遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
【旧サテライトエリア 沿岸部】
一陣の風が吹く。
右を見ればゴミの山。
左を見れば煌びやかなビル群。
そんな場所で相対する二人のデュエリスト。
ここのせはデュエルディスクを構え、前に立つ男を睨む。
名を絵草 霜と言う。
無敗のチーム、チームディスティニーのデュエリスト。
「デュエル!」
能瀬 心
LP:4000
「デュエル!」
絵草 霜
LP:4000
デュエルディスクのモニターが明滅し、手番が表示された。
ここのせのモニターには後攻の文字。
絵草は口角を上げて声を出した。
「先攻はもらった。 ワシのターン!」
手札5
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
ここのせは、その男を見ながら思考する。
(相手はあのチームディスティニーのデュエリストだ。今のオレがどこまで通用するのか……)
すると不意に絵草がこちらを見て言う。
「そうじゃのぉ。ボウズ、プレイングかデッキかは知らんが今のお前さんに足りんものを洗い出してみようや」
「オレに足りないもの……」
「おう。……宵星の騎士-ギルスを召喚!」
宵星の騎士-ギルス
攻:1800 闇 機械族 星4
「!」
ここのせは目を見開く。
そのカードは。
絵草はさらに宣言した。
「効果発動! デッキから星遺物、またはオルフェゴールカードを墓地に送ることができる!ワシはオルフェゴール・ディヴェルを墓地に送るぜ!」
「……オルフェゴール……!?」
ここのせはチラッと自身の手札を見た。
そこにあるのは宵星の騎士ギルス。
(オレも1枚だけ持ってる星遺物に関連したカード……)
宵星の騎士の読みは
ジャックナイツオルフェゴール。
意味は知らず。
そのカードを使っていたここのせは顔を上げた。
「オルフェゴールもまた星遺物に関係したカードなのか……!」
「そうじゃ。ワシも諸事情で運命力を失っておるが、こいつらがワシに力を貸してくれてる。その力をお前に見せてやるわ」
「……!」
「手札からオルフェゴール・プライムを発動!」
《オルフェゴール・プライム》
通常魔法
「手札・フィールドのオルフェゴールまたは星遺物モンスターを墓地に送り、カードを2枚ドローする! ワシは、星遺物-聖杯を墓地へ送り、2枚ドロー!」
手札:2→4
引き込んだカードを一瞥してから絵草さらに右手でフィールドのギルスを指した。
「さらにギルスの効果発動! フィールドに他のモンスターがいないとき、お互いのフィールドに星遺物トークンを作り出す!」
星遺物トークン
守:0 闇 機械族 星1
ズンと青白い岩石のようなものが現れる。
それはここのせフィールドも同様であった。
星遺物トークン
守:0 闇 機械族 星1
絵草はさらに続ける。
「墓地のディヴェルの効果発動じゃ! こいつを除外することで、デッキからオルフェゴールモンスターを特殊召喚する!」
「デッキから……!? くそっ、あっという間に展開しやがった……!」
「こいや、オルフェゴール・トロイメア!」
オルフェゴール・トロイメア
守:2000 闇 機械族 星7
「現れろ、星が導くサーキット! 」
絵草は手を振り上げて言う。
フィールドには青白いリンクマーカーが現れた。
「召喚条件は、オルフェゴールモンスターを含むモンスター2体! ギルスとトロイメアの二体をリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」
↗︎オルフェゴール+↙︎闇属性=LINK2
二体のモンスターがリンクマーカーの矢印に飛び込んでいく。
やがて拓く、EXゾーンへの路。
「オルフェゴール・ガラテアをリンク召喚!」
オルゴール・ガラテア
攻:1800 闇 機械族 LINK2 ↗︎↙︎
「…… 〜〜」
現れたモンスターは女性型。
青の長髪に黒い服。
しかし、人に非ず。
人形のような外見。
その姿は。
ここのせは再び目を見開いた。
「……リイヴに似てる……! あれは一体……!?」
絵草はにやりと笑うのみ。
問いには答えずに続ける。
「ガラテアの効果発動! 除外されているオルフェゴールモンスターをデッキに戻すことで、星遺物またはオルフェゴール魔法・罠をセットできる!」
「効果まで似てる……!」
「この効果で、除外したディヴェルをデッキに戻し、オルフェゴール・クリマクスをセットじゃ!」
セットカードが絵草の足元に沈んでいく。
「教えといてやるわい。オルフェゴール・クリマクスは、ワシの場にオルフェゴール・リンクモンスターが存在する場合、相手の発動した効果を無効にし、除外する!」
「妨害札をサーチしてきやがったか……!」
「さらに墓地のオルフェゴール・トロイメアの効果発動! こいつを除外し、デッキから闇属性モンスターを墓地に送ることで対象のモンスター、ガラテアの攻撃力をそのレベル×100ポイントアップさせる! デッキからオルフェゴール・スケルツォンを墓地に落とすぜ!」
オルフェゴール・ガラテア
攻:1800→2100
「さぁ現れろ、星が導くサーキット!」
リンクマーカーが再びフィールドに浮き上がる。
絵草は手を振り上げて言葉を紡いだ。
「召喚条件は、レベル1モンスター1体! 星遺物トークンをリンクマーカーにセット! サーキットコンバイン!」
星1→LINK1
「リンクリボーをリンク召喚!」
リンクリボー
攻:300 闇 サイバース族 LINK1 ↓
「続けて、今召喚したリンクリボーとガラテアをリンクマーカーにセット! 召喚条件はオルフェゴールモンスターを含む効果モンスター2体!」
未だフィールドに残るリンクマーカーがモンスターたちを誘う。
オルフェゴールLINK2+効果モンスター=LINK3
「ーー闇夜に響くは狂想曲!星を堕とす調べとなれ!」
どこかから流れるヴァイオリンのような、あるいは管楽器のような旋律。
力強くどこか物悲しいそれとともにモンスターは現れた。
「リンク召喚! 出てこい、LINK3、オルフェゴール・ロンギルス!!」
オルフェゴール・ロンギルス
攻:2500 闇 機械族 LINK3 ↑↖︎↘︎
「ハァァァァ……!」
薄暗い青色の髪に、神を殺す槍。
鋭い眼光をここのせに向けている。
絵草はさらに続けた。
「墓地のスケルツォンの効果発動じゃ! こいつを除外し、墓地のオルフェゴールモンスターを特殊召喚する! 戻ってこい! ガラテア!」
オルフェゴール・ガラテア
攻:1800 闇 機械族 LINK2
次々と展開されていくモンスター達にここのせは目を見開く。
「オルフェゴール……墓地を手札みたいに使えるってのか……!」
「驚くのはまだ早いわ!ガラテア1体でオーバーレイネットワークを構築!」
黒い稲妻を放つ渦がフィールドに現れ、オルフェゴール・ガラテアが飲み込まれていった。
LINK1→★8
「ーー黄泉へと渡る金星の機神! 其は星へと続く軌跡となる!」
再び響く旋律。
やがて現るモンスター。
「エクシーズ召喚! いでよ! 宵星の機神 ディンギルス!!」
宵星の機神ディンギルス
攻:2600 闇 機械族 ★8
「ーーォオォオ」
機械兵のような巨体に装甲のような鎧。
ここのせは息を呑んだ。
それを気にもせず絵草は言う。
「ディンギルスのエクシーズ召喚時、効果発動じゃあ! 除外されておるトロイメアをエクシーズ素材にする!」
宵星の機神ディンギルス
素材1→2
絵草はモンスターの背後にて腕を組んでここのせを見る。
「ディンギルスは、フィールドのカードが破壊されるとき、代わりにこいつのエクシーズ素材を取り除くことで破壊から守ることができる」
「……ッ!」
「ワシはこれでターンエンドじゃ」
ーエンドフェイズー
絵草 霜
LP4000
手札3
伏せ1
フィールド:
オルフェゴール・ロンギルス(左EXゾーン)
宵星の機神 ディンギルス
ードローフェイズー
「くっ……!」
ここのせは歯を食い縛りながらデッキトップに手をかけた。
フィールドにはエース級モンスターが2体に、制圧効果を持つカウンター罠。
(先攻1ターン目からもうピンチじゃねぇか……!)
冷や汗にも似た冷たい感情が背中を駆け抜けていく。
あの試合の時にも感じたそれは酷く不愉快だ。
不意に絵草が口を開けた。
「ボウズ!」
「!」
「この状況、並のデュエリストじゃあちょいとキツいかもしれんな。じゃが、チームデュエルなら不利な状況で自分に回ってくることの方が多いじゃろう」
「……ッ」
ここのせはさらに奥歯をギリと噛み締めた。
知っているさ。
体感したとも。
脳裏に過ぎるはあの試合。
相手デュエリストであるミーティスのライフは6300。
フィールドには
エンシェントホーリーワイバーンに
《恵みの風》
《潤いの風》
《アロマガーデン》
ミーティスはライフを回復した状態かつリソースを残したまま自分を突破した。
絶対絶命のフィールド。
『見てなさい! ヒーローはこっから大逆転するのよ!』
祭乃木亜美の背中が、ここのせにとってあまりに……。
(祭乃木はいくつもそれをひっくり返してきた……。出来るのか……? オレに……)
絵草は腕を組み、ここのせを見つめた。
「この状況、突破してみぃ。できねーなら何が足りないか考えてみろ」
「……オレのターン!」
意を決してここのせはカードを引き込んだ。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
ここのせはフィールドを見直す。
(バックにはオルフェゴール・クリマクス。そして、場にはロンギルスとディンギルス……。一方でオレの手札は……)
自身の手元に視線を落とす。
閃刀起動 エンゲージ
無限起動 ロックアンカー
マシンナーズ・メタルクランチ
宵星の騎士ギルス
創星改帰
閃刀機 ウィドウアンカー
(手札自体は悪くねぇが……)
チラッと絵草の足元。
そこに待ち構える伏せカード。
(手札のモンスターはどれも召喚権を使っちまうカード……。だが、クリマクスがある限りこいつらを出しても犬死だぜ……)
さらにここのは自分のフィールドを見た。
そこに居座るのは絵草が呼び出した星遺物トークン。
(しかも悪いことに星遺物トークンが場にいるせいでエンゲージやウィドウアンカーが発動できねぇ……。くそッ……!なんとかして、クリマクスを使わせるしかねぇか……!)
纏まらない戦略。
ここのせは手札のカードを掴み場に置いた。
「こっちも宵星の騎士ギルスを召喚!」
宵星の騎士ギルス
攻:1800 闇 機械族 星4
「ほーう」と絵草はにやりと笑う。
ここのせは効果を宣言した。
「ギルスの効果発動! デッキから星遺物カードを墓地に送る!」
「そいつの強さはワシが一番よくわかっとる。トラップ発動! オルフェゴール・クリマクス!」
《オルフェゴール・クリマクス》
カウンター罠
絵草の足元のカードが起き上がりカードが発動する。
フィールドに立つオルフェゴール・ロンギルスがその槍を以てフィールドを駆けた。
そして効果を発動したここのせの宵星の騎士ギルスを貫いてしまった。
これにより効果は無効。
さらにギルスはそのまま除外された。
「……ッ、カードを2枚セットしてターンエンドだ」
伏せカードが2つ、ここのせの足元に現れて沈んでいく。
ーエンドフェイズー
能瀬 心
LP:4000
手札3
伏せ2
フィールド:
星遺物トークン
ードローフェイズー
苦し紛れのここのせに、絵草は挑発するように言った。
「なんじゃあ、終わりか。張り合いがないのぉ」
「……返しのターンでなんとかしてみせらぁ」
「そいつはいい気概じゃ。そんならボウズにアドバイスをしてやろう」
「アドバイス?」
「おぉ。召喚権を使うモンスターは確かに強力な効果も多いが、召喚権を使っちまうリスクがある。今回みたいに行動を制限されちまうと首が回らんくなるんじゃ」
「んなことぁ、わかってらぁ」
「そうかい。じゃあそれがお前さんのデッキに足りん力っちゅーわけじゃ」
「……足りねぇのはわかってる! けど、そいつを補強する術がオレにはねぇんだよ!」
「そうじゃなぁ。ワシやお前さんには運命力がない。運命力が無けりゃカードは揃わん。カードに巡り会うことができん」
ここのせは、悔しそうに口を噤んだ。
遠い昔に捨てたはずの言い訳が湧いてくる。
しかし絵草はそれを切り捨てることなく言った。
「じゃが、ワシらにはまだ希望かあろうに」
「希望……?」
「そうじゃ。……ワシのターン」
絵草はすっとカードを引き込む。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
それから絵草はここのせを真っ直ぐに見つめた。
「お前さんにもあるだろう? 星遺物のカードが」
「……オレはそいつがなきゃ戦えねぇからな」
「ワシもじゃよ。……そんじゃあ一つ聞こうか。ーーーー星遺物カードとは一体なんぞや?」
「え?」
予想外の言葉にここのせは顔を上げる。
絵草はこちらを見ていた。
「ワシもボウズも使っているカードじゃ。しかし、そいつは一体なんなんじゃろうな」
「なんなんって……。星の力が宿った力無き者に力を与えるカード、だろ。そんな事がなんだってんだ」
「まぁ聞けボウズ。デュエリストならデッキのカードは把握しとくべきじゃろう。じゃなけりゃ、デッキは動かせん」
「……」
「力無き者に力を与える、とはどうことなんじゃろうな。力とは一体何を指す?」
「……運命力のないオレに運命力を貸してくれるカードだと、オレは思ってるけど……」
「ん〜、まぁ半分正解で半分不正解じゃな」
絵草は腕を組んで首を振る。
「力を貸す、という部分は間違いじゃないが、運命力を与えているわけじゃない」
「……確かに星遺物を手に入れてもオレの運命力は0のままだったな……。だけど、星遺物を手に入れてからデッキが回るようになったぜ?」
「星遺物カードは、星遺物カードそのものが力を持っているんじゃ。"能力を発揮するために必要なカード"を引き寄せる力がな」
「力を発揮するため……」
「そして、その力はワシらデュエリストだけじゃなく、カードにも影響を与える」
「カードにも……? どういうことだ……?」
「星遺物の力を受け継いだカードがこの世には存在するっちゅーことじゃ。このオルフェゴールのようにな」
絵草は前に並び立つモンスター達を見上げて言う。
そしてカードを発動させた。
「 墓地の星遺物-星杯の効果発動! こいつを除外することで、デッキから星遺物カードを手札に加える! ワシがサーチするのは星遺物の醒存!」
手札4→5
手札に加えたカードを手札に加えることはせずに、絵草はそのままスロットに差し込んだ。
「そしてそのまま発動じゃ!」
《星遺物の醒存》
通常魔法
「デッキから5枚カードをめくり、その中の星遺物カードを手札に加え残りは墓地に送る」
そう宣言してから絵草は5枚カードを引き抜き、見せた。
オルフェゴール・カノーネ、オルフェゴール・ティヴェル、星遺物-星杖、星遺物を継ぐ者、ワン・フォー・ワン。
絵草はそのうちの星遺物を継ぐ者を残して、他のカードをセメタリーゾーンへ放り込んだ。
「さらに今手札に加えた星遺物を継ぐ者を発動!」
《星遺物を継ぐ者》
通常魔法
「リンクモンスターのリンク先に墓地のモンスターを復活させる! 戻ってこいや、ギルス!」
宵星の騎士ギルス
攻:1800 闇 機械族 星4
「くっ……!」
再び現れたエンジンとなりうるカードにここのせは拳を握る。
しかし絵草は止まらない。
「ギルスの効果発動! デッキからオルフェゴール・スケルツォンを墓地に送る!」
デッキから送られてきたカードをセメタリーゾーンへと放り込んだ。
そして、手を振り上げてさらに宣言する。
「ロンギルスとギルスをリンクマーカーにセット! 召喚条件はオルフェゴールモンスターを含む効果モンスター2体以上!」
LINK3+オルフェゴール=LINK4
「ーー魂を鎮める調べを、星の果てまで轟かせ!」
其れは耳障りのよい音だった。
大きなオルガンと管楽器のハーモニー。
時折聞こえる空気を送る轟音。
「リンク召喚! オルフェゴール・オーケストリオン!」
オルフェゴール・オーケストリオン
攻:3000 闇 機械族 LINK4 ↑↗︎↙︎↓(右EXゾーン)
「〜〜♪〜〜♬」
鳴り止まぬ自動演奏。
目の前に現れたのは巨大なオーケストリオン。
得体のしれぬ迫力にここのせ二、三歩後退した。
「くっ……!」
「ブラック・ボンバーを通常召喚!」
ブラック・ボンバー
攻:100 闇 機械族 星3 チューナー
「ブラック・ボンバーは召喚成功時に墓地のレベル4機械族を守備表示で復活させる! 戻れぃ、宵星の騎士ギルス!」
宵星の騎士ギルス
守:0 闇 機械族 星4
「ギルスとブラック・ボンバーをリンクマーカーにセット!召喚条件は、オルフェゴールモンスターを含むモンスター2体! 」
↗︎オルフェゴール+↙︎モンスター=LINK2
二体のモンスターがリンクマーカーの矢印に飛び込んでいく。
再び青い髪のモンスターが現れる。
「オルフェゴール・ガラテアをリンク召喚!」
オルゴール・ガラテア
攻:1800 闇 機械族 LINK2 ↗︎↙︎(相互リンク)
「ガラテアの効果発動! 除外されているスケルツォンをデッキに戻し、デッキからオルフェゴール・クリマクスをセット!」
ガラテアは絡繰りのようならカクカクとした動きで口を開ける。
まるで歌うような旋律。
誘われたカードが絵草の足元に伏せられた。
絵草はさらに手を横に薙ぎ払うようにしてカードを呼び起こす。
「さらに墓地のディヴェルの効果発動! こいつを除外し、デッキのオルフェゴール・トロイメアを特殊召喚じゃあ!」
オルフェゴール・トロイメア
守:2000 闇 機械族 星7
「トロイメア、ガラテアをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、効果モンスター2体以上!」
リンクマーカーに飛び込んでいくモンスター。
それはやがて新たなモンスターへと姿を変える。
「ーーリンク召喚! こい、LINK3! 幻影騎士団ラスティ・バルディッシュ!」
幻影騎士団ラスティ・バルディッシュ
攻:2100 闇 戦士族 LINK3 ↙︎↘︎→
「はぁッ!!」
鋭い息遣い。
黒い騎士が目の前に現れた。
目の前には高リンクのモンスターが2体。
圧倒的な展開力を前にこのせは圧倒されていた。
構わず絵草は腕を振るう。
「ラスティ・バルディッシュはデッキから幻影騎士団カードを墓地に送り、その後ファントムマジックトラップを場にセットできる。ワシはデッキから幻影騎士団ダスティローブを墓地に送り、幻影霧剣をセットする」
「ッ……!」
「さぁバトルじゃ!」
ーバトルフェイズー
「いけ! ディンギルス! 星遺物トークンを攻撃!」
絵草はフィールドを鋭く指した。
先には星遺物トークン。
ディンギルスの黄金の槍が星遺物トークンを貫いた。
衝撃波がここのせを襲う。
「ぐっ……!」
「追撃!オーケストリオンでダイレクトアタックじゃあ!!」
オーケストリオンはその巨体を重たそうに動かし、激しい演奏を奏でながら衝撃波を放つ。
ここのせは素早くトラップ発動ボタンを押し込んだ。
「……ッ! トラップ発動! 創星改帰!」
《創星改帰》
通常罠
「デッキから星遺物モンスターを特殊召喚する!!来てくれ! 星遺物の守護龍メロダーク!」
星遺物の守護龍メロダーク
守:3000 風 ドラゴン族 星9
「グガァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
星の瞬きと共に深緑の龍がここのせを守るように現れた。
其れは目の前に立つモンスター達を威嚇するような咆哮をあげる。
ここのせは口を開けた。
「メロダークが場にいる時、あんたのフィールドのモンスターの攻守を500ポイントダウンさせる! 誰もメロダークを超えられないぜ!」
メロダークの咆哮により、オーケストリオンの攻撃力は2500へと下る。
彼我の差は500。
その他のモンスターも守備力3000を先頭によって突破することはできない。
絵草はやや口角を上げていう。
「ちょっとはやるようじゃのぉ。ワシはこれでターンエンドじゃ」
ーエンドフェイズー
絵草 LP4000
手札3
伏せ2
フィールド:
オルフェゴール・オーケストリンオン(右EXゾーン)
幻影騎士団ラスティ・バルディッシュ
宵星の機神 ディンギルス
ードローフェイズー
「ぐぅ……!」
自分のターンが回ってきたここのせはしかし、デッキに手をかけたまま固まっていた。
背中に感じる冷たい汗は、思考をばらつかせた。
アドバンテージにいかほどの差があるか。
「お、オレのターン……! ドロー!」
なんとか体を動かしカードを引き込む。
ちらとみたそのカードは。
星遺物の胎動。
「……ッ!」
ここのせは視線を上げて相手フィールドを見る。
(オルフェゴール・クリマクスに幻影霧剣……!妨害が二つ……!!)
汗なのか緊張なのか視界が霞む。
戦略がまとまらない。
否、あるのかもわからない。
絵草は再び腕を組んだ。
「ボウズ、この状況は突破は難しいじゃろう」
「……くそ、デュエリストいびりかよ……!」
ここのせは地面を見つめ悔し紛れにそんなことを口走る。
わかってる。
わかっているさ。
そんなんじゃないってことくらい。
ここのせにだってわかる。
でも言ってしまった。
絵草はかっかっかと笑った。
「まぁそう怒るな。ボウズ、この状況を突破するにはどんな力が必要じゃと思う? そしてその力は誰のために必要なんじゃ。考えてみぃ」
「……必要な力……。誰のために……」
ここのせは再び顔を上げ、フィールドを俯瞰する。
そして手札に視線を向けた。
(……星遺物の胎動さえ発動できればこの状況突破できた……。でも発動させるには、あと1手足りない……!)
星遺物の胎導を発動するためにはオルフェゴール・クリマクスを乗り越える必要がある。
しかし、その前にもう一つの妨害が立ちはだかる。
(バックを破壊できれば……。いや違う、それだけじゃ無理だ。ディンギルスが場にいる限り2回まで破壊を防がれる)
カードを使わせるとしても行動できるカードが少ない。
(……駄目だ。今の手札じゃ……いや今のデッキじゃ突破できねぇ……。……今のオレには相手を乗り越える力が足りない)
ここのせは、悔しそうに歯を食いしばり手を下した。
「……くっ」
絵草は、ふうと一息つくとデュエルディスクを仕舞った。
「……こんなところにしとくか」
シュゥゥゥンとフィールドが全て消えてデュエルが終了した。
後には寂し気な風が吹くのみ。
絵草はここのせに向かって歩いてきた。
「ボウズ」
「……ッ」
「星遺物の力は正しく使わなけりゃ意味が無いんじゃ。お前さんのデュエルセンスは悪いとは言わん。じゃが、運命力を覆すほどじゃない」
「んなこたぁ……わかってる……!わかってるけど……!」
どうしたってあきらめられない。
譲れない何かがある。
それが何故なのかここのせにだってわからない。
ただ想いだけがそこにあって、目の前の現実を破裂させていた。
「……ッ」
「ボウズ。お前さんは星遺物のことをどこまで知っとるんじゃ?」
「……伝承以上のことは知らねぇよ」
「そうかい。なら一つ教えてやろう。星遺物に宿る星の力ーーそれは創星神の力のことじゃ」
「創星神……??? なんじゃそりゃ??」
不意に予想外の言葉にここのせは目を丸くして絵草を見上げた。
そこには人懐こい色黒の笑みがあった。
「かかっ、ハテナマークが目に浮かぶようじゃのぉ」
それから放り捨てた釣竿を拾い、背を向けて歩いていく。
「ま、お前さんが思っとるより星遺物に宿る力は強いっちゅーことじゃ。色々探してみな、ボウズ。星遺物のことを。この八百万の神の国ならちったぁ探しやすいかものぉ。かっかっかっ!」
「……待てよ、おっさん! なんでアンタはオレにそんなことを!」
「さぁてね。ワシは姐さんが注目しとったチームだから観てただけじゃが。そこに運命力0の星遺物の使い手がおったから、運命、を感じちまったのかもな。かっかっかっ!」
ざっざっざっと砂利を踏む音が遠ざかっていく。
ここのせはその背をしばらく眺めてから、自分の腕に未だ展開されているディスクに目を向けた。
「……」
そのデッキトップをシュッと1枚捲った。
引いたカードは星遺物を継ぐ者。
「星遺物……。お前たちは一体、なんなんだ……」
カードは答えず。
潮騒の音が木霊し、風がここのせの肌を撫でるだけであった。
[一方デュエルアカデミア 図書館地下]
一方そのころ、孤島の中のさらに地下。
デュエルアカデミアの地下閉架図書では良平とツァンがお互いが身を寄せ合って息を殺していた。
カツカツとリノリウムを叩く靴の音がする。
ツァンは良平の耳元で囁く。
「……や、やばっ、誰か来た……!?」
良平もひそひそとツァンに返答した。
「……ど、どうする……!?」
「……とりあえず隠れて!」
ツァンは慌てて良平の身体を奥に押し込んだ。
カツコツと足音が近づいてくる。
良平は奥の通路へと入り込み棚の陰に身を潜めた。
「……」
カツコツカツコツと音がまた一段と近づいてくる。
「……」
「……」
どちらかの喉が唾をゴクッと呑み込む音が聞こえた。
カツコツカツコツ。
音がいよいよ目前まで近づき、そして良平が潜む通路とは反対側から白衣をきた中年ほどの女性が現れた。
「あら」
女性は片眼鏡をかけていてボブのパーマがかかった髪を揺らしながらツァンを見た。
「誰かと思ったらツァンちゃんじゃない」
「あ、鮎川教授。ど、どうも」
「やだもー教授だなんて! みよちゃんでいいのよぉ」
【白衣に片眼鏡の女性 鮎川美代子(みよちゃん)】
「そ、そんな気軽に呼べませんよ……」
「あらそーお? 残念。ところでツァンちゃんはこんなところで何をしてるの?」
「ちょっと調べものを……」
「まぁ、随分古いの読んでるわねぇ。宿題か何か?」
「そ、そうです!」
二人の思いのほかの和やかな会話に良平は息をつく。
(……ツァンの知り合いみたいだ。とりあえず一安心か)
「一安心、とでも言いたげだな」
「ッ!!?」
良平は肩を跳ね上げて振り向く。
そこには白衣を着た眼鏡の男が立っていて冷たく見下ろしていた。
「……見ない顔だな。ラーイエローか」
(やばっ)
良平は顔を引きつらせて後退りする。
「はは、ど、どうも……」
「うわっ……」とツァンが苦い声を出した。
そんな中、美代子は場にそぐわない和やかな声を出す。
「あらスミス先生、ふらーっといなくなっちゃったかと思ったらそっちにいたのね」
「ふん……」
【白衣眼鏡の研究者 ウィリアム・スミス】
ツァンは思わず目で良平を非難する。
(バカッ……!)
それから、駆け寄って良平の腕を乱暴に掴む。
「……す、すみません!こいつ、ちょっと迷い込んじゃったみたいで! 今連れ出しますんで! ……ほら行くよ!」
「う、うん。し、失礼します!」
それから二人は一目散に走っていく。
そんな二人を美代子は唖然と見送った。
「まぁツァンちゃんったらスミに置けないわ! ……でもあのラーイエローの子、あんな子いたかしら……?」
「……鮎川教授、ラーイエローの生徒リスト、出せますか?」
「えぇっと……」
スミスからの要請に美代子はタブレットを取り出して操作した。
[図書館の外]
二人は慌てて階段を駆け上る。
ツァンは握った良平の腕に力を入れる。
「バカバカバカ! アンタ何見つかってるの!?」
「ごめんって! だってあんな裏側からなんて……!」
「もぉ! とにかく! 早く船乗って!」
「わ、わかった!」
ダダダダダと音が鳴るのも気にせず二人は走っていく。
[アカデミア校舎の外]
やがて校舎の外に出て、港まで続く通路まで来たところで二人は足を止めた。
上がった息を整えるために膝に手をつく。
「はぁーはぁー!」
ツァンはそこでようやく良平の腕を離した。
良平も上着をパタパタとしながら声を漏らす。
「ぜぇーはぁー……! あー、キツ……!」
「はぁはぁ……ここまで来れば……。とりあえず、港までいくよ……」
何とか息を整えたツァンは先導するように歩き出す。
「うん……」
「ハァッ……ホントに貧乏くじ……」
「ごめん、ホント……。今度なんか奢るよ……」
「はぁ、もういいよ……。でも次はジュースじゃなくてスイーツか何か要求するからね!」
(次も協力はしてくれるのか……)
言葉には出さないが良平はツァンの素のやさしさに感心した。
それから言葉を話す。
「もし次があれば、トリシューラ・プリンにしとく……」
とそんな会話をしていると背後からダダダダダダッと地面を蹴る音がした。
「みつけたにゃぁ!!」
そう叫ぶ声がして何かが良平の身体にしがみついた。
「!? ……うわぶっ!!」
ドガシャァァァと良平は地面になぎ倒された。
顔の部分には小さな体。
小さなといっても身長150センチほどでどうやら少女のようだった。
「にゃっはっはっー!! つーかーまーえーたー!!」
「んー!! んー!!」
ジタバタと良平は苦しそうに顔に張り付く少女をはがそうともがく。
よく見ると少女の髪は銀色のショートカットで、頭には猫耳のカチューシャをつけている。
ツァンはあっけにとられながら叫ぶ。
「ちょっ! だ、誰!?」
「んー?? ノノはノノなのだーー!! すみすのめいれいでこいつを捕まえにきたのだー!!」
【手作り猫耳カチューシャ謎の少女 ノノ】
「す、スミス教授の……!? や、やば……!」
その言葉にツァンは青くなる。
追手がこんなにすぐにくるなんて。
良平はやっとの思いで少女を顔からはがす。
「んんんー!! んばぁ!! な、なんだ、離してくれよ!」
「嫌なのだーー!! 離さないのだー!!」
「はーなーせー!」
「いーやーなーのーだー!」
ふたりはじたばたと地面で取っ組み合いをしている。
男子高校生である良平ならすぐに組み伏せられそうなものをなぜか拮抗している。
ノノはにやりと笑うと馬乗りの状態で言った。
「どうしても離してほしいならデュエルで勝つのだー!!」
「デュ、デュエル……??」
「ノノの世界では常識なのだ!! 勝てばぐんぐんなのだ!!」
「ぐんぐ……?」
謎の言葉に思わず首をかしげる良平。
しばし考えてツァンが補足する。
「”勝てば官軍”じゃない……? って湯川教授に捕まったらボクまで処罰されるかも……! ねぇ、あんた、サクッと勝ってさっさと島から出てって!」
地面に転がる良平に向けて言い放つツァン。
「たぁ!」
シュバッと良平の上から飛びのけるとノノは小型のデュエルディスクを構えた。
「いくのだ!」
「え、えぇ!?」
素早く立ち上がり良平は砂を払うのも忘れて目の前の状況に困惑した。
「いくのだ!!」
「えぇ……し、仕方ない……!」
腰のデッキケースに手を伸ばし良平も腕に付けた小型のデュエルディスクに差し込む。
ディスクは応答し展開する。
「「デュエル!」」
■今回はデュエル少なめになりました。
やや話の展開がないですが、次回以降また大会の試合が始まりますので……。
■感想をいただき誠にありがとうございます! これからもよろしくお願いします!
小説形式について 地の文やテキスト量
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読みやすい(テキスト量が妥当)
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前の方が読みやすい
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地の文が長い
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誰が喋っているかわかりにくい