遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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▪️注意
前回から引き続き、神のカードである三極神が登場します。
効果テキストはアニメから確認できるものを使用。(詳しい効果テキストは22話中編をご参照ください)
今回の話で登場する神のカードを使用したコンボは現実のOCGでは不可能です。
ご了承ください。


第24話「WSC本戦2回戦 ライフアドバンテージ」前編

[日本 ネオ童実野シティ 水原宅 夜]

 

ストックホルムは北緯約59度、東経約18度に存在し、日本から8000キロ近く離れているという。

時差は大凡8時間で日付変更線に近い分日本の方が早く進んでいる。

つまり試合開始が現地時間の昼過ぎでも日本ではもう夜ということだ。

ネオ童実野シティの郊外にある一室では、夜更けの最中、テレビが煌々と光っている。

画面には真紅眼の不屍竜が紫色のエネルギー弾を吐き出したところだった。

テレビの前に市原桃胡--くるみんが座って両手を握りしめて声を上げる。

 

「おぉルインさん、やるじゃないか!」

 

そんな声を無視して、この部屋の主である水原忠一は同じ机に座ってノートパソコンのキーボードをカタカタとはじいていた。

そんな彼の手元を見てくるみんは眉をひそめて言う。

 

「ちょっと水原くーん! タイピングがうるさいよ!」

 

「Cブロックの他チームのカードを分析しろって言ったのは、市原さんだったと思うけど」

 

「そうとも! でも君ならもっと静かにタイピングくらいできるだろう?」

 

「なんだその無茶ぶり……。文句があるなら自分の家で見ればよかっただろ。わざわざ、ウチに来なくてもさ」

 

「おやおや、このプリチーな天才女子高生とひとときを過ごせるというのに、ドライなことを言うじゃないか」

 

「プリチーな女子高生だから言ってるんだけど?」

 

「見張りだよ。時差で遅い時間にやるんだ。どうせ君は寝てしまうだろう?」

 

「……さいで」

 

自信満々ににんまりと笑うくるみんに、忠一は閉口してしまう。

そんならやりとりを尻目にテレビの画面では歓声と共に解説の声が聞こえた。

見ると、チームラグナロクファーストプレイヤーであるアルス・ヴェインのライフポイントが0になっていた。

くるみんはテレビに釘付けになって声をあげる。

 

「おっ! ヒーロー部が1勝取ったよ!」

 

忠一も流石に顔を上げてテレビ画面を見た。

そこにはテロップでチームHEROに白星がついていて、チームHEROファーストプレイヤー、ルイン恵がフィールドを見つめている。

 

「……神のカードとやらが出た時はどうなるかと思ったけどね」

 

「しかし、ルインさんのライフは100、これは一概に有利とは言えないね」

 

「そういうもんか」

 

忠一が再び視線をpc画面に戻そうとした瞬間だった。

テレビ画面が切り替わり『ーー時になりました。ニュースをお伝えします』と音声も何もない真面目なアナウンサーの独壇場になってしまう。

 

くるみんは思わず「あっ」と口を開く。

 

『童実野病院で入院中だった女子高生が行方不明となっている事件で、捜査関係者はーー』

 

テレビの中のアナウンサーはこちらの事情などお構いなしに捲し立てる。

くるみんはあちこちを見回して忠一に尋ねた。

 

「ニュースに切り替わってしまったよ。水原くん、リモコンは?」

 

「はいはい……」

 

忠一はそばにあったリモコンを操作する。

テレビは画面が切り替わり、別のチャンネルに変更された。

すると再び画面はWSC本戦2回戦 ストックホルムデュエルコロシアムを映し出した。

 

 

 

第24話

「ライフアドバンテージ」

 

 

[スウェーデン ストックホルムデュエルコロシアム チームラグナロク側ベンチ]

 

 

フィールドには圧倒的なアンデット集団が我が物顔で居座っていた。

電光掲示板はチカチカと明滅しプレイヤーチェンジを促している。

ヴァールは銀色の髪をかき上げて声を上げた。

 

「まさか、アルスがやられちまうなんて! 話題になってるだけはあるぜ、チームHERO! こっちも負けてらんないぜ! 頼むぞ、ミーティス!」

 

振り向くとそこには青髪のショートカットーーミーティスが自身のデュエルディスクにデッキをセットしているところだった。

ミーティスはヴァールの言葉に頷くとベンチを飛び出して行った。

 

「よーし、目にもの見せてあげるわ!」

 

[デュエルフィールド]

 

フィールドに立つアルスは、未だ白煙を上げているフィールドを呆然とみつめながら歯を食い縛った。

 

「……くっ……!」

 

そんな彼の後ろからミーティスが肩を叩いて声をかけた。

 

「アルス! お疲れ! 交代するわ!」

 

「……すまない」

 

「謝ることなんてないわ! あとは任せて!」

 

パチンとウィンクをしてみせるミーティス。

そしてスレンダーな肢体に見合わぬデュエルディスクを展開させた。

 

[チームラグナロク側ベンチ]

 

ラグナロクベンチに戻ってきたアルスは出迎えてくれたセレナとヴァールの顔を見た。

セレナは心配そうにアルスを見上げ、疲れたであろう彼の手を握る。

 

「アルス……! ……お疲れ様」

 

「……すまない。いいようにやられてしまった」

 

悔しげなアルスにヴァールはにかっと笑い、背中をバシバシと叩いた。

 

「何言ってんだよ! 相手をあそこまで削ったんだぜ!? それに、まだまだデュエルは続く! こっからだぜ!」

 

ヴァールの弾けるような笑顔にアルスは思わずふっと笑みが溢れ、顔を上げてフィールドに向く。

 

「……ああ。そうだな」

 

[デュエルフィールド]

 

然してデュエルフィールド。

フィールドに佇むはアンデットの遣い手。

席巻するは誇り高き紅き瞳の屍の竜。

ミーティスはそれらに臆することなくデュエルディスクを構えた。

 

「次は私が相手! もう好きにはさせないわよ!」

 

ミーティス・ティシアー

LP4000

手札5

フィールド:なし

墓地・除外ゾーン 0

 

恵は僅かに頷いて口を開く。

 

「……デュエルを続行する……」

 

プレイヤーチェンジが完了しデュエルはメインフェイズ2から再開された。

 

ーメインフェイズ2ー

 

恵は、しかし手札にもマジックトラップゾーンにもプレイ可能なカードはない。

 

「……私はこのままターンを終了する……」

 

ーエンドフェイズー

 

ルイン恵

LP100

手札0

伏せ0

フィールド:

牛頭鬼

真紅眼の不屍竜

 

ードローフェイズー

 

ミーティスはデッキトップのカードに指をかけ、そして引き抜く。

 

「いっくわよー! 私のターン!」

手札5→6

 

[スタンバイフェイズ]

 

ドローフェイズからスタンバイフェイズへ移行した瞬間、恵は声を出した。

 

「……スタンバイフェイズ時、墓地の屍界のバンシーを除外して効果を発動する……」

 

予想外の動作にミーティスは思わず目を丸くした。

 

「……え?」

 

対する恵は一切動じずに効果を宣言する。

 

「……屍界のバンシーは、自身を墓地から除外することで、デッキからアンデット・ワールドを発動することかできる……」

 

《アンデット・ワールド》

フィールド魔法

 

コポコポと再び地面が湧き上がり、毒々しい色の沼が展開される。

世界は暗雲立ち込める荒廃した世界へと再び変貌した。

ミーティスは辺りを見回して口を開ける。

 

「なっ!? う、うそぉ……!?」

 

「……さらに、スタンバイフェイズ時に、フィールドゾーンにカードが存在するため、墓地の死霊王ドーハスーラを特殊召喚する……」

 

追撃とばかりに恵はバシッとフィールドゾーンにカードを置いた。

幾度も甦る死霊の王を。

毒の沼からどろどろの身体を引きずってそれは現れる。

 

死霊王ドーハスーラ

守:2000 闇 アンデット族 星8

 

「ゥゥゥゥゥゥォオオ……!!」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「うわっ……!」と ツァンはピンク色の短髪を振り乱し、まるで毒虫が出たかのような声を出す。

 

「また出た……!」

 

その隣で美優も同意を示すように深く頷き、顎に手を当てる。

 

「……死霊王ドーハスーラ……恐ろしいカードね……!」

 

「はぁ……」と雪乃もため息とともに眉を八の字にした。

 

「できれば相手したくないわね、あの娘とは……」

 

 

[デュエルフィールド]

 

ーメインフェイズー

 

ミーティスは「くぅ……!」と喉を鳴らす。

 

「やったな……!」

 

「……」

 

一方恵は答えない。

ただ整然と傍観しているだけ。

ミーティスは一転唇の端を上げてカードを差し向けた。

 

「けど、屈しないんだから! 手札から、精神操作を発動!」

 

《精神操作》

通常魔法

 

「フィールドのモンスター、ドーハスーラを対象に、そのモンスターのコントロールを得る!!」

 

ミーティスはその白く整った指で死霊王ドーハスーラを指名する。

するとどこからともなくピアノ線のような糸がちらちらと光を反射すせながら伸びてきてドーハスーラの四肢を絡めとる。

やがて操り人形のようにぎこちなく引きずられるように恵のフィールドを離れてミーティスのしもべに相なった。

 

「これで、妨害はなくなった! アロマージ・ジャスミンを召喚!」

 

アロマージ・ジャスミン

攻:100 光 植物族→アンデット族 星2

 

「うぅ……」

 

勢いよくフィールドに飛び出したのは青白い髪の少女であった。

しかしみずみずしい肌はすぐさま腐りドロドロとアンデットに変貌していく。

ジャスミンは涙を流してフィールドに呼び出したミーティスを見上げる。

ミーティスは内心で謝りながらさらにカードを出す。

 

「え、えぇっと、さらに手札からフィールド魔法、アロマガーデンを発動!」

 

《アロマガーデン》

フィールド魔法

 

フィールドに貼った瞬間、花びらが一斉に舞い上がり美しい花畑がミーティス側のフィールドを埋め尽くす。

半分はアンデットワールドに侵食されており拮抗している。

 

「アロマガーデンは、フィールドにアロマモンスターがいる場合、ライフを500回復できるわ! そして、その効果を発動した場合、私のフィールドのモンスターの攻守は500アップする!」

 

ミーティス・ティシアー

LP4000→4500

 

ライフポイントの回復とともにフィールドのアロマージ・ジャスミンが動いた。

補足するようにミーティスは口を開く。

 

「ライフを回復したとき、フィールドのアロマージ・ジャスミンの効果発動! ライフを500回復したとき、1枚ドローできる! ついでに、コントロールを得たドーハスーラの効果も発動! アンデットモンスターが効果を発動したのでモンスター1体を除外!」

 

chain1 アロマージ・ジャスミン

 

chain2 死霊王ドーハスーラ

 

チェーンが組まれ、これ以上発動するカードがないことを確認すると逆順で処理が始まっていく。

 

「まずは、ドーハスーラの効果で、真紅眼の不屍竜を除外よ!」

 

ドーハスーラから瘴気が噴出し、真紅眼の不屍竜を包み込む。

「グギァァァァ!?」

と苦しそうに咆哮する真紅眼の不屍竜だったがやがて瘴気とともに消えていった。

 

「そして、ジャスミンの効果で1枚ドロー!」

手札3→4

 

ミーティスは引いたカードを一瞥してから手札に加えると、見せつけるように右手手を右下に振り下ろして宣言した。

 

「さらに、ジャスミンは私のライフが貴女より多い場合、植物族モンスターを追加で召喚できる! この効果でスポーアを追加召喚!」

 

スポーア

攻:400 風 植物族→アンデット族 星1 チューナー

 

「まだまだ行くわよ! 手札のアロマージ・ローリエの効果発動! ローリエは相手よりライフが多いとき、特殊召喚できる!」

 

アロマージ・ローリエ

守:0 風 植物族→アンデット族 星1

 

フィールドには4体ものモンスター。

そしてその内の1体はチューナーモンスター。

ミーティスは恵をまっすぐに見据えて声を出した。

 

「レベル8の死霊王ドーハスーラとレベル1のアロマージ・ローリエに、レベル1のスポーアをチューニング!」

 

☆8+☆1+☆1=☆10

 

スポーアの身体がシンクロリングへと変わりドーハスーラとローリエを包み込む。

柔らかい花の香とともにそれらは星へと還元された。

 

「ーー星界より生まれし気まぐれなる神! 絶対の力を示しこの世界を笑いなさい!」

 

やがて詠み上がる魂の詠唱。

天空は雷鳴を上げ、光が雲を割いていく。

ミーティスの瞳が一層強く輝いた。

 

「シンクロ召喚! きて! 極神皇ロキ!」

 

ミーティスはそのカードを天高く掲げた。

周囲を雷鳴が取り囲みやがて天を切り裂いていく。

やがて天空から現れたのは魔法使いのようなロングハットにローブを身につけた神であった。

 

極神皇ロキ

攻:3300→3800 神 幻獣神族→アンデット族 星10

 

「ふははははははッ」

 

低く響く神の笑い声。

極神皇ロキはまるで銃を構えるように人差し指を差し向けた。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

圧倒されるような重い雰囲気。

圧巻の巨躯にここのせは思わず声を上げた。

 

「出やがった!! 二体目の神! 極神皇ロキ……!」

 

[デュエルフィールド]

 

会場は騒然とした。

伝説の神のカードが目の前に。

それも2体目。

スタンドでは祈りを捧げる者までいた。

そんな神を背に従え、ミーティスは煌々と輝く左眼ーールーンの瞳を恵に向けて宣言する。

 

「バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

「極神皇ロキで、牛頭鬼に攻撃!! ヴァニティ・バレット!!」

 

ミーティスは痛烈に指を差し、攻撃宣言を行なった。

ニヤリとロキは笑い、手を銃のような形にしてフィールドに向ける。

まるで激鉄を下ろすように親指を下げると指先にエネルギーが集約していく。

ミーティスはさらに言葉を紡ぐ。

 

「攻撃宣言時、フィールドのマジック・トラップを発動と効果を無効にして破壊するわ! アンデット・ワールドを破壊して、ロキ!」

 

ミーティスの声に呼応してロキは銃を模した手を構える。

そして、一瞬の嘲笑を浮かべてその指先からエネルギー弾をはじき出した。

それは凄まじい速度と衝撃を以って地面に着弾する。

そこから空間を打ち破るかのように炸裂しアンデット・ワールドをバラバラに砕いてしまった。

 

「……ふははっ!」

 

チャキッと音がしてロキは照準を牛頭鬼に定める。

そして口に笑みを浮かべたまま弾丸を打ち出した。

耐えがたい熱量を持ったエネルギー弾を数発浴びた牛頭鬼は断末魔を上げて爆発する。

そして周囲を灼熱の爆風が一気に拡散してすべてを薙ぎ払っていく。

 

「……うっ……」

 

ルイン恵

LP100→0

 

爆炎に恵はたまらずに呻き声を漏らす。

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

その余波はフィールドを超えてチームHEROのベンチまでも呑み込み、突風はその場にいた全員の髪や衣服を痛烈になびかせた。

地面が揺れるような衝撃にゆきは思わず悲鳴を上げる。

 

「ひゃあ!?」

 

突風が収まりようやく目を開いたところで良平も眉をひそめてフィールドを見つめなおす。

 

「なんてパワーだ……」

 

亜美は負けじとフィールを睨み、組んだ腕の先で指先をとんとんと叩く。

 

「トールといいロキといいド派手にやってくれるじゃない……! ここのせ! こっちも迎え撃つわよ!」

 

「おう!」と返事をするや否やここのせは走ってベンチを飛び出していく。

 

そんな彼の背中を美優は訝しげに見つめた。

彼女に同意するかのように雪乃は隣に立つツァンに耳打ちする。

 

「彼、私たちとのデュエルでは控えだったわよね? 神相手にちゃんと戦えるのかしら?」

 

「どうかな……」

 

[デュエルフィールド]

 

ーメインフェイズ2ー

 

ライフポイントが0になった恵は、しかしその場を離れない。

相手の手札を見てその数はまだ交代するには危険と見たのだろう。

 

「……」

 

一方のミーティスは小さくガッツポーズをして笑みをこぼすと手札のカードをマジックトラップスロットに差し込む。

 

「よし! まずは1勝取り返したわ! カードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

彼女の足元に裏側のカードが二枚表示されて、やがて地面へと潜り込んでいく。

 

ーエンドフェイズー

 

ミーティス・ティシアー

LP4500

手札0

マジックトラップ:

伏せ2

フィールドゾーン:

アロマガーデン

フィールド:

アロマージ・ジャスミン

極神皇ロキ

 

 

フィールドはここで一時中断となり、後ろからの足音に恵は振り返った。

そこにはベンチから駆け寄ってきたここのせがいた。

 

「恵! ナイスデュエルだったぜ! チェンジだ!」

 

「……ん……」

 

恵はゆっくり頷くと慣れた手付きでデュエルディスクを外して、セットされたデッキを抜き取ると、ここのせへと渡す。

ここのせはこれを受け取ると同じく慣れた手付きで自分の腕にセットした。

ディスクにデッキを差し込んで認識させたところで恵が口を開く。

 

「……フィールドにカードを残すことができなかった。ごめんなさい……」

 

「何言ってやがんだ。十分すぎる結果だぜ」

 

「……しかし、二体目の神の召喚を許してしまった……」

 

「へっ、神1体くらい、なんとかしてみせらぁ!」

 

「……そう。頑張って……」

 

それだけ言うと恵は踵を返してベンチへと戻っていく。

同じくここのせもフィールドに向きなおす。

そこには対戦相手、即ちチームラグナロクのセカンドプレイヤーがそこにいた。

ここのせがディスクを構えるとディスクがデュエルモードへと再び切り替わった。

 

「待たせたな。こっからはオレが相手だぜ」

 

能勢 心

手札5

LP4000

 

ミーティスは自分を鼓舞するように笑みを浮かべてここのせの視線を受け止めた。

 

「負けないわよ!」

 

ードローフェイズー

 

デュエルはチームHERO側のドローフェイズから再開された。

ここのせは唸る心臓を他所にデッキトップのカードを抜く。

 

「オレのターン!」

手札5→6

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

スタンバイフェイズにお互い発動するカードはなく素早くフェイズが進行していく。

ここのせは手札を一瞥するとカードを抜き取りマジックトラップスロットに入れた。

 

「マジックカード、九字切りの呪符を発動!」

 

《九字切りの呪符》

通常魔法

 

「手札のレベル9モンスター、夢幻転星イドリースを墓地に送って、カードを2枚ドロー!」

手札4→6

 

カードをセメタリ―ゾーンへ送ってからデッキトップからさらにカードを2枚引いた。

交換した手札を見てここのせはしめたと思った。

 

「よし、手札から永続魔法、超重機回送を発動!」

 

超重機回送(ヘビーフォワード)

永続魔法

 

「このカードの発動時、デッキから無限起動モンスターを手札に加えることできる! この効果で、無限起動ロックアンカーを手札に加えるぜ」

手札5→6

 

デッキから選出されたカードを抜き取り、それを見えるように相手に指し示す。

それから手札に加えることはせずにそれをそのままメインモンスターゾーンへ置いた。

 

「そのまま、ロックアンカーを召喚!」

 

無限起動ロックアンカー

攻:1800 地 機械族 星4

 

キュラキュラと履帯が回転する音が鳴り響き、巨大なショベルカーが現れる。

 

「ロックアンカーが召喚・特殊召喚に成功した場合、手札から地属性機械族モンスターを守備表示で特殊召喚できる! こい、ハーヴェスター!」

 

無限起動ハーヴェスター

守:2100 地 機械族 星2

 

今度は同じく履帯の音を響かせながらコンバインが地面を削りながら走る。

 

「ハーヴェスターは、召喚・特殊召喚に成功した場合、デッキから無限起動モンスターを手札に加えられる! この効果で、無限起動キャンサークレーンを手札に加えるぜ!」

手札3→4

 

現れた二体のモンスターを睨みながらミーティスは声を出す。

 

「無限起動! 貴方、機械族デッキね!」

 

そんな指摘にここのせは強がるように口の端を上げて言葉を返す。

 

「……どうかな! 今手札に加えたキャンサークレーンは、フィールドの地属性機械族をリリースすることで、守備表示で特殊召喚できる! ハーヴェスターをリリースして、こい! キャンサークレーン!」

 

無限起動キャンサークレーン

守:500 地 機械族 星5

 

ハーベスターが消え去り、その場所に今度は履帯を履いたクレーン車が陣取った。

ここのせはさらに続ける。

 

「キャンサークレーンの効果発動! 墓地の地属性機械族、ハーヴェスターを除外することで、デッキから超接地展開を手札に加えることができる!そいつをそのまま発動だ!」

 

超接地展開(アウトリガー・エクスパンド)

永続魔法

 

ここのせのフィールドに電磁気を帯びた陣が浮かび上がる。

 

「このカードがフィールドにある限り、オレのフィールドの機械族エクシーズモンスターは効果の対象にならないぜ!」

 

「ふぅん。けど、貴方のフィールドのモンスターはレベル4とレベル5。エクシーズはできないわ!」

 

「レベルが合わねぇなら合わせちまえばいい! ロックアンカーのもう一つの効果を発動!自身とフィールドの他の機械族モンスターを対象とし、それらのモンスターのレベルを二つの合計の数値に変更できる! レベルの合計は9!」

 

ロックアンカーがエンジンを唸らせて黒い煙を吐く。

そんな様子にミーティスは慌ててマジックトラップボタンを押し込む。

 

「うそっ! それはまずい! リバースカードオープン! ディストラクト・ポーション!」

 

《ディストラクト・ポーション》

通常罠

 

「さらに、もう一枚! 永続トラップ、渇きの風も発動!」

 

《渇きの風》

永続罠

 

chain1 無限起動ロックアンカー

 

chain2 ディストラクト・ポーション

 

chain3 渇きの風

 

3枚のカードの応酬、そして始まる逆順の処理。

ミーティスは足元に起き上がっているカードを指さして宣言する。

 

「渇きの風は、全てを蝕む破滅の突風を巻き起こすわ! 私のライフが回復したとき、相手フィールドのモンスター1体を破壊する!」

 

「なにぃ……!?」

 

意想外の妨害にここのせは目を見開く。

ミーティスの言葉はまだ終わらない。

 

「さらにディストラクト・ポーションの効果発動! 私のフィールドのモンスターを破壊して、そのモンスターの攻撃力分のライフを回復する! 私が破壊するのは、極神皇ロキ!」

 

極神皇ロキは悲鳴を上げるでもなく、ただ不敵な笑みを残して消えていく。

そしてその攻撃力3300とフィールド魔法《アロマガーデン》の補正500ポイントの合計3800ポイントのライフをミーティスに与えた。

 

ミーティス・ティシアー

LP4500→8300

 

無限起動ロックアンカー

星4→9

 

無限起動キャンサークレーン

星5→9

 

 

すべての効果処理を終えた次の瞬間に発動した渇きの風が鈍く光る。

 

「私のライフが回復したことで、渇きの風とアロマージ・ジャスミンの効果がそれぞれ発動するわ! 渇きの風の対象は、ロックアンカー!」

 

chain1 渇きの風

 

chain2 アロマージ・ジャスミン

 

再び組まれるカードのチェーン。

しかしそこにここのせのカードはない。

 

「まずは、ジャスミンの効果でカードを1枚ドロー!」

手札0→1

 

カードを引き込んでそれからミーティスは再びフィールドに目線を向ける。

 

「そして、渇きの風の効果でロックアンカーを破壊!!」

 

発動中の罠カードから凄まじい突風が吹く。

まるで砂漠の中を吹き荒ぶ砂嵐のように、あるいは冬の寒空を駆ける肌を傷つけるような風がロックアンカーを吹いていく。

ロックアンカーは見る間に錆びだらけに風化していき、やがて脆く崩壊してしまった。

 

「ぐっ……! ロックアンカーが錆だらけになっちまった……!」

 

「これで、エクシーズはできないわ!」

 

「くそったれ! 渇きの風……! 厄介なカードだぜ……!」

 

それからここのせは自分の手札を見つめる。

頭の後ろには冷や汗。

心臓をきゅっと掴まれたような閉塞感を感じる。

 

(早速まずい状況だぜこりゃ……!植物族相手にこのままターン返したら、ワンショットされるぞ……!)

 

焦りを感じながらもここのせはフィールドに目を向ける。

ミーティスの足元に発動中の罠カード。

 

(渇きの風……。ライフを回復した時にモンスターを破壊する効果と場にアロマがいるときライフの差分コストを払うことで対象を取らずに破壊する効果)

 

どちらも限定的ではあるが強力な除去効果を持つ。

 

(くそ、多少強引だけど仕方ねぇ……!)

 

できれば温存しておきたかったカードを渋々手札から抜き、スロットに放り込む。

 

「手札から死者蘇生を発動!!」

 

《死者蘇生》

通常魔法

 

「墓地のモンスターを復活させる! 墓地から戻ってこい! 夢幻転生イドリース!!」

 

夢幻転生イドリース

攻:2100 闇 天使族 星9

 

「うふふ……」

 

妖艶な笑みを浮かべながら下半身が蛇になっている青い長髪の女がフィールドに這いずり出る。

 

「イドリースが場にいるとき、オレのフィールドのレベル9モンスターは効果で破壊されなくなるぜ!」

 

場に呼び出したカードが破壊できぬと知ってミーティスはへぇと声を漏らす。

それを無視してここのせは覚悟を以ってフェイズを進めた。

 

「いくぞ! バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

「いけ! イドリース! アロマージ・ジャスミンに攻撃!」

 

夢幻転生イドリース

攻:2100

 

「シャァァッ!」

アロマージ・ジャスミン

攻:600

 

「きゃあっ!」

 

イドリースの締め付けを受けてアロマージ・ジャスミンは成す術なく散っていく

 

 

ミーティス・ティシアー

LP:8300→6800

 

余波がミーティスのライフをわずかに削るも彼女はどこ吹く風でカードを宣言する。

 

「フィールドの植物族が破壊された時、手札のアロマージ・マジョラムとフィールドのアロマガーデンの効果が発動するわ!」

 

chain1 アロマージ・マジョラム

 

chain2 アロマガーデン

 

 

「アロマガーデンは、アロマが破壊された場合、ライフを1000回復できるわ!」

 

ミーティス・ティシアー

LP6800→7800

 

「さらに、アロマージ・マジョラムは、植物族が戦闘破壊されたとき手札から特殊召喚できる! でてきて、マジョラム!」

 

アロマージ・マジョラム

攻:2000 闇 植物族 星5

 

「ふふ……」

 

黒いジャケットにニット生地のワンピースを着た女が花をあしらった杖を携えて優雅にフィールドへ降り立った。

 

 

「アロマージ・マジョラムの特殊召喚の後、さらに500ポイント、ライフを回復!」

 

アロマージ・マジョラム

LP7800→8300

 

ライフカウンターが逆回転し、まるで再生したかのようにミーティスのライフポイントは元の木阿弥。

ここのせはそんな彼女のライフポイントを見て驚愕に声を上げた。

 

「なっ……!? 与えたダメージ分、まるっと回復しやがった……!?」

 

「それだけじゃない!マジョラムは、ライフを回復したとき、フィールドのアロマの数だけ貴方の墓地のカードを除外できるわ! 墓地のロックアンカーを除外!」

 

「ぐっ……!」

 

ここのせは苦しそうな声を上げながらセメタリーゾーンを操作してカードを除外する。

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

その圧倒的なライフポイントにゆきはまるで自分がフィールドに立っているかのように動揺した顔で細く揺れた声を出した。

 

「ら、ライフが8300……!! 二人分以上のライフを削らないといけないなんて……!」

 

腕を組んでフィールドを見ていた亜美も思わず手をほどいて拳を握る。

 

「ライフアドバンテージ……! 普段はあんまり気にしないけど、こうされるといかに重要かわかるわね……!」

 

[デュエルフィールド]

 

ーメインフェイズ2ー

 

(くそ! どんだけ回復しやがるんだ!)

 

ここのせは心の中で悪態つく。

否、悪態を付きたいのは自分自身にだ。

ここまで相手にダメージを与えらず、自分のカードだけが消費されていく。

フィールドにはレベル9モンスターが2体。

本来ならば切り札を呼び出したいが。

 

(エクシーズしたら渇きの風でやられちまう……!)

 

渇きの風の後半の効果は対処を取らぬ破壊である。

超接地展開の守備範囲外だった。

 

「……ッ……カードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

悔しさをにじませてここのせはカード二枚をスロットに入れた。

無機質な音がして足元にカードが現れては地面へと消えていく。

 

ーエンドフェイズー

 

フェイズが進行した瞬間、待ってましたとばかりにミーティスは言葉を紡ぐ。

 

「そのエンドフェイズ時! 破壊したロキがフィールドに舞い戻るわ!」

 

セメタリーゾーンから送られてきたカードをミーティスは再び力強くメインモンスターゾーンへと叩きつけた。

天空は歓迎のファンファーレを鳴らし、雲は切り裂かれ、光と共に神が再臨する。

 

極神皇ロキ

攻:3300 神 幻獣神族 星10

 

「フハハハハハハハハハハハッ」

 

「くそっ……!」

 

高らかに笑うロキを見上げ、ここのせは苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべた。

そんなここのせを尻目にミーティスは得意げに笑みを浮かべる。

 

「ロキが自身の効果で特殊召喚されたとき、墓地の罠カードを手札に加えることができるわ! 私は、墓地のディストラクト・ポーションを手札に加える!」

手札1→2

 

「ッ……!」

 

能勢 心

LP:4000

手札0

マジックトラップ:

伏せ2

超接地展開

超重機回送

 

フィールド:

無限起動キャンサークレーン 星5→9

夢幻転生イドリース

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

セカンドプレイヤー同士のファーストターンはここのせの劣勢で開幕した。

良平はフィールドを見ながら顎に手を当てる。

 

「まずい……! ループに入ってる……!」

 

その状況の深刻さはゆきにもわかるようで、泣きそうな顔でゆきは声を絞り出す。

 

「何とかしないと毎ターン3300も回復されちゃいますぅ……!」

 

ゆきとは対照的に表情の硬い恵も頷いて同意した。

 

「……ライフアドバンテージだけでなく、ハンドアドバンテージ、ボートアドバンテージにも差が開く……」

 

今にも乗り出す勢いの亜美が柵の淵を握りしめた。

 

「あの神を何とかしないと……!」

 

「その前に」と美優はあえて楽しむような声を出す。

 

「このターンでやられないようにしないといけないわネ!」

 

[デュエルフィールド]

 

ードローフェイズー

 

フィールドの状況はミーティスにとっては優勢。

先勝を取られているチームラグナロクとしては余裕をもってセカンドプレイヤーをねじ伏せることができればゲームエンドまでの道のりがより楽になる。

ここで畳みかけるのが吉とミーティスは軽い手付きでデッキトップを引く。

 

「さぁ、一気に攻めるわ! 私のターン!」

手札2→3

 

一方ここのせはここで楽に突破されたら一気に瓦解することは明白であった。

少なくともこのターンは耐えねばならぬ。

 

(死ぬ気で耐えるしかねぇ……!)

 

ミーティスは追撃するかのようにカードを呼び出す。

 

「アロマージ-ローズマリーを召喚!」

 

アロマージ・ローズマリー

攻:1800 水 植物族 星4

 

「フィールド魔法、アロマガーデンの効果を発動してライフを500回復! さらに、フィールドのモンスターの攻守も500アップするわ!」

 

花弁が舞い上がる。

美しき瞬間。

花の香が彼女を癒す。

 

ミーティス・ティシアー

LP8300→8800

 

極神皇ロキ 攻:3300→3800

アロマージ・ローズマリー 攻:1800→2300

アロマージ・マジョラム 攻:2000→2500

 

「さらにライフが回復したことで、アロマージ-ローズマリーと、アロマージ-マジョラムの効果が発動!」

 

chain1 アロマージ・ローズマリー

 

chain2 アロマージ・マジョラム

 

「まずはマジョラムの効果で、墓地のカードを2枚、死者蘇生と九字切りの呪符を除外!」

 

アロマージ・マジョラムは美しい髪を靡かせて手に乗せた花弁をふっ息をかけて飛ばす。

それらはここのせのデュエルディスクを包み込みカードを消し去っていく。

 

「くっ……!」

 

「ローズマリーはライフを回復した場合、フィールドのモンスターの表示形式を変更できる! 守備表示のキャンサークレーンを攻撃表示へ!」

 

アロマージ・ローズマリーが杖を掲げて花弁の突風を生み出した。

それに飲み込まれたキャンサークレーンは誤作動を起こしたように不自然な形で姿勢を変える。

 

無限起動キャンサークレーン

守→攻:2100

 

「さらに、墓地のスポーアの効果発動!デュエル中に一度だけ墓地の植物族を除外することで墓地から特殊召喚できるわ! アロマージ-ローリエを除外して、戻ってきて! スポーア!」

 

スポーア

守:800 風 植物族 星1→2 チューナー

 

「この効果で特殊召喚したスポーアは、除外したモンスターのレベルが加算される!これでスポーアのレベルは2! レベル4のアロマージ-ローズマリーに、レベル2となったスポーアをチューニング!」

 

幾分か大きくなったスポーアの身体が光の輪へと変わる。

今度は2つのシンクロリング。

そこにローズマリーが飛び込んでいく。

 

☆4+☆2=☆6

 

「ーーその花束に幸運を」

 

短い詠唱に花弁が巻き上がる。

やがてゆっくりとその花畑を歩くはこの庭の主人であった。

 

「アロマセラフィ-スウィートマジョラムをシンクロ召喚!」

 

アロマセラフィ-スウィートマジョラム

攻:2200 光 植物族 星6

 

「うふふふ……!」

 

マジョラムにステンドグラスのような羽根が生えたような女性のモンスターだった。

妖艶に笑う彼女を従えてミーティスは宣言する。

 

「スウィートマジョラムはシンクロ召喚成功時、デッキから三種類の風カードのいずれかを手札に加えられるわ! 私は、恵みの風をサーチ!」

手札1→2

 

これでミーティスの手札はすべて割れた。

そのすべてが罠カード。

故にこれ以上の展開はない。

しかしフィールドの戦力は十分。

 

「さぁ、一気に決めるわ! バトル!」

 

メインフェイズからバトルフェイズへの移行が始まる。

フェイズの移行の直前に一瞬優先権がここのせへと移る。

 

(……このままじゃロキのチェーン不可のバック破壊を食らっちまう……!)

 

フィールドで世界を笑っている神を睨みつけながらここのせはトラップカードを呼び出した。

 

「……ッ……メインフェイズ終了時! トラップ発動! 創星改帰!」

 

《創星改帰》

通常罠

 

「さらに続けて、速攻魔法!緊急ダイヤ、発動!」

 

《緊急ダイヤ》

速攻魔法

 

chain1 創星改帰

 

chain2 緊急ダイヤ

 

「緊急ダイヤは、オレのフィールドのモンスターが相手より少ないとき、デッキからレベル4以下と5以上の地属性機械族モンスターをそれぞれ1体ずつデッキから守備表示で特殊召喚する!」

 

「!」

 

セットカードが攻撃反応型のカードではなくフリーチェーンのカードであったことにミーティスは少々驚く。

対しここのせはデッキからカードを抜きとり横向きに設置した。

 

「こい! 無限起動ロックアンカー! 古代の機械熱核竜!」

 

無限起動ロックアンカー

守:500 地 機械族 星4

 

古代の機械熱核竜(アンティークギア・リアクタードラゴン)

守:3000 地 機械族 星9

 

「そして創星改帰の効果発動! このカードはデッキから星遺物モンスターを呼び出す! 来てくれ! 星遺物ー星鎧!」

 

星遺物ー星鎧

守:2500 闇 機械族 星7

 

地面から巨大な腕のような遺物がここのせを守るように現れた。

 

「星遺物ー星鎧は場に現れた時、デッキから星遺物カードをサーチできる! オレが手札に加えるのは、星遺物の胎動!」

手札0→1

 

[チームラグナロク側ベンチ]

 

一気に展開するフィールドにセレナはわっと声を漏らす。

 

「モンスターが一気に三体も!!」

 

現れたモンスター群を見てアルスは訝しむように目を細めた。

 

「……無限起動にアンテークギア……そこに夢幻転星イドリース……デッキ内容はよくわからないがーー星遺物……。どうやらあれが、あのデュエリストの生命線のようだ」

 

「へぇいいね!!」とヴァールは左手の平に拳をぶつけた。

 

「どんなデュエルを見せてくれるんだ!?」

 

[デュエルフィールド]

 

一気に現れたモンスターにミーティスはやや汗を垂らしながら口の端を上げる。

 

「……一気に場を埋め尽くすなんて……! やるわね!」

 

「すんなりやられるわけにはいかねぇからな!」

 

ここのせの返答にミーティスは自身の足元をちらと見ながら思案する。

 

(……渇きの風には、ライフの差分コストを払うことで、相手モンスターの攻撃力の合計が、その数値以下になるように破壊する効果がある……。彼と私のライフの差は4800。つまり合計が4700になるまで破壊できる)

 

再びフィールドに目を移す。

ここのせのフィールドに並ぶモンスターは、星遺物‐星鎧、無限起動ロックアンカー、無限起動キャンサークレーン、古代の機械熱核竜、夢幻転生イドリースの5体。

しかもキャンサークレーンはレベルが9となっている。

 

(本来は攻撃力の低いモンスターを一気に破壊できる効果だけど、今はレベル9モンスターが破壊できない。バトルフェイズでイドリースを戦闘破壊したあとに発動すれば、破壊てきる範囲は広がるけど、彼にトドメを刺すまでは至らない……。ま、仕方ないね)

 

このターンでの決着は不可能と判断したミーティスはしかし、気持ちを前に押し出して手を突き出した。

 

「状況はこっちが有利! そのままバトルフェイズに移行!!」

 

ーバトルフェイズー

 

フェイズが移行したことでフィールドを支配する神は再び低い笑い声を響かせて手を持ち上げた。

 

「やっちゃいなさい、ロキ! 熱核竜とその永続魔法に攻撃! ヴァニティ・バレット!!」

 

天空が鳴る。

エネルギーの集約が肌にびりびりとした感覚を与える。

そして解き放たれる。

トリックスターの弾丸が。

 

極神皇ロキ

攻:3800

 

「ふはははッ!!」

 

古代の機械熱核竜

守:3000

 

「グギァァァァァァァ……!」

 

着弾と同時に再び起こる爆炎と爆風。

爆心地に最も近いここのせはまるでダンプカーに跳ね飛ばされるかのような凄まじい衝撃を受ける。

否、もちろん芯まで響くような身体的なダメージはない。

まるで手加減されているような。

それでも心臓を強く打つには十分であった。

 

「うぉっ!!? ……ダメージはねぇのに、なんて衝撃だ……!!」

「まだまだ! アロマージ-マジョラムでキャンサークレーンに攻撃!」

 

追撃は止まぬ。

ここのせは顔を上げてフィールドに目を向けた。

 

アロマージ-マジョラム

攻:2500

 

「はぁぁっ!」

 

アロマージ-マジョラムは杖から熱線を打ち出してキャンサークレーンを打ち抜く。

攻撃力2100のキャンサークレーンは抵抗もできずに爆発、炎上した。

 

「ぐぅぅ……!」

 

キャンサークレーンを貫いた熱線がそのままここのせの身体も掠めていく。

 

能勢 心

LP4000→3600

 

「さらに追撃!スウィートマジョラムでイドリースに攻撃!」

 

アロマセラフィ-スウィートマジョラム

攻:2700

 

夢幻転生イドリース

攻:2100

 

シンクロ体のマジョラムも同じく杖で熱線を繰り出してきた。

それが攻撃表示のイドリースの身体を焼き切ってしまう。

 

「きゃぁぁぁァァァ……!」

 

イドリースの金切り音のような鋭い断末魔を耳にしながらここのせも自身の身体にダメージが入る。

 

「……ッ!」

 

能勢 心

LP3600→3000

 

ーメインフェイズ2ー

 

 

攻撃終了後、ミーティスは手札の2枚をセットする。

 

「カードを2枚セットして、ターンエンド!」

 

その2枚はどちらもわかっている。

極神皇ロキの効果でサルベージしたディストラクトポーションとサーチした恵みの風に相違なかった。

わからぬことはどちらがそのカードかくらいだ。

 

ーエンドフェイズー

 

ミーティス・ティシアー

LP8800

手札0

マジックトラップ:

伏せ2

渇きの風

アロマガーデン

フィールド:

極神皇ロキ

アロマージ-マジョラム

アロマセラフィ-スウィートマジョラム

 

花畑に中央に居座る神。

ミーティスのフィールドの盤面はいわば堅牢で盤石な状態であった。

対するここのせのフィールドは焼け野原。

ここのせは歯を食いしばりながら眼前の巨躯を睨む。

しかし諦められぬ。

負けられぬ。

ここのせは焦燥を感じながら自身のデッキに手を伸ばした。

 

 

 

 

 




2週間使ったのに前後編になってしまいました!
申し訳ございません。
本当は1本にまとめるつもりでしたが、3万字近くなってしまう上にかき切れませんでした。

■余談
アロマは2023年に発売したパックで新カードが出ましたが今回は登場しません。
理由はこのパートの原案を書いたのが2021年の7月だからです……。
書き溜めしすぎるとよくないですね……。

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  • 読みやすい(テキスト量が妥当)
  • 前の方が読みやすい
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