遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
古事記やギリシャ神話、北欧神話の話がでますが……
本作に登場するこれらの内容はデタラメです!
本来の古事記、風土記その他に無い記述を勝手に増やしています。
この作品はフィクションです!!
[アカデミア島 フロントロード]
閑散としたアカデミア校舎と港を繋ぐ道。
そこに白衣の男が早足にやってきて辺りを見回した。
「ちっ……!」
周りには生徒は誰もおらず、ただ猫耳カチューシャをつけた小柄な少女がジタバタと地面で駄々を捏ねていた。
「うにゃぁぁぁ!! まーけーたーにゃー!!」
「何をしている! 捕まえておけと言っただろ!」
白衣の男ーーウィリアム・スミスは地面に転がる少女に苦々しく言う。
女子ーーノノは転がったまま目を釣り上げた。
「捕まえたにゃ! でもデュエルで負けたから逃げられたのだ!!」
「お前がデュエルで勝てるわけないと何度言ったらわかる!」
苛立たしげにスミスは頭を掻きむしる。
遠くからボォォオッと汽笛が響く。
それはアカデミア発の連絡船が出航したことを示していた。
「ッ! ……この役立たずが!」
「にゃぁ!? ひどいのにゃ!! 謝罪をよーきゅーするー!!」
「うるさい! ……デュエルディスクを見せろ」
「にゃっ!」
バシッとデュエルディスクを奪いとりポケットから取り出した機械を差し込む。
やがて中身が解析されモニターに様々な数値が浮かび上がった。
「……ほぅ、これは……」
「なんなのだー??」
「お前に用はない。あっちにいけ」
「んなー!! うー! ひっかいてやるのだー!!」
うがーっとノノは両手を振り回して抗議するも、スミスは機材だけを見つめ一切相手をすることはなかった。
[帰りの船]
一方、海上。
太平洋を切り裂いて、東京湾に入ろうとする船のデッキで良平は息を切らせて手を膝につけた。
「な、なんとか間に合った……」
息を整えてから顔を上げ、遠ざかるアカデミア本島に目を向ける。
(ツァンには悪いことしちゃったな……。今度会ったら、もう一度謝っておこう……)
帰り際にぷいとそっぽを向きながら、今度はケーキくらいじゃないとやってあげないから、と頬を膨らませたツァンの姿を思い出す。
それから良平は自分の左腕に目を向ける。
そこにはセットしっぱなしのデッキがあった。
(それにしても急にデュエルを挑んでくるなんて……さすがデュエルアカデミアだなぁ……。でもあの子、あまりに……)
良平は挑んできた少女を思い返す。
『ノノの先攻なのだー!!』
LP:4000
デュエルスタートともに勢いよくカードを見た後、少女は目をまん丸にして叫んでいた。
『って、にゃぁぁぁああ!!? なんじゃこの手札はぁぁぁぁ!!? 何もできないにゃぁぁぁぁ!!?』
『えぇ……?』
回想終了。
良平は思い出しながら苦笑いした。
(デュエルアカデミアにいる割には力を感じなかったな……。生徒じゃないのかな……。恵と同じくらいの身長だったし、中学生とかなのかも)
そんなことを思い返しているとポケットからピコリンッと音がした。
中にはスマホが入っていてもちろん音の正体だった。
ゴソゴソとポケットから取り出して画面を見て良平は思わず声を上げる。
「……うわっ」
着信1件
メッセージ3件
{見たら絶対返信!!
{どこほっつき歩いてんのかしらないけど、終わったら連絡しなさい!
{わかったわね!!?
画面からは聞こえないはずの亜美の声がした気がした。
寝る前決闘空間第27話
『ベスト8決定戦開幕! vsチームコーポレート!!』
[夕方 ネオ童実野シティ 高級街]
船から降りて良平は借りた制服を船着場の忘れ物ボックスに突っ込んだ。
街に戻る頃にはもう夕方になっていた。
「あ」
「お」
中央街から高級住宅街へと向かう道すがら、良平はばったりとここのせと鉢合わせた。
ここのせは一瞬驚いた顔をしてから手を上げて隣を歩く。
「よぉ」
「奇遇だね。これから恵の家?」
「おう。祭乃木が来いっつーからよ」
「あ、同じだ。でも昼から集まってたんじゃないの?」
良平も亜美からは前日に誘われてはいた恵の家でのランチ兼作戦会議。
当然ここのせにも誘いはいっていたが、ここのせはバツが悪そうに後ろ頭をかいた。
「オレはその……野暮用でよ、断ってたんだ。お前こそ行ってなかったのか?」
「うん。ちょっと調べ物したくて、断ってたんだ。そしたらメッセージがきて……」
良平は肩をすくめて言うとここのせも腕を組んで目を伏せた。
それから言葉の続きを引き継ぐ。
「ちょっと豪華な手土産買って恵ん家来いって指令がきたわけか」
「見たところ、ここのせも同じみたいだね」
「おう。ったく、祭乃木のやつ、強引なところは変わんねぇなぁ」
「はは、そうだね。でどこで買う?」
「そうさな。ま、恵の家に行く途中でちょっといいものつったら……」
チラッとここのせは顔を上げて右手方向を見た。
そこにはただのスーパーとは言えない何とも豪華な装飾をされた店があった。
看板には『成城オーガロック ネオ童実野シティトップス店』と書いてある。
「ここになるだろうな」
ここのせは顎で指す。
「ここ高いからなぁ」
ため息混じりに良平は呟いた。
そんな二人を尻目に大きな声が後ろからした。
「あ、いたいた! おーい!」
聞き慣れた女子の声に二人は振り向く。
はたせるかなそこには赤いポニーテールの女子ーー亜美が白いTシャツに短パンで立っていた。
「来たわね二人とも! 待ってたわよ!」
後ろには二人の人影。
片方は薄ピンク色のスカートとシャツを身につけたゆきと、相変わらず制服姿の恵であった。
「こんちには!」
「……」
三人の姿にここのせは意外そうな声を出す。
「祭乃木? 間宮と恵もいやがるじゃねぇか」
良平も三人に近付いて話しかけた。
「みんなできたの? よくここがわかったね」
もう一度店の方を見てから言うと亜美は得意げに胸を張る。
「ちょっとお高いもん買ってきなさいって言えばどうせここにくるだろうと思ったのよ」
「なんでぇそりゃ。まぁ、合ってんだけどよ」
亜美の言い分にここのせは呟く。
「でも」と良平が亜美に向けて言う。
「お使いさせるつもりじゃなかったの?」
「そう思ったんだけどね。アンタら何買おうとしてた?」
「え? トリシューラ・プリンとか……」
ぱっと思いついた高い商品を良平はあげる。
ここのせも頷いて続けた。
「めちゃくちゃ高ぇジャーキーとかだな」
「ほらね」と亜美は呆れたような顔をしてゆきと恵の方に向く。
ゆきは眉を八の字にして笑った。
「あ、あはは……。男の人って買い物がめちゃくちゃですぅ……」
「……ユニーク……」
恵も表情は変わらないままぽそりと言う。
亜美は呆れた顔のまま男二人を見た。
「アンタらどうせ碌なもん買ってこないだろうからわざわざ出張ってきたのよ」
「見透かされてるなぁ……」
「なんでぇそりゃ。買う前から文句つけられてんじゃねぇか」
良平とここのせは、なんとも言えない顔で各々が苦笑いする。
「買ってきてからつけられるよりマシでしょ! さ、買うわよ!」
そう言うと亜美は身体を向き直して店へと入っていく。
ゆきも手元にある紙を二人に見せながら声を出した。
「しっかりメモを取ってきましたから、お二人とも手伝ってくださいね!」
「へーへー」
ここのせは、頭の後ろに両手を置いて気のない返事をした。
店内に入るとやはりと言うべきか普段目にしないような食材や値段が高い輸入商品などが並んでいる。
ここのせはゆきのメモを横目で見ながら声を出した。
「それで、何を買うんだ?」
「ジャガイモにウィンナー、ブロッコリーにフランスパン! それとカマンベールチーズですぅ!」
「フランスパンにカマンベールチーズだぁ??」
随分とハイカラなものを買うものだと思っていると恵が顔を上げてここのせに言う。
「……一般的にチーズフォンデュの材料とされている……」
「おいおい、チーズフォンデュなんか庶民が食っていいのか」
慄いて言うここのせを尻目に良平は亜美に向く。
「それにしても、わざわざ成城でなんて珍しいね。普段なら安いの買ってこいって言うのに」
「普段なら、ね。けど今回はちょっとした英気付けをしようと思うの! 」
「英気付け?」
「そう! なんせ次の相手はスーパーシードのチーム! あの8つの強豪チームの1つ、チームコーポレートなんだからね!」
亜美はビシリと右手の人差し指を差し向けて言い放つ。
40チームあった本戦出場チームはすでに16にまで減っていた。
そして次の試合では8にまで絞られることになる。
ここのせは渋い声を出す。
「……8決めってわけか」
「そうよ! だから、ちょっといいもの食べて勢いをつけるわよ! それと、相手の分析とメンバーの選出も一気にやっちゃうわ!」
「なるほど」と良平は頷くのを見て亜美は満足そうな顔をして再び辺りを見回した。
「さ、買い物買い物!」
[野菜コーナー]
「ジャガイモはっと……」
棚を覗き込むここのせに、良平は指で別の棚を指差す。
「あ、ここだね」
近付いてみると値段が表示されていて、ゆきは怯む。
「……うわぁ……1個で380円……! 」
「成城価格って感じね……!」
亜美も腕を組んで苦笑いした。
カゴ係のここのせは、ジャガイモをカゴにいれてから隣の棚にも手を伸ばす。
「あとはブロッコリーか。これでいいか?」
「これしかないもんね。ちょっと高いけど……」
「ブランドらしいぜ。ほら、ガイアパワーって書いてある」
指を差すここのせ。
そこにはポップがあり、巨大な木のイラストが書いてある。
「……いや似てるけど……」
[チーズゾーン]
続いて5人が向かったのはチーズが置いてあるエリアだった。
普段行くスーパーには無いエリアだった。
「わぁ、チーズだけで何種類もありますぅ……!」
置いてある何種類ものチーズは、どんな味なのか想像もつかないようなものばかりだった。
亜美はその一つを掴み持ち上げる。
「見たことないやつばっかりね。これなんて凄い名前よ」
「どんなチーズなんでしょうかぁ?」
二人が首を傾げていると恵が声を出した。
「……それはパルミジャーノ・レッジアーノ。イタリアを代表するチーズ。1つの工房につき1日に1個のみ製造可能とされる。またその中で厳正な審査を潜り抜けたものだけがその名を名乗ることができる。よって高額になりやすい……」
話を聞いて良平は値札を見た。
「ホントだ、それ5800円もするよ……」
「ごっ……!?」と亜美は危うく落としそうになって慌てて棚に戻す。
「あわわわ……」
とゆきが首を振る。
「これは流石に無理ね……」
亜美は怖いものをみるようにして言った。
それから手頃なチーズをカゴに入れてさらに歩く。
「……あっ」
不意に良平が声を出す。
それから冷蔵の商品棚に歩み寄る。
そこにはトリシューラ・プリンと書かれた上等な包装のプリンが置いてある。
「流石成城、トリシューラ・プリンもあるんだ」
「うめぇんだよな、それ」
とここのせも頷く。
亜美は腕を組んで良平に向いた。
「そうねぇ。けど1個2700円よ? 全員分ってわけにはいかないわよ」
「一個下のグングニール・カタラーナとかブリューナク・ブリュレとかあればよかったんだけど」
「凄い名前ですぅ……」とゆきは一人ごちする。
亜美は5人を見回して口をあける。
「割り勘でも結構な値段になっらちゃうけど、どうする? 」
「……いや今月ちょっと余裕あるし、俺が買うよ」
「おぉ! おっとこ前ー!」
「調子いいなぁ」
苦笑いしながら良平が手を伸ばす。
不意に横からツカツカと足音がした。
その足音の人物は手を伸ばした先にあるプリンをさっと攫ってしまった。
「あっ」
顔を向けるとそれはスーツにサングラスをかけた大男で、こちらをちらとも見ずに歩いて行ってしまった。
「あー……」
とゆきはなんとも言えずに声だけが漏れる。
良平は所在ない右手を頭の後ろに置いた。
「ラス1取られた……」
「まぁ仕方ないわね」と亜美はため息混じりに言う。
それから顔をあげてさらに続けた。
「……でもあの人、なーんか感じ悪いわ! あんな奪うみたいな感じで取らなくたっていいじゃない!」
「まぁまぁ……」とゆきはまた眉を八の字にして亜美を宥めた。
そんなやりとりをしていると5人の後ろから革靴が地面を蹴る音がする。
「こら、石崎」
中世的で、しかしはっきりと女性とわかる真の強い声に全員が振り向く。
5人だけではない。
歩いて行った大男も足を止めて振り向いた。
「周りをよく見てみなよ。善良な市民から奪うような真似をしたらダメじゃあないか」
「!」
声の主は傍目から見ても良い生地のスーツとズボンの女性だった。
黒いショートヘアに首元のネックレスは一眼で安物ではないとわかる代物である。
「確かにトリシューラ・プリンを食べたいとは言ったけれど、そこまでしろとは言っていないよ」
「はっ、申し訳ございませんお嬢様」
「石崎、僕は今スーツを着ているんだ。その時はなんと呼ばなければならないのかな?」
「申し訳ございません、取締役」
「よろしい」
女は男からプリンを受け取るとこちらへと向かってきた。
「君たち、申し訳ないね。僕の部下の振る舞いがなっていなかったようだ。これは君たちにお返ししよう」
「あ、ど、どうも……」
良平は呆気にとられて受け取った。
隣では「……んー」と亜美がじっと女を見つめる。
「ふむ……。見たところ君たちは5人のようだが、一つだけで良いのかい?」
「は、はい……。それにどうせ5つあっても買えないので……」
「買えない?」
きょとんと目を丸くして女は首を傾げる。
答えたのはゆきだった。
「え、えへへ……、わたしたちはお小遣いを出し合ってお買い物してますので……」
「お金を出し合う……? 何故そんなことをするんだい?」
心底不思議そうに言うので、ここのせは肩をすくめて言い返す。
「オレたちは普通の高校生なんでな。分相応な買い物しか出来ねぇのさ。まぁ一言で言えばお金がねえってわけよ」
「なるほど……」と女は顎に手を当てる。
「僕はトップスの中では庶民派だと思っていたけれど、そういうものか……。勉強になったよ」
女は何度も咀嚼するように頷いた。
不意にブー、ブーとバイブ音がしたかと思うと女はスーツの内ポケットからスマホを取り出して耳にあてる。
「おや、失礼。……何かな?」
『何かな、ではないですのよ!! お時間が過ぎてますわ!! 早く来なさい!! ワタクシは暇ではないのです!!』
「おやもう時間だったか。すまないね。今向かうよ」
『海野さんが、引きずってでも連れて行くと息巻いて出て行きましたわ。急いでくださいましね!』
「やれやれ休まる暇がないね。石崎、あとの買い物は任せたよ」
「はっ」
「ではね、庶民の高校生達。また会おう。ごきげんよう」
クルッと女は踵を返して出口へと歩いていく。
「あ、ちょっと!」と亜美が制止するのも気付かずに。
女が自動ドアを開けた瞬間、外の車道に青いDホイールが止まった。
Dホイーラーは顔を向けると甲高い声を出す。
「いましたわ!」
「おっと、好都合」
スーツの女は悪びれもせずにDホイーラーに近付く。
Dホイーラーは乱暴にヘルメットを脱いだ。
青い縦ロールの髪がふわりと舞う。
「窪川さん! 貴女、このわたくしを待たせるなんて何様のつもりなのかしら!?」
「はは、ごめんよ。悪いけど乗せてもらえるかな?」
「きぃぃぃ! わたくしはタクシーじゃございませんのよ!!」
そんなやりとりが自動ドアが閉まるまで見えていた。
自動ドアはすりガラス状になっていて外の様子はもう見えない。
「い、行っちゃいましたぁ……」
ゆきがつぶやくと亜美は腕を組んで誰に言うでもなく声を出した。
「あの人、チームコーポレートのデュエリストだと思うわ」
「まじかよ!?」とここのせは目を丸くする。
「そうよね、恵!」
「……」
亜美に振られた恵はこくりと頷く。
「……ネットデータを照合した。彼女は窪川夢迦。窪川フードコンポーネンツの代表取締役。そして8強の一つ、チームコーポレートのチームリーダー……」
「確かにどっかで見たことあるとは思ったが……」
言われてからここのせは腰に手を当てて去っていった女性を思い浮かべる。
良平も予想外を隠せずにいう。
「開会式の時と服装が違うから気づかなかった……」
「お写真とも印象も違いますぅ……」
「……」
「偶然なのかしら……。アタシたちも早く帰って作戦会議しましょ!」
亜美は発破をかけるようにして言ってから歩き出す。
「さ! レジへGO!」
…………
……
…
[ネオ童実野シティ トップス海野財閥 屋敷]
一方、ネオ童実野シティのトップス地区。
ここにはその他の地区では見られないような豪華絢爛な屋敷が多く集まっている。
そのうちの一角の屋敷の中、赤いカーペットの上を二つの足音が通る。
片方は優雅にすまして歩いているのに対し、もう一つはいら立ちを隠せないように歩いている。
いらだっているのは青い髪の方で、ヘルメットを脱いでその場にいたメイドに渡すと髪の毛をツインテールに結んだ。
「全く……。わたくしの美しいDホイールで何故二人乗りしなければならないのかしら……」
「機嫌を直しておくれよ。海野財閥の御令嬢の眉間にシワを残したとあれば、大問題だからね」
「誰のせいだと思ってるんですの!?」
【Dホイール製造メーカー株式会社UMINO 代表取締役 チームコーポレート所属 海野幸子(うみのゆきこ タッグフォースキャラ)】
「まぁまぁ」
スーツの女--窪川夢迦は何とも思っていないような顔で肩をすくめた。
前を歩く使用人がいくつもあるドアの一つの前で止まり、振り向いた。
「こちらへどうぞ」
中に入ると広々とした空間にシャンデリアが吊るされていて、中央に長い机があった。
対面に並べられと椅子に座り金髪ウェーブの女がちょうどカップに注がれた紅茶を飲む寸前だった。
金髪の女は振り向くと目を吊り上げて声を出した。
「ようやく来ましたのね窪川さん! ワタクシを待たせるとは、いい度胸ですわ!」
「優雅なティータイムになっただろう? 新田アナスタシア取締役」
【スーツの女 黒髪ボーイッシュ女子 窪川フードコンポーネンツ代表取締役 チームコーポレートチームリーダー 窪川夢迦】
「あーら、嫌味なこと。捻り潰してやりたいですわぁ」
【金髪ウェーブ 株式会社アルセーヌジャパン 代表取締役 新田アナスタシア】
「怖い怖い。天下の新田商事の娘さんときたら喧嘩っ早くて困ってしまうよ」
「今はアルセーヌに出向していますので新田商事ではありませんわ」
「おやおや、それはもっと怖いね。怖いついでに、ここらで一杯お茶が怖いよ新田さん」
「まぁ図々しいですこと。……使用人!」
アナスタシアは嫌そうな顔のまま手をパンパンと二回たたく。
すると外で待機していた使用人がすぐに用件を聞きに来た。
「はっ」
アナスタシアが茶を入れるように指示を出している間、夢迦は置いてあったマカロンをひとつ摘まみ上げて口に放り込んだ。
「お茶の前にマカロンも怖い」
「あら野蛮」と今度は幸子が顔をしかめる。
「立って召し上がるなんてお行儀悪いですわよ。見苦しいので座ってくださる?」
「これは失礼」
ストンッと椅子に座りもぐもぐと口を動かす。
ごくんと呑み込むと前に座るアナスタシアと幸子を交互に見た。
「しかし、二人とも同じような喋り方だからどちらが話してるのかわからなくなりそうだよ。もっと個性的に話したらいいのに」
「トップスではこれがスタンダードですのよ窪川さん。おかしいのは貴女です」
つんけんとした言い方をする幸子に夢迦は首を傾げた。
「そうかな」
「お戯れはそこまで」と今度はアナスタシア。
「予定が詰まっておりますので、早いところミーティングをはじめていただけます?」
「そうだね」
幸子が薄型のノートPCを取り出してカタカタと入力する。
いくつもの資料が表示されている。
「恐らく、エイトにはチームバンデットが上がってくるでしょうね」
トーナメント表を指さして幸子が言うとアナスタシアも同意する、。
「ええ。そう考えるのが妥当ですわね。前回大会ではワタクシ達が下した相手ではありますが、油断は禁物、ですわ」
「バンデット、野蛮な殿方のチームですが、デッキは悪くないものを使っていますからね」
二人が納得顔で話を進めていくのに夢迦は首をひねる。
「おや?」
「どうされましたの?」とアナスタシアがきょとんとした。
「次の対戦のためミーティングのつもりだったのだけど、違ったかな」
「大会の戦略ミーティングですから合ってますわよ?」
「次の相手はチームHEROという高校生のチームだったように記憶しているのだけど」
「ああ。一般参加のチームですか。あんなのワタクシ達の敵ではありませんわ」
きっぱりとアナスタシアは言い放つ。
WSC本戦のベスト8決定戦は一般チームと8強が初めて交わる戦い。
しかしながら、それは8強の強さを見せつけるための前座に過ぎない。
無論、稀に一般チームが勝つこともある。
現在の8強の一角であるチーム煉獄が去年8強の牙城を崩してはいるものの、アカデミア生のオベリスクブルーのチームだ。
例外も例外だった。
幸子は取るに足りないという顔をして紅茶を飲む。
「これまでも一般参加チームがまぐれで上がってくることはありましたが、みんな話になりませんのよ。問題は次の試合ですわ」
「ふむ……」
「前回は準々決勝でディスティニーと当たってしまいましたが、今回は決勝までは当たりませんわ。ですので、他の8強の対策を考えますわよ」
「……」
二人はまたパソコンの画面を睨みながらベスト4決めの試合について検討を始めていた。
夢迦はそんな二人を腕を組んで見つめていた。
[恵の家]
小皿に取り分けたトリシューラ・プリン。
茹で野菜。
ウィンナー。
フランスパン。
真ん中に陣取るチーズフォンデュ。
それらを見下ろすように引っ張ってきたモニターが机の向こうにおいてある。
「で」
ズイッと亜美が全員の顔をまるで覗くようにして覗き込む。
「チームコーポレートの対策だけど」
亜美の切り口に良平は顎に手を当てて恵に向く。
「相手のメンバーは全員判明してるんだっけ?」
「……ん……」
恵は静かに頷くとそばに置いたキーボードを叩く。
モニターは呼応してページを開く。
「……チームコーポレートは、株式会社窪川フードコンポーネンツ、株式会社UMINO、株式会社アルセーヌジャパンの3社の共同出資によるチーム……」
画面にはそれぞれの会社のロゴと人物の写真が表示される。
真ん中のチームリーダーの女は昼に見た人物そのものだった。
ここのせはその女の隣に立つ青い縦ロールの女に目を向けた。
「UMINOっていや、Dホイールの大手ってイメージだよな」
「そうね」と亜美も頷く。
「DホイールはUMINOとボルカンの2強って感じだもんね」
亜美の言葉にここのせも「おう」と返事した。
ゆきはモニターの窪川の文字を指さす。
「窪川も有名ですよね……。デパ地下の高級食品って大体窪川印ですし……」
「あ、確かにそうかも」
良平も自宅の喫茶で出している高い商品が窪川フードと書いてあることを思い出した。
それから画面左側にいた金髪の女の方を見る。
「でも、アルセーヌって会社は知らないな……」
すると恵が補足するように言う。
「……株式会社アルセーヌは、フランスの会社。現在は株式を日本の新田商事が買い占めているため、日本においてはアルセーヌジャパンの名で展開している……」
「何をしてる会社なんです?」
ゆきが聞くと恵は無表情を向ける。
「……主に興行施設における遊具のデザインや設計等を行っている……」
「興行施設、ですかぁ?」
「……代表的なもので言えば、この街の海馬ランドや、アメリカや千葉県等に存在するモルモランドなどの遊具のデザイン及び作製を行っている……」
「マジかよ……」とここのせは渋い顔を浮かべる。
「超大企業じゃねぇか……。それも財閥級の……」
「トヨダの時も凄いと思ったけど、それ以上だな……」
良平も同調するように感じいる。
口の端を上げて亜美が先に進めた。
「流石8強に残るだけはあるって感じよね。それで、メンバーだけど……恵!」
「……ん……」
再びキーボードを叩き画面を変える恵。
◆チームメンバー
窪川夢迦
窪川フードコンポーネンツ代表取締役
海野幸子
株式会社UMINO代表取締役専務
新田アナスタシア
株式会社アルセーヌジャパン 経営顧問
「このUMINOの女、うみの……さちこ?ってのか? 海鮮丼みてぇな名前だな……」
ここのせが訝しんでいると恵が否定する。
「……読み方が異なる。さちこ、ではなく、ゆきこ……」
「これで、ゆきこって読むのかよ……。読めねぇって……」
写真を見てゆきは感嘆する。
「それにしても、代表取締役……。みなさん、お若いのに……」
「いわゆるご令嬢ってやつね」
亜美は好敵手を見るかのような顔である。
恵に向かって良平が口を開く。
「それで、デッキは?」
「……」
カタカタカタとキーボードを操作し、モニターにカードリストが表示された。
「……ネットデータ、及び前回大会の対戦映像から割り出した……」
「……先発は毎回、海野幸子って人が担当してるな」
カードリストの下の簡略化されたデュエルログを見て良平が呟く。
亜美は良平の言葉に対して頷く。
「そう。そして、その先発がまず最初の難関よ」
「難関だ?」とここのせが怪訝な顔をする。
良平はカードリストを見て言う。
「デッキは水属性、いや魚族、か?」
「……彼女のデッキはモンスターの大量展開によるフィールド制圧に長けている。これまでの大会においても、一般参加チームは、彼女を突破できずに敗北する場合がほとんど……」
淡々と言う恵にゆきはふるふると首を振った。
「うぅ……流石はウルトラシードのチームですぅ……」
「しかもそれだけじゃないわ。先発を苦労して倒しても、セカンド、ラストも超強敵よ!」
一方の亜美はどこか楽しそうに言って恵に向く。
「……セカンドプレイヤーは、新田アナスタシアが担当することがほとんど。彼女は多彩な罠カードとそれを操るモンスター群によるデッキを用いる……」
「先発で盤面を固めて、二番手で守るって感じなのかな……」
良平の分析に恵は小さく頷き、続ける。
「……そして、ラストプレイヤーはチームリーダーの窪川夢迦。儀式召喚を軸にしたデッキの使い手。彼女は単独でもKCグランプリを制覇した実績を持つ……」
「儀式かぁ……。……カード資料が少ないけど詳しいデッキ内容はわからないの?」
「……彼女のみ、どの資料においても意図的にデッキ内のカードを判別不能にする編集をかけている……」
「なるほどなぁ……。ベスト8に入るチームだったらメタを警戒するよな、そりゃ」
苦笑いして後ろ頭を掻き上げる良平の背中を亜美は軽く叩いた。
「ま、いつだってデッキは進化するものよ! 変にデータに囚われないならいいじゃない! 大まかな内容がわかれば、後はこっちの問題よ!」
いつだってデッキは進化する、そんな当たり前の言葉にここのせは口を紡いでしまう。
「……」
そのことに誰も気付かないまま、良平が口をあける。
「次はこっちのメンバーの選出か……。難しいなぁ……。先発で蓋されたら相当きついぞ……」
「そうねぇ。初っ端からアタシが行ってもいいけど」
と亜美が言うと良平はモニターを睨みながら返事をする。
「いや先発が種族を重視したテーマなら恵を当てるのがいい気がする」
「……」
「確かに」とここのせも同意した。
「ラグナロクと戦ったときはアンデット・ワールドが相手の動きを抑えてたからな……」
「問題は、相手がそれを警戒してくるか、だけど」
顎に手を当てて返事をする良平に亜美はカバンから雑誌を取り出して口を開けた。
「それに関しては大丈夫よ。これ見てみなさい」
「デュエルマガジンじゃねぇか」
ピラッとここのせは雑誌を開く。
中にはカード情報や戦略記事が書かれている。
亜美はいくつかページを進めさせてから指を指した。
「ここのWSC特集」
良平は覗き込んで読み上げた。
「この勝敗予想ってやつ? なになに……『第2回戦が全ブロックで終了した。いよいよ次は、ウルトラシード権を持つ強豪8チームと一般参加チームが激突する。しかし、例年のように一般参加チームが勝利する例は少ないだろう』」
「あ、わたしたちについても書かれていますよ」
ゆきも記事の一部に手を伸ばす。
「あ、ここか。……えっと、『チームコーポレートは一般参加チームの中では唯一の高校生チーム、チームHEROと戦うことになる。チームHEROは、高校生という未熟なデュエリストながら奇跡を起こし勝ち上がってきたが、それもここまでだろう。順当にチームコーポレートが勝ち上がる予想だ』」
「随分な言われようだな」
一周回って面白いとここのせはニヒルに笑った。
亜美は腕を組んで記事を睨みつける。
「アタシも見たときはめちゃくちゃムカついたわ! けど、変に注目されるよりかは動きやすいはずよ」
「うーん」と良平が唸る。
「相手もこれを鵜呑みにして舐めてくれると助かるんだけどなぁ」
強い相手に対してアドバンテージとなるなら舐めてもらって構わない。
むしろこちらの利になっているというのが良平の見解だった。
恵はそんな良平の目をまっすぐに見る。
「……私をファーストプレイヤーに据えると仮定した場合、セカンドプレイヤーはどうする……?」
「……アンデット・ワールドは諸刃の剣だからな。慎重に決めないとね」
種族を変え相手に一定の制限を強いることができるカードだが、プレイヤーチェンジした瞬間に味方をも縛ってしまう。
一長一短で考えなしに使える札ではない。
亜美はここのせとゆきを見た。
「自分からアンワを解除できるのは、デッキ内にフィールド魔法が入ってるデッキよね。アタシとここのせと……一応ゆきもできるわよね?」
「は、はい……。ただフィールド魔法はデッキの中に1枚しか入っていないので……」
狙って発動できるものではないとゆきは暗に訴える。
良平は眉を顰めて続きを引き継いだ。
「相手の二番手は、罠カードをたくさん使ってくるデッキなんだろ? それにも対応しなきゃいけないし、アンワに気を取られるのはまずいのかな……」
「……プレイング次第で、アンデット・ワールドをフィールドに残さずにセカンドプレイヤーに繋ぐことは不可能ではない……」
「もしそれができるなら、味方より相手を意識したいな」
8強相手にリソースを全部敵に回せないのは負け筋に繋がる。
ここのせはふと海岸線でしたデュエルを思い出す。
伏せカードを突破出来なかったあのデュエルを。
「……敵のバックを意識しながらのプレイングか」
『それが、今のお前さんのデッキに足りん力っちゅーわけじゃ』
(……今のオレに敵を乗り越える力はない……か)
罠カードを大量に擁するデッキと対峙して勝てるイメージが見えてこない。
そんな力不足な自分がひどく嫌になってここのせは顔を歪ませた。
「ここのせさん……? どうかされました?」
ふと顔を上げるとゆきが心配そうにこちらを見ていた。
整った眉は八の字になっている。
ここのせは慌てて手を振ると歯を見せて笑ってみせた。
「い、いや、なんでもねぇよ! 昨日夜更かししちまってよ、ボーっとしちまったぜ!」
「まぁ。大丈夫です?」
「当たりめぇよ! 大丈夫だ!」
この通り、とここのせはパンを大口に齧り付く。
そんな様子を亜美は何も言わずに見つめた。
「……」
「それより」とパンを飲み込んでからここのせは良平に向く。
「メンバーの選出だがよ。二番手には良平を合わせるのがいいんじゃねぇか?」
「俺?」
「ああ。バックを意識しながらのプレイングなんてお手のもんだろ?」
「どうかな……。これまで仲間内でデュエルした感じ、間宮のデッキもバックを割る力がありそうだけど」
「へ!? わわわたしですかぁ!? お、恐れ多いですぅ!?」
突然振られたゆきは大袈裟に手を振って否定する。
あまりに必死なので亜美は思わず笑った。
「あはは! そんな真っ赤にならなくてもいいのに!」
「うぅ……。本戦の大事な試合に私なんかが出たらダメだと思いますぅ」
「予選決勝に出たんだから今更だろ」
とここのせも半ばからかうように言うとゆきは目を伏せた。
「うぅぅ……」
「ま、強要はよくないわ。良平、いけるわね?」
さっさと切り上げて亜美は良平に向けて有無を言わさない声で言った。
「わかったよ……」
「何とかならなかったら、アタシが何とかするわ! ドーンと構えなさい!」
それからフォークを掴み切ったフランスパンを刺す。
チーズフォンデュにチャプリとつけて口に入れてしまう。
なんとも言えないクリーミーな食感が口いっぱいに広がった。
「うまー! ほら、みんなも食べて!」
…………
……
…
[その日の夜 ここのせ宅]
家の中はしんと静まっていて誰もいない。
ただここのせだけが自室で電気をつけているだけ。
本棚には北欧神話や日本神話の大全などがずらりと並んでいて、そのうちのひとつをここのせは机に座ってめくっていた。
タイトルには『古事記』と書かれている。
「……」
ペラッと数ページ捲る。
(相変わらず難しくて読みにくいぜ……)
出てくる言葉は全て古語。本来は漢文で書かれているものを書き下したものである。
(……国作り神話、いやこれは日本列島ができたって神話だ。一番有名だけど、これじゃねぇな。もっと前、最初のところか)
ペラッペラッとページを遡る。
最も初めのページまで戻り、初めから読んでいく。
(全てが生まれる天地開闢の際高天原に3柱の創造神が生まれた……ら。創造神……)
『星遺物には、創星神の力が宿っておる』
(関係がある、のか……?)
一縷の可能性にかけてさらに深く読もうと目を凝らす。
しかしながら創造の神に関する記載はすぐに終わってしまった。
(ってもう話終わりかよ。……次はもう国作り神話だもんな。うーん、神話を探すってのは安直だったか……?)
古事記を開いたままここのせは椅子に深くもたれかかる。
背後にある本棚を振り返り、神話本の背表紙を一瞥した。
(ギリシャ神話では、世界の始まりは混沌があって大地と天の神、そしてゼウスが生まれる。そしてその3柱の神による王権が始まるという。北欧神話では、9つの世界があり、それを世界樹が結んでいるという宇宙論を展開する……)
どれも難しい内容でしかも翻訳された内容だけに覚えている内容は非常にざっくりとしていた。
ここのせはため息をついて椅子を戻し、再び古事記に目を落とす。
(どれも話だけはでけぇが、創星神……星遺物に関しては詳しく書かれてないぜ……。……ん?)
ふと目を落とした先は端書き。
そこには注釈があって創造神に関する記載に注が振られている。
『創造神信仰の記載は各地の風土記に点在する』と。
(……風土記。読んだことねぇな。流石にうちにはねぇし、今日は無理か)
それからここのせは窓の外を眺めた。
夜空には霞んだ星が僅かにみえるばかりで満天とは言えなかった。
…………
……
…
[2日後 ネオ童実野シティメモリアルスタジアム 観客席]
試合の当日。
8決めの試合からは全国放送される。
それも相まって観客席は相当数が埋まっていた。
チームHERO側ベンチも例外ではなかった。
「ふぅ……。よっこらせ」
ストンッとなんとか見つけた席に女性が腰をかける。
「おや」とその場にいた女子高生が気付き近付いてきた。
制服は童実野第二高校のもの。
「失礼。そのお姿、間宮さんの御母堂とお見受けしましたが、いかがでしょう?」
「へ!? は、はぁ、そうですが……」
「ビンゴ! さっすが私、天才すぎて困ってしまう……」
小柄な女子高生はウェーブのある長髪を靡かせてうっとりとする。
市原桃胡ーー通称くるみんであった。
「あ、あのぉ……」
女性ーーゆきの母は困惑したように声をかけるとくるみんははっとして、笑いかけた。
「おっと、失礼! チームHEROの応援ですね?」
「そ、そうですけど……」
「では、これを差し上げましょう!」
言ってくるみんはうちわとかち割り氷を半ば無理矢理ゆきの母に持たせた。
うちわはGO チームHEROと書かれていた。
マジックではなく丁寧に布や銀紙で作り込まれている。
「あ、ありがとうございます……?」
「このうちわはこの天才女子高生くるみん様が作った、童実野2校応援うちわ! ぜひ使って応援していただきたい!」
「は、はぁ」
ゆきの母はきょとんとして周りを見た。
するとそこら中に童実野第二高校の生徒たちがいることに初めて気がついた。
少し前まではガラガラだったというのに。
「あの!」と今度は別の女子高生2人が近付いてくる。
「 間宮さんのお母さんですよね! 私、間宮さんと同じクラスなんです!」
「すごーい、髪とか間宮さんそっくりー!」
「あ、あはは……」
「今日は友達も連れてきたんです! 一緒に応援しましょう!」
にっこりと笑いながら女子生徒2人も両手にうちわを構えていた。
「な、なんだか凄いことになってるのねぇ」
[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム 通用ゲート前]
一方その頃、スタジアムの選手通用門。
ポツンと恵が立っていた。
「……」
「あ、恵さーん!」
ゆきがタタタッと手を振りながら小走りで近付いてくる。
「……こんにちは……」
「はい!」
「お、もう二人いる」
「あ、日和田さん! こんにちは!」
「……こんにちは……」
「うん。祭乃木とここのせはまだ来てないんだね」
「そうですねぇ。でも、もう来ると思いますよ!」
[その少し前 ここのせ宅玄関]
靴ひもを結び玄関を開ける。
足取りは重たいが今日の試合に自分は出ない。
それにどこか安心している自分がいるのも許せなかった。
「……」
ガチャッと玄関を押し開けると眩しい光が目をくらませた。
だから玄関の外に人がいるのに声をかけられるまで気付かなかった。
「よっ」
待ってた、とばかりにポニーテールの赤髪ーー亜美が立っていて片手をあげた。
「ああ? 祭乃木? 何してんだこんなとこで」
「何って、迎えに来てやったんじゃない」
「はぁ? 幼馴染かお前」
「幼馴染でしょ! てか、このアタシが直々に迎えにきてやってるんだから、もっと感謝しなさいよね!」
「遠回りだったろ。わざわざ、何の用だってんだ?」
二人は歩きながらやりとりをする。
「アンタが最近、浮かない顔してるからでしょ。ゆきも心配してたわよ」
「な、なんでぇそりゃ。オレは別に、なんともねぇよ」
「ふーん?」
歩きながら亜美はここのせの顔を覗き込む。
「ホントかしら?」
「いっ……!? 」
なんでも見透かしそうな亜美の目線にここのせはぎょっとして顔を背けた。
「お、オレを疑おうってんのか!?」
「そーじゃないけどさ。アンタ、みょーに強がりじゃない」
「うるせーってんだ」
そんなやりとりをしながら二人は坂を下っていく。
さらに先の中央街まで歩いたところで足を止めた。
ザワザワガヤガヤとしていて、人混みはまるで団子のように固まって淀んだ川のようにじわじわとしか進んでいかない。
「ここから先、誘導員に従って歩いてくださーい」
交通課の警官らしき人物が定間隔で立って誘導している。
亜美はやや離れたところから腕を組み人混みを見渡した。
「あー、結構混んでるわね」
「メモスタもドミスタもWSCの8決めやるからな。こりゃ全員、スタジアム行きだな。……しっかし、その内の片方が、まさかオレたちたぁな……」
感慨深い、とはまた別にしんみりとここのせはつぶやいた。
背中にバシッと衝撃が走る。
「ってぇ!? 何しやがんだ!」
「アタシ達が、こいつらを驚かせてやるんじゃない。だからもっと気合い入れなさい!」
「ッ〜、てめぇは相変わらず乱暴なやつだぜ……」
「うっさいってーの!」
「つーか、この道、しばらくは通行規制になるみたいだぜ。時間は怪しいけど、遠回りするしかないないみたいだ」
「ーーー」
ここのせの言葉に返答はなく、見ると亜美は遠くを見ている。
「祭乃木?」
「面倒ね、近道、しましょ!」
「近道だぁ?」
怪訝な顔をするここのせを他所目に亜美はニッと笑ってずんずんと歩いていった。
[中央街 裏路地]
ピチョンッピチョンッと配管から滴る水滴がコンクリートを濡らす。
捨てられた箱の上にのら猫がいてふわぁーっとあくびした。
「あっれぇ、こんな狭かったかな」
ビルとビルの間。
碁盤の目のようになっている裏路地を肩を二人は肩を窄めて歩く。
「オレ達がデカくなってんだ! この近道、小学生以来だぞ!」
「確かにそうね! あん時は全力で走って抜けられたんだけど」
「あん時から何年経ってると思ってんだよ。……しっかし、小学生か。お前は、会った時からずっとそのHEROのデッキだよな」
「何よ急に。良平だってずっと幻獣機だし、アンタだってずっとその星遺物のデッキじゃない」
「まぁ、そうなんだけどよ……。お前も良平もあの頃からデッキの中身は変わってんだろ。その、お前はどうやってデッキをいじったんだ?」
「うーん……。アタシの場合は、手に入れたカードとデッキを見てちょこちょこ変えてこうなったけど」
「まぁ、そうだよな」
「良平なんかは思い付いた戦術に合わせて割とがさっと構築を変えることもあるし、人それぞれよね」
「……そうか」
「……ごめん、ここのせ。ちょっとストップ」
急に前を行く亜美がピタリと止まり、手で制してしまう。
ちょうど路地と路地が交差する場所で今いる狭い路地からややビルの感覚が広い路地へと出る場所だった。
「どうした?」
ここのせが聞くと亜美は真剣な顔で路地の角を見つめる。
「さっき男と中学生くらいの子が裏路地に入っていったのを見かけたのよ。多分そこの角だと思う」
「はぁ? なんでぇそりゃ? カツアゲか?」
「わかんない。けど、こういうイベントの日はそういうアホが出るもんよ。まぁアタシの杞憂ならそれが一番いいんだけど」
亜美が言い終わるか否かほどのタイミングで
ガタンッドガッと鈍い音が響いた。
「!!」
「なんだ……?」
二人の間に緊張が走る。
すぐに路地の向こうから男の怒鳴り声がした。
「な、なんだお前!!」
ズガァァァァンッ。
返事代わりなのか何かを破壊するような音。
「ひぃっ!」
と情けない悲鳴と共に角から男が走ってくる。
角から男の姿が現れたかと思うとガンッとそこにあったパイプに躓いた。
「うわぁぁ!」
粉塵をあげて男は地面に痛烈に転がり二人の前に倒れた。
「おわっ!?」
「え!? そっちが逃げてくんの!? ちょ、ちょっと大丈夫!?」
亜美が中腰になりかけた瞬間、男はすばやく立ち上がり亜美とここのせを押しのけていく。
「ひっ! ど、どけっ!!」
「ッ!」
「ぐっ!」
不意をつかれた二人は壁までよろけてしまう。
男はそのままなりふり構わず走り去っていった。
「ッ〜、何よ、アイツ!!」
「ってぇなちくしょう! ……なんだってんだ……」
二人が同じような感想を同じタイミングで呟いた時。
ズリッ……ズリッ……。
男が走ってきた角から引きずるような音がする。
「!!」
再び緊張が走る。
肌に感じる嫌な予感。
亜美は手でここのせを後ろへ押す。
「何かくる……!? ここのせ、下がってなさい!」
「バカやろう、お前が下がれ!」
グイッと亜美の腕を引っ張りここのせは前後を入れ替わる。
ズリッ……ズリッ……。
「……ッ」
ゴクリッと唾を飲み込む。
ズリッ……ズリッ……。
現れたのはーー。
傷だらけの少年だった。
彼はズリズリとよろめいて壁を擦って歩いている。
「……」
目に焦点は合ってなく、幽鬼のように力なく歩いている。
亜美もここのせも少年の顔を見て驚いた。
「……え、こいつ、どっかで……」
「……」
「その狐っぽい顔……! お前、枡田威借!!」
ここのせは思い出したように指を差す。
以前、3人組みの小学生ーーつかさ、こかげ、けいじのカードを奪い取った中学生。
彼の目に光はない。
ただ俯き手にはカードが数枚握られている。
亜美はじっと彼を見てここのせに耳打ちした。
「……待ってここのせ。様子が変よ」
「……」
ここのせは意を決してゆっくりと少年に近付いた。
腕にも顔にも足にも擦り傷や打撲跡が複数あった、
「……おい、お前。こんな薄暗ぇとこに一人でいたらあぶねぇだろ。こんなところで何を……」
言いかけた刹那。
ガバッと少年がここのせの懐に飛びかかってきた。
「なっ……!?」
一瞬のことに対応できず、首元に伸びる手をなんとか抑えるのが精一杯だった。
「ッ!?」
亜美も突然のことに目を見開く。
少年は涎を垂らしながら叫んでいた。
「ヨコセ……! ヨコセ……!!」
「くっ、コイツ……! なんて力だ……! ぐぅっ!」
グラッとバランスを崩し、ここのせは少年と共に倒れ込む。
ガシャァァンとゴミ箱や段ボールを巻き込んで凄まじい音が反響した。
「くっ……」
「フーッ! フーッ!」
馬乗りになった少年はそのままここのせの首に両手を伸ばした。
「ガッ……!?」
手を抑えながらなんとかもがくここのせ。
しかし手は休まることはなくついに気道が塞がるほどに絞められていく。
「ーーッ正当防衛っ!!」
亜美は迷わず少年の腹に蹴りを入れた。
痛烈に弾き飛ばされ、壁に身体を打ちつける。
「ぎゃっ……!」
「ここのせ!!」
亜美は直ぐにここのせに駆け寄った。
首には真っ赤な跡がついている。
「ッ〜〜ゲホッゲホッ」
「ッ! 何すんのよ!!」
キッと亜美は少年を睨む。
しかし、その場の様子に目を丸くした。
「ーーーえっ……!?」
ジジッーーージジジッーーー。
まるで空間が歪むように。
ノイズが走るように。
抵抗なのか白い稲妻さえも細かく走る。
少年は狂った顔で叫ぶ。
「ーーホシイ……! ホシイホシイホシイホシイ……! 全部全部全部!!」
ジジッーー。
「ォオアア……qliphoth.exe の 0x1i-666 でハンドル……れていない例外……確…。場所 0x00-000 に書き込み中にアクセス違反が発生しました」
支離滅裂な言葉。
少年の身体も徐々に歪んでいく。
背後がーーその空間がビリビリと破け機械のような何かが現れる。
少年の身体をパスのようなもので雁字搦めにしながら機械が甲高い音を鳴らした。
「たッgなnトiのoモdる知rヲu悪o善yりナnにoウよyノrりgトnひaノれsワiれワdはo人Gヨ見」
「なっ……!?」
ここのせは思わず口を開けた。
亜美もここのせの身体を支えながらも声を上げた。
「こいつ……!! あの時の……!?」
ストックホルムで遭遇した化け物。
それがまた二人の前に現れていた。
[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム 通用ゲート]
「ーーー!!!」
ビクンッと恵は身体を一瞬震わせ、凄まじい勢いで振り向いた。
「恵さん……?」
「どうした?」
ゆきと良平は不思議そうに恵を見た。
恵は目の中の瞳孔ーーよく見ると様々な文字が浮かんでいるーーを狭めて声を出した。
「ーー強大な時空震を観測……!! 震源は中央エリア……!」
「え……!?」
「そ、それって……」
「ーー!」
答えることもせずに恵は突如走り出した。
あまりに突然で良平もゆきもただ立ち尽くすのみ。
「恵!!」
「恵さん!!」
奇しくも二人きりになってしまい、良平とゆきはお互いの顔を見つめた。
亜美もここのせもいないのに。
「チームHEROの方〜」
声に振り向くとWSCのスタッフがいた。
「あっ……」
「選手控室までお願いします。また試合開始5分前までに出場選手のデッキ登録もお願いしますね」
「……やばい」
良平は後ろ頭に冷や汗をかいた。
試合開始までの時間が刻々と近付いている。
[中央エリア 裏路地]
「ォオアア!」
中学生の癇癪のような。
否、獣のような声。
「プログラムを実行。C:¥tierra¥qliphoth.exe を起動中」
機械の化け物は無機質な音声のようなものを不愉快な起動音ととも流しながら、先端についた構造物らしきものをここのせへと突き刺した。
「うぉっ!?」
なんとか飛び込むように避ける。
耳を劈くような爆音がして、化け物の構造物が壁へとめり込んだ。
バリンバリンバリンと窓ガラスが割れる。
「くっ、なんだこいつ!?」
「ここのせ!」
化け物がギュルンッと生物感の無い動きでここのせに向き直し、構造物を振り上げた。
「ッーー」
息を飲むここのせ。
化け物は容赦なく振り下ろす。
「くっ!!」
バッと亜美がここのせに飛び込み、地面へと押し倒す。
「ごふっ!?」
ゴロンゴロンと二人して転がった。
元いた場所は振り下ろされた構造物で粉々だ。
亜美は下になっていたここのせに顔を寄せる。
「大丈夫!?」
「っッ〜! あれを喰らうよりかはマシって感じだ!」
バッと素早く立ち上がる。
化け物は再びギュルンッとここのせに向く。
「ーッ! 祭乃木、逃げるぞ!」
来た道を戻ろうとするここのせの腕を亜美は掴んで止める。
「ダメ、ここのせ!」
「うぉ!?」
「そっちはダメ! 中央エリアは人が多すぎるわ!」
「こんな時に気にしてられっか!」
「こんな時だからよ! こっちの道を通れば、旧サテライトエリアまで抜けられるはず! 着いてきなさい!」
亜美はここのせの手を引いて走り出す。
化け物はギュルンと変にぬるっとした動きで追い縋ってきた。
[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム選手控室]
スタッフに連れられてゆきと良平は控え室に案内されていた。
5人いるうちの2人のみ。
沈黙がおりているなかゆきはソワソワと良平を見た。
「恵さん、行っちゃいましたね……」
「もしかしたらあの化け物が現れたのかも……」
「わたしたちはどうすればいいんでしょうかぁ……?」
(……)
良平は思案する。
こんなとき、どうすれば。
だが良平は首を振って前屈みに座る。
「……今俺たちにできることはないと思う。俺たちはここで待ってるしかないよ」
「うぅ、祭乃木さんもここのせさんもまだ来てないですし、不安ですぅ……」
「……」
[ネオ童実野シティ 裏路地]
轟音が鳴り響く。
粉塵か舞い、その場の全てが壊れていく。
死を呼び込む音。
またしても化け物はめちゃくちゃに構造物を振り回して辺りのビルの壁を破壊していく。
「うぉ!? ーーッあんにゃろ! めちゃくちゃに暴れやがって!」
走りながらここのせは叫ぶ。
亜美は目を釣り上げて歩数を合わせる。
「みてなさいよ!」
そこにあったゴミ箱に狙いを合わせて、たたんと振り向く。
「おりゃぁ!」
そしてゴミ箱を蹴り飛ばした。
ゴミ箱は勢いよく少年に向かう。
しかし化け物が守るように振り抜いた構造物に弾かれバラバラに砕け散ってしまった。
「うそ! 弾かれた!?」
「ダメだ、あんな化けモンにかなうわけねぇ!」
「チィッ!」
二人は再び走り出す。
後ろからまた不気味な無機質の音声が響く。
「C:¥tierra¥qliphoth.exe実行。実行。実行。」
エネルギーを集約しているのかエンジン音のような甲高い音。
走りながら後ろを見るとコアのような部分に大量の熱量を集約しているのが見えた。
「やべぇ、なんかしてくるぞ!」
「ッ」
次の瞬間だった。
ーーキィィィィィィンッ
耳を劈く金切音がしたかと思うと凄まじい熱線が地面を焼きながら迫ってきた。
「くっ!?」
「おわぁぁっ!?」
二人は壁ギリギリまで飛び退いた。
数秒の差でスレスレを熱線が空間貫き、
地面を。
壁を。
窓を。
粉砕していく。
粉塵と爆音が地面を揺らし、ガラス片の雨が二人に降り注いだ。
グサッと嫌な音がする。
「ぐぉ……!?」
最初は熱いと感じ、すぐに激痛が走りここのせは倒れ込む。
見るとここのせの足に割れたガラスが刺さっていた。
「ここのせ!!」
「ーーイッ……だ、大丈夫だ、祭乃木!!」
立ち上がら走ろうとする。
しかし。
「うっ!!」
ドサッと再び地面を這う。
(い、痛すぎて立てねぇ……)
滝のような脂汗。
ここのせの視界は明滅した。
「大丈夫なわけないじゃない!」
亜美は慌ててここのせの腕を肩に通す。
化け物は背後にて音を喚き散らす。
「ーーーウィa&?!プログ>×ムを実行。定£に基づき処理を続行」
(やばいやばいやばい!)
脂汗が吹き出し、身体はガクガクと震える。
(……くそ! ビビッて身体も震えてやがる! 祭乃木がいるってのに!!ーーせめて強がりだけでも!!)
ここのせは震える手で亜美を押す。
「祭乃木!! 先に行け!!」
「はぁ!? 何言ってんのよ!! アンタを置いていけるわけないでしょ!!」
「二人してお陀仏になるわけにゃいかねぇだろ!」
「仲間を置いて逃げるなんてヒーローのすることじゃないわ!」
亜美は半ば叫ぶようにしてここのせの身体を支え続ける。
ジジジジジジジジッーーー。
化け物は再びエネルギーを集約していく。
「くそっ! またか! 祭乃木!!」
「くっ……!!」
次は直撃を免れない。
ここのせを置いていけば亜美だけは助かるかもしれないが、亜美の魂はそれを許さない。
なんとかしないと。
なんとかしないと。
なんとかしないと。
亜美の鼓動が頭を木霊する。
刹那。
デッキケースがほのかに光り、そこからシュルシュルシュルと光の帯のが亜美を取り巻いた。
「ーーーーークォォォオッ!」
光が霧散した先に見えたのは半透明の虹の龍。
「レインボードラゴン……!」
亜美は思わずその名を叫ぶ。
そして脳裏に記憶がよぎった。
『デュエルモンスターズの力を借りなければ倒せない、ということだけだ』
「デュエルモンスターズの力……!!」
背中に感じる確かな力。
亜美は腕のデュエルディスクを展開し、素早く腰のケースからデッキを引き抜いた。
「ッ! 一か八か!」
化け物に向かいデュエルディスクを向けながらをカード5枚ドローする。
亜美の行動にここのせは目を見張った。
「祭乃木、何する気だ……!?」
「力を貸して! レインボードラゴン!」
「ーーーーキュォォオ!」
レインボードラゴンの宝玉が強く光る。
魂が鼓動する。
亜美はカードをスロットに差し込んだ。
「融合を発動!」
《融合》
通常魔法
「ネオスとレインボードラゴンを融合!!」
デッキからE・HEROネオスが飛び出してきて宙を舞う。
「シェアァッ!」
「ーークォォォオォオォオ!!」
バサリと羽根を広げレインボードラゴンも飛翔した。
「ーー今は遠き宙に、虹を掛けるは一筋の希望!! 飛べ! 人と精霊との架け橋となりて!!」
やがてネオスとレインボードラゴンが重なり眩い閃光を照らし出す。
「融合召喚!! こい! レインボーネオス!!」
バシッと音を立てて亜美はモンスターを呼び出した。
虹の羽根を持つヒーローを。
「フゥゥンッタァァッ!!」
レインボーネオス
?:----- 光 戦士族 星10
「頼むわよ、ネオス!!」
亜美は手を翳して言う。
レインボーネオスは亜美を守るように腕をクロスして熱線に立ちはだかる。
すぐに熱線がレインボーネオスに直撃した。
バチリと周囲がイオン化するほどのエネルギーが奔流する。
「ふぅん!」
しかし。
バァンッと凄まじい音と共にレインボーネオスは熱線を弾き飛ばした。
「防いだ!?」
あまりのことにここのせは目を丸くして叫ぶと亜美は汗を垂らしながらニッと笑う。
「よっしゃ!! どーよ!」
防がれたことが意外だったのか、はたまた別の理由か。
少年は涎を撒き散らしながら頭を抱えて咆哮した。
「ゥゥゥオアァァァ!」
「ーープロセスを確認中。プログラムを再実行。実行。」
無機質な音声が少年の声に被り木霊する。
もしかするとあの化け物の咆哮やのかもしれない。
亜美はレインボーネオスを見上げてさらに声を出す。
「こっちも迎え撃つわよ! ネオス、お願い!」
「ハァァァッ!」
羽根を広げ、レインボーネオスは一直線に化け物へと向かう。
握りしめた拳に虹色のエネルギーを纏わせ振りかぶる。
そして思いっきり振り下ろした。
しかしレインボーネオスの拳は化け物の身体をすり抜けてしまった。
「えぇ!? すり抜けた!?」
化け物はギュルリとこちらを見下ろした。
亜美は唖然として声を漏らす。
「こっちの攻撃が通じない……!」
「こりゃ分が悪い! ッ、に、逃げるぞ!」
「ッ!」
ここのせの言葉に亜美は苦い顔で頷き、ここのせを半ば引きずるようにして歩き出した。
彼女のポケットからはブゥゥ、ブゥゥと携帯のバイブ音が鳴っていることに気付かないまま。
[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム 選手控室]
プルルル……プルルルル……。
永遠にも感じられるコール音。
ゆきはスマホを耳に当ててただ音を聞いていた。
「……」
プルルル……プルルルル……。
どうか。
どうか出てくださいと神頼みするように。
しかし。
「だ、ダメですぅ……! 出ません……!」
泣きそうな顔でゆきは良平を見ながら首を振る。
「どうしたんでしょう祭乃木とここのせさん……」
「……」
良平は壁に掛けられた時計を一瞥した。
「デッキ登録の期限はあと10分……。どうする……」
WSCの試合開始は最早目と鼻の先。
しかしその場にいるのはわずか2名の部員だけであった。
[CM]
信じられないくらい長いなりまして……。
読んでくださった方、本当にありがとうございます!!
小説形式について 地の文やテキスト量
-
読みやすい(テキスト量が妥当)
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前の方が読みやすい
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地の文が長い
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誰が喋っているかわかりにくい