遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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幻獣機VS炎星、終焉。


第44話「WSC準決勝 勝利への希望」

[ネオ童実野シティ メモリアルスタジアム チームHERO側観客スタンド]

 

突如として現れた伝説の名を冠するモンスターにチームHERO側の観客スタンドは大きなどよめきが渦巻いていた。

忠一は手すりから身を乗り出し、信じられないものを見るように目を見開いた。

 

「なっ……! ホープ……!?」

 

「あ、ありえない……!」

 

くるみんもまた、いつも飄々としている態度は消え失せ、表情を強張らせている。

 

「え? え? なになに? あれってそんなに凄いカードなの??」

 

周囲の異様な反応に、状況が呑み込めていない女子生徒の一人が戸惑いながら尋ねた。

くるみんは視線をフィールドに釘付けにしたまま、震える声で問い返した。

 

「……No.39希望皇ホープというカードは知ってるかい?」

 

「え、な、なんだっけ……?」

 

女子生徒は首を傾げ、記憶の糸をたどる。

 

「世界で初めて確認されたエクシーズモンスターだよ。そして、あの不動遊星が開発した半永久機関フォーチュンの根幹システム誕生にも関わっている1枚さ」

 

くるみんは歴史の授業を紐解くように言う。

 

「えっ?? フォーチュン??」

 

「フォーチュンの根幹システムにはそれぞれシンクロ、エクシーズ、フュージョン、ペンデュラム、そしてそれらを繋ぐLINKシステムの5つの制御基盤から成り立っているのは知ってるね?」

 

「う、うん。教科書に書いてあった」

 

女子生徒は頷き、基礎知識として教えられた内容を思い出す。

人の心と共鳴し、力を変える遊星粒子。

それが世界のエネルギーを事情を支えている。

小学生の社会科や理科の教科書の序盤にそう記されていた。

 

「そしてそれと共に世界には新たな召喚方法が誕生した。いや、発見されたと言った方がいいね。それらの召喚法によるデュエルが、フォーチュン内部で遊星粒子と共鳴する。それにより発生するエネルギーで私達は生活しているんだ」

 

忠一が冷静さを取り戻し、女子生徒に顔を向けた。

 

「それ以前のエネルギー機関であるモーメントは、シンクロ召喚に反応しエネルギーを供給していたが、これには暴走の危険があった。不動遊星はそれを変え、さらにデュエルにも革命を起こした」

 

「うんうん、それで?」

 

女子生徒は先を促すように身を乗り出した。

くるみんはさらに続ける。

 

「その革命が、No.39希望皇ホープが発端となっているんだよ。このカードが発見され、世界にはまだまだ未知の召喚法が存在するとわかった。そしてそれがシンクロに頼った世界を変える希望になることもね」

 

「希望……」

 

その言葉の響きに、女子生徒は小さく呟いた。

 

「え、じゃ、じゃあナンバーズってカードは全部凄いカードなの!?」

 

もう一人の女子生徒が、世間に流通している同名のシリーズカードを思い浮かべて問いかけた。

 

「そうではないよ。ナンバーズというシリーズカードは、No.39のカードにあやかって作られた謂わば記念品みたいなものさ。一部はホントに特殊な記念品になっているけれど、入手自体はそこまで難しくない。でも、希望皇ホープだけは違う」

 

くるみんは首を振り、レプリカとも言える一般のナンバーズとオリジナルの圧倒的な差異を強調した。

 

「ど、どう違うの?」

 

女子生徒は生唾を飲み込み、恐る恐る尋ねる。

 

「世界に1枚しかない、国宝級のカードだ。一般に出回ることはもちろんないし、一目見ることすら難しいはずだよ」

 

くるみんが語る現実は、一介の高校生が扱うカードの領域を遥かに超えていた。

 

「うっそ……」

 

女子生徒は絶句し、口元を両手で覆った。

「とはいえ」と忠一が言葉を続ける。

 

「No.39のカードは、古代文字のような言語で書かれていて、本当の名前も効果も解読されていない。数字に似た言語からNo.39と名付けられただけだし、名前も仮称に過ぎない。実戦で使われることはあり得ないはずだ」

 

「じゃ、じゃああのカードは……!?」

 

解読不能なはずのカードがなぜ、今あそこで使われているのか。

女子生徒の疑問に、くるみんが答える。

 

「エクシーズ召喚の召喚法が確立されて以来、時々発見されるのさ。あのカードのようにホープの名を冠したカードがね。そして、その力はNo.39の力を受け継いでいると言われているよ。資産価値は……計り知れないね」

 

くるみんはフィールドで神々しい光を放つ龍の戦士を見つめ、底知れない恐怖と感嘆の入り交じった息を吐いた。

 

「そ、そんな凄いカードをなんで……! 同じ高校生でしょ!?」

 

女子生徒はスタジアムの中央に立つ黒河という男の異常性に気づき、声を震わせた。

 

「同じじゃない」

 

忠一は厳しい面持ちで、自分たちと絶対王者の間に存在する、決して埋まらないはずの分厚い壁の正体を語った。

 

「────やつらはデュエルアカデミア、オベリスクブルー。世界最強のデュエリスト。その金の卵だ」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「ホープ……!? あんな隠し球持ってたなんて……!」

 

亜美は手すりを強く握りしめ、スタジアムの中央に降臨した神々しい光の龍を愕然と見つめた。

 

「なんて野郎だ……!」

 

ここのせは忌々しげに悪態をつき、圧倒的な戦力差を見せつける敵の底知れなさに奥歯を噛み締める。

 

「……」

 

恵は無機質な瞳に光の龍を映したまま、膨大なデータの演算処理に没頭するように沈黙を守っている。

 

「日和田さん……!」

 

ゆきは祈るように両手を胸の前で固く組み、絶望的な状況に立たされた仲間の背中へ切実な声を送った。

 

[デュエルフィールド]

 

黒河唯人

LP:2600

手札:5

フィールド:

炎舞-「天枢」

炎舞-「天権」

伏せカード

 

フィールド:

炎星仙-ワシンジン(左EXゾーン)

攻:1700→2100 炎 獣戦士族 LINK2 ↙︎↘︎

 

巧炎星-エランセイ

攻:2400→2800 炎 獣戦士族 星6

 

富炎星-ハクテンオウ

攻:2600→3000 炎 獣戦士族 星8

 

鉄獣戦線 徒花のフェリジット

攻:1600 地 獣族 LINK2 ←↙︎(ワシンジン↘︎LINK先)

 

F No.0未来龍皇ホープ

攻:3000 光 戦士族 ランク0

 

日和田良平

LP:2300

手札:5

フィールド:

天威無崩の地(フィールド魔法)

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「……ッ」

 

良平は圧倒的な戦力差を見せつけられ、思わず呻き声を漏らした。

黒河の陣地には、強固な耐性と制圧力を誇る光の龍王をはじめ、炎星や鉄獣戦線の精鋭たちがずらりと並び立っている。

対する良平のフィールドに残されているのは、荒野と化したフィールド魔法と、か弱き幻獣機トークンが一機のみ。

 

『フィールドには伝説級のレアカード、ホープ!! さらにセットカードや封殺モンスターが並び、手札も潤沢!! チーム煉獄ファーストプレイヤーが圧倒的な展開を見せたァァァ!!』

 

実況の絶叫がマイクを通してスタジアムの隅々にまで響き渡り、観衆の興奮が地鳴りのような大歓声となって爆発する。

 

『F No.0未来龍皇ホープは、モンスター効果を封殺する能力に加え、それがフィールドのモンスターだった場合はコントロールを奪う凶悪な効果を持っているようだァァァ!! さらに、戦闘でも効果でも破壊できないぞォオォオ!!?』

 

波のようにうねる熱狂の中、実況がさらなる絶望の能力を並べ立てる。

 

『チームHEROはこの窮地を乗り越えなければ、このままファーストプレイヤーに蹂躙されてしまうぞォオ!!? 日和田良平、ここからどう立て直すのかァァァ!!?』

 

「……」

 

良平は眼前にそびえ立つ光の龍王を見上げた。

神々しいまでの威容を誇るそのモンスターは、良平と地に伏した幻獣機トークンを虫けらのように見下ろしている。自分と彼の運命力には絶対的な隔たりがある。そんな肌を刺すような重圧を、良平は今回もはっきりと感じ取っていた。

 

(そうだ)

 

良平の脳裏に、かつて死線を潜り抜けた強敵たちの姿がフラッシュバックする。

 

『フハハハハハハハハハハッ!!』

 

鼓膜を破るような狂笑と共に、機械の巨竜が鋼鉄の顎を開いて咆哮を上げた唯信との死闘。

 

『さぁ、メインディッシュをはじめよう』

 

静かな宣告と共に、星を砕く機械の龍が流星の如く飛来した女社長との激戦。

 

『見てなさい、ヒーローはこっから大逆転するのよ!』

 

そして、どんな窮地でも決して諦めることのなかった、亜美の力強い言葉。

 

(……これまでもそうだった。自分よりも強い相手とのギリギリのデュエル)

 

早鐘のように打ち鳴らす胸に手を当て、良平は肺の奥深くまでスタジアムの熱い空気を吸い込んだ。

 

(それが俺たちを加速させる)

 

背後から味方スタンドの必死な声援が聞こえてきた。

スタジアムの喧騒に揉まれ、言葉の細部までは届かない。

良平がその声に応えようと振り返りかけた瞬間、首筋に鋭い痛みが走った。

一昨日の夜に刻まれたその痕跡の疼きは、まるで「前を見ろ、目を背けるな」と彼を痛烈に叱咤しているかのように。

 

(ああ、やってやるさ)

 

「日和田!」

 

前方を睨み据え直した良平を、黒河の鋭い声が射抜く。

 

「これがおれの勝利への希望だ! 次のターン、おれは貴様を蹴散らす!奇跡のチームはそれで終わりだ!」

 

黒河は己のフィールドを支配する光の龍を背に、絶対者の余裕をもって宣告した。

 

「いいや、やらせはしない! 俺たちはまだまだ飛び続ける!! もっと高く、もっと速く!!」

 

良平の瞳に、決して折れることのない強靭な闘志の炎が宿る。

彼は自らの運命を切り拓くべく、デッキトップに指を置き、その一枚に全身全霊の力を込めた。

 

「──回すぞ、ついてこい……!」

 

ードローフェイズー

 

「俺のターン!!!」

 

鋭い風切り音と共に、良平は勢いよくカードを引き抜いた。

手札は6枚。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

(見えてる妨害は3つ! 手札誘発があるならもう前のターンに使ってるはずだ! とにかく3つを乗り越える!!)

 

良平の視線が、敵の強固な陣形を鋭く這う。

 

「……いくぞ、手札からマジックカード、精神操作を発動!」

 

《精神操作》

通常魔法

 

魔法カードが実体化し、怪しげな波動を放つ。

 

「このターン、相手フィールドのモンスター1体のコントロールを得る! 対象はホープ!!」

 

「リバースカード! カウンタートラップ、極炎舞-「辰斗」!」

 

黒河の陣地に伏せられていた罠カードが、激しい炎を噴き上げて表返る。

 

《極炎舞-「辰斗」》

カウンター罠

 

chain1 精神操作

 

chain2 極炎舞-「辰斗」

 

「フィールドに炎舞と炎星が揃っている時、相手の魔法、罠カードの発動を無効にし破壊する!」

 

放たれた魔法の波動は、強固な炎の壁に阻まれて粉々に砕け散った。

 

「まずは一つ! 愚かな埋葬を発動!」

 

《愚かな埋葬》

通常魔法

 

間髪入れず、墓石の描かれた魔法カードがフィールドに浮かび上がる。

 

「デッキからモンスターを1体、幻獣機オライオンを墓地に送る! 」

 

良平はデッキからカードを一枚抜き取り、墓地スロットへと滑り込ませた

 

「墓地に送られたオライオンは、幻獣機トークンを生成する!」

 

良平の行動に黒河は瞬時に思考を巡らせる。

 

(モンスター効果は、ホープとエランセイで2回妨害できる……。やつの手札は残り3枚。1枚はSR-ベイゴマックス。2枚は不明。奴の狙いは妨害を使わせきった後にアウローラドンを出すことだろう。ここは……)

 

思考を終了し黒河は答えた。

 

「いいだろう!」

 

墓地からオライオンの半透明な機影が浮かび上がり、その残骸から新たな幻獣機トークンが生成された。

 

幻獣機トークン

守:0 機械族 星3

 

「手札から速攻魔法!緊急発進!!」

 

《緊急発進》

速攻魔法

 

「こちらのトークン以外のモンスターが相手より少ない場合、フィールドの幻獣機トークンをリリースすることでデッキから幻獣機を呼び出す!!」

 

「ッ……!」

 

フィールドに展開されていたトークンが光の粒子となって収束していく。

 

「スクランブル!! 幻獣機コルトウィング、幻獣機ハムストラッドを特殊召喚!!」

 

眩い閃光を切り裂き、コルトローダー機と愛嬌のあるネズミの意匠を持った輸送機が空に舞い上がっていく。

 

幻獣機コルトウィング

攻:1600 風 機械族 星4

 

幻獣機ハムストラッド

守:1600 風 機械族 星3

 

「コルトウィングは場に出た時、他の幻獣機がいれば幻獣機トークンを2体生成できる!」

 

「ッ!」

 

「さらにフィールドに2体同時に機械族が特殊召喚されたことで墓地のブンボーグ001の蘇生する効果が発動!」

 

chain1 幻獣機コルトウィング

 

chain2 ブンボーグ001

 

『フィールドに2体の幻獣機トークンが現れる! 幻獣機コルトウィングとブンボーグ001の発動条件を満たしているため、2体どちらもその誘発効果を発動可能だ! 』

 

実況の解説がスタジアムに響き渡る。

 

『幻獣機コルトウィングは強制の誘発効果!ブンボーグ001は任意の誘発効果! 同時に発動条件を満たした場合は、強制効果が先に発動する! 従ってチェーン1に幻獣機コルトウィング、チェーン2にブンボーグ001の効果が発動するぞォオ!! 』

 

「……くっ、チェーンの関係でコルトウィングの効果を止められない……!」

 

黒河が苦々しく顔を歪めた。

 

「戻ってこい、ブンボーグ001!」

 

小さな機械の兵士が、電子音を鳴らしながら墓地から再び這い上がる。同時に、フィールドの機械族の数に比例してその出力が跳ね上がった。

 

ブンボーグ001

攻:500→3000 地 機械族 星1 チューナー

 

「さらに幻獣機トークン2体特殊召喚!!」

 

コルトウィングのハッチが開き、二機の小型機が射出される。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

「ハムストラッドの効果発動! フィールドの幻獣機トークンをリリースすることで、墓地の幻獣機を復活させる!」

 

ハムストラッドがトークンを一機分解し、そのエネルギーを墓地への復旧シグナルに変換しようとする。

 

「巧炎星-エランセイの効果発動! ワシンジンでコストを踏み倒し、その効果を無効にするぜ!!」

 

巨漢の獣戦士が猛火を放ち、ハムストラッドの復旧シグナルを見事に焼き切って沈黙させた。

良平は臆することなくカードを握る。

 

「これで2つ! レベルが6となった幻獣機ハムストラッドに、レベル1のブンボーグ001をチューニング!」

 

☆6+☆1=☆7

 

ハムストラッドと小さな機械兵が光の輪となり、上空の回路へと吸い込まれていく。

 

「ウィンドペガサス@イグニスターをシンクロ召喚!」

 

光の中から、風を纏った電子の天馬が嘶きと共に駆け降りた。

 

ウィンドペガサス@イグニスター

攻:2300光 サイバース族 星7

 

「ウィンドペガサス@イグニスターがシンクロ召喚された場合、フィールドのイグニスターの数相手の魔法、罠カードを破壊できる!」

 

「……勝手にしな!」

 

「炎舞-「天権」を破壊!」

 

天馬が蹄で空を蹴ると、強烈な衝撃波が黒河の永続罠を粉砕した。

 

「……レベルが7となった幻獣機コルトウィングとレベル7のウィンドペガサス@イグニスターでオーバーレイ!」

 

☆7×☆7=★7

 

「飛び立て! 願いを乗せた鉄の翼!」

 

二体のモンスターが光の渦となり、巨大な銀河の門が開かれる。

 

「回せ! エクシーズ召喚! 幻獣機ドラゴサック!!」

 

爆音と共に、超大型輸送機が再びフィールドにその巨体を現した。

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600 風 機械族 ランク7

 

「妨害を乗り越え、エースモンスターを呼び出す技量は見事だ! だが、そいつではホープは突破できないぜ!!」

 

黒河は腕を組み、光の龍王を背にして不敵に笑い飛ばした。

 

「……そう、幻獣機だけじゃ突破できない。それなら……! 手札から通常召喚! SR-ベイゴマックス!!」

良平がカードを盤面に叩きつけると、羽音のような駆動音を響かせて独楽型の機械が現れた。

 

SR-ベイゴマックス

攻:1200 風 機械族 星3

 

「ベイゴマックスが召喚、特殊召喚された場合、デッキからSRモンスターをサーチできる!」

 

良平の宣言に、黒河は鼻で笑う。

 

「……ふっ」

 

「この効果で、SR-タケトンボーグを手札に加える!」

 

良平は素早くデッキからカードを引き抜き、手札へと加えた。

これで手札は3枚。

 

「今手札に加えたタケトンボーグはフィールドに風属性モンスターがいれば特殊召喚できる!」

 

続けて繰り出されたカードから、竹とんぼを模した飛行機械が鋭い風切り音と共に飛び出してくる。

 

SR-タケトンボーグ

守:1200 風 機械族 星3

 

「……ベイゴマックスと幻獣機トークン、タケトンボーグをリンクマーカーにセット!」

 

良平が手を掲げると、三体の機械が光の矢となって上空の回路を照らし出した。

 

←機械族 +↓機械族+↘︎機械族=LINK3

 

「煌めけ! 極光の翼!」

 

眩い閃光がフィールドを包み込む。

 

「リンク召喚! 回せ! 幻獣機アウローラドン!」

 

爆音と共に、巨大な要塞機が再び戦場へと飛来し、その威容を見せつけた。

 

幻獣機アウローラドン

攻:2100 風 機械族 LINK3 ←↓↘︎

 

「アウローラドンの効果発動!」

 

「ここだ!! 未来龍皇ホープの効果を発動! その効果を無効にし、コントロールを得る! やれ、ホープ!!」

 

「ホォォォオォオォオッ!!!」

 

黒河が腕を振り下ろすとF No.0未来龍皇ホープが凄まじい咆哮を上げる。

圧倒的な光の波動がアウローラドンを包み込み、要塞機のシステムを強引に掌握していく。鈍い金属音と共に、アウローラドンは抗う間もなく黒河の陣地へと引きずり込まれ、完全に沈黙した。

 

『ホープの圧倒的な効果が炸裂ゥゥ!! せっかく呼び出した幻獣機のエンジンモンスターをあっけなく奪われてしまったァァ!!』

 

実況の絶叫と観客の大歓声が、良平の窮地をさらに煽り立てる。

 

「幻獣機アウローラドンは、貴様のデッキの生命線! これで逆転の兆しは潰えた!」

 

勝利を確信した黒河が、高らかに宣告する。

 

「……いいや」

 

良平の静かな否定に、黒河が眉をひそめた。

 

「なに……?」

 

「これで3つ……! お前を守る障害はなくなった!」

 

良平の瞳には、絶望ではなく、反撃の糸口を掴んだ確かな光が宿っていた。

 

「バカな……! アウローラドンすらも囮だったというのか……!」

 

黒河の顔に焦りが走る。

 

「ドラゴサックの効果! 素材を取り除き、フィールドに幻獣機トークンを2体特殊召喚!」

 

良平の陣地に残るドラゴサックから電子音が鳴り響き、機体下部から二機の護衛機が射出された。

 

幻獣機トークン

守:0 機械族 星3

 

幻獣機トークン

守:0 機械族 星3

 

「さらにフィールドに2体機械族モンスターが同時に特殊召喚されたため、ブンボーグ001を墓地から特殊召喚!」

 

同時に、墓地から這い上がってきた小さな機械兵士が、電子音を立てて合流する。

 

「レベル3の幻獣機トークン2体に、レベル1のブンボーグ001をチューニング!」

 

ブンボーグ001

守:500 地 機械族 星1 チューナー

 

「レベル3の幻獣機トークン2体に、レベル1のブンボーグ001をチューニング!」

 

三体の機械がシンクロの光輪へと姿を変え、新たな力を呼び覚ます。

 

☆3+☆3+☆1=☆7

 

「いろはもみじをシンクロ召喚!」

 

舞い散る紅葉と共に、和装に身を包んだ天使が静かに降り立った。

 

いろはもみじ

攻:2100 風 天使族 星7

 

「いろはもみじの効果発動! メインモンスターゾーンのモンスター1体を対象に、その隣か前後のカードを相手が選んで墓地に送る! 対象は巧炎星-エランセイ!」

 

「ッ! 隣接しているカードは富炎星-ハクテンオウのみ……!」

 

黒河が歯噛みする。天使が巨大な鋏を振るうと、鋭い切断音と共に隣接していたハクテンオウが光となって墓地へ消え去った。

 

「墓地のオライオンの効果発動! オライオンを除外し、手札の幻獣機を召喚! こい、幻獣機テザーウルフ!」

 

良平の攻勢は止まらない。狼の意匠を持つ戦闘機が、低い唸り声を上げて着陸する。

 

幻獣機テザーウルフ

攻:1700 風 機械族 星4

 

「テザーウルフは召喚された場合、幻獣機トークンを生み出す!」

 

即座にハッチから新たなトークンが射出され、良平は反撃の陣形を整え上げていく。

 

幻獣機トークン

守:0 風 機械族 星3

 

黒河フィールド:

炎舞-「天枢」

フィールド:

炎星仙-ワシンジン(左EXゾーン)

攻:1700→1800炎 獣戦士族 LINK2 ↙︎↘︎

 

巧炎星-エランセイ

攻:2400→2500炎 獣戦士族 星6

 

鉄獣戦線 徒花のフェリジット

攻:1600 地 獣族 LINK2 ←↙︎(ワシンジン↘︎LINK先)

 

幻獣機アウローラドン

攻:2100 風 機械族 LINK3 ←↓↘︎

 

F No.0未来龍皇ホープ

攻:3000 光 戦士族 ランク0

 

「バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

「いけ! テザーウルフ! フェリジットに攻撃!」

 

狼の機体が凄まじい駆動音を響かせて突撃する。

 

「ガァァァァ!」

 

機銃掃射がフェリジットを捉えた。

 

幻獣機テザーウルフ

攻:1700

 

鉄獣戦線 徒花のフェリジット

攻:1600

 

「きゃぁ!」

 

獣族の少女は悲鳴を上げ、ガラスが砕け散るような音と共に粉々に四散した。

爆風が黒河の顔を撫でる。

 

「くっ……」

 

黒河唯人

LP:2600→2500

 

「ッ! フェリジットが墓地に送られた時、カードを1枚ドローし、その後手札を1枚デッキボトムに戻す!」

 

黒河は鋭い手つきでカードを引き抜き、即座に不要な一枚をデッキの底へと滑り込ませた。

 

「いろはもみじでワシンジンに攻撃!」

 

和装の天使が軽やかに舞い、巨大な鋏を振りかざす。

 

「やぁ!!」

 

いろはもみじ

攻:2100

 

炎星仙-ワシンジン

攻:1800

 

「カァッ!?」

 

金属が激突する鋭い音が響く。

仙人は為す術もなく一刀両断され、爆風と共に消え去った。

 

「ぐぁっ……!」

 

黒河唯人

LP:2500→2200

 

「ドラゴサック! 巧炎星-エランセイに攻撃!!」

 

良平は総攻撃の手を緩めない。巨大な要塞機が獣戦士をロックオンする。

 

「FOX3!」

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600

 

巧炎星-エランセイ

攻:2500

 

「うぁぁっ!」

 

ドラゴサックの両翼のミサイルが空を切る。

そのすべてがエランセイに命中。

凄まじい爆発が黒河を飲み込んだ。

 

「ぐぅ……!」

 

黒河唯人

LP:2200→2100

 

『な、なんと!! 数多の妨害を受けつつもチームHERO日和田良平、なんとか場を押し返しているぞォオ!!?』

 

実況の驚愕の声がスタジアムに響き渡る。

 

「メイン2へ移行!!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

盤面を荒らし尽くした良平は、攻撃の手を止めて次なる展開へと動いた。

 

「くっ……!」

 

黒河は歯噛みし、良平の動きを警戒する。

 

「レベル7のいろはもみじと、レベル7となったテザーウルフでオーバーレイ!!」

 

二体のモンスターが光の渦となり、新たな銀河の門が開かれる。

 

「──―輝け! 全てを飲み込む業魔の瞳!」

 

☆7×☆7=★7

 

まばゆい召喚門から漏れだすは妖光。

 

「エクシーズ召喚! こい! No.11 ビッグアイ!!」

 

No.11ビッグアイ

攻:2600 闇 魔法使い族 ランク7

 

巨大な一つ目を持つ無機質なモンスターが、空気を震わせながら不気味に宙に浮かび上がった。

 

「なっ! そのカードは……!」

 

黒河が驚愕に目を見開く。

 

「そうだ! ビッグアイの効果発動! 素材を1つ取り除き、相手フィールドのモンスターのコントロールを得る!!」

 

良平は真っ直ぐに、敵陣にそびえ立つ光の龍王を指差した。

 

「き、貴様……!」

 

黒河の顔が怒りに染まる。

プライドをかけたエースカードが無残にも魔の手──否、魔の瞳に呑み込まれていく。

 

「未来龍皇ホープを奪い取れ! ビッグアイ!」

 

巨大な瞳から、空間を歪めるような怪しげな催眠波が放たれた。

 

「ォオォオ……」

 

絶対の耐性を持つはずの未来龍皇ホープが、催眠波に抗うことなく虚ろな声を上げ、黒河の陣地から良平の陣地へとゆっくりと移動していく。

 

『ま、まさかまさかまさかァァァァァ!!! チームHERO! 伝説のレアカードを奪い取ったぁァァァァァ!!?』

 

割れんばかりの大歓声と絶叫が、スタジアムを激しく揺るがした。

 

「貴様ぁ……!」

 

最強の盾であり矛であった切り札。

それが。

それが。

 

『ま、まさかまさかまさかァァァァァ!!! チームHERO! 伝説のレアカードを奪い取ったぁァァァァァ!!?』

 

割れんばかりの大歓声と絶叫が、スタジアムを激しく揺るがした。

 

「貴様ぁ……!」

 

最強の盾であり矛であった切り札を失い、黒河は怒りと屈辱に顔を歪める。

 

「どんなに強いカードでも、必ず抜け道が存在する!勝利への希望は、今、俺の手に移った!!」

 

良平は奪い取った光の龍王を背に、力強く宣言した。

黒河は怒りと屈辱に顔を歪める。

対する良平は奪い取った光の龍王を背に鋭い眼光で以って言った。

 

「どんなに強いカードでも、必ず抜け道が存在する!──勝利への希望は、今、俺の手に移った!!」

 

[メモリアルスタジアム 選手通用門]

 

喧騒がやや遠い選手通用門。

その通路の上部にはフィールドを映すモニターが煌々と光っている。

 

「うっそ……! ひっくり返した!」

 

モニターを見上げていたツァンが、信じられないものを見るように口を開ける。

ピンク色の髪が動揺に靡く。

隣に立つ同じ青い制服の少女──美憂が両手を広げ、興奮気味に歓声を上げた。

 

「wow! またまたmiracleを起こしたわネ!!」

 

ベスト8の大立ち回り、いやそもそもオベリスクブルーである自分たちを突破した奇跡の立役者。

その彼が今、戦いの最中にある。

 

「フンッ」とさらに隣に立つ少女──唯信は青い制服を肩に掛け、内側の黒いトレーナーから覗くドッグタグを揺らした。

 

「こんなもの奇跡などではなイ」

 

「あら、金さんは不服なの?」

 

揶揄う様な甘い声を出すのはさらに隣の少女──雪乃である。

大胆に開けた胸元を腕で抱き寄せていた。

唯信は目もくれずモニターを見る。

 

「出来て当然ダ。この程度で敗北など、我々への侮辱に等しイ」

 

「あらやだ過激」

 

雪乃はクスクスと笑い声を漏らす。

そこへ、足音を荒立てて青い制服をきっちりと着た少女──麗華が駆けつけてきた。

 

「皆さん! 探しましたよ! 持ち場を離れないでください!!」

 

「ハーイ! さぁ、仕事に戻るわヨ!」

 

美優は軽く手を叩いてリズムを取ると、機嫌よく踵を返した。

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「よっしゃ! 良平のやつ、やるじゃない!!」

 

亜美は弾かれたように立ち上がり歓喜の声を上げた。

スタジアムを照らす強烈なカクテル光線が、彼女の興奮に満ちた瞳にキラキラと反射している。

 

「強いカードが仲間になってくれましたね!」

 

ゆきも安堵の笑みを浮かべ、胸の前で嬉しそうに両手を合わせた。

 

「……しかし、相手の手札は潤沢……」

 

熱狂に包まれるベンチの中で、恵は青白い光に無機質な瞳を照らされている。

 

「まだまだ油断できねぇってわけか!」

 

ここのせは手すりに体重を預け、再び顔を引き締めてフィールドの激戦を睨み据えた。

 

[デュエルフィールド]

 

「カードを1枚セット!」

 

良平の指先から放たれたカードが、荒涼とした岩肌の広がるフィールドに突き刺さるようにセットされる。

 

「ターンエンド!」

 

盤石の陣形を敷き終え、良平は荒野に吹く乾いた風に髪を揺らしながら、静かにターンを渡した。

 

ーエンドフェイズー

 

日和田良平

LP:2300

手札:0

魔法罠:

伏せカード1

フィールド:

天威無崩の地(フィールド魔法)

 

幻獣機トークン

No.11 ビッグアイ

F No.0未来龍皇ホープ

幻獣機ドラゴサック

 

黒河唯人

LP:2100

手札:5

魔法罠:

炎舞-「天枢」

フィールド:

幻獣機アウローラドン

 

ードローフェイズー

 

「ホープの手綱は安いものじゃないぜ、日和田!! 怒りの臨界点を超えたおれのデッキがお前を粉砕する!」

 

エースを奪われた黒河の顔には、明確な怒りの色が浮かんでいた。

その全身からは、陽炎のように揺らめく闘気が立ち昇っている。

 

「やらせはしない! 来い!」

 

良平は強烈な威圧感に怯むことなく、真っ向から鋭い視線をぶち当てた。

 

「おれのターン! カード、ドロー!」

 

黒河が腕を振り抜くと、鋭い風切り音と共にデッキトップのカードが引き抜かれた。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

「幻獣機アウローラドンの効果を発動! アウローラドンをリリースし、フィールドのカードを破壊!」

 

奪い取った要塞機を指差し、黒河が冷酷に命じる。

 

「俺のフィールドで破壊できるのは、ビッグアイと天威無崩の地だけ……」

 

良平は砂塵の舞う自陣を確認し、相手の狙いを予測する。

 

「俺はそのフィールド魔法を破壊するぜ!」

 

黒河の命令を受け、巨大要塞機が自壊プロセスを起動する。機体の奥底から漏れ出す眩い破壊のエネルギーが、周囲の岩肌を赤熱させた。

 

「トラップ発動! 天威無双の拳!」

 

《天威無双の拳》

カウンター罠

 

良平はすかさず伏せカードを開く。

大地を揺るがす轟音と共に巨大な拳の幻影が荒野を突き破って出現した。

 

「フィールドに効果を持たないモンスターが存在している時、相手が発動した効果を無効にする!」

 

振り下ろされた巨大な拳は、アウローラドンが放った破壊エネルギーを真っ向から粉砕し、要塞機の残骸ごと虚空へ消し飛ばした。

 

「……ごめん、アウローラドン……。よくやってくれた」

 

舞い散る鉄屑の雨を浴びながら、自らの手でかつてのエースを葬った良平は痛ましげに目を伏せた。

対する黒河は一切の感情を交えず、次なる展開へと動く。

 

「……炎舞-「天璣」を発動!」

 

《炎舞-「天璣」》

永続魔法

 

スタジアムの空気を焦がすように、赤い星の紋章が燃え盛るように浮かび上がった。

 

「デッキから獣戦士族モンスター、俊炎星-ゾウセイを手札に加え、そのまま召喚!」

 

俊炎星-ゾウセイ

攻:1000 炎 獣戦士族 星4

 

「ゾウセイの効果を発動! 炎舞-「天璣」を墓地に送り、手札の微炎星-リュウシシンを特殊召喚!」

 

頭上の紋章が炎となって弾け飛び、その熱気の中から青龍刀を構えた戦士が鋭い踏み込みと共に姿を現した。

 

微炎星-リュウシシン

攻:1800 炎 獣戦士族 星4

 

特殊召喚の波動に天威無崩の地が共鳴する。

 

「……天威無崩の地の効果で2枚ドロー!」

 

良平はデッキから新たな希望となるカードを引き抜いた。

 

「ゾウセイのさらなる効果! 墓地の炎舞-「天璣」をデッキに戻し、デッキからレベル5以上の炎星、寿炎星-リシュンマオを手札に加えるぜ!」

 

黒河の淀みないコンボは止まらない。流れるような手さばきで、次々と手札を整えていく。

 

「レベル4のゾウセイとリュウシシンでオーバーレイ!」

 

☆4×☆4=★4

 

「──旱天慈雨! 九天玄女の加護を纏いてこの戦場に勝利をもたらせ!」

 

二体の戦士が燃え盛る光の渦となって重なり合い、空間を激しく歪ませる。

 

「エクシーズ召喚! 現れよ、魁炎星王-ソウコ!」

 

灼熱の炎の中から百獣の王たる威厳を纏った虎の戦士が現れ、大地を焼き尽くさんばかりの咆哮を上げた。スタジアムの空気がビリビリと震える。

 

「ウォォォォ!」

 

魁炎星王-ソウコ

攻:2200→2600 炎 獣戦士族 ランク4

 

「ソウコのエクシーズ召喚時の効果発動!」

 

「その効果に対して、未来龍皇ホープの効果を発動! その効果を無効にしてコントロールを得る!」

 

良平の背後に鎮座する未来龍皇ホープが、神々しい光の波動を放つ。

その圧倒的な光の奔流は、虎の王が放とうとした炎を瞬時にかき消し、光の鎖となってソウコの巨躯を縛り上げた。抗う間もなく、魁炎星王-ソウコは光に引きずられて良平の陣地へと膝をつく。

 

「まだだ! 炎舞-「天枢」の効果で炎星を追加召喚! こい! 魁炎星-シーブ!」

 

黒河は顔色一つ変えず、さらなる戦力をフィールドの炎の中へ投下する。小柄だが俊敏な戦士が軽やかに着地した。

 

魁炎星-シーブ

攻:800 炎 獣戦士族 星3

 

「シーブの効果発動! 手札を1枚捨て、俺のフィールドの炎舞-「天枢」を対象とし、同名以外の炎舞をセットする! 炎舞-「隠元」をセットし、そのまま発動!」

 

新たな永続魔法がセットされ、即座に表返る。

 

《炎舞-「隠元」》

永続魔法

 

「さらに炎舞が発動したことで手札のリシュンマオの効果が発動する!」

 

chain1 炎舞-「隠元」

 

chain2 寿炎星-リシュンマオ

 

「リシュンマオを特殊召喚!」

 

寿炎星-リシュンマオ

攻:2100→2200 炎 獣戦士族 星5

 

炎の揺らめきの中から、優雅な装束に身を包んだ戦士が音もなく舞い降りる。

 

「リシュンマオがこの効果で特殊召喚された場合、墓地の炎星を復活させる! 戻れ、ワシンジン!!」

 

天から一条の光が差し込み、鷲の仙人が三度目の降臨を果たす。

 

炎星仙-ワシンジン

攻:1700→1800 炎 獣戦士族 LINK2↙︎↘︎

 

「そしてchain1の効果処理により、フィールドのシーブと手札の弧炎星-ロシシンを融合!!」

 

黒河の宣言と共に、二体の戦士が巨大な炎の竜巻の中で一つに溶け合う。

 

「──―単槍匹馬! 其は天打つ鷲! 天富星の名の元に仇為す者を打ち砕け!」

 

眩い光と共に粉塵が上がる。

 

「融合召喚! 再び現れよ! 富炎星-ハクテンオウ!!」

 

爆炎を切り裂き、神々しい鷲の王が巨大な炎の翼を広げて降臨した。スタジアムの温度が急激に上昇し、観客たちの肌をジリジリと焦がす。

 

「ォオォオッ!!」

 

富炎星-ハクテンオウ

攻:2600→2700 炎 獣戦士族 星8

 

「ハクテンオウの効果により、フィールドの炎舞の数×200ポイントのダメージを貴様に与える! おれのフィールドには1枚! よって200ダメージを受けてもらう!」

 

ハクテンオウが大きく槍を突き出し爆炎の衝撃波が射出された。

物理的な質量を伴ったような熱波が真っ直ぐに良平を襲う」

 

「ッ……!」

 

日和田良平

LP:2300→2100

 

良平は腕で顔を庇い、焼け焦げるような熱に顔を歪めた。

 

「バトルだ!!」

 

黒河の号令が、熱狂の坩堝と化したスタジアムに鋭く響き渡った。

 

黒河フィールド:

炎星仙-ワシンジン

攻:1700→1800

富炎星-ハクテンオウ

攻:2600→2700

寿炎星-リシュンマオ

攻:2100→2200

 

良平フィールド:

No.11 ビッグアイ

攻:2600

幻獣機ドラゴサック

攻:2600

幻獣機トークン

守:0

F No.0未来龍皇ホープ

攻:3000

魁炎星王-ソウコ

攻:2200

 

ーバトルフェイズー

 

「行け! ハクテンオウ! ソウコに攻撃!!」

 

黒河が鋭く腕を振り下ろすと、富炎星-ハクテンオウが巨大な炎の翼を広げ、奪われた魁炎星王-ソウコへと襲いかかった。

 

富炎星-ハクテンオウ

攻:2600→2700

 

魁炎星王-ソウコ

攻:2200

 

灼熱の咆哮と共に放たれた炎の渦が、フィールドを激しく焦がす。

ソウコは為す術もなく炎に飲み込まれ、断末魔と共にガラスのように砕け散った。爆風が猛烈な勢いで吹き荒れた。

 

「うわっ……!」

 

日和田良平

LP:2100→1600

 

日和田良平

 

熱波をもろに浴びた良平は、顔を庇いながら後ずさった。ライフポイントが大きく削り取られる。

 

「これによりソウコが墓地に送られた! よってソウコの効果を発動させてもらう! ワシンジンでコストを踏み倒し、デッキより同じステータスの獣戦士族を特殊召喚する!」

 

黒河は間髪入れずに次の手を打つ。

 

「その効果にチェーンして、墓地のウィンドペガサス@イグニスターを除外して効果発動! 俺のフィールドのカードが破壊された場合、こいつを除外することでフィールドのカードをデッキバウンスする! 対象はハクテンオウ!」

 

良平も負けじと、墓地のカードを除外スロットへと力強く滑り込ませた。

 

「チッ、ならばこちらもチェーンし、ハクテンオウの効果発動! バトルフェイズ時に炎舞を墓地に送ることでフィールドのカードを破壊する!」

 

舌打ちを交えつつ、黒河はさらにチェーンを重ねる。

 

chain1 魁炎星王-ソウコ

 

chain2 ウィンドペガサス@イグニスター

 

chain3 富炎星-ハクテンオウ

 

『バトルフェイズ中にも関わらず、凄まじいカードの攻防だァァァ!!』

 

チェーン3まで及ぶ激しい応酬に、実況の声がスタジアムに響き渡る。

 

「ワシンジンでコストを踏み倒し、ビッグアイを破壊する!」

 

黒河が鋭く指差す。

ハクテンオウの放った火球が、不気味に宙に浮くビッグアイを直撃する。巨大な一つ目の魔法使いは声を発することもなく、光の破片となって四散した。

 

「ッ! だが、そちらもフィールドから消えてもらうぞ!」

 

盤面の要を破壊されながらも、良平は鋭い眼光を崩さない。

 

墓地から半透明の天馬が駆け抜け、突風を巻き起こす。その風に巻き込まれたハクテンオウは、驚愕の声を上げながらエクストラデッキへと強制送還された。

 

「フッ! ソウコの効果により、デッキより勇炎星-エンショウを2体守備表示で特殊召喚!」

 

ハクテンオウを失っても黒河の展開は止まらない。デッキから二体の新たな戦士が、身を屈めて守備の姿勢をとった。

 

勇炎星-エンショウ

守:1000 炎 獣戦士族 星4

 

勇炎星-エンショウ

守:1000 炎 獣戦士族 星4

 

「さらに、リシュンマオで幻獣機トークンに攻撃!」

 

寿炎星-リシュンマオ

攻:2200

 

幻獣機トークン

守:0

 

優雅な装束の戦士が鋭い踏み込みから一閃を放つ。良平の陣地で最後の壁となっていた幻獣機トークンが真っ二つに両断され、光の粉となって消滅した。

 

「メイン2へ移行!」

 

ーメインフェイズ2ー

 

「勇炎星-エンショウの効果発動! ワシンジンでコストを踏み倒し、フィールドの魔法、罠カード、天威無崩の地を破壊!」

 

炎の戦士が荒野の大地を力強く踏み砕く。スタジアムを覆っていた岩肌のフィールド魔法がひび割れ、虚空へと崩れ去った。

 

「さらにレベル4の勇炎星-エンショウ2体でオーバーレイ!!」

 

二体の戦士が重なり合い、新たな光の渦となる。

 

☆4×☆4=★4

 

「──五雷正法。入雲竜の名の下に、仇為す者に裁きを下せ!」

 

黒河の高らかな詠唱に応え、まばゆい光がフィールドを包み込む。

 

「エクシーズ召喚! 間炎星-コウカンショウ!」

 

間炎星-コウカンショウ

守:2200 炎 獣戦士族 ランク4

 

「……!」

 

良平は無言のまま、次なる一手を警戒する。

 

「コウカンショウの効果発動! 墓地の暗炎星-ユウシと立炎星-トウケイをデッキに戻し、貴様のフィールドのホープとドラゴサックをバウンス!!」

 

コウカンショウが激しい炎の竜巻を巻き起こす。破壊を介さないエクストラデッキへの強制送還。抗う術を持たない未来龍皇ホープと幻獣機ドラゴサックは、竜巻に飲み込まれてなす術なく吹き飛ばされた。

 

『な、なんというシーソーゲーム!! モンスター1対5でスタートしたチーム煉獄のターンであったが、一転し、チームHEROのフィールドは全て消え去ったァァァ!!?』

 

目まぐるしく攻守が入れ替わる激闘に、観衆のボルテージは最高潮に達し、地鳴りのような歓声がスタジアムを激しく揺るがした。

 

「悪いがホープは返してもらうぜ! これで勝利の希望は再びおれに渡った」

 

黒河は勝利を確信したように不敵な笑みを浮かべた。

対して良平は静かに首を振り、己のデッキへと視線を送る。

 

「……どうかな。勝利はデッキの中に眠ってたんじゃ意味がない」

 

「なに? ……ふっ、フィールドが焼け野原の貴様がよく吠えたな。ターンエンドだ!」

 

ーエンドフェイズー

 

黒河唯人

LP:2100

手札1

フィールド:

炎舞-「天枢」

炎舞-「隠元」

 

炎星仙-ワシンジン

寿炎星-リシュンマオ

間炎星-コウカンショウ

 

焼け焦げた荒野に、重苦しい静寂が降り下りる。

聞こえるのは鼓動。

良平のデッキはもうかなり薄くなっている。

だがそれは相手も同じこと。

狙うは逆転の一手。

 

ードローフェイズー

 

「俺のターンッ!!」

 

良平の指先が鋭く風を切り、デッキの最上段から運命の一枚を引き抜いた。

引き当てたカードを確認した良平の瞳に、強い光が宿る。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「あっ!」

 

「っ!」

 

モニター越しに良平の表情の変化を察知し亜美とここのせが同時に息を呑んだ。

ここのせは口の端を吊り上げ、隣の亜美へ視線を向けた。

 

「そろそろ出番みたいだぜ、祭乃木」

 

「え……?」

 

ゆきが不思議そうに首を傾げる。

そんな彼女を尻目に亜美は拳を鳴らしてウォーミングアップを始めた。

 

「よーし、やってやろうじゃない。ま、()()()()()()()()()()()()みたいだし、気兼ねなく暴れられるわ!」

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

「……来てくれたか」

 

良平は手札のカードに静かに語りかける。

 

「……?」

 

黒河が怪訝な表情を浮かべた。

顔を上げ、良平の視線が黒河とぶつかる。

 

「いくぞ、デュエルアカデミア! 手札から速攻魔法発動! マグネット・リバース!」

 

良平が手札を叩きつけると、巨大な磁石の幻影がフィールドに出現し、強力な磁場を発生させた。

 

《マグネット・リバース》

速攻魔法

「マグネット・リバース……! 蘇生カードか……!」

 

「俺の墓地か除外ゾーンから通常召喚できない機械族を特殊召喚できる!再び空に舞い上がれ! 幻獣機ドラゴサック!!」

 

磁力に引かれるように、墓地から無数の鉄屑が舞い上がり、空中で瞬時に組み上がっていく。

駆動音と共に破壊されたはずの超大型輸送機が三度目の飛翔を果たした。

 

「Mriya takeoff!」

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600 風 機械族 ランク7 素材なし

 

『おぉっと!! 焼け野原になったフィールドからあっという間に切り札を呼び直した!! 反撃の兆しとなるかァァァ!!?』

 

実況の声がスタジアムに響く。

 

「ふっ、だが、素材がないエクシーズモンスターに何ができる!」

 

黒河は余裕の表情を崩さない。

 

「バトルフェイズ!」

 

ーバトルフェイズー

 

「ドラゴサックで、炎星仙-ワシンジンに攻撃!」

 

巨大要塞機が機首を下げ、鷲の仙人へと突進する。

 

「ハッ、その攻撃を受けたところでおれを倒すことはできないぜ!」

 

「いいや! この攻撃でお前を撃ち落とす! 速攻魔法、リミッター解除!!」

 

良平は手札の最後の一枚を、魔法罠ゾーンへと叩き込んだ。

 

《リミッター解除》

速攻魔法

 

警告音が鳴り響き、ドラゴサックの機体が赤熱する。エンジンの回転数が限界を突破し、鼓膜を破るような金属音がスタジアムを震わせた。

 

幻獣機ドラゴサック

攻:2600→5200

 

「ターン終了時に自壊する代わりに機械族の攻撃力は2倍となる!」

 

「バカなッ、貴様のフィールドには幻獣機トークンはない! ドラゴサックを守るものはないぞ!」

 

黒河の顔に初めて焦燥の色が浮かぶ。

 

「構うもんか!!たとえ此処で撃墜されようが、お前を倒せるならそれでいい!! いくぞ、ドラゴサック!!」

 

「っ……!?」

 

限界を超えた出力で加速したドラゴサックが、凄まじい衝撃波を伴ってワシンジンへ激突していく。

刹那、音が消え去った。

ただ目にも止まらぬ速さで幻獣機が飛ぶ。

音さえも置き去りにして。

己さえも置き去りにして。

ただ勝利のために。

ただ目の前の敵を倒すために。

しかして幻獣機ドラゴサックは炎星仙-ワシンジンの身体を貫いた。

 

幻獣機ドラゴサック

攻:5200

 

炎星仙-ワシンジン

攻:1800

チュドォオォオッ

 

鷲の仙人は悲鳴を上げる間もなく粉砕され、その爆発のエネルギーが真っ直ぐに黒河へと襲いかかる。

 

「うわぁぁぁぁぁ……!!!?」

 

黒河唯人

LP:2100→0

 

黒河は巨大な爆風に吹き飛ばされ、地面を転がった。ライフポイントの表示が、無慈悲にゼロへと切り替わる。

 

『決まったァァァァァァァァァァァァッ!!! ファーストプレイヤーの勝負は、まさかまさかのチームHEROが先制!! 』

 

[チームHERO側観客スタンド]

 

「やった!! 日和田くんが勝った!!」

 

女子生徒が跳び上がって喜ぶ。

 

「え、アカデミアから一勝とった……? 本当に凄いじゃん!」

 

別の生徒も信じられないといった様子で歓声を上げた。

 

「ほらほら! チャンステーマ!!」

 

くるみんの合図には男子生徒は無言で力強く頷き、応援のタクトを振るった。

 

[デュエルフィールド]

 

「くっ……」

 

黒河は膝をつき、力なくうなだれた。

 

ーメインフェイズ2ー

 

「……カードを1枚セット」

 

良平は唯一残ったカードを伏せた。

 

「ターンエンド」

 

ーエンドフェイズー

 

良平の宣言と同時に、限界を超えたドラゴサックの機体から火花が噴き出した。

 

「……」

 

要塞機はフラフラと高度を落とし、轟音と共に地面へ墜落して大破した。

 

「ありがとう、ドラゴサック……」

 

良平は燃え盛る残骸に、静かに感謝の言葉を捧げた。

 

日和田良平

LP:1600

手札:0

魔法罠:

伏せカード

フィールド:

なし

 

『ここでチーム煉獄は、プレイヤーチェンジだ!!』

 

実況の案内に従い、黒河が力なく立ち上がる。

 

「うぅ……ま、まさか負けちゃうなんて……」

 

彼の口調は、冷酷な捕食者のものから、かつての気弱な少年のものへと戻っていた。

 

(あ、戻った……)

 

良平が内心で安堵したのも束の間。

 

「おい黒河ぁ!」

 

青の制服を羽織った金髪の少女──寺仔リオが足音を荒立ててフィールドへ入ってきた。

 

「ひっ……」

 

「お前、こんなやつに何負けてんだよこの雑魚!!」

 

リオは容赦なく黒河の鳩尾に蹴りを叩き込んだ。

 

「痛ッ……! き、君だって苦戦することになるさ……」

 

黒河は腹を抱えながら、自分のデュエルディスクからカードを抜き取って差し出す。チーム戦のルールに従い、盤面を引き継ぐための処理だ。

 

リオはカードを乱暴にひったくり、自身のディスクへと装填した。

 

「あ、後でぼくのカード返してよ……?」

 

「こんなクズカードいらねぇんだよ!! さっさとあっちいけ!!」

 

「……な、なんだよもぅ……」

 

黒河は逃げるようにベンチへと走り去っていった。

 

「……」

 

良平は痛む首筋を押さえながら、眼前の少女を見据える。

 

(寺仔リオ……。彼女はあの時……)

 

この準決勝が始まる前。

海辺の廃倉庫で、彼女はモンスターを実体化させて襲い掛かってきた。

『サイコデュエリスト』

モンスターを実体化させる能力者。

リオは良平を睨みつけ、苛立たしげに舌打ちした。

 

「おい、お前、あの時はよくもやってくれたな」

 

「そっちの自業自得じゃないか」

 

「うるさい!! お前、楽には殺さないからな!!」

 

リオの瞳に、明確な殺意が宿る。

 

『さぁぁぁ!! デュエルは中盤に突入する!! デュエルはチーム煉獄のセカンドプレイヤー、寺仔リオのターンからデュエル再開だァァァ!!」

 

ードローフェイズー

 

「ウチのターン!」

 

リオは獲物を狩る獣のような笑みを浮かべ、デッキの最上段からカードを勢いよく引き抜いた。空気を切り裂くような鋭い風切り音が、静まり返ったスタジアムに響く。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

「おいで、トリオンちゃん!」

 

リオがカードを盤面に叩きつける。

現れたのは、パステルカラーの洋服を纏ったアリジゴクの少女だった。

 

「きゃはっ」

 

トリオンの蠱惑魔

攻:1600 地 昆虫族 星4

 

少女は無邪気に小首を傾げる。しかし、その背後に幻影として揺らめく巨大な顎は、不気味に蠢き、粘着質の粘液を滴らせていた。フィールドの空気が、甘く毒々しい香りに包まれる。

 

「召喚したとき、効果はつどー!」

 

「それに対してトラップ発動! 激流葬!」

 

良平は、これが最後の一手と言わんばかりに、伏せカードを魔法罠ゾーンへと差し込む。

 

《激流葬》

通常罠

 

chain1 トリオンの蠱惑魔

 

chain2 激流葬

 

「モンスターが召喚、特殊召喚された時、フィールドのモンスターを全て破壊する!」

 

剎那、大気が震える。大地が割れ、そこから大量の濁流が奔流となって噴き出した。凄まじい水圧がフィールド全体を飲み込み、スタジアム全体に轟音が響き渡る。ソリッドビジョンで再現された水の塊は、物理的な質量を持ってリオの陣地へと襲いかかった。

濁流はリオの蠱惑魔を、そして黒河から引き継いだ二体の炎星を飲み込んだ。

 

『ここで全体除去カードが炸裂ゥゥ!! チームHEROファーストプレイヤー、日和田良平! 意地の一撃だァァァ!!』

 

実況の絶叫が響く中、観客席からはどよめきが起きる。

しかし良平はどこか悔しそうに眉を潜めた。

 

(……ここが潮時か。蠱惑魔は、ホール、落とし穴トラップにアクセスすることができるテーマ……。本当は幻獣機の耐性で乗り越えたかったけど仕方ないか)

 

「チッ、マジムカつく! ……トリオンちゃんの効果で、奈落の落とし穴をサーチすっから」

 

リオは苛立ちを隠さず、デッキからカードを乱暴に抜き取った。

 

「二重召喚、発動!」

 

リオが魔法カードを突き出す。

 

《二重召喚》

通常魔法

 

「このターン、もう一回召喚できる! きてきて、ランカちゃん!」

 

立て続けに放たれたカードから、今度はカマキリのような爪を持つ少女が、妖艶な笑みを浮かべて現れた。

 

ランカの蠱惑魔

攻:1500 地 昆虫族 星4

 

「ランカちゃんは、場に召喚したときデッキの蠱惑魔ちゃんをサーチするよ! じゃ、ジーナちゃんにしよ」

 

リオの手さばきは正確で速い。リソースが尽きるどころか、さらに増殖していく。

 

「ランカちゃんをリンクマーカーにセット! 召喚じょーけんはぁ、リンクじゃない蠱惑魔ちゃん1体!」

 

↓蠱惑魔 = LINK1

 

ランカの少女が光の粒子となり、上空に開かれた巨大な回路へと吸い込まれていく。

 

「セラちゃんをリンクしょーかん!!」

 

セラの蠱惑魔

攻:800 地 植物族 LINK1 ↓ (右EXゾーン)

 

「さらにカードをセット! そんでそのまま発動だしぃ!」

 

リオは手札を伏せると、セットされたターンであることを無視して、即座にそれを表返した。

 

《幻影騎士団シェード・ブリガンダイン》

通常罠

 

「トラップカードをセットしたターンに……!?」

 

良平が驚愕する。

 

リオ「きゃはっ、こいつはね、墓地に罠カードがないときは伏せたターンでも発動できるんだよ! さらに通常罠カードが発動した時、セラちゃんの効果もはつどー!」

 

chain1 幻影騎士団シェード・ブリガンダイン

 

chain2 セラの蠱惑魔

 

「きゃはっ、こいつはね、墓地に罠カードがないときは伏せたターンでも発動できるんだよ! さらに通常罠カードが発動した時、セラちゃんの効果もはつどー!セラちゃんは、罠カードが発動したときぃ、デッキから蠱惑魔ちゃんを呼び出すの! きて、アトラちゃん!」

 

アトラの蠱惑魔

攻:1800 地 昆虫族 星4

 

セラの放つ毒々しい花粉に呼応し、今度は蜘蛛の糸を這わせた少女が、不気味に口元を歪めながら現れた。

 

「さらにシェード・ブリガンダインを通常モンスターとして特殊召喚!」

 

発動した罠カードが、黒い装甲の騎士へと姿を変え、地響きを立ててアトラの隣に立つ。良平のフィールドは完全な焼け野原。対するリオのフィールドは、一瞬にして完全なる捕食者の巣窟へと変貌していた。

 

幻影騎士団シェード・ブリガンダイン

守:300 闇 戦士族 星4

 

「バトル、いくよぉ!」

 

リオは嗜虐的な笑みを深め、良平を指差した。その瞳は、獲物をいたぶる楽しみで輝いている。良平は恐怖に身をすくませながらも、最後の抵抗を見せるべく身構えた。

 

ーバトルフェイズー

 

「セラちゃんでダイレクトアタックするしぃ!」

 

「!?」

 

『おっとぉ?? 日和田良平のライフポイントは1600! アトラの蠱惑魔で攻撃すれば一撃でライフを0にできるが、これはぁ……!?』

 

実況が困惑の声を上げる。スタジアム全体に不穏な空気が広がる。

 

「あはっ」

 

セラの蠱惑魔

攻:800

 

セラが花弁から立ち上がり、良平へ向けて腕を振るった。刹那、良平の足元の大地から、無数の棘のついた植物のツルが凄まじい勢いで飛び出した。

 

「ッ!?」

 

ツルは良平の四肢に絡みつき、ギリギリと音を立てて締め上げる。棘が良平の制服を突き破り、肌に深く食い込んだ。

 

「うわぁぁぁぁぁッ……!!!?」

 

日和田良平

LP:1600→800

 

ソリッドビジョンではない物理的な痛覚。

 

「ぁぁあ……!」

 

良平の絶叫がスタジアムを支配した。

棘に食い込んだ箇所から、わずかに滲み出た赤黒い血がツルを伝う。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「良平ッ!!」

 

亜美が悲鳴のような声を上げ、手すりを強く握りしめた。

 

「野郎ォッ……!」

 

ここのせは手すりを殴り、金属が軋む音が鳴った。

狂気じみた笑いを浮かべるリオを血走った眼で睨みつける。

 

[チームHERO側観客スタンド]

 

スタジアムを埋め尽くす観客たちも、目の前の凄惨な光景に静まり返っていた。

 

「え……そ、ソリッドビジョン、だよね……?」

 

女子生徒の一人が青ざめた顔で震える声を漏らす。

 

「で、でも凄く苦しそう……」

 

「どういうこだ……!?」

 

忠一が眼鏡の奥の目を鋭くし、前のめりになる。冷や汗が頬を伝う。

 

「何が起こってるんだ……」

 

くるみんもまた、目の前の惨状に言葉を失っていた。

 

[デュエルフィールド]

 

「はぁ、はぁ……! くっ……」

 

ツルから解放された良平は、力なくその場に崩れ落ちた。制服には棘の痕が残り、息は乱れ、体はまだ震えている。

 

日和田良平

LP:1600→800

 

「あは分からなははっ! ちょーウケる!! このまますり潰してやるからさぁ!」

 

リオは地面に這いつくばる良平を見下ろし、狂気じみた笑い声をスタジアム中に響かせる。

 

「わざわざ、セラの蟲惑魔で攻撃したのは、このためか……!」

 

良平は荒い息を吐き、喉から絞り出すように呟いた。相手の残虐な意図。一撃でライフを削り切るのではなく、物理的な苦痛を与えて精神を折るための、非情なるプレイング。

 

「あはっ! このままぶち殺してやるからさぁ! そのまま寝とけよ!! やっちゃって! アトラちゃん!!」

 

アトラの蟲惑魔

攻:1800

 

蜘蛛の少女が不気味に笑い、その指先から伸びる粘着質の糸が、無防備な良平を今度こそ完全に拘束すべく迫りくる。

 

「ッ……!」

 

良平は迫る痛みの恐怖に顔を歪めた。体は動かない。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「……!」

 

恵がわずかに眉を動かす。

 

「日和田さんっ!」

 

ゆきが悲痛な声を上げた。

 

「良平ッ!」

 

ここのせが張り裂けんばかりの声で叫ぶ。

 

「良平ぇぇ!!」

 

亜美は我慢の限界を超え、ベンチを飛び出した。手すりを乗り越え、人工芝のフィールドへと全力で駆け出した。

彼女の背中が、スタジアムの光に照らされた。




寝る前決闘空間第45話
『おどろの悪魔』
デュエルスタンバイ!
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