遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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お気に入りや評価をしていただき誠にありがとうございます。
活動報告でも書きましたが少しずつ前の話を小説形式にしていこうと思います。
とは言えほんとにちょっとずつですので気長に……。


第25話「WSC本戦2回戦終幕 オーバーザレインボー」後編

 

[ストックホルム デュエルコロシアム デュエルフィールド]

 

雷鳴が轟いていた。

デュエルフィールド上に神がいる。

対峙するデュエリストーー祭乃木亜美は静かにその巨軀を見上げていた。

 

 

ヴァール・カーター

LP:2000

手札:5

マジックトラップ:

伏せカード 1

フィールド:

極神聖帝オーディン

鉄獣戦線 凶鳥のシュライグ(左EX)

セットモンスター

獣神ヴァルカン

 

祭乃木亜美

LP:1400

手札:0

フィールド:

なし

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ベンチ内は静まり返っていた。

ここのせは拳を握りしめながらフェンスの縁を握りしめる。

「耐えたは耐えたが……」

 

猛攻を耐えてなんとかターンを凌いだものボードアドバンテージは圧倒的である。

ツァンは腕を組んで目を伏せ、雪乃も肩をすくめた。

 

「手札もフィールドもなし……」

 

「絶望的ね……」

 

青い制服の2人からの言葉にゆきは俯いてしまう。

 

「うぅぅぅ……」

 

そんなゆきを尻目に美優も片手を腰に当てて呟く。

 

「……ここから持ち直すのは相当骨が折れるわネ」

 

唯信は良平に肉薄し目を釣り上げた。

声音は低く、ぶつけるように。

 

「……見たことカ。デュエルは実力以上のことは起こらなイ」

 

「……」

 

「キサマはこの状況から勝てると、まだ言えるカ」

 

「……」

 

唯信とぶつかる視線。

良平は思案する。

 

(確かにフィールドにはモンスターが多数。さらに後続も整っている。例えフィールドを全て破壊したとしても次のターンに再展開されてしまう。祭乃木のデッキでこの状況を打破するには、奇跡が重なる必要がある……)

 

その奇跡が起こる確率とはいかばかりか。

0に近いのではないか。

良平は知っている。

デュエルは奇跡や運だけでは勝てないと。

 

「……!」

 

ふとフィールドを見て良平ははっとした。

フィールドに立つ亜美は真剣な目でドローカードに手をかけていた。

その闘志は0に非ず。

良平の脳裏に刹那の記憶が呼び起こされた。

かつて公園でデュエルした日。

そうだ。

その時も。

 

『ドローすれば1枚よ! このドローには沢山の可能性があるわ!! 見てなさい! ヒーローはこっから大逆転するのよ!』

 

(……初めて祭乃木とデュエルしたときもそう言ってたっけ)

 

良平の口の端が僅かに上がった。

そして再び良平は唯信の目を見た。

 

「……まだ可能性はある」

 

「……まだ言うカ」

 

「ドローしてみないとわからないよ」

 

その言葉にゆきも顔をあげた。

そうだ。

彼女は。

 

「ドローには可能性が詰まってる、祭乃木さんの口癖ですもんね……!」

 

そうだ。

彼女なら。

ここのせは祈るように声を絞り出す。

 

「頼む……! 祭乃木……!!」

 

そうだ。

諦めることない。

恵はまっすぐにフィールドを見つめて言う。

 

「……頑張って……」

 

[デュエルフィールド]

 

ードローフェイズー

 

亜美はデッキに手を掛けた。

背中に感じる視線。

頭を脈打つ鼓動。

内から溢れる熱意。

 

「アタシは絶対に諦めない!! いくわよ!!」

 

亜美は叫ぶ。

その熱気にヴァールの瞳は強く輝く。

 

「すげぇ気迫だな! さぁ、運命のドローだ!」

 

「いくわよ!アタシのターンーーーッドロォオォオ!!」

 

ドローした。

カードは。

 

「ーーッ! 応えて! アタシのデッキ! バブルマンを特殊召喚!!」

 

E・HEROバブルマン

守:1800 水 戦士族 星4

 

「バブルマンは、手札がこのカードのみの場合、特殊召喚できる! さらに、特殊召喚した時、手札、フィールドに他のカードがない場合、カードを2枚ドローできる!」

手札0→2

 

亜美はさらに2枚カードを引き込む。

引いたカードを見て亜美の心臓はドクンと応えた。

 

「!! 繋がった! 続けて、HEROの遺産を発動!!」

 

《HEROの遺産》

通常魔法

 

「墓地のHEROモンスターを融合素材とした融合モンスター、ノヴァマスターとサンライザーをEXデッキに戻すことでカードを3枚ドローする!」

 

亜美は高らかに宣言しデッキトップに手を掛けた。

チェーンカードはない。

ヴァールは声をあげる。

 

「おいおい! 一気に手札回復しやがったな! 」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

フィールドの状況に美優は乗り出すような勢いでフェンスを掴む。

 

「oh!? ドローカードを2連続!? この土壇場で!?」

 

最前に立つ唯信も驚きを隠せないようで目を見開いた。

 

「バカな……!?」

 

隣に立つ良平もそんな状況が信じられないようで思わず声を漏らす。

 

「こ、こんなことが……!」

 

そんな良平の言葉にツァンは反応した。

 

「あんたも驚いててどうすんのよ!!」

 

しかして状況は一変する。

0に近い可能性は99%に。

 

[デュエルフィールド]

 

亜美は確かな願いを込めてデッキトップに右手の人差し指と中指をかける。

いざ勝負。

 

「3枚ドロー!!」

手札1→4

 

カードを引く。

その刹那だった。

シュルシュルと亜美の背後から光の帯のようなものが取り巻く。

徐々に強く大きくなる光はやがて虹色の龍へと変化する。

 

「キュォォオォオォオォオッ!!」

 

龍が嘶く。

それは美しいヴィオラか、あるいはハープのような響き。

 

「ッ!?」

 

亜美は思わず振り向く。

そこにいる半透明の龍の胴体が見えた。

ヴァールはその姿を見て一歩後退する。

 

「なっ……!」

 

[チームラグナロク側ベンチ]

 

突如現れた龍を指差しミーティスは声を上げた。

 

「あ、あれって……!!」

 

アルスが引き継ぐようにその名を口にする。

 

「ーーレインボー・ドラゴン……!」

 

二人のルーンの瞳が強く輝いた。

まるで呼応するように。

あるいは警戒を促すように。

セレナは胸に手を当てて言う。

 

「人と精霊を繋ぐ宝玉の神……! あなたが力を貸すと言うの……?」

 

[デュエルフィールド]

 

ヴァールの左眼もルーン文字が浮かび上がっている。

フィールドに立つオーディンもまた同じ。

ヴァールはニッと笑う。

 

「レインボー・ドラゴンがそんなに興味を示すなんてな! ただもんじゃねぇな、お前!」

 

究極宝玉神は亜美を見下ろす。

亜美はその瞳を見上げる。

それからフィールドに顔を戻すと、手札を1枚右手に取り勢いよくマジックトラップスロットに放り込んだ。

 

「なんだかわかんないけど、力を貸してくれるって言うなら、遠慮なく借りるわ!! いくわよ! ネオス・フュージョン!!」

 

《ネオス・フュージョン》

通常魔法

 

「このカードは、ネオス専用のフュージョン魔法! 手札、フィールド、そしてデッキから融合素材を墓地に送り、E・HEROネオスを含むモンスター2体を融合素材とするモンスターを召喚条件を無視して、特殊召喚できる!」

 

「デッキ融合か!」

 

亜美のデュエルディスクは自動でデッキからカードを送り出す。

出てきたのは2枚のカード。

 

「E・HEROネオスと究極宝玉神レインボー・ドラゴンを墓地に送って発動!!」

 

E・HEROネオス + 究極宝玉神

 

フィールドに虹色の光が輝く。

 

「キュォォォォォッ!!」

 

「シュアッ!」

 

虹色の龍と宇宙から来たHEROがフィールドにて交わる。

広がるは薄紫の渦。

それはまるで新星の誕生。

亜美は高らかに叫ぶ。

 

「ーー今は遠き宙に、虹を架けるは一筋の希望! 翔べ、人と精霊との架け橋となりて!」

 

虹色の光がフィールド全てを包み込む。

その場の全ての人間が眩い光に目を伏せた。

亜美はそのカードを強くフィールドに置く。

 

「来なさい!! レインボー・ネオス!!」

 

ぶわりと風が巻き起こる。

光が収束し、モンスターが現れた。

それは虹色の翼を拓くHEROの姿。

 

「ハァァァ……!!」

 

レインボーネオス

攻:4500 光 戦士族 星10

 

[チームHERO側ベンチ]

 

現れた虹色のモンスターに全員がベンチ最前に駆け寄った。

最初に声を出したのは良平だった。

 

「レインボーネオス……!」

 

宝玉が散りばめられた虹色の羽根が視線に応えるように煌めいた。

ゆきは見惚れて「綺麗……」と呟く。

 

一方、ツァンは現れた見たこともないモンスターに驚愕し声をあげた。

 

「攻撃力4500……!?」

 

唯信も戦いたように目を見開く。

 

「なんなんダ……! なんなんだアイツハ……!」

 

ベンチ最前から一歩退いて麗華は絞り出すように言葉を話す。

 

「これは……! なんて運命力……」

 

[チームラグナロク側ベンチ]

 

チームラグナロクもまた全員がベンチ最前まで駆け寄っていた。

神の力を宿すルーンの瞳が呼応するように揺れる。

アルスはレインボーネオスを見つめながら声を荒げた。

 

「馬鹿な……! オーディンをも凌駕する力を持つなんて……!」

 

セレナは息を飲み込み、胸を掻き抱いてつぶやいた。

 

「かつて世界を闇から救ったカードの力……! 彼女はその力を受け継いでいるというの……?」

 

[デュエルフィールド]

 

ヴァールはルーンの瞳を光らせながら前のめりになって拳を握った。

 

「レインボードラゴンの力を宿したネオス……! めちゃくちゃかっけぇ!!」

 

答える亜美。

 

「真価はこっからよ! レインボー・ネオスの効果発動!! フィールドのモンスターをリリースすることで、相手のモンスターを全てデッキに戻すことができるわ!」

 

「マジかよ!?」

 

「バブルマンをリリース! 全部吹っ飛ばしなさい!」

 

ビシッとフィールドを指を差すとレインボーネオスは羽根を広げて飛び上がる。

それから胸の前でエネルギーを溜め込む。

 

「フゥゥンットゥアァァァァァ!」

 

そのエネルギーを一気に解放した。

超新星爆発のような閃光とともに凄まじいエネルギーの奔流がヴァールのフィールドを襲う。

極神聖帝は争おうとするも成す術はない。

 

「ぐっ、ォオォオォオッ……!」

 

低い声をあげて神は消え去った。

神だけではない。

シュライグもヴァルカンもセットモンスターも。

全てが消し飛ばされた。

爆風が収まるとヴァールは叫ぶ。

 

「ッ! やるじゃねぇか!」

 

亜美は追撃すべく手を差し向けた。

 

「バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

「レインボーネオスでダイレクトアタック!!」

 

亜美は赤いポニーテールを振りながら指示を飛ばす。

レインボーネオスは羽根を羽ばたかせてヴァールへと向き直す。

そして腰溜めから腕をクロスさせてエネルギーを溜め込み、そして放つ。

呼応するように亜美も叫んだ。

 

「オーバー・ザ・レインボー!!」

 

レインボーネオスのクロスした腕から放たれた熱線がヴァールへと向かう。

空閃一文字に進んでいく光線を、しかしヴァールは怯まない。

 

「まだまだ終わりにはさせないぜ!! トラップ発動! トゥルース・リインフォース!!」

 

《トゥルース・リインフォース》

通常罠

 

「このターンのバトルフェイズを放棄することで、デッキからレベル2以下の戦士族を特殊召喚するぜ! こい、X-セイバー パシウル!!」

 

X-セイバー パシウル

守:0 地 戦士族 星2 チューナー

 

巨大な剣を構えた老剣士が突如ヴァールの前に現れる。

熱線はそのモンスターを飲み込んだ。

 

「ぐぅ……! ハァッ!」

 

しかし熱線を耐えきり、剣で弾き飛ばしてしまう。

驚く亜美にヴァールはニッと笑う。

 

「パシウルは戦闘じゃ破壊されないぜ!」

 

合点がいったと亜美も口角をあげた。

 

「アンタもかなりしぶといわね! メイン2!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

「カードを3枚セットしてターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

祭乃木亜美

LP:1400

手札0

伏せ3

フィールド:

レインボー・ネオス

 

ードローフェイズー

 

「オーディンはいなくなっちまったけど、俺のデッキは神だけじゃないんだぜ! 俺のターン!」

手札5→6

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

ヴァールは手札をすぐに持ち替えてカードを場に出す。

 

「ボガーナイトを召喚!」

 

XXセイバー ボガーナイト

攻:1900 地 獣戦士族 星4

 

「ボガーナイトの効果で、もう1体、パシウルを特殊召喚だ!」

 

Xセイバー パシウル

守:0 地 戦士族 星2 チューナー

 

「さらに! 手札のフォルトロールは、場にX-セイバーが2体以上いるとき特殊召喚できるぜ! こい、フォルトロール!」

 

XXセイバー フォルトロール

攻:2400 地 戦士族 星6

 

フィールドにはあっという間に剣士たちが並ぶ。

それらは剣を向けて闘気を放つ。

ヴァールはさらに続けた。

 

「レベル4のボガーナイトに、レベル2のパシウルをチューニング!」

 

☆4+☆2=☆6

 

パシウルが2つのシンクロリングへと変わり、ボガーナイトを調律していく。

やがて新たな剣士が現れた。

 

「ーー全て押し通す劔の乱舞! 叩き斬れ!!」

 

カッと光が走り、剣が光る。

 

「シンクロ召喚! 抜刀! XX-セイバー ヒュンレイ!!」

 

XX-セイバーヒュンレイ

攻:2300 地 戦士族 星6

 

「ヒュンレイがシンクロ召喚に成功したとき、フィールドのマジック、トラップを3枚まで破壊するぜ!」

 

ヴァールは亜美の足元を指差す。

そこには3枚のセットカード。

亜美は素早くマジックトラップボタンを押し込む。

 

「リバースカード発動! 大捕り物!」

 

《大捕り物》

永続罠

 

「アンタの場のモンスター1体の効果を無効にして、コントロールを得るわ!」

 

シュバッと縄がとんできてヒュンレイをグルグルと取り巻く。

やがてヒュンレイは引き摺られていき亜美のフィールドに固定された。

ヴァールはやや苦い顔をしてから、またニッと笑った。

「くぅ、しぶとい奴だ! だが、レインボー・ネオスには退場してもらうぜ!!」

 

「何ですって!?」

 

「フォルトロールの効果発動! 墓地のX-セイバーモンスターを1体特殊召喚できる! 戻ってこい! パシウル!」

 

Xセイバー パシウル

守:0 地 戦士族 星2 チューナー

 

ヴァールはさらに手札を持ち替えてフィールドへと呼び出した。

 

「さらに、もう一体フォルトロールを特殊召喚!」

 

XXセイバーフォルトロール「ハァッ!」

攻:2400 地 戦士族 星6

再び埋まるフィールドに亜美は苦い顔をする。

 

「くっ……! あっという間にモンスターを展開してきたわね……!」

 

「まだまだガンガンいくぜ! アローヘッド確認! 召喚条件は、チューナーを含むモンスター2体!フォルトロールとパシウルをリンクマーカーにセット!」

 

↙︎チューナー + ↘︎モンスター=LINK2

 

「水晶機巧-ハリファイバーをリンク召喚!」

 

水晶機巧-ハリファイバー

攻:1500 水 機械族 LINK2 左EXゾーン ↙︎↘︎

 

「ハリファイバーのリンク召喚成功時、デッキからレベル3以下のチューナーを1体特殊召喚するぜ! X-セイバー パロムロを特殊召喚だ!」

 

X-セイバーパロムロ

守:300 地 爬虫類族 星1 チューナー

 

「そして、レベル6のフォルトロールにレベル1のパロムロをチューニング!」

 

☆6+☆1=☆7

 

「ーー全てを見通す悪魔の量子!激動の因子を集結し、今ここに現れろ!」

 

1つのシンクロリングがフォルトロールを6つの星に変えていく。

やがて拓くエクストラゲート。

現れるは電子の竜。

 

「シンクロ召喚! こい、サイバース・クァンタム・ドラゴン!」

 

「クァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

サイバース・クァンタム・ドラゴン

攻:2500 闇 サイバース族

 

銀色の竜が咆哮する。

しかしヴァールはまだとまらない。

 

「もう一体フォルトロールの効果を再び発動! 墓地のエアベルンを特殊召喚!!」

 

Xセイバーエアベルン

攻:1600 地 獣族 星3

 

「そしてレベル6のフォルトロールにレベル3のエアベルンをチューニング!」

 

☆6+☆3=☆9

 

今度はエアベルンが3つのシンクロリングとなりフォルトロールを調律していく。

ヴァールは胸の内から溢れる旋律を口にした。

 

「ーー刹那は無限! 鼓動を揺るがす魂の劔! 全てをぶった斬れ!」

 

カッと光が上がる。

刃が鳴る。

鋼が響く音がする。

 

「シンクロ召喚! 抜刀! XX-セイバー ガトムズ!!」

 

「ハァァァァッ!」

 

XX-セイバー ガトムズ

攻:3100

 

赤いマントに大剣を担ぐ鉄の剣士が声を荒げて降り立って。

フィールドには3体ものモンスター。

2体はエース級。

亜美はフィールドを睨んだ。

ヴァールは口角をあげて臨む。

 

「いくぜぇ、バトルだ!」

 

ーバトルフェイズー

 

「ガトムズでヒュンレイに攻撃!! ーー神裂滅砕斬!!」

 

「フゥンッ! タァァッ!!」

 

XX-セイバー ガトムズは両手で大剣を握り亜美のフィールドに肉薄する。

そして振りかぶった剣をヒュンレイに向けて振り下ろした。

 

XX-セイバー ガトムズ

攻:3100

 

XX-セイバー ヒュンレイ

攻:2300

 

ヒュンレイは抵抗することなく袈裟斬りにされ、ガラスのように霧散する。

モンスターが散った余波が亜美に襲いかかりライフポイントを痛烈に削りとっていく。

 

「うぁぁぁぁぁ!!?」

LP:1400→600

 

亜美は左腕で顔を守るようにして伏せ、それから顔をあげた。

 

「……ッ!」

 

「追撃だ! サイバース・クァンタム・ドラゴンでレインボー・ネオスに攻撃!!」

 

「レインボー・ネオスに……!? 攻撃力はこちらの方が上……!」

 

「サイバース・クァンタム・ドラゴンは量子を操るドラゴン!! 相手を読み切って分解しちまうのさ! こいつは、戦闘を行うとき一度だけ相手モンスターをバウンスする!」

 

「なっ!?」

 

レインボーネオスの圧倒的な攻撃力は、しかし効果によるバウンスには抗えない。

サイバース・クァンタム・ドラゴンは電磁波を纏いながらフィールドを駆け抜けていく。

そしてレインボーネオスに噛み付いた。

その瞬間、レインボーネオスの身体がチカチカと電子に分解されていく。

 

「ウォオォオッ……!」

 

レインボーネオスはそのまま消えていき、後には何も残らない。

亜美は歯を噛み締めた。

 

「くっ……!」

 

「さらに、この効果を発動した場合、続けて攻撃できる!! トドメだ! プレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

サイバース・クァンタム・ドラゴンは口を開け、バチバチと電撃を溜めていく。

亜美はすぐさまディスクのボタンを押し込んだ。

 

「負けるもんか……!! トラップ発動!! ピンポイント・ガード!!」

 

《ピンポイント・ガード》

通常罠

 

「墓地のレベル4以下のモンスター、エアーマンを守備表示で特殊召喚!」

 

E・HEROエアーマン

守:300 風 戦士族 星4

 

「この効果によって特殊召喚されたモンスターは、このターン戦闘、効果で破壊されないわ!さらにエアーマンの効果で、デッキからHEROモンスター、E・HEROバブルマンを手札に加えるわよ!」

手札0→1

 

亜美を守るようにエアーマンが割り込んできて、電撃の光弾を弾き飛ばす。

エアーマンに一切のダメージはない。

ヴァールは手を下げて声を出した。

 

「攻撃は無駄か! メインフェイズ2!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

「カードを1枚伏せて、ターン終了だ!」

 

手札を1枚裏側でスロットに差し込むヴァール。

 

ーエンドフェイズー

 

ヴァール・カーター

LP:2000

手札2

伏せ1

フィールド:

XX-セイバー ガトムズ

サイバース・クァンタム・ドラゴン

水晶機巧 ハリファイバー(左EXゾーン)

 

 

ードローフェイズー

 

ターンチェンジとなり、ターンプレイヤーは亜美へと移行する。

ヴァールは腕を組んで声を上げた。

 

「あらかじめ言っとくぜ! サイバース・クァンタム・ドラゴンはフィールドにリンクモンスターがいる場合、コイツ以外を攻撃対象にも効果対象にもできなくさせる能力を持つ! さぁ、どうする!? アミ!」

 

どんと自信を持った声。

しかし正々堂々とした態度。

光るルーンの瞳。

亜美は身震いした。

 

「〜〜ッ!! アンタ、信じられないくらい強いわ! 正直勝てるか分からない! けど、それ以前にドキドキとワクワクが止まらないわ!」

 

「俺もだ! 今こうして構えててもお前の闘志がビシビシ伝わってくるぜ! さぁ、祭乃木亜美! 超えられるもんなら超えてみろ!」

 

「正直に言うわ! これがアタシのラストターンよ! このターンでアンタを倒せなかったら、次のターン防ぐ手立てがない! 正真正銘、崖っぷちよ! ーーけど、ヒーローはピンチのときに力を発揮する! いくわよ!!アタシのターン!!」

手札1→2

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

引き込んだカードを見て亜美は瞬時に思案する。

そして、すぐにカード1枚をマジックトラップスロットに裏側で差し込んだ。

 

「カードを1枚セットして、バブルマンを特殊召喚!!」

 

E・HEROバブルマン

攻:1600 水 戦士族 星4

 

「この瞬間、トラップ発動だ!! セイバー・ホール!!」

 

《セイバー・ホール》

カウンター罠

 

「こいつは、X-セイバーが俺のフィールドにいるとき、チェーンに乗らない召喚、反転召喚、特殊召喚を無効にして破壊する!!」

 

表側になった罠カードから半透明の剣士が飛び出てきてバブルマンを切り裂く。

バブルマンは防御もままならないまま悲鳴をあげて霧散した。

 

「くっ! まだまだ!! セットしてたミラクルフュージョン、発動!!」

 

《ミラクル・フュージョン》

通常魔法

 

「墓地のリキッドマンとバブルマンを除外融合!!」

 

HERO + 水属性

 

奇跡を起こす赤と青の渦が広がり、亜美の墓地が強く輝く。

びきびきと周囲が凍りつき青いHEROがその場に降りた。

 

「戻ってこい!! アブソルートZERO!!」

 

E・HEROアブソルートZERO

攻:2500 水 戦士族 星8

 

現れたHEROを前にヴァールは口角をあげる。

 

「戻ってきたか、アブソルートZERO!! だが、サイバース・クァンタム・ドラゴンは戦闘してきたモンスターをも跳ね返すぜ!」

 

「……ミラクルフュージョンの効果で素材となったリキッドマンの効果発動!! デッキからカードを2枚ドローし、1枚墓地に送る!!」

 

亜美はデッキに願いを込めて。

背中に感じる想いを乗せて。

カードを引き込んだ。

引いたカードは。

ドローカードを見て亜美は目を見開く。

そしてニッと笑った。

1枚を墓地に送り、もう1枚をスロットに差し込む。

 

「戦士の生還を発動!!」

 

《戦士の生還》

通常魔法

 

「墓地の戦士族モンスターを手札に戻す!」

 

亜美は墓地からカードを選択し、手に持つ。

彼女が持つ最後の1枚がそれに変わる。

 

「ーー最後はアンタに任せるわよ!」

 

「なんだ……!?」

 

ヴァールはただならぬ気配を感じ後退した。

亜美はカードを高く掲げる。

 

「いくわよ! エアーマンとアブソルートZEROをーーーリリース!!」

 

「リリース……!?」

 

2体のモンスターがゆっくりと消えていく。

そして、代わりにモンスターが現れる。

 

「ーーE・HEROネオスをアドバンス召喚!!」

 

E・HEROネオス

攻:2500 光 戦士族 星7

 

「フゥゥゥ、デュァッ!!」

 

白い身体に赤と青のライン。

宇宙の彼方から来たHERO。

意想外にヴァールは目を見張る。

 

「あ、アドバンス召喚だと……! 」

 

「墓地に送られたアブソルートZEROの効果!! 相手フィールドのモンスターを全て破壊する!!」

 

亜美の宣言と共にフィールドにらブリザードが吹き荒れた。

全てを飲み込む寒波。

それはまるで全てを消し去るフィンブルの冬。

サイバース・クァンタム・ドラゴンは。

XXセイバー ガトムズは。

水晶機巧 ハリファイバーは。

その尽くが破壊されてしまった。

 

「ぐぅっ……! ま、マジかよ……!!」

 

「バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

亜美はガラ空きとなったフィールドに向けて手を差し向ける。

その攻撃対象はヴァール・カーター。

 

「いけ!! ネオス!! プレイヤーにダイレクトアタック!! ーーラス・オブ・ネオス!!」

 

「ぐぅぅ……!!」

 

ヴァールのフィールドにも、手札にも、墓地にも。

阻むものは何もない。

ただ神が墓地にて眠るのみ。

空を切ってE・HEROネオスの拳がヴァールに直撃した。

 

「ぐぁぁぁぁぁっ……!!」

LP:2000→0

 

ビィィィィィッ。

高い高いブザーの音が鳴り響く。

電光掲示板にパッと文字が浮かんだ。

 

『Vinnare Team HERO (Japan)』

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ライフポイントが0になった瞬間ゆきはまさしく飛び上がる。

スカートが翻るのを気にもせずに。

 

「ぃやったぁぁぁぁぁぁ!! 祭乃木さんがやりましたよぉぉ!!」

 

見届けた良平は、疲れたようにフェンスの縁に顔を乗せて大きく息をついた。

 

「ーーーーーッ、フゥゥゥ……」

 

「……フンッ」

 

そんな彼を一瞥した唯信は鼻を鳴らすと踵を返しスタスタとベンチを去っていった。

一方ここのせはベンチの最前で真っ青な顔で茫然としていた。

ただ鳴り止まぬ心音だけが彼の世界である。

 

「……」

 

恵はそんな彼の隣に立って小さく拍手をしていた。

そんなメンバーをみかねて美優はパンパンと手を叩く。

 

「Hey HEROs! あなたたちもフィールドに行った方がいいわヨ!」

 

「あ、ああ、そうだね……!」

 

良平はようやく顔をあげてフィールドに歩いていく。

ゆきと恵もその後ろについていくので、ここのせは重い足取りで彼らを追いかけた。

 

[デュエルフィールド]

 

デュエルの終わりとともにソリッドビジョンはゆっくりと消えていく。

その場に立つ二人の額には大粒の雫がいくつも伝っていた。

ヴァールはというと一瞬固まったかと思うとどすんと尻餅をついた。

それから大の字になって口をあけた。

 

「〜〜〜ッ!! カァァァァッ!俺の負けだぁぁ!」

 

叫びにも似たそれを吐き出すと、ヴァールは起き上がり亜美をまっすぐに見た。

 

「恐れ入ったぜ!」

 

そんな彼の後ろに真っ先にミーティスが立つ。

座り込んでいるヴァールの銀髪を愛おしそうに触ってから、軽くコツンと叩く。

 

「こらヴァール、お行儀悪いでしょ。立ちなさい」

 

後ろからアルスとセレナも歩いてきてヴァールの様子に笑う。

 

「やれやれだな」

 

「ふふ……」

 

へへっとヴァールは笑い、一度寝てから足の勢いだけで立ち上がった。

 

「みんな、悪りぃな! 負けちまったぜ」

 

ヴァールの言葉にセレナがゆるりと首を振る。

 

「みんな全力で戦った結果だもん。仕方ないよ」

 

アルスもミーティスもその言葉に頷く。

ヴァールは仲間に向けていた目線を、今度は亜美に向けた。

亜美の前まで歩きその手を差し出した。

 

「……アミ!楽しいデュエルだったぜ!」

 

「えぇ! ホントにギリギリだった! アンタも最高に強かったわ」

 

ガシッと亜美はヴァールの右手を掴む。

そんな二人に観客たちはパラパラと拍手をした。

チームHEROのメンバーもフィールドに集まり向き合う。

アルスは恵に向いて口をあけた。

 

「チームHERO。先の非礼を詫びよう。すまなかった」

 

「……ん」

 

恵は小さく頷く。

そんな様子に亜美も笑って答えた。

 

「いいわ! それにデュエルを通して恵を認めてくれたのは伝わったしね」

 

「ああ。……俺たちのWSCは終わったが、戦いそのものは終わっていない。神を乗り越えたお前たちの力を借りる時がくるかもしれない。その時は、よろしく頼む」

 

「……ええ。できる限り力になるわ」

 

「あの」と今度はセレナがにっこりと笑って言う。

「この後お時間あれば、私の家で紅茶でも飲みませんか? そこで色々お話出来ると思います」

 

「……! 是非お願いするわ!」

 

かくしてストックホルムデュエルコロシアムにて行われたWSC本戦第二回戦はチームHEROの勝利にて幕を閉じた。

会場ではしばらくの間、拍手が鳴り響いていた。

 

…………

……

 

 

[???]

 

これはどこの部屋かもわからず。

ただ、そこに一人の人間がいて電話をしているだけ。

 

「ーーえぇ、はい。彼女は被験体として逸材かもしれません」

 

『ーーもう少し様子を見ろ。こちらの実験も佳境を迎えようとしている』

 

「わかりました」

 

それだけ会話すると一方的に電話が切れた。

無機質な通知音がスピーカーの奥から消えた。

 

「……ふぅ。……運命力、か」

 

疲れたようにかけていた眼鏡を外し机におく。

ことりと乾いた音がした。

 

 

…………

……

 

 

[翌日 帰りの船 女子部屋]

 

天気晴朗なれど波高し。

船はゆらりゆらりとゆれながら遠き極東の島国へと向かう。

船体にはデュエルアカデミアの文字。

女子部屋の中で亜美は窓辺に椅子を置いて外を見ていた。

 

「……」

 

窓の外はキラキラと海が光っている。

眩い光を亜美はぼうと眺めた。

 

「……祭乃木さん?」

 

ゆきが小首を傾げて聞くと亜美は振り返る。

 

「ん?」

 

「ジュース買ってきましたよ。祭乃木さんも飲みますか?」

 

「あぁ、うん。飲む」

 

「はい」

 

ゆきはにっこりと笑うとコップを用意する。

それから外の製氷器から持ってきた氷をカランカランと入れてそこにトクトクトクとオレンジジュースを注いだ。

 

「どうぞ!」

 

「ありがと!」

 

「……難しいお顔してますね」

 

「そうね。あんな難しい話聞いたから、そりゃそんな顔にもなるわ」

 

亜美はまた想いに耽る。

試合の後に聞いたヴァールたちの話。

それが脳裏にこびりついている。

ゆきは自分の分のコップを両手で持つ。

 

「そうですね……。できれば、このまま何もないのが一番いいんですけど……」

 

「そうね……。けど、もし何かあったら、アタシは多分見て見ぬふりはできないと思うわ」

 

「祭乃木さん……」

 

「ま!! 何かあれば、の話よ!! ーーね、ゆま、ちょっと小腹空かない? お菓子でも買いにいきましょ!」

 

亜美は頭を振って考えを消すとニッと笑って立ち上がった。

 

[船内 デュエルルーム]

 

一方、船内のデュエルルームでは蒼い制服にぬばたまの黒髪ーー金唯信が腕を組み、前に立つ日和田良平を睨みつけていた。

 

「ーー調べものだト?」

 

「うん。気になってることがあるんだ」

 

「フンッ。勝手にしロ」

 

話は終わりだと唯信はスタスタと歩いていく。

その彼女を良平は呼び止めた。

 

「あ、いやちょっと待ってくれ」

 

「なんダ」

 

「金にも手伝ってほしいんだ」

 

「フンッ、お断りダ。何故、貴様の小間使いにされねばならんのダ」

 

再び歩き出そうとする唯信に良平は真っ直ぐに瞳をみた。

 

「ーーダメージが実体化する事故について調べたいんだ」

 

「なにィ……?」

 

その言葉に唯信は良平をギロッと睨み、肉薄した。

 

[船 甲板]

 

一方、甲板では船縁の柵に手を掛け波と波の合間を呆然と見る少年が一人。

能瀬心ーーここのせはググッと拳を握る。

血が止まり白くなるほどに。

爪が肌に食い込むほどに。

 

(……情けねぇ)

 

目の前の全てが青い。

ここのせは歯を食いしばる。

 

(……あんな不甲斐ないデュエルをしちまって、みんな合わせる顔がねぇな)

 

振り返るは己のデュエル。

成す術なく敗北したあのデュエル。

 

(……今回のデュエル、オレはほとんど何もできずに負けた。そのせいで危うく負けるところだった……。今回だけじゃねぇ。これまでのデュエルでも、オレが足を引っ張って、祭乃木に助けてもらってた……)

 

振り返れば振り返るほど自分の胸がきゅうと痛む。

その痛みすらも苛立たしい。

ここのせは柵をがんと叩いた。

 

(このままじゃ、オレはお荷物だ。なんとか……。なんとかしねぇと……!)

 

船は進み、青い空と海を行く。

目の前には雲ひとつなく、青い壁に自分一人が立っているかのようだった。

 

 




[次回予告]

寝る前決闘空間第26話
『それぞれの休日』
デュエルスタンバイ!

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