【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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※話の展開上、特定のキャラに厳しめの話になることもあります。ご了承ください。


星屑の墓場Ⅰ

 

 ジュール隊、ポワソン隊と合流したミネルバは、先行するマックスウェルとルソーに追従し、ボルテールと肩を並べながらユニウスセブンを追うコースを航行(こうこう)していた。

 

「メテオブレイカー…この数で足りますかね」

「一応、本国から更なる援軍も来ているが、この距離では間に合わないだろう」

 

 ユニウスセブンの落下を防ぐ方法…それはメテオブレイカーを使った出来る限りの破砕(はさい)だった。細かく砕いて、地表への被害を減らすこと。それが今のプラントにできる精一杯の手段だったのだ。

 

「あの、地球軍側に何か動きはないのでしょうか?」

「さてね。理事にも声をかけるようお願いしたが…今月から向かったところで同じことだろう」

 

 現在の地球軍の宇宙軍は、その大半が月に集結している。万が一シャーロットの声掛けで艦を出したところで、メテオブレイカーのような装備を準備できるとも思えないし、タイムリミットにも間に合わないだろう。

 

「あとは地球からミサイルでの撃破を狙うしかないだろうが………それでは、地表を焼くばかりで、さしたる効果は上げられないだろうな」

「ええ」

 

 デュランダルの言葉にタリアも頷く。

 何せユニウスセブンはプラントそのものなのだ。自分が暮らしている場所のことは、コーディネーターの自分達が一番よく知っている。

 

 あのユニウスセブンを破壊するとなると、余程の火力が必要となる。それこそ……いや、思わず先日の私設武装組織のことを思い出して、デュランダルは頭を横に張った。

 例えガンダムといえど、モビルスーツである以上は完全な破砕は難しいだろう。それに、今彼等は地球にいるはずだ。やはり自分たちが行動するしかない。

 

「出来る限り急ぐしかあるまい」

「えぇ、もうすぐミネルバへのメテオブレイカーの搬入も終了するはずです」

「なるべく急いでくれ……さて、待たせてすまなかったね」

 

 そう言うと、デュランダルは背後に控えるアスランへ振り返った。そこにカガリの姿はない。先に控え室に戻るように言って、彼はこのブリッジに残っていた。

 

「どうしたのかねアスラン、いや、アレックス君か」

「いえ…」

 

 正直なところ、まだアスランと呼ばれることに抵抗はあるのだが、アレックスという偽りの名で呼ばれるのも、どこか嫌だった。

 しかし、今はそんなことを気にしている場合ではない。アレックス改めアスランは頭を下げて、前代未聞の言葉を口にした。

 

「無理を承知でお願い致します。私にもモビルスーツをお貸し下さい」

「なっ!?」

「……ふむ」

 

 会話を背後で聞いていたタリアは、思わず驚きの声を口に漏らした。

 そんなバカな願いが通るわけがいないでしょう!と口に出そうとして、彼の会話している相手が議長だということを思い出してギリギリで口を閉じた。

 

「バカなことを言っているのは解っています。でも、この状況をただ見ていることなど出来ません。使える機体があるならどうか」

「そうだな……艦長、この艦にモビルスーツは?」

 

 なるほど。確かに説得するなら軍人のダリアではなくデュランダルの方が通じやすいだろう。流石は元最高評議会議長の息子と言ったところか。

 そんなアスランにとって皮肉にしか聞こえないだろうことを思いつつも、タリアは命じられたことに素直で答えるほかない。

 

「いえ…彼等の乗ってきたザクが一機。整備されて残っていますが」

「よし、ならば私が許可しよう。アレックス君、君の力を貸してもらおう」

「議長!?」

「戦闘ではないんだ、艦長。出せる機体は一機でも多い方がいい」

 

 それはそうだが、軍人として他国の人間を軽々しく機体に乗せることは(はばか)られる。

 しかし、デュランダルはそんなタリアの心境を知ってか知らずか、笑顔で言葉を続けた。

 

「それにこの艦で彼以上にモビルスーツの操縦が上手い人間を、私は知らない」

 

 彼の中では、既にそういうことになっているようだ。

 いつだって、折れるのは自分のほう。アスランへ激励の言葉をかけるデュランダルを横目に、タリアは本日何度めかのため息を吐いた。

 

 

 

▽△▽

 

 

 一方その頃、アーモリーワンを出発したきり何の仕事もないミネルバクルー達は、動き出したユニウスセブンを始めとした話で盛り上がっていた。

 

 いきなり地球に隕石が落ちるから、これから破砕作業に向かうと言われても冷静に受け止めきれない人間の方が多い。経験の浅い新兵が多く属するミネルバなら尚更だ。

 

「聞いたか? ソレスタルビーイングが地球で武力介入したらしいぜ?」

「ああ、地球軍相手にたった二機で引かせたらしい」

 

 耳を()ませは、中にはソレスタルビーイングについて話している奴の声も聞こえてくる。初めてガンダムを目撃したということもあって、ミネルバクルーの間で私設武装組織(ソレスタルビーイング)のことはある種のブームになっていたりするのだ。

 

「地球への衝突コースって本当なのか?」

「うん、間違いないって」

「ジュール隊の隊長が議長に会いにミネルバにきているって本当?」

「多分、そっちも本当…なのかな?」

 

 とはいえ、話題の中心はユニウスセブンについてだろう。

 缶ジュースを受け取ったシンがテーブルに戻ると、そこではヨウランとヴィーノ、それとルナマリアとメイリンの姉妹が話し合っていた。

 

「それにしても、アレを砕くってすごい発想だよなぁ」

「メテオブレイカーだろ? 遠目に見たけど、あんなんでプラント一つ破砕できるのか?」

 

 ミネルバの整備班であるヨウランとヴィーノは、つい先ほどまでボルテールからメテオブレイカーの輸送の作業を行なっていたのだ。

 既に殆どの作業は終了しており、残りはチーフメカニックであるマッド・エイブスに任せて、若い二人は早めに休憩に入っていた。

 

「それに砕くって言っても………この数でか」

「デカイぜ、あれ。ほぼ半分に割れてるって言っても、最長部は8キロくらいはあるんだろ?」

 

 どこか信じられないようにヨウランとヴィーノが言う。

 メテオブレイカーの実物を見た今となっては、理論上は可能だということを理解できるが、それを信じられるかは別問題だ。人員も時間も足りていないこともあって、彼等はどこか不満げだった。

 

「––––––––––だが、衝突すれば地球は壊滅する」

「「…………っ!」」

 

 どこまでも冷静で現実を見ているレイの言葉に誰もが息を呑んで黙り込んだ。

 

 地球が終わり、そこには何も残らない。

 多くの生物が死に絶え、地球に住む人々は絶望に暮れることになるだろう。

 それはあまりに現実感のない話であり、それこそフィクションの世界で起こるような事だ。それが自分達の目の前で起こると言われても、どうにも実感が湧かないというのが彼等の内心だった。

 

「地球、滅亡…」

「………だな」

 

 そんな様子を、シンは複雑な気持ちで見つめていた。

 プラントで生まれ育った彼らと違い、地球はシンにとっては生まれ故郷である。もうそこに自分が愛した者が残っていないとしても、幸せだった時の大切な思い出は眠っている。

 

「……でもま、それもしょうがないっちゃあ、しょうがないんじゃないか?」

「は?」

 

 だからこそ、その無神経ともいえる言葉にシンは驚いて顔を上げた。

 ヨウランも本気で言っているとは思えないが、この場で言う冗談にしては、不謹慎(ふきんしん)すぎる気がしたのだ。

 

 だがヨウランとしても、落ち込みかけた空気を立て直したかったのか、シンの変化に気づくことなく言葉を続けた。

 

「だって不可抗力だろう? 逆に変なゴタゴタも綺麗に無くなって、案外楽かも。俺達プラントにはさ…」

 

 それが、生まれてから地球を知らずに育ったコーディネーター達の価値観だったのだろう。逆に、地球に住む人たちもプラント一つ滅んだところで何も気にしないだろう…という偏見もある。

 だからこそ、ヨウランも軽い気持ちで言い、周囲のクルー達も特に口を出すこともなかったのだろう。

 

 だがまぁ、彼等にとってタイミングの悪いことに、それを言ってはいけない人間に聞かれてしまった。

 

「よくそんなことが言えるな!お前達は!」

 

 鋭い怒声が、ヨウランの言葉を(さえぎ)る。

 びくりとした一同が視線を向ける中、部屋に入ってきたのは怒りに肩を震わせるカガリの姿だった。そこに随員(ずいいん)だと言っていたアレックスの姿はない。

 

「…しょうがない? 案外楽だと!? これがどんな事態か、地球がどうなるか、どれだけの人間が死ぬことになるか、ほんとに解って言ってるのかッ!?お前達はッ!!」

 

 激昂したカガリが怒鳴りつける。

 不思議なことに、シンはその言葉に無意識に同意していた。ヨウランの言葉は仮に冗談だとしても言い過ぎだった。

 

「…すいません」

 

 立場上頭を下げざるを得ないヨウランは、おざなりな謝罪をするが、表情にはありありと不満が浮かんでいる。不幸中の(さいわい)いなのは、それがカガリに見えていないことだろうか。

 

「あれだけの戦争をして、あれだけの悲しい想いをして…やっとデュランダル議長の施政の下で変わったんじゃなかったのかッ!!」

 

 そんなカガリの言葉に対し、ミネルバのクルー達の反応は冷ややかだ。彼女の言い分は全く持って正しいのだが、それをいちいち指摘(してき)されれば、逆に反発心も芽生(めば)えて来ると言うもの。

 

 そして、元々カガリに対して反発心を抱くものなら、尚更だった。

 

「別に本気で言ってたわけじゃないさ、ヨウランも」

「なに…?」

 

 カガリの金眼とシンの紅い眼が交差する。

 睨みつけてくるカガリに対して、シンも真っ向から立ち上がって視線を受け止めて睨み返した。

 

「ヨウランも謝った。なら、もういいだろ」

「なんだと?」

「そんくらいのことも分からないのかよ、アンタは」

 

 別に彼女の怒りを否定するつもりはない。しかし、ただただ怒りのみをぶつけてくるカガリの言葉など……「アスハ」の言葉などシンは受け入れるつもりは毛頭なかった。

 

「シン、言葉に気をつけろ」

「ああ、この人偉いんでした。オーブの代表でしたもんね。だったら、こんなところで油を売ってないで部屋に戻っていた方がいいんじゃないですか?」

「お前ぇッ!」

 

 売り言葉に買い言葉。レイの忠告も意味もなく、根っこが直情的な二人は更にヒートアップする。それをミネルバのクルー達はハラハラして見守っていた。

 

「––––––––そこまでだ!」

 

 その時、制止する声と共に誰か部屋へ入ってきたため、一同の注目は移った。半ば取っ組み合いのような睨み合いになっていたカガリとシンも思わず視線の主へ振り向く。

 

「議長を迎えに行こうとミネルバまで来てみれば、一体何をしている」

「………イザーク?」

 

 そこにいたのは、カガリが二年前の大戦で知り合った少年、イザーク・ジュールだった。関わりはほんの僅かだったが、アスランのかつての仲間であったことは聞いている。

 ただ、以前と違う印象として、真っ直ぐに切り(そろ)えられたプラチナブランドの髪から覗く、冷たく整った顔立ちからは、二年前に付いていた古傷は消えていた。

 

「よ、お久し」

「ディアッカまで…」

 

 イザークの後ろからゆらりと現れたディアッカ・エルスマンが、ニヒルに笑ってカガリへ片手を上げた。

 

「…イザーク・ジュールだって?」

 

 カガリが身を引いたことで頭に上った血が戻ったのか、シンは聞き覚えのある名前に思わず呟いた。

 

 イザーク・ジュールの名はシンもよく知っている。あのエリート(そろ)いのクルーゼ隊の隊員にして、ヤキン・ドゥーエでの戦いを最後まで戦い抜いた元ザフトレッド。

 アカデミーでは、あのアスラン・ザラに次ぐ成績で卒業しており、教官から名前を聞くこともあった。

 

「それで、中から大声で揉め事でもあったのか? 外にまで聞こえていたが…」

 

 ジロリと鋭い眼光がミネルバクルーを見据える。

 まさか国家元首のカガリに何か失礼なことをしていないかというような目線に、心当たりしかないヨウラン達はぶるりと肩を振るわせる。

 

「…すみません、我々がアスハ代表に失礼を」

「何?」

 

 だが、そんな視線に(ひる)まずに前に出たのはレイだった。不穏な出だしに、イザークの目がさらに鋭くなるが、レイは気にせずに言葉を続ける。

 

「……という次第で、我々がアスハ代表に不快な思いをさせてしまった次第です」

「………」

「うぉい、マジかよ…」

 

 無言で青筋を立てるイザークと、新人の無鉄砲さに呆れるディアッカ。その姿に申し訳なさそうにするミネルバクルー達。それを見て、イザークも呆れたように表情を崩す。

 

「どうやら流石に自分達がしでかしたことは分かっているようだな」

「はい」

「俺たちザフトは軍人だ……正式には軍ではないが、間違っても他国の代表と対等だと思うなよ。若かろうと女だろうと俺たちとは見ている視点が違うんだ」

 

 イザークとて彼等の気持ちが分からないわけでもない。二年前の視野が狭かった頃の自分なら、彼等と同じ意見だったことは間違いないからだ。

 

「フン、俺の部隊ならあと小一時間はその精神を鍛え直していることだが、生憎と今は時間がない。……後輩が失礼して申し訳ない、アスハ代表」

「あ、いや。私の方も頭ごなしに怒鳴ってしまって申し訳ない」

 

 カガリの方も、却って恐縮(きょうしゅく)したように返事を返す。

 落ち着いて考えれば、自分が代表だということへの理解が足りていなかった。発言に後悔はないが、言い方に関しては何というか…少し配慮が足りなかったように思える。

 

「寛大な処分に感謝を…行くぞ、ディアッカ」

「はいよー。全く、アスランの奴は姫様ほっぽり出して何してんだか…なぁ?」

「フン、俺が知るか…っ」

 

 それだけ言うと、嵐のように彼等は去っていった。

 議長に会いに来ているとうことなので、急いでいるのだろう。彼等も破砕作業の準備をしなければならないからだ。

 カガリもシンも、ヨウラン達も呆気(あっけ)に取られていたが、そんな彼等を他所にレイがカガリへ頭を下げた。

 

「先程の失礼な発言を謝罪します」

「「も、申し訳ありませんでした」」

 

 それを見て、ヨウラン達も続いて頭を下げた。今度は心から謝罪して、だ。…シンに関しては、ルナマリアが無理矢理手で下げさせたが。

 

 そして、頭が冷めた今、カガリとしても彼等に謝りたい気分だった。

 

「あ、いや。こちらこそ大人げなかった。一兵士に当たることではなかったよ。すまない」

 

 一国の代表として簡単に頭を下げようなことはしないが、カガリとて自分も悪かったことは理解しているので、反射的に謝罪する。つまりは、これで手打ちにしようということだ。

 

「それでは、私はここで失礼する。邪魔をしてすまなかった。……ザフトの皆には期待している。ユニウスセブンをよろしく頼む」

「はい、最善を尽くします」

「……助かる」

 

 小さくそういうと、カガリも部屋を後にした。

 同時に重苦しい空気が抜けたようにヨウラン達は崩れ落ちる。

 

「あぁー、びっくりした。アスハ代表に加えて、ジュール隊長って反則だろ〜」

「心臓止まったかと思ったわよ!」

「……次からは発言に気をつけることだな。あの状況では、俺たちの言葉はプラントの総意と受け止められてもおかしくはなかった」

 

 要するに外交問題にならなかったのが奇跡だということだ。

 対面したのがまだ政治経験の浅く、善良な性格のカガリだったから良かったものの、あの言葉を地球の人間…それこそシャーロット・アズラエルにでも聞かれていれば、それだけで地球とプラントの関係に悪影響を及ぼす可能性があった。

 

「………くっ」

「……シン」

 

 レイのその言葉は、軽率な発言をしたヨウランは勿論、個人的な感情で問題を起こしてしまったシンの心に暗い影を落とすのには十分なものだった。

 





>シンとカガリ
正反対なようで似たもの同士な二人。
でも、個人的にシンのカガリに対する当たりは、個人的な因縁を抜きにしても外交問題になりかねないと思ってこの話を作った。

>>イザークとディアッカ
アスランとは似ているようで違う立場の人達。
この話の為にミネルバに来させたと言っても過言ではない。この後、たまたま会ったアスランにイザークが不満を爆発させたとか何とか。
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