遊戯王5D's after ~童実野第二高校ヒーロー部~   作:レトやま

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E・HERO VS 蟲惑魔!
※例によって1ターン長いです……。
※基本雰囲気で読んでください…!
※ルールミス等あればコメントで教えてください…!


第45話 「WSC準決勝 おどろの悪魔」

[ネオ童実野シティ プリンスホテル VIPラウンジ]

紅蓮の絨毯が敷き詰められた豪奢な空間には、重厚な作りのテーブルが整然と並ぶ。

数席用意された椅子には、高貴なスーツに身を包んだ人間たちが腰を下ろし、その後ろには各々の秘書らしき人物が静かに控えていた。

そこへ、純白のスカーフで赤ワインのボトルを包んだホテルの給仕が、恭しく足を踏み入れる。

 

「失礼します」

 

給仕が恭しくボトルを傾けると、トクトクと小気味良い音を立ててルビー色の液体がグラスへと注がれていく。

 

「どうも」

 

眼鏡の奥で切れ長の目を細めた研究者の男――ウィリアム・スミスが、短く礼を述べた。周囲の華やかな空気とは対照的に、彼は冷徹で理知的な雰囲気を纏っている。

隣の席のスーツの男は無言のまま、自分のグラスに注がれるワインを見つめていた。

 

「失礼します」

 

給仕は次に、黒いロングコートを身に纏い、美しい金髪を長く伸ばした女性――クイーンの席へと進み出た。

 

「いや、私は結構だ」

 

「えっ」

 

給仕が戸惑いの声を漏らす。

 

「今日はワインの気分ではなくてな。このまま空のままで構わない」

「は、はぁ」

 

給仕が引き下がると、クイーンは静かに視線を巡らせ、目の前の空席を一瞥した。

 

「今日は我ら高決連と公正デュエル委員会の理事会を兼ねた会食と聞いているが、肝心の理事長が欠席とはどういう了見かな、デュエルアカデミア諸君」

 

「これは失礼。理事長は火急の用事がございまして。本日は我々が名代に参りました」

 

スミスがグラスを傾けながら、抑揚のない声で答える。

 

「ほう、名代か。潰れかけのデュエル研究所の所長が偉くなったものだな」

 

「……山奥のしなびた神社の元神主さまがデュエルクイーンなどと持て囃されている様を、鏡に写してみたらいかが?」

 

スミスの切れ長の目が、底意地悪くクイーンを射抜いた。

 

「生憎と鏡を一つ盗まれてしまってね。……それが返ってくるのなら、私がクイーンである必要はないのだがな」

 

「それはお気の毒に。しかし鏡ならもう一つお持ちではありませんか。懐から出したらいいじゃないですか」

 

「二つあるなら片方は盗んでも構わないと?」

 

「貴女が何を言ってるのかわかりませんな。貴女のものが盗まれたことを俺に言われても困ります」

 

スミスは白々しく肩をすくめた。

 

「くっくっ、何、ただの戯れだ。ところで、最近、"発見"されたという運命力を増幅させる技術とやらは、その後どうなのかな?」

 

「順調ですよ。ただ、まだ"発見"できていない重要なパーツがありましてね」

 

「……」

 

クイーンは無言で先を促す。

 

「所在を突き止め次第、方々からガサ入れしてもらう予定です。これはよほどの権力者じゃなければ抵抗できない」

 

「そうまでしてなんとする、デュエルアカデミア。運命力がそれほど大事か」

 

「デュエルと化学が発展する、人類にとってこれほどの幸福はないでしょう」

 

「若きデュエリストを人身御供にしてもか?」

 

「何をおっしゃっているのです? 妙な言い掛かりやめてください」

スミスの声に、わずかに苛立ちが混じる。

 

「貴様らの研究の成れの果てを、このクイーンが見過ごすとでも? ……過ぎた力は身を滅ぼす。改めて言おう。手を引け」

 

「貴女こそ、研究の邪魔をしないでいただきたい。……いつまでも権力があると思うなよ」

 

「コケ脅しの力ではこのクイーンは倒せんぞ」

 

「……ならば代案を立てるだけのことだ」

 

「代案だと……?」

 

「この大会で思わぬ収穫があったんでね。まさかアカデミアでもない学生にあんな逸材があるとはな。良質な素材があれば機材など後からどうとでもなる」

 

「……あまり驕るなよ研究者。デュエリストを甘く見るな」

 

クイーンの鋭い眼光が、真っ向からスミスの顔を射抜いた。

 

「貴女が協力すれば済む話だ」

 

「話にならんな」

 

クイーンが立ち上がった瞬間、ガタッと椅子が大きく鳴った。

もし床に分厚い紅蓮の絨毯が敷かれていなければ、けたたましい音がラウンジ中に響き渡っていただろう。

それほどの勢いで立ち上がると、彼女は黒いロングコートを翻して踵を返した。

 

「理事長に伝えておけ。これ以上静観するつもりはないとな」

 

クイーンは冷ややかな声と鋭い足音を残し、足早にラウンジを立ち去っていった。

 

[プリンスホテル 廊下]

 

 

VIPラウンジを後にしたクイーンは、黒いロングコートの裾を翻し、ホテルの豪奢な廊下を足早に進んでいた。床に敷かれた分厚い絨毯が、彼女の鋭い足音をわずかに吸収する。

 

「姐さん、ちょっとええかぇ」

 

背後から小気味良い足音を響かせ、浅黒い肌で借刈り上げた白髪の男性――絵草霜がクイーンの横に並び立った。

 

「なんだ?」

 

クイーンは歩みを緩めることなく、前を見据えたまま短く応じる。

 

「アバンスから連絡があってのぅ。例のあの子らに、アカデミア連中が手を出したみたいじゃ。あの妙な力を使ってな」

 

絵草からの報告を聞いても、クイーンの歩調は変わらない。

流れるような金髪が、彼女の動きに合わせて微かに揺れた。

 

「……」

 

「こっちからつつくかぇ?」

 

絵草は隣を歩きながら、探るような視線をクイーンの横顔へ向けた。

 

「彼らは自ら戦うと言ったのだ。それはもはやデュエリストのプライドの領域。手出しは無用だ」

 

クイーンの言葉には、決意を持った若きデュエリストたちへの確かな敬意が込められていた。

 

「カッカッ、手厳しいのぅ」

 

絵草は愉快そうに喉を鳴らし、軽い足取りでついていく。

 

「何、私も無策ではないよ。例の連中の力はあの時、ある程度は散らしてある。あの程度ならば、彼女が持つ力で十分対抗できるはずだ」

 

クイーンは淡々と、しかし確かな自信を孕んだ声で告げた。その眼差しは、遠く離れた地で死闘を繰り広げている若者たちを静かに見守っているかのようだった。

 

「ほぉ、抜け目がないわ」

 

絵草は感心したように息を吐く。

 

「だがデュエル外のことでは別だ。彼女達はまだ幼い。フォローしてやらねばならん。……車を回せ。動くぞ、エグザ」

 

クイーンは鋭く命じ、さらに歩調を速めた。

 

「ほいほいっと」

 

絵草は軽い返事と共に踵を返し、素早い身のこなしで手配へと向かっていった。

 

[ネオ童実野シティ メモリアルスタジアム デュエルフィールド]

 

白昼のネオ童実野メモリアルスタジアムでは、チーム煉獄側、即ちデュエルアカデミア側のスタンドからチャンステーマが流れている。

一方で、相対するチームHERO側のスタンドでは困惑する声が上がっていた。

 

渦中のデュエルフィールドでは、日和田良平が全身を苛む痛みに耐えかね、腕を抱きかかえるようにして人工芝の上に膝をついていた。

 

「はぁ、はぁ……! くっ……」

 

「あはははっ! ちょーウケる!! このまますり潰してやるからさぁ!」

 

リオは獲物が苦しむ様を見下ろし、腹を抱えてサディスティックな高笑いを上げる。

 

「わざわざ、セラの蟲惑魔で攻撃したのは、このためか……!」

 

良平は荒い息を吐きながら、相手の悪辣な意図を噛み締めた。

 

「あはっ! このままぶち殺してやるからさぁ! そのまま寝とけよ!! やっちゃって! アトラちゃん!!」

 

アトラの蟲惑魔

攻:1800

 

「きゃははっ!」

 

蜘蛛の少女が不気味に笑い、その細い腕を振り下ろす。刹那、地面を突き破り、ビキビキと不気味な音を立てて禍々しい太さの蔓が良平へと殺到した。

 

「ッ……!」

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「……!」

 

恵が表情を強張らせる。

 

「日和田さんっ!」

 

ゆきが悲痛な叫びを上げた。

 

「良平ッ!」

 

ここのせが張り裂けんばかりの声を上げる。

 

「良平ぇぇ!!」

 

亜美は我慢の限界を超え、ベンチを蹴り飛ばすほどの勢いでフィールドへと駆け出した。

 

彼女が仲間を呼ぶ悲痛な声に呼応するように、腰に提げたデッキケースが俄かに眩い光を放ち始める。

溢れ出した光の中から虹色の羽が大きく羽ばたき、七つの宝玉をその身に宿した巨大な竜の躯体が、半透明の姿でスタジアムの空間に現出した。

 

「クォォォオォオォオッ!!」

 

「あっ……!?」

 

ゆきが頭上を見上げ、驚愕に目を見開く。

 

「ッ、お願いレインボードラゴン! 力を貸して!」

 

亜美が祈るように叫ぶと、虹の竜はそれに応えるように天を仰いだ。

 

「キュォォオォオォオッ!!」

 

空間を激しく揺らすような咆哮が響き渡り、虹色の光の奔流が辺り一帯を包み込む。

その光は弧を描いてデュエルフィールドへと飛び、良平のデッキケースへと収束していった。

 

[デュエルフィールド]

 

やがて光は実体を結び、彼の窮地を何度も救ってきた頼もしい機械の姿へと変わる。

 

「ライァイッ!」

 

「オライオン……!?」

 

半透明ながらも良平の眼前に姿を現したのは、幻獣機オライオンであった。

小さな機械の精霊は、主を守る盾となるべく、突貫してくる棘の蔓の前に毅然と立ちはだかる。

 

「なっ……」

 

目の前の事態にリオは目を見開いた。

アトラの蟲惑魔が容赦なく蔓を薙ぎ払う。オライオンは小さな機体全体でその凶悪な一撃を受け止めた。

一瞬の拮抗。しかし、圧倒的な破壊力の前ではそれも長くは続かなかった。オライオンの機体に深いヒビが走り、ガラスが砕け散るような鋭い音と共に粉々に四散してしまった。

 

残る衝撃を孕んだ禍々しく太い蔓が、オライオンの居なくなった虚空を薙ぎ払い、そのまま良平の身体を容赦なく吹き飛ばした。

 

「ぅあぁぁぁッ……!」

 

日和田良平

LP:800→0

 

その衝撃は、まるで車に衝突されたかのようだった。幾分か減衰されたであろうそれも良平の身体を空中に放り出すには十分だったらしく、良平は体勢を整えることも叶わず地面に叩きつけられた。

二、三転してようやく止まった時には、腕や顔の至るところの皮膚が破れて赤い雫が滲んでいる。

 

「うっ……」

 

「良平ぇ!!」

 

亜美が弾かれたように駆け寄る。

 

「ッ……」

 

一瞬意識が飛んでいたのか、良平は目の前が妙に低いことに驚いた。

それから自分の置かれた状況を思い出して慌てて視線を上げる。

ライフはゼロになったようだが、何故か現れたオライオンのお陰で致命打にはならなかったらしい。

そんなことを考えていると慌しい足音が聞こえる。

それは亜美がこちらに駆け寄ってきている音だった。

 

「さ、祭乃木……」

 

良平は全身の痛みを堪えながらゆっくりと上半身を起こし、腕の決闘盤を外して亜美へと差し出した。

 

「良平!」

 

「……約束通り、黒河は倒したぞ。あとは、祭乃木に、任せる」

 

「ええ、任せなさい! でも、まずはアンタを……」

 

「待ちな」

 

「ここのせ!」

 

「そういうのは控えメンバーに任せとけ。……よっと」

 

ここのせは良平の腕を自身の首に回し、力強く肩を組んで立ち上がらせた。

 

「い、いたた……!」

 

「良平のことはオレと恵が診るぜ。お前は、目の前のケンカに集中するこった」

 

「わかった、頼んだわよ!」

 

「そりゃこっちのセリフだってんだ。そら、いくぜ良平」

 

ここのせは良平の足を引きずるようにして、ゆっくりとベンチの方向へ歩き出す。

 

「も、もう少し優しく運んでくれよ……」

 

「へへっ、漢を見せたな、良平」

 

「……ぼろぼろだけどね」

 

「何、向かい傷は大和男子の誉れだ」

 

「うん、これを祭乃木や宮田が受けなくてよかった……」

 

良平はここのせの言葉に頷く。

それからちらと後ろを振り返り亜美の背中を見つめた。

 

(それにしても、さっきのオライオン。どうやって実体化したんだろう……。やっぱり祭乃木の力なのか……?)

 

一方、亜美は踵を返し、鋭い眼光でリオを射抜く。

 

「……アンタ」

 

「あ? なんだよ?」

 

「ぶっ飛ばされる覚悟は出来てるんでしょうね」

 

亜美の声は低く、静かな怒りに満ちていた。

 

「はぁー? 意味わかんないですけど。てか、ウチに攻撃通す前提で言ってんの? マジウケる」

 

リオは馬鹿にするように鼻で笑う。彼女の背後で、アトラとセラの蟲惑魔がクスクス、きゃははと気味の悪い笑い声を上げた。

 

「お前はもう蟲惑魔の巣窟に足を踏み入れてんだよ!! 抜け出せない落とし穴が仕掛けられた巣窟になぁ!! きゃははっ、ウチってば蟲惑魔的ぃ!」

 

「はっ! 好きなだけ仕掛けたらいいわ! ヒーローはそんな安っぽいトラップなんか踏み越えるんだから! 首洗って待ってなさい!!」

 

亜美は受け取った決闘盤を自身の腕に装着し、ガシャンと甲高い金属音を立ててソリッドビジョンシステムを起動させた。

 

祭乃木亜美

LP:4000

手札:5

フィールド:

無し

 

寺仔リオ

LP:4000

手札:4

フィールド:

炎舞-「天枢」

炎舞-「隠元」

 

セラの蠱惑魔

攻:800 地 植物族 LINK1 ↓ (右EXゾーン)

 

アトラの蠱惑魔

攻:1800 地 昆虫族 星4

 

幻影騎士団シェード・ブリガンダイン「ーー」

守:300 闇 戦士族 星4

 

『チームHEROはセカンドプレイヤーにバトンタッチ!! セカンドプレイヤーは、これまで数々の奇跡を起こしたチームリーダー祭乃木亜美!! ここまでは全てラストプレイヤーを務めていた彼女が、セカンドプレイヤーに繰り上がっている!! チームHEROの作戦かァァァ!!?』

 

実況の興奮した声が響き渡り、観客席からは割れんばかりの歓声とどよめきが巻き起こった。

 

『デュエルは、チーム煉獄セカンドプレイヤー、寺仔リオのメインフェイズ2からスタートだァァァ!!』

 

ーメインフェイズ2ー

 

「レベル4のシェード・ブリガンダインとアトラちゃんでオーバーレイ!」

 

リオの甲高い声と共に、二体のモンスターが光の渦となって空間を歪ませる。

 

☆4×☆4=★4

 

「―――誘え、誘え、誘え! 甘い、甘い、常夜の底へ!!」

 

妖しげな詠唱に呼応して、巨大な花弁がフィールドにゆっくりと開いていく。

 

「あはっ! おいで! フレシアちゃん!!」

 

巨大な食虫花の中から、可憐な少女が蠱惑的な微笑みを浮かべて姿を現した。

 

「うふふ……」

 

フレシアの蟲惑魔

守:2500 地 植物族 ランク4

 

『現れたのは、蟲惑魔のエースモンスター! フレシアの蟲惑魔だァァァ!』

 

スタジアム中から驚嘆のざわめきが波のように広がる。

 

『フレシアの蟲惑魔は、他の蟲惑魔モンスターを戦闘・効果による破壊から守る特殊能力と、いつでもデッキから落とし穴の効果を使用できる効果を併せ持っているぞォオ!!』

 

「カードを2枚セット!」

 

リオは流れるような手つきで、魔法・罠ゾーンにカードを二枚伏せた。

 

「ターンエンドだよ」

 

ーエンドフェイズー

 

寺仔リオ

LP:4000

手札:4

フィールド:

炎舞-「天枢」

炎舞-「隠元」

伏せカード

伏せカード

 

セラの蠱惑魔

攻:800 地 植物族 LINK1 ↓ (右EXゾーン)

 

フレシアの蟲惑魔

守:2500 地 植物族 ランク4

 

 

ードローフェイズー

 

「アタシのターン!」

 

亜美は鋭い風切り音と共に、デッキからカードを勢いよく引き抜いた。

 

ースタンバイフェイズー

 

「あはっ! 永続トラップ発動ぉ!」

 

リオが即座に伏せカードの一枚を開く。

 

《魔封じの芳香》

永続罠

 

「……!」

 

亜美の表情が険しくなる。開かれたカードから、むせ返るような甘く重い香りがフィールド全体に立ち込め始めた。

 

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「やばいっ……!!」

 

ここのせが顔をしかめ、手すりを強く握りしめる。

 

「あれはッ……! あ、痛っ……」

 

「……動かないで……」

 

傷だらけの良平が身を乗り出そうとするのを、恵が冷静な手つきで絆創膏を貼りながら制止した。

 

「あれは、どんなカードなんですかぁ!?」

 

ゆきが不安げに尋ねる。

 

「マジックカードをセットして1ターン待たないと発動できないようにさせる、事実上の魔法封じカードだ……」

 

ここのせが苦々しげに吐き捨てた。

 

「それじゃあ融合が……!」

 

ゆきが絶望的な声を上げる。魔法カードを主軸とする亜美のデッキにとって、致命的なロックであった。

 

[メモリアルスタジアム スタッフ控え室]

 

テレビモニターから、スタジアムの熱狂が控え室に流れ込んでいる。

 

「……」

 

神川は無言でコーラをストローで吸い上げ、喉を鳴らして飲み込んだ。

 

「あら、あまり驚かないのね?」

 

雪乃が面白がるように横目で神川を見る。

 

「YES! 何故なら彼女があの罠カードを使ってくるのは予測できるもの! But、あの程度の妨害、HERO girlは乗り越えるワ!」

 

神川は空になった紙コップを置き、自信満々に言い放った。

 

「へぇ、随分あの子を信頼してるのね」

 

「Non non! ワタシは、HERO girlを倒すべきrivalと認めたこのワタシ自身を信じているの!」

 

神川はふわりと豊かな金髪を揺らし、不敵な笑みを浮かべた。

 

 

[デュエルフィールド]

 

「あんたはさぁ、融合使いなんでしょ? でもこの香りで封じてやるから!!」

 

リオは勝利を確信したように、亜美を指差して嘲笑った。

 

「甘いわね! そんなもんじゃアタシは止められないわよ!! 手札からトラップカード発動!!」

 

亜美は躊躇することなく、手札からカードを一枚フィールドに叩きつけた。

 

《NEXT(ネオスペースエクステンション)》

通常罠

 

「はぁ……!? 手札からだと……!?」

 

リオが驚愕に目を見開く。

 

「ネオスペースエクステンションは、アタシのフィールドにカードが存在しない場合、手札からも発動できる!!」

 

「チッ! くそ、リセの蟲惑魔の効果発動!!」

 

リオが舌打ちと共に、自身の蟲惑魔の効果を宣言する。

 

「こっちも追撃よ! 手札から速攻魔法、禁じられた聖杯を発動!!」

 

亜美はさらに手札から魔法カードを繰り出した。

 

《禁じられた聖杯》

速攻魔法

 

chain1 魔封じの芳香

 

chain2 NEXT

 

chain3 リセの蟲惑魔

 

chain4 禁じられた聖杯

 

「禁じられた聖杯は、ターン終了時まで対象にしたモンスターの攻撃力を400ポイント上げる代わりに、効果を無効にするわ! 対象は、フレシアの蟲惑魔!」

 

亜美の放った魔法の杯から、禁断の雫がこぼれ落ちる。

 

「きゃぁ……!?」

 

雫を浴びたフレシアの蟲惑魔から、ジュワァッと煙が上がり、その厄介な能力が完全に封じ込められた。

 

「っ! リセちゃんは通常罠が発動した時、デッキから蟲惑魔ちゃんを呼び出すよ! きて、カズーラちゃん!!」

 

リオの呼びかけに応じ、ウツボカズラを模した新たな蟲惑魔が身をくねらせて現れた。

 

カズーラの蟲惑魔

守:2000 地 植物族 星4

 

「ネオスペースエクステンションの効果で手札、墓地からネオスペーシアンかネオスを任意の数特殊召喚するわ! さぁ、いくわよ、ネオス!!グランモール! ブラックパンサー!!」

 

亜美が腕を天に掲げると、まばゆい光の柱が三本、スタジアムに突き立った。

 

E・HEROネオス

攻:2500 戦士族 星7

 

N・グランモール

攻:900 地 岩石族 星3

 

N・ブラックパンサー

攻:1000 闇 獣族 星3

 

光の中から、純白の宇宙の戦士と、岩石のモグラ、そして漆黒の豹が立て続けにフィールドへ降り立つ。

 

「は? ネオスペーシアン……!?」

 

リオは予想外のモンスターたちの登場に、完全に虚を突かれた表情を浮かべた。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「なっ!? 祭乃木のやつ、今回のためにわざわざデッキに刺してやがったのか……!」

 

ここのせが驚きと共に歓声を上げる。

 

「扱いが難しくて今までデッキに入れてなかったけど、ここで……!」

 

良平もまた、亜美の隠し持っていた新たな戦術に目を輝かせた。

 

「前に練習で使っていました! あれなら……!」

 

ゆきが希望に満ちた声を上げ、フィールドで堂々と立つ亜美の背中を見つめた。

 

[デュエルフィールド]

 

「くそっ、奈落が使えない……!」

 

リオは忌々しげに舌打ちをし、自身の伏せカードを睨みつけた。

 

「悪いけど、アンタの罠カードを利用させてもらったわ! アンタが伏せている奈落の落とし穴は時の任意効果! チェーン2で場に出たモンスターは罠にかけられないわよ!」

 

亜美は自信に満ちた笑みを浮かべ、相手の仕掛けた落とし穴の構造的な弱点を突きつける。

 

「チッ……! だけど、そううまくいかないから! ウチのトラップはまだまだそこら中にあるんだからね!!」

 

リオは怒りに顔を歪めながらも、フィールドに張り巡らせた見えない糸を信じて吠えた。

 

ーメインフェイズー

 

 

「さぁ、ネオスの真髄を見せてやるわ! ネオス、グランモール、ブラックパンサーでコンタクト融合!!」

 

亜美の号令と共に、純白の宇宙の戦士、岩石のモグラ、漆黒の豹が一斉に天高く跳躍する。三体のモンスターは空中で光の渦となり、凄まじい駆動音を響かせながら互いの体を溶け合わせていく。

 

『こ、これはぁぁ!!? 融合を使わずに融合するE・HEROネオスの真髄!! 融合マジックカードを使わない、コンタクト融合だァァ!!?』

 

ルールを超越した召喚法に、スタジアムの観衆は割れんばかりの大歓声を上げた。

 

「ーー今は遠き宙に、輝く雲が靡く時、新たな光が大地を照らす!!」

 

天から降り注ぐまばゆい閃光が、荒れ果てたフィールドを照らし出す。

 

「ーー融合召喚! 降着せよ、E・HEROネビュラネオス!」

 

大地を揺るがすほどの重々しい着地音と共に、星雲の力を宿した新たなる英雄が雄叫びを上げて降臨した。

 

「シェアァァァッ!!」

 

E・HEROネビュラネオス

攻:3000 地 戦士族 星9

 

「ネビュラネオスの効果発動!」

 

「はっ、馬鹿じゃないの!! トラップ発動! 奈落の落とし穴!!」

 

亜美が効果を宣言した瞬間、リオは待っていたとばかりに罠カードを開く。

 

《奈落の落とし穴》

通常罠

 

「さらに、カズーラちゃんとセラちゃんの効果が発動するよ!!」

 

次々と連鎖していく効果の波。

 

chain1 E・HEROネビュラネオス

 

chain2 奈落の落とし穴

 

chain3 カズーラの蟲惑魔

 

chain4 セラの蟲惑魔

 

「セラちゃんは、他の蟲惑魔ちゃんの効果が発動した時、デッキから落とし穴カードかホールカードをセットできる!」

 

セラの蟲惑魔が怪しく微笑むと、リオの魔法・罠ゾーンに新たなカードが音もなく伏せられた。

 

「今度はカズーラちゃん! この子は、落とし穴が発動した時、デッキから他の蟲惑魔ちゃんを手札に加えるか特殊召喚できるの! さぁおいで、アトラちゃん!」

 

カズーラの蟲惑魔から放たれた胞子が実を結び、二体目となる蜘蛛の少女が身軽に飛び出してくる。

 

アトラの蟲惑魔

守:1000 地 昆虫族 星4

 

「あはっ! それじゃ邪魔者は奈落の底に落ちな!!」

 

リオが指を鳴らすと、ネビュラネオスの足元の大地が突如として大きく陥没した。凄まじい地鳴りと共に無数の触手が飛び出し、驚愕の声を上げる英雄の巨体を奈落の底へと引きずり込み、粉々に砕き割った。

 

『1枚のカードと3体ものモンスターを使って呼び出した切り札があっけなく沈んでしまったぞォオォオ!? アドバンテージ差は圧倒的だがァァァ!?』

 

実況の悲観的な絶叫が響く。

 

「だけどネビュラネオスの効果は通るわ! ネビュラネオスは、特殊召喚時、相手フィールドのカードの数だけドローできる!」

 

亜美は自身の切り札を失いながらも、その瞳から闘志の炎を絶やしていなかった。

 

「なっ……!?」

 

「アンタのフィールドには、モンスターが4体、マジックトラップゾーンに4枚の合計8枚のカードがある! よって8枚ドロー!!」

 

空を切るような鋭い音が連続して響く。亜美は残像が見えるほどの速度で、デッキから一気に8枚のカードを引き抜いた。

『ここでネビュラネオスの効果が炸裂ゥゥ!! 手札を一気に補充!! 失われたアドバンテージをあっという間に回復したぞォオ!?』

 

「さらに、ドローした後、相手フィールドの表側表示のカード1枚をターン終了時まで無効にする! 魔封じの芳香を無効にするわ!」

 

亜美がフィールドを指差すと、スタジアムを覆っていたむせ返るような重い香りが、シューッと音を立てて急速に霧散していった。

 

「ッ、この……!」

 

魔法封じという最大の盾を失い、リオの顔に焦りが滲む。

 

「こっからガンガン攻めるわよ! ついてこれるかしら!? エアーマンを召喚!!」

 

亜美がカードを叩きつけると、風を操る英雄が軽やかな身のこなしでフィールドに舞い降りた。

 

E・HEROエアーマン

攻:1800 風 戦士族 星4

 

「エアーマンは場に現れたとき、デッキからHEROをサーチできる! リキッドマンを手札に加えるわ!」

 

亜美は即座にデッキからカードを抜き取り、手札へと加える。

 

「そして、融合を発動!!」

 

《融合》

通常魔法

 

魔法カードが実体化し、青と赤の光の渦を生み出す。

 

「手札のリキッドマンとブレイズマンで融合!!」

 

水属性HERO+炎属性HERO

水と炎、相反する属性を持つ二人の英雄が、融合の渦へと飛び込んでいく。

 

「ーーそれは太陽の映し身、悪を滅する焔の英雄!」

 

眩い太陽の光が、蟲惑魔たちの作り出した陰鬱な空気を焼き払う。

 

「融合召喚!! 来なさい、E・HEROサンライザー!!」

 

燃え盛る炎を纏った英雄が、力強い雄叫びと共に姿を現した。

 

E・HEROサンライザー

攻:2500→2900 光 戦士族 星7

 

「サンライザーとリキッドマンの効果をそれぞれ発動!!」

 

chain1 E・HEROサンライザー

 

chain2 E・HEROリキッドマン

 

「リキッドマンが融合素材になった場合、カードを2枚ドローし手札を1枚捨てられるわ!」

 

亜美はデッキから新たに二枚を引き抜き、不要な一枚を素早く墓地へと送る。

 

「そして、サンライザーが融合召喚されたことでデッキからミラクルフュージョンをサーチする!」

 

「くそがっ……」

 

流れるような展開に、リオは悪態をつくことしかできない。

 

「今加えたミラクルフュージョンをそのまま発動!!」

 

亜美は手札に加えたばかりの魔法カードを間髪入れずに発動させた。

 

《ミラクルフュージョン》

通常魔法

 

「墓地のリキッドマンとブレイズマンを除外融合!!」

 

水属性HERO+炎属性HERO

今度は墓地から水と炎の力が抽き出され、奇跡の融合が始まる。

 

「ーー絶対零度、絶氷必滅!氷刃がこの世全ての悪を浄化する!」

 

急激にスタジアムの温度が下がり、フィールドのあちこちに霜が降り始める。

 

「ーー融合召喚!! E・HEROアブソルートZERO!」

 

重々しい足音と共に、絶対零度の冷気を纏った純白の英雄がフィールドに降り立った。

凍てつくような冷風が吹き荒れる。

 

E・HEROアブソルートZERO

ズドォォン

攻:2500→3100 水 戦士族 星8

 

 

祭乃木亜美フィールド

E・HEROエアーマン

攻:1800→2400

E・HEROサンライザー

攻:2500→3100

E・HEROアブソルートZERO

攻:2500→3100

 

寺仔リオフィールド

炎舞-「天枢」

炎舞-「隠元」

魔封じの芳香

セットカード

 

セラの蟲惑魔(右EXゾーン)

攻:800

フレシアの蟲惑魔

守:2500

アトラの蟲惑魔

守:1000

カズーラの蟲惑魔

攻:2000

 

 

「いくわよ! バトル!!」

 

ーバトルフェイズー

 

「エアーマンでアトラの蟲惑魔に攻撃!!」

 

亜美の鋭い声に応え、風の英雄が両腕に突風を巻き起こしながら空へ舞い上がった。

 

「この攻撃宣言時、サンライザーの効果発動! 1ターンに1度、他のヒーローが攻撃宣言した時、フィールドのカードを破壊できる!効果が無効になってる魔封じの芳香を破壊!!」

 

燃え盛る太陽の英雄が、手にした光の剣を一閃する。放たれた灼熱の刃が、機能を停止していた魔法陣を真正面から両断し、ガラスが砕け散るような甲高い音と共に完全に粉砕した。

 

「ッ……!!」

 

リオが忌々しげに顔をしかめる。

 

「そのままやっちゃって! エアーマン!」

 

エアーマンが急降下しながら、渾身の烈風をアトラの蟲惑魔へと放つ。

暴風がフィールドの砂塵を激しく巻き上げた。

 

E・HEROエアーマン

攻:2400

 

アトラの蟲惑魔

守:1000

 

「あはっ! 蟲惑魔的に罠にかけてあげる!! こっちもトラップ発動! 串刺しの落とし穴!!」

 

リオは不敵な笑い声を上げ、フィールドに伏せられたカードではなく、自らの手札から直接罠カードを盤面へと叩きつけた。

 

《串刺しの落とし穴》

通常罠

 

「アンタも手札から……!?」

 

「あはっ! アトラちゃんがいるとき、手札から落とし穴カードを発動できるんだよ!!」

 

互いに手札から罠カードを放つという、常識外れの応酬に亜美が息を呑む。

 

「このターン召喚、特殊召喚されたモンスターの攻撃をトリガーに、そのモンスターを破壊して攻撃力の半分をお前に与える!!」

 

空を飛んでいたはずのエアーマンは、不可視の力に引きずり降ろされるように槍に貫かれ、断末魔と共に無残に砕け散った。

 

「そぉら、あんたも串刺し!!」

 

リオの狂気じみた宣告がスタジアムに響く。

 

「!?」

 

音もなく、亜美の足元の大地が割れた。そこから、彼女の身体を貫くほどの太さを持った巨大な棘が、蛇のようにうねりながら凄まじい速度で突き出してきた。

 

避ける隙などない。死を覚悟した亜美が目を閉じたその瞬間。

 

「クォォォオッ!」

 

彼女の腰のデッキケースから溢れ出した虹色の光が、再びスタジアムの空間で実体を結んだ。

半透明のレインボードラゴンが、亜美を庇うようにその巨大な虹色の羽根を広げ、襲い来る凶悪な棘を包み込んで粉砕する。

 

しかし、奇跡の盾となったレインボードラゴンもまた、実体を維持することは叶わなかった。悲痛な鳴き声と共にその姿はノイズにまみれ、虚空へと溶けるように消え去っていく。

そして、竜が防ぎきれなかった棘の破片が、まるで明確な殺意を持っているかのように鋭く弾け飛び、亜美の制服の袖と、その下の白い肌を無慈悲に切り裂いた。

 

「うっ……!」

 

祭乃木亜美

LP4000→2800

 

物理的な衝撃と痛みが亜美の身体を後ろへと弾き飛ばす。

 

「痛っ……!」

 

地面に膝をつき、顔を歪める亜美。裂けた腕の傷口から、生々しい赤い血がポタポタと人工芝へと滴り落ちた。

 

『ここで落とし穴トラップが炸裂!! チームHERO祭乃木亜美は大きなダメージを受けてしまったァァァ!!』

 

実況のテンションの高い声と、スタジアムを揺るがす大歓声。それがかえって、フィールドで起こっている異常事態の不気味さを際立たせていた。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「祭乃木さんッ……!」

 

ゆきが悲鳴のような声を上げ、ベンチから身を乗り出す。

 

「くそっ、やっぱりダメージが……!」

 

傷だらけの身体を引きずりながら、良平が血を流す亜美を見て悔しげに拳を握りしめた。

 

「……敵性デュエリストから時空震は観測されない。サイコデュエリストと断定する……」

 

恵は瞳に無数のデータを走らせながら、感情の無い声で異常な現象の正体を口にした。

 

「サイコデュエリスト……?」

 

ゆきが聞き慣れない単語に戸惑う。

 

「……」

 

ここのせは何も言わず、ただ血走った眼で狂笑するリオを睨みつけていた。

 

[チームHERO側観客スタンド ]

 

白熱するデュエルの裏で起きた惨状に、一般の観客たちも徐々に違和感を抱き始めていた。

 

「え……? なんか怪我してない……?」

 

「ていうかさっきから、衝撃が凄いんだけど、本当にソリッドビジョンなのか?」

 

ざわめきが波紋のように広がっていく。

 

「祭乃木さん……血出てる……。なんで……?」

 

クラスメイトの女子生徒が、信じられないものを見るように青ざめた。

 

「……相手の効果ダメージ演出で怪我をしたように見えたけど……」

 

くるみんは腕を組み、深刻な表情でフィールドを注視する。

 

「そんなバカなことがあるか。ソリッドビジョンだぞ」

 

忠一は常識で考えればあり得ない事態に、眼鏡の奥の目を険しくして否定した。

 

「うーん……」

 

くるみんの口から、答えの出ない重い唸り声が漏れた。スタジアムの熱狂とは裏腹に、チームHEROの周囲には冷たく不気味な影が落ち始めていた。

 

[デュエルフィールド]

 

ざわざわと波打つような歓声と悲鳴が、スタジアムに異様な空気を作り出している。

 

(危なかった……。レインボードラゴンがいなかったらもっと酷かったはずよ……)

 

亜美は血の滲む腕を強く押さえ、荒い息を吐きながら立ち上がった。

 

「ッ〜〜!! なんだよ、なんで防がれるわけ!!? 今まで防いだやつなんていなかったのに!!!」

 

絶対の自信を持っていた一撃を阻まれ、リオが癇癪を起こしたように金切り声を上げる。

 

「アンタ……! 一体、何者なの……!?」

 

亜美は鋭い視線で、狂気じみた少女を睨みつけた。

 

「は? ……ウチにそんなこと聞くの……? ーーあはっ……」

 

「……?」

 

「……あはっ、あはっ、きゃはははははッ!!」

 

リオは突如として、腹を抱えて狂ったように笑い出した。

 

「なによ……何がおかしいのよ……!」

 

「ウチが何者かだって?? きゃははッ、化け物に決まってんだろうがよ!!!」

 

「化け物……?」

 

「そうだよ。パパもママも育てるの拒否った化け物!! きゃははッ、ただの人間がこんなことできるわけないっしょ!!」

 

リオの笑い声の奥には、底知れない狂気と、自暴自棄な闇が渦巻いていた。

 

「……」

 

「でもお前だって、化け物だかんね? ウチや剛の攻撃を防げるなんて。人間じゃないよ、お前」

 

リオが嘲笑する。

 

「……アタシもどうしてレインボードラゴンが力を貸してくれるのかわからない。この力はなんなのか、なんのためのものなのか、ずっと考えてるわ」

 

亜美は腰のデッキケースに触れ、静かに答えた。

 

「あはっ! 考えるまでもないっしょ!! 結局は化け物なんだからさぁぁ!!」

 

「いいや、違うわ!力があるとかないとか、そんなの関係ない! そんなのなくたって、人はヒーローにも化け物にもなるわ! アンタがどうして、そんな風になっちゃったかは知らないけど、アタシはアンタ達とは違う!」

 

亜美は真っ直ぐにリオを指差し、力強く宣言した。

 

「ーーッ! ……チィッ、アンタ達を見てるとムカつく。楽しそうに平和ぶってるやつを見てるとぶっ壊してやりたくなる。だからウチはあんたを壊す!」

 

リオの瞳に、明確な殺意が宿る。

 

「……やらせないわ! アタシがアンタを止める! 行け、サンライザー! フレシアの蟲惑魔に攻撃!」

 

亜美の号令と共に、太陽の英雄が光の剣を振りかざす。

 

E・HEROサンライザー

攻:2900

 

フレシアの蟲惑魔

守:2500

 

灼熱の刃が、巨大な食虫花を両断し、フレシアの蟲惑魔は悲鳴と共に炎に包まれて消滅した。

 

「追撃! アブソリュートZERO! セラの蟲惑魔に攻撃!!」

 

絶対零度の冷気を纏った英雄が一気に間合いを詰め、強烈な一撃を見舞う。

 

E・HEROアブソルートZERO

攻:2900

 

セラの蟲惑魔

攻:800

 

セラの蟲惑魔は冷気に凍りつき、氷の彫刻のように砕け散った。爆風がリオの顔を撫でる。

 

「くぅぅっ……!!」

 

寺仔リオ

LP:4000→1900

 

『大ダメージィィ!! 落とし穴トラップによる効果ダメージは受けたものの、返しのバトルで攻撃を通したぞォオ!!』

 

実況の声がスタジアムの熱を再び引き上げる。

 

「どうよ!」

 

亜美は誇らしげに胸を張る。

 

ーメインフェイズ2ー

 

「カードを3枚セット!!」

 

亜美は流れるような手つきで、三枚のカードを魔法・罠ゾーンに伏せた。

 

「ターンエンド!」

 

ーエンドフェイズー

 

祭乃木亜美

LP2800

手札5

伏せ3

フィールド:

E・HEROサンライザー

攻:2900

E・HEROアブソルートZERO

攻:2900

 

ードローフェイズー

 

「あはっ、このターンで倒せなかったこと、後悔させてあげる!! ウチのターン!!」

 

リオは残忍な笑みを浮かべ、鋭くカードを引き抜いた。

 

ースタンバイフェイズ→メインフェイズー

 

 

「カズーラちゃん1体をリンクマーカーにセット! 召喚じょーけんはぁ、リンクじゃない蟲惑魔ちゃん1体!」

 

↓蠱惑魔 = LINK1

 

「セラちゃんをもう一回リンクしょーかん!!」

 

再び、食虫植物の女王がフィールドに舞い降りる。

 

セラの蠱惑魔

攻:800 地 植物族 LINK1 ↓ (右EXゾーン)

 

「さぁ、おいでティオちゃん!!」

 

今度はハエトリグサの意匠を持つ少女が現れた。

 

ティオの蟲惑魔

攻:1700 地 植物族 星4

 

「ティオちゃんは召喚したとき、墓地の蟲惑魔ちゃんを呼び出せるよ! さらに、蟲惑魔ちゃんの効果が発動したからセラちゃんの効果も発動するかんね!」

 

chain1 ティオの蟲惑魔

 

chain2 セラの蟲惑魔

 

「セラちゃんは、他の蟲惑魔が効果を発動したとき、デッキから落とし穴をセットできるの! この効果で煉獄の落とし穴をセットする!!」

 

リオの足元に、新たな見えない罠が仕掛けられる。

 

「そんでティオちゃんの効果! 戻っておいで、トリオンちゃん!」

 

先ほど破壊されたアリジゴクの少女が、再びフィールドに這い上がってくる。

 

トリオンの蟲惑魔

攻:1600 地 昆虫族 星4

 

「あはっ! トリオンちゃんは特殊召喚されたら、相手の罠を解体しちゃうの! あはっ、小悪魔的ぃ!」

 

「あっ……!?」

 

トリオンの蟲惑魔が指を鳴らすと、亜美の伏せカードの一枚が音を立てて砕け散った。

 

「あはっ!レベル4のトリオンちゃんとティオちゃんでオーバーレイ!!」

 

☆4×☆4=★4

 

「――香れ、香れ、香れ! 蛇を纏う白い盃!!」

 

二体の少女が重なり合い、光の渦となる。

 

「エクシーズ召喚! きて! 六花聖ストレナエちゃん!!」

 

六花聖ストレナエ

攻:2000 水 植物族 ランク4

 

清らかな水流と共に、美しい花の妖精が現れた。

 

「ストレナエちゃんの効果発動ぉ! エクシーズユニットを使って、墓地の植物族を手札に戻せるの! 墓地のカズーラちゃんを手札に加えるよ!さらに手札から六花絢爛を発動ぉ!」

 

《六花絢爛》

通常魔法

 

「このカードは普通に発動する以外に、フィールドの植物族をリリースして発動することもできるの! ストレナエちゃんをリリース!!」

 

ストレナエは微笑みを残して光となり、消え去った。

 

「六花ちゃん達を1枚サーチできて、しかもリリースして発動したらサーチしたカードと同じレベルの植物族も手札に加えられる!! 六花のしらひめちゃんと、同じレベル4のジーナの蟲惑魔ちゃんをサーチ!!」

 

リオの手札がみるみるうちに潤沢になっていく。

 

「さらにリリースされたストレナエちゃんの効果発動ぉ! ストレナエちゃんはリリースされた時、EXデッキか墓地からランク5以上の植物族エクシーズを特殊召喚できる!」

 

「ランク5以上!?」

 

亜美が驚きの声を上げる。

ストレナエがいたモンスターゾーンから、ビキビキと不気味な音を立てて太い棘のある茎が急成長する。それを包み込む黒いオーバーレイネットワークが俄かに光を放ち始めた。

 

「――沈め、沈め、沈め! 深い深い森の褥へ!!」

 

六花聖ストレナエがいたモンスターゾーンにビキビキと音を立てて、太い棘のある茎が生える。

それを包む黒いオーバーレイネットワークが俄に光出す。

 

★4→★8

 

「おいで!! 森羅の守神アルセイ!!」

 

森羅の守神アルセイ

攻:2300 光 植物族 ランク8

 

『チーム煉獄セカンドプレイヤー寺仔リオ! ここで大型モンスターを呼び出したぞォオ!!』

 

モンスターの大量展開に司会はマイクを振り上げた。

リオはまだ止まらない。

 

「効果を使ったストレナエちゃんはそのままアルセイのエクシーズユニットになるよ!」

 

森羅の守神アルセイ

素材0→1

 

さらにアルセイの効果発動ぉ! カードを一つ宣言して、デッキトップをめくってそのカードだったら手札に、違ったら墓地に送るよぉ」

 

リオは巨大な樹木神を背に、からかうような口調で告げた。

 

「え? ギャンブルカード……?」

 

亜美は怪訝そうに眉を寄せる。

 

「ん〜、じゃあぁ、強欲な壺とかにしよっかなぁ!」

 

「はぁ?」

 

あまりにも的外れなカード名に、亜美は思わず間抜けな声を漏らした。

リオが芝居がかった手つきでデッキトップを軽快にめくる。現れたのは『時空の落とし穴』のカードだった。

 

「あ〜、ざんねーん」

 

わざとらしく肩をすくめるリオ。

 

「何が残念よ、禁止カードなんだから入ってるわけないでしょ!」

 

亜美が呆れたようにツッコミを入れる。

 

「きゃはっ! ばーか! ウチの狙いは別なんだよぉ!! アルセイの効果発動ぉ!! デッキからカードが墓地に行ったら、エクシーズユニットを使ってフィールドのカードをデッキバウンスできるんだよ!!」

 

「デッキバウンス……!? やばっ……!」

 

亜美の顔色が一気に青ざめる。破壊耐性や墓地へ送られた時の効果をすり抜ける、極めて厄介な除去方法だ。

 

「あはっ! バウンスするのはその氷のヒーローとかって奴にする!! ウチ知ってるよぉ!? そいつは、フィールドを離れるとウチのモンスターを全て破壊する効果があるんだよね! でもデッキバウンスされたらルールのせいで発動できないっしょ!!」

 

「ッ!」

 

亜美は痛いところを突かれ、言葉を詰まらせた。エクストラデッキに戻る場合、フィールドを離れた時の効果は発動しないというデュエルのルールの盲点。

 

「ブモォオォオォオッ!!」

 

森羅の守神アルセイが地響きのような咆哮をあげる。それに呼応するように、地面から無数の太い根がうねりながら隆起し、E・HEROアブソルートZEROの周囲を完全に囲い込んだ。

 

「ウォォオッ……!?」

 

氷の英雄が抗う間もなく、大蛇のような根がその身体に強く纏わり付く。

そのまま容赦なく地の底へと引き摺り込んでいく。

絶対零度の爆発を放つこともままならず、アブソルートZEROは暗い地中へと姿を消した。

 

「あはっ! さらにぃ、手札のしらひめちゃんの効果発動!! メインフェイズにこの子を特殊召喚できんの!」

 

六花のしらひめ

守:0 水 植物族 星4

 

純白のドレスに身を包んだ可憐な妖精が、冷たい雪の結晶と共にふわりと舞い降りる。

 

「レベル4のアトラちゃんとしらひめちゃんでオーバーレイ!!」

 

蜘蛛の少女と雪の妖精が、光の渦となって空間を歪ませる。

 

「――叫べ、叫べ、叫べ! 血生臭い偽の花で!!」

 

☆4×☆4=★4

 

「エクシーズ召喚! きて、アロメルスの蟲惑魔ちゃん!!」

 

光が弾け、偽りの花を纏った冷酷な笑みの蟲惑魔が姿を現した。

 

アロメルスの蟲惑魔

攻:2200 地 昆虫族 ランク4

 

「アロメルスちゃんの効果発動ぉ!ユニットを二つ使うことで墓地の植物族か昆虫族を特殊召喚できる! 戻ってきて、トリオンちゃん!!」

 

アロメルスの足元から放たれた香りに誘われ、墓地から再びアリジゴクの少女が這い出してくる。

 

トリオンの蟲惑魔

攻:1600 地 昆虫族 星4

 

「あはっ! トリオンちゃんの特殊召喚時の効果をもっかい発動ぉ!!」

 

トリオンの蟲惑魔が意地悪く笑い、鋭い顎をガチャリと鳴らす。

 

「ッ……!」

 

甲高い破砕音と共に、亜美の伏せカードがまたしても無惨に粉砕された。

 

[チームHERO側ベンチ]

 

「くそっ、せっかくバックを増やしたってのに2枚も割られちまうなんて……!」

 

ここのせがベンチの手すりを叩き、悔しげに顔を歪める。

 

「事前に増やしておかなかったら全部破壊されてたかもな……」

 

良平は額に滲む汗を拭いながら、最悪の事態を想定して重い息を吐いた。

 

[デュエルフィールド]

 

「きゃははっ! さらにカードを1枚セット!」

 

リオは狂気を孕んだ笑い声を上げながら、魔法・罠ゾーンにカードを勢いよく伏せた。

 

「今伏せたトラップカードを墓地に送ってぇ、手札のジーナちゃんの効果発動ぉ! この子を特殊召喚!」

 

セットしたばかりの罠カードを代償とし、新たな蟲惑魔が気怠げなため息と共にフィールドへ舞い降りた。

 

ジーナの蟲惑魔

守:1400 地 植物族 ランク4

 

「ジーナちゃんとトリオンちゃんでオーバーレイ!!」

 

二体の少女が重なり合い、冷気を帯びた光の渦となる。

 

「――凍れ、凍れ、凍れ! 寂しい寂しい雪の底で!」

 

☆4×☆4=★4

 

「エクシーズ召喚! さぁ、いくよ!!No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ!!」

 

氷の槍を手にした天使が、冷たい吹雪を巻き起こしながら降臨した。

 

No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ

攻:2400 水 天使族 ランク4

 

『怒涛の連続エクシーズ!! 守りの構えから一気に攻めに転じたァァァァァッ!!!』

 

実況の絶叫と共に、スタジアムが揺れるほどの大歓声が湧き上がる。

 

「ラグナ・ゼロちゃんはぁ、素材を使って攻撃力が変化しているモンスターを破壊できるの!!」

 

「うそっ……!?」

 

亜美が驚愕に目を見開く。

 

『祭乃木亜美のフィールドに唯一生き残っているE・HEROサンライザーは、自身の効果により攻撃力が200ポイントアップしているゥゥ!! これが仇になったかァァァ!!』

 

ラグナ・ゼロが放った絶対零度の氷槍が、太陽の英雄を正確に貫いた。ピキピキと音を立てて全身が凍りつき、サンライザーは無残に砕け散る。

 

「くっ……!」

 

「この効果の後、さらにカードを1枚ドローするよ!」

 

リオは余裕の笑みを浮かべ、デッキからカードを引き抜いた。

 

『フィールドには、3体ものモンスター! しかし、祭乃木亜美を守るモンスターは全滅!! モンスター攻撃を通せば、あっという間にライフポイントは0になってしまうぞォオォオッ!?』

 

「きゃはっ、バトル!!」

 

リオが残忍な笑みと共に腕を振り下ろす。

 

ーバトルフェイズー

 

「いっちゃって! アロメルスちゃん! ダイレクトアタック!!」

 

アロメルスの蟲惑魔が甲高い声を上げ、無数の凶悪な棘を亜美へと向けて一直線に放った。

地面を割りながら棘が殺到する。

 

アロメルスの蟲惑魔

攻:2200

 

「トラップ発動! ピンポイントガード!」

 

亜美は最後の一枚となった伏せカードを間一髪で開いた。

 

《ピンポイントガード》

通常罠

 

「アタシ墓地のレベル4以下のモンスターを対象にして、そいつを特殊召喚するわ!」

 

「ふん、なら、セラちゃんの効果発動ぉ!」

 

リオも即座にチェーンを組む。

 

chain1 ピンポイントガード

 

chain2 セラの蟲惑魔

 

「通常トラップが発動した時、デッキから蟲惑魔ちゃんを特殊召喚できるよ! おいで、ティオちゃん!」

 

セラの呼応により、ハエトリグサの意匠を持つ少女が不敵に微笑みながら姿を現した。

 

ティオの蟲惑魔

攻:1700 地 植物族 星4

 

「こっちも墓地からE・HEROエアーマンを特殊召喚!」

 

墓地から蘇生した風の英雄が、疾風と共に亜美の盾となって立ち塞がる。

 

E・HEROエアーマン

守:300 風 戦士族 星4

 

「エアーマンの特殊召喚時の効果発動! デッキからHEROモンスターをサーチするわ! もう一体、エアーマンを手札に加える!」

 

亜美は即座にデッキからカードを抜き出し、手札を補充した。

 

「ピンポイントガードの効果で特殊召喚されたモンスターは、このターン戦闘では破壊されないわよ!」

 

アロメルスの棘はエアーマンの巻き起こした突風の障壁に阻まれ、弾き落とされた。

 

「あーあ、残念。あんたを血まみれにしてやりたかったのに」

 

リオはつまらなそうに唇を尖らせる。

 

「……」

 

亜美は無言で冷や汗を拭った。

 

ーメインフェイズ2ー

 

「でも蟲惑魔ちゃんの罠からは逃げられないかんね? ティオちゃんとセラちゃんをリンクマーカーにセット! 召喚条件は、植物族、昆虫族モンスター2体!」

 

リオは攻撃を凌がれても全くペースを崩さない。

 

↓植物族モンスター + →植物族モンスター =LINK2

 

「――眠れ、眠れ、眠れ!! 甘い甘い毒の中で!!」

 

新たな回路が開き、蠱惑的なドレスを纏った物憂げな少女がフィールドに舞い降りた。

 

「リンク召喚! きて、クラリアの蟲惑魔ちゃん!」

 

クラリアの蟲惑魔

攻:1800 地 植物族 LINK2↓→

 

「さらにぃ、カードを1枚セット」

 

リオが魔法・罠ゾーンに新たなカードを伏せる。

 

(流石にバックが充実してるわね……。でもエアーマンのもう一つの効果でいくつか破壊できるはず)

 

亜美は相手の伏せカードの枚数を数え、反撃の算段を脳内で組み上げる。

 

「あはっ! あんたさぁ、ウチのカードぶっ壊せると思ってるっしょ! やらせないからね?」

 

「!」

 

「手札の天獄の王の効果発動だよ!!」

 

《天獄の王》

効果モンスター

 

リオが手札の一枚を高く掲げると、ゴゴゴゴと地鳴りのような音が響き、重苦しいプレッシャーがフィールド全体を覆い尽くした。

 

「天獄の王……?」

 

「こいつは、手札から見せることで、次のエンドフェイズまでの間、セットされてるカードは破壊されなくなんの!!」

 

「破壊対策まで持ってたのね……! 少しはやるじゃない……!」

 

亜美は舌打ちをし、リオの周到すぎる防御網を強く睨みつけた。

 

ーエンドフェイズー

 

「あはっ! エンドフェイズ時、クラリアちゃんの効果発動ぉ! 墓地の蟲惑魔ちゃんを守備表示で特殊召喚するよー! 戻っておいでティオちゃん!」

 

クラリアの力により、墓地からハエトリグサの少女が再び守備表示で舞い戻る。

 

ティオの蟲惑魔

守:1100 地 植物族 星4

 

「ティオちゃんは特殊召喚された時、墓地の落とし穴をセットできるよ! 奈落の落とし穴をセット!!」

 

リオの陣地に、再び見えない死の罠が仕掛けられる。

 

「ターンエンドぉ!」

 

ーエンドフェイズー

 

寺仔リオ

LP:1900

手札3

魔法罠:

炎舞-「隠元」

炎舞-「天枢」

伏せカード

伏せカード

伏せカード

 

フィールド:

クラリアの蟲惑魔(右EXゾーン)

No.103 神葬零嬢ラグナ・ゼロ

アロメルスの蟲惑魔

森羅の守神アルセイ

ティオの蟲惑魔

 

『大量のモンスターを展開し、さらに3枚ものセットカード!! 流石はデュエルアカデミア、オベリスクブルーだァァァ!! 』

 

実況の絶叫と共に、スタジアムが揺れるほどの歓声が上がる。

 

『一方でチームHERO祭乃木亜美はフィールドにエアーマンが1体のみ!! ここから立て直せるかァァァ!!?』

 

「こっちはモンスターもトラップもたくさん! あんたはセットカードを壊すこともできない!! きゃはっ、ウチってば小悪魔的ぃ!」

 

リオは圧倒的な盤面を背に、高らかに勝利を宣言した。

 

「ッ!」

 

亜美は悔しさに唇を噛む。

 

「罠にはまってから命乞いしたって遅いかんね? ……あんたの命、絡め取ってあげるよ!! きゃはははっ!!」

 

狂気に満ちたリオの笑い声が、白昼のスタジアムにどこまでも不気味に響き渡っていた。




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