遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
[夜 ネオ童実野シティ 公園]
夜の帷が降り、辺りは街灯の光の下だけが明るい。
あとは月明かりで仄かな青白い街が広がっていた。
ここのせはデュエルディスクを構えて前に立つ良平と対峙していた。
「デュエル!」
能瀬 心
LP:4000
手札5
「デュエル!」
日和田良平
LP:4000
手札5
ピピピッ……ピィー。
メインモニターが明滅し、自動で先攻後攻が決まる。
ここのせのモニターには先攻の文字が表示された。
「先攻は貰った! いくぜ、オレのターン!」
ーメインフェイズー
手札を確認し、ここのせは僅かに頷く。
悪くない手札だ。
ここのせは手札のカードを素早く持ち、マジックトラップゾーンへと差し込む。
「手札からマジックカード、スモール・ワールドを発動!」
《スモール・ワールド》
通常魔法
「手札のモンスター、召喚僧サモンプリーストを相手に見せ、こいつとは属性、種族、レベル、攻撃力、守備力の内、一つだけ同じとなるモンスターをデッキから確認する! オレはデッキから夢幻転星イドリースを選択!」
召喚僧サモンプリースト
闇 魔法使い族 攻:800 守:1600 星4
夢幻転星イドリース
闇 天使族 攻:2100 守:2100 星9
ソリッドビジョンに2枚のカードが映し出された。
それを確認して良平が呟く。
「……共通してるのは属性のみ……」
「その後、見せたサモンプリーストを裏側で除外し、今確認した、イドリースと属性、種族、レベル、攻撃力、守備力の内、一つだけ同じとなるモンスターを手札に加える! オレはデッキからマシンナーズ・メタルクランチをサーチだ!」
手札3→4
夢幻転星イドリース
闇 天使族 攻:2100 守:2100 星9
マシンナーズ・メタルクランチ
地 機械族 攻:2800 守:0 星9
「今度はレベルのみ……!」
良平は僅かに眉をあげた。
これにより手札の入れ替えが完了。
ここのせはさらに続ける。
「効果処理後、イドリースも裏側で除外するぜ」
「……」
「続けて手札からマジックカード発動! 九字切りの呪符!」
《九字切りの呪符》
通常魔法
「手札のレベル9モンスター、マシンナーズ・メタルクランチを墓地に送って、カードを2枚ドロー!」
手札2→4
デッキトップから2枚カードを引き込むここのせ。
ちらと一瞥した後、手札に加え、さらに別のカードを掴み取る。
「速攻魔法、閃刀機ホーネットビットを発動!
《閃刀機ホーネットビット》
速攻魔法
「オレのフィールドに閃刀姫トークンを特殊召喚するぜ!」
閃刀姫トークン
守:0 闇 戦士族 星1
「閃刀姫トークン1体をリンクマーカーにセット! 召喚条件は水属性以外の閃刀姫モンスター1体!」
↗︎閃刀姫トークン=LINK1
リンクマーカーに閃刀姫トークンが飲み込まれ、装備換装が施されていく。
やがて青い武装の少女がエンジン音と共に現れた。
「発艦! 閃刀姫-シズクをリンク召喚!」
閃刀姫-シズク
攻:1500 水 機械族 LINK1 左EXゾーン
「……さらに爆走軌道フライング・ペガサスを召喚!」
爆走軌道フライング・ペガサス
攻:1800 地 機械族 星4
「こいつが召喚、特殊召喚に成功した時、墓地の地属性機械族モンスターを効果を無効にし、守備表示で特殊召喚できる! 戻ってこい! マシンナーズ・メタルクランチ!」
マシンナーズ・メタルクランチ
守:0 地 機械族 星9
フィールドに現れたモンスターのレベルは9。
ここのせのデッキの主軸となるレベルのモンスター。
良平はそのプレイングに対して心の中で独言した。
(手札交換カードと墓地利用……。無駄がない。やるな、ここのせ……!)
一方のここのせは腕を薙ぎ払うようにして効果を宣言する。
「フライング・ペガサスの効果発動! 自身のレベルをメタルクランチのレベルと同じ数値に変更する! これで二体のレベルは9!」
「……!」
爆走軌道フライングペガサス
星4→9
マシンナーズ・メタルクランチ
星9
「レベル9のフライングペガサスとマシンナーズ・メタルクランチでオーバーレイ!」
☆9×☆9=★9
オーバーレイネットワークがバチバチと漏電し漆黒の渦がここのせの前にとぐろを巻く。
そして黒炎の龍が姿を現した。
「力を貸してくれ……! エクシーズ召喚! 真竜皇V.F.D!!」バシッ
「グヴォオオオオオオ!!!」
真竜皇V.F.D
攻:3000 闇 幻竜族 ランク9
相手の動きの一切を封じる強力なエース級モンスター。
良平はすぐさまカードを手に取り応戦する。
「ッ! EXデッキから攻撃力2000以上のモンスターが特殊召喚された時、手札の風の天翼ミラドーラは特殊召喚できる!」
「クォオォオォオッ!!」
風の天翼ミラドーラ
守:2600 風 ドラゴン族 星7
大会の試合でも使用した手札誘発モンスター。
ここのせは眼前の風を纏うドラゴンに目を見張る。
「なっ……! そいつは……!」
「このカードの特殊召喚時、相手のモンスター1体を対象とし、このカードがフィールドに存在する限り効果の発動を封じる! 対象はザビースト!」
ミラドーラは緑色の羽根をばたつかせ粉塵を巻き上げる。
飲み込まれた真竜皇V.F.Dは苦し気に声を漏らしている。
ここのせは唇を噛んでカードをマジックトラップスロットに差し込んだ。
「くっ……! カードを1枚セット! エンドフェイズへ移行!」
ーエンドフェイズー
ここのせの足元にカードが表示され、すぐにフェイズが移り変わる。
その瞬間に閃刀姫-シズクがエンジンを吹き上げた。
「閃刀姫-シズクの効果発動! 墓地に存在しない閃刀魔法カードを手札に加えるぜ! デッキから閃刀起動-エンゲージを手札に加える! これでターンエンドだ!」
能勢 心
LP:4000
手札3
マジックトラップ:
伏せ1
フィールド:
真竜皇V.F.D
閃刀姫-シズク
ードローフェイズー
フェイズが再び移行し良平がデッキトップに指を重ね強く引き込む。
「俺のターン! ドロー!」
手札が4枚から5枚へ。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
引いたカードを一瞥した後、良平は視線をここのせの足元へ送る。
(ここのせのデッキに入ってる阻害系のカードは、迷い風、ウィドウアンカー、掃射特攻……。そのうち、ウィドウアンカーと掃射特攻は発動条件を満たしてない。となると警戒すべきは迷い風……)
常にそばで戦っている者同士。
デッキの中身はある程度把握している。
良平は惜しげもなく頭を巡らせていく。
(でもスタンバイフェイズに使ってこなかった。ミラドーラの効果を無効にすれば、ザビーストの強力な制圧効果を使えたはず。もしかしたらあれは迷い風じゃないのかもしれない。迷い風じゃないなら……)
思考がまとまった。
良平は手札のカードをマジックトラップスロットに放り込む。
「手札から、マジックカード、サモン・ストームを発動!」
《サモン・ストーム》
通常魔法
「ライフを800ポイント払うことで、手札のレベル6以下の風属性モンスターを特殊召喚できる! こい、幻獣機メガラプター!」
LP4000→3200
幻獣機メガラプター
攻:1900→1700 風 機械族 星4
フィールド上空に鷹のような戦闘機が現れた。
すぐさまここのせのフィールドの閃刀姫-シズクが妨害の電波を放つ。
これによりここのせの墓地のマジックカード分だけメガラプターの攻撃力は下がってしまう。
しかし良平は気にせずカードを持ち替えてそれを場に出した。
「さらに通常召喚! 幻獣機テザーウルフ!」
幻獣機テザーウルフ
攻:1700→1500 風 機械族 星4
今度は狼のような戦闘ヘリ。
ローターを回転させながら轟音を立てている。
良平は宣言する。
「テザーウルフの効果で幻獣機トークンを生成!」
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
「さらにメガラプターの強制効果で、幻獣機トークンを追加で特殊召喚!」
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
一瞬にしてフィールドには4機の戦闘機が飛び回った。
ここのせは「くっ……」と喉を鳴らした。
良平は止まらない。
「メガラプターの効果発動! 幻獣機トークンをリリースして、デッキから幻獣機モンスターをサーチする!」
良平の宣言にここのせはすぐさま反応する。
(くそ、発動するならここしかねぇか……!)
良平のフィールドは2体の幻獣機モンスター。
レベルは効果処理後には双方7となる。
そのレベル帯は良平のエース級モンスターのメインゾーン。
ここのせはすぐさまセットカードを発動した。
「その効果にチェーンして、こっちもトラップ発動! 創星改帰!」
《創星改帰》
通常罠
chain1 幻獣機メガラプター
chain2 創星改帰
「手札、デッキから星遺物モンスターを特殊召喚する! 星遺物-星杯を特殊召喚!」
星遺物-星杯
守:0 闇 機械族 星5
ここのせはカードを横向きにメインモンスターゾーンに呼び出す。
まるで青白い岩のような、それでいて器のような形をしていた。
対する良平もデッキからカードを引き抜いた。
「こっちはメガラプターの効果で、幻獣機ライテンを手札に加える!」
良平の手札はこれにて3枚。
フィールドの幻獣機は永続効果によりレベルが変動した。
幻獣機メガラプター
星10→7
幻獣機テザーウルフ
星10→7
良平はフィールドを一瞥する。
目に止まるは現れた星遺物-星杯のカード。
(星遺物カード……。ここのせのデッキのメインエンジン。たしかあのカードは……)
一方、ここのせもフィールドに滞空している2機の幻獣機に目をやる。
レベルは7。
(星遺物-星杯は相手がEXゾーンからモンスターを特殊召喚したとき、自身をリリースすることで墓地に送ることができる。こいつで何とか展開を止めてぇが……)
双方の思惑が交差する。
フィールドにはモンスター。
風が吹いて足元の砂が巻き上がる。
雲が月を覆い被さって一段落と辺りが暗くなっていく。
「……」
「……」
二人はしばし睨み合う。
沈黙を破ったのは良平だった。
「……バトル! 」
ーバトルフェイズー
フェイズが移行。
ここのせは胸中が苦くなった。
(やっぱり攻撃してくるよなっ……!)
構わず良平はモンスターに指示を出す。
「いけ! テザーウルフ! 星遺物-星杯に攻撃!」
「ガゥッ!」
幻獣機テザーウルフ
攻:1500
星遺物-星杯
守:0
幻獣機テザーウルフはローターを素早く回転させ吶喊。
機体前方についた機関砲が硝煙をあげた。
弾雨が降り注ぎ、星遺物-星杯は瞬く間に砕け散る。
良平はさらにここのせのフィールドに滞空している閃刀姫-シズクを指差した。
「追撃! メガラプターで閃刀姫-シズクに攻撃!」
「a1 engage!」
幻獣機メガラプター
攻:1600
閃刀姫-シズク
攻:1500
幻獣機メガラプターはアフターバーナーを燃やし、凄まじい速度で直進した。
対する閃刀姫-シズクは「くっ!」と声を漏らしつつ、回避行動のため上空に舞い上がる。
レシプロエンジンの音が鳴り響き、シズクが全速力で飛翔していることがわかった。
しかしメガラプターの速度には叶わない。
メガラプターはついにシズクの背後を取り、ロックオンする。
やがて1発のミサイルを発射し、シズクに命中させた。
「きゃぁぁっ……!」
撃墜されたシズクは悲鳴を上げながらここのせのフィールドに激突した。
爆炎がここのせを飲み込む。
「ぐぉっ……!」
能瀬 心
LP:4000→3900
「ッ、野郎……!」
ギロリと良平を睨みつけるここのせ。
対する良平も鋭い瞳でフィールドを見つめていた。
「よし! メイン2!」
ーメインフェイズ2ー
「レベル7のメガラプターとテザーウルフでオーバーレイ!」
☆7×☆7=★7
2機の幻獣機たちが交わりオーバーレイユニットへと昇華していく。
良平はカードを掲げ旋律を謳う。
「ーー輝け! 全てを飲み込む業魔の瞳!」
閃光。
そして異質なひとつ眼のモンスターが現れた。
「来てくれ! No.11 ビッグアイ!!」
No.11ビッグアイ
攻:2600 闇 魔法使い族 ランク7
「こいつは……!」
ここのせはタタラを踏む。
対する良平は止まらない。
「ビッグアイの効果発動! 素材を取り除くことで、相手フィールドのモンスターのコントロールを得る! 対象はV.F.D!」
ビックアイはひとつ眼を怪しく輝かせVFDを誘う。
フラフラとVFDは良平のフィールドへと向かっていった。
真竜皇V.F.D
コントローラー ここのせ→良平
「くっ……!」
「さらに、ミラドーラと幻獣機トークンをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、風属性を含むモンスター2体!」
↙︎風属性 + ↘︎風属性 =LINK2
サーキットが表示されEXゾーンへの路が開かれる。
良平は前に手を突き出し声を上げた。
「リンク召喚! こい、蒼翠の風霊使いウィン!」
蒼翠の風霊使いウィン
攻:1850 風 魔法使い族 LINK2 右EXゾーン
杖をクルクルと振り回し、やがてビシリと構える緑色の髪の少女。
ミラドーラが墓地に送られたことにより、VFDを縛っていた効果封じが解除された。
良平はカードをマジックトラップスロットに差す。
「カードを1枚セットしてターンエンド!」
ーエンドフェイズー
日和田良平
LP:3200
手札1
伏せ1
フィールド:
蒼翠の風霊使いウィン
No.11 ビッグアイ
真竜皇V.F.D
時計の支柱に背を預けるようにして立つ亜美はデュエルの様子を静観していた。
腕組みを組み、胸中で感想を起こす。
(ここのせの初動は悪くなかったはずよ。良平がうまく捌いたわね。さぁ、ここのせ、ここからどうするかしら?)
ードローフェイズー
「ッ! オレのターン!」
ここのせはデッキトップから勢いよくカードを引く。
これで手札は4。
しかし。
ースタンバイフェイズー
フェイズの以降と共に良平は宣言した。
「スタンバイフェイズ時、真竜皇V.F.Dの効果発動! 素材を取り除き、属性を一つ宣言する! フィールドのモンスターは宣言された属性となり、さらにその属性のモンスターは効果が発動できない! 俺は闇属性を宣言する!」
「くそっ……!」
真竜皇V.F.Dは紫色の瘴気を吐き出す。
フィールドは瞬く間に瘴気に覆われてしまう。
ここのせは思わず奥歯を噛み締めた。
「くそったれッ……!」
ーメインフェイズー
(良平の野郎……! わざわざ闇属性を宣言してきやがった……! 墓地の星杯の効果が使えねぇ……!)
真竜皇V.F.Dの属性を変更する効果はフィールド以外には及ばない。
しかし指定した属性のモンスター効果を封じる効果は全域に影響する。
即ち元々の属性が指定された属性の場合はいかなる場所でも効果を使用することはできない。
ここのせは手札のカードをスロットに投げ入れた。
「ッ! 閃刀起動-エンゲージ、発動!」
《閃刀起動-エンゲージ》
通常魔法
「デッキから閃刀カード、閃刀姫レイを手札に加える! さらに、オレの墓地には魔法カードは3枚! よって追加効果発動! カードを1枚ドローするぜ!」
これにて手札は5枚。
良平は鋭い目でここのせの様子を伺っている。
引いたカードをすぐさまスロットに差し込むここのせ。
「さらに手札から速攻魔法、緊急ダイヤを発動!」
《緊急ダイヤ》
速攻魔法
「相手モンスターの数がこちらより多い場合、デッキからレベル4以下とレベル5以上のモンスターを1体ずつ特殊召喚する! こい、巨大戦艦ブラスターキャノンコア、無限起動ロックアンカー!」
巨大戦艦ブラスターキャノンコア
守:3000 地→闇 機械族 星9
無限起動ロックアンカー
守:1000 地→闇 機械族 星4
「さらに手札の機巧蹄-天迦久御雷の効果発動! こいつは、EXゾーンにカードが存在する場合、特殊召喚できる!」
機巧蹄-天迦久御雷
攻:2750 炎→闇 機械族 星9
「そして、さっき手札に加えた閃刀姫レイを通常召喚!」
閃刀姫-レイ
攻:1500 闇 戦士族 星4
ここのせのフィールドには4体ものモンスター。
それらの足元に黒い渦が展開する。
「レベル9の天迦久御雷とブラスターキャノンコアでオーバーレイ!!」
☆9×☆9=★9
「ーー海の要塞、大空の支配者よ! 遥かなる水平線に勝利を刻め!! エクシーズ召喚! 抜錨だ! 幻子力空母エンタープラズニル!!」
幻子力空母エンタープラズニル
守:2900 風→闇 機械族 ランク9
現れたのは巨大な航空母艦。
黒い渦は消えずにさらなる光を放っていた。
「さらにレベル4の閃刀姫レイと無限起動ロックアンカーでオーバーレイ!」
☆4×☆4=★4
「四方を護し真金の城! 遥かなる水平線に勝利を刻め!! エクシーズ召喚! 抜錨せよ、No.27弩級戦艦ドレッドノイド!!」
No.27弩級戦艦ドレッドノイド
守:1000 水→闇 機械族 ランク4
ソリッドビジョンで表現される大海原。
そこに2隻の軍艦が陣取った。
主を守るかのように。
エース級モンスターの2体同時展開に亜美は静かに頷く。
(ここのせのエースモンスターたち! でも、VFDの効果で真価が発揮できない……!)
良平のフィールドに居座る黒い龍が吐く瘴気は未だに薄黒く蔓延していた。
ここのせは手札のカードを場に伏せた。
「……カードを1枚セット! ターンエンドだ……!」
ーエンドフェイズー
能勢 心
LP:3900
手札0
伏せ1
フィールド:
幻子力空母エンタープラズニル
No.27弩級戦艦ドレッドノイド
ードローフェイズー
警戒を緩めないまま良平はカードを引く。
「俺のターン!」
手札は2。
すぐさまフェイズが移行する。
ースタンバイフェイズー
フェイズ移行とともに不意にここのせが声を上げた。
「そのスタンバイフェイズ時、トラップ発動! 掃射特攻!!」
「ッ!?」
《掃射特攻》
永続罠
ここのせの足元でカードが反転する。
紫色のカード。
「オレのフィールドの機械族エクシーズモンスターの素材を任意の枚数砲弾に変えて、その分、相手モンスターを破壊する! エンタープラズニルの素材を2つを使って、VFDとビッグアイを破壊だ!」
ここのせは指先を良平のフィールドに向けた。
呼応するようにエンタープラズニルが船体を横に向けて右舷に取り付けられた副砲を起動させた。
「照準よし! 対地戦闘! 撃ちぃ方はじめ!!」
ここのせの号令に副砲2基が火を噴いた。
砲弾がフィールドを一文字に駆け抜けてビッグアイとVFDを貫いた。
爆発が起き2体のモンスターは跡形もなく砕け散る。
その様にここのせはその本来の持ち主に心の中で謝罪した。
(すまねぇ、こかげ……!)
対する良平は動じず、手札のカードを切る。
「破壊してきたか……。なら! 幻獣機ライテンを召喚!」
幻獣機ライテン
攻:1500 風 機械族 星4
「ライテンの効果発動!手札を1枚墓地に送ってフィールドに幻獣機トークンを特殊召喚!」
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
「さらに、今墓地に送った幻獣機オライオンの効果発動! このカードが墓地に送られた時、フィールドに幻獣機トークンを生み出す!」
《幻獣機オライオン》
効果モンスター
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
これで良平のフィールドには3機の幻獣機モンスター。
良平は鋭い目のまま宣言していく。
「幻獣機ライテンと幻獣機トークン2体をリンクマーカーにセット! 召喚条件は、機械族モンスター2体以上!」
↙︎機械族+↓機械族+↘︎=LINK3
「ーー煌めけ、極光の翼!回せぇ! エクシーズ召喚! 来い、幻獣機アウローラドン!!」
幻獣機アウローラドン
攻:2100 風 機械族 LINK3
「アウローラドンのリンク召喚成功時、幻獣機トークンを3体特殊召喚!」
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
「……ッ!」
高速で展開していく良平のフィールドにここのせは息を呑んだ。
良平は止まることなく言葉とカードを紡いでいく。
「アウローラドンの効果発動! 自身と幻獣機トークン1体をリリースして、デッキから幻獣機モンスターをリクルートする! 来てくれ、幻獣機メガラプター!」
幻獣機メガラプター
攻:1900 風 機械族 星4→10
「メガラプターの効果発動! 幻獣機トークンをリリースしてデッキから幻獣機モンスター、幻獣機ハムストラットを手札に加える!さらに、墓地のオライオンを除外することで、手札の幻獣機モンスターを召喚する! 今手札に加えたハムストラットを召喚!」
幻獣機ハムストラット
攻:1100 風 機械族 星3→6
「ハムストラットの効果発動! フィールドの幻獣機モンスターをリリースして、墓地の幻獣機モンスターを特殊召喚する! 戻って来い、アウローラドン!」
幻獣機アウローラドン
攻:2100 風 機械族 LINK3
「……くっ……!」とここのせは奥歯を噛む。
盤面が展開し加速していく。
まさに良平の手のひらの上。
良平は止まることなくカードを場に出した。
「……アウローラドンの効果を再び発動! 自身とハムストラットをリリースしてデッキから幻獣機モンスター、幻獣機コルトウィングを特殊召喚!」
幻獣機コルトウィング
攻:1600 風 機械族 星4
「コルトウィングが特殊召喚された時、フィールドに他の幻獣機モンスターが存在する場合、幻獣機トークンを2体作り出す!」
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
「さらにメガラプターの強制効果で、さらにもう一体幻獣機トークンを特殊召喚!」
メガラプターは「a1 follow!」と無線音声のような声で応答するとくるくると回転して軌跡を残す。
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
「くっ……一気にフィールドが……!」
ここのせは目の前のフィールドに目を見張る。
フィールドには幻獣機がトークン含め5体が飛び交っていた。
良平は手を振り上げて効果を宣言する。
「コルトウィングの効果発動! 幻獣機トークン2体をリリースして、フィールドのカードを破壊して除外する! 対象はエンタープラズニル!」
「……ッ!」
幻獣機トークン2機がゆっくりと消えていき、コルトウィングのミサイルへと変化する。
コルトウィングは「a2 FOX3!」と声を上げてミサイルを発射した。
白煙を上げて瞬時にエンタープラズニルの船体を貫き爆炎を上げる。
大爆発が起き、真っ二つとなったエンタープライズニルはソリッドビジョンの海に沈んでいった。
幻獣機トークンが減ったことにより幻獣機たちのレベルが変動する。
幻獣機メガラプター
星13→7
幻獣機コルトウィング
星13→7
「バトルだ!」
ーバトルフェイズー
「ウィンでドレッドノイドに攻撃!」
良平はフィールドに浮かぶ戦艦を痛烈に指さした。
指示を受けたウィンは一気に吶喊していく。
蒼翠の風霊使いウィン
攻:1850
No.27弩級戦艦ドレッドノイド
守:1000
ドレッドノイドは船体全域に大きなシールドを張り巡らせて攻撃をしのぐ。
これによりエクシーズユニットは2つから1つに。
ここのせは効果宣言した。
「ドレッドノイドは素材を取り除けば戦闘では壊されねぇ!」
「それなら追撃! コルトウィングでドレッドノイドに攻撃!」
幻獣機コルトウィング
攻:1600
No.27弩級戦艦ドレッドノイド
守:1000
再びシールドを張るドレッドノイド。
今度はシールドは力なく消えていった。
これによりエクシーズユニットは喪失した。
良平の追撃は終わらない。
「まだだ! メガラプター! ドレッドノイドに攻撃!」
幻獣機メガラプター
攻:1900
No.27弩級戦艦ドレッドノイド
守:1000
ドレッドノイドは対空砲を乱射するも叶わず、メガラプターの攻撃により爆炎を上げた。
「----・・-・・・-・-・-・--・-……!」
沈む手前、モールス信号のような音を発する。
しかし成す術はなくブクブクと海の底へと沈んでしまった。
「ぐっ……ドレッドノイド……!」
ここのせのフィールドのエース級モンスターたちの一切がこの海に沈んでしまった。
敵艦撃沈を見届けた良平のモンスターたちは自軍フィールドへと引き返していく。
「……メイン2!」
ーメインフェイズ2ー
良平はダメ押しとばかりに手を振り抜き、オーバーレイネットワークを呼び出した。
「レベル7のメガラプターとコルトウィングでオーバーレイ!」
☆7×☆7=★7
「ーー飛び立て、願いを乗せた鉄の翼! エクシーズ召喚! 回せぇ! 幻獣機ドラゴサック!!」
幻獣機ドラゴサック
攻:2600 風 機械族 ランク7
満を持して現れる幻獣機のエースモンスター。
轟音を上げてフィールド上空を旋回する。
「ドラゴサックの効果発動! 素材を使って、幻獣機トークンを2体特殊召喚!」
ドラゴサックはクルクルとロール回転し幻獣機トークンを呼び出していく。
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
幻獣機トークン
守:0 風 機械族 星3
「そしてドラゴサックのもう一つの効果発動! 幻獣機トークンをリリースして、フィールドのカード、掃射特攻を破壊!」
幻獣機トークンをミサイルへと変換しドラゴサックはそれを射出する。
それは発動中の掃射特攻を粉砕した。
「……!」
「……俺はこれでターンエンドだ!」
ーエンドフェイズー
日和田良平
LP:3200
手札0
伏せ1
フィールド:
幻獣機トークン
幻獣機トークン
幻獣機ドラゴサック
蒼翠の風霊使いウィン
能勢 心
LP:3800
手札0
伏せ0
フィールド:
なし
フィールドの状況を見つめながら亜美は黙って腕を組んだ。
戦いの行方がたとえどうなろうと見届けるという意思を表すように。
ードローフェイズー
「お、オレのターン……!」
最早息も絶え絶えな状況でここのせはデッキからカードを引き込んだ。
手札はたった1枚。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
「……ッ! 墓地の星遺物-星杯の効果発動! こいつを除外して、デッキから星遺物カードを手札に加える! オレは星遺物の胎動を手札に加えるぜ!」
VFDの制約を受けて発動できなかった星遺物-星杯の効果により手札は2枚。
しかしここのせは悔しそうな顔でカードをスロットに差し込んだ。
「……そのままセットしてターンエンドだ!」
ーエンドフェイズー
ここのせ
LP:3900
手札1
伏せ1
ードローフェイズー
「オレのターン!」
良平はカードを引き一瞥する。
使用する必要はないとみてすぐに顔をここのせに向ける。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
「……」
「……」
両者しばし睨み合い。
しかしすぐに良平が声を上げた。
「……バトル!」
「来るか……!」
ーバトルフェイズー
「蒼翠の風霊使いウィンでここのせにダイレクトアタック!」
蒼翠の風霊使いウィン
攻:1850
迫りくるモンスターの攻撃。
ここのせはカードの発動ボタンを押し込んだ。
「リバースカードオープン! 星遺物の胎動!!」
《星遺物の胎動》
速攻魔法
「手札のレベル9モンスターを特殊召喚する!」
たった1枚の防御札。
ここのせの手に残る唯一のカード。
しかし。
良平も素早くカードを発動させた。
「やらせない! こちらもリバースカードオープン! 天威無双の拳!」
《天威無双の拳》
カウンター罠
「なっ……!?」
chain1 星遺物の胎導
chain2 天威無双の拳
「俺のフィールドに効果モンスター以外のモンスターが存在する場合、あらゆるカードの効果を無効にする!」
半透明な拳がカードから抜き出るようにしてここのせに向かう。
そして殴りつけるようにして発動していた星遺物の胎導を粉々に破壊してしまった。
「……ッ!!」
打つ手のなし。
ここのせは目を見開いて迫りくるモンスターを見た。
「……!」
蒼翠の風霊使いウィン
攻:1850
ウィンは魔法杖を振り下ろし、ここのせにたたきつけた。
「ぐぉぁあ!!」
能勢 心
LP:3900→2050
痛烈に減るライフポイント。
良平は最後の攻撃を指示した。
「行け! ドラゴサック! ここのせにダイレクトアタック!!」
ドラゴサックはエンジンをふかし飛翔する。
「……くっ……ッぅ……!」
ここのせにできることはない。
ただ悔しさに食いしばるだけ。
幻獣機ドラゴサック
攻:2600
ドラゴサックの銃弾が雨のように降り注ぎ、ここのせの身体を撃ち抜いてしまった。
ダダダダダダダダダッ
「……ぐぉぁっ!!」
能勢 心
LP:2050→0
ビィィィ。
無機質なブザーが鳴り響き、ここのせのデュエルディスクはloseと表示された。
ソリッドビジョンは止まり、モンスターたちが消えていく。
夜風が吹き、二人の間に砂が舞った。
「……」
良平はただその場に立ったままここのせを見た。
「……ぐっ……」
ここのせは唇を噛み、拳を握りしめた。
「……ッ!!」
精一杯歯を食いしばり、拳を握りしめ。
それでも、相手に一撃も与えられなかった自分が悔しくて悔しくて。
溢れそうな涙を抑えるためにここのせは思わず顔を上に向けた。
そうして目に飛びこんできたのは満天の星空だった。
「……遠いな……」
思わずここのせはつぶやいた。
「……ここのせ……」
何を言うべきかわからず良平はただ名を呼ぶ。
「……オレの負けだ。さすがだぜ、良平」
「……」
憑き物が取れたような顔のここのせに良平は目を伏せた。
ざっ足音がして、そちらを見ると亜美が近づいてきていた。
「……ここのせ。アンタの中にあったモヤモヤは晴れた?」
「……どうだろうなぁ。まぁでも、今のデュエルでハッキリしたかもしれねぇな……」
「そう。なら約束よ。アンタが抱えてること、アタシ達に聞かせて」
「……」
一瞬、言葉に詰まる。
しかしすぐにここのせは口を開けた。
「……オレは今まで、ヒーロー部として、いや、チームHEROのデュエリストとしてデュエルをしてきた」
言うとここのせはディスクにセットしてあるデッキ見つめる。
「お前らと間宮と恵と。共に隣で戦って、信じらんねぇくらい勝ち上がって。すげぇ楽しかった。だけど、勝ち上がっていく中でどんどん見えてくるようになったんだ。オレ自身の実力がな」
「……」
「そんな時、ふと見たお前らの背中がーーー」
眼を閉じると脳裏に過る。
『ヒーローはどんな逆境だってひっくり返すのよ! 見てなさい、ここのせ!』
『誰も追いつけない程ーー速く!』
二人の姿。
「ーーひどく遠く見えた」
じっとりとかいた汗が首筋を伝っていく。
「隣にいたと思ってたお前らが、ずっとずっと遠くにいた。でも、考えてみりゃ当たり前だったんだ。オレはずっと、運命力がないから仕方ねぇって自分に言い訳して、弱い自分を見て見ぬふりをしてきた」
「……」
ここのせの絞り出すような言葉を亜美はただ黙って聞いていた。
「お前らがオレのデッキを拾ってくれたあの日。星遺物カードを手に入れたあの日。オレは一歩踏み出した。その一歩で。たったその一歩で、オレは満足しちまってたんだ」
街はしんと静まりかえっており、眠そうな街灯がちらちらと揺れる。
空一面は黒いペンキをひっくり返したようで、その上に薄らと星が瞬いている。
「実力もねぇ努力もしてねぇ、そんなどうしようもなく弱い自分が、今はもう許せなくなっちまった」
「……」
「なんとか前に進まなきゃいけない。でも、どうしていいかわからねぇ。それでむしゃくしゃしちまってよ」
そこまで言うとここのせはバツが悪そうに頭をガシガシと掻いた。
亜美は組んでいた腕をほどくと右手を腰に当あてる。
「……ここのところアンタが浮かない顔してたのはそういうことだったのね」
「……まぁ、そういうこった」
「……それで、アンタはどうするの?」
「……」
ここのせは言葉に詰まる。
急かすことなく亜美はここのせの目を見つめ続けた。
意を決したようにここのせは口を開く。
「……諦めるーー」
「……」
「ーーわけにはいかねぇ。今、死ぬほど悔しい。でも諦めたら死んでるのと一緒だ。オレの心は、まだ死んじゃいないぜ」
顔を上げてここのせはまっすぐに言った。
その言葉に良平も亜美も目を見開いた。
ここのせはそんな二人を尻目に胸に手を当てる。
「今のデュエルで死ぬほど悔しい思いをしたんだ。だったらもうそいつをバネにガムシャラに進むしかねぇ。……幸い、ちょっとしたヒントまでたどり着いたしな」
「ヒント?」と首をかしげる良平。
「ああ。星遺物カードについてのヒントだ」
「どういうこと?」
亜美は怪訝な顔でここのせの顔を見る。
ここのせはその目線を返して言う。
「オレと同じ星遺物の使い手から星遺物カードについてのヒントを教わったんだ」
「!! ーーそれってチームディスティニーの?」
「おう。そいつ曰く星遺物カードには、創星神の力が宿ってるらしい」
ここのせの言葉に良平は顎に手を当てて声を漏らした。
「創星神……。星の力が宿ってるって噂だったけど……」
「オレも全部を信じていいのかは疑っちゃいるが、他にヒントがねぇからな。そこから色々調べて、その星遺物ーー創星神にまつわる場所を見つけた」
確信めいた顔でここのせは良平と、そして亜美を見た。
亜美は真剣な顔でここのせに問う。
「……そこに、行ってみるのね?」
「それが、オレの最後の希望だ。もしかしたらそこに何かがあるかもしれねぇ。何も、ないかもしれねぇ。迷ってたが、こんな悔しいなら行かなきゃ後悔するぜ」
「……そう。わかったわ。……アンタの気持ち、確かに見届けた。でもね、ここのせ」
そこで言葉を切って亜美はここのせに向けて歩いてくる。
ここのせは怪訝な顔で歩み寄る亜美を見た。
「あ?」
コツンッ。
不意にここのせの額に軽めの衝撃。
亜美の拳だった。
「でっ……! な、何しやがんだ!」
「……アンタが間違えてたなら、アタシは正さないわけにはいかない」
「間違い……?」
「アンタ、自分のこと弱いとか足手まといだとか思ってるみたいだけど、それは間違いよ」
「……気休めの世辞はいらねぇ。今のデュエルでオレは何も……」
「バカね。そんな単純なもんじゃないわ。アンタの強さはーー」
ドンッ。
再び衝撃。
今度はここのせの胸。
亜美の拳がここのせの胸をどんと叩いていた。
「ーーここでしょ」
「……!」
胸からじんと何か伝わるように。
血流なのか、それ以外かが全身を駆け巡っていく。
その感覚に戸惑っていると今度は良平が声をかけた。
「ここのせの悩みは、俺達が気安く踏みいっていいことじゃないのはわかってるつもりだよ。でも、これだけは知っておいてほしい」
「……?」
「今のデュエル、確かに俺が勝った。でもここのせはそれで諦めたりしなかった。本気で悔しがって、それでも諦めずに立ち上がろうとしてる。そんな、そんなデュエリストが、弱いわけ、ないんだよ」
「良平……」
「……俺は、そんなここのせの強さを心の底から尊敬してるんだ」
「……」
風がここのせの背中を撫で上げ髪の毛を揺らす。
二人の言葉が鼻の奥を刺激した。
でも。
それでも。
ここのせは拳を握った。
「……オレは……」
「……」
「……」
「ーーまぁ!」
降りそうになった沈黙を亜美が一段明るい声で遮った。
その様子にここのせは顔を上げる。
「……?」
「アンタのことだから、アンタ自身がアンタのことを認めてあげられない限り、自分を許せないんでしょ」
「……」
図星だった。
だがたとえ強がりだったとしても。
譲れない想いでもあった。
亜美は力強い笑みを浮かべ、ここのせの目を見つめた。
「だったら、見つけてきなさい。アンタ自身の強さを」
「……おう。……祭乃木、良平。オレは必ずお前らに追いついてみせるぜ」
「ふふん! アタシは、そう簡単に負けるつもりはないわよ!」
「はっ、なんでぇそりゃ」
焚きつけた割に強気な言葉に思わずここのせは笑ってしまう。
つられて良平もそして亜美も。
ひとしきりしたところで良平が言う。
「それで、その場所ってのはどこにあるの?」
「あ? ……あー、えーっと、い、岩手県……」
急にしどろもどろに答えるここのせに亜美は目を吊り上げた。
「は?」
「だから! 岩手県!」
「はぁ!?」
聞いていた良平も後ろ頭を掻いてしまう。
「 と、遠いなぁ……」
そんな二人の反応にここのせは恥ずかしくなってそっぽを向いた。
しかし亜美はずいと顔を寄せ、さらに聞く。
「いつ行くのよ?」
「……明日」
「明日ぁ!? はぁ……。アンタはもぅ……」
頭でも痛くなったように亜美は自分のこめかみを抑えつけた。
そんな様子にここのせは声を上げる。
「な、なんでぇそのため息は! だから尚更悩んでたんじゃねぇか!」
「それで、いつまでかかんのよ?」
「わからねぇ」
「アンタねぇ……」
「し、仕方ねぇだろ!」
亜美のあきれ顔にここのせは少し顔を赤くして腕を組んだ。
良平は困り顔でここのせを見る。
「明日って、平日じゃないか。学校もあるし、それに大会だって……」
「自分の都合だ、自分で何とかしてやらぁ。大会は……」
と言ったところで亜美が口をはさむ。
「『オレがいなくたって』なんて言ったらぶっ飛ばすわよ」
「なっ……」
「ここのせ」
亜美は静かに首に掛けてたものを外し、片手に持つ。
「これ、持っていきなさい」
それをヒュッと下手投げでここのせに放り投げた。
ひもと先端に四角いものが付いているのが見える。
「……ああ?」
ここのせはキャッチすると一瞥し、すぐに目を見開いた。
「お、おい! これお前の選手票じゃねぇか!!」
「学校に関しては、アタシ達が何とか誤魔化してあげる。その代わり約束して。大会の前までに、必ず戻ってきなさい」
「……オレが戻らなきゃ、お前も出れねぇってか?」
「そうよ! ……いい? ここのせ。アタシ達が何のために戦ってるのか。もちろん、ヒーロー部を学校に認めさせるって目的はあるけど、一度デュエルが始まったらそんなのは二の次」
亜美は胸に手を当てて訴えかえる。
「アタシが勝ちたいって思うのは、そこに良平が、ゆきが、恵が、そしてーーーアンタがいるからよ」
「……!」
「忘れないで。ヒーロー部は誰かが欠けたらヒーロー部じゃないのよ」
亜美の目の奥に映る自分がそこに立っている。
ここのせは大げさに肩をすくめて言った。
「……わぁーったよ! そいつで手を打つぜ。必ず、大会までに戻ってきてやらぁ」
「ん! よろしい」
ここのせの返事に亜美はニッと笑った。
[翌朝 童実野駅]
電車は10両編成でホームへと滑り込んできた。
一息つくようにエアーを吐き出して、自動ドアを開ける。
ここのせは小さなザックを背負って一歩踏み出した。
振り向いて見るとそこには見慣れた街。
これから出発する街。
(……たかだか数日離れるだけだってのに、感慨に浸っちまうな)
電車は再び音を立ててドアが閉める。
やがてインバーターが唸り声をあげて電車が動きだしていく。
見慣れた街が少しずつ離れていってしまう。
(……)
なんとなく流れていく街を眺めていると遠くに童実野第二高校が見えた。
まだスピードが乗り切っていない電車が徐々に速度をあげていく。
踏切の音が聞こえて、ふとそばを見つめてここのせは息を呑んだ。
「っ……!」
窓の外。
踏切の向こう側。
4人の人影。
全員制服を着ている。
亜美が腕組みして立っていて。
良平が日差しを手で遮ってる。
ゆきはにこにこと両手を振っていて。
恵は直立不動のままじっと見つめていた。
「……アイツら……」
それは一瞬で。
それでもここのせの目には永遠で。
(……オレは、相変わらずカッコつかねぇなぁ)
彼らの姿にひどく喜んでいる自分がいた。
(……こりゃ頑張らねぇと帰ってこれないぜ)
ここのせは思わず腰のデッキを触る。
空は快晴で日差しが強い。
そんな街を電車は速度を上げて走り去っていった。
■今回の禁止カード
・真竜皇V.F.D
これを執筆した時にはすでに禁止が発表されていました。
ただストーリーに関わるカードだったためしばらく登場させていました。
今後少しずつフェードアウトしていくのでご容赦ください……。
小説形式について 地の文やテキスト量
-
読みやすい(テキスト量が妥当)
-
前の方が読みやすい
-
地の文が長い
-
誰が喋っているかわかりにくい