遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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皆さま、ご無沙汰しております……!
少し生活忙しく、中々更新できませんでした。
またこの37話ですが、展開を少し変えています。


第37話「WSC本戦第4回戦終幕 曇天に烟る」

[ネオ童実野シティメモリアルスタジアム]

 

熱気収まらぬメモリアルスタジアムからは割れんばかりの歓声が聞こえていた。

電光掲示板は煌々と光っていて、そこには状況が記されていた。

 

チームBandit:

ルナキン・スコット

LP:1200

手札0

伏せ0

フィールド:

なし

 

チームHERO:

ルイン恵

LP:2400

手札0

伏せ0

フィールド:

真紅眼の不屍竜

攻:2400→3700 闇 アンデット族 星7

アングール・マゼラ

守:2300 闇 アンデット族 星8

巨骸竜フェルグラント

攻:2800 闇 アンデット族 星8

イモータル・ドラゴン

守:2400 闇 アンデット族 星6→2

 

 

ーバトルフェイズー

 

フィールドではルイン恵が銀色のツインテールを靡かせて、眼前に立つ真紅眼の不屍竜に命令を飛ばす。

 

「……真紅眼の不屍竜でプレイヤーへダイレクトアタック……」

 

真紅眼の不屍竜

攻:3700

 

漆黒の体躯。

怪しく光る赤眼。

真紅眼の不屍竜は口蓋にエネルギーを貯めていく。

 

「……ダークネクロフレア……」

 

恵は手を振り下げて指を目の前に立つ決闘者――ルナキン・スコットに差し向けた。

真紅眼の不屍竜が弓なりに身体をしならせて紫のエネルギー弾を解き放つ。

轟音と共に空気を焼き、高速でルナキンへと着弾した。

 

「ウワァァァァァァァァァッ!!」

 

ルナキン・スコット

LP:1200→0

 

――ビィィッ。

ブザーが鳴り響き、ライフが0になったことを痛烈に伝える。

マイクを振り上げMCが声を張り上げた。

 

『決まったァァァ!! 痛烈な一撃!! チームバンデット、セカンドプレイヤー、ここで力尽きたァァァ!!』

 

歓声が巻き上がり、電光掲示板に黒い丸がチームHEROの下につく。

ルナキンは拳を握りしめて声を漏らした。

 

「ぐぅ……!! なんてことだ……!!」

 

「……」

 

対する恵はただ立ったまままっすぐに見つめていた。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

ベンチの奥の搬入口からガチャンッと音がして強く扉が開く音がした。

全員が振り返ると良平が額に汗を浮かばせて入ってきた。

亜美が思わず声を掛ける。

 

「良平!」

 

「ただいま! ごめん、今どうなってる!?」

 

応えるや否や良平はすぐにフィールドを見る。

視界の端にここのせがいるのが見えて慌てて言う。

だがここのせは余裕そうに親指でフィールドを指す。

 

「とりあえず、あのインチキ野郎はぶっ倒したぜ。祭乃木の判断でゲームは続行中だ」

 

続けて亜美も腕を胸の下で組んで続けた。

 

「……今、恵がセカンドプレイヤーを倒したところよ」

 

「そっか……」

 

「それよりアンタ、大丈夫だったの? やけに遅かったじゃない。怪我は?」

 

「色々あったけど、とりあえず大丈夫。あとで話すよ。とりあえず今は試合だね」

 

[デュエルフィールド]

 

一方フィールドでは、ライフポイントが尽き立ち尽くすルナキンの下にサクラが駆け寄っていた。

 

「ナイスゲームだったわよ、ルナキン!」

 

「sorry……! まさか彼女を突破できないとは……!」

 

「少し厳しそうだわ。でもワタシは最後までカードを引くことをやめない。自分の潔白を証明するために!」

 

「……!」

 

「ルナキン、貴方の健闘はみんな見ていたでしょう。次はワタシの番」

 

「yes! yes!! 我々は最後までカードを引き続ける! デッキの上に手を置くなんてクソったれたことはしない!」

 

「OK!」

 

2人はお互い頷きフィールドにサクラが立つ。

デッキをセットし、カードを引き込んだ。

MCはマイクを振り上げて声を張り上げる。

 

『さァァァァァァァ! デュエルは最終局面に差し掛かった!! チームBanditはラストプレイヤー、サクラ・テイラー・ミドルへとプレイヤーチェンジ! 大会規定により、バトルフェイズは強制終了となる! デュエルはチームHERO、レイン恵のメインフェイズ2から再開されるぞォオォオ!!』

 

恵は冷静な目を向けたまま静かに口を開いた。

 

「……Should I speak English for you(貴方へも英語で会話した方が良いか)……?」

 

「イイエ」

 

と首を振るサクラ。

 

「ワタシ、アナタたちに礼を尽くすマス。アナタ達の母国語で戦わせてくだサイ。だからアナタ、日本語でいいデス」

 

「……承知した。では会話ルーチンをローに設定する……」

 

「感謝、デス。……この状況、変える、ムズかしデス。Ah……でもアナタ、たくさん頑張って倒すマス! 」

 

「……迎撃する……」

 

2人はディスク構え向かい合う。

 

ーメインフェイズ2ー

 

ターンは未だに恵。

恵は自軍のモンスターに目を向けた。

 

「……墓地のマッドマーダーは、フィールドのレベル6以上のモンスターのレベルを2つ下げることで自身を特殊召喚可能。アルグール・マゼラを対象に効果発動……」

 

アルグール・マゼラ

星8→6

 

マッドマーダー

守:400 闇 アンデット族 星2 チューナー

 

「……さらに墓地の真紅眼の不死竜皇の効果を発動する。フィールドのアンデット族モンスターを除外することで、自身を特殊召喚可能……」

 

マッドマーダーが不適な笑みを浮かべつつ消えていく。

代わりに巨龍の羽ばたきがフィールドに舞い戻る。

 

真紅眼の不死竜皇

攻:2800 闇 アンデット族 星10

 

「キュォオォオォオォオォオォオッ!!」

 

『ふ、再び墓地から現れたァァァ!! 恐怖!! 不死身のアンデットが再びフィールドを埋め尽くしたァァァ!!?』

 

マイクパフォーマンスに会場が揺れた。

サクラは唇を噛んでフィールド見つめていた。

 

「ッ……!」

 

「……さらにレベル6となったアングール・マゼラにレベル2となっているイモータル・ドラゴンをチューニング……」

 

☆6+☆2=☆8

 

「……シンクロ召喚。PSYフレームロード・Ω……」

 

PSYフレームロード・Ω

攻:2800 光 サイキック族 星8 EXゾーン

 

「……ターンを終了する……」

 

ーエンドフェイズー

 

ルイン恵

LP:2400

手札0

伏せ0

フィールドゾーン:

なし

フィールド:

真紅眼の不屍竜

攻:2400→3500 闇 アンデット族 星7

PSYフレームロード・Ω(EXゾーン)

攻:2800 光 サイキック族→アンデット族 星8

巨骸竜フェルグラント

攻:2800 闇 アンデット族 星8

真紅眼の不死竜皇

攻:2800 闇 アンデット族 星10

 

ードローフェイズー

 

圧倒的なフィールド。

数々の大型モンスターを前にサクラは息を飲みつつデッキトップに指をかけた。

 

「ワ、ワタシのターン! ドロー!」

 

これで手札は6枚。

 

ースタンバイフェイズー

 

フェイズ移行とともに再び動く恵。

 

「……スタンバイフェイズ時、PSYフレームロード・Ωの効果発動。除外されているカードを墓地に戻す。対象は、屍界のバンシー……」

 

PSYフレームロード・Ωが電源を虚空に放ち、除外ゾーンを操る。

 

「……さらに今墓地に戻した屍界のバンシーを除外し、効果発動。デッキからアンデットワールドを発動させる……」

 

屍界のバンシーが叫びを上げた。

 

《アンデットワールド》

フィールド魔法

 

幾度目か。

フィールドは再び荒廃していく。

 

『な、なんということだァァァ!! 破壊されたはずのアンデットワールドが三度フィールドを包み込んだぞォォォ!!?』

 

毒の沼が2人を阻み、互いは双眼をぶつけ合うのみ。

恵は止まることなく手を振り上げた。

 

「……スタンバイフェイズ時、フィールドゾーンにカードが存在するため、墓地の死霊王ドーハスーラの効果が発動できる……」

 

「ま、まだ動くというのデスカ……!?」

 

サクラは冷や汗を背に感じつつ、手札のカードを素早くスロットに差し込む。

 

「ッ!! クイックマジック!! 墓穴の指名者!!」

 

《墓穴の指名者》

速攻魔法

 

「アナタのセメタリーのカードを1枚除外し、その同じカードの効果を無にするデス!」

 

chain1 死霊王ドーハスーラ

 

chain2 墓穴の指名者

 

地面から生えた緑色の手が恵の足元を指差していた。

恵はちらと目線を動かすと即応する。

 

「……その効果に対し、真紅眼の不死竜皇の効果を発動……」

 

chain3 真紅眼の不死竜皇

 

「……真紅眼の不死竜皇は相手ターンに、墓地のアンデット族をフィールドに呼び戻す。私は死霊王ドーハスーラを蘇生対象に選択する……」

 

「……!」

 

逆順処理。

真紅眼の不死竜皇が猛き怒号をあげると地面が盛り上がり、骸の龍が這いずり出た。

 

死霊王ドーハスーラ

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

これによりchain2の墓穴の指名者は対象が不在となり不発。

 

「くっ……!」

サクラは唇を噛むしか成す術がなかった。

 

ーメインフェイズー

 

「……手札のdangerジャッカロープのエフェクト発動デス!」

 

《danger!? Jackalope?》

効果モンスター

※未界域のジャッカロープ

 

「このモンスターを含む手札を、アナタが一枚選ぶマス!」

 

手札5枚の裏面を突き付けるサクラ。

恵は棒立ちのまま返答する。

 

「……貴女から見て一番左のカードを選択する……」

 

「アナタが選んだカードはdangerネッシー! 選ばれたカードは捨てられます! そして、ジャッカロープは、選ばれなかった場合、スペシャルサモンし、カードをドローできるマス!」

 

Jackalope?

守:2000 闇 獣族→アンデット族 星3

 

「カードドロー!」

 

手札は3枚から4枚に。

さらにセメタリーゾーンが点灯する。

 

「イマ、捨てられたdanger! Bigfoot!のエフェクト発動デス!」

 

《danger! Bigfoot!》

効果モンスター

※未界域のビッグフット

 

「このカードが捨てられた場合、フィールドの表のカード、破壊シマス! 破壊するのはアンデットワールド!」

 

「……死霊王ドーハスーラの効果を発動。アンデット族モンスターが発動した効果を無効にする……」

 

chain1 danger!Bigfoot!

 

chain2 死霊王ドーハスーラ

 

死霊王ドーハスーラが紫色の瘴気を噴き出していく。

アンデットワールドによりアンデット族となった未界域のビッグフットは瘴気に包まれかき消されてしまった。

 

「ッ! まだデス! Danger! Dogman!のエフェクト発動!」

 

《Danger! Dogman!》

効果モンスター

※未界域のワーウルフ

 

「dangerは手札から発動し、このカードを含む手札を相手が選び、選んだカードをセメタリーへ捨てる……Ah、同じテキスト持ちマス! 選ばれたとき、選ばれなかったとき、それぞれエフェクトありマス!」

 

「……貴女から見て左から2番目のカードを選択する……」

 

「選ばれたのはdanger!mothman! このカードを捨てて、Dogmanをスペシャルサモン!」

 

未界域のワーウルフ

攻:2400 闇 獣戦士族 星7

 

「カードドロー!さらに捨てられたモスマンのエフェクト発動デス!」

 

《danger! mothman!》

効果モンスター

※未界域のモスマン

 

「お互いにカードを1枚ドローし、その後、手札を1枚捨てマス!」

 

サクラ:

手札3→4→3

 

恵「……」

 

恵:

手札0→1→0

 

「イマ、墓地に捨てられたdanger! Nessie!のエフェクトデス!」

 

《danger! Nessie!》

効果モンスター

※未界域のネッシー

 

「このカードが捨てられた場合、デッキからdangerカードをサーチ! danger!? Jackalope?をサーチデス!」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

相手の行動にここのせは腕を組みつつつぶやいた。

 

「手札が減らねぇ……」

 

手札の起動効果を使用しカードを墓地に送りつつ展開。

墓地に送られたカードが、効果で墓地に送られたことをトリガーに効果が誘発される。

効果の連鎖が途切れにくいデッキコンセプトに亜美も頷いた。

 

「予想通りデッキ回転が早いわ……!」

 

良平も鋭い目つきでフィールドを睨む。

 

「展開力も相応に高いな……」

 

「あぅぅ……」と眉を八の字にするゆき。

 

一歩引いた場所では、青い制服にギリギリまで切り詰めたミニスカートの少女--藤原雪乃が胸の下で腕を組んで妖艶な笑みを浮かべていた。

 

「あらあら、お相手さん、結構やり手ねぇ」

 

「……あんた、まだいたのか?」

 

片手を腰に添えてここのせが片眉を上げる。

すると雪乃は目元に手を当てて泣き真似をして見せた。

 

「あら、失礼な言い草。お姉さん傷ついちゃうわぁ。せっかく憧れの舞台のベンチに座ってるというのに」

 

「憧れの舞台のベンチねぇ……」

 

「そう。あなたたちに負けちゃったから座れなくなっちゃったベンチよ」

 

「お、おぉ……」

 

雪乃に上目使いで言われここのせは気まずく頭を掻いた。

隣で亜美が頬を膨らませて言い返す。

 

「なぁによ、嫌な言い方して」

 

「うふふ、ごめんなさい。冗談よ。怒らないでちょうだいな」

 

「……まぁ、アンタの気が済むまで居ればいいけど。でもいいの? 仕事があるんじゃないの?」

 

「私は貴女たちにお知らせしにきただけだもの。あとは好きにやらせてもらうわ」

 

[デュエルフィールド]

 

一方フィールド。

サクラが手札のカードを差し向けていた。

 

「danger!? Jackalope?を発動デス!」

 

《danger!? Jackalope?》

効果モンスター

※未界域のジャッカロープ

 

「dangerの手札から発動する効果にはターン制限ありマセン!」

 

「……貴女から見て一番右のカードを選択する……」

 

「選ばれたのはdanger! Chupacabra! ジャッカロープをスペシャルサモンデス!」

 

未界域のジャッカロープ

守:2000 闇 獣族 星3

 

「そして! イマ、セメタリーに捨てられたChupacabraは、捨てられたとき、セメタリーのdangerを呼びマス! カモン! danger! Bigfoot!」

 

未界域のビッグフット

攻:3000 闇 獣族 星8

 

『チームBanditラストプレイヤー、サクラ・テイラー・ミドル! 正体不明のUMAたちを次々とフィールドに呼び出したぞォオォオ!!?』

 

次々と現れるモンスターたちに会場は喝采を上げる。

フィールドにはあっと言う間に4体のモンスターが並んでいた。

未界域のジャッカロープ

未界域のジャッカロープ

未界域のビッグフット

未界域のワーウルフ

の4体である。

サクラは止まらず手を振り上げた。

 

サクラ「カモン!Circuit that is guided mysteriously(不思議が導くサーキット)!!The condition for summoning is 4 other monsters(不思議が導くサーキット)!!」

 

 

↑モンスター + ↙︎モンスター + ↓モンスター ↘︎ = LINK4

 

「ーーLINK Summon!LINK4!! 鎖龍蛇-スカルデッド!!」

 

鎖龍龍-スカルデッド

攻:2800 地 ドラゴン族→アンデット族 LINK4(左EXゾーン)↑↙︎↓↘︎

 

『おぉぉっとォオ! チームBanditラストプレイヤー! モンスター4体を使い、LINK4モンスターを繰り出したぞォオォオ!!』

 

「スカルデッドがモンスター4体をSETし、LINKサモンされた場合! デッキから4ドローし、その後、ハンドから3カードをデッキボトムに戻すことできマス!」

 

「……その効果に対し、死霊王ドーハスーラの効果を発動。アンデット族となっているモンスターが効果を発動したため、フィールド墓地のモンスターを除外する……」

 

chain1 鎖龍蛇-スカルデッド

 

chain2 死霊王ドーハスーラ

 

「……鎖龍蛇-スカルデッドを除外……」

 

死霊王ドーハスーラが黒い瘴気を吐き出し鎖龍蛇-スカルデッドをドロドロに溶かしていく。

 

『アンデットの王による痛烈な除外効果が炸裂!! 苦労して呼び出したリンク4モンスターがあっという間に撃沈!! 依然、チームHEROリードの展開が続いているぞォオ!』

 

サクラは険しい表情を浮かべつつ、デッキトップに手を掛ける。

 

「しかし! 効果は無になりマセン!! カードドロー!!』

 

2枚だった手札は一時的に6枚となる。

その後手札を3枚デッキに戻す。

サクラは引いたカードを見つめ再びカードを恵に向けた。

 

「手札のdanger!?Tsuchinoko?のコモンエフェクト!」

 

《danger!? Tsuchinoko?》

効果モンスター

※未界域のツチノコ

 

「……その効果に対し、PSYフレームロード・Ωの効果を発動……」

 

chain1 danger!? Tsuchinoko?

 

chain2 PSYフレームロード・Ω

 

負けじと恵も応戦。

PSYフレームロード・Ωがバチバチと周囲を漏電させる。

 

「……PSYフレームロードΩは、自身と相手の手札1枚を次の私のスタンバイフェイズまで除外する……」

 

猛進するPSYフレームロードΩ。

電撃がサクラの手に命中し手札1枚を虚空へと持ち去っていく。

 

「ウッ……!」

 

これで3枚あったサクラの手札は2枚へ。

効果処理は続いている。

サクラは手札を恵に差し出した。

 

「ッ! 選ぶデス!」

 

「……右側のカードを選択する……」

 

「選ばれたカードは、魔轟神獣ケルベラル!」

 

「……!」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「魔轟神……!?」と思わず良平は身を乗り出した。

 

隣のゆきも目を大きく見開く。

 

「デンジャーのカードだけじゃないんですかぁ……!」

 

事前のデッキ調査では明らかになっていなかった情報。

しかし良平は納得と言わんばかりに口角を上げた。

 

「手札から捨てる効果と噛み合ってる……。これでさらに展開を大きく伸ばせる……!」

 

[デュエルフィールド]

 

「選ばれたカードを捨てて、ツチノコをスペシャルサモン!!」

 

未界域のツチノコ

攻:1300 闇 爬虫類族 星3

 

「そしてカードドロー!」

 

「……」

 

「さらにイマ、セメタリーに送ったケルベラルは、捨てられた時、スペシャルサモンできるマス!」

 

魔轟神獣ケルベラル

守:400 光 獣族 星2 チューナー

 

「カードをセット!」

 

残った手札を場に伏せるサクラ。

足元に裏向きのカードが表示されては消えていく。

サクラは顔を上げて腕を振り払った。

 

「Revel3、ツチノコに、Revel2のケルベラルをtuning!!」

 

☆3+☆2=☆5

 

「シンクロサモン! 魔轟神レイジオン!!」

 

魔轟神レイジオン

攻:2300 光 悪魔族 星5

 

「レイジオンは、シンクロサモンされた時、手札が1枚以下なら2枚になるようドローできるマス! ワタシの手札は0! 2枚ドローしマス!」

 

デッキトップからカード引き込む。

ちらと引いたカードを一瞥するとサクラは手を下に向けて宣言した。

 

「さらにセットカードオープン!」

 

《終わりの始まり》

通常魔法

 

「このカードは、ワタシのセメタリーに、闇属性のモンスターが7体以上ある場合に発動できるマス!」

 

〜サクラの墓地〜

未界域のツチノコ

未界域のビッグフット

未界域のネッシー

未界域のモスマン

未界域のジャッカロープ

未界域のジャッカロープ

未界域のワーウルフ

 

「そのうちの5体、ジャッカロープ、ツチノコ、ビッグフット以外を除外することで、カードを3枚ドローデス!!」

 

これにて2枚だった手札は初期手札数である5に戻る。

破格のデッキ回転である。

マイクを持つMCも目を大きくして叫んだ。

 

『なんとなんと!! デッキを掘り進め、手札を一気に回復したぞォオ!!?』

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「えぇ!?」とゆきが口に手を当てる。

 

手札が減った状態からアドバンテージを回復するのがいかに難しいか。

それを知った者であれば驚かずにはいられない。

ここのせも例外ではなかった。

 

「なぁ!? 手札を5枚まで増やしただと!?」

 

相手は展開力を持つデッキである。

ここからさらに伸びていくことは容易に予想できる。

亜美は腕を組んで言う。

 

「恵が最初に展開してなければかなり危なかったわ……!」

 

 

[デュエルフィールド]

 

フィールドでは両者の睨み合いが続く。

サクラは潤沢になった手札からカードを抜き取り口を開けた。

 

「さらに! danger!Thunderbird!のエフェクト!」

 

《 danger!Thunderbird!》

効果モンスター

 

共通効果。

もはや言うまでもない。

恵はすぐに答えた。

 

「……貴女から見て、左から二番目を選択する……」

 

「選ばれたのは、魔轟神クルス! サンダーバードをスペシャルサモン!そしてカードドロー!」

 

未界域のサンダーバード

攻:2800 闇 鳥獣族 星8

 

「さらに捨てられた魔轟神クルスは、捨てられたトキ、セメタリーの魔轟神をスペシャルサモンできるマス!! カモン、魔轟神獣ケルベラル!」

 

魔轟神獣ケルベラル

攻:1200 光 獣族 星2 チューナー

 

「カモン!Circuit that is guided mysteriously(不思議が導くサーキット)!! conditions of Summon is tuner Monster and Another Monsters(召喚条件はチューナーを含むモンスター2体)!!」

 

↙︎チューナーモンスター + ↘︎モンスター= LINK2

 

「リンクサモン! LINK2! 水晶機巧-ハリファイバー!」

 

水晶機巧ハリファイバー

攻:1500 水 機械族 LINK2(左EXゾーン)↙︎↘︎

 

「ハリファイバーのリンクサモンエフェクト! デッキから、チューナーを呼ぶデス! カモン! エフェクトヴェーラー!」

 

エフェクトヴェーラー

守:0 光 天使族 星1 チューナー

 

「Revel5、魔轟神レイジオンにRevel1、エフェクトヴェーラーをtuning!」

 

☆5+☆1=☆6

 

「シンクロサモン! 氷結界の龍ブリューナク!!」

 

氷結界の龍ブリューナク

攻:2300 水 ドラゴン族 星6

 

『怒涛の展開! 数多の妨害を受けたが、なんとかシンクロモンスターを呼び出したァァァ!! 氷結界の龍ブリューナクは、手札を任意の枚数捨てることでその枚数だけフィールドのカードをバウンスできるぞォオ!』

 

「……」

 

現れた氷の龍を無表情のまま見上げる恵。

その姿にサクラは息を呑む。

 

(相手は動じてないデス……。相手モンスターは4体、こちらのハンドも4枚。全てを除去しても、手札がなくなってしまいマス……。それにハンドに残っている捨てられた場合に発動できるカードが少ないデス……。その状態で、手札を失えばラストプレイヤーに対して何もできなくなるマス……。ここは……!)

 

「マジックアクティヴェイト! 」

 

《ダークバースト》

通常魔法

 

「セメタリーのアタックポイントunder1500モンスターをサルベージシマス! danger! Jackalope?をサルベージ!」

 

セメタリーゾーンが自動で動きカードを選出する。

それを手札に加えるとサクラはフィールドに目を向けた。

 

「そして、ブリューナクのエフェクト! ハンドを好きな数捨てることで、相手のフィールドのカードをバウンスしますデス! ワタシは、3枚のカードを捨て、フィールドの真紅眼の不死竜皇、真紅眼の不屍竜、死霊王ドーハスーラの3体をバウンス!」

 

氷結界の龍ブリューナクが強烈な咆哮を上げる。

鼓膜と鼓動を揺るがす。

と同時に氷の刃が地面からいくつも生えて恵のモンスターたちに襲い掛かった。

真紅眼の不死竜皇、真紅眼の不屍竜、死霊王ドーハスーラ。

恵の主力のモンスターたちが氷の刃に貫かれて消えていく。

真紅眼の不死竜皇、真紅眼の不屍竜はEXデッキ、死霊王ドーハスーラは恵の手札へとバウンスされる。

 

『痛烈なバウンス効果炸裂ゥゥウ!!! 一気にフィールドを覆したぞォオ!!』

 

「……」

 

しかし恵は動じない。

冷静な双眸を向けるのみ。

対するサクラはさらに動く。

 

「イマ、セメタリーに送ったジャッカロープとケルベラルのエフェクト!」

 

chain1 danger!? Jackalope?

 

chain2 魔轟神獣ケルベラル

 

「ケルベラルのエフェクトに1ターンの制約はありマセン! スペシャルサモン!」

 

魔轟神獣ケルベラル

攻:1200 光 獣族 星2 チューナー

 

「さらにジャッカロープはハンドからセメタリーに送られたら、デッキからdangerを守備で呼び出すマス! カモン! danger!Ogopogo!」

※未界域のオゴポゴ

 

未界域のオゴポゴ

守:3000 闇 海竜族 星8

 

「Revel8、オゴポゴにRevel2、ケルベラルをtuning!」

 

☆8+☆2=☆10

 

She was born of the war.(革命より生まれし肉体よ)The time has come(祝杯の時は来れり).Grab a victory(勝利を我が手に)!」

 

「ーーシンクロサモン! Brandish! フルール・ド・バロネス!!」

 

召喚陣が輝き花びら舞いあがる。

しかして中からは麗しい女騎士が馬と共に現れた。

 

フルール・ド・バロネス

攻:3000 風 戦士族 星10

 

司会たァァァァァッ!! 数多の妨害を潜り抜け!! 大型モンスターを呼び出したぞぉォオ!!? 逆転の狼煙なるかァァァ!!?』

 

現れたエースモンスターに会場は再び拍手を送る。

形成は逆転した。

 

「……」

 

恵は静観する。

瞳の奥の歯車のような瞳孔がサクラを捉え続けている。

 

「フルール・ド・バロネスは、フィールドに表側になっている時、1度だけあらゆるカードの発動を無にできマス! さらに1ターンに1度、フィールドのカードを破壊できマス!! フェルグラントを破壊デス!」

 

フルールドバロネスが剣を振り上げて突進する。

巨骸龍フェルグラントの首元目掛けて振り下ろした。

恵は一切動じることなく宣言する。

 

「……墓地のアルグラール・マゼラの効果により、破壊される代わりにこのカードを除外する……」

 

墓地から嘲笑うような声。

アルグール・マゼラの羽根がフルール・ド・バロネスの剣を阻んでいる。

現れたモンスターにサクラは目を見開いた。

 

「chainを組まないデスカ!?」

 

「……これは発動する効果ではないためチェーンブロックを作らない。従ってフルール・ド・バロネスの効果では無効にすることはできない……」

 

「ッ……!」

 

「……さらに除外されたアルグール・マゼラの効果を発動。手札、墓地から除外された場合、フィールドに特殊召喚できる……」

 

「ッ! フルール・ド・バロネスのエフェクト! カードのエフェクトの発動を無にしマス!!」

 

アルグール・マゼラのもう一つの効果。

こちらは除外をトリガーに発動する誘発効果だ。

当然チェーンブロックが発生する。

フルールドバロネスは防がれた剣をそのまま振り抜きアルグールマゼラを切り裂いてしまった。

 

「……」

 

だが恵は表情を変えることなく相手を見続けている。

 

「バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

「GO! フルール・ド・バロネス! 巨骸龍フェルグラントにアタック!!」

 

フルールドバロネス

攻:3000

 

巨骸龍フェルグラント

攻:2800

 

再びフェルグラントに向けて馬を走らせるフルール・ド・バロネス。

今度こそと言わんばかりに剣を突き立て、巨骸龍を貫いた。

 

「……」

 

ルイン恵

LP:2400→2200

 

超過ダメージが恵を襲う。

 

『花騎士による剣劇一閃! 巨骸龍フェルグラントはなす術なく破壊されたぞォオ!! これによりルイン恵のフィールドはガラ空き!! いよいよ、セカンドプレイヤーの幕引きかァァァ!?』

 

「氷結界の龍ブリューナクでプレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

万感の願いを込めてブリューナクに指示を飛ばすサクラ。

氷結界の龍ブリューナクは冷気を口蓋にため込んでいく。

 

「……」

 

対する恵はブリューナクを見上げたまま決闘盤のボタンを押し込んだ。

するとズズズと地面を引き摺るような音がし、突如地面が弾け飛んだ。

 

「グガァァァァァッ!!!」

 

咆哮。

それが恵の前に降り立ち壁となった。

巨骸龍フェルグラントである。

 

「!!?」

 

サクラは慌てて腕を振り抜きブリューナクへの攻撃命令を取り消した。

氷結界の龍ブリューナクと巨骸龍フェルグラントが睨み合う。

 

『な、なんだァァァ!!? 突如、破壊されたはずのフェルグラントが地面から現れたぞォオ!!?』

 

「な、何を……ッ!?」

 

MCの疑問、そしてサクラの動揺した声に応えるようにフィールドでカードの発動エフェクトがかかった。

 

《もののけの巣食う祠》

通常罠

 

「!?」

 

「……墓地のこのカードは、私のフィールドにモンスターが存在しない場合、自身を除外することでアンデット族モンスター1体を効果無効にして特殊召喚できる……」

 

「墓地のトラップ……! shit!」

 

『な、なんということだァァァ! ルイン恵、またしても生き残ったぞォオ!!! まさにアンデット! これぞアンデット!!』

 

「ッ……!」

 

会場が恵に対し拍手を打ち鳴らす。

電光掲示板がチカチカと光りながら発動したカードの効果テキストを流していた。

 

ーメインフェイズ2ー

 

サクラは動揺した顔のままフェイズを移行させ手札のカードをマジックトラップスロットに差し込む。

 

「カードをセット!ターンエンドデス!」

 

ーエンドフェイズー

 

サクラ・テイラー・ミドル

LP:4000

手札:0

マジックトラップ:

セットカード

フィールド:

フルール・ド・バロネス

氷結界の龍ブリューナク

水晶機巧-ハリファイバー(右EXゾーン)

 

ードローフェイズー

 

「……私のターン……」

 

デッキトップからカードを引き抜く。

手札は1枚から2枚へ。

 

ースタンバイフェイズー

 

「……このスタンバイフェイズ時、除外していたPSYフレームロードΩと貴女の手札1枚が帰還する……」

 

虚空から電流。

やがて高速で地面に着地する。

 

PSYフレームロードΩ

攻:2800 光 サイキック族 星8

 

「……」

 

これによりサクラの手札1枚も帰還する。

手札に加えるとすぐにサクラも宣言した。

 

「こちらもフルールドバロネスのエフェクト! お互いのスタンバイフェイズ時、自身をEXデッキに戻すことで墓地のレベル9以下のモンスターをスペシャルサモンできるマス!カモン! danger! Bigfoot!」

 

未界域のビッグフット

攻:3000 闇 獣族 星8

 

現れたモンスターを一瞥する恵。

しかし特に行動はなくフェイズは次へと流れていく。

 

ーメインフェイズー

 

「……牛頭鬼を召喚……」

 

牛頭鬼

攻:1700 闇 アンデット族 星4

 

恵がメインモンスターゾーンにカードを置く。

牛の頭のモンスターが棍棒を持って現れる。

すると弾かれたようにサクラも手を振り上げた。

 

「ハリファイバーのエフェクトアクティヴェイト! 自分を除外することで、EXからシンクロチューナーを呼び出すマス!」

 

水晶機巧-ハリファイバーも電撃を周囲に放ちながら浮き上がる。

やがて強引に開いたEXデッキへの回路に飛び込んでいった。

 

「ーーシンクロサモン! カモン! 水晶機巧-クオンダム!」

 

水晶機巧-クオンダム

攻:1800 水 機械族 星4 チューナー

 

入れ替わるように新たなモンスターが着地する。

恵は続けた。

 

「……牛頭鬼の効果。1ターンに1度、デッキからアンデット族モンスターを墓地に送ることができる……」

 

「そのエフェクトにチェーンし、クオンダムのエフェクト発動しマス!」

 

chain1 牛頭鬼

 

chain2 水晶機巧-クオンダム

 

「クオンダムは、相手ターンにシンクロできるマス! Revel6のブリューナクに、Revel4のクオンダムをtuning!!」

 

☆6+☆4=☆10

 

「ーーシンクロサモン!! カムバック!! フルール・ド・バロネス!!」

 

フルールドバロネス

攻:3000 風 戦士族 星10

 

再び舞う桜。

女騎士の駆る馬が大きく嘶いた。

 

『あ、相手ターンにシンクロ召喚だァァァァァ!! 再び花の騎士が現れたぞォオ!!』

 

会場はどよめきと拍手で埋まる。

しかし恵は自身のペースを揺るがせない。

 

「……牛頭鬼の効果処理により、デッキからアンデット族モンスター、馬頭鬼を墓地に送る……」

 

フルールドバロネスは恵を見下し一挙手一投足を見抜こうと躍起になっている。

だが恵は感情を読み取れない顔のままバロネスの視線を受け止めていた。

サクラは高まる不安と鼓動に胸を抑える。

 

(フルールドバロネスを前にしても冷静……。ハイスクールガールなのにまるでロボットのような精密さデス……!)

 

様子を見るサクラに対し恵は静かに口を開けた。

 

「……新規召喚を実行。召喚定義、【リンク召喚】 アローヘッドを確認。召喚条件は、アンデット族モンスター2体。牛頭鬼と巨骸龍フェルグラントをリンクマーカーにセット……」

 

↙︎アンデット族 + ↘︎アンデット族=LINK2

 

「……アドヴェンデット・セイヴァーをリンク召喚……」

 

アドヴェンデット・セイヴァー

攻:1600 闇 アンデット族 LINK2 左EXゾーン ↙︎↘︎

 

「……墓地の牛頭鬼の効果を発動。墓地に送られてた場合、墓地のアンデット族モンスターを除外することで手札のアンデット族モンスターを特殊召喚できる。墓地のジャックアボーランを除外……」

 

「フルール・ド・バロネスのエフェクト! カードの発動を無効にし破壊しマス!」

 

chain1 牛頭鬼

 

chain2 フルールドバロネス

 

フルールドバロネスの剣撃が飛び、墓地の牛頭鬼の幽霊を切り裂く。

効果は無効となりジャックアボーランは無意味に除外されてしまう。

 

「……バトルフェイズへ移行……」

 

「フェイズエンド前! リバースカードオープン! danger! zone!」

 

《danger! zone》

通常罠

※未界域の危険地帯

 

「このカードは、デッキよりカードを3枚ドローし、その後、dangerカードを含む2枚を墓地に送るデス!」

 

発動に対し恵にチェーンはない。

サクラはカードを引き込む墓地に送る。手札は1枚から4枚、そこから2枚墓地に送り残りの手札は2枚。

 

「さらに! イマ、捨てた魔轟神獣キャシーとdanger! Bigfoot!のエフェクト! これらは、捨てられたら、フィールドのカード破壊しマス! PSYフレームロードΩとアドヴェンデット・セイヴァーを破壊デス!」

 

chain 1 魔轟神獣キャシー

 

chain2 未界域のビッグフット

 

魔轟神獣キャシーと未界域のビッグフットが墓地から手を伸ばし恵のフィールドへと押し寄せる。

 

「……PSYフレームロードΩの効果を発動。貴女の手札と自身を、次の私のターンのスタンバイフェイズまで除外する……」

 

chain3 PSYフレームロードΩ

 

PSYフレームロードΩは再び電気を纏いながら虚空へと去っていく。

 

「ッ!」

 

バチンッと電撃を浴びてサクラは再び手札の1枚を撃ち抜かれてしまう。

残ったアドヴェンデット・セイヴァーには回避手段はなくそのまま破壊された。

 

『おぉっとォォォ!! 手札回復だけでなく、相手フィールドのカードも破壊したぞォオ!!?』

 

アドバンテージの大量獲得。

大型モンスターもいて、相手にモンスターはない。

サクラが優勢だ。

優勢なはずなのに。

恵の双眸がただ、ただ恐ろしい。

 

「ッ!」

 

「……フェイズ終了前にカードが発動したため、フェイズ終了宣言を中止し、メインフェイズを続行する……」

 

宣言すると恵はすぐに墓地に向けて目だけを動かす。

 

「……墓地の馬頭鬼の効果発動。自身を除外することで、墓地のアンデット族モンスターを特殊召喚する。対象は巨骸龍フェルグラント……」

 

「くっ……」

 

サクラは唇を噛む。

フルールドバロネスの強力な制圧効果は1度しか使えない。

そしてそれはもう使い切ってしまった。

 

「クァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

巨骸龍フェルグラント

攻:2800 闇 アンデット族 星8

 

幾度目かの咆哮。

巨骸龍フェルグラントは正しくゾンビのごとくフィールドへと舞い戻った。

 

「……巨骸龍フェルグラントがフィールドに特殊召喚された場合、相手フィールド、墓地のカード1枚を対象とし除外する。フルールドバロネスを選択する……」

 

お返しとばかりに巨骸龍フェルグラントが炎弾を放つ。

フルール・ド・バロネスの身体の芯に命中し大爆発と共にフルール・ド・バロネスを消し飛ばした。

 

『返す刀で反撃ィィ!! な、なんという混戦!! チームHEROセカンドプレイヤーの不死身の戦略に、チームBanditラストプレイヤーは思うように展開できない!!』

 

「……私はこれでターンを終了する……」

 

ーエンドフェイズー

 

ルイン恵

LP:2200

手札0

伏せ0

フィールド:

巨骸龍フェルグラント

PSYフレームロードΩ(除外中)

 

ードローフェイズー

 

「わ、ワタシのターンデス!」

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

引いたカードを見つめるサクラ。

鼓動が思考の邪魔をする。

息が上がる。

目の前の敵が未だセカンドプレイヤーであるという点がサクラをさらに追い詰めていた。

 

「マジックカード、danger!Response Team」

 

《danger!Response Team》

通常魔法

※未界域調査報告

 

「フィールドのdangerモンスターとフィールドの表側表示モンスターをバウンスシマス!」

 

未界域のビッグフットと巨骸龍フェルグラントの2体が手札へと跳ね返されていく。

これで恵のフィールドは再び更地。

 

「さらに、danger!Response Teamにはセメタリーのエフェクトありマス! 手札のdangerを捨てることで、

このカードをデッキボトムに戻すことできマス! さらに、その後、1ドローしマス!」

 

手札の数は変わず2枚。

だが。

 

「イマ、セメタリーに送ったdanger! Bigfoot!のエフェクト! アンデットワールドを破壊!!」

 

未界域のビッグフットが大きな足で地面を踏み鳴らしていく。

アンデットワールドを象徴する毒沼はかき消されて消えてしまった。

これにて3枚のアンデットワールドすべてが恵の墓地へとたまることになる。

サクラは依然息を呑みつつカードをスロットに差し込んだ。

 

「カードをセット!そしてハンドのdanger!Chupacabra!のエフェクト! このカードを含むカードを捨てるマス! しかし、ハンドはこの1枚だけデス!」

 

1枚だけ残った手札を捨てる。

捨てたと同時にエフェクトが光る。

 

「セメタリーに送られたChupacabraは、セメタリーのdangerを復活させマス! カモン! danger! Bigfoot!!」

 

未界域のビッグフット

攻:3000 闇 獣族 星8

 

「バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

「danger! Bigfoot!でプレイヤーにダイレクトアタック!!」

 

未界域のビッグフットが恵に突進していく。

恵を守るモンスターはない。

セットカードもない。

 

『攻撃力3000のダイレクトアタック!! これは流石に耐えられないかァァァ!!?』

 

しかし恵は手を下に振り抜きカードを発動させた。

 

「……墓地のタスケルトンの効果を発動……」

 

《タスケルトン》

効果モンスター

 

「!?」

 

「……墓地のタスケルトンは、自身を除外することで一度だけ相手モンスターの攻撃を無効化できる……」

 

半透明のタスケルトが未界域のビッグフットの前に立ちはだかった。

やがて風船のようにパチンと割れると猫だましの要領で未界域のビッグフットの攻撃を止めさせた。

 

『な、なんと!! またしても攻撃を凌いだァァァ!!? なんという耐久力だァァァ!!?』

 

「そんな……いつの間に……!?」

 

と言いかけてサクラははっと息を呑んだ。

 

〜回想〜

 

『danger! mothman!のエフェクト! お互いデッキから1ドローし、その後、1枚を捨てマス!』

 

『……』

 

恵はカードを選び墓地に送っていた。

 

〜回想終了〜

 

「あのとき……!」

 

「……」

 

「……ッ……ターンエンド……!」

 

ーエンドフェイズー

 

サクラ・テイラー・ミドル

LP:4000

手札0

伏せ1

フィールド:

未界域のビッグフット

 

ライフは無傷とはいえ手札は消費しすぎ、モンスターも未界域のビッグフットのみ。

頼みの綱はもはやセットカードのみ。

滴る汗を拭いサクラは心の中で叫ぶ。

諦めない。

諦めてはいけない。

自分を鼓舞するように。

 

「……」

 

一方の恵は両手を下げて立っており、デッキトップに手を掛けるしぐさもない。

代わりにくるりと踵を返した。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

恵の目がベンチに向かっているのを見てここのせが頷く。

 

「バトンタッチする気だな! 相手は息切れ寸前だ! 一気に片ぁ付けようぜ!」

 

「よっしゃ!いくわよ!!」

 

 

と亜美は大足で段を踏みフィールドに出た。

 

[デュエルフィールド]

 

『ここでバトンタッチ!! チームHEROは、セカンドプレイヤーからラストプレイヤーへと襷を繋いだぞ!!』

 

MCの声に会場はまばらに拍手をこぼす。

 

「……」

 

恵は慣れた手付きで決闘盤外し、走ってきた亜美に差し出した。

ライフポイントゲージも整えられていてあとはデッキを差し込むだけになっている。

亜美は受け取るとまずは口角を上げて恵に声を掛けた。

 

「恵、お疲れ様!」

 

「……ん……」

 

それから決闘盤をつけて腰のデッキケースからデッキを取り出した。

恵が亜美を見上げて言う。

 

「……相手の継戦能力はほとんど残っていないことが予想される……」

 

「どうかしら?」

 

「……?」

 

亜美は言うと相手フィールドへと目を向ける。

誘導されるように恵も視線を流すと、対岸には佇むデュエリスト。

満身創痍で焦りも見える。

しかし目は未だ鋭く燃えるような激情を含んでいた。

まさにそれは闘志。

デュエリストの殺気。

恵は亜美に目を戻すという。

 

「……気をつけて……」

 

「もち!」

 

亜美は腰からデッキ抜き取りデッキセット口に差し込む。

すぐさま決闘盤は反応し、連動するように電光掲示板にも亜美の名が表示された。

 

「……」

 

サクラはただ肩で息をしながら亜美を睨みつけている。

視線の先は自分の胸。

否、炎の戦意。

決闘者にだけわかる殺気。

亜美は片手を腰に当てて口を開けた。

 

「うちの恵のデュエルは中々手厳しいでしょ」

 

「Right ここまで追い詰められてしまいマシタ」

 

「さらに万全のアタシが出てくるわけだけど、一気に決めちゃっていいのかしら?」

 

「Bring it on! I am duelist! ライフポイントが0になるまで諦めることはしマセン!」

 

「いいわ! ならアタシも絶対に手を抜かない! ここでアンタを倒す!!」

 

 

『プレイヤーチェンジが完了! チームHEROラストプレイヤー、祭乃木亜美のドローフェイズからデュエル再開だァァァ!! しかし、チームBanditのリソースはかなり消耗している!! このターンを超えられるかァァァ!!?』

 

 

ードローフェイズー

 

「いくわよ、アタシのターン!」

 

手札は6枚。

当然だが潤沢な手札。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

引いたカードを一瞥し、すぐさまマジックトラップスロットに刺す。

 

「手札から! 魔法発動! ハーピィの羽根箒!!」

 

《ハーピィの羽根箒》

通常魔法

 

「除去カード……!!」

 

サクラは鋭く声をあげた。

羽根箒が無情にもセットカードを破壊していく。

しかし、すぐさまサクラは発動ボタンを押し込んだ。

 

「Activate a trap card!Danger! Zone!」

 

 

《未界域の危険地帯》

通常罠

 

「デッキからカードを3枚ドローし、その後Dangerカードを含むカードを2枚捨てるマス!」

 

宣言し、サクラはカードを引き込み2枚を墓地に捨てる。

発動後、場に残ったカードを無意味に破壊する羽根帚。

 

「今墓地に送った未界域みのツチノコを効果で特殊召喚デス!」

 

墓地から小さな蛇が現れる。

サクラの場にはモンスターが2体。

壁には心もとないかもしれない。

しかし未だカードを引くことを辞めぬ。

それは騎士が剣を構えることと同義。

亜美は口角をあげた。

 

「……エアーマンを召喚!」

 

E・HEROエアーマン

攻:1800 風 戦士族 星4

 

「エアーマンは召喚された時、デッキからHEROモンスターを手札に加えられるわ! この効果でアタシはE・HEROオネスティ・ネオスを手札に加える!さらに手札から融合を発動!」

 

《融合》

通常魔法

 

「手札のリキッドマンとスパークマンで融合!」

 

水属性HERO +光属性HERO

 

「――それは太陽の移し身、悪を滅する焔の英雄!」

 

2つの属性を持つHEROが混ざり合い、爆発するようなエネルギーが放出した。

 

「融合召喚!! 来なさい、E・HEROサンライザー!!」

 

E・HEROサンライザー

攻:2500→2900 光 戦士族 星8

 

E・HEROエアーマン

攻:1800→2200

 

「素材になったリキッドマンとサンライザーの効果が発動するわ!」

 

chain1 E・HEROリキッドマン

 

chain2 E・HEROサンライザー

 

「サンライザーは、融合召喚さるた時、デッキからミラクルフュージョンをサーチできる!さらに、リキッドマンの効果!融合素材になった場合、デッキから2枚ドローし、手札を1枚捨てるわ!」

 

カードを素早く操り、すぐさまフィールドに目を向けた。

 

「……バトル!」

 

ーバトルフェイズー

 

「エアーマンでビッグフットに攻撃!」

 

E・HEROエアーマンが飛び上がり、旋風を巻き起こす。

さらに援護するようにサンライザーも太陽のような輝きを放つ。

対するサクラは――しかし動じることなく腕を薙ぎ払う。

 

「墓地の超電磁タートルの効果を発動!!」

 

《超電磁タートル》

効果モンスター

 

「墓地のこのカードをgameから除外することで、デュエル中に一度だけバトルフェイズを強制終了させマス!」

 

「!」

 

場に現れた機械の亀が高圧電流を流し互いのモンスターを弾き飛ばす。

 

ーメインフェイズ2ー

 

「この状況からでも防御カードがあるなんて、やるじゃない!」

 

「言いマシタ! 諦めるしないと!」

 

「そうこなくちゃ! アタシはカードを1枚セットしターン終了!」

 

ーエンドフェイズー

 

祭乃木亜美

LP:4000

手札:3

マジックトラップ:1

フィールド:

E・HEROサンライザー

E・HEROエアーマン

 

 

ードローフェイズー

 

「ワタシのターン!」

 

サクラは強くデッキからカードを引き抜く。

これで手札は2枚。

カードを見て、サクラは涙がこぼれそうになった。

デッキはまだ勝ちを諦めていない。

自分も同じ。

ならばたとえ結果がどうあろうとも。

ならば誰になんといわれても。

構いはしない。

 

ーメインフェイズー

 

「手札よりマジックActivate!」

 

《団結の力》

装備魔法

 

「団結の力!?」

 

発動されたカードに亜美は目を見張る。

サクラは気にせずつづけた。

 

「このカードは、フィールドのモンスターの数分攻撃力が800point UPシマス! ビッグフットに装備!」

 

未界域のビッグフット

攻:3000→4600

 

「攻撃力4600!!」

 

エフェクトにより未界域のビッグフットの身体が膨れ上がるのを見て亜美は思わず叫ぶ。

圧倒的な攻撃力。

しかし亜美は手札をちらと一瞥しサクラに向けて言った。

 

「大した攻撃力だわ!! だけどあたしの手札には攻撃宣言時にHEROの攻撃力を上昇させるオネスティネオスがある! 攻撃してきても跳ね飛ばすわよ!!」

 

「YES! あなたのmonster、とても強いデス! But、この攻撃はソレ乗り越えるデス!! field magic 発動!!現れるデス!!未界域-ユーマリア大陸!!

 

《未界域-ユーマリア大陸》

フィールド魔法

 

地響きと共に景色が変わる。

雄大な大地が辺りを包んでいく。

しかしそれは不可思議な生き物たちの巣窟。

人知の届かぬ未開の地。

サクラは言う。

 

「The effect is activated! ワタシのmonsterを対象とし、そのmonsterを直接攻撃可能にシマス!!」

 

『なんとぉぉぉ!! 攻撃力4600のモンスターに禁断のダイレクトアタック効果!! この最後の特攻が決まればサクラ・テイラー・ミドルの大逆転勝利だぁあ!! チームHEROラストプレイヤー祭乃木亜美、この攻撃をしのげるかかぁぁあ!!!?』

 

ーバトルフェイズー

 

マイクパフォーマンス。

サクラも胸が高鳴っていく。

これが正真正銘、最後の行動。

決まれば勝ち、防がれれば負け。

万感の願いを込めてサクラは宣言する。

 

「GO Bigfoot! Direct Attack!!」

 

未界域のビッグフットが咆哮をあげながらフィールドを駆ける。

HEROたちは地形に阻まれて動けない。

ビッグフットの足音が亜美に向かう。

亜美は―――。

 

「アタシは負けない。アタシだって負けるわけにはいかない! アンタの全力にアタシも応える!! トラップ発動!!! クリスタル・アバター!!」

 

《クリスタル・アバター》

通常罠

 

「クリスタル・アバター!?」

 

発動と同時に閃光。

サクラが眼を開けるとフィールドには――亜美がいた。

正確には亜美の身を真似たモンスターだ。

亜美は言う。

 

「相手の直接攻撃宣言時、その攻撃力がアタシのライフポイントを超えている場合に発動できる! このカードはアタシのライフと同じ攻撃力を持つモンスターとなり攻撃対象を移し替える!」

 

クリスタル・アバター

攻:4000 光 戦士族 星4

 

亜美自身を映すモンスター。

それがビックフットの前に立ちはだかる。

攻撃対象を移し替えられたビックフットはそのまま拳を振り上げた。

サクラは負けじと叫ぶ。

 

「But、攻撃力はこちらが上デス!!」

 

未界域のビッグフット

攻:4600

 

クリスタル・アバター

攻:4000

 

未界域のビッグフットがクリスタル・アバターを殴り飛ばす。

破壊された破片が亜美の身体を掠めていく。

 

祭乃木亜美

LP4000→3600

 

しかし。

クリスタル・アバターの破片は再びフィールドへ集結し亜美の姿を取り戻す。

 

「え!?」

 

サクラは目を見開いた。

亜美の姿をしたクリスタル・アバターが拳を握り吶喊しているからだ。

「クリスタル・アバターは!」と亜美が声を上げる。

 

「戦闘で破壊された場合、このカードが持っていた攻撃力分のダメージを相手に与える!!」

 

「そんな!! クリスタル・アバターの攻撃力は―――4000!!」

 

亜美の姿をしたクリスタル・アバターがサクラの懐に入り込んだ。

そしてそのまま拳を下から突き上げてサクラのライフポイントをすべて削り切ってしまった。

 

「あああ……!!!」

 

サクラ・テイラー・ミドル

LP:4000→0

 

『決まったァァァァァァァ!! 途中、不正行為による中断に見舞われたが、ここでゲームセット!! 勝者は、奇跡のチーム、チームHEROォォォ!!!』

 

――ワァァァァッ!

会場が沸き上がる。

だがどこかこれまでよりも静かに感じる。

 

「ぁぁ……」

 

サクラはガクッと膝をついた。

「っしゃ!」と亜美が拳を握る。

次の瞬間だった。

関係者席から雪崩れてくるように記者達が駆け寄ってきてあっという間に亜美を取り囲んでしまった。

亜美は目を白黒させて辺りを見た。

抜けられそうな隙間はない。

 

「!?」

 

「対戦お疲れ様でした! ベスト4進出おめでとうございます!」

 

記者の1人が無遠慮にマイクを向けてくる。

どこを見えてもカメラのレンズと記者の煌々とした目だけ。

 

「え、え、ちょっ、ちょっと待って……!」

 

「途中、許し難い不正行為がありましたが見事、相手を倒しましたね! 今のお気持ちを!」

 

「ちょっと! その前に、あの人たちと……」

 

「不正行為をした汚い連中を粉砕してとても気持ち良かったですね! 今後の抱負を!」「今後の対策を……!」「〜〜!!」「こっちむいて~!」

 

畳み掛けるような声かけに亜美は大声を上げた。

 

「ちょっと、話を聞いてったら!」

 

その刹那だった。

カンッと遠くで何かが落ちる音がした。

絶え間ない記者たちの声をすり抜けるような甲高い音。

 

「……!」

 

亜美がその音の方に目を向けるとそれは空き缶だった。

ツンと香るアルコールの匂い。

と同時に。

揺れんばかりの怒号がチームBandit側スタンドから聞こえてきた。

「coward! coward!」

「Boo!」

「Fuck you!」

「Go home!」

 

よく聞き取れない英語。

しかし強い言葉であることはわかる。

次々と相手フィールドにゴミが投げ込まれていく。

 

「ッ……!」

 

サクラは辺りを見渡す。

大きなブーイング。

自分達を応援していたファンたち。

不正を行い、あまつさえ勝てなかったのだ。

サクラはゴミの雨が降り注ぐ中、ただ観客席を見つめていた。

それが亜美の目にやけにスローモーションに見えた。

次の瞬間、火がついたように一気に頭が沸騰した。

 

「どいて!!!」

 

ドンと半ば強引に記者を跳ね除ける亜美。

そしてMCの元まで駆けていく。

「え?」と唖然とするMCの持つマイクに亜美は手を伸ばす。

 

「ちょっと貸して!!」

 

返事も聞かずにマイクを奪い取ると亜美は音割れも気にせず叫んだ。

 

『コラァァァァァァァァァァァァァ!!!!』

 

劈くような声に一瞬会場がざわめく。

亜美は止まらない。

 

『今ゴミ投げたやつ!!! アンタらに何がわかんのよ!!全力で戦ったやつにすることがそれなわけ!!? ふざけんじゃないわよ!!』

 

確かに不正があった。

だが、2人のデュエリストは正々堂々と全力のデュエルを見せたはずだ。

亜美は喉が張り裂けんばかり叫んだ。

 

しかし届くことはない。

声も。気持ちも。

そんな気など知りもせずゴミを投げ続ける相手スタンド。

 

『こんのぉ……!!』

 

マイクをMCに押し付けると亜美は悔しげに拳を振るわせた。

 

「あったまきた!! ゴミ投げたやつ全員ぶっ飛ばしてやるわ!!」

 

「STOP!!」

 

今にも駆け出しそうな亜美をその声が止めた。

声の主はサクラだった。

彼女は亜美の元まで歩いてくると緩やかに首を振った。

 

「ありがとございマス。あなたの気持ち、とても嬉しデス。あなたと最後までデュエルできたこと、そしてこうして声を上げてくれたこと。それだけでわたし救われマシタ」

 

「でも!! これじゃ……!!」

 

「ワタシたち、これからbashing受けるデショウ。Butあなたが気にしてはいけマセン。あなたは被害者であり、わたしたち加害者だからデス」

 

「だけど、アタシたちはアンタらを許したわ!! アンタたちはデュエルの腕を見せた!! それで……!!」

 

「そう。それだけで良いのデス。だからわたしは救われタ」

 

「アタシはーー!!」

 

「あなたが全てを助けるはできナイ、する必要もないのデス」

 

「……!」

 

緩やかに、しかしハッキリと言うサクラに亜美は窮した。

実際に自分にできることはなかった。

ゴミは依然投げ込まれている。

サクラはゴミが飛び交うスタンドに目を向けた。

 

「あなたに貰ったチャンスはわたしを救いマシタ。マイナスに立ち向かう力得マシタ。だからここからはわたしたちの責任デス」

 

「……アタシたちはアンタらの強さを知ってる! それだけは……忘れないで……!」

 

「of course」

 

朗らかに笑うとゴミの雨に向かって歩いていくサクラ。

亜美は少しの間立ち尽くすと拳を握りながら仲間の待つベンチに引き返した。

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

雨のように投げ込まれるゴミ。

ここのせは眉を潜めてフィールドを見つめた。

 

「おいおい、なんでぇこりゃ……」

 

ゆきも目を伏せてつぶやく。

 

「……ひどいです……」

 

すると足音がして全員が目を向ける。

険しい顔の亜美が戻ってきていた。

「……あ、祭乃木」と良平が言うも二の句が紡げない。

亜美は言う。

 

「悔しいけど、アタシたちにできることは……ないわ。帰るわよ、みんな」

 

…………

……

 

[一方 某所]

 

剥き出しのコンクリート。

うちっぱなしとは言うものの、デザインなどではなく武骨なだけ。

真っ白いLEDの光が無機質に照らす部屋だった。

そこに男――ギーク・ハワードは椅子に座らせれていた。

 

「けっ、ダリィ仕事だったぜ」

 

誰に言うでもなく悪態付くとギークは目の前の男2人に水を向けた。

 

「で? 俺様をこんな部屋に連れてきやがったのは、どういう了見だよ? デュエルアカデミアのお偉いさんよぉ」

 

立っていたのは恰幅のいい男性と白衣に眼鏡をかけた男性。

林原漠デュエルアカデミア理事長。

そして眼鏡をかけた男性――ウィリアム・スミス。

何も語らない2人にギークは鼻で笑ってつづけた。

 

「まぁいい。さっさと金を寄越せ。てめぇらのシケたイカサマ実験に付き合ってやったんだからよぉ」

 

そういうとスミスが冷たく言葉を返す。

 

「何を言っているんだ。目標を達成する前に無様に負けた貴様に報酬なんかあるわけないだろ。大体、我々は公正デュエル委員会でもある。不正行為を見逃せないな」

 

「ふざけんな! 話がちげぇじゃねぇか!! 大体、そのイカサマ装置を寄越してきたのはてめぇらだろうが!!」

 

「ふん。クイーンと戦いすらできずに負け続け、挙句に見透かされるなんて失態を犯した貴様に"我々が手を貸す"わけないだろう」

 

「なんだとォ!? てめぇら! ただじゃおかねぇからな!!」

 

弾かれたように懐に手を伸ばすギーク。

そこには拳銃。

しかし。

 

「ーーうルサい」

 

林原漠は一言そう言い放つ。

やがて影からズズズと黒いモヤが沸き出てギークを縛り上げてしまう。

 

「ぐぉぉ!?」

 

カチャンと拳銃を落としてしまう。

凄まじい力で締め上げられ息もまともにできない。

林原漠は冷たく言う。

 

「……もウ用済みだ。不正を犯し汚いディアハしカできない愚か者として消エろ」

 

「な、なんだこれェ!! はなせぇ!!」

 

苦し紛れにじたばたとあがくギーク。

しかし巻き付く黒い瘴気のようなモヤをはがすことはできない。

そんなギークにスミスはにやりと笑って近づいた。

 

「……せっかくだ、お前も使ってやろう」

 

言うと手元のタブレットを操作する。

床が開き軌道音と共に新たな床がせりあがってきた。

ゆっくりと上がってきたそれは大仰な装置と、それに取り付けた鏡のようなものだった。

 

やがてけたたましい稼働音がして地面が揺れる。

そしてキラッと鏡が輝いていく。

まるで鐘を突いたような音と共に半透明の振り子が鏡の前で揺れていた。

 

「ァァ……あぁぁ!!」

 

ギークが突如声を張り上げた。

内部を破壊されるような感覚。

否、麻酔せずに整形手術させられているような幻痛。

 

「や、やめ……ァァァァァァ!!!」

 

男の悲鳴が響き渡る。

しかしその声は誰に聞かれることもなく。

ただ虚空へと消えていくばかりであった。

 




変更前と結末自体は同じなんですが、デュエル内容を少し変更してます。
やや苦い終わり方で恐縮ですが……。
この後の展開に繋がっていくためなのでご容赦いただきたく……。
是非これからも読んで頂けたらと幸いです!
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