【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
そうか…君にとって僕は神か。
それはそうだよ。
僕たちは君たちより遥かに高みにいるべき存在…人類を導く者–––––なんてね。
とはいえ、この世界の人類の愚かしさは筋金入りだ。君もそう思っただろう?
漆黒の
白を基調に、青や赤で塗り分けられたその機体は
緑色に輝く
パイロットはコンソールとモニター上の各データを読み取りながら、
「240082。アステリア、目標地点を視認しました」
小さな口元から
「GN粒子の散布を開始。侵入ルートA3より内部へ向かいます」
彼女は
すると、モニターに映し出されたのはコロニーではなく
「……オーブ」
その視線が自然と赤道付近を探り、
オーブ連合首長国。それが彼女が生まれ、育った祖国の名前だ。南太平洋ソロモン諸島に存在し、大小さまざまな島から構成される
遺伝子操作により生まれてくるコーディネーターはナチュラルから
しかし、その立場故に祖国は地球連合軍の侵略を受けることになった。彼女の耳には今でもその戦闘音は染み付いて離れない。飛来するミサイルが宙を引き裂く甲高い音、遠くから腹の底に響くような爆音、鳴り止まないサイレンーーーそして、自分の名前を呼ぶ兄の叫び声。
それは彼女がまだマユ・アスカと呼ばれていた頃。忘れようにも忘れられない。自らの運命を変えることになった二年前のあの日の記憶。
▽△▽
少女は
どこを向いても木ばかりの森の中、がむしゃらに駆け抜けていく。整理されていない森の
「はぁはぁっ」
それでもなお少女–––––マユ・アスカは駆けていた。
「はぁはぁ…父さん!」
–––何のために。
死の恐怖から逃れるためだ。
空の上で飛び交う
「あなた…」
「大丈夫だ。目標は軍の施設だろう。急げ!」
そして、その恐怖はマユに限らず一緒に森を駆ける両親、兄も共有しているものだ。頭上を通り過ぎた"何か"による突風に
肩にかけたバッグが重い。息が苦しい。身体が、足が痛い。なぜ、こんなことになってしまったのか。どうして自分がこんな目に
「はぁ…はぁ…」
「マユ!頑張って!」
母が
「あ、マユの携帯!」
そうして、がむしゃらに走り続けていると何かが自分のスカートのポケットから落ちたような感覚を覚える。すかさず横目でそれを見れば、
幼少期にねだりにねだってやっと買ってもらった携帯電話。そのデータの中には父や母、兄と取った写真などのマユにとっての宝物がたくさん
「…マユ?」
「そんなのいいから!」
無意識に身体がそちらへと向いてしまったが、そんなマユを引き戻したのは手を繋いでいた母親。馬鹿なことを考えている自覚はあるが、それに反して身体はなかなかその場を離れなかった。
「はっ…俺取ってくる!」
「待ちなさいシン!」
踏ん切りがつかないマユを見て、いち早く山の斜面を下ったのは兄のシンだった。家族の中でも一番運動ができる兄は急な斜面を滑るように下り、マユの携帯へと手を伸ばす。見事な身のこなしだ。
兄の優れた身体能力には感心するが、迷惑をかけたという自覚は流石にある。この非常事態に自分の
それは10枚の翼を広げた
「お父さん!お母さん!」
マユが両親に声をかけるのと、白亜の巨神が五つの砲口から
何かに押されるような感覚を覚えたが、それを気にする余裕はマユにはなかった。背後で爆発が起きたと感じた時には既に爆風がマユの華奢な身体を宙へと舞い上げていた。当然彼女に受け身を取ることなどできず、まともに地面に叩きつけられて勢い余って地面を転げ落ちた。
「げほっ…うぅっ」
ぶつかった
身体はふらふら、足はガクガクと
先程までマユが飛んできた方角にある山。そこがまるで背景がすり替えられたようにすっかり
「お父さん、お母さん、お兄ちゃん…えっ!?」
思わずそこへ向かおうとして、歩き出した瞬間に肩から何かがボトリと落ちる音が聞こえた。慌てて振り返れば、そこには力無く投げ出された腕が落ちている。
そう、
それは見覚えのある衣服を纏っており、白い肌の指先には何度も見た銀色の指輪が付けられている。
「お母さん…?」
それは変わり果てた母親の腕であった。おそらくあの時自分を押したのは母親だったのだろう。そして、爆風に煽られた母親の腕が自分ごと…。
そこまで考えて、マユは途端に吐き気を催した。つい先ほどまで自分に触れ、話し、動いていた母親の腕が転がっている。彼女はもう限界であった。
「お父さんとお兄ちゃんは…きゃっ!」
離れ離れになった肉親を探し求めて一歩を踏み出す、それと同時に背後から再び爆発音と衝撃がマユを襲う。それを何とか耐えたマユが頭を上げたところで、彼女は
マユの十倍はあるであろう大きな
頭部のバイザー越しにストライクダガーがこちらを
マユは怯えた。どうしてこちらへ銃を向けるのか理解できない。しかし、このままでは死ぬのだということは理解できた。この世界から自分という存在がかき消されるのだ。そんなの嫌だ。
だから、マユは心の奥底からこう願うことしかできなかった。
–––––誰か助けてっ!
「え…?」
赤い光が突き刺さった。だが、それはマユにではない。こちらにライフルを向けていたモビルスーツにだ。ストライクダガーは頭上から落ちてきた槍のようなビームにコックピットを貫かれ、潰れるように崩れ落ちた。それきり動かなくなる。
当然のことに混乱し、落ちてきた方向である上空を
そこには光があった。その光から様々な方向へと赤い光の槍が放たれ、その度に各地から何かが倒れる音が聞こえる。マユからは確認できなかったが、その光はこのオノゴロ島に侵入してきたストライクダガーの
「…太陽?」
その光はあまりにも眩しく、始めは目を細めないと確認できないほどだった。
やがて、目が慣れてくるとその光が少しずつ動いていることに気がつく。それはやがてこちらへと降下してくる。近づくにつれて
形はストライクダガーなどのモビルスーツと変わりはない。
「……天使さま?」
ただ、背中から漏れ出すように
「……」
人型の機械がマユを見つめた。一瞬、目があったような気がする。この時だけは、身体の痛みも家族と離れ離れになった悲しみも感じなかった。ただ、助かったという
この時のことを忘れることはないだろう。家族を失い、己も身体の一部を失い、戦争というものを憎むようになるきっかけ。それがこれからの彼女の––––そして、離れ離れになった兄の行動原理の
▽△▽
青く輝く惑星を
〈–––––
「大丈夫です」
素早く気持ちを入れ替える。自分はもうマユ・アスカではないのだ。操縦桿を動かして、機体をアーモリーワン内部へと向ける。まるで身体の一部であるかのように、思いのままに動く機体に密かな満足感を覚えながらも、それは決して表にはおくびに出さない。
〈ファーストフェイズ、ミッションスタート〉
––––少女は力を手に入れた。
いつの日にか焦がれた理想の姿。何者も敵わない不屈の在り方。この世の不条理の全てを
自分は–––フェイト・シックザールはソレスタルビーイングのガンダムマイスターなのだから。
▽△▽
C.E.71 6月15日 オーブ解放作戦
オーブ連合首長国首都オノゴロ島に存在するマスドライバー基地「カグヤ」と、公営企業モルゲンレーテ本社施設掌握の目的で発動した大西洋連邦によるオノゴロ島侵攻作戦。
戦局は物量に勝る大西洋軍有利に進んだが、翌16日、
時は流れて戦争終結後、一部のオーブ軍人や連合軍人が
オーブ軍司令部でもアンノウンの情報は話題になっていたものの、突如として味方に加わった"アークエンジェル部隊"や"フリーダム"、そしてザフト所属であるはずの"ジャスティス"や"バスター"などの参戦もあって司令部は混乱していたために対応が遅れたのだ。
そして、その後は戦場が宇宙へと移ったことや、アンノウンがその後に姿を現すことがなかったためにその情報は闇へと消えた。今ではフリーダムと見間違えたのだという考えが殆どであり、戦後二年間の間にオノゴロのアンノウンの情報は軍上層部からも消えていった。
それから二年後のこと。プラントの"アーモリーワン"というコロニーで起きた事件にて、そのモビルスーツは再び姿を表した。
戦争根絶を掲げる私設武装組織"ソレスタルビーイング"の象徴『ガンダム』として……。
・マユ・アスカ
原作主人公シン・アスカの妹。二次創作で生かされることが多い。今作もそれに倣って刹那枠に無理矢理押し込んだ。
実は非公式でシンとは5歳差となっているのだが、そうなると今現在11歳でガンダムマイスターをすることになるので、年齢をご都合主義で14歳にまで引き上げた。これでも若いと思うかもしれないけど、14はヒイロ・ユイと同い年。
・フェイト・シックザール
上記のマユ・アスカの
パイロットスーツは白。携帯にちなんでピンクでもいいかとそれだと歌姫と被るから無難な白で。
・何で刹那枠をシンにしなかったの?
本当はシンをマユのポジションにしたかったんですが、彼がザフトにいないとなるとそれはもうガンダムSEEDDESTNYじゃない何かになってしまうので。
彼は本当に主人公です←ココ重要。
作者はガンダム00のシナリオとガンダムSEED(DESTNY)のキャラデザが絡むのが好きなので。
いや、刹那達も大好きだけどネ!