【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E.   作:アルテミー

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ガンダム強襲

 

 

 沈む夕日が反射し、その美しい景色で見るものを魅了する。

 その光景を見て、黒髪の少年–––––––キラ・ヤマトは、何も言わずに海辺に(たたず)んでいた。

 

 背後には、アスハ家から提供された邸宅がある。先のユニウスセブンの災害で住んでいた住居を失ったキラ達は、カガリの配慮(はいりょ)でこの邸宅に居を移したのだ。

 

「…まぁ、気持ちは分からんでもないがな」

 

 そんな少年を見守るように、テラスで二人の大人が海を眺めている。

 それは、先の大戦で、キラと共に戦ったアンドリュー・バルトフェルドとマリュー・ラミアスだった。あの大戦の後、一人、また一人と仲間たちがバラバラになっていく中で、彼等はせめて少年達を見守ろうとオーブに居残り続けていた。

 

「…まぁ、オーブの決定はな。残念だが、この情勢では仕方のないものでもあると思うよ」

「ええ、カガリさんも頑張ったんだろうと思いますけど…」

「僕も政治のことはてんで分からんが、この情勢の中でも政治が難しいのは分かるよ。彼女を責める気はないが…問題はこっちだ」

 

 そう言って、マリューとバルトフェルドが見つめる先にいるのは、キラ…そして、彼に寄り添うように側にいる少女…ラクス・クラインだ。

 

「キラ君も…色々と心配ね」

 

 先の大戦でフリーダムを駆り、伝説的な活躍をしたという少年は、この生活に馴染んでないように思える。人との関わりをさけ、世捨て人のように、無為(むい)に過ごす日々。そこに、マリューが見た友人達と笑い合っていた二年前の姿はかけらもない。

 

「まぁ、君も僕も…キラには負担をかけすぎてしまったからね」

 

 それほどまでに、年若い心に大戦が刻んだ傷は、あまりに深いものだったのだ。親友(アスラン)と殺し合い、その過程で友人(トール)を失い、大切な少女(フレイ)も失った、辛い戦争の記憶は…。とても民間人だった子供が耐えうるものではなかった。

 

「そうね…」

 

 マリューは、彼を戦争に巻き込む引き金を引いてしまったし、バルトフェルドに至っては、その存在が彼の古傷のようなものである。二人とも、それに罪悪感を覚えていた。

 

 そして、今回の大西洋連邦との同盟締結。今後はプラント–––––コーディネーターが敵になる。国内から追放とまでいかないだろうが、キラやラクス、バルトフェルドにとってはもうオーブは安住の地ではなくなってしまうだろう。

 

「全く、ままならんな世界は…」

「連合は強引に開戦し、オーブもほぼセイランに掌握されていると……嫌な世の中ね」

「かといって、前回みたいなことは……できそうにないねぇ」

 

 かつてマリューとバルトフェルド、キラやラクスは三隻同盟を率いて互いを滅ぼさんとする地球・プラント間の争いを止める為に奔走したことがある。それこそが、彼らを『大戦の英雄』と言わしめている経歴なのだ。

 

「ソレスタルビーイング…か」

 

 そして今、彼等の代わり…というには少し違うが、地球とプラントを相手に動いているのが、ソレスタルビーイングという組織だ。その根本は「戦争根絶」というシンプルなもの。

 

「あら、やっぱり気になる?」

「まぁねぇ…でもま、やっぱり違うよ。僕らとは」

 

 彼等はテロリストだと言われていると聞く。前大戦でやったことは同じなのに、バルトフェルド達は「英雄」とまでもてはやされている。それがどこか気持ち悪く感じていた。

 戦争を止めたいというのは同じだ。しかし、バルトフェルド達には「戦争を根絶したい」という思いまでは存在しない。二年前は、あれしか止める方法がなかったから銃を取ったにすぎないのだ。

 

「ただ平和に暮らせて、ゆっくりとコーヒーでも飲みながら死んでいければいい……そういう意味では、彼等には是非とも戦争を根絶してもらいたいものだな」

 

 どこかわざとらしく、バルトフェルドは飄々とした口調でそう言う。その姿にマリューも肩をすくめるように笑って返した。

 

 

▽△▽

 

 

 その夜、波の打ち寄せる崖下に、浮かび上がった黒い影があった。ひそやかに一つの影が岩場に上がると、それに続いて複数の人影が上陸する。暗視ゴーグルにライフルと、明らかな対人用の装備をした数人ほどの部隊だ。

 

「いいな、標的(ターゲット)の死の痕跡は決して残すな。しかし、完璧に仕留めろ」

 

 特殊部隊を率いるヨップ・フォン・アラファスは、部下達にそう指示し、男達は崖上へ続く坂を走り始める。足音を殺した、無駄のない動きだ。その上には、標的(ラクス・クライン)が暮らすアスハ家の別邸が見えていた。

 

 何事もなくそこに到達し、ヨップ達は余裕の表情を浮かべた。

 いくら自分たちがザフトの特殊作戦部隊だとはいえ、気づかれずに他国に侵入するというのは難しいと思っていた。しかし、結果はこの通り。オーブはモビルスーツ数機が侵入しても気づかないような寝惚(ねぼ)けた国だったらしい。

 

「必要とあれば、控えているモビルスーツ隊の使用も許可されている。オーブ軍に気づかれる前に確実に仕留めるぞ」

 

 彼等はいとも簡単に屋敷の中へ侵入し、ラクス・クラインを巡った熾烈(しれつ)な銃撃戦が始まったのだ。

 

 

▽△▽

 

 

 ––––––どうして自分はここにいるのだろう。

 

 自分にとって馴染み深いモビルスーツ…フリーダムのコックピットの中で、キラは一人そう思った。

 

 仕方のないことだった。

 突如、侵入してきた謎の特殊部隊にラクスの命が狙われた。元軍人のマリューやバルトフェルドが迎撃してくれたが、多勢に無勢だった。何とかシェルターまで逃げ込んだものの、敵部隊はモビルスーツまで持ち出してきたのだ。

 

 本当は乗りたくなかった。

 レバーやペダルがまるで手足の延長のように吸い付くこの感覚に、どうしても嫌悪感が(ぬぐ)えないのだ。

 

 でも、本当に仕方のないことだった。

 あの場には子供達がいて、ラクスがいた。子供達の泣いている声を聞いて、ラクスが辛そうに"鍵"を手渡そうとしていたのを見てしまったから。だから、またキラはここにいる。

 

「………また力を借りるよ、フリーダム」

 

 そう言うと、まるでその言葉に応えるようにツインアイに光が灯った。同時に長い眠りから解かれるように装甲が色付いていく。そして、己の身体を(しば)っていた鎖を(ほど)くように点検コードが次々と抜けていく。

 

『私は…ここで家族を失ったんです』

『いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす…!』

 

「……っ!」

 

 一瞬だけ表情を歪めた後、見えた幻影を振り払ってキラはフリーダムを上空へ飛翔させる。

 

 調整された最高の肉体は、二年間のブランクなど感じさせてくれなかった。

 

 

▽△▽

 

 

 波間から立ち上がった数十機のモビルスーツは、水中用特有のずんぐりと丸みを()びたシルエットを見せていた。

 

 UMF/SSO-3 "アッシュ"

 ザフトがグーンやゾノなどの機体群の流れを汲む特殊戦支援機として開発した水陸両用モビルスーツだ。

 背中に背負った多目的ミサイルランチャー、両肩のビーム砲という武装の殆どを()き出しになったシェルターへ向けている。

 

「一点を集中して狙え! 壁面を破壊できればそれで終わる!」

 

 アッシュのコックピットの中で、ヨップは苛立ち混じりに部下へ指示を投げかけた。

 

 彼は焦っていた。

 まさかここまで手こずることになるとは思ってなかったのである。警備の甘さから楽な任務だと思っていたが、標的の側には腕のある護衛があるようで、白兵戦による暗殺は不可能だった。

 

 おかげで、わざわざアッシュを持ち出すことになったのだ。この機体はザフトの最新鋭の機体ということだけあってヨップ達からも信頼は厚いが、今この場では扱いづらいと言わざるを得ない。

 

「早く目標を探せ!! オルアンとクラムニクは…」

 

 出来るだけ手早く任務を終わらせようと、ヨップが次の命令を出そうとした時だった。

 ふいに背後の斜面から一筋の光が払暁(ふつぎょう)の空を駆け抜けていき、それに遅れて一つの機影が空へ飛び上がっていく。

 

「何だ!?」

 

 明るみ始めた空を背に、白く輝く機体が、十枚の青い翼を広げ、まるで本物の天使のようにこちらを見下していた。

 

「あれはまさか……フリーダム!?」

「ええっ!?」

 

 ZGMF-X10A "フリーダム"

 第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦において、ラクス・クラインの下で伝説的な活躍をした機体だ。当時の最新技術の全てを盛り込んだ性能と、それを巧みに操るパイロットの常人離れした技量等と全てが伝説クラスとして伝わっているモビルスーツの名前だった。

 

 そのモビルスーツが今、目の前にいる。

 その衝撃に動きが遅れたヨップ達を、フリーダムは見逃さなかった。

 

 フリーダムは翼を広げると、腰から引き抜いたビームサーベルを片手にこちらへ斬り込んできた。

 

「くそぅ、全機迎撃!」

 

 しかし、ヨップが僚機にそう指示した時には、一機のアッシュの手足が斬り飛ばされていた。

 

 何という速さ!何という操縦技術!

 

 離脱するフリーダムを目掛けて、慌てて両手のビームを放つが、フリーダムはそれを重力や空気抵抗が存在するとは思えない動きで鮮やかに砲撃をかわすと、その五つの砲門が火を()いた。

 

 マルチロックシステムの恩恵か、それともパイロットの技量ゆえか、ヨップの周りのアッシュは回避も許されずに一方的に撃破されていく。

 

 全てのアッシュが一機のモビルスーツを集中的に狙っていると言うのに、まるでビームの方から避けているのかと思うくらいに命中しない。なのに、お返しとばかりに放たれた閃光に次々と残ったアッシュを無力化されていった。

 

「そんなバカなぁ!うぉぉお!!」

 

 遂に自分一人になってしまったヨップは、雄叫びを上げながら、マニピュレーターから展開したビームクローで攻撃を行うが、フリーダムはそれをシールドでいなし、逆に持ち上げるようにアッシュを投げ飛ばした。

 

「ぬぉぉぉ!」

 

 ヨップは素早く機体の体勢を立て直したが、それよりも早くフリーダムから放たれたビームがアッシュの武装を、腕を、脚を破壊していく。達摩(だるま)にされたアッシュが地へ転がっていく。

 

「ぐぅぅ…くそっ」

 

 ミッションは失敗した。

 そして、彼のような特殊部隊は失敗した場合の手段は決まっている。情報の漏洩や証拠を残すことを防ぐために、ヨップはアッシュの自爆コードを入力する。

 

「………っ!」

 

 しかし、彼が結果的に自爆の引き金を引くことはなかった。

 覚悟を決めた彼が自爆の選択をするよりも先に、目の前が真っ白になるのを感じるとともにヨップの意識は途絶(とだ)えた。

 

 

▽△▽

 

 

 青い翼を広げたモビルスーツが空を舞い、次々と敵機体を無力化していく。

 

 その光景を、彼は上空から見つめていた。

 ザフトの最新鋭の機体"アッシュ"、同じくかつての最新鋭であった"フリーダム"。そのどちらの情報も、彼の頭の中には全てが詰め込まれている。

 

 彼は、世界と繋がっていた。

 いや、世界を見通すヴェーダと繋がっている…というべきか。彼にとって地球上だけでなく、月やプラント、火星のマーシャンに至るまで、コズミック・イラにおけるありとあらゆる情報とリンクしていた。

 

 だからこそ、今回の開戦の理由も知っている。

 地球連合を強引に動かしたロード・ジブリールは言わずもがな。同胞にすらその本心をひた隠しにしているギルバート・デュランダルの思惑すらも、彼はある程度把握(はあく)していた。

 

 前回の大戦を見届け、彼は(うれ)いた。

 ヒトというものは、何故にこうも愚かになれるのかと。

 リボンズ・アルマークが人間を上位者として認められなかった気持ちが分かったような気がする。

 

 鏡に写る自分の姿を見て、彼は溜め息をつく。

 何故、自分はそんな愚かな存在を模して作られたのだろうかと思った。まるで出来の悪い生徒に手を焼く教師の如く、彼は何度もヒトに期待を裏切られた。

 

 しかし、彼はヒトという存在を見捨てない。

 彼等が、いつの日か刹那・F・セイエイ達のようにイノベイターとして覚醒することを期待しているからだ。一度成功した計画。例えイノベイドが自分一人だろうと、彼はイオリア計画を成功させる自信と覚悟があった。

 

 眼下に広がる戦場……フリーダムによる一方的な攻撃の跡を見て、彼はふと思った。

 

 あのフリーダムのパイロット–––––––キラ・ヤマトは、どんな思いでその機体を駆っているのかと。自分たちイノベイドとは似て非なる存在…"スーパーコーディネーター"は、イオリア計画に何を思うだろうか。

 

 アスラン・ザラ、ラクス・クライン、カガリ・ユラ・アスハと、純粋種へ革新できるだけの素質(SEED)を持つ者はいるが、やはりその中でもキラ・ヤマトが一歩前を行く。

 

 この世界で一番、イノベイターに近い人間。

 

 彼は、この世界の人類を導く存在になり得るのか。

 その真意を知りたいという、ただそれだけの気持ちで、彼は機体をフリーダムの下へ向かわせた。

 

 

 





>ラクス暗殺部隊
本編では誰が黒幕か分からずじまいだったが、結局彼等に命じたのは議長であっているの? 証拠はないけどね。
あと、オーブ軍は島国のくせに海から上陸を許すとかホントに寝ぼけるんですか?

>SEED(優れた種への進化の要素である事を運命付けられた因子)
今作では、純粋種への覚醒因子という独自設定で行きます。種割れ回数が多いキラ君が一番素質があるということで。あとは、GN粒子さえあれば本人の意思次第で変革を迎えそうです。

>彼?
まぁ、分かるだろうけど、オリ主のレクシオです。
次回、新たなガンダムとともにキラのフリーダムに対話(物理)しに行きます。
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