【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
全てを燃やし尽くす灼熱の大気圏。
周囲に砕かれたユニウスセブンの破片が散らばる中、美しい地球を眼下にして、スティング達ファントムペインは何と戦うわけもなく、ただただ焼け落ちるユニウスセブンの景色に呆気に取られていた。
「どうなったんだこりゃ?」
「割れたぜ、おい!」
彼等に与えられたのは、ザフトと思しきモビルスーツと戦えという任務のみ。このユニウスセブンで戦闘を行っている意味も理解していない。敵だから倒す、ただそれだけだ。
しかしまぁ、ここまで来れば彼等にもこれから起こる事態を理解できる。
「おいおい、スティング。このままだと、アレ、地球に落ちちまうぜ」
「分かっている。詳しくはネオに話を聞いてからだ」
言いながら、前方から攻撃してくるジンを機動兵装ポッドで牽制し、その間にアビスが"3連装ビーム砲"と"カリドゥス複相ビーム砲"の一斉放射で避ける間もなく破壊する。
こちらに積極的に攻撃を仕掛けてくるジンと、仕掛けてこないゲイツ等の行動性の違いは謎だが、スティング達はザフトの指揮系統など知る由もない。ザフトのモビルスーツなら破壊するだけだ。
難しいことを考えるのは、上官のネオの仕事。
自分たちは彼の指示に従って生きていればいい。それが"普通"である彼等エクステンデッドは、この事態において、次なる指示を仰ぐため、ネオのいるガーディ・ルーの元へ機体を飛ばす。
「ほら、ステラ…行くぞ」
「あ…」
ガイアのコックピットの中で、落下するユニウスセブンの姿を見ながら、ステラは思う。
本体から小さく剥がれた破片が流星群のように降り注ぐ光景は、ある種の幻想的な風景を感じさせる。しかし、これからあの破片が堕ちた先では多くの人たちが死んでいくのだろう。
「死ぬ…みんな、死ぬ」
そうだ、これから大勢が死ぬのだ。
それはステラ達ではないけれど、世界のどこかで誰かが死んでいく。
それは一体、誰のせい?
あの黒いジン達? そう、間違いない。
ザフト? このユニウスセブンは彼等のものだから、彼等のせいでもあるし、ネオも悪いと言っていた。
なら、ステラ達は?
この非常事態に戦いをしていた自分たちは悪くないのか? いや、ワルモノであるザフトと戦っていたのだから、正しいはずだ。
でも、他に何かやり方があったんじゃないか…。そう思えば止まらない。『死』という単語をブロックワードとするステラにとって、大勢の人間の死は正常な思考を奪うには十分なものだった。
「おいステラ! 避けろ!」
「…っ!」
スティングの大声に顔をあげれば、動きを止めたガイアにユニウスセブンの大型破片が向かってきているのを確認できた。
「この馬鹿、ぼぉーとしてるからだよ!」
カオスとアビスが最大火力で砲撃を行うが、それは表面を大きく削るだけで完全に破砕するまでは至らない。ザフトがメテオブレイカーをいくつも使ってやっと破砕できただけのことはある固さだ。
ガイアがVPS装甲を持っているとはいえ、アレほどの質量が機体にぶつかれば、機体はともかくパイロットはただでは済まない………と、そう思わせるだけの"死の恐怖"があったのだ。
「あっ…いやぁっ!」
それを理解し、狂乱状態に陥ったステラは、ビームライフルと"ビーム突撃砲"で破砕を狙うが、やはり表面を削るだけにとどまってしまう。
「「ステラ!」」
–––––––その瞬間の閃光!
コックピットにて、眩い光が視界の端を走った。
「え…」
「なっ!」
白熱した光が、破片の中心を貫き、カオスやアビスの攻撃と合わせて完全に破砕した。大きく二つに砕かれたそれも、次々と放たれた光の槍によって細かく砕かれ、大気圏へ散らばっていく。
その光景にスティングもアウルも言葉を失う。
何せ、この閃光が放たれた方向は……。
「地上からの狙撃だと!?」
スティング達がいる大気圏外からは遠く離れた地上にて、煌めくビームの光が次々と放たれた。
▽△▽
大気圏へ突入しようとしているユニウスセブンから遠く離れた母なる地球の大地にて、彼等はいた。
場所は、連合もザフトも管理が行き届いていないとある無人島。ソレスタルビーイングの地上用の拠点となっているそこで、二機のガンダムが地上へ落ちようとしている
『全弾命中、全弾命中!』
「ヒュー、やるじゃん」
専用ポッドに収まった独立AI小型マシン・ハロの電子音声でアナウンスする。ガンダムメティスのコックピットの中でフブキは、その命中精度に思わず感嘆の声を洩らした。
「流石、セレーネの狙撃能力は伊達じゃないわね」
シエルの乗るガンダムセレーネは、
そんなセレーネの横には巨大な
「…………フブキさん」
「はいはい。GN粒子の供給、いくわよー」
そんなガンダムセレーネの横に立つガンダムメティスからは、GN粒子供給用のコードが伸びており、成層圏の
『GN粒子、高濃度圧縮中。チャージ完了マデ20、19、18…』
メティスのコックピットに搭載されているハロの声が、通信を通じてシエルの耳に届く。
超長距離狙撃モードに入ったセレーネのコックピットの中、超高々度射撃用ライフルとカメラリンクした専用の精密射撃スコープを構えながら、シエルはカメラに映るユニウスセブンの瓦礫を
全長10キロメートル近くはあるというユニウスセブンは、ザフトの懸命な破砕作業によって大きく二つに割れ、残る一つにしても細かく破砕されている。
だが、まだまだだ。あの大きさでは、地球に落ちれば甚大な被害を起こすことは間違いない。
『チャージ完了、チャージ完了…狙イ撃テルゼ?』
「はい、どうも…」
ゆえに、その巨大な破片をこの超ロングライフルで更に細かく砕くのが、シエルとガンダムセレーネの役目だ。
あの規模となると、例えガンダムの性能とは言えど完全に破壊することは難しいだろうが、被害を最小限にすることはできる。そして、それを可能とする兵器はこの世界でガンダムだけだ。
「––––––––狙い撃つ!」
シエルはトリガーを引く。
▽△▽
地上から放たれた熱線が次々とユニウスセブンの瓦礫を破砕していく。流石に大きく残った残骸を破壊することは難しいだろうが、このままいけば地表への被害は想定の最低限で済ませることができるかもしれない。
そして、それを成したのは……。
「ソレスタルビーイング……」
ミネルバのブリッジでは、その光景に誰もが呆気に取られてモニターを見つめていた。落下ルートを計測していたグラフィクスが、残す一つの残骸を残して、次々と最小限の物へと変化しているのを示している。
「艦長…」
「まさか地上から狙撃するなんてね…」
タリアはうめくような呟きを洩らした。
今回は驚かされることばかりだった。ソレスタルビーイングがテロリストの排除行動を行う方は予測できたが、まさかユニウスセブン破砕作業の協力…人命救助を行うとは。
何より、地上から瓦礫を撃ち
「…はっ! 降下シークエンス、フェイズ2」
バート・ハイムのその言葉にタリアはハッとするように思考の海から現実へ意識を引き戻した。
ミネルバは現在、大気圏に突入しながら主砲での最後の破砕作業を行おうとしていた。既にジュール隊はボルテールに帰還し、この場から離脱している。
ミネルバの艦載機も、ルナマリアとレイが帰還している。無念ながら撃墜されたショーンとゲイルを除けば、この場に帰ってきていないのは残る二機のモビルスーツ。
「インパルスと彼のザクは?」
「駄目です!位置特定できません!」
「チィ!」
タリアは歯軋りをし、強く拳を握り込んだ。
このまま待っていれば、ミネルバとて砲撃どころではなくなる。ユニウスセブンを主砲で狙うには、もう時間がないのだ。
「アスラン…」
だが、今主砲を放てば、ユニウスセブンを破砕できても、同時にインパルスとザクを巻き込み、最悪失う可能性があるのだ。
「…間もなくフェイズ3!」
「砲を撃つにも限界です!艦長!」
これから多くの人間が死ぬことになる。
それを少しでも減らすためには、ミネルバの主砲を使う他にない。細かく砕けば、あとはソレスタルビーイングのガンダムが更に細かく狙撃してくれるだろう。
そのためには…。
「…タンホイザー起動」
誰もが息を呑む音を聞いた。
それでも、淡々とタリアは言葉を続ける。
「ユニウスセブン落下阻止は、何があってもやり遂げねばならない任務だわ」
それはまるで、自分に言い聞かせているかのようだったが、ミネルバのクルーたちはタリアのその言葉に意識を切り替えた。
艦長であるタリアの指示によって、普段は格納されているミネルバの主砲"タンホイザー"の砲口がその姿を表す。
「タンホイザー照準。右舷前方構造体」
その照準が赤く溶け落ちるユニウスセブンの残骸を捉える。
砲口にエネルギーが集まっていき、それが発射可能をブリッジに知らせたとき、タリアは赤く染まる視界の中で叫んだ。
「–––––てぇッ!!」
閃光が迸るとミネルバの主砲は周囲の破片を薙ぎ払い、残った大地を粉々に打ち砕いた。構造物は陽電子砲によって砕かれると同時に大きな爆発が起こし、散らばった破片が炎を
▽△▽
ユニウスセブンの破砕作業が完遂せぬまま帰還命令を受けたシンは、無力感とそれに伴う苛立ちに
だが、その途中シンの目に作業を続ける一機のザクが映った。見覚えのない機体だが、識別はミネルバの
『あいつも出るんだってさ。作業支援なら一機でも多い方がいいって』
『へぇ~。ま、モビルスーツには乗れるんだもんね』
ふと、そんな話をヨウランとルナマリアがしていたのを思い出した。戦闘になってからはほとんど気にしていなかったが、破砕作業にはアレックス…もといあのアスラン・ザラが参加していたはず。
「……何やってんだ、あの人は!」
何はともあれ、放っておくことはできない。シンはインパルスをザクの元へ走らせた。
「何をやってるんです!帰還命令が出たでしょう。通信も入ったはずだ」
「ああ、解ってる。君は早く戻れ」
「一緒に吹っ飛ばされますよ?いいんですか?」
シンの言葉には、苛立ち混じりの非難が込められていたが、アスランはそんなシンに
「どうしてここまで…」
「ミネルバの艦主砲と言っても外からの攻撃では確実とは言えない。これだけでも…」
非難の言葉は戸惑いへ変わる。
シンには、この男がここまでする理由が分からなかった。確かにミネルバのタンホイザーの威力でもこの破片の消滅は不可能だろうが、彼一人が命をかけたところで大して変わらないというのに…。
はぁ…と溜め息をついたあと、インパルスを近づけて揺れるメテオブレイカーを支える。
「な…」
「アンタは馬鹿だ…でも、嫌いじゃない」
あらゆる可能性を信じ、多くの人を救おうとしている。そして、その為なら、自分の命をも危険に晒しても構わないと思っているのだ。その考えはとんでもなく愚かだが、シンにとっては好感を持てるものだった。
だからこそ、つい口に出た。
「貴方みたいな人がなんでオーブになんか…」
そう呟いたとき、二人のセンサーに新たな反応が現れる。
〈うおぉぉ!〉
〈これ以上はやらせん!〉
現れたのは、もう機体がボロボロなジン部隊の生き残りだった。隊長機のジンは左腕とシールドをなくし、その他二機もあちこちに戦闘の痕跡が見られる。
「こいつらまだ!」
シンはアスランを庇うように前に出るが、ジン二機を囮にインパルスを突破したサトーがアスランに迫る。
失うものは何もないとばかりに重斬刀片手に突っ込んでくるジンの攻撃を、アスランはシールドで受け止める。
「我が娘のこの墓標、落として焼かねば世界は変わらぬ!」
「通信…?」
接触回線を通して伝わってきたのは、悲痛なまでの怒りと憎しみの叫びだった。
「此処で無惨に散った命の嘆き忘れ、討った者等と何故偽りの世界で笑うか!貴様等は!」
「何を!」
「軟弱なクラインの後継者どもに騙されて、ザフトは変わってしまった!何故気付かぬかッ!」
強引に蹴りを入れられ、大きく吹き飛ばされる。
「我等コーディネーターにとってパトリック・ザラの執った道こそが唯一正しきものと!」
「何だって…うぐっ!」
愚かだが、決して悪い人ではなかった。
厳格ながらも、誰よりも家族を愛し、誰よりも家族を奪った相手を恨んだ男。止まらない憎悪が更なる憎悪を生み、多くの人間を巻き込んだ末に死んだ父。
そんな父が正しいだと? あり得ない!
アスランは敵のジンに父を重ねる。この男の所為で多くの人命が失われた。かつては大量破壊兵器のジェネシスを用い、そして、今度はプラントを落とすと言うのか、あの男の幻影は…!
「我等のこの想い、今度こそナチュラル共にぃぃ!」
「ぐっ!」
ジンの重斬刀が、トマホークを持つザクの左腕を斬り飛ばす。
アスランは後退を図ったが、その左脚にしがみつくようにサトーのジンがまとわりつくと、スラスターを全開にして道連れにするようにメテオブレイカーへと突っ込む。
「うおぉぉぉぉ!!」
迫り来る大地に自分の死を覚悟したとき、突如として閃光が迸り、ジンの右腕を破壊する。
唖然とした両者だったが、その間に飛び込んできたのは、青と白を基調とした背部から緑色の粒子を発しているのが特徴的な機体…。
「ガンダム!?」
ガンダムは、その手に展開した剣で一閃し、ジンの上半身と下半身を真っ二つにして爆散させると、アスランのザクを掴んで後退する。
「何を…?」
そして、右腕の刀身を折り畳んでビームライフルに変形させ、インパルスと対面するジン二機を狙い撃って撃墜した。
「あ、そいつは…!」
〈何やってるんですか。撤退命令が出たでしょう〉
シンが声を上げるより早く、インパルスの右腕を掴み取ると、すぐにユニウスセブンの残骸から離脱を始める。
突然のことに、シンとアスランは呆気に取られていたが、聞こえてきた通信の声に気付いた。
〈もう貴方達の船に戻るのは無理です。このまま大気圏に突入しますから、各々で姿勢の制御を行ってください〉
「女…?」
それは、年若い少女の声だった。
カガリやルナマリアと同じか、それより遥かに下であろう若さを感じさせる幼い声。こんな少女が、あのガンダムを動かしているというのか…?
「君は…」
そのとき、割れた大地が一段と激しく揺れた。
離れた位置で行われた、ミネルバのタンホイザーによる砲撃だった。最後のメテオブレイカーが功を奏したのか、次々と粉砕されていくユニウスセブンの残骸たち。
その衝撃に巻き上げられ、ザクも、インパルスも、ガンダムも灼熱の大気圏へと吸い込まれるように落ちていく。
>超高々度射撃用ライフル
00一期でデュナメスが使ったアレ。目標物が大きいのでメティスから直接粒子を供給している。
>ハロ
メティスのコックピットにいるハロ。フブキの持ち物で、昔友人に貰ったらしい。
>マユ
ちなみに声優はステラ(第一話)、ルナマリア(それ以降)
人助けに必死になってる姿につい助けに入っちゃった。