【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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悪意の矛先

 

 

 ブレイク・ザ・ワールドは、(ザフトによる破砕作業によって最悪の事態は避けられたものの)地球に多大な被害を出した。

 

 今回の事件を受けて、大西洋連邦やユーラシアなどの地球連合を構成する国々は、プラントを激しく糾弾(きゅうだん)する姿勢を取った。

 

 今回の事件はプラント側の自作自演であり、ユニウスセブンを落とすことで、地球に対して有利な状況に立とうとしたのではないか、という疑いだ。

 

 無論、プラント側はそれを否定したが、連合は逆に関係がないのなら、この事件を起こした首謀者達(テロリスト)を地球連合政府へ引き渡せと要求した。

 更に、どこから手に入れたのか、テロリストグループの使用していたモビルスーツ"ジンハイマニューバ2型"の画像が公開され、ザフト軍との関係性も追求されている。

 

 しかし、事件を起こしたテロリストグループは全員死亡している。死んでいる者をどう引き渡せばいいというのか。最高評議会議長のデュランダルも(ねば)り強く交渉を続けたが、開戦は避けられない状況になってきていた。

 

 既に月面のアルザッヘル・ダイダロスの両基地には、着々と連合の宇宙軍が集結してきているのが確認されており、その矛先がプラントに向くのは時間の問題となっている。

 

 そして、プラントとしても、何もせず撃たれるわけにはいかない。武力で侵略を受けるなら、武力で持って対抗するしかないのだ。

 

 そうなれば二年前の続きが始まることになる。それは、ユニウスセブンを地球に落とした者たちの、ブルーコスモスの、ロゴスの思う壺であった。

 

 世界は、破滅への道を着々と進み始めている。

 変わりゆく時代の中、ソレスタルビーイングは……。

 

〈これより私は全世界の皆さんに、非常に重大かつ残念な事態をお伝えしなければなりません……〉

 

 大西洋連邦のコープランド大統領が発表した緊急声明を、地球・プラント問わずに全ての国の人々が息を呑んで受け止めた。

 

 フェイト達、地上にいたソレスタルビーイングも全員が宇宙へ上がったところで、その声明は発信されたのだ。

 

〈––––––この事態を打開せんと、我らは幾度となく協議を重ねてきました。が、いまだに納得できる回答すら得られず、この未曾有のテロ行為を匿い続ける、現プラント政権は、我等にとって明らかな脅威であります〉

 

 モニターの中で大統領は、いかにも裏切られたといった(おも)持ちで、これを見ているであろう国民達に語りかけている。(むこう)が悪いのだ。やむを得ない仕儀(しぎ)なのだ–––––と。

 

「…とんだ茶番だ」

 

 その声明に、シエルが吐き捨てるようにそう言った。

 他の皆も、かねがね同じ心持ちである。これは、明らかに作為(さくい)的な力が働いているに違いない。

 

〈–––––よって、さきの警告通り、地球連合各国は本日午前零時をもって、武力によるこれの排除を行使することを、プラント現政権に対し、通告いたしました〉

 

「開戦ってこと…?」

 

 ウェンディが震える声でそう言った。

 始めから想定されていたことであり、ヴェーダの予測でほぼほぼ確定していることを知っていたが、改めてその現実に直面すると、色々と心に来るものがあった。

 

「こうも強引に開戦に持っていくとは…怒りを通り越して呆れるぜ」

「戦争なんかしている場合じゃないのに…」

 

 ユニウスセブン落下の被害は、まだ癒えたとは言えない。セレーネの狙撃によって、首都圏への直撃を避けられたとはいえ、地球の各地ではブレイク・ザ・ワールドによって苦しむ人々が大勢いるはずなのだ。それを見てなお、戦いを挑もうとする地球連合の意図を、プラント育ちのウェンディは理解できなかった。

 

「そういう奴等なのさ、地球軍…ブルーコスモスはね」

「まぁ、プラントとてテロリストのことを持ち出されれば、何も言えんがな…」

 

 かつてブルーコスモスにいたシエルが低い声で吐き捨て、旧ザラ派のことを思い出したアキサムも苦い顔でそう洩らした。

 

「なんにせよ、開戦しちまったんだ。俺たちは、それに介入する必要がある」

「でも、これからは本当の戦争が始まるんですよね。今までとは、違いますよ…」

 

 ここにいるメンバーは、皆が皆二年前の大戦のことをよく知る…あるいは知らされた人間達である。あの狂気渦巻(うずま)く滅し合いを知っているからこそ、ウェンディが不安そうに弱気な声を出した。

 

「それでもやるのが、ソレスタルビーイングです」

 

 しかし、ガンダムマイスター達は揺るがない。既に心に覚悟を決めているからだ。いや、覚悟無くしてガンダムになることはできない。

 ソレスタルビーイングが掲げる紛争根絶という理念を実現するためには、こんなところで折れるわけにも曲げるわけにもいかないのだ。

 

「…………そうですね」

 

 フェイト達の見つめる先、クラウディオスのモニターには既にヴェーダから送られた次のミッションデータが表示されていた。

 

 

▽△▽

 

 

 遂に始まった地球・プラント間の戦争は、始めから大規模な艦隊を派遣した地球連合軍と迎え撃つ少数のザフト軍といった形で火蓋(ひぶた)を切ることとなった。

 

 この戦闘におけるザフトの旗艦"ゴンドワナ"は、全長1200メートルにも及ぶ巨大な大型空母であり、モビルスーツに留まらず、内部に艦船までもを収容することができる動く要塞だ。

 

 そして、そのゴンドワナから次々とナスカ級やローラシア級が発進し、ハッチからは次々とモビルスーツが射出され、旋回して前方に迫り来る地球連合軍艦隊へ向かっていく。

 

 そんなモビルスーツ部隊だが、やはり目立つのは専用のパーソナルカラーに染められたザクが率いるジュール隊やヴェステンフルス隊だろうか。

 

「ええい、くそっ! 防衛線を崩すなよ!」

 

 宇宙に映える青色に染められたザクファントムを駆るイザークが、こちらを狙うビームの驟雨(しゅうう)に逆らって敵陣へ斬り込んでき、ダガーLやウィンダムが反応する暇を与えずに、腰部から取り出したビームアックスでその胴を薙ぎ払う。

 

「そらよっ!」

 

 更に、背後から強襲しようとしたウィンダムをディアッカのオルトロスが火を噴き、コックピットを貫いた。

 

 しかし、ユニウスセブン破砕作業終了後すぐに戦場へ蜻蛉返りすることになった彼等に比べて、非常に動きのいいザクが連合のモビルスーツを圧倒している。

 

 それはオレンジ色にカラーリングされたザクファントムを中心とした部隊であり、肩にオレンジ色のカラーリングをしたザクウォーリアの小隊とともに華麗な連携攻撃で瞬く間に連合の戦艦を爆散させた。

 

「ハイネ・ヴェステンフルスの隊か…っ!」

「ヒュ〜、やるねぇ」

 

 ダガーを続けてさまに射落(いお)としたディアッカが、友軍機の活躍を見て陽気な声をあげる。連合がいかに数で押そうと、彼等ほどの歴戦のパイロットになると殆ど相手にならない。

 

 しかし、そんな彼らの元に別動隊からの通信文が届けられれば、その表情は一変した。そこには、信じられないことが書かれている。

 

「核攻撃!?極軌道からだと!?」

 

 それは、核を持った別動隊が死角からプラントへ接近しているという報せだった。思わず我が目を疑ったイザークとディアッカだったが、レーダーには確かに遠く離れた位置に複数の機影が確認できる。ミサイルと思しき装備を身につけるウィンダムの姿が。

 

「おいおい、核って…こいつら本気かよ!?」

「くっ…!ディアッカ、なんとしても止めるぞ!」

「分かっている!…けど、この物量…全部囮か!?」

 

 イザークとしても、プラントへの攻撃は何としても阻止したい。だが、連合も二人をエースパイロットだと理解したのか、10機単位で攻めてくるのだ。ミサイルに気を取られて油断すれば、流石のイザーク達とて危うくなるほどの物量だ。

 

「くっそぉぉぉ!」

 

 怒りと焦りを覚えながらも、全ての敵を破壊した時には、既に核ミサイルを搭載した部隊は遠く離れた位置にてプラントへ接近しつつある。

 そして、イザーク達が機体を向けたとき、ついに先頭にいたウィンダムからミサイルが放たれた。

 

「くそぉぉぉ!間に合わん!」

 

 イザークは悲痛な叫びを上げながら、必死にミサイルを狙うが、それはあまりにも遠い。ディアッカを始めとするザフトのモビルスーツが立ち続けに熱線を放つが、それが(かす)ることはなくミサイルは突き進む。

 その先には、周り続ける巨大な砂時計の群れがある。あそこには何十万人もの同胞がおり、中にはイザークの肉親もいる。あそこに核が撃たれれば、あのユニウスセブンのように……っ!

 

「ああっ…!」

 

 イザークが次に自分が見ることになる光景を想像して、悲痛な叫びを洩らした……その時だった。

 

 イザークの背後から、数条のビームと何十発ものミサイルが放たれた。それらは彼を追い越して、まるで豪雨のようにプラントへ向かう核ミサイルへ襲いかかる。

 

「なんだ…っ!?」

 

 プラントの目の前でミサイルは目も(くら)む閃光を発して爆発し、周囲のミサイルを誘爆してさらに閃光の輪を広げていく。

 

 モニターを白く()いた光が過ぎ去ったとき、真空に浮かぶ砂時計はただの一つも失われておらず、無傷のまま残されていた。イザークは強張った全身の力を抜けるほどの安堵を覚えながらも、故国を救ってくれた者の姿を求めて背後を見ようとしたのだが…。

 

「…っ!?」

 

 だが、ザクファントムの前を素早い何かが矢のように通り過ぎていくと同時に、手に持っていたビームライフルと背部のスラッシュウィザードが破壊されたことに気がつく。

 

 慌ててライフルを手放し、スラッシュウィザードをパージしたイザークの前で、見覚えのある緑色の粒子を放つ機体がウィンダムやザクなどを片っ端から無力化していた。

 

「––––ガンダム!? ソレスタルビーイングか!」

 

 さらに、イザーク達の眼前をモビルスーツの3倍近くはある極大なビームが横切る。それは、運悪く射線上に(おど)り出てしまったダガーやウィンダムを巻き込み、後方にあった地球軍艦をも飲み込んで宇宙の(ちり)にした。

 

「なんだ…、一体何が…」

 

 ガンダムが出現しただけで、戦況が何もかも変化した。こちらの司令部も混乱しているだろう。

 

 とにかく、失った装備を補給しなければ…と、イザークは破壊された残骸が散らばる宙域を後にした。

 

 

▽△▽

 

 

 モニターに映る白い閃光–––––––核ミサイルが誘爆していく光景を、ザフトと連合軍の戦闘宙域から少し離れた小惑星の上からアステリアは眺めていた。

 

「目標沈黙、再チャージまで…」

 

 アステリアが構えているのは、巨大な砲口を有する巨大なライフルだ。その全長はセレーネのGNメガランチャーよりも大きく、ライフルから伸びたケーブルが大型GNコンデンサーを内蔵したシールドへつながっている。

 

「GNハイメガランチャー。チャージ完了まで、20、19…」

 

 GNハイメガランチャー。

 セレーネのGNメガランチャーをも上回る威力と射程を持つ大型兵装であり、様々な武装との相性が良いアステリアのオプション装備の一つである。

 その威力は絶大で、遠く離れた位置から敵モビルスーツを数機纏めて撃墜できるほか、その威力と射程から戦艦をも撃沈させられることがこうして実戦で証明された。

 

「敵核搭載部隊の全滅を確認。続いて、特殊装備のナスカ級を捕捉…」

 

 開戦にあたって、今回のソレスタルビーイングのミッションは至って単純。ガンダムの力で持って、ザフト・連合に致命的なダメージを与えることで。これ以上の戦いの継続を不可能にすること。

 

 GNハイメガランチャーを装備したアステリアとGNメガランチャーを持つセレーネが後方から狙撃し、中距離をサルースが()け負う。そして、新型のオプション装備––––––大量のミサイルコンテナを積んだテールユニットを装備したメティスが敵部隊を撹乱する。

 

「アステリア、目標を破砕します」

 

 長いチャージを経て、GNハイメガランチャーから極大の粒子ビームが放たれる。狙いは特殊装備…ニュートロンスタンピーダーを装備したナスカ級だ。それは誰にも止めることはできず、いくつかのモビルスーツを巻き込んだ後、ナスカ級のスラスターを貫いた。

 

〈メティス、目標の破壊を確認。核部隊は全滅させたわ〉

〈セレーネ、地球連合軍の撤退を確認。プラン13に従って、離脱行動に入る〉

〈サルースも同じく〉

 

 各々のマイスターからの戦況報告を聞き、フェイトは自身の周囲を確認する。連合は完全に撤退し、ザフトも母艦の多くが航行不可能になった上に多くのモビルスーツが損傷している。これ以上の戦闘は不可能だろう。

 

「ザフト軍の完全沈黙を確認。周囲に連合軍の反応はなし」

〈宙域を離脱後、ルート41を通って合流を〉

「了解」

 

 次々とガンダムが離脱していき、目の前を飛行形態になったメティスが通り過ぎたのを確認して、フェイトもアステリアを宙域から離脱させる。

 

 

▽△▽

 

 

 こうして、"フォックストロット・ノベンバー"と呼ばれる第二次地球・プラント間の前哨戦は、戦争根絶を掲げる私設武装組織"ソレスタルビーイング"の武力介入によって両者痛み分けといった形で終了した。

 

 地球連合艦隊は悪戯な消耗を避けるため月軌道へ撤退。以降宇宙では月とL5宙域を挟み地球連合艦隊とザフト艦隊が睨み合いに終始し、小競り合いを繰り返す事になる。

 

 たった4機のモビルスーツが地球軍・ザフト両軍を撤退まで追い込んだことで、世界は改めてソレスタルビーイングという組織に注目することになった。

 

 しかし、彼等の武力介入という痛みを持ってしても、ナチュラル・コーディネーター間の溝を埋めるには足りず、世界では新たな争いが展開されていくことになる。

 

 それは非常に愚かな行動だった。

 

 だが、それは()にとっては想定の範囲内の出来事でもある。こんな光景は何十年も見てきた。年々増していくニンゲンの愚かしさ。成長していくにつれて純粋さを失っていく彼等を見て、彼は生命体として鈍化(どんか)していくように思えて仕方がない。

 

「……大人は嫌いだね」

 

 だから、彼はそう呟く。

 人は痛い思いをしなければ何も覚えない。そして、それは生優しいものでは意味がない。例えどんなに辛く厳しい痛みであろうと、世界を変えるためにはそれは必要なことなのだと。

 

 そう笑う少年の目の前には、白銀の機体が鎮座していた。

 

 頭部の額に付いているV字形のパーツ、その下には二つの碧眼。口から(あご)にかけて付いている赤い突起。全体的に肉感的な人間のようなフォルムをしており、背部には円錐形のスラスターが装備されている。

 

 それはまさしく–––––––ガンダムだった。

 

 

 





>GNハイメガランチャー
アストレアのプロトタイプと同じもの。ただし、粒子制御能力と連射性は向上している。

>テールユニット
キュリオスのミサイルユニットと同一モデル。使用後はパージして爆破した。
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