遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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遅くなりました。
下書き段階でデュエル描写のミスを見つけ、直すのに時間がかかりました……。


第30話 「ベスト8決定戦終幕 ショットダウン」

 

[ネオ童実野シティ メモリアルスタジアム]

 

風が吹く。

生暖かい空気は直ぐに熱気へと代わり、会場を吹き抜けていく。

マイクの電源が再びぷつりと入ると直ぐに大仰な声が飛び出した。

 

『さぁぁぁ!! デュエルはまさに大詰め!! ベスト8を決する戦いは、2対3という変則的なデュエルながら、お互いに全力を尽くしている!!』

 

良平はフィールドの端、メインモニターを前に見て右手側に立っていた。

 

チームHERO ラストプレイヤー

日和田良平

LP:2350

手札1

伏せ2

フィールド:

幻獣機トークン

幻獣機トークン

幻獣機トークン

幻獣機コルトウィング

RR-アーセナルファルコン

 

対する夢迦は左手側。

ショートカットの黒髪がスレンダーなスーツの肩を少し撫でていく。

 

チームコーポレート ラストプレイヤー

窪川夢迦

LP:3500

手札4

フィールド:

アメイズメント・プレシャスパーク(フィールド魔法)

 

フィールドは優勢劣勢の別はなし。

ボードアドバンテージこそ良平が優勢だがライフアドバンテージ、ハンドアドバンテージは夢迦がやや優勢である。

拮抗した状況にマイクパフォーマンスはさらに加熱させる。

 

『勝つのは8強、チームコーポレートか!? それとも奇跡のチーム、チームHEROか!? 一瞬も目が離せないデュエル展開を見逃すなァァァ!!』

 

ーーワァァァァァァァァァァァァァァァァッ

 

会場は揺れる。

誰が誰を応援しているかはもはや意味を成さず。

今や目の前の決闘の一挙手一投足を固唾を飲むばかり。

二人の決闘者の道行を、誰もが見守っていた。

 

 

 

寝る前決闘空間第29話

『ショットダウン』

 

 

ターンはチームコーポレート。

夢迦は口角を上げると手札のカードを引き抜いた。

 

ーメインフェイズー

 

「いくよ。僕は手札の竜輝巧-エルγをリリースして、墓地の竜輝巧-アルζを守備表示で特殊召喚」

 

竜輝巧-アルζ

守:0 光 機械族 星1

 

いとも容易く現れたモンスターに良平は苦く言葉を漏らした。

 

「くっ……」

 

相手の展開が始まる。

読み合い。

否、ある種の鍔迫り合いである。

夢迦は続けた。

 

「アルζの特殊召喚時、デッキから儀式魔法、流星輝巧群を手札に加えるよ」

 

デッキから送られてきたカードを素早く手札に加える。

これで手札は4枚。

さらに夢迦はセメタリーゾーンへと手を伸ばした。

 

「今リリースした竜輝巧-エルγの効果発動だ。フィールドのアルζをリリースし、特殊召喚」

 

竜輝巧-エルγ

守:0 光 機械族 星1

 

「エルγは、特殊召喚時、墓地の攻撃力2000のドライトロンモンスターを復活させることができる。墓地のアルζを特殊召喚」

 

竜輝巧-アルζ

守:0 光 機械族 星1

 

フィールドのモンスター1体をリリースした後、墓地からそのモンスターを蘇生させる。

即ち実質的にノーコストでモンスターを展開したことになる。

フィールドには同じレベルのモンスターが2体。

 

(あっと言う間に布陣が整った……!)

 

良平は胸中で呟いた。

読み通り夢迦のフィールドに黒い渦ーーオーバーレイネットワークが現れる。

 

「レベル1のアルζ、エルγでオーバーレイネットワークを構築」

 

☆1×☆1=★1

 

モンスターが吸い込まれ、煌めきへと昇華する。

やがて現るは星空の主。

 

「再び姿を表せ、竜輝巧-ファフμβ'」

 

「ギガァァァァッ!」

 

竜輝巧-ファフμβ

攻:2000 光 機械族 ★1

 

鋭い咆哮をあげてファフμβがフィールドに君臨した。

満足することなく夢迦は言葉を紡ぐ。

 

「では効果発動だ」

 

対して良平は半ば反射的にマジックトラップスロットに手を伸ばしていた。

 

「リバースカードオープン! デモンズ・チェーン!」

 

《デモンズ・チェーン》

永続罠

 

「対象としたモンスターは、攻撃ができず効果が無効になる!」

 

良平の前に紫色のカードが現れ、その絵柄からジャラジャラと何本もの鎖が飛び出した。

それはファフμβを雁字搦めにして締め上げてしまう。

 

『妨害札を構えていたかァァァ!! 繰り出したモンスターは弱体化を免れないぞォオ!!』

 

「ふっ、そうこなくてはね」

 

夢迦は背中がゾクリとした感覚にある種の快楽を覚えた。

しかして手は次の策を講じている。

「手札からマジックカード、極超の竜輝巧を発動」

 

《極超の竜輝巧 ードライトロン・ノヴァー》

通常魔法

 

「このカードはデッキからドライトロンモンスターを特殊召喚することができる。おいで、竜輝巧-ラスβ」

 

竜輝巧-ラスβ

守:0 光 機械族 星1

 

「……そして手札から儀式魔法、流星輝巧群を発動!」

 

《流星輝巧群ーメテオニス・ドライトロン》

儀式魔法

 

「……ッ!」

 

良平は半歩後退する。

そのカードは相手の切り札を呼び出すカード。

 

「フィールドのファフμβとラスβをリリース」

 

モンスターたちは青い炎に姿を変えて交わっていく。

†ファフμβ+ ラスβ†

 

「流星は巡る、そして再び雨が降るーー」

 

流星が宙を翔る。

光が満ちる。

そしてフィールドにりゅう座の主が現れた。

 

「ーー儀式召喚! 舞い戻れ、竜儀巧-メテオニス=DRA!」

 

「ガァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

竜儀巧-メテオニス=DRA

攻:4000 光 機械族 星12

 

『再び現れたァァァ!! りゅう座の流星群が再び牙を剥く!! 日和田良平、一気にピンチだァァァ!!』

 

大型のエースモンスター。

圧倒的な力。

会場から大きな歓声が上がった。

 

「くっ……! 来るのか……!」

 

「バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

やや前傾姿勢になった夢迦は瞳孔の開いた瞳でニヤリと笑っていた。

手を前に突き出し攻撃を宣言する。

 

「メテオニス=DRAでアーセナルファルコンに攻撃」

 

竜儀巧-メテオニス=DRA

攻:4000

 

「ギガァァァァァァァァァァァッ!!」

 

空気が痛烈に揺れるほどの咆哮。

対するアーセナルファルコンは果敢に空中を飛び回る。

 

RR-アーセナルファルコン

攻:2500

 

メテオニス=DRAが羽根を広げると、亜空から巨大な隕石が現れた。

アーセナルファルコンは瞬く間に叩き落とされ隕石に押しつぶされてしまう。

隕石衝突の衝撃波が良平の身体をドンと押し飛ばした。

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁっ!!?」

 

日和田良平

LP:2350→850

 

『決まったァァァ!! ラストプレイヤー日和田良平に大ダメージィィィィィィ!! 決着に大手をかけたぞォオォオォオッ!!』

 

「ぐっ……」

 

良平は苦々しくフィールドを睨む。

眼前のメテオニス=DRAは未だ動きを止めない。

その様子に良平はハッと声を出した。

夢迦は口角を上げたまま続ける。

 

「まだだよ。メテオニス=DRAは、儀式召喚に使用したモンスターのレベルの合計が2以下の時、フィールドの特殊召喚されたモンスター全てに攻撃できる」

 

「なっ……」

 

「レベルの合計は、レベルがないエクシーズモンスターとレベル1のラスβ。問題なく効果を発揮できるね。さぁ、追撃だ。いけ、メテオニス=DRA」

 

メテオニス=DRAの」金属音のような高い咆哮と共にさらにいくつもの流星群が良平のフィールドを目掛けて落ちてくる。

 

「っ!」

 

良平は目線を切らぬまま素早く手を動かした。

 

1発目が幻獣機トークンに命中し凄まじい爆音が響いた。

凄まじい爆音が響き、粉塵がもうもうと上がる。

 

しかし、その粉塵を切り裂いて1機の戦闘機が粉塵から飛び出した。

複葉機のそれはまるで亀のような機構を背負っている。

幻獣機タートレーサーであった。

続いて無事だった幻獣機トークン2機と幻獣機コルトウィングが現れて粉塵をかき消してしまった。

 

「!?」

 

『なななんだァァァァァァ!? 全て破壊されたと思われた幻獣機たちが爆炎から現れたぞォオォオ!?』

 

加熱させるマイクに呼応するように会場は揺れる。

フィールドではカードが一枚表向きになっていた。

 

《緊急発進ースクランブルー》

速攻魔法

 

良平は周囲を一切気にせずに効果を宣言する。

 

「スクランブルは自分のトークン以外のモンスターが相手のモンスターより少ない場合、トークンをリリースしてその枚数分、幻獣機を呼び出す!」

 

「ほう」

 

夢迦は一言返事をする。

それからさらに言葉を重ねた。

 

「だがメテオニス=DRAは特殊召喚されたモンスター全てに攻撃できる。モンスターが変わったところで、問題ないよ。いけ、メテオニス=DRA!」

 

夢迦の指揮にメテオニス=DRAは再び答え、流星を降らせていく。

しかし幻獣機達は縦横無尽に飛び回りそのすべてを回避した。

その様に夢迦は目を見開く。

 

『なんとォオォオッ!! 幻獣機たちはそれぞれ回避行動を取り、隕石攻撃を避けてしまったぞォオォオ!!?』

 

良平は鋭い目で夢迦を。

そしてメテオニス=DRAを睨みながら言う。

 

「幻獣機タートレーサーがフィールドにいるとき、各幻獣機トークンは1度だけ戦闘で破壊されない! そして幻獣機は幻獣機トークンがいるときは戦闘、効果では破壊できない!」

 

「なるほど」

 

夢迦は半ば恍惚とした顔で、或いは武者震いしたかのような表情を浮かべて言った。

 

「ふふふ、まだまだデュエルが楽しめそうだ。ターンエンド」

 

ーメインフェイズ2→エンドフェイズー

 

窪川夢迦

LP:3500

手札2

フィールド:

竜儀巧-メテオニス=DRA

 

エンドフェイズ時に飛び回る幻獣機のうち、タートレーサーが緊急発進のデメリット効果処理によりデッキへと舞い戻っていった。

そしてターンが移る。

良平は自動シャッフルが済んだデッキに手をかけた。

 

ードローフェイズー

 

「……俺のターン」

 

ドローにより手札は2枚。

 

ースタンバイフェイズー

 

フィールドには幻獣機コルトウィングと幻獣機トークンが2機。

夢迦は静かに手を振り上げて宣言する。

 

「幻獣機の厄介な耐性は、墓地に送られてしまえば意味をなさない」

 

「……ッ」

 

「メテオニス=DRAの効果発動だ。墓地のファフμβ2体を除外することで、フィールドのコルトウィングと幻獣機トークン1体を墓地に送らせてもらうよ」

 

メテオニス=DRAが放つ流星群にコルトウィングと幻獣機トークンは被弾して墜落。

地面に激突して砕けちる。

 

『流星群が幻獣機に直撃ィィィ!! なす術なく撃墜されてしまったァァァ!!』

 

「……ッ! 厄介な効果だ……!」

 

良平は唇をかみしめて言うと夢迦は口角を上げた。

その様子に圧倒的な強さと自信を感じる。

良平は胸中で独り言ちを零した。

 

(……俺のデッキは除去のほとんどを効果モンスターに頼っている。それもほとんどが対象を取る効果。高打点ってだけでもキツいのに対処に手間取ってる……!)

 

心臓がうるさく高く鳴る。

血流が脳を巡って視界が狭く鮮明になっていく。

 

(なんとかして止めないと、次のターンにやられる……。くそ、後手後手だ……。窪川夢迦、強力な儀式使い……。8強は伊達じゃない……!)

 

できることを。

己の手札とデッキと戦略を。

 

「……カードをセット!」

 

伏せカードが2枚。

良平の足元に伏せられる。

それこそが。

それだけが良平の戦いを繋ぐ

 

「ターンエンド……!」

 

ーエンドフェイズー

 

良平

LP:850

手札:0

マジックトラップ:

セットカード2

フィールド:

幻獣機トークン

 

 

ードローフェイズー

 

良平の行動に夢迦は肩をすくめてしまう。

 

「おや、息切れかい。それなら一気に決めさせてもらうよ。僕のターン」

 

ドローカードを以って夢迦の手札は3枚。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

素早くカードを持ち替えると夢迦はモンスターを呼び出す。

 

「手札の儀式モンスター、竜姫神サフィラをリリースし、墓地の竜輝巧-ラスβを特殊召喚」

 

竜輝巧-ラスβ

守:0 光 機械族 星1

 

「ラスβは、特殊召喚時、除外されている竜輝巧を墓地に戻すことができる。この効果で、バンαを墓地に戻す。さらに、墓地の竜輝巧-エルγの効果発動だ。フィールドのラスβをリリースし、このカードを特殊召喚するよ」

 

「その効果にチェーン!」と良平は即応する。

 

「トラップ発動! メタバース!」

 

《メタバース》

通常罠

 

chain1 竜輝巧-エルγ

 

chain2 メタバース

 

逆順処理により良平のカードが先に発動する。

 

「メタバースはデッキからフィールド魔法を呼び出す罠カード! 俺はデッキから天威無崩の地を発動!」

 

《天威無崩の地》

フィールド魔法

 

次いで夢迦の発動した竜輝巧-エルγの効果処理により竜輝巧-エルγが特殊召喚された。

 

 

竜輝巧-エルγ

守:0 光 機械族 星1

 

現れたモンスターを刺すように見ながら良平は声を上げた。

 

「天威無崩の地の効果発動! 効果モンスター以外のモンスターが存在している時に相手が効果モンスターを特殊召喚した場合、デッキからカードを2枚ドローする!」

 

「ほう……!」

 

意想外の対応策に夢迦の瞳孔はさらに細くなる。

 

「エルγの効果は、もう知っているね! 墓地からラスβを特殊召喚!」

 

竜輝巧-ラスβ

守:0 光 機械族 星1

 

 

良平はハンドアドバンテージを。

しかし夢迦はボードアドバンテージを。

それぞれの戦略が交差し、脈打ち、激突する。

しかし現状においてはボードアドバンテージの方が一歩先をいく。

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「くそ!」とベンチにいるここのせは口惜しそうに膝を殴りつけた。

 

「うじゃうじゃ湧いてきやがる……!」

 

目線を一切離さずに恵も頷いた。

 

「……アドバンテージ差に大きく影響する……。これ以上継戦すれば勝機はないと思われる……」

 

「うぅ……!」とゆきは泣きそうな顔でその名をつぶやく。

 

「日和田さん……!」

 

一方で亜美は腕を組んでフィールドを見つめ続けた。

想いを胸にくすぶらせながら。

 

 

[デュエルフィールド]

 

背中に強い視線を集めながら、しかし良平はそれを一切感知することなくただ眼前にのみ意識を向けていた。

フィールドには2体のレベル1モンスター。

夢迦の狙いはエクシーズ召喚だろう。

良平は素早くマジックトラップスロットに手を伸ばす。

 

「発動するなら今しかない……! リバースカードオープン! ドローマッスル!」

 

《ドローマッスル》

速攻魔法

 

「ドローマッスルはフィールドの守備力1000以下のモンスターを対象に発動できる! 幻獣機トークンを対象として、カードを1枚ドロー! そして、このターン、対象のモンスターに戦闘耐性を付与する!」

 

良平は鋭くカードをドローし、手札は3枚へと変化する。

その行動に夢迦は訳知り顔で頷いた。

 

「ファフμβを警戒したようだね。ふふ、なら僕は更なる壁となろう!先程、墓地に戻したバンαの効果を発動! フィールドのラスβをリリースし、自身を特殊召喚!」

 

竜輝巧-バンα

守:0 光 機械族 星1

 

「バンαは、自身の効果で特殊召喚された時、デッキから儀式モンスターを手札に加えることができる。僕は、デッキから竜儀巧-メテオニス=QUAを手札に加えるよ」

 

デッキから自動で送り出されたカードを人差し指と中指で摘み上げ、夢迦はそれを良平に差し向けた。

 

「! もう一体のメテオニス……!?」

 

「ふふ、さらにフィールドのバンαを対象とし、墓地の流星輝巧群の効果を発動」

 

《流星輝巧群ーメテオニス・ドライトロン》

儀式魔法

 

「このカードは、フィールドのドライトロンモンスターの攻撃力を1000ポイントダウンさせることで、このカードを墓地から手札に加えることができるのさ」

 

「くっ……」と良平は再び顔を歪ませた。

これにより、儀式の準備は整った。

夢迦は右手を薙ぎ払い、宣言する。

 

「レベル1のバンαとエルγでオーバーレイネットワークを構築」

 

☆1×☆1=★1

 

三度現れる黒き渦。

モンスターたちは瞬く間に星へと変わる。

 

「ーーりゅうを描く星々に願い奉る。願わくば、地平全てに清光を」

 

夢迦は謡う。

魂から湧き出る旋律を。

 

「再び現れろ、竜輝巧-ファフμβ」

 

竜輝巧-ファフμβ

攻:2000 光 機械族 ランク1

 

「ファフμβの効果発動。デッキからドライトロンモンスター、竜輝巧-ルタδを墓地に送る」

 

「……ッ」

 

「そして、手札のメテオニス=QUAをリリースし、今墓地に送ったルタδを特殊召喚」

 

竜輝巧-ルタδ

守:0 光 機械族 星1

 

「ルタδは手札の儀式カード、流星輝巧群を見せることで1ドローできる」

 

夢迦は手札に控える流星輝巧群を見せるとデッキトップを手札に加えた。

これで夢迦の手札は2枚。

止まることなく夢迦はスロットにカードを放り込んだ。

 

「では、いくよ。儀式魔法、流星輝巧群を発動!」

 

《流星輝巧群ーメテオニス・ドライトロン》

儀式魔法

 

「ファフμβは儀式召喚時、地震のエクシーズユニットを素材にできる。エクシーズユニットのバンαとルタδをリリース」

 

青白い炎が宙を舞い、モンスターの身体を分解していく。

 

†バンα + ルタδ †

 

やがては流る決闘者の鼓動の譜。

 

「ーーStars, too, were time travelers。契約者の名において命ず。星の外海、宙の方舟。この世全てを観測する義眼と化せ」

 

それは超新星の爆発。

或いは全てを見通す望遠鏡。

宇宙をも覆うカーテン。

 

「儀式召喚。さぁ舞い降りろ、竜儀巧-メテオニス=QUA!」

 

眩い光が溢れ出し、フィールドには轟音が鳴り響く。

やがては巨大なドラゴンが大きな口を開けていた。

 

「ギュォオォオォオォオォオォオォオッ!!」

 

竜儀巧-メテオニス=QUA

攻:4000 光 機械族 星12

 

フィールドには2体、巨大なドラゴンが立ち塞がった。

降り立った衝撃波で良平のフィールドゾーンで発動中だったフィールド魔法が砕け散った。

マイクパフォーマンスに熱が入る。

 

『ででで出たァァァァァァァァァァァァァァァッ!! もう一体の流星!! もう一体の切り札!! その攻撃力は、4000!! 今、フィールドは2体もの超大型モンスターによって支配されたァァァァァァ!!!』

 

ーーーワァァァァァァァァァッ。

もはや観客にとっては勝ち負け以前てあった。

ただ目の前の圧倒的なモンスターに打ちひしがれて、感嘆の声を上げていた。

 

「……くっ……!!」

 

良平はその2体を見上げる。

 

竜儀巧-メテオニス=DRA

攻:4000

 

「ギガァァァァァァァァァッ!!」

 

竜儀巧-メテオニス=QUA

攻:4000

 

「ギュォォオォオォオッ!!」

 

正しく壁。

従えるデュエリストたる夢迦は真っ直ぐに良平を見つめていた。

 

「このターン、君のモンスターは破壊できない。僕はこのままターンエンドだ」

 

ーエンドフェイズー

 

窪川夢迦

LP:3500

手札1

伏せ0

フィールド:

竜輝巧-ファフμβ

竜儀巧-メテオニス=QUA

竜儀巧-メテオニス=DRA

 

夢迦は両手を下げ、そして声を出した。

 

「これが今の僕のデッキの全力だ。君にこれが超えられるかな!」

 

「……!」

 

「君が僕を超えるか、僕が君を食い尽くすか。もはや数ターンの猶予もないだろうね」

 

「……」

 

良平は答えない。

それは肯定のサイン。

夢迦は続ける。

 

「僕にターンが回った時、僕は間違いなく君を屠る。さぁ、どうする日和田くん。君に残されたのは、このターンのみ。最後まで争うかい? それともデッキの上に手を置くかい?」

 

「……」

 

良平は高鳴る心音のまま、逡巡する。

フィールドは発動中のフィールド魔法と幻獣機トークンが1機のみ。

 

(……祭乃木ならこの状況、どうするだろう)

 

またも過ぎる、祭乃木亜美との記憶。

 

(考えるまでもないか。祭乃木ならきっと諦めない)

 

そう。

だからここまでやってきた。

 

(……じゃあ、俺は……?)

 

ふと、試合前に言われたここのせの言葉を想起した。

 

『貧乏クジを引いたな良平! お前はそういう星の元に生まれたのさ』

 

(ホントにそうだ。でも……)

 

今度はデュエル前。

このデュエルディスクを渡したゆきが必死に戦っていたことを思い出す。

 

『ひわださん……!』

 

『バトンタッチだ、間宮』

 

勝てるかわからない。

だが何もせずにはいられない。

そんな気持ちが生み出した言葉。

 

(俺は間宮からバトンを受け取った。そして、そのバトンは俺がラスト。後ろに祭乃木はいない。俺が諦めたら全て終わり)

 

自分がどうとか。

できるかできないか。

そういうことじゃない、と良平は首を振る。

 

(だったら、やっぱり諦めるわけにはいかない。ライフが0になるまで負けを認めるわけにはいかない!)

 

故に取る行動は。

良平はグッとデッキトップのカードに手を掛けた。

それはまさにドローする予備動作。

夢迦は笑う。

 

「ほう。戦うかい。いいね、それでこそデュエリストだ。ならば奇跡を起こし、見事僕を撃ち落としてみせろ!」

 

ードローフェイズー

 

「俺のターン!! ドロォオ!!」

 

応えはそこに。

必ず。

手札はこれにて4枚。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ゆきは思わず両手を顔の前でぎゅっと結び、固く固く握りしめる。

 

「日和田さんのターン……!! お願い……!」

 

 

[デュエルフィールド]

 

引いたカードは。

 

「ーーーーー!!」

 

良平は目を見開いた。

 

(ーーーいける)

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

フィールドの良平を見ていた亜美とここのせは、彼の様子にまるで雷に撃たれたような仕草を見せた。

 

「良平のやつ……!」

 

「ええ! 繋がったのね、勝ち筋が!」

 

[デュエルフィールド]

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

フェイズが進行すると共に良平は手札のカードをメインモンスターゾーンへと強く置いた。

 

「幻獣機メガラプターを召喚!」

 

幻獣機メガラプター

攻:1900 風 機械族 星4→7

 

幻獣機トークンが存在することによりメガラプターのレベルは3つ上がる。

夢迦はすぐさま反応した。

 

「無駄だ、竜儀巧-メテオニス=DRAの効果を発動! 墓地のルタδとバンαを除外し、幻獣機モンスター2体を墓地に送る!」

 

「やらせない! 速攻魔法、禁じられた一滴!」

 

《禁じられた一滴》

速攻魔法

 

「手札の幻獣機オライオンをリリースして効果発動! 対象にしたモンスターは効果が無効となり、攻撃力が半減する!」

 

良平の宣言に対し、夢迦は即応した。

 

「だが、マジックトラップはファフμβで……」

 

言いながら夢迦はファフμβを見て言葉を失った。

ファフμβはバチバチと漏電しており動きそうにない。

夢迦が良平を睨みつけると、良平は声を出した。

 

「禁じられた一滴は、発動するコストとして墓地に送ったカードと同じ種類のカードのチェーンを受け付けない!」

 

「……!」

 

夢迦は目を見開いた。

ーーーピチョンッ

雫が聖杯からこぼれ落ちメテオニス=DRAを濡らす。

その瞬間、まるでマグマでもかけられたかのように白煙があがった。

良平はさらに続ける。

 

「これでメガラプターは生き残る! さらに今墓地に送ったオライオンの効果によって幻獣機トークンを1体生成!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「さらに幻獣機メガラプターは幻獣機トークンが特殊召喚された場合、さらにもう一体幻獣機トークンを作り出す!」

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「さらに幻獣機メガラプターのもう一つの効果を発動! 幻獣機トークンをリリースしてデッキから幻獣機を手札に加える! この効果で幻獣機ハムストラットをサーチ!」

 

幻獣機メガラプターは鋭くロール回転し、後続を呼び込んでいく。

良平はデッキからカードを引き抜く。

 

「墓地の幻獣機オライオンの効果を発動! 自身を除外することで、手札の幻獣機を召喚できる! こいハムストラット!!」

 

良平の呼び声に応えて墓地から半透明のオライオンが現れて光を放つ。

やがてそれは巨大な給油機へと姿を変えた。

 

幻獣機ハムストラット

攻:1100 風 機械族 星3→9

 

『ここにきて怒涛の連携コンボ!! しかし、立ちはだかるは攻撃力4000! 下級モンスターを並べても勝ち目はないぞォオ!!』

 

司会のパフォーマンス。

しかし良平の耳には届かない。

 

「ハムストラットの効果発動! 幻獣機トークンをリリースし、墓地の幻獣機テザーウルフを特殊召喚!」

 

幻獣機トークン1機がゆっくりと消えていき、ハムストラットに吸い込まれていく。

ハムストラットは羽根を左右に振ると彼方の空から戦闘ヘリが飛来した。

 

幻獣機テザーウルフ

攻:1700 風 機械族 星4→7

 

幻獣機メガラプター

星4→7

 

変則的なコンボ、そして幻獣機の固有能力によるレベル変動。

夢迦は驚いたように口を開けた。

 

「レベル7モンスターが2体……!」

 

「レベル7のメガラプターとテザーウルフでオーバーレイ!!」

 

良平が右手を突き出すと前方に黒い渦ーーオーバーレイネットワークが広がった。

 

☆7×☆7=★7

 

2機の幻獣機が交わる最中、良平は無意識に感じ取るカードの魂を詠み上げた。

 

「ーー輝け、天空を統べる黒き向日! 受け継がれし魂を今ここに!」

 

黒い羽根が空を覆い、凄まじい闘志を燃やす。

やがて現るは漆黒のドラゴン。

 

「エクシーズ召喚! 力を貸してくれ! ダーク・アンセリオン・ドラゴン!!」

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン

攻:3000 闇 ドラゴン族 ランク7

 

『カウンターのエクシーズ召喚!! 黒きドラゴンがフィールドに現れたァァァァァァ!!』

 

反撃の狼煙か。

観客たちは繰り広げられる展開にどよめいていく。

 

[チームHERO側観客席]

 

「ダーク・アンセリオン・ドラゴン……!」

 

最初に声を上げたのは応援団のうちのひとりであるくるみんだった。

隣にいた2組の女子生徒が首を傾げた。

 

「新しい切り札? どんなカードなんだろう?」

 

「フォーチュン開発成功記念に、その制御に使われているカードをモデルとして作られたと聞いているよ」

 

「え、じゃあレアカードってこと?」

 

女子生徒の問いにくるみんは頷いた。

右隣にいた忠一は半ば呆れるように言う。

 

「なんでそんなもんアイツが持ってるんだ……」

 

[デュエルフィールド]

 

良平のフィールドに着地した黒い龍に夢迦は再びぞくりとしたものを感じた。

 

「ダーク・アンセリオン・ドラゴン……!」

 

黒い龍の足元で良平はフィールドを一瞥する。

 

「ダーク・アンセリオン・ドラゴンの素材を一つ取り除き、フィールドのモンスター、メテオニス=QUAを対象として発動! そのモンスターの攻撃力を半減させ、その数値分攻撃力が上昇する!!」

 

良平が支持を飛ばすとダーク・アンセリオン・ドラゴンは口蓋を開けた。

そこは虚空になっていて周囲のエネルギーを吸い取っていく。

 

「グガァァァァァァァァァッ!!」

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン

攻:3000→5000

 

竜儀巧-メテオニス=QUA

攻:4000→2000

 

良平は意を決して夢迦の双眼を睨んだ。

 

「いくぞ! バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

「ダーク・アンセリオン・ドラゴンでファフμβに攻撃!!」

 

良平は勢いよく手を差し向ける。

ダーク・アンセリオン・ドラゴンは口蓋にエネルギーを溜め込んでいく。

 

「アブソーブ・エクリプス!!」

 

「グガァァァァァァァァァァッ!!」

 

ダーク・アンセリオン・ドラゴン

攻:5000

 

竜儀巧-ファフμβ

攻:2000

漆黒のエネルギー放射がファフμβを飲み込んでいく。

それは一瞬でモンスターを蒸発させ、多大な超過ダメージを夢迦に与えてしまう。

 

「ぐぅっ!」

 

窪川夢迦

LP:3500→500

 

『大ダメージィィィ!! まさに叛逆の牙!!』

 

凄まじい反撃に会場は拍手が鳴り響いていた。

されど。

良平のモンスターはたったの1体。

 

「……だが、これで君の攻撃は……」

 

良平のモンスターは攻撃を終えた。

唯一攻撃可能な幻獣機ハムストラットは夢迦のモンスターのどれにも叶わない。

ターンが返れば夢迦の勝利となるだろう。

 

「ッ……!」

 

だが。

夢迦はハッとして顔を上げた。

 

ーーーービリビリビリビリバチバチバチッ

 

電流が弾けるような音。

途絶える事ない良平から向けられる殺気のような闘志。

 

そして。

 

ーーーーゴォッ

 

エンジン音を張り上げて。

良平の背後から幻獣機ドラゴサックが飛翔した。

 

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600 風 機械族

 

「なっ……!?」

 

思わず夢迦は声を漏らした。

良平のフィールドにカードが発動されている。

 

《マグネット・リバース》

速攻魔法

 

良平は右手をディスクの発動ボタンに触れた。

 

「速攻魔法、発動!」

 

発動したカードを夢迦が独り言をこぼした。

 

「マグネット・リバース……!」

 

良平は宣言する。

 

「このカードは、墓地または除外されている通常召喚できない機械族・岩石族を特殊召喚することができる! !!」

 

「……ふふ。なるほど」

 

夢迦は笑う。

其れは嘲笑に非ず。

目の前のデュエルそのものが夢迦に悦を感じさせていた。

良平は拳を突き出して叫ぶ。

 

「行け!!ドラゴサック!! メテオニス=DRAを撃ち落とせ!!」

 

「roger」

 

主人の声に呼応しドラゴサックはエンジンを最大まで蒸して直進した。

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600

 

「ファントム・ミラージュ!!」

 

ドラゴサックは風を幾重にも纏いながら超スピードでフィールドを往く。

 

竜儀巧-メテオニス=DRA

攻:2000

 

やがてドラゴサックは竜儀巧-メテオニス=DRAの身体を貫いた。

瞬間、時が止まったかのように沈黙。

1秒後に大爆発とともに竜儀巧-メテオニス=DRAは吹き飛んだ。

その爆風は夢迦のライフポイントすらもかき消してしまった。

 

「……ふふ、悪くない幕引きだね」

 

窪川夢迦

LP:500→0

 

ーーーービィィィィィィィッ!

 

ブザーが鳴る。

それはライフポイントが0になったことを高く高く知らせる調べ。

 

『き、決まったァァァァァァァァッ!! まさか! まさかの大逆転劇!! 誰もが予想していなかった展開!! 勝利を掴んだのは、初出場!! 奇跡のチーム、チームHEROォオォオォオッ!!!』

 

会場は揺れる。

困惑と興奮とが入り混じる歓声が上がる。

 

[チームHERO側観客席]

 

 

「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「すごーーーい!!!」

 

応援に来ていた女子生徒たちが互いの手を取りぴょんぴょんと跳ねた。

 

「よし!!」

 

忠一もまた自分事のように拳を握る。

少し離れた場所ではオベリスクブルーの制服が並ぶ。

ツァンは目を見開いてショートカットの髪を揺らした。

 

「嘘……!? 倒しちゃった……!」

 

「ふんっ」と唯信はようやくフィールドから目線を切ると立ち上がり踵を返して歩いていく。

美優は目を細めて腕を組んだ。

 

「なるほど。化け物はHERO girlだけじゃないってわけネ」

 

 

[チームコーポレート側ベンチ]

 

一方、チームコーポレートのベンチでは幸子もアナスタシアがベンチでへたり込んでいた。

 

「そ、そんな……嘘ですわ……」

 

「我が社の株が……!! なんてこと……!!」

 

 

[デュエルフィールド]

 

額から汗が滴る。

それが良平の足元に落ちてようやく自分が汗をかいていることに気がついた。

肩口で拭い、荒れた息を整える。

 

「……はぁ、はぁ……俺は……」

 

「りょぉぉへぇぇぇ!!!」

 

声と共にダダダッと足音。

良平に振り向く暇も与えず亜美はガバッとヘッドロックを掛けた。

 

「ぐぇっ……!」

 

亜美の胸の膨らみが良平の頭で大きく歪む。

しかし亜美はそれを気にも留めず良平の頭をガシガシと撫でた。

 

「アンタ、やるじゃない!! 見直したわよ!! さっすが良平!!」

 

「い、いだだだ……!」

 

後から続いたゆきも手を叩いて良平を見つめた。

 

「日和田さぁぁん!! 凄いですスゴいですすごいですぅ!!!」

 

「……お疲れ様……」

 

恵も変わらぬ表情のまま言う。

ようやく亜美から解放された良平はボサボサになった髪を整えながら返す。

 

「ああ、うん、ありがとう……」

 

最後尾、ここのせはグッと拳を握っていた。

それから絞り出すように言う。

 

「……さすがだぜ、良平」

 

「……?」

 

その様子にゆきは小首を傾げていた。

そんな5人に向けて。

 

パチッパチッパチッとゆっくりと、そしてはっきりとした単音の拍手が聞こえた。

5人が振り向くとそこには夢迦が立っていて拍手していた。

彼女は手を止めると良平を見た。

 

「お見事」

 

「窪川さん……」

 

「とても楽しいデュエルだった。それに奇跡を目の当たりに出来て、ワクワクしたよ。それだけに、君を食い尽くすことが出来なかったのは残念だ。……君はどうだったかな」

 

「貴女とのデュエルは、心臓が飛び出るくらい高鳴って、目の前のデュエルのことしか見えなくなりました。でも……」

 

良平は一旦言葉を切って左腕のデッキを見る。

 

「だからこそ、それが俺と幻獣機をもっと強くしてくれた。そんな気がしました」

 

「ふっ、それは僥倖」

 

彼女は満足そうに微笑んだ。

それから今度は亜美を見つめた。

 

「ーーーチームHEROの諸君」

 

「!」

 

「君たちは見事、僕らチームコーポレートを撃破し、8強への仲間入りを果たした。だが、それは同時に、無名ではなくなる、ということでもある」

 

「……!」

 

亜美はやや目を開く。

それは以前、美優から指摘されたこと。

 

『その覚悟は、できているかしら?』

 

「君たちの自由なデュエルが失われないことを祈っているよ」

 

そう言うと夢迦は踵を返す。

 

「では、ごきげんよう。次戦うことがあれば、立場を逆転させてみせるよ」

 

歩いて行く彼女の後ろ姿は負けてもなお堂々としていた。

 

「……」

 

彼女と入れ替わるようにカメラマンたちが雪崩れ込んできてパシャパシャとシャッターを切った。

 

「わっ……!」

 

急なことにゆきが目を丸くする。

そんなことには目もくれずレポーターが良平にマイクを突きつけた。

 

「童実野テレビの者です!! 今のお気持ちをお聞かせください!!」

 

当の良平はキョトンとしていると亜美が笑いながら良平の背中を叩く。

 

「ほら! シャキッと答えないよ、良平!」

 

「え、お、俺!?」

 

歓声は鳴り止まぬ。

チームHERO側のスタンドからはメンバーの名を呼ぶ声が耐えなかった。

 

 

[チームコーポレート側ベンチ]

 

一方、チームコーポレート側ベンチ。

夢迦が戻ると、

幸子とアナスタシアがまるで燃え尽きたようにベンチで沈み込んでいた。

夢迦はため息をつくと声をかけた。

 

「ほら、いつまで項垂れてるんだい。帰るよ」

 

言うと幸子が素早く顔を上げて夢迦を涙目で睨みつけた。

 

「あ、貴女のせいではありませんの!! こんな負け方して、会社に戻れませんわ!!」

 

追従するようにアナスタシアも目を釣り上げて声を荒げた。

 

「ッ! 貴女のせいで我が社の株は下がってますのよ! どうしてくれるんですの!!」

 

二人からの視線に夢迦は肩を竦めて返す。

 

「おやおや、穏やかじゃないね。早く会見を開いて、相手を称えた方が株が上がると思うけど」

 

「貴女に言われるまでもないですわ!!」

 

吐き捨てるようにアナスタシアは言ってベンチを出て行ってしまう。

 

「もしもしワタクシですわ。ええ、至急手配して」

 

幸子も携帯電話で通話しながら挨拶もなしに出て行ってしまった。

バタンッとドアが強く閉まる音がベンチに響く。

 

「全く、やれやれ」

 

夢迦が再び肩を竦めて目を伏せるとガチャリとドアが開いた。

 

「おや? 忘れ物かい……っと」

 

夢迦は言いかけて言葉を止めた。

そこにいたのはチームメンバーの誰でもない。

美しく長い金髪に高い身長。

スラリとしたスタイルにロングコート。

ーークイーンがそこに立っていた。

 

「対戦、ご苦労だったな」

 

「ーーこれはこれは、クイーン。わざわざ僕らの方にくるとはね」

 

「なに。数年共に8強として君臨していたんだ。名残惜しくもなる」

 

「僕は良い刺激になると思うよ。僕たちにも、他のチームにも」

 

「ほう。太極を見るとは恐れ入った。しかし、貴様は悔しがらないのだな」

 

「いいや、悔しいとも。でもこれで踏ん切りがついたよ。僕のデッキは完成には程遠い。必要なパーツを入手するには、それこそクイーンになるか、はたまた長い道のりをかけて入手するか。それしかないんだ」

 

「それが貴様の戦う理由、というわけか」

 

「そうさ。だが、これではクイーンどころではないね。一から出直しついでに、本格的なデッキ改良をするよ。それもまた楽しいからね」

 

「そうか」

 

クイーンは負けてもなお誇り高いデュエリストにふっと緩やかな笑みをかけた。

一方の夢迦は右手を腰に当ててクイーンを覗きこむ。

 

「ところでクイーン。僕はしばらくは貴女にお近きになる機会はないだろうから気になっていたことを質問しても良いかな?」

 

「もちろん。このクイーンが答えられることならば、なんなりと質問するが良い」

 

「貴女は何のために戦っているんだい。僕は、楽しいからデュエルをする。自身のデッキが相手の戦略を飲み込む瞬間がたまらなく好きだ。欲しいカードを手に入れるなんて、その副産物でしかないよ」

 

「……」

 

「だが、貴女の場合はどうだろう。5年間、無敗で頂点に輝き続けているその原動力は一体なんなんだろう。まさか、勝つことだけが目的ではないだろう? 貴女は勝つのは当たり前なんだ」

 

「……そうだな」とクイーンは一瞬考えるような仕草をして、それから腕を組んだ。

 

「輝き続けることそのものに意味がある。私は。クイーンは。ここにいると示し続けることにな」

 

「……」

 

「だが、同時に真に強きデュエリストを見出すためでもある。来るべき時のために、この無敗のクイーンをも打倒しうるデュエリストが必要となる」

 

「ほう? ……どうにも解せないけど、何やら大層な思惑がおありのようだ。一介の企業家では相手にならないね」

 

夢迦は苦笑いを浮かべるとテクテクと歩いてクイーンの横をすり抜けていく。

クイーンは首だけ彼女を追いかけて言った。

 

「貴様も強きデュエリストだった。また相見えることを楽しみにしているぞ」

 

「それはどうも。ではごきげんよう」

 

手をひらひらとさせて夢迦は去って行く。

クイーンはその足音を聞きながらフィールドに目を向けた。

そこには勝者となった奇跡のチームが幼い顔で笑い合っていた。

 

 

 

 




◾️本戦3回戦終幕です!
◾️次回
「星を追う」

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