遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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第36話「WSC本戦第4回戦 晴れない空」後編

 

【ネオ童実野シティ 旧サテライトエリア】

 

―――キィィィィィンッ

 

Dホイールのエンジン音が鳴り響く。

一瞬で過ぎていく景色はまるで色と色が混ざり合うかのようである。

ハンドルを握る少女--神川・ノエル・美優は自軍の白いドラゴンーーヴァレルロード・S・ドラゴンに命令を下した。

 

「ーーヴァレルロード・S・ドラゴンでプレイヤーにダイレクトアタック! 迅雷のヴァレルファイア!!」

 

ヴァレルロード・S・ドラゴンは高速でDホイールと並行しながら飛び、口蓋から電撃を吐き出す。

がら空きのフィールドを一直線に弾丸が駆け抜けて前方を走る外国人へと向かっていく。

 

「ファック!!」

 

憎らし気に唾を飛ばすが守るものはない。

ヴァレルロード・S・ドラゴンのエネルギー弾はそのまま外国人を乗せたDホイールに命中。

爆発炎上した。

 

「ohhhhhhhhh!!?」

 

逃亡した外国人

LP:1200→0

 

 

当然、エネルギー弾はソリッドビジョンであり損害はない。

ただしライフポイントが0になったことでDホイールは白い煙を吐き出して強制停止してしまった。

その様子に良平は思わず拳を握る。

 

「よし!!」

 

決闘者本人である美優もウィンクしながら指をパチンと鳴らす。

 

a Peace of cake(楽勝ね)!」

 

風と共に彼女の青い制服がはためいている。

美優もDホイールの速度を緩め、外国人のやや前方で停止した。

良平は身を構え、口を開く。

 

「ーーで、でもこの後どうするんだ!?」

 

「Dont worry!」

 

余裕そうな美優。

数秒後に後方から車が数台止まり、数名の男たちが駆け寄ってきた。

 

「捕まえろ!!」

 

「Oh nooooooooooo!!!」

 

男たちは素早く外国人を取り囲むとDホイールから引き擦り下し地面に押し付ける。

その様子を見届け美優は良平にウィンクして見せた。

 

「ワタシのDホイールを運営スタッフの車がChaseしてくれてたのヨ! これでこの男はCageへGO!」

 

「……よ、よかった……。助かったよ。でも、どうして神川と金がここに……?」

 

「依頼されたの。あの男たちを監視するようにネ」

 

「監視……? なんで神川と金が……?」

 

「ワタシたちだけじゃないワ。チームツンドラ全員とアカデミアの優秀生は全員借り出されてるのよ」

 

「運営に?」

 

「NO! ワタシたちは……」

 

と言いかけたところで、二人に近づく足音に気が付いた。

背後から低い声で二人の会話に割り込んでくる。

 

「彼女達を借り出したのは公正デュエル委員会だ」

 

声に二人は振り返る。

そこに立っていたのは白衣を着た長身の男性だった。

黒いくせ毛に眼鏡をかけていて、白衣の内側は黒いスラックスに灰色のシャツである。

 

「プロフェッサー スミス!」

 

と美優はやや驚いたように目を見開いた。

その姿は見覚えがある。

良平は背中に氷を差し込まれたような気分になった。

 

「あっ……!」

 

白衣を着た眼鏡の男はウィリアム・スミスという名前で、以前デュエルアカデミアに忍び込んだ際に顔を見られた男だった。

スミスはにこりともせずに美優を見下ろす。

 

「ご苦労だったな、神川くん」

 

「……NO problem」

 

「ーーそれと」

 

言うとスミスは顔を良平に向けてくる。

 

「ラーイエローの日和田くん。……ああいや、こう言った方が良いか。チームHEROの日和田良平くん」

 

「ッ……!」

 

心臓が跳ね上がる。

冷や汗が一気に噴き出すのを感じる。

対する美優は不思議そうに首をかしげていた。

 

「ラーイエロー? どういうこと?」

 

美優の言葉に応えずスミスは眼鏡を光らせて続けた。

 

「お前がアカデミアに忍び込んだことはわかっている。告発すればどうなるかな?」

 

(や、やばい……)と良平は若干後退りしてしまう。

逃げ切ったと高を括っていた。

こんな場所で問題になるなんて。

どうなるんだろうと思考と身体が硬直する。

スミスはさらに続けた。

 

「奇跡のチームとやらは目障りだからな。今のウチに失格にさせるのも手か。……いやあの逸材を得るチャンスか……?」

 

「逸材……?」

 

「ああ、こっちの話だ。とにかく、お前も事情を聞く必要がある。同行してもらうぞ」

 

「えっ、いや……」

 

「あぁ、手引きしたツァンにも話を聞かなきゃな」

 

淡々と進んでいく話に良平は口がどもってしまう。

また美優も思わぬ名前が出てオウム返ししてしまった。

 

「ツァンが……?」

 

とにかく抗わないとまずいと良平は口を開く。

 

「ま、待ってください! あれは俺が……」

 

正直言ってどうなる。

なんとかなるまい。

良平はもはやこれまでという思いで口を開く。

だが、そんな思惑を包み込むように流麗な女性の声が後ろから聞こえた。

 

「――それは私が頼んだことだ」

 

聞いたことのある声だ。

良平はもちろん、この街に住む者ならば必ず聞くであろう声。

その場にいた者が全員声の方に顔を向けた。

 

「……あ、貴女は……!?」

 

「く、クイーン……!?」

 

美優も良平も唖然として声を漏らす。

視線の先に立っていたのは黒いコートを靡かせ、金色の長髪を風に遊ばせている女性――クイーンだった。

 

「くっくっ、良い反応だ」

 

その姿にスミスは苦い顔を浮かべると棘を隠そうともしない声を出す。

 

「……これはクイーン殿、遥々ご苦労様ですね。何故こんなところに?」

 

「若きデュエリストに大事があってはならんと思ってな。密かに追走させてもらったよ」

 

親指で後ろを示すクイーン。

そこには黒いスポーツカーが鎮座しており、ガルウィングが空いている。

スミスは小さく舌打ちすると眼鏡を抑えた。

 

「そうですか。それで、そこの学生にアカデミアに忍び込ませたというのは?」

 

「いやいや、すまなかった。少し知りたいことがあった故、そこの彼にアカデミアまで調べにいってくれと私から頼んでいたんだ。クイーンが直々にアカデミアまで行くと大騒ぎになるのでな」

 

言いながらクイーンは歩いて良平の斜め前に立つ。

 

「……ッ」

 

良平の胸は未だ嫌な動悸が響き続けている。

対するスミスはもはや良平は見ておらずクイーンをまっすぐに睨みつけていた。

 

「ほう……。知りたいこと、ね」

 

「うむ。校舎の外観や、様子、それと――」

 

あえてなのか言葉を切り、クイーンはやや間を取ってからスミスを見つめ返す。

 

「――危険な実験をしていないか、などだな」

 

「ッ……心外ですね、クイーン。我々は日々デュエル技術の発展のために研究をしている。妙な言いがかりはやめていただきたい」

 

「くっくっ、これは失礼。とにかくそういうことだ。ここは、このクイーンの……いいや、高決連会長の顔に免じて許してもらえないか?」

 

クイーンの口から出た言葉に思わず良平は顔を上げた。

 

「……高決連、会長……」

 

高校デュエル連盟――通称高決連。

デュエル界を牛耳る公正デュエル委員会と同等クラスの組織である。

以前その連盟に属している高校生チームと対戦しているので存在はなんとなく認識していた。

スミスは眼鏡を抑えて視線を切ると肩をすくめる。

 

「……そうですか。わかりました。次からは正式に許可を得ていただきたい」

 

「肝に銘じよう」

 

「しかし解せないな。ネオ童実野シティは貴女がた高決連の管轄外のはずだ。それもデュエル部がない高校の生徒を何故……?」

 

「管轄外ではない。必要とあれば手を差し伸べるとも」

 

「さようですか。……では、俺は用が済んだんでお暇させてもらいますよ」

 

「後で高決連から正式に詫び状を出そう」

 

「結構ですよ」

 

吐き捨てるように言うとスミスは踵を返し足早に去っていった。

待機していた車の後部座席に乗り込むとすぐに車は動き出した。

 

「ッ……」

 

生きた心地がしない。

良平は胸を抑えて苦々しい息をついた。

全身の冷や汗が止まらない。

そんな様子の良平を尻目に美優はツカツカと目の前まで詰め寄ってくる。

 

「ヘイ! リョーヘイ!!」

 

「うわっ……!」

 

「ツァンがって、どういうこと!? それにどうしてQueenと!? 説明しなさい!!」

 

目を吊り上げて腰に手を当てて顔を覗き込んでくる。

良平は目を泳がせて明後日の方を見た。

 

(さ、祭乃木みたいだ……)

 

何故か赤髪のポニーテールが脳裏をよぎる。

どうしてこうも気の強い女性ばかりが集まるのかと良平は内心どぎまぎしていた。

 

「え、えと……」

 

なんて答えたものか。

どう答えても袋小路な気がする。

さらに詰め寄ってくる美優に、後退りする良平。

若い二人にクイーンは思わず「くっくっ」と笑う。

 

「そう目鯨を立てるものではない。何、私と彼はちょっとした仲なんだ。なあ?」

 

「えぇ……?」

 

クイーンからの助け舟。

だが心当たりのない良平は気の抜けた返事をする。

美優はさらに目を細めてジト目を向ける。

 

「……」

 

「うぅ……」

 

タジタジとする良平の肩をクイーンは叩く。

 

「さていつまでもこんな往来で立ち話は市民に迷惑だ。日和田くん、だったな。チームHEROは試合中だ。スタジアムまでこのクイーンが送ってやろう。乗りたまえ」

 

ガルウィングが開いたままのスポーツカーを指差して言うクイーン。

 

「え、あ、は、はい」

 

渡りに船と良平は頷いて車へと歩を進める。

 

「あ、ちょっと!! Wait!!」

 

置いてけぼりの美優が声を荒げるので、良平は歩きながら顔の前で手を合わせる。

 

「ご、ごめん! 今度ちゃんと話すから!」

 

「〜〜!」

 

ツカツカと再び速足に良平まで肉薄するとさらにズイと顔を良平の目の前まで近づける。

ふわりと香水の香りがした。

 

「明日!! 朝9時半!! 童実野埠頭!!」

 

「えっ」

 

「来なかったらどこまでもChaseするからネ!」

 

ふんと美優は顔をそむけると、怒ってますと言わんばかりの足取りでDホイールまで歩いていく。

エンジンをかけてヘルメットを被ると猛スピードで引き返して行った。

 

「……」

 

残された良平は所在なさげに頭の後ろを掻き上げる。

そんな彼の様子にクイーンは口に手を当てて笑った。

 

「くっくっ、君は女性に敷かれるタイプのようだな」

 

「……あ、あのクイーン、どうして……」

 

「中で話そう。私は有名人でな。外にいるとすぐ囲まれてしまう。乗りなさい」

 

「は、はい!」

 

 

 

【ネオ童実野シティ メモリアルスタジアム】

 

一方、WSC会場。

MCが高らかにマイクを振り上げていた。

 

『フィールドは宇宙戦艦が2隻に支配されている!! kozumoの最上級モンスターは、共通効果により対象にとることはできない! 対しチームHEROのフィールドはガラ空き!! ここからどう持ち直すかァァァ!!?』

 

 

ルナキン・スコット

LP:2000

手札0

フィールド:

kozumo-ダークシミター

kozumo-フォアランナー

 

 

ルイン恵

LP:3800

手札:3

フィールド:

なし

 

ードローフェイズー

 

会場は再び熱気を取り戻し、一挙手一投足に視線を向けている。

恵は表情ひとつ動かさずデッキトップに指を掛けた。

 

「……私のターン……」

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

ドローカードを手札に加えて、別のカードを持ち直してメインモンスターゾーンへ置く。

 

「……ゾンビマスターを召喚……」

 

ゾンビマスター

攻:1800 闇 アンデット族 星4

 

「……効果発動。手札のモンスターカードを1枚墓地に送り、墓地のアンデット族モンスターをフィールドに特殊召喚する……」

 

手札を墓地に送り3枚から2枚へ。

ゾンビマスターは杖を振り上げて紫色の瘴気を吹き出す魔法陣を出してみせる。

 

「……来て……真紅眼の不屍竜……」

 

「グォォオォオォオォオォオッ!!」

 

真紅眼の不屍竜

攻:2400 闇 アンデット族 星7

 

空気を切り裂く咆哮。

魔法陣から腐肉の龍が飛翔し恵を守るように尻尾を巻いて着地した。

 

「……さらに墓地の屍界のバンシーを除外して効果発動……」

 

すぐさまカードを操作する恵。

ルナキンはやや眉を上げて言う。

 

「今コストで墓地に送ったカードか!」

 

ゾンビマスターの効果コストで墓地に送っていたカードだ。

無駄のない動きにルナキンは警戒する。

対する恵は淡々と進行していく。

 

「……このカードは墓地またはフィールドから自身を除外することで、デッキからアンデットワールドを発動できる……」

 

半透明の屍界のバンシーが突如フィールドに現れて、両腕で自身の身体をかき抱く。

やがて地下から地響きと共に毒の水が湧いてきて即座に荒廃した大地を生み出した。

 

《アンデットワールド》

フィールド魔法

 

ドロドロと周囲を蝕みkozumoの戦艦を腐食していく。

 

kozumo-ダークシミター

機械族→アンデット族

 

kozumo-フォアランナー

機械族→アンデット族

 

『で、出たァァァァァァ!! アンデット族の世界! 全てがゾンビとかしてしまう恐ろしいフィールド魔法だァァァ!! この効果により、フィールドと墓地のモンスターは全てアンデット族に変えられてしまうぞォオォオ!!』

 

ワァッと会場が煮えたぎる。

降り注ぐ歓声の最中、ルナキンは苦々しく片目を瞑った。

 

「くっ……! ワタシの宇宙軍が……!」

 

眼前には腐敗したーーしかし誇り高い紅目の竜。

恵は言う。

 

「……真紅眼の不屍竜は、互いのフィールド、墓地のアンデット族モンスターの数×100ポイント攻撃力が上昇する。私のフィールドと墓地には6体、貴方のフィールドと墓地には4体、合計10体のアンデット族モンスターが存在する……」

 

「なんと……!?」

 

真紅眼の不屍竜

攻:2400→3400

 

『なんと!! あっという間にフィールドの最高攻撃力が逆転!! アンデット族の恐ろしい底力だァァァ!!』

 

音割れ手前の声量でマイクに向けて叫ぶMC。

恵はまだ止まらない。

 

「……墓地のマッドマーダーの効果を発動。フィールドのレベル5以上のモンスター、真紅眼の不屍竜のレベルを2つ下げることで、自身を墓地から特殊召喚する……」

 

真紅眼の不屍竜

星7→5

 

マッドマーダー

守:200 闇 アンデット族 星2 チューナー

 

「……レベル4のゾンビマスターにレベル2のマッドマーダーをチューニング……」

 

☆4+☆2=☆6

 

マッドマーダーの発するシンクロリングがゾンビマスターを包み込む。

拓かれた路からは腐食されたドラゴンが現出する。

 

「……イモータル・ドラゴンをシンクロ召喚……」

 

イモータル・ドラゴン

守:2400 闇 アンデット族 星6 チューナー

 

「シンクロチューナー……!」と目を見開くルナキン。

恵は依然として冷静な眼を向けている。

 

「……イモータル・ドラゴンは、メインフェイズにデッキからアンデット族モンスターを墓地に送ることで、自身のレベルをそのモンスターのレベルの差の数値に変動させる効果を持つ。その効果により私はデッキからレベル1、グローアップ・ブルームを墓地に送り、レベルを5に変動させる……」

 

イモータル・ドラゴン

星6→5

 

「……さらに今、墓地に送られたグローアップ・ブルームを除外し、効果発動。デッキよりレベル5以上のアンデット族モンスターを手札に加えることができる。またフィールドゾーンにカードが存在している場合は、そのモンスターを特殊召喚できる……」

 

≪グローアップ・ブルーム≫

効果モンスター

 

ビキビキと音を立てて邪悪な蕾が生えていく。

 

「……死した魂を司る王、願わくば朽ちた世界に統制を……」

 

恵の声に応えるように蕾は黒い胞子を吹く出しながら花が開く。

中からは凄まじい瘴気と共に巨大な骸顔の蛇が嘶いた。

 

「……死霊王ドーハスーラを特殊召喚……」

 

死霊王ドーハスーラ

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

真紅眼の不屍竜

攻:3400→3600

 

『な、なんとなんとォオ!! モンスター0の状態から一気に大展開!! 強力なモンスターを2体呼び出したァァァァァ!!?』

 

怒涛の展開に会場は大きくどよめいていく。

高校生が――それもデュエルアカデミアでさえない高校生が巧みにカードを操っている。

恵フィールドには真紅眼の不屍竜、死霊王ドーハスーライモータル・ドラゴン。

勢力は十分である。

 

「……バトル……」

 

ーバトルフェイズー

 

「……真紅眼の不屍竜で、kozumo-ダークシミターを攻撃……」

 

真紅眼の不屍竜が身体を弓形にしならせて口蓋にエネルギーを溜める。

空気が振動し光の粒が蜃気楼のように揺れていた。

 

「……ダークネクロフレア……」

 

真紅眼の不屍竜

攻:3600

 

kozumo-ダークシミター

攻:3000

 

黒い炎の弾丸が爆風を伴いながらフィールドに一文字を描いていく。

彼我の数値差は600。

ダークシミターの正面にエネルギー弾が着弾し大爆発を引き起こした。

 

 

「Ouch!」

 

ルナキン・スコット

LP:2000→1400

 

『黒い炎が宇宙戦艦を撃墜!! 超過ダメージが入るぞォオ!!』

 

大きなプレーにマイクが唸る。

さらに恵は宣言した。

 

「……アンデット族モンスターが破壊されたことで真紅眼の不屍竜の効果発動する……」

 

「その効果にchain! kozumo-ダークシミターが破壊された場合、自身を除外して、自身よりレベルが低いkozumoをスペシャルサモン!」

 

負けじとルナキンも効果を謳う。

効果と効果の撃ち合い。

 

chain1 真紅眼の不屍竜

 

chain2 kozumo-ダークシミター

 

逆順処理によりダークシミターの効果が先に発動する。

ルナキンはデッキから選出されたカードを場に置いた。

 

「カモン! kozumo-フォアランナー!!」

 

kozumo-フォアランナー

攻:2800 光 機械族→アンデット族 星7

 

現れたモンスターを一瞥すると恵も手を薙ぎ払う。

 

「……真紅眼の不屍竜がフィールドに存在する場合、アンデット族モンスターの戦闘破壊をトリガーに、墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚できる……」

 

「またセメタリーから……!」

 

「……戻って、巨骸竜フェルグラント……」

 

巨骸竜フェルグラント

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

互いにモンスターを呼び合う。

しかもフェイズはバトルフェイズである。

司会はまるで恐竜や隕石でも見るように熱く叫ぶ。

 

『怒涛!!! お互い一歩も譲らない展開!! ターンやフェイズを飛び越えてお互いがモンスターを出しあっているぞォオォオ!!?』

 

[チームHERO側スタンド]

 

観客スタンドでは、童実野二高の生徒たちが手を叩き感性をあげていた。

 

「えー!! すごい!! 立て直した!」

 

「あの子、転校生だよね? やるね!」

 

 

[デュエルフィールド]

 

拍手や歓声が響く中、恵は変わらず仁王立ちのまま言葉を紡ぐ。

 

「……死霊王ドーハスーラでkozumo-フォアランナーに攻撃……」

 

死霊王ドーハスーラ

攻:2800

 

「迎え撃て!! フォアランナー!」

 

kozumo-フォアランナー

攻:2800

 

死霊王ドーハスーラの瘴気の魔弾。

kozumo-フォアランナーの曳光弾。

それらが空中で交差し、互いが被弾し粉々に砕け散った。

ルナキンは言う。

 

「フォアランナーが破壊された場合、自身を除外し後続を呼び込む!! カモン! スリップライダー!」

 

kozumo-スリップライダー

守:800 光 機械族 星5

 

「スリップライダーのエフェクト! フィールドのマジックトラップを破壊!! アンデットワールドを破壊だ!」

 

スリップライダーのレーザー光線が地面を削り取りアンデットワールドは破壊されてしまった。

 

「……」

 

恵は目線だけでフィールドを見据えている。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

恵に負けず劣らずしぶとく展開してくるルナキンに、ここのせは歯痒そうに膝を叩いた。

 

「くそっ、攻めきれねぇ! 次から次へと後続が出てきやがる!」

 

それに、とゆきも眉を八の字にして声を漏らす。

 

「あ、アンデットワールドも破壊されちゃいましたぁ……」

 

要となるフィールド魔法を相手はしっかりと処理してくる。

並のデュエリストならとっくに沈んでいてもおかしくない恵の攻撃にも耐え切った。

亜美は腕を組んで頷いた。

 

「やっぱり強いじゃない……!」

 

[デュエルフィールド]

 

恵はフィールドを見渡し終わると静かに宣言する。

 

「……バトルを終了する……」

 

ーメインフェイズフェイズ2ー

 

「……」

 

恵が自身の手札に目を向けようとしたとき、不意に前方から声がした。

 

「Hey girl!」

 

「……」

 

「ミーのデュエルタクティクスも中々のものだろう? ユーのアンデット達の猛攻を防ぎきった!」

 

「……貴方のデッキの戦略プラン、特に相手ターンでの展開は強力だと分析する……」

 

「それは光栄だね! それとも、ジャパニーズosejiだったりするのかな?」

 

「……私に嘘をつく機能はない。戦術そのものは有効であることは事実……」

 

「ほう!」

 

「……ただし」と区切って恵はさらに真っ直ぐルナキンを見る。

 

「……相手ターンでの展開が可能なのは貴方だけではない……」

 

「what?」

 

恵の発言にやや首を傾げるルナキン。

答える代わりに恵は宣言した。

 

「……レベルが5となっている真紅眼の不屍竜にレベル5となったイモータル・ドラゴンをチューニング……」

 

☆5+☆5=☆10

 

羽根を広げ、恵の切り札ーー真紅眼の不屍竜が咆哮した。

イモータル・ドラゴンが放つ光に包まれながら。

 

「……ーー死して尚も輝く赤き瞳。願わくば朽ちた世界に大いなる安らぎを……」

 

光が高々と。

スタジアムを切り裂き、空をも抜けていく。

恵は右手を振り上げた。

 

「……ーーシンクロ召喚……」

 

光が溶け巨龍が羽根を広げ恵に従うように上を向いて咆哮した。

 

「……掌握せよ、真紅眼の不死竜皇……」

 

「グォォオォオォオォオォオォオォオォオォオ!!!」

 

真紅眼の不死竜皇

攻:2800 闇 アンデット達 星10

 

フィールドを揺らす絶叫。

身体は朽ち果て、しかし眼には確かな真紅。

まるで荒廃した世界すら愛おしむように竜は高々と叫んでいた。

 

『なんだあのモンスターはァァァ!!? ゾンビのようなドラゴンが、新たに進化したぞォオォオ!!?』

 

「ッ!?」

 

ルナキンはタダならぬ力を感じたのか二、三歩後退した。

対し恵は真っ直ぐに目を向けたままカードをスロットに刺す。

 

「……カードを2枚セットし、ターン終了……」

 

ーエンドフェイズー

 

レイン恵

LP:3800

手札1

伏せ1

フィールド:

真紅眼の不死竜皇

巨骸竜フェルグラント

 

ードローフェイズー

 

互い一進一退。

フィールドを再構築しては敵を蹴散らす総力戦。

手をこまねいた方が負けるギリギリの鍔迫り合いである。

ルナキンは顔を硬くしてカードを抜く。

 

「マイターン!」

 

ースタンバイフェイズー

 

「スタンバイフェイズ時、フォアランナーのエフェクトアクティヴェイト!」

 

誘発効果を宣言する。

しかし恵もすぐに反応した。

 

「……こちらもトラップカードを発動する……」

 

《メタバース》

通常罠

 

chain1 kozumo-フォアランナー

 

chain2 メタバース

 

チェーンが組まれ逆から処理されていく。

恵はデッキから自動選出されたカードを抜き取り、流れるようにフィールドゾーンへと置いた。

 

「……デッキからフィールド魔法を発動できる。私は、アンデットワールドを発動する……」

 

三度の発動。

フィールドは再び荒廃していく。

 

《アンデットワールド》

フィールド魔法

 

kozumo-フォアランナー

機械族→アンデット族

 

kozumo-ダークシミター

機械族→アンデット族

 

効果処理を見届けるとルナキンの側で待機していたフォアランナーが緑色の光を放出した。

 

「フォアランナーは、自分のスタンバイフェイズ時にライフを1000ポイントリカバリーできる!」

 

ルナキン

LP:1400→2400

 

ライフが増え幾許かの余裕ができた。

たが恵はまだ動くらしく目線を切らぬまま声を出した。

 

「……その処理後、墓地の死霊王ドーハスーラの効果発動。フィールドゾーンにカードがあるとき、自身を守備表示で特殊召喚できる……」

 

ズズズと引き摺るような音と共に地面が競り上がる。

やがて骸骨をつけた大蛇が現れた。

 

死霊王ドーハスーラ

守:2000 闇 アンデット族 星8

 

「くっ……! ゾンビめ……!」

 

苦し紛れに顔を顰めるルナキン。

フェイズは移行する。

 

ーメインフェイズー

 

「マジックアクティヴェイト! 強欲で金満な壺!」

 

《強欲で金満な壺》

通常魔法

 

「EXデッキのカードを6枚除外し、デッキよりツードロー!」

 

次々とエクストラデッキのカードが除外されていき、代わりにルナキンはカードを2枚引いた。

手札を見たルナキンはすぐに視線をフィールドに向ける。

 

「……オーライ! バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

「Go! スリップライダー! ドーハスーラにアタック!」

 

kozumo-スリップライダーは高速で空を滑りレーザー光線を放つ。

対し恵は手を軽く薙ぎ払った。

 

「……真紅眼の不死竜皇の効果を発動……」

 

真紅眼の不死竜皇が応えるように叫ぶ。

すると共鳴するように死霊王ドーハスーラも低く唸った。

 

「……さらにその効果にチェーンして、死霊王ドーハスーラの効果を発動する……」

 

chain1 真紅眼の不死竜皇

 

chain2 死霊王ドーハスーラ

 

「……死霊王ドーハスーラは、アンデット族が効果を発動した場合、フィールドまたは墓地のカードを選んで除外する……」

 

アンデットの動きに反応し統治する。

対象を取らぬ除去だ。

kozumoの戦闘艦が持つ耐性すら貫通する。

ルナキンは即応した。

 

「ならば、手札よりクイックマジック!」

 

《禁じられた聖杯》

通常魔法

 

Chase3 禁じられた聖杯

 

新たにチェーンが組まれ、これでチェーンは3。

恵は動じず処理が始まった。

 

「フィールドのモンスターのアタックを400ポイントアップする代わりにエフェクトを無効化する!」

 

聖杯が虚空に現れ死霊王ドーハスーラに聖水をかける。

苦しむ声と共に火傷でもしたかのようにドーハスーラからは湯気が立ち上った。

 

『聖なる水が死霊の王を苦しめる!! これにより、chain2で発動した死霊王ドーハスーラの効果は不発となるぞォオ!!』

 

MCの解説。

恵は初めからわかっていたかのように一切の表情を崩さない。

 

「……chain1の処理。相手ターンに自分の墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚する……」

 

真紅眼の不死竜皇の猛き咆哮。

呼び出される死者の魂。

 

「……死の淵より甦れ、真紅眼の不屍竜……」

 

「グォォオォオォオォオォオォオォオ!!」

 

真紅眼の不屍竜

攻:2400→3700 闇 アンデット族 星7

 

突如現れたモンスター。

ターンは自分のものだというのに。

汗を垂らしながらルナキンはガムシャラに指示を飛ばした。

 

「ッ構うな!! そのままドーハスーラにアタック!!」

 

kozumo-スリップライダー

攻:2300

 

死霊王ドーハスーラ

守:2000

 

スリップライダーの機銃掃射によりドーハスーラは蜂の巣となってしまってた。

しかし恵の冷静な声が会場の歓声を上書きする。

 

「……真紅眼の不屍竜の効果発動。アンデット族が戦闘破壊された場合、墓地のアンデット族を復活させる……」

 

真紅眼の不屍竜の赤い瞳が光る。

 

「……死霊王ドーハスーラを特殊召喚……」

 

恵の呼び声にドーハスーラの蜂の巣の身体が見る間に修復されていく。

まさに死霊。

煙のように何度も何度も。

 

死霊王ドーハスーラ

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

「くっ……!!」

 

『な、なんというしぶとさ!!! 破壊されても、再び蘇るその姿はまさにゾンビ!! アンデット族の真髄がルナキン・スコットに襲い掛かっているぞォオ!!』

 

目の前で攻撃が無駄になったルナキンは、しかし拳を握りしめて声をあげる。

 

「ッ!ミーは我が宇宙軍のフォースを信じる!! いけ! フォアランナー!! 死霊王を撃墜するんだ!!」

 

kozumo-フォアランナー

攻:2800

 

死霊王ドーハスーラ

攻:2800

 

フォアランナーが全砲門から極大レーザーを発射する。

対するドーハスーラも黒い衝撃波を放ち応戦した。

ーーーバチバチバチバチバチッ

と凄まじい音と共に双方が拮抗する。

やがて中央が大爆発を起こし、互いを吹き飛ばしてしまった。

 

「……」

 

恵に発動するカードはない。

一方ルナキンは破壊されたフォアランナーが持つkozumoの共通効果を発動していた。

 

「フォアランナーから緊急脱出!」

 

手を翳し、バラバラの機体から女の子のモンスターが飛び出した。

彼女は着地すると懐から光のレーザー剣を取り出す。

 

「カモン! ルーキーエース!! kozumo-ドロッセル!」

 

kozumoドロッセル

攻:1400 光 戦士族→アンデット族 星4

 

「行け! ドロッセル!! 真紅眼の不屍竜にアタック!!」

 

すぐさま攻撃命令を下す。

ドロッセルは前傾に走り出した。

 

kozumo-ドロッセル

攻:1400

 

真紅眼の不死竜皇「ゴァァァッ!!」

攻:2800

 

彼我の戦力差は圧倒的であった。

だが恵は勝ち誇ることもせず、ルナキンの手札を見つめる。

果たせるかなルナキンは最後の1枚となったそれを表向きにしてみせた。

 

「ダメージステップ!! 手札より! エフェクトアクティヴェイト! オネスト!!」

 

《オネスト》

効果モンスター

 

半透明の天使の男がドロッセルに力を分け与えていく。

 

「光属性モンスターの戦闘時、ハンドからセメタリーに送ることで相手モンスターのアタックポイント分、攻撃力アップ!」

 

kozumo-ドロッセル

攻:1400→4200

 

真紅眼の不死竜皇

攻:2800

 

光の力で加速したドロッセルは一気に飛び上がる。

そして両手で光のレーザー剣を握りしめると頭の上から振り下ろした。

 

「やぁぁぁぁ!!」

 

「グギャァァァァァ!!?」

 

真紅眼の不死竜皇は無念の叫びを上げて地面に伏した。

粉塵が巻き上がり、超過ダメージが恵のライフを削り取っていく。

 

「……」

 

ルイン恵

LP:3800→2400

 

ルナキンは口角をあげてさらに続ける。

 

「Yaa! ドロッセルのエフェクト! 戦闘ダメージを与えた場合、ライフを500支払いデッキよりkozumoをサーチできる!」

 

ルナキン・スコット

LP:2400→1900

 

ドロッセルの固有効果。

恵は即応する。

 

「……その効果にチェーンし、墓地のイモータル・ドラゴンの効果を発動……」

 

chain1 kozumo-ドロッセル

 

chain2 イモータル・ドラゴン

 

逆順処理。

恵は地面に手を振り下ろした。

 

「……アンデット族モンスターが戦闘によって破壊された場合、墓地のこのカードを特殊召喚できる……」

 

イモータル・ドラゴン

守:2400 闇 アンデット族 星6

 

地面より這い出でる骸の龍。

致し方なしとルナキンは自身の発動した効果を処理していく。

「ミーはデッキよりkozumo-ダークシミターをサーチする!」

 

これで0だった手札は1へ。

ルナキンはダークシミターを公開したまま口をあけた。

 

「そしてドロッセルのエフェクト! 自身を除外し、今サーチしたkozumo! ダークシミターをスペシャルサモン!」

 

ドロッセルが宙返りと飛び上がると、虚空からダークシミターが現れて彼女を拾う。

強大なる切り札である。

 

kozumo-ダークシミター

攻:3000 闇 機械族→アンデット族 星8

 

「エフェクトアクティヴェイト! フィールドのモンスターをディストラクト! see you フェルグラント!」

 

kozumo-ダークシミターの固有効果が火を吹く。

艦砲が轟き、ショックカノンが巨骸竜フェルグラントを貫いた。

 

「……」

 

恵はやや眉を動かす。

これにて恵が展開していた切り札のほとんどを除去されたことになる。

MCが熱をこめて声を張り上げた。

 

『なんとなんとォオォオォオ!! 宇宙軍の猛攻に次ぐ猛攻!! フィールドを埋め尽くしていた不死身のアンデット軍団が一気に蹴散らされていく!!』

 

喝采。

モンスター同士の殴り合い。

変動し続けるフィールド。

ルナキンは残る恵の切り札に指を差し向けた。

 

「このターンで仕留める! いけ! ダークシミター! 真紅眼の不屍竜にアタック!」

 

しかしダークシミターの攻撃力は3000。

迎え撃つ真紅眼の不屍竜は3700。

僅かに及ばぬ。

 

『またしても、自身より高い攻撃力のモンスターへ突撃!! 何か秘策があるのかァァァ!!?』

 

MCが煽るように盛り上げる。

恵は仁王立ちのまま口を動かした。

 

「……迎撃する……」

 

真紅眼の不屍竜

攻:3700

 

kozumo-ダークシミター

攻:3000

 

真紅眼の不屍竜が放つ黒い炎弾は真っ直ぐにダークシミターの艦橋を抉り取り、粉々に破壊し尽くす。

バラバラになった部品がルナキンへと降り注いでいく。

 

「ぐっ……!」

 

ルナキン・スコット

LP:1900→1200

 

だがルナキンは負けじと言う。

 

「後続を呼び込む! ダークシミターを除外し、デッキよりスリップライダーをスペシャルサモン!」

 

kozumo-スリップライダー

攻:2300 光 機械族 星5

 

「スリップライダーのエフェクト! フィールドマジックを破壊!」

 

三度のkozumo-スリップライダーの固有効果。

アンデットワールドは立ち消えとなり、デュエルフィールドへと世界は戻っていく。

 

「……」

 

「メイン2!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

「オーケー! まずはユーを倒す!! レベル5、スリップライダー2機でオーバーレイ!!」

 

ルナキンは手を振り上げてオーバーレイネットワークを呼び出した。

黒い渦に2機の赤い宇宙戦闘機が飛び込んでいく。

 

☆5+☆5=★5

 

「ーーエクシーズサモン! No.61ヴォルカザウルス!!」

 

「グギャァァァァァッ!!」

 

No.61ヴォルカザウルス

攻:2500 炎 恐竜族 ランク5

 

赤い恐竜が空気を揺らす。

炎が燃え上がり、辺りに蜃気楼を生み出した。

 

『再び現れたァァァ!! 相手モンスターを破壊し、さらに大ダメージを与える凶悪モンスター!! ヴォルカザウルスだァァァ!!』

 

ーーーワァァァァァァァァァァッ

 

会場の熱気はピークだった。

もはやセカンドデュエルは終着だ。

 

「エフェクト!! 真紅眼の不屍竜を吹き飛ばせ!!」

 

No.61ヴォルカザウルスは吠える。

炎が集まり、一気に温度をあげていく。

 

「……」

 

恵はただそれを見つめていた。

MCがマイクを振り上げる。

 

『この効果が通れば、チームHEROセカンドプレイヤーは3700ものダメージを受け、即敗北!! しかし、セットカードはなし!! 万事休すかァァァ!!?』

 

[チームHERO側ベンチ]

 

現れた炎の恐竜にここのせはベンチのフェンスから身を乗り出した。

 

「まじかよ、2体目!?」

 

決まれば即LPが吹き飛ぶ。

万事休すの大逆転劇。

亜美も思わず目を見開いた。

 

「恵が負ける……!? 嘘でしょ……!」

 

「あぅぅ……」とゆきが眉を八にする。

 

[デュエルフィールド]

 

No.61ヴォルカザウルスの炎弾は待ってはくれず、真紅眼の不屍竜に向けて吐き出された。

フィールドを一閃した火球は真紅眼の不屍竜の身体の中心に命中する。

凄まじい爆炎が吹き荒れて辺り一面を一気に爆発させた。

灰色の爆煙がフィールドを包む。

ルナキンは思わず拳を握った。

 

「I'm got it!! 1勝をとっ……」

 

言いかけた刹那。

爆煙を切り裂き紅い瞳が猛々しく絶叫した。

 

「グガァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

バサリと羽音がしたかと思うと真紅眼の不屍竜は無傷のまま羽根をはためかせて粉塵をかき消してしまった。

その竜の傍らにはルイン恵が相変わらず冷静な表情で立っている。

ルナキンは口を開けて叫ぶ。

 

「what!?」

 

『おぉぉっとォオ!!? ど、どういうことだァァァ!!? たしかに効果は通っているはずだがァァァ!!?」

 

エースモンスターは砕け散り、ライフが削り取られたと誰もが思っていた。

会場はざわめいていく。

それを嘲笑うようなら声が響き、もう一体のモンスターが薄れた煙の向こうから現れた。

 

アングールマゼラ

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

見慣れぬモンスター。

このデュエル中、一度たりとも姿を見せていない。

ルナキンは眉を釣り上げた。

 

「な、なんだそのモンスターは!?」

 

風が吹いてスカートが靡く。

恵の銀色の髪がさらさらと泳いでいる。

 

「……このカードは、アンデット族モンスターが戦闘または効果で破壊されるとき、代わりに手札・墓地から除外することができる。また手札・墓地から除外された場合、特殊召喚が可能……」

 

「破壊を防ぐカード……!?」

 

「……そう。破壊の処理が行われないことによりNo.61ヴォルカザウルスの効果ダメージは発生しない……」

 

恵の言葉にルナキンは目を見開いたまま絶句する。

その間にMCは高々と声を出した。

 

『なんとォオ!! 間一髪!! ゲームエンドを免れたぞォオ!!?』

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ベンチでも恵の揺るぎない後ろ姿にゆきが手を叩いていた。

 

「す、すごい!」

 

亜美もニッと笑って満足げに頷く。

 

「やるじゃない! さっすが恵!!」

 

 

[デュエルフィールド]

 

「バカな……!」とルナキンは幽霊でも見たかのように瞳を揺らし、恵にーー否現れたモンスターに指を差した。

 

「そのカードを発動するタイミングはいくつもあった! それなのに、ここまで温存していただと!? ヴォルカザウルスが読まれていたというのか……!!? ありえない……!」

 

ルナキンの言葉に恵は真っ直ぐに目を見つめて返す。

 

「……ありえないことではない。No.61ヴォルカザウルスの存在は事前情報として得ていた。それにシュミレーションではあるが……」

 

「……?」

 

ルナキンがやや目を叱らせて恵を見つめた。

2回り以上も小さい恵の身体が、ルナキンは恐れから2倍にも3倍にも見える。

しかし目を逸らしたくても逸らせない。

射抜くように瞳を向けらているからだ。

恵は言った。

 

「……私は既に、貴方と1万回デュエルしている。貴方のプレイングは学習済み……」

 

「な、なんだと……!?」

 

「……」

 

ルナキンは恵の言葉の意味が理解出来なかった。

ただ全ての展開が読まれていたと錯覚するような丸裸にされた感覚だった。

手札はもうない。

万策はーー尽きていた。

 

「くっ……! ターン、エンド……!!」

 

ーエンドフェイズー

 

ルナキン・スコット

LP:1200

手札0

伏せ0

フィールド:

No.61ヴォルカザウルス

 

ードローフェイズー

 

「……私のターン……」

 

淡々とカードを引き込む恵。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

「……イモータル・ドラゴンの効果を発動。デッキより、レベル4、馬頭鬼を墓地に送り、自身のレベルをその差の数値へ変更する……」

 

イモータル・ドラゴン

星6→2

 

「……今墓地に送った馬頭鬼を除外し、墓地からアンデット族モンスターを特殊召喚する。甦れ、巨骸竜フェルグラント……」

 

意図も容易く恵は墓地のモンスターを呼び戻す。

 

巨骸竜フェルグラント

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

「……巨骸竜フェルグラントがフィールドに現れた場合、フィールドのカード1枚を除外する……」

 

巨骸竜フェルグラントはNo.61ヴォルカザウルスに紫色のフレアを吐き出す。

融解するほどのエネルギー放射にヴォルカザウルスはひとたまりもなく朽ち果てた。

ルナキンは唇を噛んだ。

 

「くっ……」

 

「……バトルフェイズへ移行……」

 

ーバトルフェイズー

 

「……真紅眼の不屍竜でプレイヤーへダイレクトアタック……」

 

恵の指示に真紅眼の不屍竜は咆哮を上げながらエネルギーを貯めていく。

黒い瘴気とエネルギーの奔流が粒子のように噴き上がった。

恵は手を突き出す。

 

「……ダークネクロフレア……」

 

「グガァァァッ!!」

 

真紅眼の不屍竜は弓形に首をしならせると勢いよくエネルギー弾を撃ち出した。

遮るものは何もない。

エネルギー弾はルナキンに直撃した。

 

「ウワァァァァァァァァァッ!!」

 

ルナキン・スコット

LP:1200→0

 

ビィィッとブザーが鳴る。

会場が湧く。

マイクが唸る。

 

『決まったァァァ!! 痛烈な一撃!! チームバンデット、セカンドプレイヤー、ここで力尽きたァァァ!!』

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「よっしゃ!!」と亜美が思わず両手で拳を握って突き上げた。

ここのせも膝を曲げる勢いで拳を震わせた。

 

「っしゃぁ! このままラストまで雪崩れ込むぜ!!」

 

[電光掲示板]

 

観客席からの歓声は割れんばかりで演出の音声など誰も聞こえてはいないだろう。

ただモニターには大きく二つ目の黒丸が印字されていた。

 

チームHERO ●●

vs

チームBandit




◾️言い訳
真紅眼の不屍竜の攻撃力、多分違うんですが勝敗には左右されないはずなので気にせず書いたことを懺悔します……。

◾️次回予告
寝る前決闘空間第37話
『曇天に烟る』
デュエルスタンバイ
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