【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
かつての悲劇がそのまま凍りついたように残るユニウスセブンの残骸の中、その
その姿は、かつての大戦の前半に大きく猛威を振るったモビルスーツ・ジンに酷似している。いや、実質的には同じなのだろう。何せこれも同じ"ジン"なのだから……。
「来たな…」
そんなジンのコックピットの中、一人の男が向かってくるザフト軍に対して、どこか懐かしそうでいながら、忌々しげな表情を浮かべ、鋭い瞳をむけていた。
彼の名はサトー。
身に付けているパイロットスーツから分かるように、ザフトのモビルスーツパイロットであり、かつてのヤキン・ドゥーエでの戦いも経験している歴戦のパイロットである。
「……これは正当な復讐なのだ。ナチュラルには我等の怒りを、憎しみを思い知らせなければならない」
サトーの顔には、一筋の大きな切り傷が入っている。かつての戦いによって負った傷だ。プラントの技術力なら簡単に消せるものも、サトーは戦後もずっと消さずに残していた。
戦士が消せる傷を消さないのは、それに
「世界は変わらなくてはならないのだ…そして、必ずや我等の無念を!」
それは純粋なる復讐。
娘を失い、妻を失い、友を失った彼は、ザフト軍人としての己すら捨て去り、己の中の狂気の炎を燃やしながらも、それだけのために生きていた。
そして、それはサトーだけではない。
ジンを駆る全員が皆、同じ怒り、同じ憎しみを抱いているのだ。この行動によって己が死ぬとしても、その復讐を果たすためなら何でもするという気持ちを。
「さあ行くぞ!我等一同!嘆きの声を忘れ、真実に目を瞑り、またも欺瞞に満ち溢れるこの世界を、今度こそ正すのだ!」
「「「はっ!!」」」
吼え叫ぶサトーに呼応するジンのパイロット達。その瞳には復讐に燃える狂気の炎が揺らめいている。
彼もまた、世界の歪みによって狂わされた人間の一人だった。
▽△▽
ミネルバを始めとするザフト艦隊がユニウスセブン破砕作業のために向かっている頃、そこから離れた位置を航行する一隻の船があった。ソレスタルビーイングの多目的輸送艦であるクラウディオスだ。
宇宙で起きているユニウスセブンの異変について、彼女たちソレスタルビーイングの元にも詳細な情報がヴェーダから届けられている。
「ユニウスセブンが動いている…?」
フェイトが思わずそう呟けば、アキサムは険しい顔で重々しく頷いた。
「そうだ。今頃、ザフトが破砕作業に向かってる」
新武装の実験の為にたまたまユニウスセブンの軌道上に向かっていたクラウディオスの艦内にて、彼等はこの事態にどのように対応するかの話し合いを行なっていた。
「それで、ヴェーダは何と言っているんだ?」
「基本的には放置…と」
黒い装いの私服に身を包んだアキサムがそう言うと、やや苦い顔でウェンディが答えた。彼女以外にも、バッツやシドなども険しい表情で動いているユニウスセブンの姿を見つめている。
戦争根絶を掲げ、戦争行為に対して武力介入を行う彼等の存在意義を思えば、今回の事件はあまり関係のないこと。戦うことしかできない彼等には何もできない。
とはいえ、この中には地球で生まれ育ったものもいるのだ。組織に身を置くと決めた時、己の過去も捨て去ると決めていたが、故郷が滅びの危機にあると聞いて、何の感情も抱かないことは難しかった。
それから暫く、無言の時間が続いていた彼等の元に、ヴェーダから新たな情報が届けられた。オペレーターのウェンディが驚いた表情で声を上げる。
「新たな情報が入りました!」
「……ん?」
「これは…戦闘です。ユニウスセブンでザフト軍と何者かの戦闘行為が確認されました!」
その言葉にクルー達の表情が変わる。
あくまでも
「アンノウンモビルスーツ…数29、いや30。更にカオス・アビス・ガイアの三機を確認しました」
「はぁ? 何だってアイツらがあんなところに」
ヴェーダの情報把握能力は完璧だ。
アーモリーワンでの強奪部隊が地球軍の
もしくは、それを知った上で彼等に乱入の指示を出した存在がいるのか…。
流石に地球軍内部の指揮系統までは分からないため、彼等の行動の真意を知る術はないが、世界にとって良くない方向へ進もうとしているのは分かる。
そして、そのきっかけを作ろうとしているのは…。
「アンノウン…例のザラ派ですかね?」
「今のデュランダル政権が進める宥和政策が気に入らないのだろう……とはいえ、コロニーを落とすとは何を考えている?」
「どこのどいつか知らねーが、やってくれるぜ」
アキサムがバチンと
元ザフト軍人である彼は、旧ザラ派の暴走を重く受け止めていた。例え自分たちの行動が彼等と同じテロ行為だとしても、この
「その組織は–––––––––」
声が聞こえた。声はフェイトのものだった。
一同が彼女に視線を向ける。フェイトは見渡すように言った。
「その組織は、ユニウスセブンを落とすというテロ行為を起こしました」
「フェイト…?」
「戦争を幇助する行為です」
フェイトの言葉を聞いて、全員の表情に
「ならば、その紛争に介入するのがソレスタルビーイングであり…行動するのが、私たちガンダムマイスターです」
フェイトの瞳は、使命感に燃えるように鋭く眼光を放っていた。
▽△▽
ようやくユニウスセブンに到着し、ザフト軍によって始まったメテオブレイカーによる破砕作業だったが、状況は思ったより混沌と化しており、事態は想定以上に切迫していた。
ただの破砕作業ならばここまで手間取ることはなかった。
まさかユニウスセブンの中に敵性勢力が潜んでいるなど、誰が予想できたか。
〈隊長!うわぁぁ!?〉
〈ヘルガー!? 何だコイツら!〉
メテオブレイカーを運びながらユニウスセブンに突入したポワソン隊・ジュール隊のゲイツR隊を待ち受けていたのは、漆黒のジンによる奇襲攻撃だった。
「イザーク、一体どうする!?」
「チッ…ハイマニューバとはいえ旧式でここまで…一体何者だ、奴らは」
先行したポワソン隊のゲイツ部隊はジンによって壊滅。メテオブレイカーもそのままの状態で宙を泳いでいる。隊長のイザークとディアッカが現場に到着したことで、ひとまずのまとまりはなったものの、このままでは作業もままならない状況である。
更にいえば、敵はどこかおかしい。
「くッ…どういうやつらだよ一体!ジンでこうまで…!」
ディアッカのガナーウィザードを装備したザクによる"オルトロス"の砲撃もジンは簡単に回避し、こちらに的確な射撃を向けてくる。
前大戦でバスターを駆ったディアッカの砲撃をああも簡単に回避することと言い、並の腕ではない。単なるテロリストではないことは明らかだ。
「くそっ…工作隊は破砕作業を進めろ!これでは奴等の思う壺だぞ!」
イザークは青色のパーソナルカラーのザクファントムを駆り、スラッシュウィザードの"ファルクスG7 ビームアックス"でジンを真っ二つにする。
あの大戦を経験したイザークやディアッカで何とか対処できる相手だ。
「今だ! 俺とディアッカで護衛する。必ずメテオブレイカーを作動させるんだ!」
敵機もイザーク達が歴戦の猛者であると感じたのか、ひとまず撤退していく。
それを見て、イザークも部下達に作業続行の指示を出したのだが、ここで別方向から放たれたビームがメテオブレイカーごとゲイツ部隊を破壊した。
「何だ、新手か!?」
「いや…あの機体はっ!」
次々と放たれていくビームを回避しつつ、イザークは接近する機影をレーダーで捉えた。見慣れない機体だが、熱紋照合の結果がイザークに驚きの事実を知らせる。
「カオス、アビス、ガイア…?」
「チッ、アーモリーワンで強奪された機体かっ!」
なぜ今、ここでこいつ等が出て来るのか!?
攻撃しながら接近して来る3機の機影を見つめ、イザークは思わず歯ぎしりした。
「おいおいイザーク、どうする。そろそろ時間もヤバいぜっ」
「くそっ、奴等を放置していては作業も何もあるか! メテオブレイカーを狙う相手には迎撃。それ以外は作業を続けろ!」
ただでさえ、時間も人員も足りない状況から始まったというのに、予想外の事態で作業は更に遅れている。
このままでは、本当に間に合わなくなる。そうすれば、地球に最悪の未来が待っているのだ。
こんなにも余裕がない状況は前大戦以来だった。
▽△▽
現場での混乱は、ミネルバからも確認していた。
やはり目立つのは、漆黒のジンとアーモリーワンで強奪された三機の姿だろうか。
あのどちらかが、ユニウスセブンを動かした元凶なのだろう。つまりはこの事態は自然発生ではなく人災ということになる。
「ジンを使っているのかその一群は?」
「…ええ。ハイマニューバ2型のようです」
ジンハイマニューバ2型。
前大戦で高い戦績を残したジンハイマニューバを再設計をした機体であり、主に強化されたのはスラスター。最大まで強化されたその性能は連合のダガーにも迫るとされている。
「付近に母艦は?」
「見当たりません」
「くそぉ…一体どこの部隊だ!?」
ジンハイマニューバ2型はロールアウトされたのが第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦終結後だったこともあり、生産数が少ない。配属先もかなり限られていたため、そこから逆算すれば敵組織の人員について突き止められるのだろうが、生憎と時間がない。
「ポワソン隊、壊滅的な被害を受けている模様! ジュール隊もカオス、アビス、ガイアと戦闘中です!」
「ええっ!? あの三機は一体何がしたいんですか!?」
アーサーが悲鳴混じりの驚愕の声をあげるが、無理もない。メテオブレイカーを設置する役目であったポワソン隊が壊滅し、ジュール隊も足止めされている今、自由に動ける戦力はミネルバしかいないのだ。
「状況は芳しくないな…せめて、例の三機の真意だけでも分かればいいのだが」
「議長、現時点でボギーワンをどう判断されますか?」
「ふむ…そうだな」
こちらから確認できる限り、カオス等はゲイツ・ジンハイマニューバ2型問わずに攻撃を加えている。流石に設置されたメテオブレイカーは無視しているようだが、あの様子を見るにこのユニウスセブンが動き出したことについて、何も知らない、もしくは誤解している可能性がある。
「海賊と?それとも地球軍と?」
「んー…難しいな。私は地球軍とはしたくなかったのだが」
「どんな火種になるか解りませんものね」
タリアは、アーモリーワンでの一件を見るに、ボギーワンの正体が地球軍である可能性が高いと睨んでいるのだが、そうなると少し面倒な事態になる。
それはデュランダルも分かっているのか、完全に判断しきれないような様子だった。
「しかし、これでは破砕作業など出来ませんね。本艦も前に出ます。よろしいですか…?」
「ああ、私は構わないよ…代表方はどうかな?」
振り返ったデュランダルが、背後で事態を見守っていたカガリとシャーロットにそう
「ああ、大丈夫だ…」
「
「ありがとうございます。では、彼等とコンタクトを取るためにも、ボギーワンへ近づかなければ…」
事態は思った以上に進んでいる。それも更に悪い方向にだ。自然とデュランダルの顔も険しくなるし、それはタリア達やシャーロットも同様だ。
「あの、議長…」
「姫?」
「アスラン…あ、いや、アレックスの姿が見えないのだが」
そんな中、カガリがおずおずとデュランダルへ話しかけた。
聞きたいのは、デュランダルと話に行ったっきり姿が見えない彼のことだ。カガリの方もミネルバクルーと色々あったこともあり、この事態まで顔を合わせることがなかったのだが…。
「おや?ご存知なかったのですか?」
「え?」
カガリの言葉に、デュランダルは心底意外そうな表情を浮かべた。
「彼は自分も作業を手伝いたいと言ってきて、今はあそこですよ」
「え…」
デュランダルが向ける視線の先には、つい先ほど発進したミネルバの
「アスラン…」
ブレイズウィザードを装備した緑色のザクウォーリアの中、そこにアスランはいるのだろう。
これからきっと、戦闘になる。
アスランの腕は微塵も疑っていないが、モビルスーツに乗って銃を撃つということに彼がどう思うだろうか…。
カガリは遠ざかるその機影を不安げに見送った。
:操縦技術について
>サトー
緑服なところを見るに腕自体はそんなに高くないと予想。
ミゲルとかそこら辺のレベルじゃないかと。ただ、ヤキンでの経験でそれ以上の可能性もあると思う。
>イザーク
彼の実力に関しては、旧三馬鹿と同等か少し下と推定。
キラとアスランが強すぎただけで、シンもまだ経験不足なこの時点ではかなりの実力者なのは確実。
>ガンダムマイスターは?
まだ詳しくは決めていませんが、少なくともキラ・アスランより強いなんてことはないです。機体性能差は歴然だけどね。