【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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それぞれの剣

 

 

 オーブ近海を抜けた先、そこでは空母四隻を含む地球連合艦隊が列を成して群青の海を航行している。

 

 彼等は、これからここを通るであろうザフトの新型戦艦"ミネルバ"を迎え撃つため、この海域に(あみ)を張っていたのだ。

 

「もう間も無くオーブ領海近くです」

「分かった…それにしても、オーブも必死だな」

 

 索敵班の言葉に今回の作戦を任された艦隊司令が、悠然と座したまま群青の海を眺めてそう呟いた。

 

 今回、彼等地球軍はオーブからの情報提供を受けてここまで進軍していた。情報提供者は、オーブのセイラン家からだ。同盟を有利に進めるための手土産にでもしたつもりなのだろう。

 

「さぁて、では暫しの待機というわけか。ザムザザーはどうだ?」

「はい。整備は完璧。パイロットも含めて、いつでも出撃可能です」

 

 今回の彼等の目的は、もちろんザフトの新型戦艦なのだが、それとは別に新型モビルアーマーのデモンストレーションという意味合いもあった。隣を航行する空母の中には、地球連合が次期主力機体として注目している新型機"ザムザザー"が搭載されている。

 

「よろしい。モビルスーツ部隊にも第二戦闘配備を出しておけ」

「はっ!」

 

 司令官は、これからの時代はモビルスーツではなく、ザムザザーのようなモビルアーマーが主戦力となることを期待していた。

 いつまでもザフトの真似をして作ったモビルスーツで戦うことは、前大戦より以前から戦ってきた彼にとっては屈辱だったからだ。

 

 しかし、これでザムザザーが結果を出せば、彼の望みは現実のものとなる。更なる改良型が作られて、時代はモビルアーマーの物になるだろう。

 

 そう思って司令官の口元が(ゆる)んだ、正にその瞬間だった。

 

「上空より熱源接近!モビルスーツ?いや速い!」

「何だ?」

 

 オペレーターの一人が悲鳴じみた声を上げた瞬間、上空より二機の機影が彼等の前に舞い降りた。その姿は、最近連合を騒がしている組織の機体…。

 

「ガンダムだと!? 我々はまだ何もしてないぞ!」

「少佐、ガンダムがザムザザーを積んだ艦へ!」

「何ぃ!迎撃させろ、急げ!」

 

 司令官の指示で各艦隊が砲撃を開始するが、素早く動くガンダムに命中させることは叶わず、二機のガンダムの内、青色の機体色のモビルスーツが右腕に折り畳まれた大剣を展開し、艦船の甲板にそれを突き刺して斬り刻む。

 

「…少佐!」

「ええい! モビルスーツ部隊を発進させろ! ザムザザーも出せ!」

「はっ!」

 

 各艦から一斉にミサイルが発射されると同時に、艦載機である"ジェットストライカー"を装備したウィンダムが次々と出撃していく。

 

 そして、その中に異様な機体がせり上がった。ほぼ半球形を(えが)くボディの四方から、太く短い(あし)のような突起突き出した、ヤシガニを思わせるようなフォルムの機体、ザムザザーだ。

 

「ガンダムめ…返り討ちにしてくれる。このザムザザーがな!」

 

 

▽△▽

 

 

 ガンダムアステリアを駆るフェイトは、次々と迫り来るウィンダムの攻撃を回避し、展開したGNソードとビームサーベルで次々と斬り刻む。

 機体を真っ二つにされたウィンダムは空中で爆散し、黒煙を後に引きながら落下していった。

 

「ええい!」

 

 敵は隊列を成して攻撃を加えてくるが、そのどれもがガンダムの反応速度に追いつくものではない。フェイトは素早く機体を旋回させ、ライフルモードにしたGNソードでウィンダムの"ジェットストライカー"を上空から狙い撃つ。

 フライトユニットを破壊されたウィンダムは重力に従って、群青(ぐんじょう)の海へ落下していく。

 

〈フェイト、張り切りすぎじゃない? 大丈夫?〉

「…大丈夫です!」

 

 そこから少し離れたところでは、フブキの駆るガンダムメティスが大気圏内で存分にその機動性を発揮してウィンダムを翻弄(ほんろう)している。

 鬼気(けっき)迫る様子を心配したフブキの通信に、問題ないと伝えて、フェイトは連合艦隊の方向へ機体を向かわせた。

 

 こちらに砲撃を行ってくる連合艦隊の中を突き進むように、緑色の見慣れない機影が接近してくる。こちらのデータバンクにはない機体だ。今回の任務の目標でもある。

 

「あれが連合の新型モビルアーマー…!」

 

 モビルアーマーは、その巨体(きょたい)からは予想もできない機動力を見せ、アステリアに向かって接近してくる。流石のガンダムとて、あの巨大と質量が直撃すれば、ただではすまない。

 

「はぁっ!」

 

 フェイトは、機体をずらしてその巨体とすれ違うと、GNソードをライフルモードにしてビームを放つ。が、そのビームは敵機の直前で見えない壁に当たったかのように弾かれた。

 

「あれが陽電子リフレクター…厄介」

 

 遠距離からのビーム兵器を無効化するという新型の防御兵装。ビーム兵器を主体とするガンダムとは相性の悪い武装である。

 尤も、ガンダムセレーネのGNメガランチャーのような高威力の粒子ビームまで耐え切れるかはまだ分からないが。少なくともアステリアのGNソードによる射撃では突破は難しいだろう。

 

「……っ!」

 

 高速ですれ違ったモビルアーマーは、そのまま後方脚部の砲口から強烈(きょうれつ)なビームを放った。フェイトは機体を急上昇(じょうしょう)させてそれをかわす。

 

「…やる!」

 

 少なくとも非太陽炉搭載機にしてはかなりの火力とパワーだ。あれほどの火力、直撃すればガンダムの装甲とてかなりのダメージを受けることになるだろう。……当たりさえすればの話だが。

 

 フェイトは、上空から飛び込むようにモビルアーマーへ突っ込んだ。敵機が両脚部の砲口から強力なビームを放ったが、ガンダムの機動力を捉えるには至らない。フェイトは、そのまま二発のビームライフルを撃ち込むと同時に、腰部のGNビームダガーを投擲(とうてき)する。

 

 モビルアーマーは再度リフレクターを展開してビームを防いだようだが、続いて投擲されたGNビームダガーに発生装置を破壊され、小さな爆発と共にリフレクターは消え去った。

 

「アステリア、目標を破壊する!」

 

 そして、何が起きたか分かっていない様子のモビルアーマーに飛び乗り、GNソードで表面を斬り裂く。GN粒子でコーティングされた剣は分厚い装甲をいとも簡単に両断し、その切り傷から血が(あふ)れるように火花が散る。

 アステリアが飛び退いた次の瞬間、その巨体は爆発四散した。

 

「フブキさん、こっちは終わりました!」

〈オーケー、こちらでも確認したわ。もうこの辺にしときましょう〉

 

 上空を見れば、あれほどいたウィンダムも数を大きく減らしている。いずれもメティスに撃墜・無力化されたのだろう。

 

〈敵連合艦隊、撤退していきます。目標対象のモビルアーマーの撃破を確認。各マイスターは撤退行動に移ってください〉

〈りょーかい。メティス、撤退行動に移ります〉

 

 地球軍の開発した新型モビルアーマー。それがどれほどの性能を持っているのかを調査するのが、今回フェイトに課せられた任務だった。初めはアステリアのみの単独任務だったのだが、連合艦隊の規模を考慮してバックアップにメティスが派遣されたのである。

 

「………」

 

 撤退するメティスをよそに、フェイトは広がる海の向こう…辛うじて見ることができる島々(オーブ)へ視線を向けた。あそこには、フェイトの故郷がある。その故郷には、生き別れた兄がいる。

 

 オーブが大西洋連邦と同盟を結ぶことが決まったのは知っている。何せソレスタルビーイングに大西洋連邦の中心人物がいるのだから。

 

 だが、紆余曲折あれど、家族を殺し、兄と離れ離れになる原因を作った大西洋連邦と同盟を結んだオーブのことはどうしてもよく思えない。自分たちのような人間を出してまで貫こうとした中立の理念はどこに行ってしまったのか。

 

「……アステリア、撤退行動に移ります」

 

 変わり果てた故郷を見つめた後、フェイトは静かに機体を翻した。

 

 

▽△▽

 

 

 ソレスタルビーイングのガンダムが、空母四隻を有する地球連合軍へ武力介入し、地球軍が投入した新型モビルアーマーを物ともせずにたった二機で撤退まで追い込んだという情報は、すぐに距離の近かったオーブへと届けられた。

 

 その光景は、オーブ軍司令部でも確認されている。が、その海戦の結果に誰もが呆気に取られていた。

 

 ソレスタルビーイングと聞いてすっ飛んできたカガリや、それに腰巾着のようにくっついてきたユウナも口をポカンと開けて固まっている。

 

 特に、ミネルバを狙うように連合と内通していたユウナは、茫然自失(ぼうぜんじしつ)の状態であり、常に浮かべている軽薄な笑みは今や見る影もなかった。

 

 それほどまでに圧倒的だったのだ。ガンダムの力は。プラントや連合からの情報でしかその力を知らないオーブは、眼前で初めて直接その力を目撃することとなった。

 

 

▽△▽

 

 

 ミネルバのブリッジでも、オーブ軍から送られてきた情報に誰もが呆気に取られた様子でモニターの映像を眺めていた。

 

 今現在、ミネルバはようやく長い修理を終えたものの、カーペンタリアからの連絡待ちといった理由でオーブに停泊し続けていた。その最中にオーブから届けられたのがこの戦闘記録である。

 

「艦長……」

 

 アーサーとバートが困惑ぎみの表情でタリアを見つめている。

 だがまぁ、彼等の気持ちも分かる。今現在、オーブもミネルバも複雑な状況に置かれているのだ。

 

「カーペンタリアと連絡は取れない?」

 

 タリアは、少し迷いながらバートに命じた。

 

 ミネルバがオーブで修理を受けている間に、様々なことが起きた。突然の開戦に始まり、ソレスタルビーイングの武力介入。そして、オーブが大西洋連邦との同盟の可能性。

 このまま何もせずに待機していることは、もうできそうにないとタリアは思った。

 

 すると、様々な通信手段を試していたバートが、ややあって首を横に振った。

 

「ダメです。地球軍側の警戒レベルが上がっているのか、通信妨害激しく、レーザーでもカーペンタリアにコンタクトできません」

「あぁ…」

 

 ある程度予測していた答えだったが、アーサーが暗澹(あんたん)たる表情を浮かべて肩を落とした。

 

 だが、それを聞いてタリアは心を決めた。

 

「いいわ。命令なきままだけど、ミネルバは明朝出航します」

「艦長……」

 

 何より、わざわざオーブ近海で連合が空母四隻も率いて航行していたというのが不自然だ。新型モビルアーマーの件といい、ソレスタルビーイングに介入されたことといい、何か作為的なものを感じてならない。

 

「全艦に通達! 急いで!」

「は、はい!」

 

 オーブ連合首長国。

 国も、国のトップ(カガリ)も、気の合いそうなメカニック(マリア・ベルナス)もそう悪いものでなかっただけに、タリアも少し寂しく思いながら、オーブを後にすることを決意した。

 

 

▽△▽

 

 

 そして、地上から遠く離れたプラントでも、一人の男が決意を新たにしていた。

 

 彼、アスラン・ザラは差し出された赤い上着を、しばし感慨(かんがい)深げに見つめた。アスランにとっては、久しぶりで見慣れた制服だ。手慣れた様子でそれを羽織り、(えり)を止める。

 

 再びこの制服の(そで)に手を通す日が来るとは思ってもみなかった。やはり、人は取り巻く状況と時間の作用によって変わっていくということだろうか。

 

「わぁぁ…!」

 

 隣で見ていた少女、ミーア・キャンベルが惚れ惚れとした様子で声を上げた。昔の婚約者(ラクス)とよく似た少女の姿にアスランは少しばつの悪い思いを抱いたが、すぐにそれを振り捨て、もう一人、自分を見守っていた人物へ向き直る。

 

「アスラン…」

 

 デュランダル議長が、静かな称賛を込めて自分を見つめていた。アスランはもう迷わず、"アスラン・ザラ"として彼の前に進み出る。

 

《だからお前も、何かできることをしろ! オーブのためでも、プラントのためでもいい! それほどの力、ただ無駄にするつもりか!》

 

 プラントへ来て、デュランダル議長の言葉を聞き、久しぶりにあった戦友(イザーク)たちの言葉を聞き、迷っていたアスランの心も決まった。

 

 カガリは未熟ながらも政治家として戦っている。イザークたちもプラントを守るために必死に戦っている。

 

「………?」

 

 そして、ミーアという少女もまた、平和のために自分にできることを精一杯頑張っているのだ。彼女のやっていることは、正直()められたことじゃないが、もはや手段を選んでいる場合じゃないのだろう…世界は。

 

 デュランダルはアスランの顔を感慨深げに見つめた後、手にしていた箱を差し出した。その中には、銀色に光る徽章(きしょう)が入っている。

 

「これは、フェイスの…?」

 

 フェイスとは、特務隊と呼ばれるプラント国防委員会直属の指揮下に置かれる部隊であり、国防委員会及び評議会議長に戦績・人格ともに優れていると認められた者が任命されるものだ。個々において行動の自由を持ち、その権限は通常の部隊指揮官より上位で作戦の立案及び実行の命令権限までも有している。

 

「でも、なぜ?」

 

 アスランはかつて親友を…ストライクを討った際にこれを受賞しているが、その後ザフトを脱走したために取り消されている。

 かつての決断を後悔はしていないが、一度軍服を脱いだ自分が、再びフェイスを受け取るのに相応しい人物だとは思えない。

 

 しかし、デュランダルは、そんなアスランを安心させるように微笑む。

 

「君ほどの人物を通常の指揮系統に組み込むのは難しいし、君も困るだろう? そのための便宜上の措置だよ」

「議長…」

「…君は己の信念や信義に、忠誠を誓ってくれればいい。それを裏切らないと誓ってくれるなら」

 

 その表情には、アスランに対する信頼がこもっていた。

 己の信念、信義に従う–––––––それ以外の何も従わなくていい。しかし、それは自由であると同時に、とてつもない重圧を伴う責任だ。議長は、それをアスランに誓えと言っているのだ。

 

「君にならできるさ。だからその力を、どうか必要な時に使ってくれたまえ。この混沌とする時代の中で、君のその力が正しく平和のために使われることを祈っているよ」

「はい……!」

 

 そう言うと、デュランダルはアスランをその場所へ送り出した。アスランの新たなる剣が眠っている、その場所へと。

 

 

 連れてこられたのは、ザフトでも最重要秘密であろうモビルスーツの格納庫(ハンガー)だ。しかし、今のアスランは真紅のパイロットスーツに身を包むザフトレッドのフェイスである。

 

「…セイバー」

 

 ZGMF-X23S "セイバー"

 そこに立つモビルスーツをアスランは既に一度見ている。だが、"ザフトのアスラン・ザラ"としてこの機体に対面するとなると、また違う気分になる。

 

 コックピットですぐに機体を立ち上げ、エンジン音と共にメンテナンス用のケーブルが次々と外されていく。まるで戒めから解かれた巨神の如く、目覚めたセイバーのツインアイに光が(とも)った。

 

 前方のゲートが開き、かつてのジャスティス発進の時のように、切り取られた星の海を真っ直ぐに見据(みす)え、アスランは強い意志に彩られた言葉を吐き出した。

 

「アスラン・ザラ、セイバー、発進する!」

 

 

 





>ザムザザー
安定の噛ませ。まぁ、原作でも最初以降は噛ませだったしいいよね?

>陽電子リフレクター
GNドライヴ搭載機のビームを防げるかは不明ですが、今作では防げるとしました。大型モビルアーマーだからということもありますが、あまりガンダムを有利にし過ぎると展開の問題があるので…。

>セイバー
肩サーベル以外は好き。
動力以外フリーダムの上位互換ってのも好き。
是非ともアスランにはキラと本気でぶつかり合って欲しかった。

>アスラン
彼は本気を出せば、上記のセイバーでガンダムとも互角に戦えます。

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