遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

62 / 87
◾️引き続き2024年4月現在禁止のカードが登場します!


第28話 「窮地! 絶対絶命ヒーロー部!! 2対3のデュエル」後編

 

[ネオ童実野病院]

 

足を痛めると街とはこんなに広かったかと実感する。

恵の肩を借りて左足を庇いながら歩くと、ちっとも先に進まない。

牛歩の歩みでなんとか目的地にたどり着いた。

童実野病院である。

街一番の病院で入院設備も整った大きな建物だ。

入口には救命救急用の搬入口があって駐車場には車が何台も止まっている。

 

「いててて……。ようやく着いたぜ……」

 

入り口の自動のガラス戸をくぐるとここのせは一息ついた。

恵はここのせを見上げて口を開ける。

 

「……お疲れ様……」

 

「受付に行けばいいのか……。外科、内科、泌尿器科……。外傷は……」

 

「……外科……」

 

迷うと直ぐに恵が教えてくれる。

ここのせは頷いて周りを見回した。

 

「外科な。えっと受付はっと……」

 

「……こっち……」

 

すっと恵は歩いて行ってしまうのでここのせは慌てて方向転換する。

 

「おう……いででで! もうちょいゆっくり歩いてくれよ」

 

「……」

 

言うと恵は目に見えて速度を落として肩を差し出した。

忘れてたのは人間っぽいし、目的を遂行しようとするのはロボットっぽい。

やはり不思議な奴だ、なんてここのせは思った。

 

[受付]

 

「はーい、どうされました?」

 

受け付けに行くと看護師らしい女性がやや早口で対応してきた。

ここのせは直ぐに答える。

 

「足にガラスが刺さって怪我しちまいまして」

 

「そうですか。じゃあこちらの問診票書いてくださいね。順番にお呼びしますので」

 

「へーい」

 

紙を貰って振り返る。

ベンチには老人と病人がびっしり座っていてぼうとテレビ見てる。

テレビに映っているのはWSCの試合のようだが、デュエルしているのは粗暴そうな外国人だった。

 

「座れねぇじゃねぇか……。しかも、テレビは別の試合やってるしよ。……あ、痛ってぇ……」

 

「……あそこ……」

 

恵はここのせの腰に手を回して支えると空いている手で指差した。

見ると壁沿い台がついている。

 

「かぁー、若者は立ってろってかい。まぁ、仕方ねぇか」

 

「……」

 

二人はひょこひょこと歩いて台まで行き、問診票を置く。

正面の壁にはお知らせや病院の標語が画鋲に留められて掲示されている。

 

「えっと……」

 

ここのせが少し周りを見ると直ぐに恵がペンを差し出した。

 

「……どうぞ……」

 

「さんきゅ」

 

受け取ってサラサラと必要事項を書いていく。

 

「 ……つーかよぉ、入り口んとこでどうしましたって聞いたのに結局問診票書かせるの、なんか変じゃねぇか?」

 

「……医療機関によっては治療目的によって問診が異なる。また当人の体調や過去の病歴、自覚症状によっても対応が異なるため、問診票は必須……」

 

「ほぉーん、そういうもんか」

 

「……」

 

それから二人の間に沈黙が降りる。

ここのせも話したいことはそれじゃない。

結局すぐに切り出してしまった。

 

「……なぁ、チームHEROの試合、どうなってるかわからねぇか?」

 

「……ネットニュースの更新は確認できない……」

 

「そうか……」

 

「……」

 

それだけ会話して、ここのせは問診票を書き上げた。

 

「よしっと」

 

書き漏らしがないか紙持ち上げて見てみる。

するとふと紙の向こう、つまり真正面の壁に掲示されている貼り紙が目についた。

 

「……ん?」

 

紙をどけて貼り紙を見る。

A4ほどの用紙で文言の他に少女の写真が載っていた。

黒髪にショートカット。年齢は同じか一つ下くらいか。

 

「あれ……」

 

貼り紙には大きくこう書かれていた。

『行方不明の女子高生を探しています』

 

「……」

 

ここのせは目を凝らしてじっと見つめる。

そんな様子に恵は首を傾げた。

 

「……どうしたの……?」

 

「……いや、今たまたま目に入ったんだがよ。これ……」

 

ここのせは貼り紙を指差した。

大きな見出しの下には続けて文字が並ぶ。

 

『昏睡状態だった患者様が行方不明になりました。点滴などが外されており、誘拐の可能性があります。情報の提供をお待ちしております』

 

恵も貼り紙を一瞥するとまたここのせに向いた。

 

「……童実野病院に入院していた女性が突如姿を消した、という事件……」

 

「最近テレビでやってたの、今思い出したぜ。けど、写真は初めてみた」

 

「……そう……」

 

「……ここに映ってるやつ……」

 

再度、ここのせは写真を指差す。

行方不明の少女の写真。

脳裏に声が蘇る。

 

『情報というのは、秘匿してこそ意味があるのよ』

 

そう言った彼女は。

ここのせは指差したまま恵を見た。

 

「……ひ、平畑に似てるような気がすんだが、気のせい、か……?」

 

「……」

 

言われてから恵は再度、写真を見る。

瞳孔が大きく、小さく、また大きく変わりしばらくするとここのせに向き直った。

 

「……写真照合を行った。骨格、輪郭の照合率は……」

 

「ーーあらあらあら、貴方大丈夫?」

 

不意に背後から女性の声。

 

「おわっ!?」

 

ビクッと肩を跳ね上げて、ここのせは小さく声を上げる。

反動で数歩後ずさると傷口に電流が走った。

 

「うごぉぉ! 痛ってぇ!」

 

「あらあら! 結構ひどい怪我じゃない! ちょっとこっちいらっしゃい!」

 

女性は有無を言わさずここのせの肩を支える。

そこに看護師が通りかかると、女性は慣れたように話しかけていた。

 

「ちょっと、そこの貴女! いつもの診察室空いてる? 空いてれば使いたいんだけど……」

 

「え!? 鮎川先生!? ……い、いつものところなら空いてますけど……」

 

「じゃあ、借りるわね! ほら、こっちいらっしゃい!」

 

肩を支えながら女性は思いの外強い力で、半ば引きずるようにしてここのせを歩かせた。

 

 

[診察室]

 

診療室はつんとした匂いが充満していて、しんと冷えている。

女性は手早くここのせを丸椅子に座らせると足元にしゃがんだ。

そこでようやく女性が中年ほどで片眼鏡を掛けていることに気がついた。

ペリペリペリペリと巻いてた布を取ると張り付いてしまっていたのか、ビリビリと痛む。

 

「ッ〜〜〜!!」

 

「まぁ、酷い怪我! まさか喧嘩じゃないでしょうね?」

 

「いや違うっすよ……」

 

とは言ったものの、急にモンスターが、なんて言っても信じてもらえるはずもないのでここのせは当たり障りなく回答した。

 

「急にガラスが落ちてきて、足に刺さっちまって……」

 

「まぁ! じゃあ破片が残ってないか診てみないと! ちょっと失礼するわよぉ〜」

 

消毒液のついた綿を端のようなピンセットでつまみながら、ちょいちょいと傷口を触る。

 

「ぉぉおああ……」

 

グッと力を入れないと耐えられない痛みが襲う。

女性医師は傷口を見つめながら声を出した。

 

「うーん、血はだいぶ止まってるけど……。どんな風に痛む? ちくちくする?」

 

「いや、普通に切った時の痛みっす」

 

「ん〜。刺さったガラスってどんなのだった?」

 

女性医師の言葉に今度は恵が答える。

ポケットからハンカチと共に血のついたガラス片を差し出した。

 

「……これ……」

 

「まぁ! ちゃんと持ってるの偉いわね。どれどれ……」

 

ピンセットでガラス片をつまみ、先っぽを見つめる女性。

 

「おっきいカケラね。先もしっかりしてるし、綺麗に抜けてるわ。これなら、普通に消毒して傷薬をつければ大丈夫そうね。でも一応、心配だから、強めに洗浄と消毒するから」

 

なんでもなさげに言って女性はピンセットとガラス片をステンレス製の皿に置く。

それから薬剤らしい液体をノズルのついた機械に入れた。

 

「強めに洗浄?」

 

ここのせはぽかんとすると、女性は恵に指示を出した。

 

「貴女、押さえてて」

 

「……わかった……」

 

 

 

 

[病院の外]

 

チュンチュンチュンと雀が鳴く。

朗らかな午前中。

車椅子を押す看護師は「あ、スズメですよ!」と指を向ける。

車椅子の老人は「おぉ、可愛いのぉ」などと……

 

{あああああぁぁぁぁあぁああぃッ!!!

 

チュンッ!? バザバサバサッ。

信じられないような断末魔が響き、哀れ雀はほうほうのていで逃げ去った。

 

 

 

[診察室]

 

「はい、これでよし!」

 

女性医師は包帯キュッときつめに結ぶ。

 

「……」

 

もう大丈夫だろうと恵はパッとここのせの肩から手を離す。

ここのせは涙目で苦悶の顔を浮かべた。

 

「〜〜ッ!! ……ったく、乱暴なおばちゃんだぜ……」

 

「あら、おばちゃんだなんて失敬しちゃうわ。心配だし、もう一回洗浄しようかしら」

 

「すみませんでした、先生」

 

すぐに頭を下げるここのせ。

すると女性医師は人懐っこい笑みをうかべて右手をひらひらとさせた。

 

「あらやだ、みよちゃんでいいのよぉ!」

 

「みよちゃん?」

 

「そ。鮎川美代子だから、みよちゃん。覚えやすいでしょ?」

【片眼鏡白衣の女医 鮎川美代子】

 

「……うっす」

 

「じゃ、今塗った塗り薬と同じやつだしとくから、そこの薬局で出してもらってね。痛みが2週間以上続くようならまた診てもらいなさい」

 

「へーい」

 

「それじゃあ、もういいわよ! お大事に!」

 

女性医師ーー鮎川美代子はニコニコと手を振った。

 

 

[病院の廊下]

 

ガラガラとスライド式のドアを開けてここのせと恵は廊下を歩く。

 

「……あー」

 

「……お疲れ様……」

 

「おう」

 

「……歩行に問題は……?」

 

「しっかり包帯を巻いてもらったから、ちったぁ、楽に歩けるぜ」

 

「……そう……」

 

やがて入り口付近の待合室に戻ってくる。

諸々受け付けを済ませて思いの外高い治療費を支払った。

 

「……さて、オレたちも早くスタジアムに行かねぇと!」

 

「……ん……」

 

ここのせの言葉に頷く恵。

刹那。

テレビから叫び声が聞こえた。

 

『「あぁぁぁっ!」』

 

ビィィとライフカウンターが底を付いた警告音が響く。

声は少女の声。

知っている聞き馴染みのある声。

思わず振り返るここのせ。

 

「今の声……!!」

 

テレビ見る。

チャンネルが変わっている。

否、試合会場が変わっている。

 

『決まったァァァァァァァァァ!! 圧巻圧倒!! ライフポイントをフルに残して、ファーストプレイヤーを薙ぎ払ったァァァァァァッ!』】

 

「間宮……!!」

 

「……ネットニュースの更新を確認。チームHERO、ファーストプレイヤーが敗北。ゲームはセカンドプレイヤー……そして、ラストプレイヤーの日和田良平にバトンが回った……」

 

「なっ……!」

 

 

[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム]

 

 

会場は歓声に揺れる。

喝采と鳴り物が響く。

実況はマイクを振り、声を張り上げた。

 

『試合は早くも大詰め!! チームHEROはセカンドにしてラスト!! このピンチを脱するには、ラストプレイヤー1人で3人のライフ、12000ポイントを削る必要があるぞォオ!?』

 

「……ッ!」

 

フィールドに立つ少女ーー間宮ゆきのライフポイントは0

 

 

[チームHERO側観客席]

 

周りの大きな歓呼の中、チームHERO側の観客席は誰もが息を呑んでいた。

 

「間宮さん……!!」

 

女子生徒が遠い彼女の名を呼ぶ。

腕を組んで忠一が苦い声を出す。

 

「ラストプレイヤーは、日和田か……。やれるのか、あいつに……」

 

「……」

 

誰も答えられない。

ただフィールドを見つめるのみ。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ベンチには静寂。

良平はただフィールドを一点に見つめていた。

 

「……」

 

「……良平」

 

彼の背中に亜美は声をかけた。

振り向いた良平は意外な程、真剣な顔だった。

 

「ん?」

 

「……行くのね」

 

「……うん」

 

「作戦は?」

 

「ない。出たとこ勝負だ」

 

「勝ち目はあるの?」

 

「わからない」

 

「……」

 

それだけ会話して一度沈黙が降りる。

亜美は何もできない自分がひどくもどかしかった。

しかし良平は続ける。

 

「ーーでも、可能性はある」

 

「……何%?」

 

「……」

 

亜美の問いに良平は一瞬考えるようにして、それから答える。

 

 

「ーーーー99%」

 

「!!」

 

思わず目を見開いた。

答えた良平の目はまるで鷹のように鋭く、刃のような鈍い輝きを見せていた。

亜美はニッと笑って良平をフィールドに向かせて、背中を軽く叩く。

 

「なら大丈夫ね! 行ってきなさい! 良平!!」

 

「あぁ、行ってくる!」

 

ベンチからフィールドに上がり、良平は真っ直ぐ歩いていく。

 

[デュエルフィールド]

 

人工芝のフィールドは、少しゴムっぽい匂いがする。

四方を取り囲むソリッドビジョン機が仰々しくて何度見ても慣れない。

 

「日和田良平ェ!」

 

不意に名を呼ばれ、良平は足を止めて振り向く。

観客席のフェンス越し。

そこに美しい黒髪を靡かせる少女が腕組み見下ろしていた。

青い制服ーー唯信だった。

 

「……」

 

「……」

 

数秒、お互いの目を睨む。

唯信の瞳は蛇のように獰猛だった。

 

「不甲斐ない戦いをするナ。貴様を潰すのはこの私ダ」

 

「……うん。見ててくれ」

 

「フンッ」

 

それだけ会話すると再びフィールドへと歩みを進める。

 

(……勝てるのか。俺は)

 

良平は思案する。

 

(今までこういう場面で矢面に立ってきたのは祭乃木だった。……でも、今は俺がやるしかない)

 

良平は腰についたデッキケースを撫でる。

 

(頼む。力を貸してくれ、幻獣機たち……!)

 

やがてフィールドに辿り着くと、ゆきが立ち尽くしていた。

俯き、小さな肩を揺らしている。

 

「……間宮」

 

「……」

 

良平が声を掛けるとカチャカチャとデュエルディスクを外して差し出した。

 

「……ひわださん……ッ」

 

絞り出すような声。

目に涙を溜めて悔しそうに言った。

 

「わたし……何も……!!」

 

良平はデュエルディスクを受け取って装着するとフィールドを再度見渡す。

 

「いいや。今、妨害はほぼない。間宮が全部剥ぎ取ってくれたおかげだよ」

 

「……でも……!」

 

「……間宮。手、あげて」

 

「え……? こ、こうですかぁ……?」

 

突然のことにゆきは涙の溜まる目のままスッと手を上げた。

 

(これは間宮へのお返し。そして、俺の精一杯の強がりだ)

 

良平はその手に、自らの手のひらを当てる。

小気味の良い乾いた音がした。

 

「バトンタッチだ。……あとは俺に任せてくれ」

 

「……ッ! はい……! よろしくお願いします……!」

 

ゆきは手を胸に抱くようにしてから踵を返す。

不意に頭に響く声がした。

 

『ライ、ラァーイ!』

 

ふよふよと半透明の幻獣機オライオンが良平に向かっていく。

 

(あ! わ、わたしのデッキから……オライオンさんが日和田さんのデッキの中に……)

 

しかし立ち止まるわけにもいかず、ゆきはベンチへと掛け戻っていった。

良平は左腕を振り、胸の前で構える。

 

「よし! 行くぞ!!」

 

「軽く捻ってやりますわ!」

 

応戦する幸子は、余裕そうな表情を崩さない。

 

『さぁぁぁ、いよいよ!! チームHEROラストプレイヤーの準備が整ったぞ!! デュエルはチームHEROラストプレイヤー、日和田良平のターンから再開だァァァァァ!!』

 

「俺のターン!」

 

良平はセットしたデッキの最上のカードに手をかける。

 

ードローフェイズー

 

「ドロー!」

手札5→6

 

良平フィールド:

焔聖騎士-アストルフォ

E:焔聖騎士-モージ

焔聖騎士-オジエ

焔聖騎士-オリヴィエ

 

幸子フィールド:

白闘気白鯨

バハムート・シャーク

海晶乙女コーラルアネモネ(左EXゾーン)

セットモンスター(神聖騎士王コルネウス)

 

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

引いたカードを一瞥すると良平はすぐさま手札を持ち替えて場にカードを置く。

 

「ブンボーグ003を召喚!」

 

ブンボーグ003

攻:500 地 機械族 星3

 

「ブンボーグ003は召喚したとき、デッキから他のブンボーグを呼び出す! こい! ブンボーグ001!」

 

ブンボーグ001

守:500 地 機械族 星1 チューナー

 

「焔聖騎士-アストルフォとブンボーグ001をリンクマーカーにセット! 召喚条件は、チューナーを含むモンスター2体!」

 

↙︎モンスター + ↘︎チューナー=LINK2

 

「リンク召喚! 水晶機巧-ハリファイバー!」

 

水晶機巧-ハリファイバー

攻:1500 水 機械族 LINK2 右EXゾーン

 

「チッ、またですの!」

 

現れたモンスターを憎々しげに見つめる幸子。

良平は構わず進める。

 

「墓地に送られた焔聖騎士-モージとハリファイバーの効果発動!」

 

chain1 焔聖騎士-モージ

 

chain2 水晶機巧-ハリファイバー

 

「ハリファイバーの効果で、デッキからレベル3以下のチューナーモンスター、幻獣機オライオンを特殊召喚!」

 

幻獣機オライオン

守:1000 風 機械族 星2 チューナー

 

「さらに焔聖騎士-モージの効果で、アストルフォ、オジエ、オリヴィエの3体をデッキに戻して1枚ドロー!」

手札5→6

 

焔の騎士たちが良平にデッキへと戻っていく。

縁もゆかりもないカード。

幸子は鼻で笑った。

 

「ふん、そんなシナジーの無い足手まといカードをデッキに戻すなんてナンセンスですわ! それで? また芸もなくアウローラドンですの?」

 

「……いや、貴女を倒すだけじゃ意味がない。ハリファイバーとオライオンをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、機械族モンスター2体!」

 

↙︎機械族+↘︎機械族=LINK2

 

「プラチナ・ガジェットをリンク召喚!」

 

プラチナ・ガジェット

攻:1600 光 機械族 LINK2 右EXゾーン

 

「墓地に送られたオライオンの効果発動!」

 

「ラァーイ!」

 

半透明のオライオンが嘶きポンッとトークンを作り出す。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「さらに墓地のオライオンのもう一つの効果発動! このカードを除外することで、手札の幻獣機を召喚できる! こい、幻獣機テザーウルフ!」

 

幻獣機テザーウルフ

攻:1700 風 機械族 星4→7

 

「ガルルルゥ!」と狼の顔の戦闘ヘリコプターがフィールドにて唸る。

 

「テザーウルフは、召喚に成功した時、幻獣機トークンを作り出す!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「幻獣機トークン2体とブンボーグ003をリンクマーカーにセット! 召喚条件は、機械族モンスター2体以上!」

 

モンスター3体は放物線を描いてフィールドのリンクサーキットに飛び込んでいく。

 

↙︎機械族+↓機械族+↘︎機械族=LINK3

 

「ーー煌めけ! 極光の翼!!」

 

鼓動を呼び覚ますエンジンの響き。

黒き機体が再びフィールド上空を切り裂いた。

 

「リンク召喚! 幻獣機アウローラドン!」

 

幻獣機アウローラドン

攻:2100 風 機械族 LINK3 プラチナ・ガジェット↙︎LINK先

 

『再び巨大な軍用機が現れたぞォオ!!』

 

現れたモンスターに幸子は舌打ちし、悪態つく。

 

「ふん! 芸のないこと! また叩き落として差し上げますわよ!」

 

一方の良平は意に介さず、フィールドに手を差し向けた。

 

「アウローラドンの効果で、幻獣機トークン3体を展開!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「アウローラドンのもう一つの効果を発動! モンスター2体をリリースして、デッキから幻獣機を呼び出す! 幻獣機トークンと、アウローラドン自身をリリース!」

 

幻獣機トークンと幻獣機アウローラドンがゆっくりとオーロラへと変わっていく。

呼び出した大型モンスターをすぐさま自分の手で墓地に送る行為に会場はどよめいた。

 

『おぉっとォオ!? せっかく呼び出した大型モンスターをリリースしてしまったぞォオ!?』

 

しかし良平の耳にそれは入らない。

見ゆるはただ眼前の敵のみ。

カードは音を立ててメインモンスターゾーンに置かれた。

 

「デッキから幻獣機メガラプターを特殊召喚!」

 

幻獣機メガラプター

攻:1900 風 機械族 星4→10

 

「メガラプターの効果発動! 幻獣機トークンをリリースして、デッキから幻獣機モンスター、幻獣機コルトウィングを手札に加える!」

手札6→7

 

幻獣機メガラプターは幻獣機トークンのオーロラを吸い取るとクルクルと旋回した。

これにより幻獣機トークンの数は1体。

即ち、幻獣機たちのレベルは7へと変動する。

 

幻獣機メガラプター

星10→7

幻獣機テザーウルフ

星10→7

 

「レベル7となったメガラプターとテザーウルフでオーバーレイ!」

 

すかさず良平は指示を出す。

幻獣機の2機は互いに連携をとりながら空中で交わった。

 

☆7×☆7=★7

 

「ーー輝け! 全てを飲み込む業魔の瞳!」

 

どくんと心臓が高鳴る。

新しいカードを使うときの昂りは良平の視界をさらに加速させた。

 

「こい! No.11 ビッグアイ!!」

 

No.11ビッグアイ

攻:2600 闇 魔法使い族 ランク7

 

「さらにプラチナ・ガジェットの効果発動! 手札からレベル4の機械族をリンク先に特殊召喚する! 幻獣機コルトウィングを特殊召喚!」

 

幻獣機コルトウィング

攻:1600 風 機械族 星4→7

 

「コルトウィングは、特殊召喚時に他の幻獣機モンスターがいるとき、幻獣機トークンを2体生成する!」

 

フィールドにはすでに幻獣機トークンが1体存在している。

よって条件は満たしている。

コルトウィングは、自身のコルトローターを激しく回転させた。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「さらにコルトウィングのもう一つの効果を発動! 幻獣機トークン2体をリリースし、フィールドのカードを破壊して除外する! セットモンスターを破壊! FOX3!!」

 

幻獣機トークン2機は形をミサイルに変え、コルトウィングに装填されていく。

やがて空中に一閃、白線が走った。

セットモンスターはそのまま爆発炎上した。

ゆきから奪ったモンスターである。

幸子は声を上げた。

 

「ふん! どうせ奪ったものですわ!」

 

しかし良平は止まらない。

拳を握り効果を宣言する。

 

「まだだ! ビッグアイの効果発動! 素材を一つ使うことで、相手フィールドのモンスターのコントロールを得る!」

 

「なっ!?」

 

「対象は、白闘気白鯨だ!」

 

No.11ビッグアイはその名の通りの大きな単眼をぐわりと見開き、波動のような何かを繰り出した。

 

「キュォォオ……」

 

何かに憑かれたように白鯨はゆっくりと良平のフィールドへと泳いでいく。

その後ろ姿に幸子は顔を青ざめさせて叫んだ。

 

「ホ、ホワイトオーラホエール……!! 主人に牙を剥きますの!?」

 

それからキッと良平を睨む。

 

「わ、わたくしのモンスターを奪うとは! 庶民の癖に!」

 

キィーッと癇癪のような高い声だった。

呼応するように実況は言葉を紡ぐ。

 

『なんとォオ!! 日和田良平が繰り出した大きな眼のモンスターは、相手のモンスターを奪い取る凶悪モンスターだったァァァァァ!!これにより、チームコーポレート、ファーストプレイヤー海野幸子、一転窮地!!』

 

ザワザワと会場がさらにどよめいていく。

旗風が緩やかに変わる。

 

 

[チームHERO側観客席]

 

ざわめきは何も会場全体だけでない。

味方側であるはずのチームHERO側の観客席でも半ば困惑するような、それでいてどこか期待するような声があがる。

 

「え、え、え! なんか逆転しそうなんだけど!」

 

「日和田くんって冴えない感じだと思ってた……」

 

やがては雰囲気が変わり、席を立ち上がって各々が声を上げていた。

そこから少し離れた場所に座るは5人の少女達。

誇り高い青の制服を惜しげもなくさらけ出している。

ツァンは良平が繰り出したモンスターに目を見開いた。

 

「あのモンスター! 金さんがアイツに渡してた……」

 

「……」

 

唯信は黙って腕を組む。

さらに続けるツァン。

 

「あんなカード、どうして?」

 

「……私はあんなカード使わン。だが奴の狡猾なプレイングには無様なほどに合っていル」

 

唯信はフィールドから目を離さず、良平の背中を睨む。

 

(……この状況からどう立ち回るか、見ものだナ)

 

瞳はキュウと細くなり、もはや他のものはみえてはいない。

 

[デュエルフィールド]

 

良平もギロリとフィールドを睨んでいた。

対する幸子はありえないと口を開ける。

 

「こ、攻撃モンスターの数が……!!」

 

良平のフィールドは

幻獣機コルトウィング

No.11 ビッグアイ

白闘機白鯨

幻獣機トークン

プラチナ・ガジェット

の5体。

 

一方幸子のフィールドは

海晶乙女コーラル・アネモネ

バハムート・シャーク

の2体。

 

良平の攻撃可能モンスターは3体だが、余りある攻撃力であった。

何より幸子の切り札は今、良平が従えている。

セットカードはない。

 

「……う、嘘ですわ! こんなの……!」

 

「いくぞ! バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

「いけ! 白闘気白鯨!! コーラルアネモネに攻撃!!」

 

良平は勢いよく、そして痛烈にモンスターを指し示す。

拒むことは叶わず白鯨は突進していく。

 

「ォオォオォオ……キュゥォオォオ!」

 

ザバァッと立ち上がる大波。

 

白闘気白鯨

攻:2800

 

海晶乙女コーラルアネモネ

攻:1500

 

「きゃあぁ!!」とコーラルアネモネは成す術なく飲み込まれてしまう。

防ぎきれない余波が幸子を襲った。

 

「あぁぁぁ!!」

LP:4000→2700

 

容赦はせず。

良平は追撃した。

 

「白闘気白鯨の二度目の攻撃! バハムート・シャークを攻撃!!」

 

白鯨は巨大な尻尾を振り回す。

 

「ォオォオォオ!」

 

白闘気白鯨

攻:2800

 

バハムート・シャーク

守:2100

 

「グォォオォオッ!?」

 

バハムート・シャークは押しつぶされ、地鳴りが幸子の足元を揺らした。

 

「くぅぅ……!!」

LP:2700→2000

 

幸子は苦しげな声を漏らす。

だが良平は鋭く睨むのを決してやめない。

 

「これでフィールドはガラ空きだ! プラチナ・ガジェットでプレイヤーにダイレクトアタック!」

 

プラチナ・プラチナ

攻:1600

 

プラチナ・プラチナは握りしめた拳を幸子に振り抜いた。

痛烈な衝撃に幸子は身を守るように両腕で顔を覆う。

 

「いやぁぁぁ!!」

LP:2000→400

 

自分のライフが削れる音に幸子は髪を振り乱す。

 

「こ、こんなの何かの間違いですわ!!」

 

『怒涛! 怒涛の攻撃!! この攻撃が通れば、ファーストターンでライフを削り切るぞォオ!!」

 

空前。

鮮烈。

良平は指を幸子に向けて宣言する。

 

「トドメだ!! 幻獣機コルトウィングでプレイヤーにダイレクトアタック!! FOX2!!」

 

幻獣機コルトウィングは凄まじい速度で幸子に肉薄し、機関砲を差し向ける。

やがて機関砲は大量の弾丸を撒き散らし、弾雨を浴びせかけた。

遮るものなど何もない。

 

「んぁあああああっ!!?」

LP:400→0

 

ビィィィッ。

ブザーが鳴り響く。

 

『決まったァァァァァ!!』

 

一瞬の静寂。

そして歓声。

 

『ななななんとォオォオォオッ!! チームHEROラストプレイヤー、日和田良平!! 返す刀で相手を粉砕!! ワンショットキル成立だァァァァァ!!』

 

風か、余波か。

良平の髪を一陣が揺らす。

制服ははたと靡く。

幸子は唖然として声を漏らした。

 

「くっ……!! こんなの!!」

 

『奇跡のチーム! チームHERO、ここから逆転なるかァァァァァ!!?』

 

実況の焚き付けに周りはどんと揺れた。

何かが起こる予感に誰もが惹きつけられていた。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ベンチではゆきが柵を乗り出して彼の名を呼ぶ。

 

「日和田さん……ッ!!」

 

「やるじゃん良平!」

 

亜美も満足そうに笑う。

そして両手を腰に当てて、試すように言った。

 

「ても本当の戦いはこっからよ!!」

 

 

電光掲示板は演出を織り交ぜながら明滅する。

そして、ぽーんと軽い音て共に白だった丸を黒く染め上げた。

 

チームコーポレート●◯◯

 

vs

 

チームHERO ●◯

 

 




◾️次回予告
寝る前決闘空間第29話
『奇跡のチーム』
デュエルスタンバイ!

小説形式について 地の文やテキスト量

  • 読みやすい(テキスト量が妥当)
  • 前の方が読みやすい
  • 地の文が長い
  • 誰が喋っているかわかりにくい
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。