遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~ 作:レトやま
また読んでくださり本当にありがとうございます。
今回で星遺物編終わりです……!
ーーー[星盾]ーーーー
周りは星々。
その中央に二人の能瀬心が対峙していた。
片方は真なる目をした少年。
もう片方は異形の力を宿した化け物。
「「デュエル!!」」
同時に言う。
同じ声で。
ーメインフェイズー
先攻は"異形のここのせ"だ。
「先攻ハ貰ッた! オレノターン!!」
手札5
うねうねと無数のミミズが密集するような左手の触手にカードを握り、かろうじて人の形を保っている右手で乱暴にカードを抜き取った。
「いクぞ! マジック発動! 儀式の下準備!」
《儀式の下準備》
通常魔法
発動された見慣れないカードにここのせは目を見開く。
「儀式……!?」
「デッキからカード名が記された儀式魔法トその儀式モンスターを手札ニ加える!」
"異形のここのせ"は触手に呑まれるような形で固定されているデッキからカードを引き込んだ。
これで手札は6枚。
「そのマま発動だッ!」
《聖占術の儀式》
儀式魔法
「手札ノレベル9モンスターを生贄ニ捧げ!」
手札のカードが1枚、青い炎に変わっていく。
†レベル9†
フィールドにその炎が広がり、魔法陣を作り出した。
やがて光が溢れ、モンスターが現れる。
「儀式召喚!! 現れロ! 聖占術姫タロットレイ!!」
聖占術姫タロットレイ
攻:2700 光 天使族 星9
「タロットレイ……!」
またしても見慣れないカードにここのせは慄く。
その間に異形のここのせは右手のカードを裏側にフィールドに出していた。
「カードをセット!」
ーエンドフェイズー
「このエンドフェイズ時、タロットレイの効果発動ォ! 手札、墓地に存在するリバースモンスター1体を裏側守備表示で特殊召喚スる!」
「リバースモンスター!?」
予想だにしていなかった相手の動きにここのせはまた驚かされた。
ズズズッと引き摺るような音と共にセットモンスターがフィールドに現れる。
「ターンエンド!」
異形の能瀬心
LP:4000
手札2
伏せ1
フィールド:
聖占術姫タロットレイ
セットモンスター
ードローフェイズー
ターンがめぐる。
ここのせはデッキトップに右手の人差し指と中指をかけて引き抜く。
「オレのターン!」
手札5→6
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
ドローカードを一瞥してから手札に加えると異形の姿をした目の前の自分を見た。
(奴のデッキは、オレのデッキとは全く違ぇみたいだ……)
ミラーマッチではない。
それでも自分だとわかるデッキ。
ここのせは左手の手札からカードを選びスロットに差し込んだ。
「……手札からテラフォーミングを発動!」
《テラフォーミング》
通常魔法
「デッキからフィールド魔法を手札に加えるぜ! そして、そのまま発動!」
《暴走召喚陣》
フィールド魔法
静かな音とともに地面に赤い魔法陣が現れる。
恵が授けてくれたカードだ。
「このカードの発動時、デッキから召喚士アレイスターを手札に加えることができる!」
デッキから自動選出されたカードを抜き取り、相手に見せる。
そしてそれを手札に加えずにフィールドに置いた。
「出てこい!召喚士アレイスター!」
召喚士アレイスター
攻:1000 闇 魔法使い族 星4
「アレイスターの効果発動!」
腕を薙ぎ払い宣言するここのせ。
しかし異形の自分が呼応するように言葉を返した。
「やらせねェ!! タロットレイの効果発動!」
chain1 召喚士アレイスター
chain2 聖占術姫タロットレイ
「タロットレイは、自分の裏側守備モンスターヲリバースでキる!」
フィールドの中央、セットされていたモンスターが光る。
「はっ……! リバースしたところでこっちの効果は……!」
ここのせが言いかけた刹那、ウジュウジュとワーム中の群れがフィールドに湧き出した。
それらはアレイスターに取り付き動きを妨げてしまう。
「なにっ!?」
ズズズッと地響きとともに、鑿岩機のようなワームが地面から這い出てきた。
機怪神エクスクローラー
守:3000 地 昆虫族 星9
「な、なんだそいつは……!!」
「バカが! リバースしたこいつがフィールドに存在する限り、テメェがフィールドで発動したモンスター効果は全て無効化さレる!!」
「く、くそっ……!」
うぞめくワーム達がフィールドを埋め尽くした。
筆舌しがたい凄惨な光景であり、異形の自分の半身がまるでミミズのようになっているのも相まってあまりに悍ましい。
だがここのせは身体で感じる。
星の力を。
(クローラー……! あれがもう一つの可能性か……!)
星遺物の力を受け継いでいるカード群。
だから目の前に立つ異形の自分も間違いなく星遺物を継ぐ者なんだ。
あれに負けてしまえば自分はーー。
ここのせはさらに応戦する。
「……! アレイスター1体をリンクマーカーにセット! 召喚条件は通常召喚された攻撃力1000以下のモンスター1体!」
↘︎召喚士アレイスター =LINK1
カァァァァッ
「転生炎獣アルミラージをリンク召喚!」
転生炎獣アルミラージ
攻:0 炎 サイバース族 LINK1 ↘︎
「さらに手札から閃刀術式-アフターバーナーを発動!」
《閃刀術式-アフターバーナー》
通常魔法
表示されたカードから抜け出すように武装した閃刀姫-カガリが現れる。
かつて亜美や良平と共に手に入れたカード。
「あの化けミミズを焼き尽くせ!!」
半透明のカガリが炎を纏いながら吶喊していく。
しかし異形のここのせは叫びながらセットカードを発動した。
「舐めるなァァ!!」
《星遺物の胎導》
速攻魔法
発動したそのカードは。
自分を支え続けたキーカード。
「なっ!? 胎導……!?」
「エクスクローラーを対象に、デッキカらレベル9モンスター2体を特殊召喚!! こい! メロダーク! イドリース!!」
星遺物の守護龍メロダーク
守:3000 風 ドラゴン族 星9
夢幻転星イドリース
守:2100 闇 天使族 星9
咆哮とともに2体のモンスターがはだかる。
イドリースが紫色のバリアを展開しアフターバーナー跳ね飛ばしてしまった。
「くっ、イドリースの効果で破壊できねぇ……!」
夢幻転星イドリースは場にいるだけでレベル9モンスターの効果破壊を防いでしまう。
異形のここのせが真っ黒に染まった結膜と赤い血のような瞳を向ける。
「諦めロよ」
「ッ!」
「お前の力じゃ突発できねェ」
「……」
展開する前に盤面は制圧されている。
カードも既に2枚消費し、尚且つ召喚権まで使っている。
だがここのせは答えた。
「……今までのオレなら、そうかもしれねぇ」
「あぁ?」
「だけど、今のオレはそんなにヤワじゃないぜ」
「はっ! 運命力もねェ、創星の力も半端にしか受け継いでねェお前に、何ができる!!」
「 ……たしかにオレは決して強くない。一人では戦えない。でも、だからこそ、オレはアイツらと……このデッキと戦っていく……!」
言い放ち、ここのせは手札のカードをメインモンスターゾーンに置く。
「こい! ブラスターキャノンコア!」
巨大戦艦ブラスターキャノンコア
守:3000→2500 地 機械族 星9
円盤状の戦闘艦が現れた瞬間、うぞめくワームが群がっていく。
これによりブラスターキャノンの召喚時の強制効果は不発。
だが構わない。
ここのせは勢いよくカードをスロットに差し込んだ。
「こっちもいくぜ! 速攻魔法、星遺物の胎導!」
《星遺物の胎導》
速攻魔法
切り返しの切り札。
どんなになっても変わらない己のキーカード。
「ブラスターキャノンコアを対象に、デッキから種族属性が異なるレベル9モンスターを2体特殊召喚! 出てこい、サンダー・ザ・キング! ニードヘッグ!」
星遺物の守護龍メロダーク
守:3000→2500 風 ドラゴン族 星9
氷の王ニードヘッグ
守:2600→2100 水 幻竜族 星9
「アルミラージとメロダークをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、モンスター2体!」
現れたモンスターがすぐさまリンクマーカーに飛び込んでいく。
←アルミラージ + ↙︎星遺物の守護龍メロダーク=LINK2
「リンク召喚! 輝け! 星鍵士リイヴ!」
星鍵士リイヴ
攻:2000→1500 光 サイバース族 LINK2←↙︎
「さらにリイヴ1体をリンクマーカーにセット! 召喚条件は、サイバース族モンスター1体!」
→ サイキック族 =LINK1
「セキュアガードナーをリンク召喚!」
セキュアガードナー
攻:1000→500 光 サイバース族 LINK1 →
「今リンク素材となったリイヴの効果発動! このカードがリンク素材になった場合、相手フィールドのカード1枚を選んでデッキに戻す! 吹き飛べ化けミミズ!」
機怪神エクスクローラーはフィールドでの効果は無効化されるが、墓地で発動した効果は無効にできない。
墓地から現れた半透明の星鍵士リイヴが鍵を構えて吶喊していく。
無数のクローラーたちを押しのけエクスクローラーの前まで躍り出ると鍵を振り翳して切り裂いた。
「チッ……!」と異形のここのせが舌打ちする。
だがここのせはそれには目もくれずに展開していく。
「レベル9のブラスターキャノンコアとニードヘッグでオーバーレイ!」
☆9×☆9=★9
「ーー星の開拓! 人理の力は大地を砕く!」
地鳴り。
やがてキャタピラの音と共に巨大な掘削機が唸りをあげた。
「エクシーズ召喚! 起き上がれ! 無限起動アースシェイカー!!」
無限起動アースシェイカー
攻:3200→2700 地 機械族 ランク9
「バトル!」
ーバトルフェイズー
「行け! アースシェイカー! イドリースに攻撃!!」
無限起動アースシェイカー
攻:2700
夢幻転星イドリース
守:2100
アースシェイカーの鑿岩ドリルが夢幻転星イドリースを貫く。
イドリースはどこか妖艶さすら感じさせる悲鳴をあげて粉砕された。
「ぐぅっ……!」
「アースシェイカーは、戦闘破壊したモンスターを素材として取り込むぜ!」
無限起動アースシェイカー
素材2→3
「メイン2!」
ーメインフェイズ2ー
「アースシェイカーの効果発動!! エクシーズユニットを2つ使ってその枚数分相手フィールドのモンスターを破壊する!」
無限起動アースシェイカーは鑿岩機を地面に突き立てる。
地鳴りとともに地面が割れ亀裂が相手に向かっていく。
やがて痛烈に地面が隆起し、異形のここのせのフィールドにいたタロットレイとメロダークを粉々に破砕した。
粉塵が巻き起こり、異形のここのせの髪を揺らす。
「ぐォっ……!?」
「見たかってんだ!」
「野郎……! 破壊されたメロダークの効果発動! 墓地のレベル9モンスター、タロットレイを手札に加エる!」
星の龍が最後の咆哮を残し、異形のここのせは墓地からカードを手札に加える。
ーエンドフェイズー
ここのせ
LP:4000
手札2
フィールド魔法:
暴走召喚陣
フィールド:
無限起動アースシェイカー
セキュアガードナー
ードローフェイズー
「チッ、調子ニ乗ってンじゃねェ! オレのターン!」
異形の自分も負けじとカードを引き込んだ。
これで手札は4枚。
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
「墓地ノ聖占術の儀式を除外シて効果発動ォ!」
《聖占術の儀式》
儀式魔法
「デッキかラ、聖術姫カードヲ手札ニ加える! デッキから占術姫コインノーマをサーチ!さらニ手札かラ星遺物の醒存ヲ発動!」
《星遺物の醒存》
通常魔法
「デッキトップ5枚めクり、その中の星遺物まタはクローラーカードヲ手札に加え、残りヲ墓地に送る!」
デッキから5枚がまるで何かに操られるように抜き取られ、墓地へと沈んでいく。
「オレガ手札ニ加えるのは、星遺物の傀儡!」
「また見たことねぇ星遺物カード……!」
「モンスターヲセット!さらニカードを2枚伏せてターンエンドだ!」
ーエンドフェイズー
化け物ここのせ
LP:4000
手札2
伏せ2
フィールド:
セットモンスター
ードローフェイズー
思いの外、動きが少なくここのせは頭の後ろからじとりと汗をかいた。
それから覆い隠すように声を出す。
「はっ! 大口叩いた割にその程度かよ! オレのターン!」
ースタンバイフェイズー
「この瞬間、トラップ発動ォ! 星遺物の傀儡!」
《星遺物の傀儡》
永続罠
フェイズが移動すると異形のここのせが叫ぶ。
「……!」
「自分フィールドの裏側モンスターヲリバースする!」
操り糸がカードから放たれ裏側のカードがクルンッと裏返る。
「チキチキチキ……」
鎌をつけた線虫のようなモンスターが這いずり出て、高速でフィールドを駆け抜けていく。
クローラー・グリア
守:1500 地 昆虫族 星2
「こいつノリバース効果ハ、墓地のクローラーモンスターヲ呼び寄せる!」
ウジュウジュウジュウジュ……とフィールドが盛り上がりセットモンスターが現れた。
ーメインフェイズー
「場を固めてきやがったか……」
変動したフィールドをここのせはもう一度見つめ直す。
相手のセットカードは1枚と星遺物カードの永続罠。
(そしてフィールドにはクローラー……。どうやらリバースモンスターらしい……。攻撃で反転させたらリバース効果が発動しちまう。無策で飛び込むわけにゃいかねぇな)
状況を整理してドローカードを見つめる。
自分の手札は手元にある2枚とドローカードの3枚。
そのカードは……。
(これは……!!)
目を見開いた。
ここのせはすぐさま自軍のフィールドを見つめ、指示を出した。
「……アースシェイカーの効果発動!エクシーズユニットを使って、フィールドのカード1枚を破壊する! 対象はそのセットモンスターだ!」
「ハッ、ヤらせるかよ! トラップ発動ォ! 星遺物の交心!」
《星遺物の交心》
通常罠
chain1 無限起動アースシェイカー
chain2 星遺物の交心
逆順処理で相手の罠カードが起動する。
「こいつはクローラーが存在するとき、テメェのモンスター効果ニ干渉する罠カード! その効果を表側モンスターノバウンスニ書き換エる!」
「何っ……!?」
アースシェイカーの矛先が強制的に捻じ曲げられ、フィールドのクローラー・グリアに向かう。
「対象が変更された……!?」
クローラー・グリアはまるで嘲笑うようにギチギチと歯を鳴らして跳ね飛んでいく。
「対象はグリアしかいねェ。そしてグリアは、相手ノ効果でフィールドヲ離レた時、デッキかラ2体、新たなクローラーを呼ビ出す!」
「なんだと!?」
「ハハハハハハッ!出テこい蛆虫共!! スパイン、デウスクローラーの2体を裏側で特殊召喚ダァ!」
うぞうぞとフィールドが盛り上がりセットモンスターが新たに展開された。
異形のここのせは新たな壁となるモンスターたちの背後で冷たい目を向ける。
「ハッ! テメェの攻撃なんざ手ニ取るヨウニわかる! テメェの実力ハその程度なンだよ!!」
責めるような。
嘲笑うような。
それでいて悲鳴のような怒号。
ここのせはそれを真正面から受け止めた。
「……オレの力は、な」
「あ?」
「言ったはずだぜ、オレのデッキに眠ってんのはオレの力だけじゃねぇ。みんなの力と、そしてそれを繋ぐ星の力がある!」
「なにィ……」
「見せてやるぜ、オレが掴んだ可能性を! このカードは、同じ縦列にカードが2枚以上ある場合、特殊召喚できる!」
「縦列……? ……ッ……!」
異形のここのせは目の前のフィールドに目をやる。
そこには星遺物の傀儡とセットモンスター。
縦列にカードは2枚。
「来い!! 紫宵の機界騎士!!」
ここのせがカードを掲げると応えるようにカッと光る。
そしてフィールドにその姿を表した。
紫色の光を放つ光の騎士だった。
「ハァァァッ! タァァッ!」
紫宵の機界騎士
攻:2500 光 サイキック族 星8
「ジャックナイツ、だと……!?」
「これがオレの選んだ可能性だ! 紫宵の機界騎士の効果発動!フィールドのジャックナイツモンスターを対象に、そのカードを除外してデッキから新たなジャックナイツを手札に呼び寄せる! 紫宵の機界騎士自身を除外!」
紫宵の機界騎士は頷き飛び上がる。
次元の裂け目が浮かび上がりカードをここのせの手に落とす。
「この効果で、蒼穹の機界騎士を手札に加えるぜ! そして今手札に加えた蒼穹の機界騎士も、同じで条件で特殊召喚できる!」
「フゥゥンッ!」
蒼穹の機界騎士
攻:2000 光 サイキック族 星5
「蒼穹の機界騎士は、特殊召喚時、同じ縦列の相手フィールドのカードの枚数分、デッキからジャックナイツをサーチできる! 今、同じ縦列にはそのセットモンスターと星遺物の傀儡の2枚! よってデッキから宵星の騎士ギルスと紅蓮の機界騎士の2枚を手札に加えるぜ!」
「チッ……」
「来てくれ! 宵星の騎士ギルス!」
宵星の騎士ギルス
攻:1800 闇 機械族 星4
フィールドに金と銀の騎士が現れ槍を構えた。
さらにここのせはカードを1枚持ち、マジックトラップスロットに差し込んだ。
「お前のセットモンスターと同じ楯列にカードをセット! これで楯列2枚! 紅蓮の機界騎士を特殊召喚!」
紅蓮の機界騎士
攻:2300 光 サイキック族 星7
モンスターの大量展開。
フィールドには色とりどりの騎士たちが武器を構えていた。
ここのせのフィールドには
紅蓮の機界騎士
蒼穹の機界騎士
宵星の騎士ギルス
無限起動アースシェイカー
セキュアガードナー
対し異形のここのせのフィールドにはセットモンスターが2体。
盤面は優勢に転じた。
「いくぜ! バトルだ!」
ーバトルフェイズー
「いけ! アースシェイカー! 右側のセットモンスターに攻撃!!」
ここのせの号令にアースシェイカーは削岩機を振り下ろす。
セットモンスターは機怪神デウスクローラー。
その守備力は3000。
アースシェイカーの攻撃力3100には及ばない。
粉塵を巻き上げて機怪神デウスクローラーは粉砕された。
「チィッ! デウスクローラガ破壊されタ時、デッキかラ種族属性が異なるレベル9モンスターを手札に加エる!」
異形のここのせの忌々しそうな声。
だがここのせは止まらない。
「紅蓮の機界騎士で、そのセットモンスターに攻撃だ!」
腕を振り抜くここのせ。
相応するように紅蓮の機界騎士が斧をセットモンスターに振りかざした。
セットモンスターが切り裂かれた瞬間。
機械の虫が這いずり出てきた。
クローラー・スパイン
守:2100 地 昆虫族 星2 リバース
異形のここのせは応戦するように叫ぶ。
「クローラー・スパインのリバース効果発動ォ! フィールドのモンスターヲ1枚破壊スる! 砕け散れ、蒼穹の機界騎士!」
ギチチと歯を鳴らしクローラー・スパインが蒼穹の機界騎士にかみついた。
そのまま食い尽くし破壊してしまった。
だがここのせは止まらない。
「怯むな! 行け、宵星の騎士ギルス、セキュアガードナー!! ダイレクトアタック!!」
セキュアガードナー
攻:1000
宵星の騎士ギルス
攻:1800
「ハァァ!!」
槍を振りかざし、一思いに異形のここのせを貫いた。
「ウォォォォッ!!?」
異形の能勢心
LP:4000→1200
「見たかってんだ! ターンエンド!」
「グッ……グゥッ……!」
ーエンドフェイズー
ここのせ
LP:4000
手札2
伏せ1
フィールド魔法:
紅蓮の機界騎士
蒼穹の機界騎士
宵星の騎士ギルス
無限起動アースシェイカー
ードローフェイズー
「ォ……ォァァァァァァァァァァ!!!」
フェイズが移行したその刹那、まるで地の底から唸るような声で異形のここのせが叫んだ。
同時に凄まじい殺気と衝撃がここのせの服を揺らした。
「なっ……!?」
「ふざケんなふざけンなふざケんなふざけんなふざけんなァァァァァァァァァァ!!」
頭を掻きむしり、血が滴る目でこちらを睨んでくる。
「オレハ強くナッたんだ!!! 誰にも負けねェくらい!!! ゼんブ全部捨テて!!!」
「……!」
「認めねェ認メねェ認めネェェェ!!!! 壊しテやる壊シてやる!!!」
地面を擦るような。
或いは金属を擦るような。
そんな音が響き、闇が異形のここのせに集まっていく。
「何をする気だ……!」
ースタンバイフェイズ→メインフェイズー
「来イ、占術姫コインノーマ!!」
占術姫コインノーマ
攻:800 地 天使族 星3 リバース
「占術姫コインノーマを生贄に、トリアス・ヒエラルキアを特殊召喚!」
現れたコインノーマはすぐさま巨大な手に握りつぶされた。
やがて無機質なモンスターがフィールドに降り立つ。
トリアス・ヒエラルキア
攻:1900 光 天使族 星9
「まだだァァァァァ星遺物の胎動発動ォッ!!」
《星遺物の胎導》
速攻魔法
喉から血の味がしそうな底冷えの声で異形のここのせはカードを操る。
周囲がイオン化したような蒼い電撃が走り、モンスターが2体呼び出された。
星遺物の守護龍メロダーク
攻:2600 風 ドラゴン族 星9
ディザスター・デーモン
攻:2000 闇 悪魔族 星9
―――ズズズズズズズズズズズズ……。
地響きは止まらない。
闇がどんどんと濃く集まっていく。
「なっ……」
「ゥウゥウゥウォォォォォォォォォォォォォッ!!!」
もはや獣。
人理を宿さぬ化け物。
そんな声だった。
やがてフィールドに脈動が走った。
星遺物の守護龍メロダーク、トリアス・ヒエラルキア 、ディザスター・デーモンの3体の足元に古代文字が明滅する。
字は読めない。
だが意味は分かる。
人知を超えた存在を誘う呪詛。
← ☆9 + ↓☆9 + →☆9=????
「グゥゥウゥウォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!」
闇が一気に広がり一瞬視界を奪う。
次に感じたのは重圧。
或いは途方もない無力感。
フィールドのほぼ中央。
ここのせの右手側のEXゾーンを占領して、エネルギー体ともいえる”ソレ”が現れた。
星……デ??ル#a「ーーーー」
攻:3500 3\ 〆」3:^:.8
脳が直視を拒み、デュエルディスクは熱暴走を起こしたかのようにディスプレイにエラー表示。
見ようとしても見えない。
でも見たくなくても見える。
「ぐっ……!!?」
ズシンッと感じるプレッシャーに痛烈な頭痛が走った。
「あれはっ……!! 星遺物の呪いの中で見た……!!」
頭を抑えながらここのせはなんとか”ソレ”を見上げた。
ノイズが酷すぎてモンスターがほとんど見えない。
「ハはははハハハッ!!」と異形の声がする。
「ゼンブ全部ぜんぶぶっ壊しテやるぜ!!」
≪星……デ??ル#a≫が。
点滅する。
膨大なエネルギーが収縮していくのがわかった。
「ッ……!」
ここのせの脳裏にノイズと共にフラッシュバックがよぎった。
それは星遺物の呪いで見た。
破壊されたネオ童実野シティ。
破壊された童実野第二高校。
破壊された人々。
(あれは全てを破壊する力だ……!!)
直観だった。
ここのせは手を伸ばす。
―――――――カッと≪星……デ??ル#a≫が。
「くはハハハはははッ……!! 全部壊しテ……」
―――シュゥゥゥゥッ……
否、収縮し爆発するはずのエネルギーが霧散していく。
「――あ?」
異形は意味が分からないと言わんばかりに顔をしかめた。
―――ジジッ……ジジジジジジッ………
≪星……デ??ル#a≫
は変わらずそこにいた。
ただ、そこに刃を向ける騎士が一人。
紅蓮の機界騎士だ。
斧を両手に握り、エネルギーを貯め込んだコアの部分に刃を滑りこませている。
「!!?」
異形は目を見開いた。
―――ガァンッ
やがて紅蓮の機界騎士は弾かれ、地面を擦るようにしてここのせのフィールドに着地した。
≪星……デ??ル#a≫のエネルギーを完全に霧散させて。
異形は血を流した目でここのせを睨みつけた。
「何故ダァ!! 何故破壊の力ガ発動シネぇ!?」
ここのせは答えない。
その代わりに足元にカードが起き上がった。
《星遺物に眠る深層》
永続罠
「ッ!? それは……!!」
「このカードは、墓地のレベル5以上のモンスターを復活させる永続罠! さらにジャックナイツモンスターがいる縦列のモンスターが発動した効果は無効となる!!」
≪星……デ??ル#a≫が占領する右側のEXゾーン。
その真正面に紅蓮の機界騎士は立っていた。
「その力は使わせない!」
「テメェェェェッ!! 墓地ノ星遺物の交心の効果発動ォ!」
《星遺物の交心》
通常罠
「こいつを除外し、自軍のリンクモンスターのリンク先にクローラーを呼び出す!!」
地面が隆起し虫が≪星……デ??ル#a≫の傍に潜む。
「そシて、星遺物の傀儡ヲ起動!!」
《星遺物の傀儡》
永続罠
「フィールドの裏側モンスターをリバースさセる!! 起きろ! 機怪神デウスクローラー!」
機怪神デウスクローラー
攻:2000 地 昆虫族 星9
ーバトルフェイズー
「いけ! 機怪神デウスクローラーで宵星の騎士ギルスに攻撃!」
機怪神デウスクローラーが猛然と突進し宵星の騎士ギルスを踏み潰す。
「ぐっ!」
だがセキュアガードナーの効果によりダメージはない。
能勢 心
LP4000
まだ異形は止まらない。
「やれ!! デ??ル#a!!」
異形はもはや人ではなくなった手を差し向ける。
≪星……デ??ル#a≫は無機質な光をため込み、一気に解き放つ。
その光は無限起動アースシェイカーを包み込んだ。
一瞬の静寂の後、爆風がここのせを巻いた。
「ぐおぉぉぉぉぉ!!!?」
LP:4000→3600
「ぐ……! くそっ……! よく見えねぇってのに、すげぇ力だ……!」
「くハハはははッ!!」
ーエンドフェイズー
異形の能勢心
LP:2200
手札1
伏せ0
マジックトラップ:
星遺物の傀儡
フィールド:
≪星……デ??ル#a≫
機怪神デウスクローラー
ここのせは軋む頭を無視して見上げ≪星……デ??ル#a≫を見上げた。
まるで星そのもの。
星の器。
或いは超新星。
或いは――神。
(あれを倒さなきゃいけない。そんな気がする。それがきっと――)
ここのせは自分の手札を見つめた。
(恐らくアレに下手な小細工は通用しねぇ……!正面からぶつかるしかない!!)
ードローフェイズー
「オレのターン!」
願いを込めてデッキトップに手をかけた。
これが最後のドローだ。
「ドローッ!!」
万感の思いでここのせはデッキからカードを引き抜く。
「――!!」
引いたカードは―――。
ースタンバイフェイズー
すぐさまここのせはフィールドに目をやる。
「このスタンバイフェイズ時、除外してた紫宵の機界騎士がフィールドに舞い戻る!」
紫宵の機界騎士
攻:2500
紫色の騎士がここのせの目の前に帰還した。
カードの位置はデウスクローラーの前。
ーメインフェイズー
ここのせはカードを握り目の前の異形の自分を真っ直ぐに見つめた。
「オレと“お前"―――いやオレ自身とのデュエル。その幕をここで引くぜ」
「あ?」
「サモンプリーストを召喚!」
召喚僧サモンプリースト
攻:800→守:1600 闇 魔法使い族 星4
「サモンプリーストの効果発動! 手札の魔法カードをコストに、デッキからレベル4モンスターを呼び出す! 出撃だ! 閃刀姫-レイ!」
閃刀姫-レイ
攻:1500 闇 戦士族 星4
現れたのは2体の下級モンスター。
異形の自分は見下すように鼻を鳴らした。
「フンッ、何かト思エば雑魚ばかり並ベやがって」
「取るに足りねぇかもな」とここのせも自嘲する。
しかしここのせは目をそらさずに異形の自分を直視した。
「だがオレはこいつを信じて突き進んできた! これまでも、これからも!レベル4のサモンプリーストと閃刀姫-レイでオーバーレイ!!」
☆4×☆4=★4
オーバーレイネットワークが眼前に渦を巻く。
「――四方を護りし真金の城よ! 暁の水平線に勝利を刻め!!」
聞こえるは潮騒。
響くは汽笛。
やがて黒い海から鋼鉄の船が姿を現す。
「抜錨せよ! No.27 弩級戦艦ドレッドノイド!!」
No.27 弩級戦艦ドレッドノイド
攻:2200 水 機械族 ランク4
旧式戦艦が怒号を上げてここのせの前に港着する。
異形の自分は心底嫌なものを見るように吐き捨てた。
「ハッ!! そんなクズカード!!創星ノ力の前じゃクソの役にも立ちゃしネぇ!!」
「なら試してみるか!! バトル!!」
ーバトルフェイズー
「行くぞ!! ドレッドノイド!! あの創星の力を沈める!!」
「-・・- ・-・・ ・---・ ・-・--」
返事をするようにドレッドノイドが船舶灯をチカチカとさせる。
「迎え撃テェ!!」
異形の自分も負けじと手を振りかざす。
≪星……デ??ル#a≫は無機質な光をほのかに点滅させている。
弩級戦艦ドレッドノイドは最大戦速でフィールドを突き進む。
主砲の仰角を持ち上げて照準を定めていく。
「沈めェェェェェェェェ!!」
異形の自分の怒号と共に≪星……デ??ル#a≫はエネルギーを解き放つ。
ここのせは素早くカードをマジックトラップスロットに差し込んだ。
「やらせねぇぇ!! ーー力を貸してくれ! 機界騎士たち!! 速攻魔法! 星遺物を巡る戦い!!」
《星遺物を巡る戦い》
速攻魔法
「オレのフィールドのモンスター、紅蓮の機界騎士を一時的に除外し、相手モンスターの攻撃力を紅蓮の機界騎士の攻撃力分ダウンさせる!」
「何ィィ!?」
紅蓮の機界騎士が再び宙を舞い、戦斧を両手に構えて振り上げた。
そして≪星……デ??ル#a≫に斬りかかった。
「―――」
星……デ??ル#a
攻:3500→1200
エネルギーが再び霧散し、出力が大幅に下がっていく。
異形の自分は呆気にとられたように目を見開いた。
「バカな……」
「撃ち抜けぇぇぇぇぇぇ!!」
No.27 弩級戦艦ドレッドノイド
攻:2200
ドレッドノイドが主砲弾を放つ。
爆炎を上げて砲弾が飛んでいく。
瞬時に≪星……デ??ル#a≫の中心部を一閃。
≪星……デ??ル#a≫は大きな爆風を放ちながら破砕した。
爆炎は異形の自分すらも飲み込んでしまう。
「ゴァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!??」
異形の能勢心
LP:1200→200
「グッ……!! グゥウゥウゥウゥウゥウッ!!! まダだ!! まダ終わらねェェェッ!!」
「いいや!! 終わりだ!! このバトルフェイズ終了時、ドレッドノイドは新たな姿に進化する!」
弩級戦艦ドレッドノイドが光り輝く。
なんとか阻止しようと藻掻く機怪神デウスクローラーを紫宵の機界騎士がその剣で抑えつけていた。
★4→★10
「―-過去を超え、更なる砲を轟かす!! しかしてそれは超弩級!!」
弩級戦艦ドレッドノイドは進化する。
新たな姿に。
彼方から轟音を響かせて。
「出撃だ!! 超弩級砲塔列車グスタフマックス!!」
超弩級砲塔列車グスタフマックス
攻:3000 地 機械族 ランク10
「グスタフマックス……!!」
異形の自分がつぶやく。
ーメインフェイズ2ー
「グスタフマックスの効果発動!! エクシーズユニットを砲弾にし、相手に砲撃する!!」
超弩級砲塔列車グスタフマックスは巨大な砲塔を旋回させ照準を合わせた。
その砲身は異形の自分を捉えていた。
「80センチ砲、主砲弾!! 食いやがれぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
超弩級砲塔列車グスタフマックスの砲が爆炎を上げた。
弾丸は放物線を描きながら飛んでいく。
そして異形の自分に着弾した。
「ウァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
異形の能勢心
LP:200→0
生暖かい風がここのせの全身を撫でていく。
風が服と髪を靡させていく。
ここのは言った。
「……これがオレの選んだ可能性……。オレ自身の強さだ」
「グッ……! グゥウッ」
ガクンッと異形の自分は膝をついた。
吐き出すように声を漏らす。
「……イヤダ……」
「……?」
「イヤダイヤダイヤダ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だいやだいやだ!!!」
ダンッと異形の自分は地面を拳で殴りつけた。
それは幾度も見てきた――いや幾度も感じてきた感情だった。
「強クなれないなんて嫌だ!!! オレ一人で戦えないなんて嫌だ!!!オレは強クなりタい!!! 誰の手も借りずに強くなりタカった!!!」
黒く染まった目から雫を流す。
ここのはただ黙って異形の自分の前まで歩いた。
「……」
それからしゃがみ込み異形の自分に向けて言う。
「……わかってるぜ。一人で戦えたらどんなにカッコいいだろうな」
「……」
「でもな、それはきっとオレの強さじゃねぇんだ」
「ゥウゥウ……」
「だってオレが強くなりたいのは、傍にいてくれたあいつらと一緒に戦いたいからだ。アイツらのためにオレは強くなりたい。それはオレの弱さでもあるかもしれねぇけど……」
「クソッ……!」
「でもオレはお前をーーオレ自身を否定できない。だってそういうオレがいたからオレはここにいるんだから」
「ゥウゥウ……」
「オレは“オレ”を……弱さも強さも……全部認める。その上でこの力を――星遺物の力を借りる」
「……」
そうここのせが言うと異形の自分はゆっくりと消えていった。
ただ彼がいた場所にカードが1枚だけ残っていた。
「これは……」
カードを拾い上げるとそれは何も書かれていないカードだった。
否、ただのカードではないことはわかる。
星の力を受けた何か。
――星遺物を継ぐ者
――愛しい星の子
不意に聞こえた声。
人ではない。
だが女性の声のような落ち着く声。
「ッ! 声が……」
――来る日のため星の力を
――いつの日かその力で……
それだけ聞こえた。
だがすぐに目の前が真っ白になっていく。
また水に沈むような感覚。
……………
……
…
………………………………………
(……光に包まれながら幻のような歌声を聞いた)
――アンドロメダのくもは
――さかなのおくちのかたち
――おおぐまのあしをきたに
――いつつのばしたところ
――こぐまのひたいのうえは
ー[星鍵]ー
「うっ……」
目を開くといつの間にかここのせはまた星と星の間に居た。
ポロロンッポロロンッ……と音がする。
胡散臭いギターの音。
「――そらのめぐりのめあて」
振り向くとそこには詩人が立っていた。
ここのせは何も言わずに演奏が終わるのを聞いていた。
最後まで伴奏を弾き終え、ギターの振動が自然に止まるまで二人は黙っていた。
音が鳴りやむと詩人がここのせを見つめた。
「……旅の終着点ですね。星巡りはこれにて終点。しかし君の旅はこれからも。いかがでしたか? この旅は」
「……そうさな。散々だったかもな」
「旅とはそういうものですとも。わたしが保証しましょう」
「なんでぇそりゃ。……でも、たしかに得るものがあった」
「ほう?」
「……あんたがこの旅の前に言ったことがあったろ。何故デュエルをするのか、何の為なのか、誰の為なのか」
「ええ、ええ」
「――その答えが見えた気がするぜ」
「くっくっ、それは僥倖」
愉快そうに詩人は笑う。
その刹那。
背後から強い光を感じた。
眼の端に少し焼き付くほど。
詩人は眉を八の字にするとここのせに向いた。
「……では、名残惜しいですが、この旅の幕を下ろさねばなりませんね。こちらへ……」
「……」
2人はまた歩いていく。
星の狭間を。
波紋が広がり連なってはまた消えていく。
……やがて光を放つ石の鳥居が見えてきた。
行にくぐったあの鳥居。
詩人は足を止めて言う。
「あの先に君の旅の続きが待っています。振り返らず、そのまま歩いておいきなさい」
「……あんたは来ねぇのか?」
「ええ。ここでお別れです」
「……そうかい。あんたとは最高の戦友になれそうだったのに残念だぜ」
「それは光栄ですね」
「結局、あんたについては謎のままだったな。何故星遺物について知ってるのか、何故星ヶ丘まで案内できるのか。聞きてぇことは山ほどあるぜ」
「くっくっ、謎があるほうが魅力的でしょう。なにせわたしの専売特許ですので」
「独占取引法違反で逮捕されてほしいもんだ」
「くっくっ、ご冗談を」
詩人は顎に手を当てて笑った。
それを見てここのせも口の端を上げた。
ここのせは右手を腰に当てて口を開けた。
「……なぁ、最後に一つだけ聞かせてくれよ。それくらいはいいだろ?」
「ええ、なんなりと」
「あんたの名前、教えてくれよ」
「おや、何故に?」
「冥途の―――いや現世の土産ってやつだ」
「それはまた」
「……それで? 教えてくれんのか?」
「ふふ、ここまで旅を共にした友人に名乗らないのは不義理でしょうね」
詩人は言うとギターから手を離した。
それから深くかぶっている帽子を少しだけ上げた。
「わたしは此岸と彼岸を行き来する者。ベアトリーチェを探す者。詩を書き、旅を続ける者。知る者はみなはわたしを、彼岸の旅人ーーダンテと呼びます」
「……ダンテか、いい名前だな」
「それはどうも」
「オレは能瀬心、略してここのせだ。親しいやつらはオレをそう呼ぶんだぜ」
「ほほう」
詩人は満足そうに答えた。
光を放つ石の鳥居が催促するように明滅する。
「さて、そろそろ行くか」
ここのせは鳥居の方に向いた。
「……この旅、楽しかったぜ、ダンテ。じゃあな」
「それは何より。ああ、そうだ。わたしから一つ選別をば」
詩人はゴソゴソと懐に手をやるとカードを1枚取り出して差し出した。
ここのせは受け取ると怪訝な声をだす。
「なんだ? やぶ蛇?」
「藪を続いて蛇を出す。君たちはそうして道を歩んできた。さりとて、どうかお気をつけあれ」
「……なんだかわかんねぇけど、もらっとくぜ」
「ふふ。……次お迎えに行くときは彼岸の旅へお連れしましょう。さらばです。ここのせくん」
「ああ」
しっかりと頷くとここのせは歩き出した。
足音が少しずつ、少しずつ。
波紋から地面を踏む音に代わっていく。
ポロロンッ……。
後ろからギターの音がした。
「――あかいめだまのさそり」
――ひろげたワシのつばさ
――あおいめだまのこいぬ
――ひかりのへびのとぐろ
――オリオンはたかくうたひ
――つゆとしもとをおとす
……………
……
…
………………………………………
[?????]
チュンチュン……チュンチュン……。
鳥の声だ。
スズメなのか、ほかの知らない鳥かはわからない。
「……ん」
ここのせの目がパチリと開く。
起き上がりキョロキョロと辺りを見つめる。
どうやらボロボロの木造建築の中にいるらしい。
「……どこだここ……? カビ臭っ!」
起き上がるとギシギシと音がする。
外に出るとのどかな風と匂いがした。
見渡すとボロボロの社と鳥居があって地面は白砂利だった。
「なんだここ……? ボロボロだけど、神社か……? 山に囲まれてら……」
見知らぬ土地にここのせはポケットに手を入れてスマートフォンを取り出した。
「充電切れてるしよ……」
途方に暮れてしまうがどうしようもない。
ここのせはしかし悲観することなく苦笑いした。
「……ったく、ダンテのやつ、帰りも案内しろってんだ。泣き言言っても仕方ねぇ。気合い入れて帰んぞ」
…………
……
…
[ネオ童実野シティ 童実野第二高校 ヒーロー部部室]
放課後になっていた。
日も傾いて部屋全体がオレンジ色になるころ。
「あれからもう3日経つけど、大丈夫かな……」
不法占拠した部室のソファーで良平は眉を潜めてつぶやいた。
ここのせを送り出してから随分な時間が経った。
連絡も取れない状況である。
「心配ですぅ……」
とゆきが泣きそうな顔で言う。
恵はというと考えこむように机の一点を見つめていた。
部長たる亜美はというと一つだけ用意された部長席に座って腕を組んだ。
「大丈夫よ。アイツは死んでも戻ってくるわ」
そう言った瞬間だった。
ガチャリとドアノブが回る音がした。
「!」
その場にいた全員がドアに目を向けた。
「……!」
その足音に亜美だけがにやりと笑っていた。
中に入ってきたのは少年。
黒い短髪に活発そうなそばかす。
能勢心が片手をあげて言った。
「よう。約束通り試合前に戻ってきたぜ」
「ここのせ!」
思わず立ち上がる良平。
それを差し置いて亜美はつかつかとここのせの前まで歩いていく。
ずいと顔を付かずけてここのせの両目を見つめた。
「おわっ……」
「……」
ジーッと見つめてから亜美はニッと笑った。
「ん!いい面構えになったじゃない」
「お、おぉ」
「……ま、とりあえず。おかえり、ここのせ」
「あぁ。――ただいま、みんな」
ここのせはそう言って小さなザックを置いた。
■あとがき
次回からWSC本戦に戻ります!
■次回予告
寝る前決闘空間第32話
『WSC本戦第4回戦 忍び寄る悪意』
デュエルスタンバイ!