【第一部完結】転生イノベイドのイオリア計画再生記 in C.E. 作:アルテミー
タリア・グラディスは、アスランが預かってきたというデュランダルからの命令書に
ややあって、タリアが小さく息を吐つく。
彼女は命令書とともにアスランが
「貴方をフェイスに戻し、最新鋭の機体を与えてこの艦によこし…私までフェイスに?」
その意向はアスランもハイネから聞かされて知ったので、そんな用心深げな視線を向けられても困る。
「一体何を考えているのかしら、議長は…それに貴方も」
「……申し訳ございません」
だが、自分という存在が周囲の混乱を招くことは予測していた。一度はザフトを捨てたのに、その罪を問われるどころか以前と同様の地位に返り咲いたのだ。それでは
だから、アスランはただひたすらに頭を下げることしかできない。タリアもそれが分かっているのだろう。小さく肩をすくめるだけで特に何も言うことはなかった。
「まぁ、いいじゃないですか。前線で戦う分には、こいつの力は頼もしいですよ、俺たちモビルスーツパイロットにとっては」
「ハイネ…」
そんなアスランを励ますように言ったのはハイネだった。第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦にも参加していたという彼は、この中ではアスランと並んで経験豊富な軍人だ。そんな彼の言葉に、タリアの表情も和らぐ。
「別に謝ることじゃないわ。議長が認め、命令が下ったなら私たちに異論はないもの。貴方がフェイスなこともね」
「……ありがとうございます」
とりあえず、アスランが爪弾きにされるということはなさそうだ。アーモリーワン以降の件でミネルバのクルーには馴染みやすいとも馴染みづらいとも思っていたが、幸いこの艦長は公と私を分かられるタイプのようだった。
「それで、この命令内容だけど、貴方たちは聞いているの?」
「いえ、我々も聞かされていません」
「そう? 中々面白い内容よ」
タリアは皮肉っぽい調子でいい、書面に再び目を落とす。
「––––––ミネルバは出撃可能になり次第、ジブラルタルへ向かい、到着次第、対ガンダムの調査を命じるとのことよ」
彼女が命令書を読み上げると、アーサーが呆気に取られた顔になる。
「ガンダム…!? あの組織を我々がですか!?」
アスランも議長の意図がよく理解できない。
確かにソレスタルビーイングと名乗る私設武装組織は、連合・ザフト問わずに武力介入を行う危険なテロリストとして報道されているが、それにミネルバのような特殊な立ち位置の部隊を動員する必要があるのだろうか?
「上はそれだけ事態を重く見ているというわけね」
「しかし、ジブラルタルへ向かえというのは…」
アーサーが
確かに南半球のオーストラリアにいるミネルバが、何故わざわざユーラシア大陸とアフリカ大陸の中間にあるジブラルタルまで向かわなければなるないのだろう。
しかし、タリアはどこか悟ったような様子だった。
「––––ユーラシアの紛争があるからでしょうね」
「え?」
「あ、スエズの…」
状況を飲み込めていないアスランと違い、アーサーやハイネはハッとした様子で考え込んでいた。そんなアスランを見てハイネが説明するように口を開いた。
「今、ほとんど大西洋連邦の言いなりになってるユーラシアの一部の地域で独立運動を叫んでいるらしい。つい最近のことなんで、俺も詳しいことは分からないがな」
「彼の言う通り。そして、紛争があるとなれば、そこにきっと彼等は姿を現すはずよ」
それが、ガンダムというわけか。
つまり、ミネルバは表向きは支援部隊として各地に赴くものの、その本質はソレスタルビーイングのモビルスーツ、ガンダムの破壊もしくは鹵獲を目的としているということだ。
「プラントの戦う理由は、あくまでも
前大戦で優秀な兵士の多くを亡くしたザフトは人員不足だ。元々少数精鋭が主のザフトだったが、地上戦力となるとユニウス条約のこともあって更に戦力は少ない。
各部隊に各々の任務が任されている以上、謎に包まれたガンダムと対するのにミネルバはピッタリの配役だった。
「一応、俺とアスランの他にも応援部隊が来る予定だそうですが、もう少し時間がかかるようで、合流はジブラルタルでになりそうです」
「…なるほど、フェイスが三人なんてどういうことかと思ったけど、厳密には貴方達は独立した部隊というわけね」
そう、アスランとハイネはミネルバ所属のモビルスーツパイロットになるものの、厳密には特務隊所属である。言わば、対ガンダム調査の任務を命じられたのはアスランとハイネであり、タリア達ミネルバ隊はそれをサポートするのが仕事というわけだ。
「ま、俺たちはあくまで現場の指揮権があるってだけですので、基本的には艦長さんの命令に従いますよ。な、アスラン」
「はい。フェイスが三人もいれば指揮系統が混乱すると思うので…」
ハイネの言葉に遠慮がちにアスランが答えれば、タリアはホッとしたような表情で小さく息をついた。
「助かるわ。では、貴方たちにはモビルスーツ隊の指揮を任せます」
「「了解」」
ハイネもアスランも、どちらかと言えば現場で指揮をした経験の方が圧倒的に多いので、その申し出は
タリアの言葉にアスランとハイネは頼もしさを感じさせる敬礼で応えた。
▽△▽
開戦後、宇宙での一件で
そうなれば、ソレスタルビーイングによる武力介入の回数も増えることになる。ヴェーダは、主な介入場所を地上に限定し、四人のガンダムマイスターたちも全員地上に降りてきていた。
ソレスタルビーイングが所有する地上拠点のうちの一つ、赤道周囲に存在する
「そういうわけで、セレーネとメティスは数日ほどメンテナンスだ。次のミッションはアステリアとサルースで行ってくれ」
フェイト達四人は浜辺に集まり、クラウディオスの総合
「まぁ、仕方ないかぁ」
フブキはやや不満気な表情を見せたものの、納得したように呟いた。
モビルアーマー形態への変形機構を持つメティスは、同世代のガンダムの中では
「…あれだけ介入したからね。大人しく海でも見てるさ」
セレーネは介入初期から続けての運用やユニウスセブンの破片破砕の際の超高々度狙撃などを含めて、機体に不具合が出ているとのことらしく、シエルは小さく肩をすくめた。
「ま、あとは俺たちに任せな」
対して、サルースはトレミーでの待機任務が多かったために機体の整備は完璧であり、次のミッションにも問題なく参加できるとのことだった。パイロット的にもまだまだ余裕があり、暫くは整備の必要はないだろう。
「……了解」
アステリアは初めの武力介入から立て続けに運用されており、最も機体への
「それにしてもホント忙しいわよね、ここんとこ働きづめじゃない」
「それだけ世界で紛争が起こっているってことだ」
眉を寄せるフブキの言葉にアキサムが呆れるように言った。あらゆる紛争行為に介入する彼等、今の世界の状況をよく知っている。だからこそ、皆戦うことをやめない世界に不平不満を抱いていたのだ。
「あーもう、それにしても暑い! 冷えたスムージーとかないの? 南国のやつ〜!」
うがー!と心の内に
「神経が太いというか、なんというか…」
「強がってんだよ。お前ら歳下に弱みは見せられないってな」
遠ざかるフブキの背にアキサムが小声で言った。
「歳下って…フェイトはともかく僕とは2歳差ですよ」
「ハッ、生憎とプラントじゃ15で成人だ。18のお前とはまた違うんだろ、意識が」
そういうと、アキサムも整備が終わった己の乗機の元へ向かって行った。
「あの人もナチュラルなんだけど…まぁいいか」
シエルはどこか納得いかないような表情を浮かべつつも、一人浜辺で太陽の光を反射する
海を見つめてるのは、シエルの数少ない趣味の一つだ。地球出身の彼にとって、海というのは慣れ親しいものだった。
それからしばらくたった頃、シエルは物陰からじぃーっと己を見つめるフェイトの視線に気がついた。後ろにはウェンディとヴァイオレットの姿もある。
「ん? どうしかしたかい?」
不思議そうな顔のシエルに、ぞろぞろと前に出てきたフェイトは少しの不安を覚えながらも言葉を続けた。
「海…好きなんですか?」
「え?」
「いや、昨日もずっと見てたから…」
ははん…とシエルは彼女達の思惑を
ソレスタルビーイングは、あくまで『戦争根絶』という理念の元に志を同じくした者達が集まっている集団に過ぎない。エージェントや支援組織まで
実働部隊であるトレミーも同じだ。
メンバーの個人情報はヴェーダによって
きっと彼女たちはその壁を少しずつでも壊したいと思っているのかもしれない。みんな世界を敵に回した仲間であり、志を同じくする家族のようなものなのだと。
だから、シエルも表情を和らげて微笑みを浮かべ、自らその壁を破壊した。
「幼い頃、海をよく見ていたっていうのもあるけど……海を見ていると落ち着くんだ」
「………」
「僕は地球軍の生体CPUだったんだ」
シエルの告白に、誰もが息を呑む。
フェイト達も、ヴェーダのデータベースで地球軍がどんな違法行為をしていたのかを把握している。その中の一つ、親のいない子供などを薬物や洗脳などで強化して戦わせるという非道を行っていると聞いた。しかし、まさかシエルがその本人だったなんて…。
「偶然の事故で逃げ出せたんだけど。頭の中が全部ぐちゃぐちゃでさ。自分が何をしているのも分からなくて…」
殺し合った。自らを守るために戦う。他人の命を奪う。それが当然だと思っていたから。そう教えられてきたから。
けれど、自由の身になってからそれが異常だったことに気づいた。命を奪った
「でも、大きな海を見ていると気持ちが落ち着いたんだ。今はもう普通にしてても平気なんだけどさ」
「どうして…?」
それは、どうして教えてくれたのか? という意味だろうか。ソレスタルビーイングには守秘義務があるのに…何故?と彼女達の目は
「自分たちが聞いたくせに…」
「え…あ、いや」
悪いことを聞いたと思ったのだろう。
ハッと申し訳なさそうにあたふたする彼女達が微笑ましくて、ついシエルは吹き出してしまった。
「フフッ、冗談だよ」
ガンダムマイスターに年齢や人種は関係ない。ナチュラルだろうとコーディネーターだろうと何歳であろうと仲間は仲間だ。そう思ってシエルは優しく微笑んだ。最年少故に少し壁のあったフェイトや無表情がデフォのヴァイオレットも笑みを浮かべている。
「うーん、どうして教えたか…か」
それは、似ているからだろうか。
一見、とても戦いとは無縁そうなフェイト達の姿が、記憶の中の
「まぁ、歳上だからさ、僕」
「えー、何それ。フェイトとヴァイオレットはともかく、私とシエルは同い年でしょ」
適当に
>ミネルバ
表向き:スエズ攻防戦の支援(原作通り)
実際:ガンダムの調査(できれば鹵獲か撃墜)
これからはところどころオリジナル展開が多くなると思いますが、基本的には原作沿いです。少なくともベルリン編くらいまでは原作の面影が残ると思います。