遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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第39話 「Wake Up.You are HERO.」後編

 

「なによこれ……。なんなのよこれ……!」

 

目の前の光景が信じられず、亜美はただ呆然と呟いた。

人であったはずの男がおぞましい怪物へと成り果てている。

その狂気に満ちた光景にリオは恍惚とした表情を浮かべていた。

 

「きゃはははっ、マジサイコーに痺れるっ」

 

うっとりと自分の豊満な胸を掻き抱く。

阿久津と融合した巨大なモンスターは、地響きのような轟音と共に口蓋を開けた。

エネルギーが渦を巻きながら収束していく。

 

「グギァァァァァァッ!!」

 

空間が軋むほどの高エネルギー反応。

亜美は叫んだ。

 

「ネオス!!」

 

「ハァッ!!」

 

亜美の守護者は主の危機を前に一歩も引かず両腕を固く交差させて身構える。

 

「ガァァァァァァァァァァッ!!」

 

凝縮された光が解き放たれ、凄まじい熱量の奔流となってレインボーネオスに直撃した。

 

倉庫全体を揺るがすほどの衝撃。

二つのエネルギーが激しく衝突し、光の柱が天を突く。

レインボーネオスの巨体が圧倒的な圧力に押し込まれ、悲鳴のような呻き声を上げた。

その姿に無数の亀裂が走り、像が安定しなくなる。

 

「くっ……」

 

やがて拮抗は破られた。

無数の火花が弾け、閃光と共にすさまじい爆発が起こる。

 

「グォッ!!」

 

ガラスが砕け散るような甲高い音を立てて、レインボーネオスの身体が粉々に砕け散った。

爆風が亜美の身体を容赦なく打ち据える。

 

「ッァァァ!!」

 

なすすべもなく吹き飛ばされ、コンテナの残骸に叩きつけられた。全身を打つ鈍い痛みで息が詰まる。

 

「ぐっ……」

 

亜美がもがいていると、ぬるりとした何かが足に絡みついた。太く、蛇のような禍々しい触手。それは怪物と化した阿久津の腰から伸びていた。

 

「しまっ……」

 

抵抗する間もなく、触手は亜美の身体を捕らえると、肉が軋むほどの力で締め上げた。

 

「へへへっ……」

 

怪物が嗤う。

 

「っぁぁ……!」

 

万力のような力に、亜美の骨が悲鳴を上げた。

 

「やレ、ティエラ」

 

背後に立つ巨大なモンスター、インフェルノイド・ティエラの口蓋に再び光が集束し始める。

 

「キィォォオォオォオッ」

 

(……くそっ、こんな……!)

 

なすすべもなく死を覚悟した、その時だった。

 

「……ーーダークネクロフレア……」

 

どこからか響いた冷静な声と共に、腐り果てた紅い瞳を持つ黒い竜が虚空から現れ、その顎から黒いエネルギー弾を撃ち込んだ。

それは、亜美を掴んでいた触手に正確に命中し、小規模な爆発を起こして肉の一部を吹き飛ばした。

 

「ぐぅぅぅ!!?」

 

不意の一撃に、怪物が苦悶の声を上げる。拘束が緩み、亜美の身体が地面に投げ出された。

 

「きゃぁっ……!」

 

「な! どこから!?」

 

リオが驚いて周囲を見回す。倉庫の入口、砕けた鉄扉の向こうに、一つの人影が静かに立っていた。

 

「ッ……はっ……め、恵……!?」

 

「……時空震源となりえる熱源を視認。敵性と断定。対機皇帝戦闘シーケンスを開始。擬似運命力、解凍展開……」

 

恵の言葉と同時に、彼女の身体から放たれた光が、側に控える真紅眼の不屍竜を包み込む。

威圧感が増したように感じられた。

 

「ガォオォオォオォオォオ!!」

 

「恵……! 気をつけて……!」

 

「てめェェ、邪魔しヤがっテェェェ!!!」

 

阿久津の怒号に呼応し、インフェルノイド・ティエラが再びエネルギーを収束させる。

 

「ギィガァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「……ダークネクロフレア……」

 

恵は身構え、命令を下す。真紅眼の不屍竜は、ティエラの熱線と同時に漆黒のブレスを放った。

 

二つのエネルギーが空間の中央で激突し、激しい火花を散らしながら拮抗する。やがて均衡が破れ、大爆発が巻き起こった。

 

もうもうと立ち込める煙の中から、数本の触手が鞭のようにしなり、恵へと襲いかかる。

 

「……」

 

恵はそれを冷静に見据え、タンッと軽く地面を蹴って空中に舞い上がった。

直後、恵がいた場所のアスファルトを触手が貫き、轟音とともに粉塵を巻き上げる。恵はそのまま空中で滑らかに後方回転すると、亜美のすぐ側に音もなく着地した。

 

「……」

 

「恵……!」

 

「……祭乃木亜美。敵性体は私が撃破する。貴女はここから退避すべき……」

 

「だめよ! アンタを置いて逃げるなんてできるわけないじゃない!」

 

「……この場が危険であることは事実。無事では済まない可能性が高い……」

 

「それは恵だって一緒じゃない!」

 

「ごちゃごちゃうるせェェ!!」

 

痺れを切らした阿久津が、無数の触手を二人に向けて薙ぎ払った。

 

「……!」

 

「キュォオォオォオォオォオッ!!」

 

恵が動くより早く、真紅眼の不屍竜がその巨大な翼を広げ、二人を守るように立ちはだかった。

だが、その翼に無数の触手が絡みつき、その動きを封じてしまう。

 

「グォォオ……!」

 

必死に身をよじって抵抗するが、触手はさらに強く締め付けられるばかりだ。

 

「死ネェェ!!」

 

阿久津は身動きの取れない竜を指さし、その傍らに控えていたインフェルノイド・ネヘモスに命令した。

 

「ウォオォオォオォオォオンッ」

 

ネヘモスの口内に、先ほどと同じ蒼い光が宿る。

 

「根性見せなさい、レインボードラゴン!」

 

亜美は決闘盤を構え、魔法カードを発動させた。

 

《ミラクルフュージョン》

通常魔法

 

「墓地のネオスとレインボードラゴンで融合!」

 

光の粒子が墓地から舞い上がり、新たな融合の渦を生み出す。

 

「今よりも更に高く! その光は神秘の力を解き放つ!!」

 

閃光が弾け、その中から新たな英雄が姿を現した。

 

「出でよ、光の英雄! E・HERO The シャイニングを融合召喚!」

 

「フゥゥン、ハァッ!!」

 

「クォオォオォオ……!!」

 

半透明のレインボードラゴンが、亜美の背後で励ますように一声鳴いた。

 

「シャイニング、お願い!」

 

「ハァッ!!」

 

亜美の言葉に応え、シャイニングはネヘモスの前に瞬時に移動する。

直後、放たれた熱線をその身に受けた。凄まじい衝撃にシャイニングの身体が大きくのけぞり、そして耐えきれずに砕け散った。

 

「ウァァァッ!!」

 

「シャイニング……!」

 

その時、鉄が擦れ合う鈍い音が倉庫に響き渡った。

 

「!」

 

見ると、空間に開いた黒い穴から無数の鎖が伸び、恵の身体を瞬く間に縛り上げていた。

 

「……くっ……」

 

「恵!」

 

亜美が叫んだ先、リオの背後には、嘲笑う華を纏った少女のモンスターが浮かんでいる。

それは亜美が破壊したデュエルディスクと共に消えたはずのモンスターだった。

 

《連鎖空穴-チェーンホール》

通常罠

 

「なっ……!」

 

亜美は思わず周囲を見渡し、信じられない光景を目にした。

阿久津の隣にいたはずのリオが、いつの間にか天井から吊るされている仲間の横に移動し、おそらくはその腕から奪い取ったであろうデュエルディスクを展開していたのだ。

 

「ほらほらあんたもだよ!!」

 

リオが叫ぶと、亜美の周囲にも無数の黒い穴が口を開けた。

そこから、無数の鎖が蛇のように襲いかかってくる。

 

「くっ……!」

 

亜美は後方へ跳んで初撃を躱す。しかし、着地地点の空間に新たな穴が開き、そこから伸びた鎖が亜美の両足両腕を正確に、そしてあっさりと絡めとった。

 

「くそッ……!」

 

身動き一つ取れない。その様を見て、怪物と化した阿久津が勝利の雄叫びを上げた。

 

「くはははっ!!! チェックメイトだァァァ!!」

 

「グォォオォオォオォオォオッ!!」

 

その声に呼応するように、インフェルノイド・ティエラが最後の咆哮を上げた。

 

 

 

[ネオ童実野シティ 海浜エリア(童実野埠付近)]

 

アスファルトを打つスニーカーの音が、二人の荒い呼吸と重なる。

 

「ぜぇ……はぁぁ……ぜぇ……」

 

ここのせはついに限界を迎え、両手を膝について大きく肩で息をした。

 

「ハァ……ハァ……うぇっ……め、恵ん家から……童実野埠頭……と、遠っ……!」

 

良平も同様に立ち止まり、込み上げてくる吐き気を必死にこらえる。

 

「ゼェ……ぜぇ……恵のやつ……どこまで行きやがったんだ……」

 

「……とにかくこの辺りを……」

 

良平が顔を上げた。

その瞬間。

耳鳴りのような微かな圧力を感じた。

 

「!」

 

「どうした……?」

 

「……根拠はないけど、多分こっちな気がする……!」

 

良平はそう言うと、突然向きを変えて倉庫が立ち並ぶ一角を指差した。

 

「な、なんでぇそりゃ……! なんでそんなことがわかんだよ」

 

「わ、わからない……。でも、なんとなく力を感じる気がするんだ」

 

「……ダウジングってやつか?」

 

「……そんな感じ」

 

「まぁ、手掛かりがねぇんなら直感もありか! よし、行こうぜ!」

 

ここのせは疲労を気合でねじ伏せて言う

 

「こっちだ!」

 

良平は頷いて先導するように走り出した。

青い屋根の大きな建物が軒を連ねている。

近づくにつれて、それが巨大な倉庫群であることがよくわかった。

潮の香りと散乱するライフブイの破片。

途中、廃屋と納屋が入り乱れた薄暗い通りに差し掛かった時、良平は「うわっ」と小さく声を漏らして急に足を止めた。

道の真ん中に、人影がうずくまっていたのだ。

 

「おぶっ……!」

 

良平の背中に、止まりきれなかったここのせが衝突する。

 

「ッ〜、なんでぇ、急に……」

 

「い、いや人が……」

 

「……」

 

それは肩口ほどに切り揃えられた髪の少女だった。

彼女は力なくその場にしゃがみ込み、身体を小さく丸めている。

着ているのは寝巻きのような薄ピンクの服。

整えられていない髪が海風に揺れている。

なぜか靴を履いておらず、汚れた素足が痛々しい。

 

「あ、あの大丈夫で……」

 

良平は心配そうに声をかけ、回り込んで顔を覗き込む。

顔を見て息を呑んだ。

 

「なっ……ま、間宮……!?」

 

「え!?」

 

思わずここのせも声を出す。

少女―――間宮ゆきはゆっくりと顔を上げ虚な瞳を向けた。

 

「……ひ、日和田……さん……?」

 

「ど、どうしたの!? こんなところで……」

 

あまりのボロボロさに良平は慌ててしゃがみ込む。

ここのせもアタフタしながら自らの着ているシャツに手をかけた。

 

「お、お前なんて格好してやがんだ! とりあえずオレのシャツ……は今汗まみれだから……おい良平!」

 

「俺のもだよ……!」

 

「……こ…このせさん……日和田さん……」

 

二人の顔を認識した途端ゆきの身体がわなわなと震えだした。

堰を切ったように瞳から大粒の涙が溢れ出す。

 

「……ぅぅ……ゥウぁぁ……! ぁぁぁぁ……!」

 

そのあまりに痛々しい泣き声に良平は狼狽えた。

 

「ままま間宮! どうしたんだよ……!?」

 

「ざいのぎざんが……さいのぎさんがぁぁ……!」

 

ゆきの言葉にここのせは目を見開いて言う。

 

「祭乃木……!? 今、祭乃木って言ったか……!?」

 

「祭乃木って、どういうこと……?」

 

良平が続きを促す。

しかしゆきはしゃくりあげてままならない。

 

「わだしがぁぁ……! わたしが悪いんですぅぅぅ……! ぅぁぁぁ……!」

 

「とにかく落ち着けって……」

 

良平がなだめようとした刹那。

ここのせの視界の端で、青い制服が揺れるのが見えた。

 

「!」

 

ここのせは弾かれたようにそちらを向く。

 

「今の……アカデミアの制服……」

 

物陰からこちらを窺っていた人影は、見られたことに気づくと慌てたように身を翻した。

 

「あっ」

 

「逃げやがった!? おい、良平! 間宮は頼んだぞ!」

 

ここのせは言い終わるが早いか、その人影を追って路地裏へと駆け出していった。

 

「え、あ、ちょっと!」

 

良平の制止の声は、もう届かなかった。

廃屋の迷路を二つの影が駆けていく。

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

「待てぇぇ!!」

 

「ぼぼぼ、ぼくは関係ないよぉ!!」

 

「関係ねぇことあるかぁ! オラぁ!!」

 

ここのせは最後の力を振り絞って加速する。

そして逃げる生徒の背中に飛びかかり地面に組み伏せた。

 

「ぎゃぁ!」

 

「捕まえたぞコラァ! てめぇ、間宮に何しやがった!?」

 

ここのせは相手の胸倉を掴んで、無理やり引き起こす。

 

「ままま待って!! ぼく、しらない! ホントに関係ないんだよぉ!」

 

「しらばっくれんじゃねぇってんだ! お前、よく見たらチーム煉獄だろ! 動画で見たぞ!」

 

「ひ、ひぃ! き、君はだれなのぉ!?」

 

その生徒――黒河唯人は恐怖に顔を引きつらせた。

【チーム煉獄メンバー オベリスクブルー3年 気弱男子 黒河唯人】

 

「オレはチームHEROの能瀬心だ! 次の対戦メンバーくれぇ覚えとけ!」

 

「え、チームHEROの……!? そ、それならぼくに構ってる場合じゃないよぉ!」

 

「あぁ? なんでぇ、そりゃ」

 

「きき君のチームメンバーが危ないかも……!」

 

「なんだと? 適当言って煙に巻くつまりじゃねぇだろうなぁ?」

 

「ち違うよ……! どこかで阿久津が君の仲間を攫って暴れてるかもしれない……! ぼく、聞いたんだ……!」

 

ここのせは黒河の胸倉をさらに強く掴んだ。

 

「あぁ!? どういうことだ!?」

 

「ぐぇぇ、ぼ、ぼくも詳しくはしらない……! あ、あんまり関わりたくないんだよぉ! 下級生の子に脅さ……頼まれてなければ、阿久津の後なんかつけないよぉ……」

 

「阿久津……」

 

ここのせの脳裏にここまで得た情報が巡る。

 

『そしたら、その試合で、あのインフェルノイド使いの攻撃が実体化したって』

 

『ざいのぎざんが……さいのぎさんがぁぁ……!』

 

それらが結びついて結論への螺旋が収束した。

 

「そういうことか、くそったれ……!」

 

ここのせは舌打ちすると黒河を突き放し、すぐさま良平の元へと駆け戻った。

 

「ぅぁぁぁぁ……! ごめんなさい……! ごめんなさいぃぃさいのぎさん……!」

 

「ま、間宮、落ち着いてよ……! 泣いてたらわからないよ……!」

 

「良平!」

 

息を切らしたここのせが戻ってきた。

 

「あ、ここのせ! どうしたんだよ、急に……」

 

「今すぐ力を感じるっていってたところまで行くぞ! 祭乃木が危ねぇ!」

 

「え、ど、どういう……!」

 

「覗いてる野郎がいたからとっ捕まえたんだ! そしたらそいつチーム煉獄のメンバーだったんだよ! そいつが吐きやがった!」

 

「チーム煉獄ッ……!?」

 

「ぁぁぁ……!」

 

ゆきの嗚咽が、良平の耳に突き刺さる。彼の頭の中で、バラバラだった情報が一気に繋がり始めた。

 

『チーム煉獄のあの男については、デュエルアカデミアの上層部が関係していると睨んでるの』

 

『ーー危険な実験をしていないか、などだな』

 

『……奴のモンスターから戦闘ダメージを受けた時、ソリッドビジョンでは有り得ない衝撃を浴びタ』

 

良平の中で言葉の奔流が渦巻く。

 

「っ……!」

 

『デュエルアカデミアってあんな不良みたいなのいるんだね……。なんか怒鳴ってたし、Dホイールすっごいうるさいし……』

 

たどり着く答え。

歯を食いしばって思考する。

 

(間宮が泣いてる理由はこれなのか……!くっ、祭乃木が巻き込まれてるかもしれない……。でも間宮をこのままにしておけない……)

 

相反する行動指針。

どう行動すればいい?

何をするのが最適?

 

(何が起こってるかさっぱりだ……! 俺たちに何ができる……?くそ、考えがまとまらない!)

 

「良平!」

 

ここのせの焦った声が、思考の渦を断ち切る。

 

(でも何もしないのは1番悪手、か……! ちくしょう、こんな時祭乃木なら……ってその祭乃木を助けに行くんだろ!! しっかりしろよ!)

 

良平は自分を叱咤すると、泣きじゃくるゆきの両肩を掴んだ。

 

「間宮!」

 

「ッ!」

 

ゆきの身体が驚きに震える。

 

「……事情はなんとなくわかった。大丈夫。祭乃木のことは俺たちに任せてくれ。ここは危ないかもしれないから間宮は安全なところまで逃げるんだ」

 

「え……」

 

(大丈夫、なんてどの口が言うんだろ。俺にはまだ今の状況がちゃんと見えてないのに。でも、俺にはそれしか言えないから)

 

良平は心の内の葛藤を押し殺し、ここのせに向き直った。

 

「……行こう、ここのせ!」

 

「おうよ!」

 

二人はゆきに背を向け、亜美がいるであろう倉庫群へと、再び走り出した。

 

…………

……

 

[廃倉庫前]

 

二つの足音が、静まり返った湾岸エリアに響き渡る。息を切らしながら走る良平とここのせ。

 

「ッ……! ストップ!」

 

先行していた良平の制止に、ここのせも急ブレーキをかける。

 

「っと……!」

 

「ここだ……」

 

良平が呟いた直後、地を揺るがすほどの重い衝撃が走り二人の足元がぐらついた。

衝撃のあまり思わず身をかがめる。

倉庫の内部から金属を無理やり引き裂くような、おぞましい咆哮が聞こえてきた。

 

「グギァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「今の……!」

 

「モンスターの声……!」

 

二人は顔を見合わせると、音を立てないように廃倉庫の錆びついた鉄扉に駆け寄り、その隙間から内部を覗き込んだ。

そこには、異様な光景が広がっていた。巨体を苦しげにもがき、暴れている『真紅眼の不屍竜』。その周りでは、禍々しいオーラを放つ人型の化け物が甲高い笑い声を上げている。

 

「グギァァァァァァッ!?」

 

「くはははッ!!」

 

倉庫の柱には鎖で縛られた恵。

廃れて埃まみれな床はいくつも抉り取られた痕が残っていた。

 

「な、なんだあの化け物……! あんなの人じゃない……!」

 

目の前の光景に良平が戦慄する一方、ここのせは別の衝撃に襲われていた。

 

「ッ!!」

 

ここのせの脳裏に忘れることのできない光景がフラッシュバックする。

 

『理屈じゃネぇンだよォオ!』

 

(あれは星巡りで見たオレの……!?)

 

忌まわしき自分の姿。それが今、現実の存在となって眼前にいることにここのせは言葉を失う。

 

(どうしてアレが現実に……!?)

 

そんな二人を知らずに倉庫の奥で新たな戦闘が繰り広げられていた。

巨大なモンスターが口蓋から光線を放つ。

 

「ガァァァァッ!!」

 

光線は光り輝く戦士の体を直撃し、甲高い音を立ててその姿を砕け散らせた。

 

「ウォォォ!?」

 

「シャイニング!」

 

亜美の悲痛な叫びが響く。

 

「ほらほらあんたもだよ!!」

 

リオが言い放つと同時に、空間に黒い亀裂が走る。

そこから無数の鎖が金属音を響かせながら亜美に襲いかかった。

 

「くっ……!」

 

亜美は咄嗟に身を翻し、後方へ跳躍して初撃を回避する。

しかし、着地地点を的確に予測したかのようにワープする空間の穴。

新たな鎖が出現し、彼女の両腕両足を瞬く間に絡めとった。

 

「くそッ……!」

 

身動きを封じられた亜美を見て、化け物と化した阿久津剛が勝利を確信したように叫ぶ。

 

「くはははっ!!! チェックメイトだァァァ!!」

 

その声に応えるように、インフェルノイド・ティエラがとどめの一撃を放たんと咆哮を上げた。

 

「グォォオォオォオォオォオッ!!」

 

絶体絶命の窮地に、ここのせは叫ぶ

 

「祭乃木!! 恵!! くそっ!」

 

衝動のまま駆け出そうとした。

しかし、その腕を良平が力強く掴んで引き留める。

 

「待てここのせ!」

 

「がっ……! 止めんじゃねぇよ!」

 

「だめだ! あんなの正面からぶつかっても勝てるわけない!」

 

「だからって指咥えて見てるわけにはいかねぇだろ!」

 

「わかってる! でも立ち向かって勝てる相手じゃない! 隙を作って逃げることに徹するんだ!」

 

「隙ったって……!」

 

良平はここのせを制しながら、再び鉄扉の隙間から内部を鋭く観察した。

奥にあるもう一つの鉄扉。

乱雑に置かれた廃貨物や残骸。

そして敵の位置関係。

それら全てを目に焼き付ける。

 

「ここのせ! デュエルディスクは持ってる!?」

 

「お、おう! たが、モンスターは実体化できねぇぞ!?」

 

「わかってる! 作戦がある! いい? ここのせは奥から……」

 

[廃倉庫内]

 

 

倉庫に鎖がきしむ音が響く。

 

「……ッ……」

 

柱に縛り付けられた恵が苦痛に顔を歪めた。

足元では真紅眼の不屍竜が巨体をもがき呻き声を上げている。

 

「ゥウォオォオ……!」

 

「くっ……!」

 

同じく四肢を鎖に絡めとられた亜美も必死に抵抗を試みていた。

その様子をリオは心底楽しそうに見下ろしている。

 

「きゃははっ!! マジ絶景! ちょーウケる!! これであんたお終いよ!」

 

「アンタら……! 今までもこんなことして勝ち上がってたの……!?」

 

亜美の問いに化け物と化した阿久津剛が歪んだ欲望を隠そうともせずに答えた。

彼の体から禍々しい黒い瘴気が噴き出す。

 

「そウだ!! 俺が欲しいのは全て!! 俺が望むもノ全てだ!! その為なら他は全て踏み潰してもいイ!! その力を俺は手に入レた! ははは! サイコーだぜ、この力があれば勝利も金も女もレアカードも! 全て手に入る!! あとはあのチャンピオンをぶち殺せば俺は全てを手に入れるんだ!! ひゃははは!!」

 

その狂気に呼応するようにリオからも邪悪なオーラが立ち上った。

 

「きゃはっ! 努力とかちょー無駄! この力がアれば楽に勝てるもん!! あんたみたいな目障りなやつもこーんな楽にぶちのめせるんだもん!!」

 

「アンタら狂ってる……! アンタらなんかデュエリストじゃない!!」

 

亜美が叫ぶ。その真っ直ぐな瞳が、阿久津の神経を逆撫でした。

 

「ほざいてろ!! ァァ、その眩しさが目障りだ目障りだ目障りだァァ!!」

 

阿久津の体から再び瘴気が膨れ上がろうとした瞬間、鋭い光に阿久津の目が眩む。

 

「うっ……!」

 

甲高い飛行音が倉庫内に響き渡った。

三機の戦闘機が突入してくる。

 

「え……!?」

 

亜美も声を上げて音に目を向けた。

メタリックな機体がきらめきエンジン音が唸る。

飛翔体は見知った姿だった。

幻獣機メガラプター。

幻獣機ハリアード。

幻獣機テザーウルフ。

三機は華麗な編隊飛行で宙返りを見せると、阿久津の頭上をかすめるように機銃掃射を行った。

 

「幻獣機……!?」

 

「チィッ!!」

 

阿久津の舌打ちに反応しインフェルノイド・ティエラが主を守るように周囲を固める。

対する幻獣機たちはティエラを嘲笑うかのように周囲を高速で旋回した。

 

「小賢しい蝿がァァァァァァ!!」

 

阿久津から伸びた黒い触手が幻獣機を薙ぎ払う。

しかし手応えはない。

触手が空を切ると幻獣機たちの姿はノイズと共に揺らめき、掻き消えた。

 

「なにぃ!?」

 

「ただのソリッドビジョン!?」

 

リオも叫ぶ。

注意が逸れた。

その一瞬。

 

「だらぁぁ!!」

 

物陰からここのせが雄叫びを上げて飛び出した。

 

「ここのせ!?」

 

「祭乃木! 恵! 今助けるぜ!!」

 

手にしていた鉄パイプを亜美を縛る鎖に力任せに振り下ろす。

甲高い金属音と火花が散るが鎖はびくともしない。

衝撃で痺れた手から鉄パイプが床に転がり落ちた。

 

「ッ痛ぇ〜〜!! くそっ、なんて硬ぇ鎖だッ……!! びくともしねぇ……!」

 

「ここのせ!! アイツらのデュエルディスクを狙って!!」

 

亜美の叫びが響く。

 

「デュエルディスク!?」

 

「ふざけやがってこのガキィィィィ!!!」

 

阿久津の怒りが爆発する。

ティエラの触手に掴まれてもがいていた真紅眼の不屍竜が、断末魔の叫びと共に砕け散った。

 

「グギァァァァァァッ!」

 

「グガァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

刹那。

ここのせが腰に下げていたデッキケースが鮮やかな青白い光を放ち始めた。

 

「なっ……!」

 

ここのせも自身のデッキケースに目を向ける。

 

(この青白い光……! 星巡りの時の……!?)

 

その光を浴びた瞬間、阿久津が頭を抱えて苦しみだした。

 

「ッ!!? ゥウゥゥゥウァァァァァァッ……!!」

 

ティエラもまた動きを止めて低く唸った。

 

「ガァァァァァァァッ……」

 

「え!?」

 

「グゥゥゥ返せェェソピアァァァァァァァァァァァァッ奪うゥゥゥウゥゥッ!!! ァァァァァァッ」

 

髪を振り乱し、阿久津はよだれを垂らす阿久津。

絶好の好機にここのせは再び駆け出した。

 

「ッ!!」

 

「お前ェ!! やっちゃえ! フレシアちゃん!!」

 

リオの命令にフレシアの蠱惑魔が姿を現し、妖艶に微笑む。

足元から地面が割れ、意思を持つかのように暴れる太い荊がここのせの胴体を痛烈に打ち抜いた。

 

「ごっ……!!」

 

くの字に折れ曲がった体が壁まで吹き飛ばされ、激しい痛みにうずくまる。

 

「ぅ……ぁ……」

 

「ここのせ!」と亜美が叫ぶ。

声は高い屋根に反響して消えていく。

 

「きゃははっ!」

 

「……ぅ……ぐっ……」

 

「きゃは! あんたも宙吊りにしてあげる!!」

 

フレシアの蠱惑魔が再び微笑み、足元の地面に亀裂が走る。

 

「……ッ! はっ、ヒーロー部を舐めんなよ……!」

 

ここのせが虚勢を張った、その時。

物陰から新たな影が飛び出した。

 

「なっ!?」とリオが鋭く振り向く。

 

「危ないから動くなよ!!」

 

良平が振りかぶった鉄パイプが、リオのデュエルディスクを粉々に砕いた。

 

「きゃぁっ!!?」

 

「よしっ!」

 

良平は鉄パイプを投げ捨てると仲間のもとへ駆け出す。

ディスクが破壊されたことでモンスターは光の粒子となって消え、亜美たちを縛っていた鎖も霧散した。

解放された二人は、軽やかに床へと着地する。

 

「ッここのせ!」

 

「し、心配いらねぇ……!」

 

駆け寄る亜美に言葉を返し、ここのせはふらつきながらも立ち上がった。

 

「祭乃木! 恵! 早く逃げよう!」

 

良平が叫んだその時、阿久津の体から再び黒い瘴気が噴き上がった。

そしてすぐに収束していく。

 

「ァァァァ!!」

 

瘴気の奔流に、四人は思わず身を固くした。

 

「……くっ……」

 

「うっ……!」

 

「うぉっ……!」

 

「うわっ……」

 

やがて瘴気が完全に収まると阿久津はまるで何事もなかったかのように落ち着いた声で呟いた。

 

「……久々に暴れやガッて……。抑えるのに苦労したぜ……」

 

「……きゃはっ、暴走とかやめてよね」

 

リオの言葉を無視し、阿久津はここのせを真っ直ぐに見据える。

 

「キサマ、星遺物を継ぐ者か……」

 

「星遺物を継ぐ者……?」

 

亜美が訝しげに呟く。

 

「……お前も星遺物の力を持っているのか……!」

 

「お前みたいな出来損ないと一緒にするな!! 俺は特別な運命力を持ってうまれた!! 俺は選ばれたんだよ!! この力になぁ!!!」

 

「創星の力を無闇に使ったらどうなるかお前も知ってるだろ! 取り返しがつかなくなるぞ!」

 

「何言ってんだてめぇ。この力はテメェみたいな出来損ないと違って借り物じゃねぇ!! 正真正銘、俺の力だ!!」

 

邪悪な笑みを浮かべ拳を握りしめる阿久津。

 

(あれは……星遺物に宿った力じゃないのか……? 星巡りをしてない……?)

 

ここのせが思考を巡らせる暇もなく、阿久津がティエラに攻撃を命じた。

 

「アイツをひねり潰せ!!」

 

「ァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

ティエラがここのせ目掛けて突進する。

デッキケースから放たれる青白い光が主を守るようにバリアを形成する

だがティエラの猛進の前ではあまりにも無力で、一瞬で破壊されてしまった。

 

「くっ……!!」

 

「ここのせ!!」

 

「……擬似運命力、凍結展開……!」

 

ティエラとここのせの間に、恵が滑り込むように割り込んだ。

突き出された手から薄青い障壁が展開され、ティエラの突進を食い止める。

障壁とティエラの巨体が激しく衝突し、凄まじいエネルギーが火花となって散った。

 

「ァァァァァァァァァッ!!」

 

しかし、それも長くは続かない。

ティエラが力を込めると、障壁は甲高い音を立てて砕け散った。

 

「……うっ……!」

 

「うぉぁっ……!?」

 

凄まじい衝撃と共に恵とここのせは壁まで吹き飛ばされ背中を強かに打ち付けた。

 

「ごはッ……!」

 

「……」

 

「うッ……! め、恵……!」

 

ふらつきながらもここのせは立ち上がろうとする。

恵の体はシステムエラーを起こしたかのように、カクカクと不自然に震えていた。

 

「……こ……このせ……怪我は……ない……?」

 

「オレは大丈夫だ! 恵!」

 

ここのせは恵の体を抱き上げる。

 

(恵はオレの代わりにほぼ直撃だった……!!)

 

「しっかりしろ恵!!」

 

「……心配……しないで……自己修復……プログラムを……作動させた……」

 

「アンタねぇぇ!!!」

 

亜美の怒声が響くが、阿久津は鼻で笑うだけだった。

 

「はっ、その程度の星遺物の力なんぞ、脅威にもならねぇ。それより祭乃木亜美、ついでに日和田良平、テメェらは目障りだ。ここで潰す」

 

「ッ……!」

 

「!」

 

(どうすればいい? なんとかしてみんなを逃さなきゃ……! アイツの狙いは、アタシ……。あ、アタシが囮に……)

 

亜美が覚悟を決めようとした、その時。

 

「もうやめてください!!!」

 

場にそぐわない、か細くも芯の通った声が響き渡った。

 

全員の視線が、声の主へと集まる。

 

「あぁ?」

 

阿久津がギョロリと目を剥くと、入り口に立つ少女、ゆきが恐怖に体を震わせた。

 

「……っ!」

 

「ゆき……!? どうしてここに……!?」

 

「あァ? なんだテメェ」

 

「……ヒッ……わ、わたしのことはどうしても構いません……! だから……みんなを傷つけるのはもうやめて……!!」

 

「テメェをどうしてもいいだと?」

 

阿久津はゆきに向かって、ゆっくりと歩み寄る。

 

「……」

 

次の瞬間、乾いた打撃音が響いた。

 

「ぎゃっ……!」

 

阿久津の拳がゆきの頬を打ち、さらに回し蹴りが腹部にめり込む。

 

「テメェに何の価値があンだよ!!! あァ!? テメェがやつらのデッキ持ってきてりゃこんなことにならなかったんだろうがよォォォ!!」

 

阿久津は倒れたゆきの体を容赦なく蹴りつけた。

 

「うっ……! ぎっ……!」

 

「このぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」

 

亜美が怒りに任せて飛び出すが、ティエラが放った牽制の光弾がその行く手を阻む。

 

「グギァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

「祭乃木!!」

 

良平が咄嗟に亜美を突き飛ばし二人して床を転がった。

背後で凄まじい爆発音が轟く。

 

「ぐっ……!」

 

「うっ……!」

 

「ゆき!」

 

亜美はすぐさま立ち上がろうとするが、良平がその腕を掴んで制止した。

 

「待て祭乃木!」

 

「離しなさい!! ゆきが!」

 

「わかってる! ……俺があいつを引きつけるから、その間に祭乃木は間宮をあいつから引き離すんだ!」

 

「ダメよ! それじゃアンタが!!」

 

「祭乃木は一人だ! 身体は一つしかないし、腕は二本しかないんだ! 一人で全部を助けるなんてできるわけない!」

 

「ッ!」

 

良平は亜美の返事も聞かずに駆け出した。

 

(怖い……! あんな化け物に突っ込むなんて! でも俺は……!)

 

「うわぁぁぁぁぁぁっ!!」

 

「オォオラァァァァ!!」

 

良平の無謀な突撃は、しかし阿久津から伸びた黒い触手によって容易く阻まれる。

蛇のように巻き付いた触手が、良平の体を締め上げた。

 

「ぐぁぁっ……!」

 

ダメ押しに阿久津は倒れているゆきの頭を踏みつけ、勝ち誇ったように口を開いた。

 

「動クな、祭乃木亜美」

 

「うぅ……!」

 

「ぐぅ……!」

 

「ッ……」

 

苦しむ二人と、動かない恵を抱えるここのせを一瞥し、亜美は静かに両手を挙げた。

 

「……わかったわ。アンタの狙いはアタシなんでしょ。ならアタシをやりなさい。その代わり、良平とゆきをはなして」

 

「ぐっ……ダメだ……祭乃木ぃ……!」

 

良平が苦悶の声を上げる。

 

「くははっ! テメェを潰したら考えてやるよォ」

 

「……アンタ、そんな化け物みたいになって。アタシ達を潰して。一体何がしたいの?」

 

「あァ? 決まっテんだろ、クイーンを潰し、俺が頂点に立つためだ。俺はデュエルアカデミアの頂点に立った! なら次は世界にトップに立つべきだろうがよォオ」

 

「無理よ、アタシ達と正々堂々戦えないアンタがクイーンに勝てるわけないわ」

 

「黙れ、この力があれば俺は負けねェんだよ!!」

 

「だったらその力とやらでアタシとデュエルしなさい!! この臆病者!!」

 

「黙れェェ!!! やれェティエラァァァァァァッ!!!」

 

阿久津の怒号に呼応し、ティエラがその口内に破壊のエネルギーを収束させていく。

 

「ァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」

 

ティエラの不協和音のような嘶き。

 

「ッ……!」

 

亜美は迫りくる死を前に、静かに目を閉じた。

 

(ーーこのままでいいの?)

 

自分が自分に問う。

 

(ーーアタシが抵抗しなければみんなが巻き込まれなかったかもしれない。あの時と一緒)

 

脳裏に決闘者にゴミを投げつけられる光景が蘇る。

 

(アタシがしたことは無駄だったのかもしれない)

 

(アタシの自己満足だったのかもしれない)

 

(私は誰かを助けることで、結果的に自分を満足させてたのかもしれない)

 

(でも、目の前のことをアタシはどうしても放ってはおけなかった)

 

良平の言葉がこだまする。

 

『祭乃木は一人だ!身体は一つで、腕は2本しかないんだ!全てを救うなんてできるわけないんだよ!』

 

(知ってるわよ。アタシにできることなんてたかがしれてることなんて。)

 

(誰かを救うとき、誰かが痛い目に遭うことだってある)

 

(その犠牲を自分にするのがヒーローなのよ)

 

(アタシがやられてみんなが助かるならそれでいい。だから、これは正しい)

 

諦めにも似た感情が心を支配しようとした、その時。

 

(ーーー本当にそれでいいの?)

 

心の奥底から、もう一人の自分の声が聞こえた。

 

(もう一つ、忘れてることはない?)

 

それは?

 

(ーーヒーローは必ず勝たなきゃいけない)

 

さらに問う。

 

(このまま負けていいの?)

 

(誰も助けられないまま終わっていいの?)

 

自分に応える。

 

(ーーこのままでいいわけない!!)

 

父の言葉が脳裏をよぎる。

 

『亜美。暴力では、人は救えないんだ』

 

(わかってる)

 

知っている。

痛いほどに。

 

(それでも)

 

そうだ。

たとえそれでも。

 

(みんなのためになんとしても必ず勝つ)

 

胸に熱い炎が宿る。

 

(それが、アタシがなりたいヒーローでしょ!!!)

 

亜美のデッキケースから七色の光とレインボードラゴンの咆哮。

 

「クォオォオォオォオォオッ!!!」

 

対しティエラが放った熱線が亜美の体を容赦なく飲み込む。

凄まじい爆音と共に蒼い炎が燃え上がり、もうもうと粉塵が舞い上がった。

 

「祭乃木ィィッ……!!」

 

良平の悲痛な叫びが響く。

しかし爆炎を突き破るようにして一筋の光が天へと飛翔した。

それは空中で向きを変えると、ティエラに向かって目にも止まらぬ速さで直進する。

 

「ハァァァッ!!」

 

光はティエラの巨体を貫き、その姿を甲高い音と共に砕け散らせた。

 

「グギァァァァァァァァァッ!!?」

 

「何ィィ!?」

 

阿久津が驚愕に目を見開く。

 

「な……あれは……」

 

良平も思わず口を開ける。

 

「……さい……のぎさん……?」

 

ゆきも光に顔をあげた。

光は空中で静止すると、一層強く輝きを増す。バサリと音を立てて虹色の羽が広がり、その中心には、赤い髪を一つに結った亜美の姿があった。その体は赤と青を基調とした光のベールに包まれているが、うっすらと制服のシルエットが見て取れる。

 

「ハァァァァァァッ!!」

 

亜美は虹色の羽を羽ばたかせ、一直線に阿久津へと向かう。

 

「チィッ!!」

 

阿久津は良平を拘束していた触手を解き投げ捨てた。

 

「うわぁっ……!」

 

「クソ女がァァァ!!」

 

阿久津は腕を交差させ、防御の体勢をとる。

亜美は光を宿した拳を固く握りしめた。

 

「デリァァァァァァァァァッ!!」

 

二つの力が激突し、凄まじいエネルギーが倉庫内を吹き荒れる。

 

「きゃぁぁっ!?」とゆきが思わず叫ぶ。

 

「ぐぉっ……! さ、祭乃木……!」

 

ここのせも吹き付ける爆風に顔を顰めた。

やがて閃光が収まると、亜美の一撃が阿久津のガードを打ち破り後方へと吹き飛ばしていた。

 

「グゥゥウッ!」

 

「ふぅ……!」

 

互いに距離を取り亜美が着地する。

 

「テメェェェぶっ殺す!!」

 

阿久津の腕に禍々しいデュエルディスクが展開された。

 

「アンタみたいな臆病者に、ヒーロー(アタシ)は負けないわ!!」

 

亜美の腕にもまた光のデュエルディスクが現れる。

 

「ディア……!」

 

「デュエ……!」

 

「ーーそこまでだ。おいたが過ぎるぞ少年、少女」

 

凛とした女性の声が響くと同時に二つの影が動いた。

青いローブを纏い氷の剣を携えた男と青いベールを纏い炎の爪を持つ男。

二人は亜美と阿久津の間に割り込むと、それぞれのデュエルディスクに武具を突きつけ、デュエルを制止した。

 

「フンッ!」

 

「ほいほいっと!」

 

「アンタたちは……!」

 

氷の剣の男はチームディスティニーのアバンス。

 

「随分派手なケンカするんじゃなぁ、最近の若ぇのは」

 

炎の爪の男は絵草と名乗った。

 

「チームディスティニー……!」

 

知っているチーム名をここのせがつぶやく。

 

「ということは……」

 

という良平の声に応えるように。

ヒールが床を打つ音が響き、ゆっくりと一人の女性が姿を現す。

 

「感心せんな。自分を見失うとは」

 

現れたのは。

絶対王者――――クイーンその人だった。

阿久津は怯むことなく異形と化した眼で睨み付ける。

 

「あァ? 邪魔すンじゃねぇよ!!」

 

「……アカデミアの赤錆どもめ……よもや、ここまでとはな……」

 

「何言ってやがんだテメェ!!」

 

「自分を偽るのは辛かろう。このクイーンが解放してやる」

 

クイーンが虚空に手を差し出すと空間が歪み、荘厳な鏡が出現する。

 

「さぁ、己を見つめ直すが良い」

 

慈しむような声と共に鏡面が強く波打ち、不可思議な光を放った。

 

「グゥゥウッ……sophiaァ……! sophiaァァァァ!!」

 

「くぁぁっ……!?」

 

鏡の光が、阿久津と亜美を包み込む。

やがて光が収まると、阿久津は元の姿に戻り、亜美を包んでいた虹色の羽と光のベールも消え去っていた。

背後では、半透明のレインボードラゴンが静かに姿を消していく。

それを見届けたアバンスと絵草もまた、戦闘用の姿から普段の服装へと戻っていた。

 

「くっくっ、さてイタズラがバレてしまったぞ、少年。人数も不利だ。どうするかな?」

 

クイーンは妖艶に口の端を上げてアカデミア生3人を見下ろす。

 

「チィッ!」

 

阿久津が舌打ちした刹那。

湾岸から船の警笛が鳴り響いた。

 

「!」

 

音を聞いた阿久津の顔色が変わる。

リオが慌てて鎖で縛った男子生徒を床へ落としていた。

 

「さっさと降りろ!」

 

「ぐぇ」

 

「……テメェらは必ずぶっ潰すからな」

 

阿久津は吐き捨てると鉄扉に向かって駆け出した。

クイーンは追うこともせずただ目線だけを向けている。

 

「威勢の良いボウヤだ。だが気をつけたまえ。身の丈に合わん力は己だけでなく周囲をも滅ぼす。君はデュエリストであることをゆめゆめ忘れるなよ」

 

「うるせェ!!」

 

阿久津はバイクに飛び乗るとエンジンを吹かして走り去っていった。

 

「……アバンス、無駄ではあろうがボウヤ達をアカデミアまで送って差し上げろ。赤錆どもも警告くらいは感づくだろう」

 

「承知した」

 

アバンスの姿が掻き消える。

クイーンはこちらに向き直ると亜美の体を頭の先からつま先までじっくりと見つめた。

 

「……」

 

「な、何よ……」

 

「……」

 

クイーンは何も言わず、亜美の両腕を掴むと亜美の身体を優しく豊満な胸で抱きしめた。

 

「へ!? あ、ちょちょちょっと……」

 

「すまんな、助けてやれなくて。君たちを巻き込んでしまった」

 

「い、いや! な、なんでクイーンが謝るのよ……!?」

 

「アカデミアの連中に身体をいじられたのだろう? 君のように若きデュエリストを巻き込んでしまうとは、このクイーンの失態だ」

 

「な、なんのことよ!?」

 

抱きしめたまま、クイーンは良平へと視線を移す。

 

「日和田くん、アカデミアと深く関わるなと言ったはずだ。次は助けてやれるかわからないと伝えただろう」

 

「いや、あの、お、俺たちから関わったわけじゃ……。というかクイーン、多分勘違いしてると……」

 

「勘違いなものか。祭乃木くんは『影霊衣化(ネクロス化)』していた。この目で見たぞ」

 

「あ、アンタが何を言ってんのかわかんないけど、アカデミアなんか知らないわよ! アタシがああなったのは、アタシ自身もよくわからないけど……」

 

「なんだと?」

 

クイーンは驚いて亜美の体を引き剥がすと、両肩を掴んだ。

 

「では、どうやって影霊衣化した?」

 

「わ、わかんない……。なんとかしなきゃって思って気づいたら……」

 

「……なっ、自力で、だと……!?」

 

クイーンは顎に手を当て、信じられないといった様子で呟く。

 

「……精霊の力、か……? それとも運命を読み取れないほどのエナジーと強い自我意識で強引に『相応』させたと言うのか……!?」

 

「な、何言って……」

 

「祭乃木亜美」

 

クイーンは亜美の前にずいと顔を寄せた。

 

「な、何よ……」

 

「君はアカデミアと関わってはいけない。次の試合、棄権すべきだ」

 

「なっ……!」

 

「奴らのことはこのクイーンに任せておけ」

 

「そんなことできるわけ……!」

 

「この惨状を見てもか!」

 

クイーンの厳しい声に、亜美は言葉を詰まらせた。

周囲は怪獣に蹂躙されたかのような人ならざる傷跡。

床にへたり込む仲間たち。

クイーンは続けて言う。

 

「奴らは異常だ」

 

「それは……あいつらから逃げろって言ってるの?」

 

「そうだ。君たちのような若きデュエリストをやすやすと潰させるわけにはいかん」

 

「……」

 

亜美は拳を握りしめ仲間たちを見渡した。

気を失った恵。

それを抱えるここのせ。

痛みに耐えながら立ち上がる良平。

そして、アザだらけの顔で泣きじゃくるゆき。

 

「……ごめんなさい……! ごめんなさい……!」

 

「ゆき……」

 

亜美はゆきのもとへ歩み寄る。

 

「ひぐっ……ごめんなさい……!」

 

「……もう大丈夫よ、ゆき」

 

「祭乃木さんっ……! わたしのせいで、皆さんがぁっ……!」

 

「ゆきのせいかじゃないわ」

 

「違うんですっ……! わたしは逃げたんです!!」

 

「逃げたって?」

 

「あの人たちに、家を知られてしまって……! 言うことを聞かないとわたしも、わたしの家もめちゃくちゃにしてやるって……!」

 

「……」

 

息が詰まるようなか弱い声。

涙があふれてとめどない。

亜美は先を促すこともせずただゆきの言葉を待つ。

 

「それが嫌なら、皆さんのデッキを盗んでこいって……!ひぐっ……言われたんです……! 怖くて……でも……でも……! 皆さんの大切なデッキを盗むなんてできなくて……!!」

 

ゆきは嗚咽を漏らしながら、言葉を続ける。

 

「だからわたしは逃げたんです……! 閉じこもって……何もせずに……! そうしてたら、祭乃木さんが来てくれることなんて分かってたはずなのに……!!」

 

手で顔を抑え。

拭い。

それでも雫はこぼれては熱を帯びる。

 

「わたしが、皆さんのそばにいたからいけないんです……!! わたしなんて、みんなといちゃいけなかったんですっ……!!」

 

叫びは木霊し空虚に消える。

 

「弱い自分につけこまれてっ……! 祭乃木や皆さんを酷い目に合わせて……! 」

 

ただゆきの声が耳に届く。

 

「わたしが……!! わたしが……!」

 

亜美の胸の中に、小さな炎が灯り徐々に燃え上がっていくのを感じる。

目の前で涙を流す心優しい少女が。

この先もこの悔しさを抱えて生きていく。

 

「……そんなの許せるわけない」

 

亜美の脳裏に良平の言葉が頭をよぎる。

 

『祭乃木は一人だ! 身体は一つしかないし、腕は二本しかないんだ!』

 

そして過去の過ちも。

自分のエゴが誰かを傷つけた記憶。

それでも。

このままでいいわけがないと胸の炎が叫んでいる。

 

「祭乃木」

 

振り返る。

良平が真っ直ぐな瞳で亜美を見つめていた。

 

「祭乃木はただの高校生なんだ。だから間違えることもあると思う。でも祭乃木がこのままでいいなんて、言うわけない。俺たちはそれを知ってる。俺たちは祭乃木の幼馴染だから」

 

「……」

 

「だから祭乃木は祭乃木の思うように動けばいい。それが間違ってるなら、俺が止める。俺が止めなければ、ここのせが止める。それでも間違ってるなら、それはみんなの責任だ」

 

「良平……」

 

「その上で。俺はデュエルでなら誰にも負けるつもりはないよ。祭乃木にも。ここのせにも。アカデミア生にも。そしてクイーンにも」

 

「!」

 

「ほう」

 

クイーンが面白そうに呟く。

気にせず良平は続けた。

 

「だから、デュエルで負けてないのに負けを認めるわけにはいかない。俺たちは高校生であっても、デュエリストなんだ」

 

亜美がここのせに視線を送ると彼は黙って頷いた。

もう一度、強く拳を握り、ゆきに向き直った。

 

「ごめんなさい……祭乃木さん……!」

 

「ゆき」

 

差し伸べようとした手を。

亜美はぐっと引っ込めた。

 

「アンタはどうしたい?」

 

「……え……?」

 

「アタシは、アンタをこんな目に合わた奴らが許せない!アンタを傷つけられたことが悔しい! アンタはどうなの、ゆき!」

 

「……ッグ……わたしは、自分が許せません……。弱い自分が許せない……」

 

「このままでいいの?」

 

「……わたしなんか……皆さんの側にいる資格なんてないんです……。わたしなんかが……一歩踏み出すなんて……烏滸がましかったんです……」

 

「だったら、どうして一人で逃げなかったの? アンタはどうしてここにきたの?」

 

「それ……は……」

 

「アンタはアタシたちを助けようとしたじゃない。自分を差し出して助けようとしてくれたじゃない。それはアンタが強かったからじゃないの?」

 

「わたしは……! わたしは強くなんて……」

 

「アンタの勇気が! 優しさが! 強さが! 踏み躙られたままだなんて、アタシは悔しい!!」

 

「ッ!」

 

亜美の声にゆきは目を見開いた。

 

「アンタは、このままで本当にいいの!?」

 

「ーーーー!」

 

ばちりと音が鳴ったように、二人の視線が交錯した。

射抜くような亜美の眼差しに。

ゆきは黒いマスクのヒーローの姿を重ねていた。

 

「……くないです……」

 

「!」

 

「ーーよくない……よくないです! わたし、このまま終わったら悔しいですぅ!!」

 

「だったら立ちなさい!! 間宮ゆき!!」

 

「ーーッ!」

 

雷に打たれたような。

ゆきは亜美の目を見た。

 

「立って、一緒に戦うわよ」

 

ゆきは様々な想いを涙と一緒に飲み込むと、アザのできた腕で目を拭い、強く立ち上がった。

その視線の先。

亜美の背後に、一瞬だけ背を向けた黒いヒーローの幻影が見えた気がした。

亜美は、ゆきの決意に満ちた目を見ると、初めて口の端を上げた。

 

「クイーン」

 

言って亜美はクイーンに向き直る。

 

「アンタがアタシ達を心配してくれてるのはわかるわ。でも、これはアタシ達のケンカよ!」

 

「……」

 

クイーンは腕を組んだまま目を伏せている。

亜美はただ顔の前で拳を握った。

 

「アイツらに勝たなきゃアタシ達は前に進めない。だから、戦うわ」

 

「……」

 

クイーンは目を伏せたまま。

代わりにと言わんばかりに絵草が楽しそうに笑った。

 

「かっかっか! 姐さん、こいつはもうワシらの出番じゃないわい。若ぇのは勢いがあっていい」

 

「やれやれ……」

 

「大丈夫じゃ。あの小娘は強い。見りゃわかるわ。それにセンスの良いデュエリストと星の子もおる。ワシら顔負けじゃなぁ、かっかっか!」

 

大仰に笑う絵草。

クイーンは溜息をこぼした。

 

「故に危惧しているのだがな……。翁の趣味には付き合いきれんな。それともお前か? エグザ」

 

「かかっ、どっちもじゃよ」

 

「まぁ良い。……祭乃木亜美、いいやチームHERO」

 

わざわざ言い直し、クイーンは亜美と後ろの部員たちを見据える。

 

「諸君らの意志はあいわかった。ならば、相見えるが良い」

 

「アタシ達は勝つわ。そして必ずアンタ達と戦う」

 

「ふっ、ならば期して待っていよう」

 

クイーンは喉を鳴らすように笑うと、懐からICカードのようなものを取り出し、亜美に投げ渡した。

 

「っと」

 

表面には『高決連 加盟証』と書かれている。

 

「な、何よこれ?」

 

「お守りのようなものだ。何かの役には立つだろう。持っているといい」

 

「……?」

 

「行くぞ、エグザ」

 

「ほいよっと!」

 

クイーンたちが去っていく。

革靴が鳴る音が遠のいていくのを聞き届けると亜美は腰に手を当てて振り返った。

 

「さぁ! アタシ達も帰るわよ!」

 

「はい!」とゆきが頷く。

 

「あぁ、ちょっと待ってくれ! 恵が……」

 

ここのせは恵を抱いたまま声を上げる。

 

「あ! そ、そうだった! 大丈夫、恵!?」

 

亜美の声に反応したのか、恵がゆっくりと目を開けた。

ここのせが腕をゆする。

 

「あ! お、おい、大丈夫かよ!?」

 

「……問題ない。自己修復プログラムは順調に進行している。根幹AIに異常なし。筐体動力ユニットの一部を現在修復中……」

 

「お、おぉ……。それは、大丈夫、なのか?」

 

「……修復完了まで筐体が動かない以外は問題ない……」

 

「つまり……?」

 

「……運んでほしい……」

 

「お、おお。よし、任せろ! せぇのッ……!!」

 

ここのせは恵をお姫様抱っこしようと試みるが、その重さに顔を歪めた。

 

「ふぎぎぎぎぃぃ……あぁぁダメだ重てぇ腕が攣りそうだァァァ!!」

 

「オンブにしたらいいでしょうが! 何やってんのよまっ……た…く……」

 

呆れた亜美の体が、ふらりと傾いた。

 

「うわっ……!」

 

良平が倒れ込む寸前で、その体を抱きとめる。

 

「祭乃木さん!!」

 

「祭乃木!!」

 

腕の中の亜美は、すっかり安心したのか、穏やかな寝息を立てていた。

 

「くかー……zzz ……zzz」

 

「え……?」

 

ゆきが目を丸くする。

だが亜美は完全に脱力しきっていて返答はない。

 

「え? ね、寝た……?」

 

良平も全身でなんとか支えつつ困惑する。

 

「くぅー……zzz」

 

亜美は気持ちよさそうに寝ている。

 

「え、ど、どうしよう……」

 

良平は亜美を抱えたままここのせを見る。

 

「いでで……ぐぅ……俺は恵をなんとかおぶってくから、良平は祭乃木をおぶっていくぞ! それが俺たちボンクラの役目だろ!」

 

「それはもういいって……」

 

良平は目を線にして、亜美を背中にまわしていた。




[次回予告]
寝る前決闘空間第36話
『オベリスクブルー』
デュエルスタンバイ
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