遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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■注意書き(前回に引き続き)
・OCGの背景ストーリーを下敷きしたストーリーが展開されます。
・ただしOCGの背景ストーリーとは全く別のストーリーに捻じ曲げています。
・「OCGではそんな設定はないというもの」「OCGのストーリーの敵味方関係がねじ曲がっている」などやりたい放題やってます。
従いましてこれから展開する「神話」はまさしく本作の「神話」という形だと認識していただければ幸いです。



第34話 「星巡り」中編

 

辺りは無窮の星々が煌めき、されど周囲は心地よい暗さが身を包む。

ここは星の狭間。

どこでもない彼岸と此岸の間の場所。

星遺物-星杯が輝いて、その光の中からここのせは歩いて出てきた。

 

 

「……」

 

「おかえりなさい。いかがでしたか?」

 

詩人が相変わらず嘘みたいな糸目の笑顔で言うので、ここのせは肩をすくめてやる。

 

「……信じらねぇくらい負けまくった」

 

「それはそれは」

 

「これで、いい、のか……?」

 

「さぁどうでしょう。何事もスパッと決まる、というわけにはいかんのが世の泣きどころ。ま、結果はどうあれ旅の途中。次に参りましょう」

 

「……」

 

 

………

……

 

次に歩いていくと、そこには巨大な三ツ又の槍のような遺物があった。

 

「……見たことねぇ星遺物だ」

 

ここのせはポツリと呟いて見上げる。

カップ状の遺物が星杯ならばこれはまさに星槍。

再びアコースティックギターが鳴り、詩人は語り出した。

 

「ーーかつての世に数多の種族あり。清風のガスタ、紅蓮のラヴァル、聖光のセイクリッド、渓谷のドラグニティ、深淵のリチュア……」

 

星槍から漏れ出すように誰かの記憶のような映像が見える。

 

「ーーTierraを封印した創星神sophia。かの神は生命への干渉を嫌い、祭殿へと身を隠しました。世界から隠されたその場所で破壊と創造の役割を担いました」

 

神の樹に宿るセフィロトとクリフォト。

創造と破壊。

樹の根から世界の端まで。

ここのせは息を飲む。

詩人は謳う。

 

「世界は魂をぶつけ合う聖戦ーーディアハによる諍いと平和を繰り返しました。時に種族が滅び、時に生まれ、また滅び。輪廻転生を繰り返し、世界は安定していたのです」

 

詩人の言葉に聞こえる聞き慣れない単語。

それをここのせは復唱する。

 

「ディアハ……」

 

「しかし安定の陰で陰謀と策略が渦巻いていました。様々な儀式を得意としていた深淵のリチュアが邪悪なる儀式に手を染めたのです」

 

「邪悪なる儀式……?」

 

「それは打倒された破壊神ーーその破壊の力を手に入れるための儀式でした」

 

「……」

 

「破壊神の力はsophiaによって守られておりました。しかし邪悪な儀式もまた加速的に精度を上げ、数々の歪な化け物を呼び出しました。そして様々な種族にその牙を向けたのでした」

 

炎。

殺意。

悲鳴。

目の前のイメージが脳に直接響いた。

 

「瞬く間にバランスを崩し世界は荒廃し始めました。そんな最中、邪悪なるリチュアの中に、自らの種族の行いを良しとせず、離反する者が現れたのです。儀水鏡を操り運命を観る者とその配下たち。彼らは、暴走するリチュアの企みを阻止すべく、創星神sophiaの祭壇に向かいました」

 

「運命を観る者……」

 

「運命を観る者は、神に未来を告げました。このままでは世界は崩壊し、その荒廃した世界に絶望した創星神自身が世界を破壊してしまうと」

 

悲しみ。

哀憐。

焦燥。

目の前の鼓動が胸に直接響く。

 

 

「創星神sophiaは、自身が自らが宿す破壊の力の干渉を受けていることに気付いており、その未来を回避すべく運命を観る者を巫女として側においたのです」

 

神が俯き、巫女が見上げる。

そんなイメージが脳裏を過ぎる。

 

「巫女が観た未来を変えるべく、創星神sophiaは、10の輝石に分けるはずだった創星の力を8つにわけ、代わりに呪いをかけることで力を制御しました。そして巫女とその配下は、sophiaを守るために氷の結界を貼ったのでした」

 

再びアコースティックギターの音が響いて語りが終わる。

 

「ーー星槍の章、これにて」

 

ここのせは目線を詩人に移す。

 

「ディアハってのは……?」

 

「古から行われる聖戦ですよ、精霊の魂を行使して行われる言わば儀式ですね。精霊達は己の、古代エジプトでは石版に込められた魂を、そして現代では一枚の札を」

 

「じゃあディアハは、デュエルってことかよ……!」

 

「順序が逆転ですね。ディアハを現代ではデュエルという形で行われている」

 

「……神話だとしてもぶっ飛んだ話だな」

 

「虚像の神話なら、ですがね。……さぁ、次は君の番だ」

 

「……」

 

先の星杯と同じ。

ここのせは息を大きく吸い込み、深く吐き出した。

そして手を星遺物に差し向ける。

応えるように星の槍は眩い光を解き放った。

 

 

………………

………

 

「……」

 

ーー星明かりの精霊 破滅の力、呼び起こせむー

 

(光に包まれながら、幻のようなそれを見た)

 

(星遺物に宿る破壊の力が文明と種族を破壊する。支配を破壊し、邪悪を破壊し、正義を破壊し、全てを壊す)

 

(心に直接響いてくる。まるで花火のように。その高揚も後悔も)

 

ー繰り返してはいけないー

ーそれ故の呪いー

ーそれ故の呪いー

ーそれ故の星巡りー

 

…………

……

 

ーーー[星槍]ーーーー

 

……

………

海の中に沈むような感覚が突如消え、再び閃光が目を焼いた。

 

「……うっ」

 

思わず手で遮り、慣れてきた頃にここのせは目を開ける。

視界の先にはビル群。

遠くの看板にはKCの文字。

間違いない。

ネオ童実野シティ 中央街である。

 

「ここは……ネオ童実野シティ……?」

 

「きゃぁぁぁぁぁ!!」

 

突如聞こえた悲鳴。

ここのせは反射的に声の方を振り向く。

見るとそこに時空の歪み。

そして機械の化け物がーーストックホルムで襲ってきた化け物が中央のコアを真っ赤にして機構を振り上げていた。

 

「プログラムを実行。C:¥tierra¥qliphoth.exe を起動中」

 

「ーーーなっ!?」

 

化け物の前には子供。

 

「ひぃ……」

 

子供はへたり込んで成す術なく化け物を見上げていた。

 

「くそったれがっ……!」

 

ここのせは思わず駆け出して子供の前に立った。

どうするかは考えていない。

ただ感情的に行動していた。

 

「てめぇの相手はオレだ!! お前はさっさと逃げろ!」

 

「う、うわぁぁ!」

 

子供は何とか立ち上がると這う這うの体で逃げていく。

化け物はギュルンと生物感の無い動きでここのせ向いた。

 

「ッ……!」

 

その視線に貫かれた瞬間、ここのせは一瞬身体を震わせた。

ガラスに射抜かれた足の傷がずきりと痛む。

 

(くそっ! ビビッてる場合かよ!!)

 

なんとか自分を振るい立たせると左腕のデュエルディスクを展開。

手札を5枚引き込み、そのうちの1枚をメインモンスターゾーンに叩きつけた。

 

「巨大戦艦ブラスターキャノンコアを特殊召喚!!」

 

巨大戦艦ブラスターキャノンコア

攻:??? ?? ??? ?

 

射影機に照らされたブラスターキャノンコアは、しかし半透明でとても実体があるようには見えない。

しかも表記にノイズがかかり、数値が見えない。

機械の化け物は、鋭利な身体を振り回した。

 

「敵性個体を認識???排除プログラ??を実行??」

 

攻撃はブラスターキャノンコアをすり抜ける。

ビビビッと半透明のブラスターキャノンコアはノイズが走りやがて消えてしまった。

ソリッドビジョンで投影されただけのモンスターに成す術はない。

 

「くっ……!! 実体化しねぇ……! やっぱりダメなのか……!?」

 

ここのせは叫ぶ。

己の無力に。

刹那。

 

ーーーードクンッ

 

「ぐっ……!?」

 

強烈な鼓動。

目をかっ開き胸抑える。

 

ーーードクンッ……ドクンッ……

 

凄まじい心音。

全身が無理して血を回しているように感じる。

と同時に全身に目には見えないエネルギーのようなものが取り巻いて、地響きのような音を出していた。

 

「ぐっ……な、なんだこれ……!?」

 

ズズズズズズズズズ……。

 

心音から地響きに。

鼓動から脈動に。

エネルギーが身体を突き刺すようにここのせの中に入っていく。

 

「力が……わき出てきやがる……!?」ググッ

 

ズズズズズズズズズ……。

さらにさらに。

エネルギーに満たされていく。

 

「いや違う……! 湧いてきてるんじゃない……! これは明らかにオレのものじゃない力だ……!!」

 

思わず声を上げるここのせ。

それを尻目に機械の化け物は身体中心につけられているコアにエネルギーを溜め込んでいく。

 

「??個体?消??ログラムを実行します」

 

「グッ!!」

 

ここのせは顔を上げた。

その眼は真っ赤に染まっていた。

 

「ッ!! ォオォオォオォオォオォオォオォオォオッ!!!」

 

雄叫び。

自分のものとは思えぬ怒号。

それと同時にカードを発動させていた。

 

《星遺物の胎導》

速攻魔法

 

消えていたブラスターキャノンコアは再び活力を取り戻し、星の力が機体を取り巻く。

やがて呼応するように光を放った。

 

星遺物の守護龍メロダーク

攻:--? ?? ???

 

「グガァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

雷撃壊獣サンダーザキング

攻:--? ?? ???

 

「グギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」

 

星の光を纏ったモンスターが呼び出され、ここのせの前で咆哮した。

止まらぬ。

止まらぬ。

ここのせは右手の平を前に突き出し、力の限り叫んだ。

 

「ォオァァァァァ!!」

 

3体のモンスターが贄となる。

星が呼ぶ。

星が降る。

星が揺れる。

 

←☆9 + ↓☆9 + →☆9 =??? ??

 

凄まじい光。

目の前が焼き切れたかと思うような。

光が晴れた先には。

 

?????「ーーーーーー」

攻:--- -- -- -- --

 

ノイズだらけだ。

電子の嵐のように歪む。

正体は見えぬ。

ただ重圧と神格は重々しく降りかかってきた。

 

「ハァッハァッ!」

 

息を切らしながら呼び出したモンスターを見上げる。

 

(なんだあれ……? ノイズだらけでほとんど見えねぇ……!)

 

しかし直感でわかる。

アレと自分は繋がっている。

 

「アレはオレのシモベダッ!! 今ならヤレる!!スベてをブッ壊してヤル!!!!」

 

自分の濁った声。

自分がどうなっているかはもう見えぬ。

ただ目の前ヲ破壊デキレバ!!

 

?????「ーーーーーー」

攻:--- -- -- -- --

 

応えるように輝く。

まるで全ての母の光のように。

まるで全ての父の闇のように。

"ソレ"は一際光輝くと、空間を歪ませるような衝撃波を出した

 

 

ーーー無音。

 

一瞬の静寂。

いや違う。

轟音だ。

 

「謨オ諤ァ蛟倶ス薙r隱崎ュ倥?よ賜髯、繝励Ο繧ー繝ゥ繝?繧貞ョ溯。後?」

 

目の前の化け物が理解不能な言語を撒き散らしながら破砕さしていく。

ガラスが弾け飛ぶ。

アスファルトが捲れ上がる。

ビルが捩れる。

空が揺れる。

 

ーーー……シュゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ。

 

ものの数秒。

たった一瞬だ。

 

「……!」

 

目の前の化け物は空間ごと焼き払われていた。

 

「は」

 

「はははは!! やった! やったぞ!! オレだって戦えるんだ!!」

 

昂る感情。

ここのせは歓喜とともに振り向いた。

 

「ーーーえ」

 

目の前には。

破壊されたネオ童実野シティスタジアム。

 

破壊された童実野二高。

 

破壊されたマンション。

 

瓦礫の下から死体の手。

 

「……な」

 

残骸。

残骸残骸。

 

「……なんだよこれ」

 

声が掠れる。

 

「なんだよこれ!!!」

 

目を歪ませてここのせは叫んだ。

周りからは異臭。

あるいは灰の匂い。

 

「うぅ……」

 

「助け……」

 

うめき声が辺りから聞こえる。

ここのせは首を振り、目を見開いて言う。

 

「ーーーオレが……オレがやったっていうのか……!?」

 

フラフラと後退るここのせ。

その右足をがっと誰かの手に掴まれた。

 

「!?」

 

「どォして……」

 

女か、男か。

それすらわからない声が。

責めるように。

 

「ひぃっ……!」

 

思わず振り払うとバシャッと液体が跳ねる音がした。

ここのせは頭を抱え、しゃがみ込んだ。

目の前を遮るように。

 

「ちがう……!! こんなはずじゃなかった……!! オレは……! オレは……」

 

それでも消えぬ異臭とうめき。

 

「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

 

…………

……

 

「ハッ……!!!」

 

気がつくとここのせは星の槍の前に立っていた。

周りには星々。

 

「ハァッ……! ハァッ……!」

 

思わずここのせはへたり込んでしまった。

 

「今、のは……」

 

「星遺物の呪い」

 

答えたのは詩人だった。

ここのせの背後に彼はいた。

 

「星遺物を継ぐ者の覚悟を問う試練。君にはどう映りましたか」

 

「……まるで悪夢だった。安易に力に頼って、馬鹿にみたいに高揚して。最後にはめちゃくちゃにしちまう……」

 

「くくっ」

 

「オレが手にしようとしてる力ってのは、こんな……」

 

自分の両手を見る。

今はもうあの力はないらしい。

たが確実にあの力は目の前にある。

詩人は言った。

 

「一枚の紙にも裏表。どんなものにだって側面はあるものです」

 

「……」

 

「さぁ、どうしますか? 星遺物に宿る創星の力。それは君の手に余るものかもしれない」

 

「……」

 

「それでも続けますか?」

 

「……」

 

「それともこの星巡りの旅を、ここで辞めにしますか?」

 

「……」

 

詩人の声は淡々としている。

続けることもやめることも、どちらも期待していないような。

ここのせは座り込んだまま自問する。

 

(オレは……なんのために……誰のために力が欲しいんだ……)

 

何度も何度も。

 

(こんな危険な力に手を伸ばしてまで……)

 

何度も何度も。

 

(いっそ諦めた方が……)

 

何度も何度も。

 

 

 

『アンタは、それでいいの?』

 

 

 

 

「……!」

 

祭乃木の声が聞こえた気がした。

聞き慣れた声。

心を突き動かす声。

思い出すは古き記憶。

はじまりの日の記憶。

 

(あの日オレは力を願った。でも手に入ったのは、ただの力じゃなかった)

 

祭乃木の声がまた。

 

『アンタの強さはーー』

 

 

(そうだ。オレの強さはーー)

 

ここのせはすくりと立ち上がった。

その姿に詩人は声を漏らす。

 

「ほう」

 

「……オレは見届けなきゃいけない。この力がどんな力なのか、もっともっと知らなきゃいけない。その上で、いらないってんなら。その時に初めて膝を折るぜ」

 

周りを漂う星々を見回す。

遠くて近い満点の宙。

 

「ーーだけどそれまでは、前に進む」

 

決意は決まった。

もう恐れなくていい。

 

「旅を続けようぜ。次に連れて行ってくれ」

 

「くくっ、お安い御用で」

 

………

……

 

次の遺物はまるで冠。

ならば名は星遺物-星冠。

アコースティックギターが鳴り詩人は謳う。

 

「ーー星遺物を巡る聖戦あり」

 

再び投影された現実が目の前に現れた。

 

「創星神sophiaと運命の巫女とその配下。祭壇の守護として氷結界、星遺物の守護としてジェムナイト、配下たちはそれぞれそう名乗りました」

 

「氷結界にジェムナイト……? テーマデッキにもなってるあれ、なのか……?」

 

ここのせの疑問に詩人は答えない。

代わりに語る。

 

「そして巫女と一部の配下は脅威に備え、リチュアから持ち出した儀水鏡を使った新たな力を身につけました。かつての世界にいた種族の力をその身に宿す影霊衣の力を」

 

「ネクロスの、力……」

 

「一方、邪悪なるリチュアは星遺物に宿る力を奪うべく、邪悪な儀式の傍らで星遺物にかけられた呪いを読み解こうとしました」

 

いかにも邪悪なモンスターたちが次々と。

その姿は青い炎を纏っていた。

 

「そして星遺物にかけられた呪いを掻い潜る方法を見つけたのです。それはどの種族にも属さぬ力無き者であること、無垢なる魂を持つ者であることでした」

 

「力無き者……!」

 

「それこそが、神の移し身になる者、力を受け継ぐ者ーー即ち星遺物を継ぐ者」

 

名がここのせの魂を揺らした。

詩人は続ける。

 

「邪悪なるリチュアは、自らの手ではこの呪いを突破することはできませんでした。それゆえに、彼らは更なる深淵の呪術を用いて、名もなき影の人形を生み出しました」

 

まるで操り人形のようなものが映る。

詩人は言う。

 

「それは神の移し身となる影人形ーー影依(シャドール)と呼ばれました」

 

「シャドール……!?」

 

その名には聞き覚えがある。

 

(平畑が使っていたあの見たことないカード……。関係がある、のか……?)

 

「ーーー星冠の章これにて」

 

ここのせの思考を遮るように詩人はアコースティックギターを鳴らした。

 

「積もる話もありますでしょうが、君は君の旅を。さぁ」

 

「……」

 

ここのせは星の冠に手を伸ばす。

 

………………

………

 

また海の中のような感覚。

落ちるような。

沈むような。

 

「……」

 

ーー星明かりの乙女 慈愛の心持ちて 全てを護らんー

 

(光に包まれながら、幻のようなそれを見た)

 

(星遺物に宿る力を正しく使い、大切なものを守ろうとした乙女がいた。全ては届かず、花のように儚く散った)

 

(心に直接響いてくる。まるで花火のように。その願いも想いも)

 

ー繰り返してはいけないー

ーそれ故の呪いー

ーそれ故の呪いー

ーそれ故の星巡りー

 

…………

……

 

ーーー[星冠]ーーーー

 

……

 

目の前は真っ暗だった。

ただ目の前には巨大な何かがいた。

ノイズが走っていて姿は見えない。

 

「な、なんだ……これ……」

 

「……」

 

ーーこの力が無ければと何度願ったでしょう

 

声が聞こえる。

人ならざる者の声。それでいて女性のような綺麗な声。

 

ーー神がいなければと何度願ったでしょう

 

ーー嗚呼、世界が荒廃する

 

ーー再生しなくては

 

ーー全てを壊し、全てを創り

 

ーー再生しなくては

 

「……!」

 

気がつくとここのせは廃墟の中に立っていた。

 

「なっ……」

 

ボロボロになったダイダロスブリッジ

シティとサテライトを繋ぐ橋。

 

「ネオ童実野シティ、なのか……?」

 

しかしここのせは怪訝な顔を崩さない。

ネオ童実野シティではあるが、何か違う。

知らない街だ。

知らない街になっている。

 

「ーーシンクロ召喚!」

 

誰かの声がした。

見たことないシンクロモンスターが現れて吠えた。

 

対峙しているのはーー機械兵の化け物。

 

「あれは……あの化け物とは違う……」

 

さっき自分を襲ってきたものではない。

別の形の機械兵だった。

身体の中央にインフィニティを表す緑色の空間がある。

機械兵の化け物はその緑の空間を光らせるとシンクロモンスターを吸収してしまった。

 

「モンスターが取り込まれた……!?」

 

 

機械兵の化け物はまだ他にも沢山いて。

空を埋め尽くしていて。

街を破壊していた。

 

「なんでーーこんなことにーー」

 

ーー創星の力は……

 

…………

 

また世界が暗転した。

もう街はない。

代わりに闇がある。

ここのせの目の前に靄がかかった人影が立ちはだかった。

それはガシャンッと音を立ててデュエルディスクを展開した。

 

「な、なんだてめぇ……」

 

見知らぬデュエリスト

LP:4000 手札5

 

「なっ……!」

 

見知らぬデュエリストは威圧するようにディスクを差し向ける。

 

「やる気ってことかよ……!」

 

まるで逃げ道塞ぐ結界が周りを取り囲む。

 

「なんだかわからねぇけど、やってやろうじゃねぇか!」

 

ここのせは腰からデッキ取り出しセットする。

手札を5枚引き込む。

 

「……!」

 

1だけ枚真っ白なカードがある。

見知らぬカード。

 

「これは……」

 

カードを手に取る。

刹那、耳鳴りを伴う強烈な光がここのせを包んだ。

 

「うぉっ……!!」

 

突如、激流のように様々な記憶が頭を駆け巡る。

記憶といっても自分のものではない。

誰かの記憶。

 

(沢山のイメージが頭に入ってきやがる……!)

 

思わず頭を抑えるここのせ。

 

(破壊衝動に、大切なものを失った絶望、星を守る使命、欲望と希望と……)

 

知らないはずなのに。

胸が張り裂けそうな感情すら蘇る。

 

(……これがこのカードの可能性なのか……!?)

 

 

「……ッ」

 

流れが過ぎ去ると頭痛が引いていく。

ただ胸を揺らした激情だけは今も尾を引いていた。

 

(創星の力……。多分これまでも沢山の星遺物を継ぐ者がいたんだ)

 

彼らもこの力を使って戦ってきたんだろう。

だが、この力は結局、目の前の敵を倒すための力にすぎない。

 

(そんな力を使ってまで。何のために。何故戦うんだ)

 

ここのせは自分に問う。

 

(オレはデュエリストだ。相手に勝ちたいのは当然なのかもしれない。それでも……向き合わなきゃいけない。オレは何のためにデュエルをして、何故勝ちたいんだ)

 

疑問が浮き彫りになる。

 

(きっと、その先でこの力は待っているんだ)

 

 

…………

……

 

「……」

 

ここのせは一歩進む。

目の前には詩人がいてあとは星々が散りばめられていた。

背後には星の冠。

 

「……なぁ詩人さんよ」

 

「なんです?」

 

「星遺物の力ーー創星神の力ってのは一体なんなんだろうな」

 

「随分と抽象的ですね。でもそうですね、言わば刃とも言えるでしょう」

 

「刃?」

 

「剣にすればものを切り裂き、鋏にすればものを形取る。しかし、役割そのものは変わりません」

 

「……」

 

「それがディアハならば、力をどう取り込むのかはデュエリスト次第、なのでしょう」

 

「……馬鹿と鋏は使いようってか」

 

「その通り。では続きを参りましょう」

 

………

……

 

次の遺物はまるで櫃。

ならば名は星遺物-星櫃

アコースティックギターが鳴り詩人は謳う。

 

「ーー聖戦、此れ即ち荒廃なり」

 

再びイメージが宙をかける。

 

「リチュアにより呼び出された邪悪なるモンスターとシャドールによる侵攻。これにより氷結界が破られ、ついにシャドールは星遺物に取りつきました」

 

射影されたイメージの中。

紫色で両手から光の糸を出しているモンスターがいた。

 

(あの紫色のモンスター……!あの時の……?)

 

ここのせと祭乃木が化け物に襲われた時に平畑が呼び出したモンスターによく似ていた。

詩人は謡う。

 

「しかし、シャドールは星遺物の呪いにより機能不全に陥りました。そして突如、リチュア達に攻撃を仕掛けたのです」

 

場面が変わり戦場になる。

 

「有り得ざるシャドールの謀反に対抗すべくリチュアは、最大にして最悪の禁忌を犯しました。星神樹を伐採し、その力をもう一対の神の移し身となる影依に注ぎこもうとしたのです」

 

場面が変わり神々しい巨大な樹木が映った。

 

「sophiaと巫女達はこれを防ぐことはできませんでした。そうしてリチュアはもう1体の神の移し身たる影依を使い、神星樹に契りを繋げることで邪悪なる儀式を行ったのです」

 

また場面が変わる。

 

「しかし神星樹はこれを許さず、機械の神兵を起動させました。それらは神星樹の防衛装置でした。機械兵たちの前にリチュアとリチュア側のシャドールは瞬く間に駆逐されました」

 

様々な形の機械の化け物に襲われ散り散りになっていく。

 

「ところが機械兵達はそれだけでなく他の生命体をも駆逐しはじめました。機械兵は星神樹の中に封じられたTierraの破壊の力に汚染されていたのです」

 

機械の化け物が無辜の民を襲っている。

 

「sophiaの命令も受け付けず、暴走状態に陥った機械兵によって世界は全滅の危機に瀕しました」

 

世界が崩壊する。

世界が荒廃する。

詩人は続けた。

 

「一方、sophiaも自身に宿る破壊の力による汚染に気付いておりました。機械兵の殲滅に乗り出せば、そのまま世界を破壊してしまうと悟ったのです」

 

鏡を持つ巫女ーー運命を観る巫女と巨神が並ぶ。

 

「巫女もまたその運命を読み取り、それを回避するため新たな提言をしました。それは、神星樹の根が届く先に双子星を創ることでした」

 

星が生まれる。

星が輝く。

世界が始まる。

 

「sophiaは、創星の力の一部を巫女に託し、双子星を創り出しました。秩序と守護の為、いくつかの神に双子星を任せ、力を使い果たしたsophiaとその遺物は星の狭間にて眠りにつきました」

 

星が瞬く。

詩人は言う。

 

「神と巫女と一部の種族は、この双子星に移住しました。そして、星を渡れなかった同胞、戦いの記憶、そして故郷の思い出とその歴史を石版に書き残しました」

 

石版が目の前に。

それは無数の記憶。

 

「やがてこの石版は、もう一方の双子星から流れた思念が宿り、精霊の住処となりました」

 

ここのせは自分の腰を触れた。

デッキがそこにある。

 

「そして星を渡った彼らは自らを星の民と名乗り、世界中に散っていったのです。やがて時がながれ、故郷の記憶は薄れていきました。この星が彼らの故郷となり、歴史は消えていったのです」

 

映るはまた戦いの記憶。

 

「彼らは再びディアハを使った争いと平和を繰り返しはじめ、世界は廻っていきました」

 

場面が変わり、社に立つ巫女が映る。

 

「巫女は正しき歴史を残すべく、星遺物の記憶を遺したのです。やがてそれは星遺物の力を宿し、無垢なる魂を持つ者を求めて世界中に散っていきました。ーーー星櫃の章これにて」

 

締め括るようにアコースティックギターが鳴る。

暫しの沈黙。

それからここのせが声を絞り出した。

 

「……星遺物カードは星の力が宿る、とは聞いてたけど……。まさか……こんな……」

 

「星遺物カードだけが特殊なのではありませんよ。カードにはそれぞれ歴史があり、意義があり、そこにある理由がある。ただ、星遺物カードだけが運命力では操ることができないだけ」

 

「それを操る力を手に入れるための儀式が、この星巡りってことなんだな」

 

「もちろん君が受け継ぐ力は微々たるものでしょう。それでも人間には余る力であることも事実」

 

「……はは、随分遠くまで来たもんだ」

 

「……さて、能瀬くん。星巡りの旅はもう折り返し。ここから先は君の物語だ」

 

詩人は星遺物を見渡した。

変わらず星々は輝いている。

聞くところによると星の輝きは遠い過去のものだとか。

 

「君が望むものは一体なんなのか、その答えがそこで待っている」

 

詩人の目が真っ直ぐにここのせを見つめる。

 

「……オレが望むもの、か。これまでずっと漠然としてきた。この旅で蹴りをつけなきゃならねぇ」

 

記憶は記憶。

だが自分は記憶なんかじゃない。

今を選び過去を作り未来を歩んでいく。

 

「……さぁ、いくぜ!!」

 

………………

………

 

 

ーー星明かりの翼竜 翼に呑まれ光見失わんー

 

(光に包まれながら、幻のようなそれを見た)

 

(主人を、その仲間を、ただ悲しませたくないだけだった。暖かいその日常をただ壊したくないだけだった。でも、手に入れた力は自分を見失うほどだった)

 

(心に直接響いてくる。まるで花火のように。その無念も思い出も)

 

ー繰り返してはいけないー

ーそれ故の呪いー

ーそれ故の呪いー

ーそれ故の星巡りー

 

…………

……

 

ーーー[星櫃]ーーーー

 

……

 

真っ白な空間だった。

 

「……」

 

ぽつりと自分だけが立っている。

不意に熱を感じて腰のケースに触れた。

デッキ取り出してみる。

 

(オレのデッキ……。オレのカードたち……)

 

不意に白い空間が光りここのせを包む。

 

「……うっ……」

 

光が晴れると目の前の景色が変わっていた。

飛行機の展示品。

エンジンの展示品。

 

(ここは……博物館……?)

 

あたりを見回す。

確かに昔行ったことがある。

 

「ここのせ!」

 

甲高い声。

聞き覚えはあるものの妙に高い声。

 

「……ん?」

 

振り向いてみる。

赤みのある髪をポニーテールに結った少女がこちらに向かって走っていた。

否、少女というより幼女だ。

女児と言ってもいい。

 

「おまたせ!」

 

「祭乃木!? ちっさ!?」

 

目の前の幼女ーー幼い頃の祭乃木亜美が走ってくる。

そして自分をすり抜けて行った。

見ると自分の身体が透けていた。

 

「え?」

 

振り向いてみると幼い祭乃木が2人の少年ーー否男児の前で立ち止まる。

見ると祭乃木と同じくらい幼くなった日和田良平と自分ーー能瀬心が立っていた。

 

「どーだった?」

 

祭乃木が聞くと幼いここのせが力なく首を振った。

 

「だめだ……。オレのはこのとおりだ」

 

ピラッと見せたのはハズレの飛行機紹介カード。

すぐさま祭乃木は良平を見た。

 

「りょーへー! アンタは?」

 

「えっと、閃刀起動エンゲージっていうのが当たったよ」

 

「お、やるじゃない! アタシは、これ!」

 

見せたのは青いリンクモンスターーー閃刀姫-シズクだった。

 

「はい、ここのせ!」

 

カード2枚を笑顔で差し出す祭乃木。

ここのせはバツが悪そうに言う。

 

「でも、悪いぜ……」

 

「なにいってるの! アンタのデッキが強くなるのよ! アタシたちにとってもいいことじゃない!」

 

当たり前のように言う祭乃木に良平は頷く。

 

「うん。それに、デッキ作るの手伝うって約束したしね」

 

2人の言葉にここのせはなんだか恥ずかしくなって笑う。

 

「……へへっ、じゃありがたくいただくぜ! あとで返せっても遅いぜ?」

 

「言わないわよ! でもまだまだ足りないわね。もう一周するわよ! ついてきなさい!」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

3人はまた駆け出す。

赤いポニーテールを先頭に。

 

「君たちねぇ……。何回目だと思ってるんだい」

 

館長のおじさんが苦笑いで3人を見下ろした。

 

「え、えっと2回くらいかしら?」

 

祭乃木はポニーテールの先を前に持ってきて撫でながら目を逸らす。

そこに良平が耳打ちした。

 

「いや3回目だよ……」

 

「……」

 

ここのせはややバツの悪い顔を浮かべた。

 

「何回も来てくれるのはありがたいけど、たくさん記念カードを持ってかれちゃうと困るよ」

 

館長のおじさんが眉を八の字にして言うので祭乃木は勢いよく頭をさげる。

 

「ごめんなさい!! でも、どうしてもひつよーなの!!」

 

「実はここのせが……」

 

と良平がかくかくしかじかとおじさんに伝える。

体質のこと。

これまでのこと。

 

「うーん……。事情はわかったけどねぇ……」

 

「おねがいします!」

 

「ちゃんと入場料は払いますから!」

 

2人が頭を下げてくれた。

それが申し訳なくて。

居た堪れなくて。

でも嬉しくて。

幼いここのせは覚悟を決めて頭を下げた。

 

「お願いします! オレは……オレは……!!」

 

必死な3人に館長は頬をかいた。

 

「じゃ、じゃあ、あと1回だけ……」

 

「2回!!」

 

すぐさま祭乃木は顔をあげて2本指を立てた。

 

「ええ!?」

 

「お願いお願いお願い!! その代わり、ここのお手伝いするから!!」

 

「俺もやります!」

 

「お、オレだって!」

 

「………はぁぁぁぁぁ。もう、特別だよ? じゃあ、その代わり、ちょっとしたお手伝いを頼むからね」

 

「やった!! ありがとう!! おじさん!!」

 

祭乃木は跳ねておじさんの手を握った。

おじさんは苦笑いながらも快く招いてくれた。

 

「よし! アンタたち、ついてきなさい!!」

 

「「おう!」」

 

「こらー! 館内ははしったらいかーん!!」

 

 

走り去っていく3人。

それをここのせは遠くから見ていた。

 

(……そうだ)

 

…………

……

 

場所が変わり気がつくと学校の教室いた。

童実野二高じゃない。

これは中学の教室だ。

 

「ここのせ」

 

と良平の声。

さっきまでの男児の声から幾分低くなっていた。

見ると学ランの制服を来た良平が同じ制服をきた中学生のここのせに話しかけていた。

中学生のここのせは机に座って雑誌を眺めていた。

 

「あ?」

 

雑誌から顔上げて良平を見る。

 

「来週の土日、空いてる?」

 

「あー……」

 

チラッと手元の雑誌を見る。

横浜に巨大展示!

バゲットホイールエクスカベーター 初来日!

と書いてある。

それはギネスレベルの超巨大削岩機であり、それをモデルにしたカードも用意されているらしい。

中学生のここのせは答える。

 

「来週は……微妙だな。なんかあんのか?」

 

「そっか。……実は今度、なんか凄い機械の展示があるみたいでさ。そこのイベントでデュエル大会やるんだって」

 

「これのことか?」

 

雑誌をとんとんとやってやる。

 

「あ、なんだ、知ってたんだ。じゃあ一緒に……」

 

と話していると

ガラガラバンッと教室のドアが開く。

見るとシャツを着崩した中学生の祭乃木亜美が雑誌を片手にこちらを見ていた。

 

「アンタたち!! 来週の土日は横浜いくわよ!! 空けときなさい!!」

 

一瞬の沈黙。

それから

「……ぷっ」と良平が吹き出した。

つられてここのせも笑う。

 

「ははははははっ!」

 

「あははははっ!」

 

そんな二人に祭乃木は眉を釣り上げた。

 

「な、何笑ってんのよぉ!!」

 

 

……

 

土曜日。

三台の自転車が坂道を降っていく。

私服姿の祭乃木を先頭に3人は自転車をかっ飛ばしていた。

 

「いっくわよー!!」

 

差が開いていくので良平が叫ぶ。

 

「祭乃木ぃ! 飛ばしすぎだよ!」

 

中学生のここのせも言ってやる。

 

「バテてもしらねぇぞ!!」

 

「誰に言ってんのよ!!」

 

シャッと小気味の良い音とともに自転車が遠のいていく。

それをここのせは見つめていた。

 

(……忘れるはずもない。駆け抜けたあの日々を)

 

…………

 

今度は童実野第二高校の廊下だ。

自分ではない自分が歩いているのが見えた。

 

「ここのせさん!」

 

鈴の鳴るような声。

振り向くと制服姿の間宮ゆきが立っていた。

 

「お、間宮。なんだ?」

 

「先日、カードをたくさん頂いたお礼です! どうぞ!」

 

間宮が差し出したのはカードだった。

いくつか有用なカードがある。

目の前のここのせは目を見開いた。

 

「え? いいのか? 間宮だってカードまだまだ足りてないだろ?」

 

「いいんです! それにこの子たちはわたしよりここのせさんの方がうまく使えると思います!」

「へへ、じゃ、ありがたく使わせてもらうぜ!」

 

受け取ると間宮はニコニコと人懐っこい笑みを浮かべた。

くすぐったくて暖かい。

それをここのせは見ていた。

 

(オレは……)

 

…………

今度は恵の部屋。

 

「……ここのせ……」

 

目の前に立つ無表情なツインテール。

恵が綺麗な顔を真っ直ぐに向けて呼んだ。

それを目の前の自分が応える。

 

「おう」

 

「……これを……」

 

カードを差し出してきた。

いくつかのレアカード。

 

「あ? なんでぇこりゃ?」

 

「……チーム戦をシミュレートした。このカードを使用することで勝率向上する可能性が高い……」

 

「お前、こんなことまで……。よし! んじゃ、さっそく使ってみるぜ! 相手してくれ!」

 

「……ん……」

 

…………

 

それから再び何もない空間に戻ってきた。

ここのせの手にはデッキ。

 

「オレのデッキは、オレの力なんて一つも入っちゃいないと思ってた」

 

いくつもの思い出を載せたただ一つのデッキ。

 

「実際そうだ。それが悔しかった!!」

 

手が白くなるほど拳を握る。

 

「でも……!」

 

胸の奥から湧き出るこれは一体なにか。

わからない。

わからないが確かに強い力。

 

「でも今はそれが……こんなにも……温かい……!あいつらがいたから……オレは……!」

1人では決して作れなかった。

1人では何も成せなかった。

 

「……そうか、単純なことだったんだ」

 

『デュエルは一人でやらなきゃいけないものじゃないわ!!』

 

遠い過去、祭乃木に言われた言葉。

 

「祭乃木、お前の言葉の本当の意味が今ようやくわかった。オレが勝ちたいと思うのは。力が欲しいって思うのはーーーー」

 

間違いない。

己の魂が叫ぶ。

 

「ーーアイツらと一緒に戦いたいからだ……! アイツらがくれたこの力と一緒に……!! そうだ、それがーーオレの本当の強さだ……!」

 

圧倒的な強さじゃない。

独りよがりの力じゃない。

目の前から足音がした。

見るとそこにら。

祭乃木の後ろ姿。

良平の後ろ姿。

間宮の後ろ姿。

恵の後ろ姿。

 

「……!」

 

ここのせはその背中を追いかけて前に進む。

 

 

 

ーーー[星盾]ーーーー

 

………

……

 

「ッ……!」

 

そこは今までとは逆。

真っ暗な空間だ。

やがて茫と遠くに光が見えた。

 

「……!」

 

光のそばに駆け寄ると光はさらに強くなっていく。

 

「これは……」

手を伸ばしかけてここのせは気配を感じて振り向いた。

強烈な悪寒がした。

見ると黒い影が辺りを蔓延っていて。

地面には4人の人影。

人間が倒れている。

 

「みんな!」

 

目が慣れるとその倒れている人物は祭乃木亜美と日和田良平、間宮ゆき、ルイン恵だった。

闇が彼らの身体を半分飲み込んでいる。

 

「くそっ……! なんだよこれ!」

 

叫ぶとほのかに見えた先。

遠くに星遺物-星盾が佇んでいた。

目に入った刹那。

 

ジジッ……ジジジジッ……!

 

頭にノイズが走った記憶が流れ込んできた。

 

ーーどうし…だよ!! どう…てイ…が……!!

 

ーー生温い力な…て意味がない。お前を殺し…更なる力を手に…る!!

 

ーージジッ……ジジッ……

 

「ぐっ……! 頭に響く……!」

 

知らない人々の生々しい会話。

語りかけている。

星の記憶が。

 

「……ッ! 選べっていうのか……!? ……力を得るには、大切なものを切り捨てろってか……!!」

 

悲しみ。

不条理を超えた怒り。

だが。

 

「ッ!! ォォオ!!」

 

振り切るように叫ぶ。

 

「……バカにすんじゃねぇ!! そんなもん、もう答えは出てんだよ!!」

 

星遺物に向けて。

 

「オレがデュエリストでいられたのは!」

 

『ーーアンタはーーアンタはそれでいいの!?』

 

その言葉が始まりだった。

 

「背中を押してくれたやつらがいたからだ!! アイツらがいないならオレはオレじゃない!! あいつらを失ってまで手に入れた力なんてーーーいらない!! 」

 

はっきりと断言した。

 

「そんな独りよがりの力じゃないといけないってんなら!!オレはデュエルをーー諦める!!」

 

 

気付けば腰のデッキケースに手をかけて、ここのせは自分のデッキを引き抜いた。

デッキトップにいたドレッドノイドが目に入る。

 

(……お前を捨てるのは、これで2回目だな。ごめん。許してくれ)

 

「ーーこんなもん!!」

 

ここのせは思いっきり、デッキを投げ捨てた。

バラと散っていくカードたち。

惜しい。

惜しいさ。

胸が張り裂けそうだ。

でもこれでいい。

オレは一人では戦えない。

これで、いいんだ。

 

「みんな!」

 

ここのせは倒れ込んだ全員を抱き抱える。

刹那、カッと閃光が立ち上り目が眩んだ。

 

「うっ……!」

 

徐々に光が収まっていくと倒れていた人影はいなくなり、代わりに光の中からデッキが現れた。

 

「!!」

 

デッキトップにはNo.27弩級戦艦ドレッドノイド。

それは最も誇り高い不沈艦の名だ。

 

「……あの時と、一緒だな」

 

ここのせは確かにデッキ掴み、立ち上がった。

そして前へと歩いていく。

 

 

ーーー[星盾]ーーーー

 

 

どんどんと歩いて行った先はまるで宇宙のようだった。

近くと遠く。

上も下も。

星が瞬いた。

突如。

 

ーーーシュルルルルルルルルルッ

 

何か太い紐状の物が飛んできてここのせの首に巻きついた。

 

「うぉっ……!?」

 

ーーーギュゥウゥウゥウッ

 

一気に締め上げられ、ここのせの身体が浮く。

 

「ゴァッ……!?」

 

息が詰まり必死にもがきながら巻きついた正体を見る。

 

(な、なんだ……!? このミミズみてぇな触手は……!!)

 

蛆虫をいくつも束ねたような気色悪い触手。

伸びた先を見た。

 

「裏切り者ォ……!! 裏切り者ォォ!!」

 

泣くような。

怒るような。

そんな声。

 

「あ……ぁ……!」

 

ここのせは声が出ない。

これ以上はまずい。

触手の先から再び声。

 

「オレは強クなりタカったのに……!! 強クなりタカったのにィィ……!!」

 

知っている声だ。

いや知っているどころではない。

あれはーー。

不意にここのせの身体がカッと光り触手を跳ね飛ばす。

 

「グッ……!」

 

触手の主が苦悶の声をあげて巻きついた触手を緩めた。

 

「おわっ……!?」

 

ドサッと地面に落ちたここのせは痛烈に咳き込んだ。

 

「ゲホッ……ゲホッ……! な、何しやがんだこの……!」

 

顔をあげて見た先。

ここのせは目を見開く。

 

「あ!?」

 

それは左半身が異形になってるデュエリストだった。

左腕はもう人の形を成しておらず気色悪い触手が伸びていた。

 

「……あれは……!?」

 

闇が少し晴れて顔が見えた。

 

「クソがァァァァァ!!」

 

触手の主が叫ぶ。

自分だった。

能瀬心そのものである。

異形に成り果てているものの、確かに。

 

「オレハ、強クなりタイ!!! 理屈じゃねェンだよォォ!!」

 

異形になりかけた顔は歪み、目の前に立つここのせを睨んでいた。

 

「オレが……」

 

ズキンッと痛む。

胸が。

あるいは心が。

もしかしたら魂が。

 

(オレだから……わかる。ここまで旅を続けても心の底にこびりついてる意固地な部分があるんだ。あれをなんとかしねぇ限り、オレはいつかああなる)

 

まるで鏡のようだ。

もしかしたら自分も異形になっているのかもしれない。

 

「……なぁ」

 

とここのせは目の前の化け物のここのせに言った。

 

「あぁ!?」

 

「……オレはお前のこと、わかってるつもりだぜ。まだ認められねぇんだろ」

 

「オレハ……!!」

 

「でもお前も知ってるんだろ。オレを……オレ達を信じてくれたやつを」

 

『アンタの強さはーーここでしょ』

 

どんな姿になっても。

それが能瀬心であるなら、祭乃木の言葉は今も胸に響いているはず。

 

「うるせェ!! うるせェ!!!」

 

化け物のここのせは、まるで聞かん坊のように耳を塞いで首を振った。

ここのせは頷きデュエルディスクを展開させる。

 

「……あぁ、わかってるぜ。理屈じゃねぇ。理屈じゃねぇんだ。だから!! オレとお前、どっちが正しいか!! ここで決着をつける!!」

 

言うと化け物のここのせは左腕の触手を束ねて歪な盾ーー否盤面を作った。

 

「面白ェ!! てめェを倒して、オレハ、力を、手に入レる!!」

 

二人は対峙する。

星と星の狭間で。

 

「「デュエル!!」」

 




◾️次回、星巡り編ラストです。
ごめんなさい!
もう1話ください!

◾️余談
星遺物誕生のストーリーについて。
※本来のストーリーとは世界線が異なるって設定なので実際の遊戯王イラストストーリーと異なります。
※本来のストーリーでは創星の力は10個に分けられてるそうです。

小説形式について 地の文やテキスト量

  • 読みやすい(テキスト量が妥当)
  • 前の方が読みやすい
  • 地の文が長い
  • 誰が喋っているかわかりにくい
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