み、覗き込むように左目を見た。
ここのせもゆきも良平も圧倒されたように各々の感想を呟く。
「リアル邪気眼じゃねぇか……」
「な、なんだか、夢を見てるみたいですぅ」
「胡散臭いけど、さっきのことがあるからなぁ……」
そんなヒーロー部メンバーを他所に唯一無表情の恵は焦点をルーンの瞳に置いて口を開いた。
「……ルーンの瞳に関しては私のデータにもある。87年前のネオ童実野シティ大災害の際にもルーンの瞳を持ったデュエリストが確認されている……」
「ネオ童実野シティ大災害……。うーん、なんだか壮大な話になってきたわね……」
恵の言葉に亜美は予想外に大きく膨らんでいく話に頭を押さえた。
「カルト宗教の説話みてぇだな……」
「それで、そのルーンの瞳っていうやつの力で、さっきの化け物を倒したってことなの?」
今度は良平がヴァールに聞くとヴァールはニカッと笑った。
「んー、多分な! 悪りぃ、俺、バカだからさ、難しいことはわかんねぇんだ!」
「もうアンタは黙ってて……」
呆れたようにミーティスは額に手を置いて絞り出すように言う。
アルスの方に目を向けてここのせは腕を組む。
「つまりアンタらは、あのバケモン退治の専門家ってわけかい」
「専門家、と呼べるほどの知識はない。俺達が極神の所有者になったのもつい最近だからな」
端的に答えるアルスに続いてセレナが補足する。
「先程のモンスターの正体はわかりませんが、ルーンの瞳はあのモンスターたちに呼応して発現しました。おそらく、世界に何らかの悪影響があるはずです……」
「それも世界を破滅させかねないほどの、な」
最後に再びアルスが付け足した。
「世界を破滅……」
またしても日常からかけ離れた言葉に亜美は閉口してしまう。
あまりに非現実でここのせは苦笑いした。
「おいおい、物騒だな。壺でも買わせる気か?」
「壺? そんなもん売ってないぜ! ま、安心しろよ!俺たちが、アレをぶっ飛ばすからさ!」
「笑顔が眩しい……」
ちょっとした皮肉のつもりだったがヴァールの輝くような笑顔にあてられてここのせは逆に消沈してしまう。
そんなここのせの様子にゆきはくすくすと笑った。
「とても詐欺師さんには見えませんねぇ」
それから良平が再び話題を戻す。
「けど、その話が本当だったとして、そんな人たちがなんでWSCなんかに出てるの?」
「世界中の有力なデュエリストに接触する、という意味合いが大きい」
「接触……?」
「ああ。状況を説明し、場合によっては協力を要請するために、な」
アルスが答えた内容にゆきが「あっ……!」と思い出したように手を叩いた。
「だからホテルのセレモニーでクイーンさんと話してたんですね!」
WSC本戦の開会式の後にあったセレモニーでクイーンに話しかけた人物たちと目の前の人物が重なった。
セレナはさらに続ける。
「ルーンの瞳が感じ取っている時空の歪みはスウェーデンだけでなく、世界中で発生しています。わたしたちだけじゃ手が足りないんです……」
「え!? ちょ、ちょっと待って! 時空の歪み……?」
亜美が口を開けて、半ば叫ぶように言うのでセレナはやや肩を跳ねさせた。
続けて良平も眉を顰めて言葉を紡いだ。
「その時空の歪みが起こると、さっきみたいなモンスターが現れるってこと……?」
「ええ。今のところ、そうじゃないかと考えてるわ」
ミーティスははっきりと頷き、肯定した。
聞いたことがある言葉にここのせは恐る恐るといった様子で声を出した。
「歪み……。そいつはひょっとして時空震……か……?」
「恵さんが言ってた言葉ですね……」
ゆきも小さく頷く。
やや逡巡の後、亜美は隣に立つ恵へと視線を落とした。
「……恵! アンタが言う時空震ってこれのことなの……?」
「……ん……」
コクリと恵は頷いた。
誤魔化すでも動揺するでもなく。
明らかに動揺したのは相手の方だった。
「なに……!?」
「なんだってぇぇ!!? じゃあ、お前も俺たちみたいに、歪みが見えるってことか!?」
「……正確には観測が可能……」
アルスとヴァールの驚愕の眼差しに恵は臆せずに答える。
セレナは信じられないと言わんばかりに空いた口を両手で抑えている。
「ルーンの瞳なしに、歪みを見ることができるなんて……。一体どうやって……?」
「……」
恵はただ真っ直ぐに視線を返す。
隠すことも逃げることもせず。
「!!」
突如、アルスの左目が痛烈に輝いた。
ルーン文字が浮かび、そのまま恵を貫くような勢いで見据えた。
そして何かを読み取ったアルスは眉を吊り上げた。
「……貴様……! 人間ではないな……!? 何者だ……!?」
まるで敵を見つけたかのような怒りさえ感じられる声にゆきも良平も亜美も恵に目を向けた。
「え……?」
「人間じゃ……ない……?」
「恵……」
恵は変わらず無表情で、そして当たり前のように言う。
「……私はイリアステルのデュエルロイド。識別IDはCXD-4003……」
セレナがはっと息を呑む。
それだけでなくミーティスもヴァールも、そしてアルスも目を見開く。
「なっ……!?」
「イリアステル……?」
「イリアステルだと!?」
あまりの態度の違いにここのせは怪訝な顔をして相手を見た。
「な、なんだよ急に……」
するとセレナが深呼吸するように胸に手を当てて言った。
「イリアステル……! 先代の所持者が戦ったという世界を破滅に導く組織……!」
「ジョークってわけじゃないよな?」
確認するようにヴァールは聞くも恵は変わらず頷いた。
ミーティスは腕を組んでセレナとアルスの方に向く。
「先代と不動遊星が協力して倒したって聞いてたけど、まさか……」
「生き残りがいた、ということかな……」
「今回の事件も、貴様らイリアステルが関わっている、ということか……!? 何が目的だ……!? 答えろ……!」
アルスはまっすぐに立つ恵に詰め寄り声を荒げた。
一方の恵は何も答えずにただ視線を返している。
「ちょっと待った!」
バッと亜美は慌てて恵の前に立つ。
割って入るように強引にアルスの身体を押し込んで。
「正直、話に全くついていけてないけど……。恵を疑ってんなら見当違いよ」
「……その根拠はなんだ」
「アタシたちは、ずっと一緒にいたもの。さっきの化け物をどうこうしてる様子なんてなかったわよ」
「お前たちが騙されているかもしれない」
未だに鋭い目つきのアルスの言葉を今度はここのせが首を振る。
「騙されてなんかないぜ。前からデュエルロイドだって言ってたからな。……オレ達が信じてなかっただけで……」
「……とにかくイリアステルの名が出た以上、警戒しないわけにはいかない。そいつ以外にもイリアステルの仲間がいる可能性もある」
苛立ちを隠せないような様子でアルスは睨め付けている。
無表情の恵はその視線をうけながら口を開いた。
「……否定する。そもそもイリアステルは、マスター、末端のデュエルロイド含め全滅している……。……稼働しているのは私だけ……」
「……悪いが信じることはできない。ルーンの瞳は人間の嘘を見抜くが、心を持たないものはわからない」
「なっ……!」
アルスの言葉に亜美は眉を吊り上げた。
流石に言葉が過ぎたのかセレナがアルスの肩に触れて嗜める。
「あ、アルス……!」
しかし亜美はそれでは治らず、噛み付くような勢いでアルスを見上げた。
「アンタねぇ……! 言っていいことと悪いことがあるでしょ!」
「事実だ。イリアステルは平気で人を殺す連中。そんな者に人間の心はない」
「恵はねぇ……!」
「ストォォォォォォォォップッ!!!」
バッと急にヴァールが二人の間に割って入り、両手のヒラを互いの顔に向けた。
二人は思わず後退してしまう。
「ッ……!」
「な、何よ……?」
「喧嘩なんて意味ないぜ! ……アルス、ちょっと言いすぎだ、ちゃんとごめんなさいしなきゃ」
「ふん……」
「ごめんな! アルスは真面目なんだ! 今起きてる問題を解決するために必死なんだよ」
ヴァールはまた人懐っこい笑みを見せて亜美に向く。
それから両手を腰に当てて口を開けた。
「で、さっきの話だけどさ。ぶっちゃけ俺もイリアステルとかいうのはよくわかんねぇから話を聞きたい。けど、そのイリアステルってのが危ないやつらなら信用できないかもしれない。けど、お前らは仲間を信用できないって言われて嫌な気分になる。けど、俺たちもすぐには信じられない。けど……あれ? 俺、何が言いたいんだ?」
途中でこんがらがったのかヴァールは自分の言葉に首を傾げた。
そんな彼にミーティスはまた拳を見せる。
「あんた……ちょっとは考えてから喋りなさいよ!」
「わぁぁ、待て待て! ……そういう訳わかんねぇことになったら、やるべきことは一つだろ!」
ビシリとヴァールは人差し指を上にむける。
その指先を見ながら良平がおうむ返しした。
「やるべきこと?」
「ああ! 目を見て信じる!それが無理なら心で信じる! それでもダメならーーーー」
腰からデッキを引き抜き見せつけるように差し向けた。
「ーーデュエルで決着つける! それが俺たち決闘者の常識だろ!?」
デッキトップには白い枠に神々しいカードがあった。
その向こう側には信念をまっすぐに持ったデュエリストがいた。
「信じる信じないっていうのは正直すぐにできるもんじゃない!何が本当で、何が間違いかなんてすぐにはわからないからな! だから、デュエルだ! デュエルを通じてわかることがあるって、俺はそう思うぜ!」
自信満々に言い切ったヴァールの言葉にミーティスはため息をつく。
「ちょっと、極論すぎ……」
「そうかぁ?」
一方のヴァールは本気で言っていたらしく逆に首を傾げている。
そんなまっすぐなデュエリストの言葉に亜美は笑いが込み上げてきた。
「……っぷ、あはははっ! アンタ、中々デュエル馬鹿ね! けど、アタシも一緒よ。そうね、デュエルで決着つけましょ!」
「おっ、いける口だな!」
「アンタ達が勝ったら、好きなだけ恵を疑えばいいわ! そのかわり、アタシたちが勝ったら、さっきの言葉撤回してもらうわよ! それと、アンタらが知ってること全部教えてもらうから!」
ビシッと今度は亜美が指を差し向けた。
アルスはというと変わらず鋭い目つきにでこちらをみている。
それからヴァールは腕につけたデュエルディスクを展開させデッキをセットする。
「よし、きた! 正々堂々勝負だ! 負けないぜ!」
「え? 今やんの?」
「え? やんないの?」
亜美のツッコミにキョトンとヴァールは目を丸くする。
頭の上にはハテナマークが浮かんでいるのが目に浮かんだ。
ここのせは手をひらひらさせて言う。
「オレ達は明日、嫌でも戦うんだぜ?」
「あぁ、忘れてたぜ! はははっ!」
頭をガシガシとかいてヴァールは豪快に笑う。
それから亜美を指差して言ってのけた。
「チームHERO! 俺たちは明日、手加減なしでいく! お前らも全力でぶつかってこい!」
「当たり前だってーの! アタシたちのデュエル、舐めんじゃないわよ!」
二人の視線がぶつかり合い、今にも火が上がらんばかりであった。
空は夕に変わり閑散とした広場には一陣の風が吹いていた。
前編で恵についての話を深掘りする予定でしたが、文字数が2万を超えてしまうので泣く泣く中編を用意します。
デュエルまで今しばらくお待ちください!!
◾️アンケートを新しく用意しました。
よろしければ回答いただければ嬉しいです。
まだ感想等をお聞かせいただけるととても励みになります。
よろしくお願い申し上げます。
小説形式について 地の文やテキスト量
-
読みやすい(テキスト量が妥当)
-
前の方が読みやすい
-
地の文が長い
-
誰が喋っているかわかりにくい