【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
全てのアッシュを圧倒し、無力化したフリーダムの周りには、武装や手足を失った
「………」
自分たちを害そうとする相手は倒さなければならない。けれど、キラはその命までは奪いたくなかった。人の命を奪う時のあの感触を思い出したくなかったから…誰にも死んで欲しくはなかったから。
それは、フリーダムという剣とキラという常人離れしたパイロットだから可能となる、圧倒的な力量の差があるからこそできる戦い方だった。
そのとき、最後に撃破した機体がだしぬけに爆発した。いや、それだけではない。周囲に転がるアッシュ達も立て続けに爆発していく。
–––––––そんな、何故!?
キラは
自分は動力系は一切の攻撃を加えていないはすだ…と。
そして、そんなキラの戸惑いに応えるように彼の第六感がその存在を感じ取った。まるで、頭の中に電流の矢を撃ち込まれたような感覚。決して不快なものではないが、心地よいものでもない。
「何が…っ!?」
視覚で捉えるよりも、フリーダムのレーダーが捉えるよりも早く、キラは反射的にそこへビームライフルを撃ち込んでいた。
すると、
「あの機体は…」
それは、モビルスーツだった。
見てとれる武装は、その手に握られた双頭の槍だろうか。他にも武装はあるだろうが、外見からはそれしか分からない。様々な武装を搭載するフリーダムと比べれば、随分と細身で身軽な機体に見える。
キラの頭を襲う奇妙な感覚は、あの機体から発されている。あの機体のパイロットが、この現象を引き起こしているのだろうか。そんな思いを込めて、フリーダムの…キラとあの機体との視線が交差する。
「……来たっ!」
しかし、それも一瞬のこと。
敵機体はその双頭の槍をこちらに向けると、先端部を展開してこちらへビームを撃ち込んできたのだ。フリーダムのいる場所に光条が
––––––––なんて素早い攻撃っ!?
キラは、巧みに操縦桿を動かし、機体を
「くっ!」
こちらからもビームライフルで応戦するが、敵は
敵機の振り下ろした槍をシールドで受け止め、その間に両腰部の"クスィフィアスレール砲"をゼロ距離で撃ち込んで吹き飛ばしたが、これといってダメージは見られない。
「フェイズシフト装甲なのか…!?」
ならばと、両翼内の"バラエーナプラズマ収束ビーム砲"を発射したが、当然のように回避されてしまう。しかし、それは想定の範囲内。キラはビームサーベルを引き抜くと、久々の"あの感覚"を発動させる。
頭の奥で、何かが
同時に全ての方面の視界がクリアになり、周囲の全ての動きが指先で触れられそうなまでに精密に感じ取れるようになる。前大戦からキラが戦いの中で身につけた、砂漠の虎には"バーサーカーとまで称された特別な力。
キラはクリアになった視界で相手のビームを回避すると、フリーダムのスラスターを全力で
▽△▽
「これがSEEDを持つ者の力か…」
途端に動きが鋭くなったフリーダムを見据え、コックピットの中でレクシオ・ヘイトリッドは感心したように呟いた。その瞳は金色に輝いており、彼の放つ
CB-9999G "ガンダムレナトゥス"
それがレクシオの乗るガンダムの名前だ。
西暦で開発されたガンダムアストレアやアイズガンダム等のデータを基に開発された汎用機であり、世代としてはアステリアやセレーネ等の一つ前にあたる。
主な武装は、西暦のジンクスⅢに装備されていたGNランスを参考に複雑な複合兵装を内蔵した双頭の槍型兵装であるGNパルチザン。そして、両肩にマウントされている計二本の大型GNビームサーベル。左腕のGNシールドや背部のコーン型スラスターを囲うように装備されているGNファングだ。
開発した時期ゆえに世代は昔だが、レクシオというイノベイド専用に開発された機体というだけあって、その性能はアステリア等を
「そんな機体でよくやるね…」
キラ・ヤマトの搭乗するフリーダムと比べれば、その性能差は
GNパルチザンをライフルモードにして、フリーダムを狙う。本来なら撃墜しているはずのそれを、フリーダムは紙一重で回避し、こちらへビームライフルを撃ち込んでくる。
実に見事だ…キラ・ヤマトの操縦技術は。常人離れしていると言っていい。彼の持つ
––––––––––しかし。
「それは傲慢だよ…キラ・ヤマト」
彼はこの状況でもコックピットを狙っていなかった。狙うのは手足やメインカメラ。この性能差を持ってしても彼はレクシオを殺さないように戦っている。
それがイノベイドであるレクシオの
「–––––行くよ」
だから、レクシオも少し力を見せることにした。
彼の全力を見るため…その裏に隠された本心を感じ取るために。
▽△▽
敵機体の動きが変わったのを対応するキラも確認した。目の前の機体のツインアイが光ったと同時に、その動きが今までのものから明らかに変わる。
––––––––まだ速くなる!?
突如上昇したスピードに、キラは目を見開く。
あちらから飛んでくるビームの正確さはより鋭くなり、逆にキラが撃つビームはその全てが
それは、キラに大きな恐怖と焦りを与え、その隙はこの戦闘においては
「こんな…これはっ!?」
キラがシールドの
–––––––いけない!
このままでは、間違いなく
キラは目を見開き、自分の上に振り下ろされる槍刃を見つめた。目の前の機体から発せられる、痛いほどのプレッシャー。それは、キラの防衛本能を刺激し、彼の中に眠る
キラは、スラスターを逆噴射して体勢をわざと崩すことで強引に敵の攻撃をかわし、振り上げたシールドで敵機体を殴り付けて吹き飛ばす。その間に何とか体勢を立て直したものの、敵機は既にビームを放ってきていた。
「………っ!」
しかし、キラはその閃光をシールドで受け止めると同時に手放し、ビームサーベルを握って敵機へ飛び込んでいく。
振り下ろしたサーベルは敵のシールドで受け止められ、逆にカウンターとばかりに敵の槍刃がフリーダムの左腕を切断した。が、それはキラにとっても承知の上。右腕に握るサーベルを敵機のシールドへ押し込み、その間にフリーダムの全砲門を向ける。
ゼロ距離でのフルバースト攻撃。
撃てばフリーダムのボディとてただでは済まないその攻撃を、キラは己の死を覚悟で撃ち込んだ。
全ては、無意識下の行動だった。
ただ自分を、ラクスの命を脅かす敵を排除するための効率的な手段だったからと。SEEDに覚醒したスーパーコーディネーターの頭脳が判断したのだ。
そして、フリーダムの"バラエーナプラズマ収束ビーム砲"と"クスィフィアスレール砲"が発射され、二機を大きな爆炎で包み…互いに大きく吹き飛ばされた。
▽△▽
「やるじゃないか…」
巻き上がる煙から舞い上がる"レナトゥス"の中で、レクシオは小さく称賛の言葉を口にした。その純白の機体に傷はない。直前でGNシールド及び内部のGNファングを犠牲にすることで彼は砲撃の直撃を免れたのだ。そして、直撃さえしなければGN粒子でコーティングされた装甲には大したダメージは与えられない。
遠くでは、斜面にもたれかかるように中破したフリーダムが見える。あの機体はPS装甲を搭載しているので装甲面は無事だっただろうが、パイロットスーツも着ていないキラ本人への衝撃はかなりのものだったはず。脳量子波が
しかし、まさか捨て身の特攻でダメージを与えてくるとは思わなかった。ヴェーダの予測では、機体性能込みでキラが勝利する確率は10%を切っていたはずだったが、勝敗はともかく武装を破壊してくるとは…。
「その力…それが君の本音というわけか」
イノベイドであるレクシオには、キラ・ヤマトが胸の内に秘める本当の思いが、彼の放つ脳量子波を通じて感じ取れていた。彼の叫びが…彼の悲鳴が。
「…………」
彼の心は泣いていた。
だけど、もう涙が出ないから、心で泣いていたのだ。決して誰にも悟られないように…。
《どうして自分は生きているのか》
《どうして自分には力があるのか》
《どうして自分だけ生き残ってしまったのか》
《どうして…また、自分はここに座っているのか》
それはまるで幼い子どものようだった。
いや、事実子どもなのだろう。世界の時は流れていくが、彼の中の幸せな思い出は二年前で止まっている。今はただ、小さな幸福に
「………困ったな」
結局、最後の最後まで
いや、本気は出していたのだが、そこに殺意はなかった。遺伝子操作による人間の限界まで突き詰めた
《やっぱり、もう誰も殺したくない!》
そんな思いが、最後に聞こえた彼の本音だった。
……ああ、これは筋金入りだ。
「君を傲慢だと言ったが…訂正するよ。君は少し謙虚がすぎる」
謙虚も過ぎれば傲慢になる…という言葉があるが、キラ・ヤマトはその典型だろう。全ての人類の頂点に立てるだけの肉体を持ちながら、彼自身のパーソナリティは凡人かそれ以下だ。
「君はきっと、
今のキラの本心を思うに、彼はこんな思いをするなら
いくら
「今はね」
だがそれは、彼の周囲の環境と人間によって決まるだろう。
ラクス・クラインにカガリ・ユラ・アスハ。亡くなった人間も含めれば、フレイ・アルスターなども含まれるだろうか。
彼女たちに被害が及べば、彼はおのずと戦いの道を選ぶに違いない。全てはこれから次第だ…彼がどのような道を進むかどうかは。
「となると……やはり彼女か」
一番可能性の高かったキラ・ヤマトに変革の意思がない。となると、彼と共にいるラクス・クラインも今の所は同じ意思と見ていいだろう。
そうなるならば、やはりレクシオがイノベイターの第一候補として挙げるのは、彼が直接見出したフェイト・シックザール…いや、マユ・アスカという少女だ。
始めは単なる気まぐれだったが、まさか彼女がSEEDを持つ者だとは思わなかった。まさに運命だったのだ。変革の意思も高く、後は経験と肉体の完成を待つだけだ。レクシオは彼女に期待を寄せていた。
「…………悪いことをしたかな」
レナトゥスの眼下、折れた翼を休めるように横たわるフリーダム…キラ・ヤマトを見て、レクシオは少し申し訳ないように思った。
それは、イノベイドである彼らしくもない人間らしい感情だったが、どこか自分とよく似た境遇の彼を憐れむような気持ちがあったのかもしれない。
しかし、彼は止まるわけにはいかない。
基本的に人道的な配慮はする。
けれど、ヒトが変革に痛みを必要とするならば、レクシオは容赦なくそれを与えるつもりだった。
人類を革新へ導くためなら、何でもすると決めたのだから。
「また会う時が来るさ…じゃあね、キラ・ヤマト」
遠くからこちらにオーブ軍のモビルスーツが緊急発進したという情報をヴェーダで確認し、彼は機体をその場から離脱させたのだった。
>ガンダムレナトゥス
アストレアとアイズガンダムを足して2で割ったような感じ。
武装で分かるだろうけど、外見イメージは「ガンダムビルドファイターズトライ」に出てくる「トランジェントガンダム」ってやつ。
>レクシオ対キラ
機体性能差がとんでもないのでパイロットとしては比較にならない。
レクシオ(実力の三割)vsキラ(本気だけど殺意なし)みたいな感じ。
>キラの強さ
イノベイター抜きなら作中最強。
しかし、文中に書いたようにキラ自身が戦いに向いていないので、アスランやシンに押されることも負けることもある。
>キラが訓練していて、なお己の運命を受け入れていたら
フリーザが真面目に修行したらどうなるかと考えてください。