【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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限界離脱領域Ⅱ

 

 

 敵機が二つに割れた。

 ビームライフルを照射してくるジンの懐に入り込んで、横薙ぎに払う。続けて、重斬刀を片手に切り掛かってくるもう一機の手首を絡めとるように斬り上げ、返す刃で肩口からGNビームサーベルを振り下ろす。

 

「……………」

 

 袈裟(けさ)斬りにされ、爆散するジンをフェイトは冷たい目で見下ろしていたが、その目とは裏腹にレバーを握る腕には力強さが感じられる。

 

 簡単にいえば、彼女は怒っていた。

 ユニウスセブンを地球に落とすなどという馬鹿げた考えを実行したテロリスト達に。

 

 こんなことを行うことによって苦しむ人がどれほどいるか……その中にコーディネーターがどれほど含まれているかを考えていない。

 プラントがどれほど地球に依存しているのか、コーディネーターの何割が地球に住んでいるのか。それを分かっていて、こんなことをしているのか。

 

 いや、分かっていないだろう。

 何せ、彼等が信奉するパトリック・ザラもそこを理解せずにジェネシスという大量破壊兵器で地球を滅ぼしにかかったのだから。

 

『いいかフェイト、今回はザフトのユニウスセブン破砕作業の支援だ。目標はあくまでテロリストであり、戦闘の意思のないザフト軍に介入する必要はない』

 

 出撃前に言っていたアキサムの言葉を思い出す。

 チラリとザフトのモビルスーツ部隊を見つめれば、彼等はガンダムの姿に圧倒されているのか、呆気に取られた様子で固まっていた。

 

 …その練度の低さに呆れる。

 フェイトは、瓦礫に隠れたジンのビームライフルを狙撃し、その爆発がメテオブレイカーを揺らした。

 すると、その彼等もようやく己の役目を思い出したのか、隊長機だと思われる青色のザクファントムの指示の下、破砕作業に移っていく。

 

 そして、それを見た残りのジンが妨害しようと迫っていくが…その前にガンダムアステリアが立ち塞がる。

 

「…させない」

 

 GNソードをライフルモードにして射撃したが、相手は相当腕に自信があるのか、そのビームをすんでで回避し、こちらへ正確な射撃を行ってくる。

 だが、ガンダムの機動性の前では、まともに当たるとは考えられなかったし、仮に当たっとしてもその程度の威力ではガンダムの特殊装甲(とくしゅそうこう)には大したダメージにはならない。

 

「思ったよりやる……でも!」

 

 …ガンダムの敵ではない。

 続くビームライフルの射線をかわし、腰椎(ようつい)部から引き抜いたGNビームダガーを引き抜いて、ジンへ投げつける。

 

〈こんなものに…うっ!〉

 

 当然、それを回避することは想定済み。ジンが回避に走った瞬間、腕を走らせてそのシールドごと左腕を斬り飛ばす。……素早い対応だ。本来なら機体ごと両断するはずだったのに、わずかに重心を逸らすことで回避している。これほどのパイロットが何故…?

 

〈おのれぇ! 貴様ぁ!〉

 

 激昂したジンのパイロットの声が接触回線で聞こえてくる。

 

 その憎悪しかない声を聞いて、フェイトは納得した。

 彼等にはこの陣営の中で最も戦意があるのだ。彼等は決して退かないだろう。どれほど自分達が追い込まれても。彼等にはもう失うものは何もないのだから。

 

「だとしても…!」

 

 GNソードをライフルモードにして、敵のビームライフルを破壊する。

 

〈うぬぅ!〉

 

 そのまま、トドメを刺そうとしたのだが、リーダーを守るように背後から複数のジンがやってくる。ビームライフルの射撃を雨のように行ってくるが、それがアステリアに命中することはない。

 GNビームダガーを投擲(とうてき)し、メインカメラを破壊。その間に一気に近づいてGNソードで肩部から両断する。接近するジンに対しては、左腕でビームサーベルを引き上げて斬り裂く。

 

 こうして、敵ジン部隊は撃破したが、隊長機と思われるジンは姿を消していた。

 横目で見る限り、ザフトの作業は進んでいるようだが、残り時間に間に合うかどうか…。最悪の場合は、ガンダムセレーネの()()を使うことにもなるだろう。

 

「…貴方達の好きになんかさせるものですか」

 

 フェイトの脳裏に過去の惨劇が(よみがえ)る。

 家族を失った…自らの運命を大きく変えたあのときを。

 

 そうだ。あのような悲劇を二度と繰り返さない為に、自分はガンダムマイスターになったんだ。

 

「……プランA2に移行します」

 

 フェイトは、癒えない思いを胸に力強くレバーを押した。

 

 

▽△▽

 

 

 その頃、メテオブレイカーを使用したザフトのユニウスセブン破砕作業は佳境に入っていた。

 

 予定よりかなり遅れたものの、ミネルバ隊やイザーク等の健闘によって戦況を立て直したザフトは、次々とメテオブレイカーを作動させることに成功する。

 

 ザフトの希望であるメテオブレイカー。

 元々は資源衛星として運ばれてきた小惑星などを砕くために使用されていたものであり、当初は作業用外骨格などで運用されていた。

 起動させると無重力下において隕石中に潜り込み,仕込まれた爆薬で内部から破砕するという仕組みだ。

 

 それをユニウスセブンで使えばどうなるか…。

 

「おうおう…流石はザフトの技術力は優秀だねぇ」

 

 眩いばかりの閃光とともに、大きく二つに分かれたユニウスセブンの残骸の姿を視界に収め、アキサムは皮肉くるようにニヒルに笑った。

 

 しかし、まだまだだ。

 もっと細かく砕かなければ、依然として地球への脅威は残っている。もっと多くのメテオブレイカーを作動させなくてはいけない。

 ザフトもそれを理解しているのか、先ほど以上のスピードで次々とメテオブレイカーの設置準備を行なっている。

 

「さてと、俺も仕事をしようか。うちのお姫様もお怒りのようだし、な」

 

 その言葉と同時、混沌とした戦場に新たなガンダムが現れる。

 

 白と黒のモノトーン色の機体装甲。額に大きく存在を主張しているV字型センサー。左肩には折りたたみ式のGNランチャー。右肩にはマウントされたGNバスターソード。腰部にはGNビームサーベルが装備されている。

 

 ソレスタルビーイングの要する4機目のガンダム…その名は––––。

 

「ガンダムサルース、作戦行動に移る!」

 

 サルースの背部から、緑色のGN粒子が勢いよく放出され、同時に勢いよく機体を加速させる。

 

 機体前方には、必死に作業を続けるザフトとそれを阻止せんとする者たちが戦闘を行っている。

 大きく数を減らしてなお、諦めずにメテオブレイカーへ攻撃を加えようとするジンの姿を見て、アキサムは目を細めた。

 

 ヴェーダの調べで、あのテロリスト部隊が元ザラ派の残党であることは聞いた。ナチュラルへの憎しみを消すことができなかったものたちであると。

 

 アキサムは元ザフト軍人である。

 血のバレンタインで幼馴染を、ブルーコスモスのテロで家族を亡くした彼にも、その気持ちはよく分かる。

 もしもソレスタルビーイングにスカウトされなければ、自分もあの中の一員として戦っていたのかもしれない。

 

「……ままならないな、ホント」

 

 だが、アキサムは今ここにいる。それが全てだ。今も胸の内に渦巻くドス黒い思いを考えれば、彼等の行為は決して否定できないだろう。

 だからこそ、この場ではアキサム・アルヴァディという偽りの名の元にソレスタルビーイングのガンダムマイスターとして彼等を否定する…!

 

 

▽△▽

 

 

 ソレスタルビーイングの出現。

 それはミネルバでも確認していた。ブリッジが慌ただしくなっているのは、何もメテオブレイカーの始動に成功したからだけではないのだ。

 

「…艦長!」

「分かってるわ! 議長!」

 

 揺れ動くに戦況に悲鳴混ざりの声を上げるアーサーの言葉に、苛立ち混じりに答え、タリアは背後のデュランダルへ指示を仰いだ。

 

「うむ…それにしてもソレスタルビーイングとは」

「どうされます?」

 

 どうするといっても、今のザフトに余裕はない。テロリストに加え、カオス、アビス、ガイア。そして、ガンダムまで相手をするとなれば、ユニウスセブン破砕作業は確実に失敗すると断言できる。

 

 ただ、それをタリアが決めるわけにはいかず、この現場にて最高の発言権を持つデュランダルへ訊いただけのことだ。

 

「そうだな…。艦長、今のところ、彼等…ガンダムはこちらへ攻撃を加えていないのだろう?」

「ええ、不思議なことに。彼等の攻撃の対象はジンに絞られているようです」

 

 そう、ガンダムは何故かこちらへの敵意がない。テロリストのジンのみを狙っていることから、ボギーワンの一味と違って、この非常事態を理解できていると言っていいだろう。

 

「であれば、無理に反応する必要もないだろう。むしろ、彼等も私たちの味方になってくれるのかもしれん」

「…だと、いいですがね」

 

 流石にそれは楽観が過ぎるかもしれない。

 だが、彼等が現れてからジュール隊含めてザフトの被害が急速に減っていることを考えると、そうあり得ない話でもないのだろうか。

 

「………っ」

 

 そこまで考えて、タリアは頭を横に張った。

 そんなことよりも、今は考えることがある。チラリとモニターを見て、そこに表示された数字にタリアは顔を険しくさせる。

 

 そして、正面に移る未だに巨大なユニウスセブンを見て、決断した。

 

「……こんな状況下に申し訳ありませんが、議長方はボルテールにお移りいただけますか?」

「タリア、何を」

「お気づきになりませんか?」

 

 そういうと、タリアはメイリンに指示してモニターを拡大する。

 それを見て、カガリもシャーロットも顔を険しくし、デュランダルも悩ましい表情で今の状況を口にした。

 

「……なるほど、高度か」

 

 あの大きさゆえに分かりづらいが、ユニウスセブンは既に、阻止できる限界点を越えて大気圏付近まで降下してしまっているのだ。

 メテオブレイカーの設置は、完璧に破砕するには間に合わなかった。そして、これ以上のモビルスーツでの作業はパイロットの命にも関わる。

 

 助けられる命と、助けられない命を天秤にかけて、決断する時間が迫っていた。

 

「そんな…地球が」

「くっ…!」

「………ですが」

 

 前置きを一度置き、タリアはデュランダル含めて各国の代表たちに真剣な眼差しで己が決断を口にした。

 

「ミネルバはこれより大気圏に突入し、限界までの艦主砲による対象の破砕を行いたいと思います」

「な…」

「ええっ!? か、艦長…それは」

 

 アーサーが驚いて、素っ頓狂な声を上げる。

 他のクルーも概ね同じような気持ちらしく、みな驚いた顔をタリアに向けていた。

 だが、タリアはこの決断を翻すつもりはない。今の状況で、自分たちにできることを精一杯行うのが、軍人としての務めだ。助けられる命が少しでも増えるなら、無茶でもなんでも行おう。

 

「どこまで出来るかは分かりませんが。でも出来るだけの力を持っているのに、やらずに見ているだけなど後味悪いですわ」

 

 この状況、大気圏へ突入可能な艦はミネルバだけだ。モビルスーツでの作業が難しいのなら、本艦で少しでも破砕作業を行うしかない。

 それに、自分よりも若い(アスラン)があそこまでの啖呵(たんか)を切ったのだ。軍人である自分たちがやらないでどうするのか。

 

「タリア…それは」

「彼の受け売りですが、本心です。それに、私はこれでも運の強い女ですから……お任せ下さい」

 

 今だけは折れるわけにはいかない。

 気遣うようにこちらを見るデュランダルに対して、タリアは極めて明るい笑顔で返す。

 

「すまない、タリア……それと、ありがとう」

 

 時間がないこともあり、やがてデュランダルの方が折れた。

 「いえ」とタリアは短く答えると、ボルテールの管制へと連絡を繋ぐ。そして、同時に艦載機への帰還信号の発信を指示。

 

 ここで、それまで黙って聞いていたカガリが、思いつめた顔でタリアの前に立った。

 

「すまないが…私はここに残らせていただきたい」

 

 その言葉に、タリアだけでなくデュランダルも驚いてカガリを見た。

 今現在ミネルバに残るというのは、あまりに危険すぎる。オーブの獅子の娘であり、国を纏める立場の彼女に何かあれば、オーブという国は崩壊しかねないのだ。

 しかし。そのリスクを知ってか知らずか、カガリは断固たる意志でこの場へ残ることを求めた。

 

「アスランがまだ戻らない。それに、ミネルバがそこまでしてくれるというのなら、せめてこの私も一緒に!」

「代表…」

 

 カガリのその叫びに、この場にいる誰もが言葉を無くす。

 地球に住み、地球の国を統治する彼女の気持ちに共感できる人物は、ここに一人しか存在しない。

 

(わたくし)もアスハ代表と同じ気持ちです。ザフトの皆さんがここまで頑張ってくれたということを、最後までこの目で見させてくださいな」

「アズラエル理事…」

 

 そんなカガリの肩に手を置いたのは、カガリと同じく地球の国家代表でもあるシャーロットだ。彼女は集まる視線を感じると、デュランダルとタリアへ優雅に一礼した。

 

「我々の身勝手な願いを、どうか聞き入れてもらえないでしょうか?」

「代表がそうお望みでしたらお止めはしませんよ。地球までは、ミネルバが安全にお送りします」

「議長!」

 

 何を勝手に…とタリアは視線を向けるが、デュランダルは薄く微笑んだ後、ブリッジを後にした。これでは、もう彼女達を止めることはできないだろう。

 

 結局、自分が折れるのは変わらない。政治家というのは、どうしてこうも面倒な性格の人間が多いのか…。

 軽い頭痛に頭を抑えながら、タリアは大気圏突入の指示を出した。

 

 





>残りのマイスターは?
前回の介入で地球へ降りたので、今は地上です。

>アスラン達は?
ユニウスセブンが砕けた衝撃で、アビス・カオスとは一旦離れました〈原作通り)

>ガンダムサルース
スローネアイン+スローネツヴァイみたいなもの。
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